IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三安ジャパンテクノロジー株式会社の特許一覧

特開2024-108290電子部品の製造方法、弾性波デバイスの製造方法、及び、電子部品
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108290
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】電子部品の製造方法、弾性波デバイスの製造方法、及び、電子部品
(51)【国際特許分類】
   H03H 3/08 20060101AFI20240805BHJP
   H03H 9/25 20060101ALI20240805BHJP
   H03H 3/02 20060101ALI20240805BHJP
   H03H 9/02 20060101ALI20240805BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20240805BHJP
   H01L 23/00 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
H03H3/08
H03H9/25 A
H03H3/02 B
H03H9/02 H
H01L21/60 311S
H01L23/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012579
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】518453730
【氏名又は名称】三安ジャパンテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098202
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信彦
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 康平
(72)【発明者】
【氏名】塩井 伸一
【テーマコード(参考)】
5F044
5J097
5J108
【Fターム(参考)】
5F044LL01
5F044QQ01
5F044QQ09
5J097AA31
5J097BB11
5J097CC05
5J097HA04
5J097JJ03
5J097JJ06
5J097JJ09
5J097KK10
5J108AA07
5J108EE03
5J108EE04
5J108EE07
5J108EE13
5J108GG03
5J108GG18
5J108KK04
5J108MM01
(57)【要約】
【課題】自動搭載機に対し電子部品の向きを認識させる構造を、その製造過程において前記電子部品に容易且つ適切に備えさせる。
【解決手段】正方形又は長方形の板状をなすと共に、一面の四隅にそれぞれ、接続用の半田ボール3を突き出し状に備える電子部品1の製造方法である。前記電子部品1の特性検査をするステップにおいて、前記四隅に形成された前記半田ボール3に対しそれぞれ、プローバを構成するコンタクトパッドCにより傷痕3cが形成されるようにすると共に、前記四隅に形成された前記半田ボール3のうちの一つの前記傷痕3cの形態がその余の三つの前記半田ボール3の前記傷痕3cの形態と異なり、かつ、その余の三つの前記半田ボール3の前記傷痕3cの形態は同一となるようにする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正方形又は長方形の板状をなすと共に、一面の四隅にそれぞれ、接続用の半田ボールを突き出し状に備える電子部品の製造方法であって、
前記電子部品の特性検査をするステップにおいて、前記四隅に形成された前記半田ボールに対しそれぞれ、プローバを構成するコンタクトパッドにより傷痕が形成されるようにすると共に、前記四隅に形成された前記半田ボールのうちの一つの前記傷痕の形態がその余の三つの前記半田ボールの前記傷痕の形態と異なり、かつ、その余の三つの前記半田ボールの前記傷痕の形態は同一となるようにしてなる、電子部品の製造方法。
【請求項2】
ウエハ上に複数設定されてそれぞれ一つのデバイスチップとなる正方形又は長方形の単位領域においてそれぞれ、IDT電極を含む機能素子、及び、半田ボールに対する電極パッドを形成するステップと、
複数の前記単位領域においてそれぞれ、前記機能素子が形成された領域以外の領域に支持層を形成するステップと、
