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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108285
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】流量制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/18 20060101AFI20240805BHJP
   A61M 5/168 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
F16K31/18 C
A61M5/168 502
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012573
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】518212241
【氏名又は名称】公立大学法人公立諏訪東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100127661
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 一彦
(72)【発明者】
【氏名】橋元 伸晃
【テーマコード(参考)】
3H068
4C066
【Fターム(参考)】
3H068AA02
3H068CC08
3H068DD02
3H068GG20
4C066BB01
4C066CC01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡易な構成でありながらも生体に注入する流体の流量を略一定に保つことができる流量制御装置を提供する。
【解決手段】流量制御装置1は、流体供給口12から供給された流体FLが流体排出口14から排出される流量調整用チャンバー10と、比重が流体FLの比重よりも小さく設定され、流体供給口12から流入する流体FLの動圧を受ける流体受面23を有するフロート20と、を備える。フロート20の外表面22と流量調整用チャンバー10の内表面18とで挟まれた間隙によって流体FLの流路30が形成され、(D+mg)>Bの場合にフロート20が下降して間隙GWが狭まり、(D+mg)<Bの場合にフロート20が上昇して間隙GWが広がるよう構成された流量規制部33が流路30の一部において設けられている。但し、流体受面23における流体FLの流れによる抗力をD、フロート20の質量をm、フロート20の浮力をBとする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然落下で流体を生体に注入する際の該流体の流量を制御する流量制御装置であって、
上方に流体供給口が設けられると共に下方に流体排出口が設けられ、前記流体供給口から供給された前記流体が内部空間を通って前記流体排出口から排出されるよう構成された流量調整用チャンバーと
全体としての比重が前記流体の比重よりも小さく設定されており、前記流量調整用チャンバーの内部に配置され、前記流体供給口から流入する前記流体の動圧を受ける流体受面を有するフロートと、を備え、
前記フロートの外表面と前記流量調整用チャンバーの内表面とで挟まれた間隙によって前記流体の流路が形成されており、
前記流体受面における前記流体の流れによる抗力をDとし、前記フロートの質量をmとし、重力加速度をgとし、前記フロートの浮力をBとしたとき、
(D+mg)>Bの場合に前記フロートが下降して前記間隙が狭まり、(D+mg)<Bの場合に前記フロートが上昇して前記間隙が広がるよう構成された流量規制部が前記流路の一部において設けられている、
ことを特徴とする流量制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流量制御装置において、
前記流量規制部は、前記フロートの重心よりも下側の位置に位置していることを特徴とする流量制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の流量制御装置において、
前記流量規制部における前記間隙の寸法を所定値以上確保する間隙確保手段を更に備えたことを特徴とする流量制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の流量制御装置において、
前記間隙確保手段は、前記フロートの前記外表面及び前記流量調整用チャンバーの前記内表面の間に配置されたスペーサ若しくは雄ねじ先端部、又は、前記フロートの前記外表面若しくは前記流量調整用チャンバーの前記内表面に設けられた突起で構成されていることを特徴とする流量制御装置。
【請求項5】
請求項3に記載の流量制御装置において、
前記間隙確保手段は、前記流量規制部で確保すべき前記間隙の寸法を、当該流量制御装置の外部から変更可能に構成されていることを特徴とする流量制御装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の流量制御装置において、
前記フロートに気泡が内包している流量制御装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の流量制御装置において、
前記フロートはフロート本体に対し重りを付加して構成されている流量制御装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の流量制御装置において、
センシング光を発する発光部と、前記センシング光を入射し前記フロートの上下位置に応じて前記センシング光の通過量が可変する導光路と、前記導光路からみて前記発光部の反対側に配置された受光部と、前記受光部で受ける光の量に応じて前記流体の流量を検出する流量検出部と、を更に具備したことを特徴とする流量制御装置。
【請求項9】
請求項8に記載の流量制御装置において、
