(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108284
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】作業支援方法および作業支援システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20240805BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240805BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
H01L21/02 Z
H01L21/304 643A
H01L21/304 648G
G05B23/02 301X
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012572
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】清水 進二
(72)【発明者】
【氏名】美濃口 昌大
【テーマコード(参考)】
3C223
5F157
【Fターム(参考)】
3C223AA13
3C223BA03
3C223BB08
3C223EB02
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3C223HH02
5F157AA73
5F157AB14
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5F157CF74
5F157CF92
(57)【要約】
【課題】可動部位に対して不適切な負荷を作用させることなく、可動部位を直感的に操作することができる作業支援方法および作業支援システムを提供する。
【解決手段】スマートグラスを装着した作業者が可動部位である処理液ノズル60に対して操作を行うときに、スマートグラスが操作対象となる可動部位の立体映像である仮想オブジェクト91を表示する。作業者はその仮想オブジェクト91に対して操作を行う。スマートグラスは、作業者による仮想オブジェクト91に対する操作を検出して操作情報を取得し、その操作情報に基づいて可動部位に対する動作制御情報を作成する。基板処理装置の制御部は、当該動作制御情報に基づいて可動部位の動作を制御する。作業者は、仮想オブジェクト91に対して直感的な操作を行うことができ、可動部位の駆動機構に対して不適切な負荷が作用することも防がれる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業機器に含まれる可動部位に対して操作を行うときの作業支援方法であって、
撮像部および通信部を備えた携帯端末によって操作対象となる前記可動部位の仮想オブジェクトを表示する表示工程と、
作業者による前記仮想オブジェクトに対する操作を検出して操作情報を取得する検出工程と、
前記操作情報に基づいて前記可動部位に対する動作制御情報を作成する変換工程と、
前記動作制御情報に基づいて前記可動部位の動作を制御する動作制御工程と、
を備えることを特徴とする作業支援方法。
【請求項2】
請求項1記載の作業支援方法において、
前記操作情報は、前記仮想オブジェクトの位置情報を含むことを特徴とする作業支援方法。
【請求項3】
請求項2記載の作業支援方法において、
前記操作情報は、前記仮想オブジェクトの速度情報をさらに含むことを特徴とする作業支援方法。
【請求項4】
請求項3記載の作業支援方法において、
前記位置情報または前記速度情報が所定の範囲から外れているときには、前記携帯端末がエラー表示を行うことを特徴とする作業支援方法。
【請求項5】
請求項1記載の作業支援方法において、
前記携帯端末は、前記仮想オブジェクトを前記可動部位と重ならない位置に表示することを特徴とする作業支援方法。
【請求項6】
請求項1記載の作業支援方法において、
前記携帯端末は、前記仮想オブジェクトの大きさおよび方向を可変に表示することを特徴とする作業支援方法。
【請求項7】
請求項1記載の作業支援方法において、
前記携帯端末は、前記仮想オブジェクトに対応する前記可動部位を強調表示することを特徴とする作業支援方法。
【請求項8】
請求項1記載の作業支援方法において、
前記携帯端末によって表示される前記産業機器に含まれる装置部位のリストから操作対象となる前記可動部位が選択されることを特徴とする作業支援方法。
【請求項9】
請求項1記載の作業支援方法において、
前記産業機器は、基板に所定の処理を行う基板処理装置であることを特徴とする作業支援方法。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載の作業支援方法において、
前記携帯端末は、スマートグラスであることを特徴とする作業支援方法。
【請求項11】
産業機器に含まれる可動部位に対して操作を行うときの作業支援システムであって、
撮像部および通信部を備えた携帯端末と、
前記産業機器に設けられ、前記可動部位に動作を制御する制御部と、
を備え、
前記携帯端末は、操作対象となる前記可動部位の仮想オブジェクトを表示し、
前記携帯端末は、作業者による前記仮想オブジェクトに対する操作を検出して操作情報を取得するとともに、前記操作情報に基づいて前記可動部位に対する動作制御情報を作成し、
前記制御部は、前記動作制御情報に基づいて前記可動部位の動作を制御することを特徴とする作業支援システム。
【請求項12】
請求項11記載の作業支援システムにおいて、
前記操作情報は、前記仮想オブジェクトの位置情報を含むことを特徴とする作業支援システム。
【請求項13】
請求項12記載の作業支援システムにおいて、
前記操作情報は、前記仮想オブジェクトの速度情報をさらに含むことを特徴とする作業支援システム。
【請求項14】
請求項13記載の作業支援システムにおいて、
前記携帯端末は、前記位置情報または前記速度情報が所定の範囲から外れているときにはエラー表示を行うことを特徴とする作業支援システム。
【請求項15】
請求項11記載の作業支援システムにおいて、
前記携帯端末は、前記仮想オブジェクトを前記可動部位と重ならない位置に表示することを特徴とする作業支援システム。
【請求項16】
請求項11記載の作業支援システムにおいて、
前記携帯端末は、前記仮想オブジェクトの大きさおよび方向を可変に表示することを特徴とする作業支援システム。
【請求項17】
請求項11記載の作業支援システムにおいて、
前記携帯端末は、前記仮想オブジェクトに対応する前記可動部位を強調表示することを特徴とする作業支援システム。
【請求項18】
請求項11記載の作業支援システムにおいて、
前記携帯端末によって表示される前記産業機器に含まれる装置部位のリストから操作対象となる前記可動部位が選択されることを特徴とする作業支援システム。
【請求項19】
請求項11記載の作業支援システムにおいて、
前記産業機器は、基板に所定の処理を行う基板処理装置であることを特徴とする作業支援システム。
【請求項20】