複数の前記単位領域においてそれぞれ、前記支持層上に前記機能素子との間に隙間を空けてカバー層を形成させて前記機能素子の形成領域にそれぞれキャビティを形成させるステップと、
複数の前記単位領域においてそれぞれ、少なくともその四隅に前記電極パッドを穴底とする有底穴を前記支持層及び前記カバー層に形成するステップと、
複数の前記単位領域においてそれぞれ、前記有底穴内に前記電極パッドに一端を接続させると共に他端を前記カバー層から突出させる大きさの半田ボールを形成させて、複数の前記単位領域においてそれぞれ、少なくとも前記四隅にそれぞれ半田ボールを突き出し状に備えさせるステップと、
複数の前記単位領域においてそれぞれ、前記四隅に形成された前記半田ボールにプローバを構成するコンタクトパッドをそれぞれ接触させることで特性検査をするステップとを含む弾性波デバイスの製造方法であって、
前記特性検査をするステップにおいて、前記四隅に形成された前記半田ボールに対しそれぞれ、前記コンタクトパッドにより傷痕が形成されるようにすると共に、前記四隅に形成された前記半田ボールのうちの一つの前記傷痕の形態がその余の三つの記半田ボールの前記傷痕の形態と異なり、かつ、その余の三つの前記半田ボールの前記傷痕の形態は同一となるようにしてなる、弾性波デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記特性検査をするステップにおいては、前記コンタクトパッドによって、前記半田ボールの他端側に対し、前記半田ボールの突き出し方向に沿った中心軸を正方形の中心とする仮想の正方形の四つの角に相当する箇所にそれぞれ、前記傷痕を形成させるようにすると共に、
前記傷痕の形態を同一とする三つの前記半田ボールに対しては前記仮想の正方形の辺が前記デバイスチップの辺に平行となるようにして前記傷痕を形成させ、かつ、その余の一つの前記半田ボールに対しては前記仮想の正方形の辺が前記デバイスチップの辺に平行とならないようにして前記傷痕を形成させ、
又は、前記傷痕の形態を同一とする三つの前記半田ボールに対しては前記仮想の正方形の辺が前記デバイスチップの辺に平行とならないようにして前記傷痕を形成させ、かつ、その余の一つの前記半田ボールに対しては前記仮想の正方形の辺が前記デバイスチップの辺に平行となるようにして前記傷痕を形成させてなる、請求項2に記載の弾性波デバイスの製造方法。
【請求項4】
正方形又は長方形の板状をなすと共に、一面の四隅にそれぞれ、接続用の半田ボールを突き出し状に備える電子部品であって、
前記半田ボールにはそれぞれ、前記半田ボールの突き出し方向に沿った中心軸を正方形の中心とする仮想の正方形の四つの角に相当する箇所にそれぞれ、傷痕が形成されていると共に、
前記四隅に形成された前記半田ボールのうちの三つに対しては前記仮想の正方形の辺が前記電子部品の辺に平行となるようにして前記傷痕を形成させ、かつ、その余の一つの前記半田ボールに対しては前記仮想の正方形の辺が前記電子部品の辺に平行とならないようにして前記傷痕を形成させ、
又は、前記四隅に形成された前記半田ボールのうちの三つに対しては前記仮想の正方形の辺が前記電子部品の辺に平行とならないようにして前記傷痕を形成させ、かつ、その余の一つの前記半田ボールに対しては前記仮想の正方形の辺が前記電子部品の辺に平行となるようにして前記傷痕を形成させてなる、電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明にかかる電子部品の製造方法は、電子部品を実装するに際して自動搭載機(チップマウンター)に対し電子部品の向きを認識させる構造を、その製造過程において前記電子部品に容易且つ適切に備えさせるようにするものである。
また、この発明にかかる弾性波デバイスの製造方法は、弾性波デバイスを実装するに際して自動搭載機に対し弾性波デバイスの向きを認識させる構造を、その製造過程において前記弾性波デバイスに容易且つ適切に備えさせるようにするものである。
また、この発明にかかる電子部品は、前記自動搭載機に対し電子部品の向きを適切に認識させる構造を備えたものである。
【背景技術】
【0002】
