(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108292
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】自律走行車
(51)【国際特許分類】
B61B 13/00 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
B61B13/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012584
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】521499860
【氏名又は名称】株式会社Preferred Robotics
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 佳人
(72)【発明者】
【氏名】山名 崇博
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 明彦
(72)【発明者】
【氏名】礒部 達
【テーマコード(参考)】
3D101
【Fターム(参考)】
3D101BA01
3D101BB16
3D101BB29
3D101BB34
(57)【要約】
【課題】車体の小型化による軽量化を回避して、搬送重量を維持させる。
【解決手段】本開示の実施形態の一観点に係る自律走行車は、駆動輪と、前記駆動輪に対して車体の前後方向に離間した位置に配置される従動輪と、搬送対象と連結可能な連結部と、前記駆動輪と前記従動輪との間に設置される第一錘と、を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪と、
前記駆動輪に対して車体の前後方向に離間した位置に配置される従動輪と、
搬送対象と連結可能な連結部と、
前記駆動輪と前記従動輪との間に設置される第一錘と、
を備える自律走行車。
【請求項2】
前記自律走行車の車体内部に設置された第一制御基板を備える、
請求項1に記載の自律走行車。
【請求項3】
前記第一制御基板は、前記第一錘の直上に配置される又は前記第一錘と接続している、
請求項2に記載の自律走行車。
【請求項4】
前記駆動輪を挟んで前記従動輪と反対側に設置される第二錘と、
を備え、
前記第一制御基板は、前記第一錘の直上に配置される又は前記第一錘と接続している、
請求項2に記載の自律走行車。
【請求項5】
前記第一錘は、前記第二錘より重く形成される、
請求項4に記載の自律走行車。
【請求項6】
前記自律走行車の車体内部に設置された第二制御基板を備え、
前記第二制御基板は前記駆動輪を挟んで前記従動輪と反対側に設置される、
請求項4に記載の自律走行車。
【請求項7】
一対の前記駆動輪と、一対の前記従動輪とを備え、
平面視において、前記一対の駆動輪のそれぞれと、前記一対の従動輪の一方とにより形成される第一の三角形と、前記一対の駆動輪のそれぞれと、前記一対の従動輪の他方とにより形成される第二の三角形と、の重畳部分に前記自律走行車の重心が配置されるように、前記第一錘の位置及び重量が調整される、
請求項1に記載の自律走行車。
【請求項8】
前記駆動輪を挟んで前記従動輪と反対側に設置される第二錘と、
を備える、請求項7に記載の自律走行車。
【請求項9】
前記第一錘は、前記第二錘より重く形成される、
請求項8に記載の自律走行車。
【請求項10】
前記自律走行車の車体内部に設置された第一制御基板と、第二制御基板と、を備え、
前記第一制御基板は前記駆動輪と前記従動輪との間に設置され、
前記第二制御基板は前記駆動輪を挟んで前記従動輪と反対側に設置され、
前記第一錘は金属製であり、前記第一制御基板の直下に設置される、
請求項8に記載の自律走行車。
【請求項11】
前記自律走行車の車体内部に設置されるバッテリを備え、
前記第二制御基板は前記バッテリの動作を制御し、
前記バッテリは前記第二制御基板の下方に配置される、
請求項10に記載の自律走行車。
【請求項12】
前記第一制御基板と前記第二制御基板とに電気的に接続され、共通のグランドとして機能するグランド部品を備え、
前記グランド部品は、前記第一錘に対応する部分と、前記第二錘に対応する部分も含み、一体的な部品として構成される、
請求項10に記載の自律走行車。
【請求項13】
前記自律走行車の車体は平面視において略長方形状であり、進行方向の前後方向が長辺であり、
前記駆動輪は一対の駆動輪が前記車体の幅方向両側に配置され、前記一対の駆動輪が前記幅方向に沿った同軸上に配置され、
前記連結部は、前記同軸上において、前記一対の駆動輪の一方と他方との中心位置に設置され、
前記一対の駆動輪と前記連結部は、平面視において前記前後方向の中央より後方側に配置される、