前記発光部の発光波長近傍における吸光度について比較したときに、前記フロートのうち前記導光路内に配置されるべきフロート位置指示部の吸光度が、前記流体の吸光度よりも大きいことを特徴とする流量制御装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会が進むにつれ、いわゆる在宅医療が増加するものと見込まれている。在宅医療では各種輸液が行われることも多い。薬液については、訪問診療・訪問看護の場面で医療従事者によって投与されることが多いが、その見守りは患者以外の家族によって行われることが多く、また、栄養剤、脂肪製剤等については、通常、患者以外の家族によって経口、胃瘻等の方法で投与が行われている。
【0003】
一般に、輸液されるべき流体の流量は可能な限り一定に保ち続けることが望ましい。
現状の輸液セットは、自然落下型の点滴では、点滴ルートの途中に置かれたローラークレンメ(クランプ、鉗子)でチャンバー(点滴筒)の落下具合を見ながら流量を調節されることが多い。また、シリンジポンプによる点滴では、注入速度を指定することが多い。
仮に注入速度が速すぎると、薬剤によっては、尿量の増加、動悸などが起こり、また、注入速度が速いことにより呼吸・循環器への負荷が増すと呼吸困難、浮腫、血圧低下等の心不全症状をひき起こす場合もある。反対に注入速度が遅すぎると、必要量に達するまで口渇(こうかつ)、尿量の減少、発熱、意識レベルの低下といった脱水症状を起こすこともある。
【0004】
このため、注入開始時には、一定速度で点滴が行われるように、クレンメやポンプ注入速度設定を適宜操作して注入速度を調節する。ところが、点滴の途中で、患者の体動などにより点滴の針先が血管壁に当たる等の理由で点滴が落ちにくく(流れにくく)なってしまったり、針が血管から抜ける等の理由で流体がリークしたりして、流量制御や流量検出ができなくなったりする場合がある。シリンジポンプの場合、流量管理はポンプ自身の回転数を検出して行われるが、万が一シリンジポンプからシリンジが外れてしまった時に、その急激な変化(落差)により患者に薬液が急速に注入される「サイフォニング現象」が起き、そのシリンジポンプで管理している薬剤が少量であっても、大事故につながる恐れがある。さらに、胃ろう等で行われる輸液に関しても、例えば流体が多く流れ過ぎてしまい食道や胃の内容物が逆流するなど、流体が流通する中途でチューブが抜けてしまって所期の輸液が実現できないことがある。こうした事態になると患者のQOL(Quality Of Life)は著しく低下するなど、時には患者の命を危険にさらす場合がある。家族もこうした事態を招かないよう注意を払うが、医療従事者ではないので、現状、その監視負担は大きなものとなっている。
【0005】
在宅に限らず医療機関(病院内)の医療現場においても薬液等の流量変化の課題がある。例えば、点滴においては、ベッドに臥す、ベッドで上体を起こす、椅子に座る、立ち上がるなどのように患者の姿勢が変わると、注射針の高さと薬液袋の液面の高さとの高低差hが変化し、これに伴い薬液の流量も変化する。また、点滴開始当初は薬液袋に入っている薬液の体積が大きいため気泡除去用チャンバー入口での水圧は比較的大きいものの、点滴終了に近づくと薬液袋に残留している薬液が少なくなって気泡除去用チャンバー入口の水圧も減少し、これに伴い薬液の流量も減少する。シリンジポンプのサイフォニング現象は院内でも同様の問題が起こりうる。
【0006】
このような流量の変化に対しては、通常、投与初期にローラークレンメを使って手動で調整している。自動で高精度に流量制御を行いたい場合には輸液ポンプが用いられる。しかし、輸液ポンプは大掛かりな装置であり比較的高価であるため、これを全ての患者に対して適用することは現実的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10-184979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
流体の流量を制御する装置として、例えば特許文献1に記載された流量制御装置も提案されている。しかしながら、特許文献1に記載された流量制御装置は、粉粒体を空気(流体)に載せて輸送する際の流量制御を扱うものであり、生体に注入する薬液等の流体を扱うものではない。
【0009】
本発明は上記した事情に鑑みてなされたものであり、簡易な構成でありながらも生体に注入する流体の流量を略一定に保つことができる流量制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、自然落下で流体を生体に注入する際の該流体の流量を制御する流量制御装置が提供される。
流体制御装置は、上方に流体供給口が設けられると共に下方に流体排出口が設けられ、流体供給口から供給された流体が内部空間を通って流体排出口から排出されるよう構成された流量調整用チャンバーと、全体としての比重が流体の比重よりも小さく設定されており、流量調整用チャンバーの内部に配置され、流体供給口から流入する流体の動圧を受ける流体受面を有するフロートと、を備える。
流体制御装置においては、フロートの外表面(外側の輪郭)と流量調整用チャンバーの内表面(内側の輪郭・内壁)とで挟まれた間隙によって流体の流路が形成されている。流体受面における流体の流れによる抗力をDとし、フロートの質量をmとし、重力加速度をgとし、フロートの浮力をBとしたとき、(D+mg)>Bの場合にフロートが下降して上記間隙が狭まり、(D+mg)<Bの場合にフロートが上昇して上記間隙が広がるよう構成された流量規制部が流路の一部において設けられている。
【0011】
本発明の流量制御装置によれば、簡易な構成でありながらも生体に注入する流体の流量を略一定に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1に係る流量制御装置1を説明するために示す断面図である。
図2】実施形態1のフロートのバリエーションを示す断面図である。
図3】実施形態1のフロートの別のバリエーションを示す断面図である。
図4】フロート20に掛かる力のつり合いを説明するために示す図である。
図5】実施形態2に係る流量制御装置2を説明するために示す断面図である。
図6】実施形態3に係る第1態様の流量制御装置3を説明するために示す断面図である。
図7】実施形態3に係る第2態様の流量制御装置3’を説明するために示す断面図である。