CSP構造を有する電子部品において、ポスト(突起電極)の突出側に形成させた金属層に切り欠き部を形成することで、電子部品の向きを一目瞭然にするものとして特許文献1に示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-121120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、自動搭載機に対しこの種の電子部品ないし弾性波デバイスの向きを認識させる構造を、その製造過程において前記電子部品ないし弾性波デバイスに対し、これを構成するデバイスチップのパターン配置やそのサイズに影響を与えることなく、容易且つ適切に備えさせることができるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、第一の観点から、電子部品の製造方法を、正方形又は長方形の板状をなすと共に、一面の四隅にそれぞれ、接続用の半田ボールを突き出し状に備える電子部品の製造方法であって、
前記電子部品の特性検査をするステップにおいて、前記四隅に形成された前記半田ボールに対しそれぞれ、プローバを構成するコンタクトパッドにより傷痕が形成されるようにすると共に、前記四隅に形成された前記半田ボールのうちの一つの前記傷痕の形態がその余の三つの前記半田ボールの前記傷痕の形態と異なり、かつ、その余の三つの前記半田ボールの前記傷痕の形態は同一となるようにしてなる、ものとした。
【0006】
また、前記課題を達成するために、この発明にあっては、第二の観点から、弾性波デバイスの製造方法を、
ウエハ上に複数設定されてそれぞれ一つのデバイスチップとなる正方形又は長方形の単位領域においてそれぞれ、IDT電極を含む機能素子、及び、半田ボールに対する電極パッドを形成するステップと、
複数の前記単位領域においてそれぞれ、前記機能素子が形成された領域以外の領域に支持層を形成するステップと、
複数の前記単位領域においてそれぞれ、前記支持層上に前記機能素子との間に隙間を空けてカバー層を形成させて前記機能素子の形成領域にそれぞれキャビティを形成させるステップと、
複数の前記単位領域においてそれぞれ、少なくともその四隅に前記電極パッドを穴底とする有底穴を前記支持層及び前記カバー層に形成するステップと、
複数の前記単位領域においてそれぞれ、前記有底穴内に前記電極パッドに一端を接続させると共に他端を前記カバー層から突出させる大きさの半田ボールを形成させて、複数の前記単位領域においてそれぞれ、少なくとも前記四隅にそれぞれ半田ボールを突き出し状に備えさせるステップと、
複数の前記単位領域においてそれぞれ、前記四隅に形成された前記半田ボールにプローバを構成するコンタクトパッドをそれぞれ接触させることで特性検査をするステップとを含む弾性波デバイスの製造方法であって、
前記特性検査をするステップにおいて、前記四隅に形成された前記半田ボールに対しそれぞれ、前記コンタクトパッドにより傷痕が形成されるようにすると共に、前記四隅に形成された前記半田ボールのうちの一つの前記傷痕の形態がその余の三つの記半田ボールの前記傷痕の形態と異なり、かつ、その余の三つの前記半田ボールの前記傷痕の形態は同一となるようにしてなる、ものとした。
【0007】
前記弾性波デバイスの製造方法にあっては、前記特性検査をするステップにおいては、前記コンタクトパッドによって、前記半田ボールの他端側に対し、前記半田ボールの突き出し方向に沿った中心軸を正方形の中心とする仮想の正方形の四つの角に相当する箇所にそれぞれ、前記傷痕を形成させるようにすると共に、
前記傷痕の形態を同一とする三つの前記半田ボールに対しては前記仮想の正方形の辺が前記デバイスチップの辺に平行となるようにして前記傷痕を形成させ、かつ、その余の一つの前記半田ボールに対しては前記仮想の正方形の辺が前記デバイスチップの辺に平行とならないようにして前記傷痕を形成させ、
又は、前記傷痕の形態を同一とする三つの前記半田ボールに対しては前記仮想の正方形の辺が前記デバイスチップの辺に平行とならないようにして前記傷痕を形成させ、かつ、その余の一つの前記半田ボールに対しては前記仮想の正方形の辺が前記デバイスチップの辺に平行となるようにして前記傷痕を形成させてなるようにすることが、この発明の態様の一つとされる。
【0008】
また、前記課題を達成するために、この発明にあっては、第三の観点から、電子部品を、
正方形又は長方形の板状をなすと共に、一面の四隅にそれぞれ、接続用の半田ボールを突き出し状に備える電子部品であって、
前記半田ボールにはそれぞれ、前記半田ボールの突き出し方向に沿った中心軸を正方形の中心とする仮想の正方形の四つの角に相当する箇所にそれぞれ、傷痕が形成されていると共に、