請求項11から請求項19のいずれかに記載の作業支援システムにおいて、
前記携帯端末は、スマートグラスであることを特徴とする作業支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に所定の処理を行う基板処理装置等の産業機器に含まれる可動部位に対して操作を行うときに当該操作の支援を行う作業支援方法および作業支援システムに関する。基板処理装置によって処理対象となる基板には、例えば、半導体基板、液晶表示装置用基板、flat panel display(FPD)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、または、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体デバイスの製造工程では、半導体基板等の基板に対して種々の処理を行う基板処理装置が用いられている。基板処理装置としては、例えば基板洗浄装置、熱処理装置、検査装置等が使用されている。基板処理装置には、搬送ロボットや旋回動作を行うノズル等の種々の可動部位が設けられている。処理の精度を向上させるとともに安全性を確保する観点から、このような可動部位については予め定められている所望の位置に正確に移動することが求められる。そこで、従来より、搬送ロボット等の可動部位が目標とする位置に正確に移動するための教示(ティーチング)が行われている(例えば、特許文献1)。
【0003】
一般的には、可動部位に対して教示を行う際には、予め粗い位置調整を行った後に、高精度の微調整を行う。粗位置調整では、作業者がリモコンなどを使って可動部位を目標とする位置の近傍にまで移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、リモコンなどを使って可動部位を操作するときには、作業者がリモコンから移動距離や座標等を入力して指示することになるため、作業者にとっては直感的な操作ではない。このため、特に熟練度の低い作業者にとっては可動部位を目標とする位置に近づけることが困難なことも多く、可動部位に対する操作が効率的ではなかった。
【0006】
直感的な操作を実現するために、作業者が可動部位を直接手で持って移動させることも不可能ではない。しかし、可動部位を強引に移動させると、可動部位の駆動機構に対して不適切な負荷が作用することになるため、その駆動機構を破損させるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、可動部位に対して不適切な負荷を作用させることなく、可動部位を直感的に操作することができる作業支援方法および作業支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、産業機器に含まれる可動部位に対して操作を行うときの作業支援方法において、撮像部および通信部を備えた携帯端末によって操作対象となる前記可動部位の仮想オブジェクトを表示する表示工程と、作業者による前記仮想オブジェクトに対する操作を検出して操作情報を取得する検出工程と、前記操作情報に基づいて前記可動部位に対する動作制御情報を作成する変換工程と、前記動作制御情報に基づいて前記可動部位の動作を制御する動作制御工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る作業支援方法において、前記操作情報は、前記仮想オブジェクトの位置情報を含むことを特徴とする。
【0010】
また、請求項3の発明は、請求項2の発明に係る作業支援方法において、前記操作情報は、前記仮想オブジェクトの速度情報をさらに含むことを特徴とする。
【0011】
また、請求項4の発明は、請求項3の発明に係る作業支援方法において、前記位置情報または前記速度情報が所定の範囲から外れているときには、前記携帯端末がエラー表示を行うことを特徴とする。
【0012】
また、請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれかの発明に係る作業支援方法において、前記携帯端末は、前記仮想オブジェクトを前記可動部位と重ならない位置に表示することを特徴とする。
【0013】
また、請求項6の発明は、請求項1から請求項5のいずれかの発明に係る作業支援方法において、前記携帯端末は、前記仮想オブジェクトの大きさおよび方向を可変に表示することを特徴とする。
【0014】
また、請求項7の発明は、請求項1から請求項6のいずれかの発明に係る作業支援方法において、前記携帯端末は、前記仮想オブジェクトに対応する前記可動部位を強調表示することを特徴とする。
【0015】
また、請求項8の発明は、請求項1から請求項7のいずれかの発明に係る作業支援方法において、前記携帯端末によって表示される前記産業機器に含まれる装置部位のリストから操作対象となる前記可動部位が選択されることを特徴とする。
【0016】
また、請求項9の発明は、請求項1から請求項8のいずれかの発明に係る作業支援方法において、前記産業機器は、基板に所定の処理を行う基板処理装置であることを特徴とする。
【0017】
また、請求項10の発明は、請求項1から請求項9のいずれかの発明に係る作業支援方法において、前記携帯端末は、スマートグラスであることを特徴とする。
【0018】
また、請求項11の発明は、産業機器に含まれる可動部位に対して操作を行うときの作業支援システムにおいて、撮像部および通信部を備えた携帯端末と、前記産業機器に設けられ、前記可動部位に動作を制御する制御部と、を備え、前記携帯端末は、操作対象となる前記可動部位の仮想オブジェクトを表示し、前記携帯端末は、作業者による前記仮想オブジェクトに対する操作を検出して操作情報を取得するとともに、前記操作情報に基づいて前記可動部位に対する動作制御情報を作成し、前記制御部は、前記動作制御情報に基づいて前記可動部位の動作を制御することを特徴とする。
【0019】
また、請求項12の発明は、請求項11の発明に係る作業支援システムにおいて、前記操作情報は、前記仮想オブジェクトの位置情報を含むことを特徴とする。
【0020】
また、請求項13の発明は、請求項12の発明に係る作業支援システムにおいて、前記操作情報は、前記仮想オブジェクトの速度情報をさらに含むことを特徴とする。
【0021】
また、請求項14の発明は、請求項13の発明に係る作業支援システムにおいて、前記携帯端末は、前記位置情報または前記速度情報が所定の範囲から外れているときにはエラー表示を行うことを特徴とする。
【0022】
また、請求項15の発明は、請求項11から請求項14のいずれかの発明に係る作業支援システムにおいて、前記携帯端末は、前記仮想オブジェクトを前記可動部位と重ならない位置に表示することを特徴とする。
【0023】
また、請求項16の発明は、請求項11から請求項15のいずれかの発明に係る作業支援システムにおいて、前記携帯端末は、前記仮想オブジェクトの大きさおよび方向を可変に表示することを特徴とする。
【0024】