請求項1に記載の自律走行車。
【請求項14】
前記自律走行車の前方の物体を撮像する前面カメラと、
前記自律走行車の後方の物体を撮像する後面カメラと、
前記自律走行車の車体の前後左右方向の側面を形成し、前記前面カメラと前記後面カメラが設置されるカバー部材と、
を備え、
前記カバー部材は、前記前面カメラが設置される前面部分と、前記後面カメラが設置される後面部分と、前記前面部分と前記後面部分との間に配置される左右側面部分とが別部材で形成される、
請求項1に記載の自律走行車。
【請求項15】
前記前面部分は、前記自律走行車の前方側から前記車体に固定され、
前記後面部分は、前記自律走行車の後方側から前記車体に固定される、
請求項14に記載の自律走行車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自律走行車に関する。
【背景技術】
【0002】
無人搬送車などの自律走行車を、工場や一般家庭で用いる際に、例えば物品が載置された棚や牽引台車などの搬送対象の搬送を行う場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような自律走行車を使用する場合、車体を小型化すると居室等の限られた空間での移動を容易にできる。一方、車体の小型化により車重が軽量化すると、牽引できる搬送対象の搬送重量も低減し、搬送対象に制約が生じる虞がある。
【0005】
本開示は、車体の小型化による軽量化を回避して、搬送重量を維持できる自律走行車を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施形態の一観点に係る自律走行車は、駆動輪と、前記駆動輪に対して車体の前後方向に離間した位置に配置される従動輪と、搬送対象と連結可能な連結部と、前記駆動輪と前記従動輪との間に設置される第一錘と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】実施形態に係る自律走行車の外観構成の一例を示す斜視図
【
図3】実施形態に係る自律走行車の外観構成の一例を示す側面図
【
図4】実施形態に係る自律走行車の外観構成の一例を示す背面図
【
図5】自律走行車が搬送対象となる棚とドッキングする様子を示した図
【
図6】棚のうち最下段より下部の概略構成を示す正面図
【
図8】実施形態に係る自律走行車の上方から視た内部構造を示す平面図
【
図9】実施形態に係る自律走行車の下方から視た平面図
【
図10】内部構造の変形例に係る自律走行車の縦断面図
【
図11】駆動輪とロック装置を車体後方側に配置する利点を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0009】
なお、以下の説明において、x方向、y方向、z方向は互いに垂直な方向である。x方向及びy方向は水平方向であり、z方向は鉛直方向である。x方向は、自律走行車120の幅方向である。y方向は、自律走行車120の前後方向である。z方向は、自律走行車120の高さ方向である。また、以下では説明の便宜上、z正方向側を上側、z負方向側を下側とも表現する場合がある。
【0010】
<自律走行車の利用シーン>
はじめに、第1実施形態に係る自律走行車の利用シーンについて説明する。
図1は、自律走行車の利用シーンの一例を示す図であり、自律走行車120とその搬送対象を有する搬送システムを図示する。
図1に示すように、自律走行車120は、例えば、自宅のリビング等の所定空間100において、ユーザ110がソファでくつろぐシーン等で利用される。また、例えば、自宅のリビングの他にも、オフィス、倉庫、工場等でも利用されてもよい。
【0011】
図1に示す利用シーンは、例えば、ユーザ110がノートPCを使用しようとして、自律走行車120に対して、
・ウェイクワードを発声した後、
・「ノートPCを持ってきて」と発声した場合(すなわち、音声による搬送指示(以降、音声指示と呼ぶ)が行われた場合)、
を示している。この場合、自律走行車120は、キャスタ付きの棚130~150の中から、ノートPCや書物等の仕事道具131が載置された棚130を搬送対象として特定し、棚130とドッキングした後、棚130をユーザ110の近傍の位置まで搬送する。なお、自律走行車120は、ウェイクワードなしに行われた音声指示に従うよう構成されてもよい。
【0012】
このように、自律走行車120を利用すれば、ユーザ110は、音声指示を行うだけで、ソファから動くことなく、離れた位置にあるノートPCを手元に置くことができる。
【0013】
なお、
図1の例は、ユーザ110が音声指示を行った時点で、棚130が、所定空間100内のアンカ170の位置に待機していた場合を示している。また、