前記四隅に形成された前記半田ボールのうちの三つに対しては前記仮想の正方形の辺が前記電子部品の辺に平行となるようにして前記傷痕を形成させ、かつ、その余の一つの前記半田ボールに対しては前記仮想の正方形の辺が前記電子部品の辺に平行とならないようにして前記傷痕を形成させ、
又は、前記四隅に形成された前記半田ボールのうちの三つに対しては前記仮想の正方形の辺が前記電子部品の辺に平行とならないようにして前記傷痕を形成させ、かつ、その余の一つの前記半田ボールに対しては前記仮想の正方形の辺が前記電子部品の辺に平行となるようにして前記傷痕を形成させてなる、ものとした。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、前記特性検査におけるプローバを構成するコンタクトパッドを利用して、前記自動搭載機に対しこの種の電子部品ないし弾性波デバイスの向きを認識させる構造を、その製造過程において前記電子部品ないし弾性波デバイスに対し、これを構成するデバイスチップのパターン配置やそのサイズに影響を与えることなく、容易且つ適切に備えさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、この発明の一実施の形態にかかる電子部品の側面構成図である。
図2図2は、前記電子部品の平面構成図である。
図3図3は、図2の左上隅の拡大図である。
図4図4は、図2の右上隅の拡大図である。
図5図5は、前記電子部品を構成する半田ボールの斜視構成図である。
図6図6は、前記電子部品の一部変更例を示した平面構成図である。
図7図7は、図1乃至図6に示される例と傷痕の形態を異ならせる半田ボールの構成例を示した要部平面構成図である。
図8図8は、図1乃至図6及び図7に示される例と傷痕の形態を異ならせる半田ボールの構成例を示した要部平面構成図である。
図9図9は、コンタクトパッドの一例を示した斜視構成図である。
図10図10は、特性検査の様子を示した側面構成図である。
図11図11は、前記コンタクトパッドの底面構成図である。
図12図12は、電子部品の検討例の構成を示した平面構成図である。
図13図13は、この発明の一実施の形態にかかる弾性波デバイスの側面構成図である。
図14図14は、前記弾性波デバイスの平面構成図である。
図15図15は、図14の左上隅の拡大図である。
図16図16は、図14の右上隅の拡大図である。
図17図17は、前記弾性波デバイスの一部変更例を示した平面構成図である。
図18図18は、前記弾性波デバイスを構成するデバイスチップに形成される共振器の一例を示した平面構成図である。
図19図19は、前記弾性波デバイスを構成するデバイスチップに形成される回路の一例を示した構成図である。
図20図20は、前記弾性波デバイスの製造過程の一工程を示した平面構成図である。
図21図21は、前記弾性波デバイスの製造過程の一工程を示した断面構成図である。
図22図22は、前記弾性波デバイスの製造過程の一工程を示した断面構成図である。
図23図23は、前記弾性波デバイスの製造過程の一工程を示した断面構成図である。
図24図24は、前記弾性波デバイスの製造過程の一工程を示した断面構成図である。
図25図25は、前記弾性波デバイスの製造過程の一工程を示した断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1図25に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。
【0012】
(電子部品の製造方法)
先ず、図1図12に基づいて、この実施の形態にかかる電子部品1の製造方法について、説明する。図1図12において、符号1は模式的に表した電子部品、符号1aはその一面、符号2はこれを構成するデバイスチップ、符号2aはその一面、符号3は半田ボールを示している。
【0013】
この実施の形態にかかる電子部品1の製造方法は、電子部品1を実装するに際して自動搭載機(チップマウンター)に対し電子部品1の向きを認識させる構造を、電子部品1の特性検査に用いられるプローバを構成するコンタクトパッドCを利用してこの特性検査において電子部品1に備えさせるようにするものである。
【0014】
より具体的には、かかる製造方法は、電子部品1をモジュール基板などに実装するに際して、電子部品1に形成させたこの電子部品1側の回路をモジュール基板側の回路に接続させるための半田ボール3を利用して、自動搭載機に対し電子部品1の向きを認識できるようにするものである。
【0015】
前記電子部品1は、正方形又は長方形の板状をなすと共に、一面の四隅にそれぞれ、接続用の半田ボール3を突き出し状に備える。