図8】実施形態4に係る流量制御装置4を説明するために示す断面図である。
図9】実施形態5に係る流量制御装置5を説明するために示す断面図である。
図10】各実施形態に係る流量制御装置1,2,3,4,5を使った応用例を説明するために示す模式図である。
図11】変形例に係る流量制御装置6,7を説明するために示す断面図である。
図12】変形例に係る流量制御装置8,9を説明するために示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の詳細について図を参照しながら説明する。なお、各図に共通する符号については、当該符号について既に説明した内容を他の図の説明においても援用できることから、後出の図における説明を省略する。本明細書において「下」というのは物体に対し重力加速度gが働く方向を指し、「上」というのは「下」と反対の方向を指す。「上方」,「下方」,「上昇」,「下降」についても上記定義に従った意義をなすものとする。
【0014】
[実施形態1]
1.実施形態1に係る流量制御装置1の構成
図1は実施形態1に係る流量制御装置1を説明するために示す断面図である。図1(a)は、目標値付近の流量で流体FLが流量調整用チャンバー10内に流入しているときの様子を模式的に示した図である。図において、符号FLで示した矢印の方向は流体FLが進行する方向を示す。図1(b)は、流体FLの流量Qinが急激に増加し目標値を上回ったときの様子を示した図である。図1(c)は、流体FLが急激に減少し目標値を下回ったときの様子を示した図である。図2及び図3は後述するフロートのバリエーション(フロート20’,フロート20’’)を示す断面図である。図3(a)は、図1に対応する図面であり、図3(b)で示すE-E線で切断したときの断面図である。図3(b)は、図3(a)で示すA-A線で切断したときの断面図である。
【0015】
流量制御装置1は、自然落下で流体を生体に注入する際の該流体の流量を制御する装置である。流量制御装置1は、例えば、吊下げた薬液袋から自然落下で薬液を患者に点滴する場面や、吊下げたバッグから自然落下で栄養剤を患者の胃に注入する(胃瘻)場面などに使用することができる。具体的な応用例については図10を参照しながら後述する。
【0016】
ここでの「生体」には、ヒト、ヒト以外の生体全般等が含まれる。
ここでの「流体FL」は、おおよそ流動性があり、重力加速度gの影響を受けてチューブ110や流量調整用チャンバー10(後述)の内部で自然に落下するようにして流動可能な物体をいうものとする。流体FLとしては例えば薬液FLa、流動性の栄養剤、生理食塩水、水等を挙げることができる。ここでの「自然落下」は、重力に基づく自然落下をいうものとする。
【0017】
図1に示すように、流量制御装置1は、流量調整用チャンバー10とフロート20とを備えている。
【0018】
(1)流量調整用チャンバー10
流量調整用チャンバー10は、流体FLが流れる内部空間16を具備した部屋である。
流量調整用チャンバー10は、上方に流体供給口12が設けられると共に下方に流体排出口14が設けられている。流量調整用チャンバー10は、流体供給口12から供給された流体FLが内部空間16を通って流体排出口14から排出されるよう構成されている。
【0019】
流量調整用チャンバー10は、例えば透光性のある樹脂でなるチャンバー用部材19で構成することができる。チャンバー用部材19には内表面18に囲まれた内部空間16が形成されており、内部空間16には少なくともフロート20が収容可能となっている。
【0020】
図1の例では、流量調整用チャンバー10(単に「チャンバー」ということがある)を重力方向に垂直な平面で断面視すると、上下方向の中程の位置ではフロート20の最大幅よりも広い空洞となっており、上下方向の下側の位置ではフロート20の最大幅よりも狭い空洞となっている。チャンバーの中程の位置から下側にかけては略じょうご(漏斗)状をなしている。これを重力方向に平行な平面で断面視すると、チャンバーの内表面18は中程の位置から下側の位置にかけて徐々に減少する形状をなしている(図1の例ではテーパー状)。この時、図1のようなフロート20上方の流路にある逆テーパー構造は必ずしも必要ではなく、流量制御に必要なフロート20下方のじょうご(漏斗)部からフロートが離れすぎないような凸部を形成してもよく、フロート20が上下する内表面18の径はフロート入り口のチューブ110と同径であってもよい。
内表面18をこのように形成することで、フロート20の上下動に伴って、内表面18とフロート20の外表面22との間の間隙の幅GW(ここでのGWは、注目する瞬間において最も狭い部分の間隙の幅を指す)が変動するようになっている。
チャンバーの内表面18の最も下側は流体排出口14に繋がっている。更に、流体排出口14はチャンバー用部材19の外部への開口に繋がっており、該外部への下開口にはチューブ110を接続することができる。
【0021】
一方、流量調整用チャンバー10の中程の位置から上側の位置にかけてみると、内表面18の幅はフロート20の最大幅と同じか、該最大幅より若干狭い幅の空洞となっている。図1の例では、重力方向に平行な平面でチャンバーを断面視すると、チャンバーの内表面18は中程の位置から上側の位置にかけて円弧状をなしており、フロート20とのクリアランスが十分確保できるようになっている。
チャンバーの内表面18の最も上側は流体供給口12に繋がっている。更に、流体供給口12はチャンバー用部材19の外部への開口に繋がっており、該外部への開口にはチューブ110を接続することができる。
【0022】
(2)フロート20
(2-1)フロート20の属性・構造
フロート20は、全体としての比重が流体FLの比重よりも小さく設定された浮遊用の物体である。実施形態1において、フロート20は気泡BBを内包している。具体的には、フロート20に空洞25が形成されており、該空洞25の中に気体(空気など)が封入されている。空洞25を形成する部材を弾性変形可能な樹脂等で構成し、空洞25への気体の封入量を調整することにより、フロート20全体の体積の大きさを微調整することができる。こうすることで浮力Bを調整することも可能である。
【0023】
フロート20は、流量調整用チャンバー10の内部に配置されている。