図1の例は、アンカ170の位置に待機していた棚130を、ユーザ110の近傍の位置172まで搬送する際に、最短の搬送経路上に、障害物として、ごみ箱160が置かれていた場合を示している。
【0014】
このような場合、自律走行車120は、棚130の搬送中にごみ箱160を検知し、点線矢印171に示す搬送経路で棚130を搬送することで、ごみ箱160との衝突を回避する。
【0015】
また、
図1には示していないが、自律走行車120が棚130をユーザ110の近傍の位置172まで搬送し、ユーザ110がノートPCを棚130から取り出した後、自律走行車120に対して、「棚を元の位置に戻して」との音声指示を行ったとする。この場合、自律走行車120は、棚130を、アンカ170の位置まで搬送してもよい。
【0016】
また、
図1の例では、自律走行車120が搬送対象として棚130を搬送する場合について示したが、ユーザ110の音声指示の内容によっては、自律走行車120が、棚140又は棚150を搬送対象として特定して搬送してもよい。また、
図1の例では、自律走行車120が、ユーザ110の近傍の位置を棚130の搬送先の位置として特定した。しかしながら、ユーザ110の音声指示の内容によっては、自律走行車120が、所定空間100内に設置された所定の設置物(例えば、家具等)の近傍の位置や、所定空間100内の任意の位置を、棚130の搬送先の位置として特定してもよい。
【0017】
<自律走行車の構成>
次に、自律走行車120の構成について説明する。
図2は、実施形態に係る自律走行車120の外観構成の一例を示す斜視図である。
図3は、実施形態に係る自律走行車120の外観構成の一例を示すx正方向側から視た側面図である。
図4は、実施形態に係る自律走行車120の外観構成の一例を示すy正方向側から視た背面図である。
【0018】
図2に示すように、自律走行車120は、全体として直方体の形状を有しており、搬送対象となる棚の最下段の下側に進入できるよう、高さ方向(z軸方向)及び幅方向(x軸方向)の寸法が規定されている。なお、自律走行車120の形状は直方体に限定されない。
【0019】
自律走行車120の上面210には、搬送対象となる棚とドッキングするためのドッキング機構を構成する部材であるロック装置211(連結部)が設置されてもよい。また、自律走行車120の上面210には、例えば、LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)212が設置されている。LIDAR212は、自律走行車120の上面210の高さ位置における、前後方向(y軸方向)及び幅方向(x軸方向)を測定範囲としており、LIDAR212による測定結果を用いることで、当該測定範囲にある障害物等を検出することができる。
【0020】
自律走行車120の前面220には、例えば、前面RGBカメラ221と、ToF方式(Time of Flight方式)のカメラ(ToFカメラ222)とが設置されている。なお、本実施形態の前面RGBカメラ221は、ToFカメラ222の上側に設置されるが、前面RGBカメラ221の設置位置は、この位置に限定されず、前面RGBカメラ221がToFカメラ222の下側に設置されてもよいし、横に並んで設置させてもよい。
【0021】
前面RGBカメラ221は、自律走行車120が前進方向に移動する際、例えば、
・搬送対象となる棚(例えば、棚130)、
・搬送先の近傍にいるユーザ(例えば、ユーザ110)、搬送先の近傍にある設置物、
・搬送経路上の障害物(例えば、ごみ箱160)、
等を撮影し、カラー画像を出力する。
【0022】
ToFカメラ222は、測定範囲内の物体の3次元的な位置(つまり、自律走行車120の幅方向、前後方向、高さ方向それぞれにおける位置)を特定するための当該3次元的な位置に関する測定データを取得するセンサの一例である。ToFカメラ222は、マルチパス問題を回避するために、自律走行車120が走行する走行面(
図3に示す床面240)が測定範囲に含まれない程度に、自律走行車120の前面220において上向きに設置される。マルチパス問題の一例として、光源から出射した光が床面240を経由して他の対象物で反射し、その反射光をToFカメラ222が受光することによる測定精度の悪化が挙げられる。本実施形態において、ToFカメラ222の自律走行車120の前面220における上向きの設置角度θは、床面240に対して約50度であるとする。
【0023】