図示の例では、電子部品1は、長方形の板状をなす。電子部品1内にはデバイスチップ2が内蔵されている。デバイスチップ2にはトランジスタ、キャパシタ、抵抗などの機能素子乃至回路素子を含んだ回路が形成されている。デバイスチップ2を圧電体により構成しこのデバイスチップ2に共振器を含んだ回路を形成させれば電子部品1は後述の弾性波デバイス4となる。半田ボール3は、デバイスチップ2の一面2aに一端3aを一体化させてこの一面2aに直交する向きに突き出し、球面状をなす他端3bを電子部品1の一面1aから外部に突き出させている。電子部品1は、半田ボール3の他端3bを図示しないモジュール基板の電極パッドに押し当てた状態でリフロー処理などされることでこの他端をモジュール基板の電極パッドに一体化させる。
【0016】
電子部品1はモジュール基板側に対して所定の向きで実装される必要がある。この向きが間違っていると電子部品1側の回路とモジュール基板側の回路とが所期の機能を発揮するように接続されないこととなる(誤実装)。
【0017】
しかるに、一面1aの四隅に半田ボール3をそれぞれ備えた電子部品1では、そのままでは、前記実装を行う自動搭載機に電子部品1の向きを認識させることができない。図12に示されるように、電子部品1の三つの隅にそれぞれ半田ボール3を形成させると共に、残りの一つの隅には半田ボール3を形成させずにこの隅からシフトした位置に半田ボール3を形成させるようにすれば、自動搭載機に電子部品1の向きを認識させることが可能とはなる。しかし、このようにした場合、デバイスチップ2の一面2aにおける機能素子の形成可能領域が複雑化するためデバイスチップ2に対する回路設計の自由度を低下させてしまう。
【0018】
この実施の形態にかかる電子部品1の製造方法では、前記電子部品1の特性検査をするステップにおいて、前記四隅にそれぞれ形成された前記半田ボール3に対しそれぞれ、プローバを構成するコンタクトパッドCにより傷痕3cが形成されるようにすると共に、前記半田ボール3のうちの一つ(以下、この一つの半田ボール3を符号30で示す。)の前記傷痕3cの形態がその余の三つの前記半田ボール3(以下、この三つの半田ボール3を符号31で示す。)の前記傷痕3cの形態と異なり、かつ、その余の三つ前記半田ボール31の前記傷痕3cの形態は同一となるようにしている。
【0019】
これによって、前記のように傷痕3cの形態を異ならせる一つの半田ボール30を目印にして、電子部品1における半田ボール3の突き出し端部(前記他端3b)が位置するレベル(高さ)において、前記実装を行う自動搭載機に電子部品1の向きを認識させることができる。
前記傷痕3cは、前記特性検査において半田ボール3に形成されることから、電子部品1に対しその向きを認識させる構造を、前記特性検査を利用して、適切且つ合理的に電子部品1に備えさせることができる。
【0020】
図9にコンタクトパッドCの一例を示す。コンタクトパッドCは、ベースCaの一面に、四つの短寸円柱状の台座Cbを有している。各台座Cbの端面にはそれぞれ、四つの接触子Ccが形成されている。図示の例では、各台座Cbに形成された四つの接触子Ccはそれぞれ、仮想の正方形Cd(図11参照)の四つの角に相当する箇所にそれぞれ、形成されている。
図示の例では、前記特性検査において、コンタクトパッドCは、電子部品1に対し、電子部品1の四つの半田ボール3のそれぞれに、対応する台座Cbの四つの接触子Ccを押し当ててコンタクトするようになっている。図示の例では、このコンタクトを、半田ボール3の突き出し中心軸3dが前記仮想の正方形Cdの中心に実質的に一致するようにして行っており、接触子Ccは半田ボール3の突き出し端部(他端3b)側に対し、この他端3bよりもデバイスチップ2の一面2a側にややシフトした半田ボール3の側部3eに押し当てられる(図10参照)。コンタクトパッドCは半田ボール3よりも固い金属で構成されており、前記コンタクトによって四つの半田ボール3にはそれぞれ、四つの接触子Ccによって四つの傷痕3cが形成される。すなわち、四つの半田ボール3にはそれぞれ、半田ボール3の前記中心軸3dを正方形の中心とする仮想の正方形3fの四つの角に相当する箇所にそれぞれ、傷痕3cが形成される(図3図4)。
【0021】