フロート20の形状は、流量調整用チャンバー10の内形状(内表面18の輪郭)に適した形状をなしており、実施形態1の作用・効果を奏するものであれば如何なる形状であってもよい。逆に、流量調整用チャンバー10の空洞の形状(内表面18の輪郭)は、フロート20の外形状(外表面22の輪郭)に適した形状をなしており、実施形態1の作用・効果を奏するものであれば如何なる形状であってもよい。図1の例では、フロート20は、略球体をなしている。
【0024】
フロート20は、流体供給口12から流入する流体FLの動圧を受ける流体受面23を有する。流体受面23とは、流体FLの流れを受け止めて抗力D(後述する)を生ぜしめる面をいうものとする。通常、流体受面23は流体供給口12の直下に位置する。流体受面23は、流れを受け止めるための何か特別に準備された面であってもよいし、フロート20のオリジナルな形状の上部分を流体受面23として兼用してもよい。図1の例では、略球状のフロート20の上部分が流体受面23をなしている。
【0025】
なお、図2に示すように、フロートの下側又は/及び上側に軸部材26a,26bを配設してもよい(フロート20’)。こうすることでフロート20’が液流によって下方に動かされた際には、軸部材26aが流体排出口14付近の内壁に案内されながらフロート20’が上下軸AXに沿って動くため、フロート20’が左右にブレることを抑制し液流を安定させることができる。また、フロート20’が上方に動かされた際には、軸部材20bが流体供給口12付近の内壁に案内されるので上記と同様の理由で液流を安定させることができる。
【0026】
また、図3に示すように、フロートの側面に凸部22cを設ける一方で、チャンバー10’’の内表面18において、前記凸部22cの形状に倣った形状で上下軸AXに沿って延びる凹部18cを設け、フロート20’’の凸部22cがチャンバー10’’の凹部18cに案内されるようにしてフロート20’’が動くように構成してもよい(フロート20’’)。こうすることで、フロート20’’が上方又は下方に動かされた際、上記図2の場合と同様にフロート20’’が左右にブレることを抑制し液流を安定させることができる。
【0027】
(2-2)フロート20に掛かる力のつり合い
フロート20に掛かる力のつり合いについて図1及び図4を参照しながら説明する。
図1に戻り、フロート20の内部に描かれた黒丸(符号G)はフロート20の重心を示している。重心Gから下に延びた太矢印はフロート20に対し下方向に働く力を示し、符号Gから上に延びた太矢印はフロート20に対し上方向に働く力を示している(以下の図面においても同様)。フロート20の上方向に働く力は浮力Bからなり、下方向に働く力は、抗力Dとフロート20の重力mgとの和からなる。ここで、フロート20の浮力をBとし、流体受面23における流体FLの流れによる抗力をDとし、フロート20の質量をmとし、重力加速度をgとする。
【0028】
図4(a)は、流動していない流体FL(液体)においてフロート20を浮かべたときを示した図である。図4(a)に示すように、フロート20の下側の一部は流体FL中に潜り込み、その他の上側は流体FLの液面から上方に露出している。
このとき、フロート20に掛かる力のつり合いは一般に次式で表される。
浮力B=フロートの重力mg
つまり、ρVg=ρg ・・・(1)
但し、フロート20は略球体をなしており、流体FLとして水が使われているものとし、ρ:流体FLの密度[kg/m3]、V:流体FL(水)中にある球(フロート20)の体積[m3]、ρ:球の密度[kg/m3]、V:球の体積[m3]とする。図において、r:球の半径[m]、h:球のうち液体に沈んでいる部分の高さ[m]、c:球を液面で切断したときの切断面における円の半径[m]を示す。
【0029】
(1)式に基づいてフロート20の密度ρを求めると次のようになる。
【数1】
【0030】
図4(b)は、径が一定の管の中を上から下に一定の流量Qで流体FLが流動しており、流体FLの中で球(フロート20)が力のつり合いを保って静止している状態を示した図である。この状態のとき球(フロート20)に掛かる力のつり合いは一般に次式で表される。
浮力B’=フロートの重力mg+抗力D
つまり、 ρVg=ρg+D ・・・(3)

抗力Dは一般に次の式で表される。
D=(1/2)・CρUS ・・・(4)
但し、C:抗力係数、ρ:流体FLの密度[kg/m3]、U:流体FLの流速[m/S2]、S:球の代表面積[m2]とする。
【0031】
ここで、抗力Dの大きさが、流体FLが流動していないときの球(フロート20)が水面より上で浮いていた部分(体積V[m3])の重力と同じ大きさであれば、球(フロート20)は流体FL中で静止するため、このことから次の関係式が導き出せる。
ρVg=D ・・・(5)
つまり、
【数2】

S=(1/4)πR、C=0.47から、流速Uを求めると次のようになる。
【数3】
【数4】
【0032】
(3)流路30と流量規制部33
フロート20の外表面22(外側の輪郭)と流量調整用チャンバー10の内表面18(内側の輪郭・内壁)とで挟まれた間隙によって流体FLの流路30が形成されている。
具体的には、チャンバーの上側では、流体供給口12を起点に、フロート20の流体受面23周辺を含むフロート20の外表面22とチャンバーの内表面18とで挟まれた間隙が流路30をなし、チャンバーの中程から下側にかけては、フロート20の下側の外表面22とチャンバーの内表面18とで挟まれた間隙及びかかる間隙から流体排出口14に至る部分が流路30をなしている。
【0033】
流路30の一部においては、流量規制部33が設けられている。流量規制部33は、流路30の幅(間隙)を絞るようにして流体FLの流れを規制し、流体FLの流量をコントロールする部分である。具体的には、流量規制部33は、流路30の一部に対応する部位で、フロート20の重心Gよりも下側の位置に位置し、フロート20の下側の外表面22とチャンバーの内表面18とで挟まれた間隙GWの部分である。流量規制部33は、フロートの重心よりも下側の位置に位置している。
【0034】