また、ToFカメラ222は、自律走行車120が前進方向に移動する際、少なくともドッキングした棚が通過する領域(ドッキングした棚の高さ×ドッキングした棚の幅分の領域)を測定範囲として障害物等を撮影してもよい。また、ToFカメラ222は、撮影した距離画像(深度画像)を3次元位置データとして出力してもよい。なお、本実施形態において、ToFカメラ222の垂直画角θvは70度、水平画角θhは90度であるとする。なお、物体の3次元的な位置データを取得するためのセンサデバイスとして、ToFカメラ222に代えて、ステレオカメラや単眼カメラを用いてもよい。ステレオカメラの場合、同じタイミングで撮影された2つの画像から測定範囲内の3次元位置データが計算できる。単眼カメラの場合、異なるタイミングで撮影された2つの画像と自律走行車120の移動方向及び移動距離から、測定範囲内の3次元位置データが計算できる。
【0024】
自律走行車120の前面220のうち前面RGBカメラ221の近傍には、照明機構223が設置されている。照明機構223は、搬送対象とのドッキングが開始すると点灯してもよく、搬送対象とのドッキングが完了すると消灯してもよい。照明機構223は、例えばLEDであり、前面RGBカメラ221の動作中に点灯することによって、前面RGBカメラ221の撮像対象を照光して前面RGBカメラ221の撮像画像をより鮮明にでき、撮像画像を用いる物体認識の精度を向上できる。
【0025】
自律走行車120の下面230には、駆動輪231と、従動輪232とが設置されてもよく、これにより自律走行車120を支持する。
【0026】
駆動輪231は、幅方向(x軸方向)に1つずつ設置されており(幅方向に、例えば、計2つ設置されており)、それぞれが独立してモータ駆動されることで、自律走行車120を、進行方向すなわち前進/後退方向(y軸方向)に移動させることができる。また、駆動輪231は、自律走行車120を、z軸周りに旋回させることができる。
【0027】
従動輪232は、幅方向(x軸方向)に1つずつ(幅方向に計2つ)設置されている。また、従動輪232は、自律走行車120に対して、それぞれがz軸周りに旋回可能に設置されている。なお、従動輪232の設置位置や設置数は、上記以外でもよい。
【0028】
また、
図3に示すように、自律走行車120の内部には制御装置310が搭載されている。制御装置310は、自律走行車120内に搭載される各種センサから入力される情報や、外部から受信する操作指令などに基づき、駆動輪231やロック装置211の動作を制御して、自律走行車120の移動や棚130との連結を制御する。なお、本開示における2つの対象の連結とは、2つの対象が互いに接触しているか否かを問わず、一方の対象が移動すると他方の対象も連動して移動するような関係性のことを指してよい。
【0029】
図4に示すように、自律走行車120の後面250には、後面RGBカメラ320が設置されてもよい。
【0030】
後面RGBカメラ320は、自律走行車120が後退方向に移動する際、例えば、
・搬送対象となる棚(例えば、棚130)、
・搬送対象の棚の周辺の障害物、
等を撮影し、カラー画像を出力する。
【0031】
自律走行車120の後面250のうち後面RGBカメラ320の近傍には、照明機構251が設置されていてもよい。照明機構251は、搬送対象とのドッキングが開始すると点灯してもよく、搬送対象とのドッキングが完了すると消灯してもよい。照明機構251は、例えばLEDであり、後面RGBカメラ320の動作中に点灯することによって、後面RGBカメラ320の撮像対象を照光して後面RGBカメラ320の撮像画像をより鮮明にでき、撮像画像を用いる物体認識の精度を向上できる。
【0032】
また、自律走行車120の上面210に電源スイッチ213が設けられてもよい。電源スイッチ213は、例えば自律走行車120の利用者によって押下されることによって、制御装置310を起動させ、自律走行車120を動作可能に起動させることができる。また、自律走行車120の起動中に押下されることによって、制御装置310を停止させ、自律走行車120を停止させることができる。なお、電源スイッチ213は、上面210の前端付近に配置されるのが好ましい。これにより、自律走行車120が搬送対象の棚130と連結している状態においても、電源スイッチ213が棚130より前方に露出するので、スイッチ操作を容易にできる(
図5参照)。
【0033】
また、自律走行車120の後面250にはユーザスイッチ252が設けられてもよい。ユーザスイッチ252は、自律走行車120の利用者が任意の操作指令を入力できるよう設定できる。
【0034】
また、自律走行車120の上面210に設けられるLIDAR212は、
図2に示すように略円柱形状に形成されてもよい。LIDAR212の円柱形状の上面の外縁端に沿って円環状に光源214が設置されてもよい。光源214は例えば複数のLEDを円環状に配置して構成される。光源214は多色で発光可能であり、例えば自律走行車120の動作状態に応じて発光色を変更することによって、自律走行車120の動作状態を周囲に報知することができる。
【0035】
<ドッキングの概要>