図示の例では、接触子Ccはその突き出し端面Cca(図10参照)のうち、前記コンタクト時に、前記仮想の四角形Cdの中心Ce、すなわち、前記中心軸3d側に位置される部分で半田ボール3に押しつけられ、一つの接触子Ccによって形成される傷痕3cは電子部品1の前記一面1aをこれに直交する向きから見た状態において半円状の輪郭を持った凹みとなっている(図3図4)。
【0022】
図示の例では、コンタクトパッドCの四つの台座Cbのうち、三つの台座Cbの接触子Ccは、前記仮想の正方形Cdの辺を、ベースCaの中央Caa(図11参照)を周回する方向において隣り合う台座Cbの中心を結ぶ仮想の線分によって観念される仮想の四角形Cf(図11参照)の辺に平行とするが、残りの一つの台座Cbの接触子Ccは、前記仮想の正方形Cdの辺を、前記仮想の四角形Cfの辺と平行としないように、形成されている(図11参照)。
【0023】
これにより、図示の例では、前記傷痕3cの形態を同一とする三つの前記半田ボール31に対しては前記仮想の正方形3fの辺が前記電子部品1の辺1bに平行となるようにして前記傷痕3cが形成され、かつ、その余の一つの前記半田ボール30に対しては前記仮想の正方形3fの辺が前記電子部品1の辺1bに平行とならないようにして前記傷痕3cが形成される(図2ないし4参照)。
これによって、前記四つの前記半田ボール3のうちの一つの半田ボール30の前記傷痕3cの形態がその余の三つの半田ボール31の前記傷痕3cの形態と異なり、かつ、その余の三つ半田ボール31の前記傷痕3cの形態は同一となるようにしている。
【0024】
図7に示されるように、半田ボール3の前記中心軸3dを挟んだ対向位置にそれぞれ傷痕3cを形成させると共に、二つの傷痕3cを結ぶ仮想の直線3gの向きが異なるようにすることによっても、半田ボール3の傷痕3cの形態を変えることができる。
【0025】
また、図8に示されるように、半田ボール3の前記中心軸3dを巡る向きに等間隔で複数の傷痕3cを形成させると共に、隣り合う傷痕3c間を結ぶ仮想の直線によって形成される図形3hの向きが異なるようにすることによっても、半田ボール3の傷痕3cの形態を変えることができる。
【0026】
また、図示は省略するが、半田ボール3に対し前記のように形成される傷痕3cの輪郭形状、数、大きさ、位置の一又は二以上の要素を、前記四つの前記半田ボール3のうちの一つの半田ボール30と、その余の三つの半田ボール31とで変えることで、前記四つの前記半田ボール3のうちの一つの半田ボール30の前記傷痕3cの形態がその余の三つの前記半田ボール31の前記傷痕3cの形態と異なり、かつ、その余の三つの前記半田ボール31の前記傷痕3cの形態は同一となるようにすることができる。
【0027】
(電子部品1)
次いで、図1ないし図6に基づいて、この発明の一実施の形態にかかる電子部品1について説明する。
図1及び図2は、正方形又は長方形の板状をなすと共に、一面の四隅にそれぞれ、接続用の半田ボール3を突き出し状に備える電子部品1を示している。
四つの前記半田ボール3にはそれぞれ、前記半田ボール3の突き出し方向に沿った中心軸3d(半田ボール3の一端3aの中心と他端3bの中心とを結ぶ直線)を正方形の中心とする仮想の正方形3fの四つの角(頂点)に相当する箇所にそれぞれ、傷痕3cが形成されている(図3及び図4参照)。
また、四つの前記半田ボール3のうちの三つの半田ボール31に対しては前記仮想の正方形3fの辺が前記電子部品1の辺に平行となるようにして前記傷痕3cを形成させ、かつ、その余の一つの前記半田ボール30(図2の左上隅)に対しては前記仮想の正方形3fの辺が前記電子部品1の辺に平行とならないようにして前記傷痕3cを形成させている。
【0028】
図6に示される例では、四つの前記半田ボール3のうちの三つの半田ボール31に対しては前記仮想の正方形3fの辺が前記電子部品1の辺に平行とならないようにして前記傷痕3cを形成させ、かつ、その余の一つの前記半田ボール30(図6の左上隅)に対しては前記仮想の正方形3fの辺が前記電子部品1の辺に平行となるようにして前記傷痕3cを形成させている。
【0029】
このようにした場合、前記のように傷痕3cの形態を異ならせる一つの半田ボール30を目印にして、電子部品1における半田ボール3の突き出し端部が位置するレベル(高さ)において、前記実装を行う自動搭載機に電子部品1の向きを認識させることができる。
また、前記傷痕3cは、前記製造方法において説明したコンタクトパッドCを利用して電子部品1の特性検査において半田ボール3に形成させることができる。
【0030】
(弾性波デバイスの製造方法)
次いで、図13ないし図25に基づいて、弾性波デバイス4の製造方法について、説明する。