なお、図において示されている「流量規制部33による間隙GW」は、チャンバーの内表面18とフロート20の外表面22との間で最も狭窄している部分における間隔を指すものとする。「流量規制部33による間隙GW」が定義される流量調整用チャンバー10からみた相対的な位置は、フロート20が上下することによって変動しうる。
【0035】
流量規制部33は、(D+mg)>Bの場合にフロート20が下降して間隙GWが狭まり、(D+mg)<Bの場合にフロート20が上昇して間隙GWが広がるよう構成されている。
【0036】
これにより、流体FLの流量Qが目標値付近の略一定な量となるよう制御することができる。「流量Q」は、単位時間当たりに流体FLが流れる量(体積)をいうものとする。本実施形態においては、流体供給口12からチャンバーに流れ込む流量Qin及び流体排出口14から排出される流量Qoutについて議論可能であるが、実施形態1に係る流量制御装置1は、少なくとも流体排出口14から排出される流量Qoutについて目標値付近の略一定な量となるよう制御される(詳細は作用・効果の欄を参照)。
【0037】
2.実施形態1に係る流量制御装置1の作用・効果
実施形態1に係る流量制御装置1は、フロートの外表面と流量調整用チャンバーの内表面とで挟まれた間隙によって流体の流路が形成されおり、(D+mg)>Bの場合にフロートが下降して前記間隙が狭まり、(D+mg)<Bの場合に前記フロートが上昇して前記間隙が広がるよう構成された流量規制部が設けられている。
【0038】
このため、図1(b)のように、仮に流体供給口12から流入する流量Qinが急激に増加したとすると、流体受面23付近の流速が大きくなって流体受面23が受ける動圧が増加し、これに伴い流体受面23における抗力Dも増加する。そして所定の条件を満たすと、下方に働く力(D+mg)が上方に働く力(浮力B)よりも大きくなりフロート20が下降する。そうすると、流量規制部33におけるフロート20の外表面22が流量調整用チャンバー10の内表面18に接近して上記間隙GWが小さくなり、流体FLの流路30が絞られる。
しかるに、流体排出口14から排出される流体FLの流量Qoutが絞られる方向(抑えられる方向)に作用することとなる。したがって、流入側の流量Qinが急激に増加したために排出側の流量Qoutが瞬間的に増加したとしても、これに呼応した上記作用によって排出側の流量Qoutが絞られる方向に戻され、流量Qoutを目標値付近の略一定な量に制御することができる。
【0039】
逆に、図1(c)のように、流体供給口12から流入する流量Qinが急激に減少したとすると、流体受面23付近の流速が小さくなって流体受面23が受ける動圧が減少し、これに伴い流体受面23における抗力Dも減少する。そして所定の条件を満たすと、下方に働く力(D+mg)が上方に働く力(浮力B)よりも小さくなりフロート20が上昇する。そうすると、流量規制部33におけるフロート20の外表面22が流量調整用チャンバー10の下側の内表面18から離れていき上記間隙GWも大きくなり、流れの規制が緩和され流体FLが流れやすくなる。しかるに、排出側の流量Qoutが増加しやすい方向に作用することとなる。したがって、流入側の流量Qinが急激に減少したために排出側の流量Qoutが瞬間的に減少したとしても、これに呼応した上記作用によって排出側の流量Qoutを回復する(戻す)方向に制御され、流量Qoutを目標値付近の略一定な量に制御することができる。
【0040】
参考までに、目標値付近の流量で流体が流れているときには、下方に働く力(流体受面における抗力D+フロートの重力mg)と上方に働く力(浮力B)とがほぼ均衡しており、フロートの上下方向の大きな動きは見られない。
【0041】
以上より、実施形態1に係る流量制御装置1によれば、簡易な構成でありながらも生体に注入する流体の流量を略一定に保つことができる。
【0042】
また、流量制御装置1はフロート20に内包させる気泡BBの量によって浮力Bを簡単に設定できるので、容易に目標とする流量Qoutの設定を行うことが可能である。
さらに、流体FLの種類によってもその密度は異なるが、これに対応して浮力Bも変わってくる。所望の流量Qoutを得るために、流体FLの種類の変更に応じてフロートの気泡BBの量を適宜に調整することも可能である。
【0043】
[実施形態2]
図5は、実施形態2に係る流量制御装置2を説明するために示す断面図である。実施形態2に係る流量制御装置2は、基本的には実施形態1に係る流量制御装置1と同様の構成を有するが、フロートの構成において実施形態1に係る流量制御装置1とは異なる。
【0044】
図5に示すように、実施形態2に係る流量制御装置2において、フロート20はフロート本体21に対し重り27を付加して構成されている。図の例では、重り27はフロート本体21の上側に付設され、フロート本体21と一体になってフロート20を構成している。重り27の形状は如何なる形状であってもよく、図のような断面が略矩形のものであってもよいし、フロート本体21の外輪郭の形状に倣った形状であってもよいし、後述する実施形態4のガイド棒28を重り27として兼用してもよい。重り27の部材は適宜のものを採用可能である。また、重り27を付設する位置も適宜に設定可能である。
【0045】
実施形態2のフロート20はフロート本体21に対し重り27を付加して構成するものである。このため、重り27の重さを適宜に設定することによりフロート20全体の質量mを適宜に変更することができ、フロート20全体に働く重力mgを変更することができる。
流量Qの目標値を変更したい場合には、流量制御装置の外側の操作(薬液袋の高さを変える等)により流量Qinも全体的に底上げ/底下げされるものと考えられる。このとき、流量Qの目標値に合わせて、フロート20が上方向に受ける力Bと下方向に受ける力(D+mg)とのバランスを調整する場合がある。そうした場合においても、重り27の質量を調整することでフロート20全体の質量mを調整することができるため、所期のバランス調整を容易に行うことができる。
また、流体FLの種類の変更(流体FLの密度が変わる)に応じて、重り27の重量を調節することで、上記したフロート20が上方向に受ける力Bと下方向に受ける力(D+mg)とのバランス調整を容易に行うことができる。
【0046】