次に、ドッキングの概要について説明する。
図5は、自律走行車が搬送対象となる棚130とドッキングする様子を示した図である。なお、棚140、150の場合も同様である。
【0036】
図5(a)は、自律走行車120が、アンカ170の位置に待機する、搬送対象となる棚130とドッキングする直前の様子を示したものである。
【0037】
図5(a)に示すように、棚130は段数が3段の棚であり、最下段400の下側には、フレームガイド410、420が、自律走行車120の幅に応じた間隔で、略平行に取り付けられている。これにより、自律走行車120が、搬送対象となる棚130の最下段400の下側に進入する際の進入方向が規定される。また、フレームガイド410、420は、自律走行車120が搬送対象となる棚130を搬送する際、幅方向のガイド部として機能し、棚130が自律走行車120に対して幅方向にずれることを防止する。なお、自律走行車120は、搬送対象となる棚130に向かって前進して当該棚130とドッキングしてもよい。
【0038】
また、棚130の足元には、キャスター431~434が旋回可能に取り付けられている。これにより、自律走行車120は、ドッキングした棚130を容易に搬送することができる。
【0039】
一方、
図5(b)は、自律走行車120が搬送対象となる棚130にドッキングした後の様子を示したものである。
図5(b)に示す例であれば、棚130にドッキングした状態であっても、自律走行車120の前面220は、棚130の各段によって覆われない(前面220が、棚130の各段よりも前進方向に突出する)。このため、
図5(b)に示す例であれば、自律走行車120が棚130を搬送する際に、前面RGBカメラ221の測定範囲が、棚130のいずれかの段によって遮られることはない。但し、自律走行車120が棚130を搬送する際に、前面RGBカメラ221の測定範囲が、棚130のいずれかの段によって遮られるような仕様とすることも可能である。
【0040】
同様に、ToFカメラ222についても、自律走行車120が棚130を搬送する際に、測定範囲(垂直画角θv、水平画角θh)が、棚130のいずれかの段によって遮られることはない。但し、同様に、ToFカメラ222についても、自律走行車120が棚130を搬送する際に、測定範囲(垂直画角θv、水平画角θh)が、棚130のいずれかの段によって遮られる仕様とすることも可能である。
【0041】
一方、LIDAR212は、自律走行車120が棚130にドッキングした状態で、自律走行車120の高さ位置における前方及び後方の測定範囲が遮られることはない。しかしながら、幅方向の測定範囲についてはフレームガイド410、420によって遮られる可能性がある。
【0042】
このため、棚130のフレームガイド410、420には、LIDAR212の幅方向の測定範囲を遮蔽する割合を低減するために、開口部411、421が設けられている。これにより、自律走行車120が棚130を搬送する際に、LIDAR212は、自律走行車120の高さ位置における前方、後方及び幅方向の測定範囲を、棚130によって遮られることなく測定することができる。但し、自律走行車120が棚130を搬送する際に、LIDAR212は、自律走行車120の高さ位置における前方、後方及び幅方向の測定範囲を、棚130によって遮られる仕様とすることも可能である。
【0043】
なお、
図5(b)においては示されていないが、自律走行車120の前面側に設置されたマイク301、302(
図8参照)も、自律走行車120が棚130にドッキングした状態で、棚130の各段よりも前進方向に突出した位置に配置されてもよい。これにより、自律走行車120が棚130を搬送する際に、前面側のマイク301、302の検出範囲が、棚130のいずれかの段によって遮られることはない。但し、自律走行車120が棚130を搬送する際に、前面側のマイク301、302の検出範囲が、棚130のいずれかの段によって遮られる仕様とすることも可能である。
【0044】
図6は、棚130のうち最下段400より下部の概略構成を示す正面図である。
図6に示すように、一対のフレームガイド410、420の中間の位置、すなわち棚130の最下段400のx方向の中心位置には、最下段400の下面から下方に突出するように突起440(凸部)が設けられている。本実施形態では、突起440は例えば円柱状であるが、この形状に限られない。
【0045】
上述の自律走行車120のロック装置211は上下動可能に構成されてもよく、ロック装置211が上昇したときに、この突起440に篏合することによって、自律走行車120と棚130とが連結される。すなわち、自律走行車120のロック装置211と、棚130(搬送対象)の突起440とが、本実施形態に係る「自律走行車と搬送対象との連結構造」を構成する。