また、請求項17の発明は、請求項11から請求項16のいずれかの発明に係る作業支援システムにおいて、前記携帯端末は、前記仮想オブジェクトに対応する前記可動部位を強調表示することを特徴とする。
【0025】
また、請求項18の発明は、請求項11から請求項17のいずれかの発明に係る作業支援システムにおいて、前記携帯端末によって表示される前記産業機器に含まれる装置部位のリストから操作対象となる前記可動部位が選択されることを特徴とする。
【0026】
また、請求項19の発明は、請求項11から請求項18のいずれかの発明に係る作業支援システムにおいて、前記産業機器は、基板に所定の処理を行う基板処理装置であることを特徴とする。
【0027】
また、請求項20の発明は、請求項11から請求項19のいずれかの発明に係る作業支援システムにおいて、前記携帯端末は、スマートグラスであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
請求項1から請求項10の発明によれば、携帯端末が操作対象となる可動部位の仮想オブジェクトを表示し、その仮想オブジェクトに対する作業者による操作を検出して操作情報を取得し、その操作情報に基づいて可動部位に対する動作制御情報を作成し、可動部位の動作は当該動作制御情報に基づいて制御されるため、可動部位に対して不適切な負荷を作用させることなく、可動部位を直感的に操作することができる。
【0029】
特に、請求項4の発明によれば、位置情報または速度情報が所定の範囲から外れているときには、携帯端末がエラー表示を行うため、作業者が仮想オブジェクトに対して無理な操作をしたとしても、可動部位に不適切な負荷が作用するのを確実に防止することができる。
【0030】
特に、請求項5の発明によれば、携帯端末は、仮想オブジェクトを可動部位と重ならない位置に表示するため、作業者が可動部位に直接接触するのを防止することができる。
【0031】
請求項11から請求項20の発明によれば、携帯端末は、操作対象となる可動部位の仮想オブジェクトを表示し、作業者による仮想オブジェクトに対する操作を検出して操作情報を取得するとともに、操作情報に基づいて可動部位に対する動作制御情報を作成し、制御部は、動作制御情報に基づいて可動部位の動作を制御するため、可動部位に対して不適切な負荷を作用させることなく、可動部位を直感的に操作することができる。
【0032】
特に、請求項14の発明によれば、携帯端末は、位置情報または速度情報が所定の範囲から外れているときにはエラー表示を行うため、作業者が仮想オブジェクトに対して無理な操作をしたとしても、可動部位に不適切な負荷が作用するのを確実に防止することができる。
【0033】
特に、請求項15の発明によれば、携帯端末は、仮想オブジェクトを可動部位と重ならない位置に表示するため、作業者が可動部位に直接接触するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明に係る作業支援システムの概略構成を模式的に示す図である。
【
図2】基板処理装置の内部のレイアウトを説明するための平面図である。
【
図3】処理ユニットの概略構成を示す平面図である。
【
図4】処理ユニットの概略構成を示す側面図である。
【
図6】スマートグラス、サーバ、作業支援端末および基板処理装置の制御部の機能的構成を示すブロック図である。
【
図7】本発明に係る作業支援方法の手順を示すフローチャートである。
【
図9】基板処理時に処理液ノズルが行うべき揺動移動動作の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下において、相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば、「一方向に」、「一方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」、「同軸」、など)は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。また、等しい状態であることを示す表現(例えば、「同一」、「等しい」、「均質」、など)は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。また、形状を示す表現(例えば、「円形状」、「四角形状」、「円筒形状」、など)は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲の形状を表すものとし、例えば凹凸または面取りなどを有していてもよい。また、構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、「有する」、といった各表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。また、「A、BおよびCのうちの少なくとも一つ」という表現には、「Aのみ」、「Bのみ」、「Cのみ」、「A、BおよびCのうち任意の2つ」、「A、BおよびCの全て」が含まれる。
【0036】
図1は、本発明に係る作業支援システムの概略構成を模式的に示す図である。本発明に係る作業支援システムは、複数の基板処理装置40と、スマートグラス10と、サーバ70と、作業支援端末80と、を備える。スマートグラス10および基板処理装置40のコントローラは無線通信にて情報通信網5(例えば、インターネット)に接続されている。また、作業支援端末80およびサーバ70は有線にて情報通信網5に接続されている。情報通信網5に接続された機器間では相互に情報の送受信が可能であり、例えばスマートグラス10と作業支援端末80との間で情報の授受を行うことができる。なお、各機器と情報通信網5とを無線で接続するか有線で接続するかは上記の例に限定されるものではなく、適宜の形態とすることができる(例えば、作業支援端末80と情報通信網5とを無線で接続しても良い)。
【0037】
複数の基板処理装置40は、例えばクリーンルーム内に並べて配置されている。クリーンルームは、例えば半導体デバイスの製造工場内に設けられ、一定の空気清浄度が確保されるとともに温度および湿度が管理された部屋である。作業者は、クリーンルーム内にて基板処理装置40に対して作業を行う。
【0038】
図2は、基板処理装置40の内部のレイアウトを説明するための平面図である。基板処理装置40は、半導体ウェハーなどの円板形状のシリコン基板である基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の基板洗浄装置である。基板処理装置40は、インデクサ部43と、複数の処理ユニット50と、主搬送ロボット48と、制御部45と、を備える。
【0039】
インデクサ部43は、複数(本実施形態では3つ)のロードポートLPおよびインデクサロボット41を有する。各ロードポートLPには、処理ユニット50で処理される複数枚の基板Wを収容するキャリアCが載置される。キャリアCの形態としては、基板Wを密閉空間に収納するFOUP(front opening unified pod)の他に、SMIF(Standard Mechanical Inter Face)ポッドや収納した基板Wを外気に曝すOC(open cassette)であっても良い。