この実施の形態にかかる弾性波デバイス4は、モバイル通信機器などにおいて周波数フィルタなどとして使用するのに適したものである。
【0031】
かかる弾性波デバイス4は、
デバイスチップ4aと、
前記デバイスチップ4aの一面4aaに形成された共振器4bと、
前記一面4aaにおいて前記共振器4bを囲うように形成された支持層4c(ウォール)と、
前記支持層4c上に形成されて前記デバイスチップ4aと前記支持層4cと共働して前記共振器4bを気密封止するキャビティ4e(内部空間、中空構造部)を形成するカバー層4d(ルーフ)とを備えたものとなっている。
【0032】
典型的には、前記デバイスチップ4aは、一辺4abを0.5ないし1mmとし、厚さを0.15ないし0.2mmとする四角形の板状をなすように構成される。
また、典型的には、支持層4cは、前記デバイスチップ4aの一面4aaに直交する向きの厚さ(デバイスチップ4aの一面4aaを基準とした支持層4cの高さ)を10~30μmとするように構成される。
また、典型的には、カバー層4dは、厚さを15~35μmとするように構成される。
これらから構成される弾性波デバイス4は、半田ボール3の高さを含め、典型的には、厚さを0.25ないし0.65mm程度とする。
【0033】
弾性波デバイス4の側面構造を図13に、平面構造を図14に示す。図中符号4bは共振器、符号4eはキャビティ、符号3は半田ボール、符号4dはカバー層、符号4fはキャビティ4eの形成領域外において支持層4c及びカバー層4dを貫通する有底穴である。
【0034】
デバイスチップ4aの一面4aa上には複数の共振器4bが形成されている。デバイスチップ4aの一面4aaにおける各共振器4bの形成領域はそれぞれ、絶縁性を備えた樹脂からなる支持層4cで囲繞されると共に、この支持層4c上に形成される絶縁性を備えた樹脂からなるカバー層4dで蓋がされた形態となっており、これにより弾性波デバイス4は複数の前記キャビティ4eを備えたものとなっている。
【0035】
図中符号4gは半田ボール3に対する電極パッドである。電極パッド4gはデバイスチップ4aに形成された前記共振器4bを含む回路の配線に接続されている。電極パッド2bは前記有底穴4fの穴底にある。この有底穴4fを利用して金などの導電性金属からなる半田ボール3が形成されている。
【0036】
デバイスチップ4aは、弾性波を伝搬させる機能を持つ。デバイスチップ4aには、典型的には、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウムが用いられ、また、デバイスチップ4aは、これらにサファイア、シリコン、アルミナ、スピネル、水晶またはガラスなどを積層させて、構成される場合もある。
【0037】
図18に共振器4bの一例を示す。共振器4bはIDT電極4baと、IDT電極4baを挟むようにして形成される反射器4bbとを有する。IDT電極4baは、電極対からなり、各電極対は弾性波の伝搬方向xに長さ方向を交叉させるように平行配列された複数の電極指4bc同士をこれらの一端側においてバスバー4bdで接続させてなる。反射器4bbは、弾性波の伝搬方向xに長さ方向を交叉させるように平行配列された複数の電極指4beの端部間をバスバー4bfで接続させてなる。
かかる共振器4bは、典型的には、フォトリソグラフィ技術により形成された導電性金属膜によって構成される。
【0038】
図19に一つのデバイスチップ4a上に備えられる回路の一例の概念を示す。符号4hはグランドを示す。共振器4bの数や配置は必要に応じて変更される。図19ではラダー型フィルタが構成されるようになっている。
【0039】
かかる弾性波デバイス4は、以下の各ステップを含む製造方法によって生成される。この実施の形態にかかる弾性波デバイス4の製造方法の要部を、図20ないし図25に示す。
【0040】
先ず、ウエハ5上に複数設定され、最終的にはダイシングにより切り分けられてそれぞれ一つのデバイスチップ4aとなる正方形又は長方形の単位領域5aにおいてそれぞれ、IDT電極4baを含む前記共振器4bなどの機能素子、及び、半田ボール3に対する電極パッド4gを形成する(ステップ1/図20)。
【0041】
次いで、複数の前記単位領域5aにおいてそれぞれ、共振器4bなどの前記機能素子が形成された領域以外の領域に支持層4cを形成する(ステップ2/図21)。
【0042】