実施形態2に係る流量制御装置2は、実施形態1に係る流量制御装置1と基本的に同様の構成を有する。そのため、流量制御装置2は流量制御装置1が有する効果のうち該当する効果を同様に有する。
【0047】
[実施形態3]
図6は、実施形態3に係る第1態様の流量制御装置3を説明するために示す断面図である。図6(a)~図6(c)は、図1(a)~図1(c)で示した状態にそれぞれ対応する図である。図7は、実施形態3に係る第2態様の流量制御装置3’を説明するために示す断面図である。
【0048】
実施形態3に係る流量制御装置3,3’は、基本的には実施形態2に係る流量制御装置2と同様の構成を有するが、間隙確保手段40を更に備えた点において実施形態2に係る流量制御装置2とは異なる。図6図7に示すように、実施形態3に係る流量制御装置3,3においては流量規制部33における間隙GWの寸法を所定値以上確保する間隙確保手段40を更に備えている。
【0049】
(1)第1態様の流量制御装置3では、図6(a)に示すように、間隙確保手段40は、流量調整用チャンバー10の内表面18に設けられた突起46aで構成されている。突起46は、フロート20が下降する際にストッパー(度当たり)となる位置に配置されている。
【0050】
参考までに、図6は断面図であるため、図6(b)では流量規制部33付近で突起46aにより流路30が閉塞しているように見えるが、実際には突起46aは重力方向に沿って視ると内表面18の特定の角度の場所において設けられており(突起46aを複数個所に配設することは可能)、突起46aが設けられていない場所においては、間隙GWを有しており閉塞していない。
【0051】
流量制御装置3では突起46aが設けられているため、例えばフロート20が下方向の大きな力を受けて下降を始めたとしても、フロート20は一定程度下降した位置で突起46aに当接して下降を阻止し、それより先に下降することはない。
したがって、何等かの原因でフロート20が急激に下降を始めたとしても、流量規制部33における間隙も最低限の間隙GWmin《図6(b)参照》が確保されることとなり、最低限の流量Qoutが保証されることとなる。特に、医療の内容によっては、流量Qoutを完全に0にすることが許されない薬液投与なども場合によってはあるため、そのような医療現場においても、最低限の流量Qoutが保証される実施形態3に係る流量制御装置3(及び3’)は好適に採用することができる。
【0052】
なお、図6において、チャンバーの上側の内表面18にも内表面18から突出した突起48が設けられている。突起48は、上記した突起46aとは逆に、フロート20が急激に上昇を始めた場合に、フロート20の上昇を一定程度の位置で阻止するストッパーの役割を持っている。流量制御装置3は、突起48が設けられているため、流体FLの流入口(流体供給口12)付近の流路30の閉塞を防止すると共に、フロート20下側の流量規制部33における間隙GWが一定程度以上大きくならない《図6(c)参照》。
【0053】
(2)第2態様の流量制御装置3’では、図7に示すように、間隙確保手段40は、フロート20の外表面22及び流量調整用チャンバー10の内表面18の間に配置された雄ねじ44の雄ねじ先端部44aで構成されている。このような構成となっているため、フロート20が急激に下降した場合に、第1態様による突起46aと同様、雄ねじ先端部44aがフロート20の外表面22に当接して下降を阻止し、これにより、流量規制部33において最低限の間隙GWminを確保することができる。
参考までに、流量制御装置3’においても、上記した流量制御装置3(図6)の突起46aの例と同様に、雄ねじ44が設けられていない場所においては間隙GWを有しており閉塞していない。
【0054】
また、流量制御装置3’において、雄ねじ44は、チャンバー用部材19に形成された雌ねじ19aと螺合するようにして固定されている。雄ねじ44を回転することで雄ねじ先端部44aの位置を調節することができ、これにより流量規制部33における最低限の間隙GWminも外部から容易に設定変更することができる。つまり、間隙確保手段40は、流量規制部33で確保すべき間隙の寸法GWminを当該流量制御装置3’の外部から変更可能に構成されている、と言うこともできる。
【0055】
なお、ここでは重り27を有する実施形態2に係る流量制御装置2をベースに実施形態3を説明したが、重り27が無い実施形態1に係る流量制御装置1に対して間隙確保手段40を適用してもよい。
また、実施形態3に係る流量制御装置3,3’は、実施形態1に係る流量制御装置1及び実施形態2に係る流量制御装置2と基本的に同様の構成を有する。そのため、流量制御装置3,3’は流量制御装置1,流量制御装置2が有する効果のうち該当する効果を同様に有する。
【0056】
[実施形態4]
図8は、実施形態4に係る流量制御装置4を説明するために示す断面図である。図8(a)は、図1(a)に対応する図で、目標値付近の流量で流体FLが流量調整用チャンバー10内に流入しているときの様子を示した図である。図8(b)は、図1(b)に対応する図で、フロート20が下降したときの様子を示した図である。
【0057】
実施形態4に係る流量制御装置4は、基本的には実施形態2に係る流量制御装置2と同様の構成を有するが、フロート本体21にガイド棒28を備えた点において実施形態2に係る流量制御装置2とは異なる。図8に示すように、実施形態4に係る流量制御装置4のフロート20は、フロート本体21の下部にガイド棒28が付設されている。
【0058】
また、ガイド棒28の外径は流体排出口14の開口径よりも小さくなっている。このため、フロート20が下降する際には、ガイド棒28が流体排出口14やその先に続く流路の内壁に案内されて、フロート20は概略真っ直ぐに移動することになる。また、フロート20が上昇する場合も同様の案内により概略真っ直ぐに上昇することになる。
フロート20の上下位置を維持する場合においても、仮にフロート20が左右にブレる力を受けたとしても、或いは姿勢が変わるような力を受けたとしても、ガイド棒28によりフロート20は大きく左右移動や姿勢変更をすることもない。
【0059】