【0040】
インデクサロボット41は、キャリアCと主搬送ロボット48との間で基板Wを搬送する。インデクサロボット41は、例えば多関節ロボットであり、複数のロードポートLPに載置されたいずれのキャリアCに対しても基板Wの授受を行うことができる。
【0041】
また、主搬送ロボット48は、インデクサロボット41と処理ユニット50との間で基板Wを搬送する。主搬送ロボット48は、昇降動作、旋回動作および搬送アームの進退動作が可能に構成されている。インデクサロボット41がキャリアCから取り出した未処理の基板Wを主搬送ロボット48が受け取って処理ユニット50に搬入する。また、主搬送ロボット48が処理ユニット50から搬出した処理済みの基板Wをインデクサロボット41が受け取ってキャリアCに収納する。
【0042】
基板処理装置40においては、例えば、3個の処理ユニット50が積層されて1つの積層体(タワー)を構成する。そして、主搬送ロボット48の周囲に例えば4つの積層体が配置される。すなわち、1つの基板処理装置40は、例えば12個(=3×4)の処理ユニット50を含む。
図2では、3段に重ねられた処理ユニット50の1つが概略的に示されている。なお、基板処理装置40における処理ユニット50の数量は、12個に限定されるものではなく、適宜変更されてもよい。
【0043】
主搬送ロボット48は、処理ユニット50が積層された4個の積層体の中央に設置されている。主搬送ロボット48は、インデクサロボット41から受け取った処理対象となる基板Wを処理ユニット50の処理カップ55の内側に搬入する。また、主搬送ロボット48は、それぞれの処理ユニット50から処理済みの基板Wを搬出してインデクサロボット41に渡す。
【0044】
また、基板処理装置40は、制御部45を備える。制御部45は、一般的なコンピュータであり、装置内に設けられた上記のインデクサロボット41、主搬送ロボット48および各処理ユニット50に設けられた機構の動作を制御する。制御部55は、装置の壁面に設けられた入出力インターフェイスであるタッチパネルおよび装置外部と通信を行う通信部を有する。なお、
図2では、図示の便宜上、制御部45をインデクサ部43内に記載しているが、これに限定されるものではなく、制御部45は基板処理装置40内の適宜の位置に設けられる。
【0045】
以下、基板処理装置40に搭載された12個の処理ユニット50のうちの1つについて説明するが、他の処理ユニット50についても、ノズルの配置位置関係が異なること以外は、同様の構成を有する。
【0046】
処理ユニット50は、1枚の基板Wに対して処理液を吐出して洗浄処理を行う。処理液とは、各種の薬液および純水を含む概念の用語である。薬液としては、例えば、エッチング処理を行うための液、または、パーティクルを除去するための液などが含まれ、具体的には、SC-1液(水酸化アンモニウムと過酸化水素水と純水との混合溶液)、SC-2液(塩酸と過酸化水素水と純水との混合溶液)、または、フッ酸などが用いられる。
【0047】
図3は、処理ユニット50の概略構成を示す平面図である。また、
図4は、処理ユニット50の概略構成を示す側面図である。処理ユニット50は、処理チャンバー51、回転保持部56、処理液ノズル(第1ノズル)60、スプレーノズル(第2ノズル)65、および、カップ55を備える。処理チャンバー51は、中空の筐体である。処理チャンバー51の内側に、回転保持部56、処理液ノズル60、スプレーノズル65、および、カップ55等が設けられる。
【0048】
処理チャンバー51の側壁には、搬出入口52が設けられる。搬出入口52は、シャッター53によって開閉される。シャッター53が搬出入口52を開放している状態にて、主搬送ロボット48が搬出入口52から処理液チャンバー51に対して基板Wの搬入および搬出を行う。基板Wの処理中はシャッター53が搬出入口52を閉鎖する。シャッター53によって搬出入口52が閉鎖されると、処理チャンバー51内は半密閉空間となる。
【0049】
処理チャンバー51の天井部にはFFU(ファン・フィルタ・ユニット)54が設けられている。FFU54は、処理チャンバー51の天井から処理チャンバー51内に向けて清浄空気を供給する。これにより、処理チャンバー51内には、上方から下方へと向かう清浄空気のダウンフローが形成される。処理チャンバー51内に供給された気体は処理チャンバー51の底部に設けられた排気ダクト59から排出される。
【0050】
回転保持部56は、スピンチャック57およびスピンモータ58を備える。スピンチャック57は、基板Wを水平姿勢(基板Wの主面の法線が鉛直方向に沿う姿勢)にて保持する基板保持部である。スピンチャック57は、例えば真空吸着式のチャックである。スピンチャック57は、基板Wの下面の中央部を吸着保持する。なお、スピンチャック57は、基板Wの端縁部を把持する挟持式のメカニカルチャックなどの他の形態のチャックであってもよい。
【0051】
スピンチャック57は、基板Wの直径よりも小さな径の円板形状を有する。基板Wの下面がスピンチャック57に吸着保持された状態では、基板Wの周縁部が、スピンチャック57の外周端よりも外側にはみ出ている。
【0052】
スピンチャック57は、モータ軸を介してスピンモータ58と連結される。すなわち、スピンモータ58のモータ軸の上端がスピンチャック57の下面中央部に接続される。スピンチャック57に基板Wが吸着保持されている状態にてスピンモータ58がモータ軸を回転させると、鉛直方向に沿った回転軸まわりで水平面内にて基板Wおよびスピンチャック57が回転する。
【0053】
スピンチャック57の周囲を囲むようにカップ55が設けられる。カップ55は、図示省略の昇降機構によって昇降可能とされる。カップ55は概略円筒形状を有しており、カップ55の上部は上に向かうほどスピンチャック57に近付くように傾斜している。ただし、カップ55の上端部分の内径は基板Wの直径よりも大きい。基板Wの処理時には、カップ55の上端はスピンチャック57に保持された基板Wの高さ位置よりも高い。従って、処理中に回転保持部56によって回転される基板Wから遠心力によって飛散した液体はカップ55によって受け止められて回収される。カップ55によって回収された液体はカップ55の底部に設けられた図示省略の排液管から排出される。なお、カップ55は、回収口を目的別に複数設けた多段構造のものであっても良い。
【0054】
処理液ノズル60は、ノズル先端部61、スイングアーム62およびスイングモータ63を備える。処理液ノズル60は、例えば連続流の状態で処理液を吐出するストレートノズルである。ノズル先端部61は、ほぼ水平方向に延びるスイングアーム62の先端に取り付けられている。ノズル先端部61には、図外の処理液供給源から処理液が供給されるとともに、図示省略の吐出口が形成されており、その吐出口から処理液が吐出される。スイングアーム62はスイングモータ63によって、鉛直方向に沿った揺動軸A1の周りにて水平面内で揺動される。スイングモータ63は、例えばパルスモータである。