次いで、複数の前記単位領域5aにおいてそれぞれ、前記支持層4c上に共振器4bなどの前記機能素子との間に隙間を空けてカバー層4dを形成させて共振器4bなどの前記機能素子の形成領域にそれぞれキャビティ4eを形成させる(ステップ3/図22)。
【0043】
次いで、複数の前記単位領域5aにおいてそれぞれ、少なくともその四隅に前記電極パッド4gを穴底とする有底穴4fを前記支持層4c及び前記カバー層4dに形成する(ステップ4/図23)。
【0044】
次いで、複数の前記単位領域5aにおいてそれぞれ、前記有底穴4f内に前記電極パッド4gに一端3aを接続させると共に他端3bを前記カバー層4dから突出させる大きさの半田ボール3を形成させて、複数の前記単位領域5aにおいてそれぞれ、少なくとも前記四隅にそれぞれ半田ボール3を突き出し状に備えさせる(ステップ5/図24)。
【0045】
次いで、複数の前記単位領域5aにおいてそれぞれ、前記四隅にそれぞれ形成された四つの前記半田ボール3にプローバを構成するコンタクトパッドCをそれぞれ接触させることで特性検査をする(ステップ6/図25)。
【0046】
そして、前記特性検査をするステップにおいて、前記四隅にそれぞれ形成された四つの前記半田ボール3に対しそれぞれ、前記電子部品1の製造方法において説明した前記コンタクトパッドCにより傷痕3cが形成されるようにすると共に、四つの前記半田ボール3のうちの一つの半田ボール30の前記傷痕3cの形態がその余の三つの前記半田ボール31の前記傷痕3cの形態と異なり、かつ、その余の三つの前記半田ボール31の前記傷痕3cの形態は同一となるようにする。
【0047】
図13及び図14に示される電子部品1としての弾性波デバイス4では、前記特性検査をするステップにおいて、前記コンタクトパッドCによって、前記半田ボール3の他端3b側に対し、前記半田ボール3の突き出し方向に沿った中心軸3dを正方形の中心とする仮想の正方形3fの四つの角に相当する箇所にそれぞれ、前記傷痕3cを形成させている。
それと共に、前記傷痕3cの形態を同一とする三つの前記半田ボール31に対しては前記仮想の正方形3fの辺が前記デバイスチップ4aの辺4abに平行となるようにして前記傷痕3cを形成させ、かつ、その余の一つの前記半田ボール30に対しては前記仮想の正方形3fの辺が前記デバイスチップ4aの辺4abに平行とならないようにして前記傷痕3cを形成させている。
【0048】
また、図17に示される電子部品1としての弾性波デバイス4では、前記特性検査をするステップにおいて、前記傷痕3cの形態を同一とする三つの前記半田ボール31に対しては前記仮想の正方形の辺3fが前記デバイスチップ4aの辺4abに平行とならないようにして前記傷痕3cを形成させ、かつ、その余の一つの前記半田ボール30に対しては前記仮想の正方形3fの辺が前記デバイスチップ4aの辺4abに平行となるようにして前記傷痕3cを形成させている。
【0049】
図示の例では、本発明の趣旨を理解しやすくするために、電子部品1及び弾性波デバイス4を四隅にそれぞれ半田ボール3を備えたものとして表した。しかるに、四隅の半田ボール3間にさらに半田ボール3を備える電子部品1及び弾性波デバイス4であって、半田ボール3の突き出し側からこれを平面視した状態において180度回転させる前の半田ボール3の配置と180度回転させた後の半田ボール3の配置とを一致させるように構成されたものについては本発明の適用が可能であり、本発明の対象に含まれるものである。
【0050】
なお、当然のことながら、本発明は以上に説明した実施態様に限定されるものではなく、本発明の目的を達成し得るすべての実施態様を含むものである。
【符号の説明】
【0051】
C コンタクトパッド
Ca ベース
Caa 中央
Cb 台座
Cc 接触子
Cca 突き出し端面
Cd 仮想の正方形
Ce 中心
Cf 仮想の四角形
x 伝搬方向
1 電子部品
1a 一面
1b 辺
2 デバイスチップ
2a 一面
2b 素子
3、30、31 半田ボール
3a 一端
3b 他端
3c 傷痕
3d 中心軸
3e 側部
3f 仮想の正方形
3g 仮想の直線
3h 図形
4 弾性波デバイス
4a デバイスチップ
4aa 一面
4ab 辺
4b 共振器
4ba IDT電極
4bb 反射器
4bc 電極指
4bd バスバー
4be 電極指
4bf バスバー
4c 支持層
4d カバー層
4e キャビティ
4f 有底穴
4g 電極パッド
4h グランド
5 ウエハ
5a 単位領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25