一般にフロート20が左右の移動や回動などによって動きがあると、これに伴い流量規制部33における間隙GWの大きさに影響を及ぼし、この間隙GWの変動が流量Qoutの変動に影響を及ぼす場合がある。実施形態4に係る流量制御装置4ではガイド棒28が付設されているため、上記したようにフロート20の挙動が安定し、流量Qoutを一層安定させることができる。
【0060】
なお、上記は案内を受けるものとしてガイド棒28を説明したが、ガイド棒28の機能はこれに限定されることなく、例えば重り27としての機能(実施形態2~3参照)を担わせてもよい。すなわち、ガイド棒28を重り27として兼用してもよい。こうすることで別途の重り27を設ける必要がなくなり、省スペース、省コスト等の効果を得られる。
【0061】
なお、ここでは重り27を有する実施形態2に係る流量制御装置2をベースに実施形態4を説明したが、重り27が無い実施形態1に係る流量制御装置1に対してガイド棒28を適用してもよい。また、実施形態3に係る流量制御装置3,3’に適用してもよい。
また、実施形態4に係る流量制御装置4は、各実施形態に係る流量制御装置1,2,3,3’と基本的に同様の構成を有する。そのため、流量制御装置4は流量制御装置1,2,3,3’が有する効果のうち該当する効果を同様に有する。
【0062】
[実施形態5]
図9は、実施形態5に係る流量制御装置5を説明するために示す断面図である。流量制御装置5は、実施形態1~4に係る流量制御装置1,2,3,3’,4をベースとすることができるが、ここでは実施形態2に係る流量制御装置2をベースに説明を行う。
実施形態5に係る流量制御装置5は、基本的には各実施形態に係る流量制御装置1,2,3,3’,4と同様の構成を有するが、流量検出機構50を更に備えた点において各実施形態に係る流量制御装置1,2,3,3’,4とは異なる。
【0063】
図9に示すように、実施形態5に係る流量制御装置5では、発光部51と、導光路52と、受光部54と、流量検出部62とを更に具備している。これらの構成要素を纏めて流量検出機構50ということができる。
【0064】
発光部51はセンシング光を発する。発光部51は、本実施形態の流量検出を可能とする仕様であれば如何なるものであってもよい。
【0065】
導光路52は、センシング光が導かれる路である。図に示した例では、チャンバー用部材19の該当する部分及び流量調整用チャンバー10の内部空間(流体FLが流れている流路30の一部)が導光路52を構成している。
導光路52は、センシング光を入射しフロート20の上下位置に応じてセンシング光の通過量が可変するようになっている。導光路52の一部において、フロート20の上下位置を示すフロート位置指示部29(図9の例ではフロート20の上端から中程にかけての部位)が出入り可能となっており、フロート20の上下に応じてフロート位置指示部29が導光路52を遮っている面積が変わり、これに伴い受光部54が受ける光量も変化する。
【0066】
受光部54は、導光路52からみて発光部51の反対側に配置され、導光路52に導かれたセンシング光を受光し、受光量に応じた情報(アナログ出力型であれば例えば電圧の大小、デジタル出力型であれば数値の大小など)を出力する。
【0067】
流量検出部62は、受光部54で受ける光の量に応じて流体FLの流量Qoutを検出する。流量検出部62は、受光部54が出力した受光量に応じた情報を入力し、かかる情報をフロート20の上下位置の情報、又は/及び、流量規制部33における間隙GWの大きさの情報として把握し、上記の情報に基づいて間接的に流量Qoutを検出する(算出する)。
【0068】
流量検出部62は処理部60に含まれていてもよい。ここでの処理部60は、全てハードウエアで実現してもよいし、例えばマイクロコントローラのようなプロセッサと該プロセッサ上で実行されるプログラムで実現してもよい。
図9に示した例では後者を想定している。受光量に応じた情報の入力から、それに基づく流量Qoutの検出については、流量検出部62としてのプロセッサの動作及び該プロセッサ上でのプログラムの実行により行われる。
【0069】
処理部60は、流量検出部62のほか表示部64aを具備していることが好ましい。表示部64aの画面上に、流量Qoutの値や、略一定の流量で流れているか否か、流量が異常であるか否か等の流動状態に関する情報等を出力することで、外部からもこのような情報を視覚で確認することができる。なお符号64は入出力I/Fを示している。また、処理部60は通信I/F66を具備していることが好ましい。かかる通信I/F66を介して外部のモニター端末200(後述)に対し流動状態に関する情報を送受信することができる。さらに、処理部60はブザー、ランプ等の出力装置(図示を省略)を具備していてもよい。例えば流量Qoutに異常があった場合には、それらの出力装置を作動することで外部にアラームを発することができる。
【0070】
以上の通り、流量制御装置5は発光部51と導光路52と受光部54と流量検出部62とを具備した流量検出機構50を備えているため、流体FLの流量を電気的に検出し、外部に対し流量Qoutを始めとする流動状態に関する情報を出力することができる。
かかる流動状態に関する情報を適宜の出力方法で出力することにより(表示部における表示、通信を介した外部のモニター端末での報知、ブザー・ランプ等の作動など)、患者の周囲にいる家族、医療・介護従事者は流動状態に関する情報(例えば流量の異常等)を受け取ることができ、家族、医療・介護従事者の監視負担を軽減することができる。
【0071】
なお、流体FLとして非透明なものが導入される場合、発光部51が出力するセンシング光のピーク波長は、流体FLにおいて透過しやすい波長(言い換えれば、流体FLでの吸光度が比較的低い波長)に設定されていることが好ましい。
さらに、発光部51の発光波長(ピーク波長)近傍における吸光度について比較したときに、フロート20のうち導光路52内に配置されるべきフロート位置指示部29の吸光度が、流体FLの吸光度よりも大きいことが好ましい。このような関係になっていると、受光部54は、フロート位置指示部29による導光路52の遮りをS/N比高く検出することができる。
【0072】
実施形態5に係る流量制御装置5は、各実施形態に係る流量制御装置1,2,3,3’,4と基本的に同様の構成を有する。そのため、流量制御装置5は流量制御装置1,2,3,3’,4が有する効果のうち該当する効果を同様に有する。