【0055】
スイングモータ63がスイングアーム62を揺動させることにより、ノズル先端部61は回転保持部56に保持された基板Wの上方の処理位置とカップ55よりも外側の待機位置との間で円弧状の軌跡を描いて移動する。ノズル先端部61が処理位置に位置しているときに、処理液ノズル60が回転保持部56に保持された基板Wに薬液を吐出することによって、例えば基板Wの洗浄処理が進行する。また、処理液ノズル60が基板Wに純水を吐出することによって、基板Wの純水リンス処理が進行する。なお、ノズル先端部61の位置を検知するためのエンコーダをスイングモータ63に付設するようにしても良い。
【0056】
一方、スプレーノズル65は、ノズル先端部66、スイングアーム67およびスイングモータ68を備える。スプレーノズル65は、例えば処理液と加圧した気体とを混合して液滴を生成し、その液滴と気体との混合流体を基板Wに噴射する二流体ノズルである。ノズル先端部66は、ほぼ水平方向に延びるスイングアーム67の先端に取り付けられている。ノズル先端部66には、図外の処理液供給源および気体供給源から処理液および加圧気体が供給され、それらはノズル先端部61の内部または外部にて混合されて混合流体を形成する。スイングアーム67はスイングモータ68によって、鉛直方向に沿った揺動軸A2の周りにて水平面内で揺動される。スイングモータ68は、例えばパルスモータである。
【0057】
スイングモータ68がスイングアーム67を揺動させることにより、ノズル先端部66は回転保持部56に保持された基板Wの上方の処理位置とカップ55よりも外側の待機位置との間で円弧状の軌跡を描いて移動する。ノズル先端部66が処理位置に位置しているときに、スプレーノズル65が回転保持部56に保持された基板Wに混合流体を吐出することによって、例えば基板Wの洗浄処理が進行する。なお、ノズル先端部66の位置を検知するためのエンコーダをスイングモータ68に付設するようにしても良い。
【0058】
図3に示すように、処理液ノズル60の回動動作とスプレーノズル65の回動動作とは相互に干渉するおそれがある。すなわち、処理液ノズル60が処理位置に位置しているときに、スプレーノズル65も基板Wの上方に移動すると双方が衝突するおそれがある。このため、処理液ノズル60またはスプレーノズル65のいずれか一方が処理位置に位置しているときには、他方が動作できなくなるようなインターロックが設けられている。
【0059】
基板処理装置40に対して操作等の作業を行う作業者はスマートグラス10を装着する。スマートグラス10は、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)方式のウェアラブル端末の一種である。スマートグラス10は、AR(Augmented Reality:拡張現実)またはMR(Mixed Reality:複合現実)を実現するためのデバイスでもある。スマートグラス10としては、例えば、マイクロソフト社製の「HoloLens」(登録商標)を用いることができる。
【0060】
図5は、スマートグラス10の外観を示す斜視図である。スマートグラス10は、バイザー11およびヘッドバンド12を備える。作業者はヘッドバンド12を頭に付けることによってスマートグラス10を装着する。作業者は、自らの頭の大きさに合わせてヘッドバンド12の長さを調整することが可能とされている。また、ヘッドバンド12には、電源ボタン、明るさボタンおよびボリュームボタン等が設けられている。
【0061】
バイザー11は、各種センサーとディスプレイとを含む。そのディスプレイは、シースルーホログラフィックレンズである。すなわち、ディスプレイはホログラムによって立体映像を作業者の視野空間に表示することが可能であるとともに、通常の眼鏡レンズと同じように現実の物体からの光を透過する。従って、スマートグラス10を装着した作業者は、ディスプレイを通して現実の物体を視認しつつ表示された立体映像を見ることも可能である。
【0062】
バイザー11のセンサーには、例えば主にバイザー11の前方を撮像する複数の可視光カメラ、作業者の視線を追跡する赤外線カメラ、対象物までの距離を測定する深度センサー、および、慣性測定センサー等が含まれる。赤外線カメラは、スマートグラス10の装着者の眼球の動きを測定して視線を追跡する。深度センサーは、例えば、ToF(Time of Flight)方式によって対象物までの距離を測定する。慣性測定センサーは、加速度計、ジャイロスコープ、磁力計等によって構成される。
【0063】
また、スマートグラス10には、CPU、メモリおよび記憶部等を備えたコンピュータが内蔵されている。スマートグラス10には、無線通信機構も設けられており、スマートグラス10のコンピュータはその無線通信機構を使用して情報通信網5に接続する。さらに、スマートグラス10には、マイクロフォン、スピーカーおよびバッテリー等も設けられている。
【0064】
図6は、スマートグラス10、サーバ70、作業支援端末80および基板処理装置40の制御部45の機能的構成を示すブロック図である。スマートグラス10は、撮像部21、通信部22および表示部23を備える。撮像部21は、上述したバイザー11に設けられた可視光カメラを含む。撮像部21は、例えば前方および斜め前方を撮像する4台の可視光カメラを含んでおり、スマートグラス10を装着した作業者の視野範囲を撮像することができる。
【0065】
通信部22は、上述したスマートグラス10の無線通信機構を含む。通信部22は、情報通信網5を介して作業支援端末80およびサーバ70とデータの送受信を行う。また、通信部22は、基板処理装置40の制御部45と直接にデータの送受信を行うことも可能である。
【0066】
表示部23は、上述したバイザー11のディスプレイを含む。表示部23はホログラフィック処理装置を有しており、ホログラム技術によって所定の空間位置に立体映像を表示する。なお、表示部23が表示する立体映像は三次元形状のものに限定されず、ドキュメントのような二次元のものであっても良い。
【0067】
また、スマートグラス10は、検出部31、コマンド作成部32および判定部33を備える。これらの検出部31、コマンド作成部32および判定部33は、スマートグラス10のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって実現される機能処理部である。検出部31、コマンド作成部32および判定部33の処理内容についてはさらに後述する。
【0068】
基板処理装置40の制御部45は、スイングモータ63等の処理ユニット50に設けられた機構の動作を制御する。制御部45は動作確認部49を備える。動作確認部49は、制御部45のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって実現される機能処理部である。動作確認部49の処理内容についても後述する。スマートグラス10と制御部45とは、情報通信網5を介して通信可能であるが、近距離であれば直接無線通信を行うことも可能である。
【0069】
作業支援端末80およびサーバ70は、例えば基板処理装置40を製造してその保守点検を請け負うベンダーの工場内に設置されている。作業支援端末80およびサーバ70は、情報通信網5を介してスマートグラス10と通信可能とされている。また、作業支援端末80とサーバ70とは情報通信網5を介して相互に通信可能とされている。
【0070】
作業支援端末80およびサーバ70は、一般的なコンピュータシステムである。すなわち、作業支援端末80およびサーバ70は、各種演算処理を行う回路であるCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAM、制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく記憶部(例えば、磁気ディスクまたはSSD)および情報通信網5と通信を行う通信部を備えている。
【0071】
作業支援端末80は、例えばベンダー側の作業支援員がクリーンルーム内の作業者の作業を支援するためのコンピュータである。作業支援員は、作業支援端末80からクリーンルーム内の作業者が装着するスマートグラス10に種々の情報を送信することができる。
【0072】
サーバ70は、本発明に係る作業支援システムにおいて、スマートグラス10および作業支援端末80からのリクエストに応じて所定の処理を実行するコンピュータである。サーバ70は、比較的容量の大きな記憶部74を備えている。スマートグラス10および作業支援端末80によって作成された大きなサイズのデータは記憶部74に格納されても良い。なお、サーバ70および作業支援端末80は必須の要素ではない。
【0073】
次に、上述した構成を有する作業支援システムを用いた作業支援方法について説明する。
図7は、本発明に係る作業支援方法の手順を示すフローチャートである。本実施形態においては、作業者が基板処理装置40の処理液ノズル60に対する粗位置調整の教示(ティーチング)を行う。教示を行うに際して、作業者は処理液ノズル60を回動させてノズル先端部61を目標位置にまで移動させる必要がある。
【0074】
まず、スマートグラス10を装着した作業者が教示作業の対象となる基板処理装置40の処理ユニット50内を視認する。そして、作業者が例えばスマートグラス10の検出ボタンを操作することによってスマートグラス10が画像認識を行う(ステップS11)。作業者は、表示部23によって立体映像として表示された仮想の検出ボタンを操作しても良いし、スマートグラス10に実体として設けられた検出ボタンを押下するようにしても良い。検出ボタンの操作に応答してスマートグラス10の撮像部21は、作業者が視認している処理ユニット50の内部を撮像する。スマートグラス10は、撮像画像を解析することによって処理ユニット50に含まれる処理液ノズル60およびスピンチャック57等の装置部位を識別する。画像解析の手法としては、例えば、事前に準備処理として撮像されていた画像と作業時に撮像部21によって撮像された画像とのパターンマッチングを行って処理液ユニット50が備える装置部位を識別するようにすれば良い。或いは、事前に撮像された多数の画像からディープラーニング(深層学習)等の機械学習によって学習済モデルを構築しておき、その学習済モデルを用いて撮像画像から装置部位を識別するようにしても良い。
【0075】
スマートグラス10は、画像認識によって識別された処理ユニット50に含まれる複数の装置部位のリストを表示する(ステップS12)。具体的には、スマートグラス10の表示部23が処理ユニット50に含まれる処理液ノズル60、スプレーノズル65およびスピンチャック57等の装置部位のリストを立体映像として表示する。
【0076】
続いて、作業者が表示されたリストから教示を行う操作対象となる可動部位を選択する(ステップS13)。可動部位とは、基板処理装置40に含まれる装置部位のうち移動動作を行う部位である。作業者は、立体映像として表示されたリストに対して手のジェスチャーによって(より具体的には、指先で触れることによって)操作対象となる可動部位を指定する。撮像部21がその手のジェスチャーを撮像して検知し、スマートグラス10のコンピュータはその検知結果から指定された可動部位が選択されたことを認識する。本実施形態の例では、作業者がリストから処理液ノズル60を選択することによって、スマートグラス10は処理液ノズル60が操作対象となる可動部位であることを認識する。なお、スマートグラス10は視線追跡機能(アイトラッキング機能)を備えているため、作業者は視線によってリストから操作対象となる可動部位を選択するようにしても良い。或いは、スマートグラス10はマイクロフォンも備えているため、作業者は音声入力によって操作対象となる可動部位を選択するようにしても良い。
【0077】
次に、スマートグラス10の表示部23が選択された可動部位の仮想オブジェクトを表示する(ステップS14)。可動部位の仮想オブジェクトとは、表示部23によって表示される当該可動部位の立体映像である。処理ユニット50内に含まれる装置部位については予め3DCADデータおよび表示に必要な情報(例えば、表示する位置および大きさ等)が例えばスマートグラス10の記憶部に格納されており、スマートグラス10はその3DCADデータおよび表示に必要な情報に基づいて可動部位の仮想オブジェクトを表示する。なお、上記の3DCADデータおよび表示に必要な情報のデータ容量が大きい場合には、それらを例えばサーバ70の記憶部74に記憶し、スマートグラス10の要求に応じてサーバ70が情報通信網5を介してスマートグラス10に伝送するようにしても良い。或いは、スマートグラス10が主要な可動部位の3DCADデータを記憶し、それ以外の可動部位の3DCADデータについてはサーバ70がスマートグラス10に伝送するようにしても良い。
【0078】
図8は、仮想オブジェクトの表示例を示す図である。本実施形態においては、ステップS13にて処理液ノズル60が操作対象となる可動部位として選択されている。表示部23は、処理液ノズル60の仮想オブジェクト91を表示する。すなわち、表示部23は、処理液ノズル60と同じ形状の立体映像を表示する。本実施形態では、表示部23は、処理液ノズル60と同じ大きさの仮想オブジェクト91を表示する。また、表示部23は、仮想オブジェクト91を可動部位と重ならない位置、例えば処理液ノズル60の側方(
図8では処理液ノズル60の左側)に表示する。
【0079】
次に、
図8に示すように、表示された仮想オブジェクト91を作業者が手で摘んで移動させる。仮想オブジェクト91は、可動部位の立体映像であって実体として手で掴めるものではないため、作業者は仮想オブジェクト91を手で仮想的に摘んで操作することとなる。作業者が仮想オブジェクト91を手で摘んで操作すると、スマートグラス10の撮像部21がその手の動きを撮像し、表示部23が作業者の手の動きに連動させて仮想オブジェクト91の表示形態を変更する。例えば、作業者が処理液ノズル60の仮想オブジェクト91を手で摘んで揺動するように操作すると、