【0073】
[応用例]
図10は、各実施形態に係る流量制御装置1,2,3,4,5を使った応用例を説明するために示す模式図である。具体的には、患者Pに対して薬液FLa(流体FL)を点滴する場面で流量制御装置5を導入した一例を示すシステム図である。ここでは実施形態5に係る流量制御装置5を導入したが、これに限定されることなく他の実施形態・変形例に係る流量制御装置1,2,3,4等についても導入可能である。
【0074】
図10に示すように、流体FLとしての薬液FLaは薬液袋100に収容されている。薬液袋100の出口は気泡除去用チャンバー120に接続され、気泡除去用チャンバー120の出口はチューブ110を介して流量制御装置5に接続され、流量制御装置5の出口(流体排出口14の下流の外部への開口)はチューブ110を介して注射針130に接続されている。注射針130の先端は患者Pの血管Vの内側に差し込まれている。これらのシステムには上から下にかけて重力加速度gが働いている。薬液袋100における液面と注射針130の先端との高低差はhとなっており、かかる高低差hから生じる水頭圧により流体FLは上から下に流動する。流体FLが流量制御装置5を通過する際、流体FLは、気泡BBの量、重り27の重さ等の調整で適宜に設定された略一定の流量Qoutで出口から排出されることとなる。これにより、血管V内にも略一定の流量で薬液FLaが注入される。
【0075】
ここで、流量制御装置5は通信I/F66を具備しており、通信I/F66を介した通信によりモニター端末200と接続されている。更に、モニター端末200はネットワークNWを介してクラウド上のサーバー装置300に接続可能としてもよい。
流量制御装置5からモニター端末200に対し流体FLの流動に関する情報を送信するよう構成すれば、患者の家族や介護・医療従事者は流体FLの流動に関する情報(例えば流量の異常等)を手元のモニター端末200で受け取ることができる。このように構成することで、家族、医療・介護従事者の監視負担を更に軽減することができる。
また、モニター端末200においては、流動状態のモニターの他に、流動状態のロギングなども行うことも可能である。こういったログ情報等についてはサーバー装置300に蓄積しておくことも可能である。
【0076】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定
されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【0077】
(1)実施形態3を説明するために示した図6及び図7の間隙確保手段40は、流量調整用チャンバー10の内表面18に設けられた突起46aや雄ねじ先端部44aで構成されていた。しかしながら本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、図11(a)に示すように、間隙確保手段40はフロート20の外表面22及び流量調整用チャンバー10の内表面18の間に配置されたスペーサ42で構成してもよい。また、図11(b)に示すように、間隙確保手段40はフロート20の外表面22に設けられた突起46bで構成してもよい。なお、図11は変形例に係る流量制御装置6,7を説明するために示す断面図である。
【0078】
(2)各実施形態においてフロート20は略球状のものを例に説明を行った。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、図12(a)に示すように、上側が円柱で下側が円錐状となっているフロート20’を導入してもよい。その際、流量調整用チャンバー10’の内部空間16’の形状も、フロート20’の形状に対応して上側の内表面18を略円柱をくり抜いた形状とする。このようにフロート20’の上側を円柱状とすることで、流体受面23’のどこでも流体FLの流入方向に対し垂直となり、効率よく抗力Dを発生させることができる。
また、例えば図12(b)に示すように、図12(a)の形状を更に推し進め、上側の流体受面23”のみを拡張することで、更に効率よく抗力Dを発生させることができる。
なお、図12は変形例に係る流量制御装置8,9を説明するために示す断面図である。
【0079】
(3)各実施形態において、流量規制部33がフロート20の重心Gよりも下側の位置に位置している例を示して説明を行った。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。流路30において流体FLの流れが規制されて排出側の流量Qoutを調整可能であれば、流量規制部33はフロート20の重心Gと同じかやや上側の位置に位置していてもよい。
【0080】
(4)実施形態5の流量検出機構50では、フロート位置指示部29の位置を発光部51、導光路52、受光部54等の光学的な方法で検出して間接的に流量Qoutを検出した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、フロート位置指示部29の位置を超音波を用いたセンシング、メカニカルスイッチによるON/OFF検知等の方法で検出してもよい。
【符号の説明】
【0081】
1,2,3,3’,4,5,6,7,8,9…流量制御装置、10,10’…流量調整用チャンバー、12…流体供給口、14…流体排出口、16,16'…内部空間、18…(流量調整用チャンバーの)内表面、19…チャンバー用部材、19a…雌ねじ、20,20’ …フロート、21…フロート本体、22…(フロートの)外表面、23,23’…流体受面、25…空洞、27…重り、28…ガイド棒、29…フロート位置指示部、30…流路、33…流量規制部、40…間隙確保手段、42…スペーサ、44…雄ねじ、44a…雄ねじ先端部、46,46a,46b,48…突起、50…流量検出機構、51…発光部、52…導光路、54…受光部、60…処理部、62…流量検出部、64a…表示部、66…通信I/F、100…薬液袋、110…チューブ、120…気泡除去用チャンバー、130…注射針、200…モニター端末、300…サーバー装置


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12