図8の矢印にて示すように、スマートグラス10は仮想オブジェクト91も揺動するように表示する。
【0080】
本実施形態では処理液ノズル60に対する教示を行う。具体的には、作業者が処理液ノズル60に対して処理時の揺動移動動作を教示する。このため、作業者は、処理時に処理液ノズル60が行うべき揺動移動動作と同じ動きをするように仮想オブジェクト91を移動させる。
【0081】
図9は、基板処理時に処理液ノズル60が行うべき揺動移動動作の一例を示す図である。本実施形態においては、処理液ノズル60は、スピンチャック57に保持された基板Wの中心部上方の処理位置P1とカップ55よりも外側の待機位置P2との間で一定速度で移動するのではなく、途中の変速点P3にて速度を変化させて移動する。具体的には、面積が大きくなる基板Wの周縁部における洗浄処理時間を長くして均一な処理が行えるように、処理位置P1と変速点P3との間の処理液ノズル60の速度よりも変速点P3と待機位置P2との間の処理液ノズル60の速度の方を大きくする。変速点P3は、基板Wの中心部と端縁部との間の適宜の位置の上方に設定される。なお、処理位置P1と変速点P3との間および変速点P3と待機位置P2との間のそれぞれにおいても処理液ノズル60の速度は一定である必要はなく、基板Wの中心から離れるに従って処理液ノズル60の速度が次第に小さくなるようにしても良い。
【0082】
作業者は、上記のような処理液ノズル60の移動動作と同じ動きをするように仮想オブジェクト91を手で摘んで移動させる。すなわち、作業者は、待機位置P2と変速点P3との間よりも変速点P3と処理位置P1との間の方が速度が速くなるように仮想オブジェクト91を移動させる。
【0083】
スマートグラス10は、作業者による仮想オブジェクト91に対する操作を検出して操作情報を取得する(ステップS15)。スマートグラス10の撮像部21が作業者の手の動きを撮像し、検出部31が撮像画像を解析して仮想オブジェクト91がどのように移動したかを検出して操作情報を取得する。操作情報には、仮想オブジェクト91の位置情報、速度情報および加速度情報が含まれる。より具体的には、仮想オブジェクト91の移動の目標位置である処理位置P1および変速点P3の位置情報、処理位置P1と変速点P3との間および変速点P3と待機位置P2との間のそれぞれにおける速度情報、並びに、それら両区間のそれぞれにおける加速度情報が検出部31によって取得される。
【0084】
次に、スマートグラス10の判定部33は、上記取得された操作情報が所定の範囲内に収まっているか否かの判定処理を行う(ステップS16)。操作情報のそれぞれには、操作対象となる可動部位が実際に移動可能な適正範囲が予め設定されて例えばスマートグラス10の記憶部に記憶されている。例えば、処理液ノズル60が実際に移動可能な速度の適正範囲が予め設定されている。判定部33は、操作情報に含まれる位置情報、速度情報および加速度情報のそれぞれが予め設定された適正範囲内に収まっているか否かの判定を行うのである。
【0085】
位置情報、速度情報および加速度情報のうちの少なくとも一つが予め設定された適正範囲から外れているときには、スマートグラス10はエラー表示を行う。具体的には、例えばスマートグラス10の表示部23が赤色のエラーメッセージを立体映像として表示する。エラーが表示されたときには、作業者は仮想オブジェクト91に対する操作をやり直し、スマートグラス10の検出部31が再度操作情報を取得して判定部33が再チェックを行う。このようにすることにより、作業者が仮想オブジェクト91に対して無理な操作をしたとしても、可動部位が実際に無理な移動をすることを未然に防ぐことができる。
【0086】
一方、位置情報、速度情報および加速度情報の全てが適正範囲内であった場合には、スマートグラス10のコマンド作成部32が仮想オブジェクト91に対する操作情報に基づいて仮想オブジェクト91に対応する可動部位に移動動作を行わせるコマンドを作成する(ステップS17)。当該コマンドは、可動部位に対する動作の命令コードを含む動作制御情報である。すなわち、コマンド作成部32は、検出部31によって取得された仮想オブジェクト91に対する操作情報を実体たる可動部位に対する動作制御情報に変換するのである。本実施形態の例では、作業者によって仮想オブジェクト91が移動された通りに処理液ノズル60が移動するコマンドをコマンド作成部32が作成する。上記の例では、変速点P3にて速度が変化するように仮想オブジェクト91が移動されていたため、コマンド作成部32は、変速点P3にて速度が変化するように処理液ノズル60が移動するコマンドを作成する。
【0087】
次に、スマートグラス10は通信部22を介して基板処理装置40の制御部45に作成されたコマンドを送信する(ステップS18)。通信部22は、情報通信網5を介して制御部45と通信を行ってコマンドを送信すれば良い。或いは、通信部22は、制御部45と直接通信を行ってコマンドを送信するようにしても良い。
【0088】
スマートグラス10からのコマンドを受信した基板処理装置40の制御部45は、当該コマンドに基づく可動部位の動作確認を行う(ステップS19)。具体的には、制御部45の動作確認部49がインターロックの確認を行う。本実施形態の例では、例えばスプレーノズル65が処理位置に位置しているような場合は、処理液ノズル60が移動するとスプレーノズル65と干渉するおそれがあるため、インターロックによって処理液ノズル60の移動が禁止される。
【0089】
動作確認部49による動作確認の結果、コマンドに従った処理液ノズル60の動作に干渉等の支障が生じない場合には、制御部45が処理液ノズル60のスイングモータ63に対する動作指令を行う(ステップS20)。制御部45は、スマートグラス10から送信されたコマンドに従って可動部位の動作を制御する。上記の例では、コマンド作成部32が変速点P3にて速度が変化するように処理液ノズル60が移動するコマンドを作成しているため、制御部45はそのように処理液ノズル60が移動するようにスイングモータ63に対する動作指令を行う。
【0090】
動作指令を受けたスイングモータ63は、その動作指令に従って処理液ノズル60のスイングアーム62およびノズル先端部61を移動させる。処理液ノズル60は、待機位置P2と変速点P3との間よりも変速点P3と処理位置P1との間の方が速度が速くなるように移動動作を行う。このような処理液ノズル60の移動動作は、作業者が処理液ノズル60の仮想オブジェクト91を手で摘んで動かした通りの動作である。動作指令に従った処理液ノズル60の一連の移動動作が完了した後、制御部45はスイングモータ63から動作結果応答を受信する(ステップS21)。なお、何からの要因によってスイングモータ63が動作指令に従った動作を実行できなかった場合には、制御部45はエラー結果を受信することとなる。
【0091】
その後、基板処理装置40の制御部45はスマートグラス10にコマンド実行結果を送信する(ステップS22)。スマートグラス10が送信したコマンドの通りに処理液ノズル60の移動動作を実行できた場合には、コマンド完了の実行結果がスマートグラス10に送信される。一方、コマンドの通りに処理液ノズル60の移動動作を実行できなかった場合には、エラーの実行結果がスマートグラス10に送信される。
【0092】
制御部45からのコマンド実行結果を受信したスマートグラス10はそのコマンド実行結果を表示する(ステップS23)。コマンド完了の実行結果が表示されたときには、作業者が仮想オブジェクト91を移動させた通りに処理液ノズル60の移動動作が実行されており、これにより処理液ノズル60に対する目標位置および移動速度等の教示がなされることとなる。エラーの実行結果が表示されたときには、作業者が仮想オブジェクト91を移動させた通りに処理液ノズル60は移動しておらず、作業者はエラー原因を調査して解消する。なお、仮想オブジェクト91を用いた教示は粗位置調整であるため、その後により厳密に処理液ノズル60の目標位置を教示する微調整を行うようにしても良い。
【0093】
本実施形態においては、作業者が基板処理装置40の可動部位に対して操作を行うときに、スマートグラス10が操作対象となる可動部位の立体映像である仮想オブジェクト91を表示している。作業者はその仮想オブジェクト91に対して操作を行う。スマートグラス10は、作業者による仮想オブジェクト91に対する操作を検出して操作情報を取得し、その操作情報に基づいて可動部位に対する動作制御情報を作成する。そして、基板処理装置40の制御部45は、当該動作制御情報に基づいて可動部位の動作を制御している。作業者は可動部位の立体映像である仮想オブジェクト91を手で操作するため、直感的な操作を行うことができる。その一方、作業者は可動部位を直接手で掴んで強引に動かしているのではでないため、可動部位の駆動機構に対して不適切な負荷が作用することもない。すなわち、本実施形態のようにすれば、可動部位に対して不適切な負荷を作用させることなく、可動部位を直感的に操作することができる。
【0094】
また、スマートグラス10は、仮想オブジェクト91を可動部位と重ならない位置に表示している。このため、作業者が仮想オブジェクト91を手で掴んで操作する際に、作業者の手が可動部位に直接接触するのを防止することができる。その結果、作業者による仮想オブジェクト91に対する操作に支障が生じるのを防止できるとともに、可動部位に不適切な負荷が作用するのを確実に防止することができる。
【0095】
また、作業者による仮想オブジェクト91に対する操作を検出して取得された位置情報、速度情報および加速度情報のうちの少なくとも一つが予め設定された適正範囲から外れているときには、スマートグラス10がエラー表示を行う。これにより、作業者が仮想オブジェクト91に対して無理な操作をしたとしても、可動部位に不適切な負荷が作用するのをより確実に防止することができる。
【0096】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においては、スマートグラス10が処理液ノズル60と同じ大きさの仮想オブジェクト91を表示していたが、これに限定されるものではなく、スマートグラス10が表示する仮想オブジェクト91は可動部位より大きくても小さくても良い。スマートグラス10は、作業者による操作性が良好、かつ、処理ユニット50内の実体の装置部位と干渉しない大きさの仮想オブジェクト91を表示するのが好ましい。
【0097】
また、スマートグラス10は、作業者にとって好ましい表示方向となるように、仮想オブジェクト91を表示するようにしても良い。例えば、作業者にとって処理液ノズル60の仮想オブジェクト91の後側から操作するのが好ましければ、スマートグラス10は仮想オブジェクト91の表示方向を180°反転させるようにしても良い。要するに、スマートグラス10は、可動部位の仮想オブジェクト91の大きさおよび表示方向を可変に表示するようにしても良い。
【0098】
また、スマートグラス10は、仮想オブジェクト91を表示するのに併せて、その仮想オブジェクト91に対応する可動部位を強調表示するようにしても良い。例えば、スマートグラス10が処理液ノズル60の仮想オブジェクト91を表示するときには、スマートグラス10は処理液ノズル60を強調表示するようにしても良い。強調表示の手法としては、例えばスマートグラス10の表示部23が仮想オブジェクト91に対応する可動部位の領域を仮想的に着色表示する、ハイライト表示する、または、当該可動部位の近傍に矢印を表示する等すれば良い。このようにすれば、作業者が操作対象としている可動部位を容易に認識することができる。
【0099】
また、上記実施形態においては、スマートグラス10が仮想オブジェクト91に対する操作情報に基づいて可動部位に移動動作を行わせるコマンドを作成していたが、これに変えて、サーバ70または作業支援端末80がコマンドを作成するようにしても良い。コマンド作成に要する演算の負荷が大きい場合には、サーバ70または作業支援端末80にてコマンドを作成するのが好ましい。
【0100】
また、上記実施形態においては、教示に際して処理液ノズル60が変速移動を行っていたが、処理液ノズル60が待機位置P2から処理位置P1まで一定速度で移動するものであっても良い。この場合、作業者は、待機位置P2から処理位置P1まで一定速度で仮想オブジェクト91を移動させる。等速移動の場合は、操作情報のうち位置情報が最も重要となる。
【0101】
また、上記実施形態においては、作業者はスマートグラス10を使用していたが、これに限定されるものではなく、スマートグラス10に代えてタブレット端末やスマートフォン等の携帯端末を用いるようにしても良い。すなわち、撮像部および通信部を備えた携帯端末であれば良い。もっとも、タブレット端末等を使用するとそれを持つ作業者の手が塞がることになるため、スマートグラス10等のウェアラブル端末を用いるのが好ましい。
【0102】
また、基板処理装置40は基板洗浄装置に限定されるものではなく、熱処理装置、露光装置、塗布現像装置、計測装置または検査装置等の基板に所定の処理を行う装置であれば良い。基板処理装置40が基板洗浄装置である場合には、基板を1枚ずつ洗浄する枚葉式の洗浄装置であっても良いし、複数の基板を一括して洗浄するバッチ式の洗浄装置であっても良い。
【0103】
さらに、本発明に係る作業支援技術の対象となるのは、基板処理装置に限定されるものではなく、何らかの移動動作を行う可動部位を備えた産業機器であれば良い。このような産業機器としては、例えば、印刷処理装置、成膜装置、医療用装置、および、外観検査装置等が例示される。
【符号の説明】
【0104】
5 情報通信網
10 スマートグラス
21 撮像部
22 通信部
23 表示部
31 検出部
32 コマンド作成部
33 判定部
40 基板処理装置
45 制御部
49 動作確認部
50 処理ユニット
56 回転保持部
57 スピンチャック
60 処理液ノズル
63 スイングモータ
65 スプレーノズル
70 サーバ
74 記憶部
80 作業支援端末
91 仮想オブジェクト
W 基板