【0046】
ロック装置211は、「自律走行車120に設けられ、上下動可能であり、上方に移動して突起440と係合したとき自律走行車120の少なくとも前進後退方向への突起440の相対移動を規制する規制部」として機能する。本実施形態では、規制部としてのロック装置211は、突起440に篏合する凹部であり、突起440を少なくとも自律走行車120の進行方向の前後で挟むように突起440と係合する係合部であるといってよい。ロック装置211の凹部は、上方に移動して突起440と篏合(突起440の少なくとも一部を収容)したとき、自律走行車120に対する突起440すなわち搬送対象の水平方向への相対移動を規制することで、自律走行車120が搬送対象を牽引可能な状態を作り出す。
【0047】
ここで、本実施形態で用いる「篏合」とは、「係合」の一例であり、「係合」という概念に包含される。「篏合」とは、一般には、軸と軸受けのように、機械のいろいろな部分がはまり合う関係を意味し、例えば、軸が孔などのくぼんだ所に固くはまり合ったり、滑り動くようにゆるくはまり合ったりする関係をいう。本実施形態では、凸状の突起440と凹状のロック装置211とが互いに嵌り合い、突起440の外周面がロック装置211により完全に覆われる状態をいう。
【0048】
また、「係合」とは、複数の要素が互いに係わり合うことを意味し、歯車同士による動力伝達を表現する場合などに一般的に用いられる表現である。本実施形態では、「係合」とは、自律走行車120の移動によって、自律走行車120に設けられる凹状のロック装置211と、棚130に設けられる凸状の突起440とが少なくとも一時的に接触し、ロック装置211から突起440に自律走行車120の駆動力を伝達できるような、ロック装置211と突起440との連結関係をいう。篏合以外の係合の種類としては、例えば、凸状の突起440を複数の板材や棒材などで挟持する構成などが挙げられる。或いは、係合関係とは、複数の要素が必ずしも相互に接触しなくてもよく、駆動力を伝達できれば非接触の関係でもよい。例えば電磁石などを利用して要素間に引力や斥力を発生させ、これらの引力や斥力によって要素間で動力を伝達する構成でもよい。
【0049】
また、自律走行車120のロック装置211は、「搬送対象の棚130~150と連結可能な連結部」とも表現できる。
【0050】
また、本実施形態では、ロック装置211は、棚130の円柱形状の突起440を篏合可能な円筒形状で形成されるが、少なくとも突起440を内部に収容できればよく、例えば楕円形や長円形状などの円形以外の環状でもよい。
【0051】
<自律走行車の内部構成及び下面構成の詳細>
次に、自律走行車の内部構成及び下面構成の詳細について説明する。
図7は、実施形態に係る自律走行車120の縦断面図である。
図8は、実施形態に係る自律走行車120の上方から視た内部構造を示す平面図である。
図9は、実施形態に係る自律走行車120の下方から視た平面図であり、重心位置を説明する図である。
図7は、自律走行車120を幅方向(x方向)の中央部におけるy方向に沿った断面図である。
図8は、自律走行車120の上面カバーを取り外して、真上から見た様子を示している。
【0052】
(a-1)第1制御基板及び第2制御基板
はじめに第1制御基板及び第2制御基板について説明する。
図7、
図8に示すように、自律走行車120は、第1制御基板311及び第2制御基板312を有してもよい。本実施形態において、第1制御基板311は、例えば、電子デバイスを制御し、第2制御基板312は、例えば、駆動デバイスを制御する。ただし、第1制御基板311と第2制御基板312の役割区分はこれに限定されない。なお、以下では第1制御基板311を「第一制御基板」とも表記し、第2制御基板312を「第二制御基板」とも表記する場合がある。
【0053】
なお、
図7、
図8の例では、第1制御基板311と第2制御基板312とが、分かれて設置される場合を示しているが、第1制御基板311と第2制御基板312とは、1つの基板として一体的に設置されてもよい。第1制御基板311と第2制御基板312とを分けて設置するか、一体的に設置するかに関わらず、本実施形態では、第1制御基板311が有する機能と第2制御基板312が有する機能の両方を備える装置を、制御装置310と称す。
【0054】
(a-2)ドッキング機構
次に、ドッキング機構について説明する。
図7に示すように、自律走行車120は、搬送対象となる棚とドッキングするためのドッキング機構として、ソレノイド式のロック装置211と、フォトリフレクタ330とを有してもよい。なお、本実施形態のドッキング機構はソレノイド式のロック装置211を用いているが、ロック装置211の昇降を、ソレノイド以外の電磁アクチュエータで行っても、ラックアンドピニオン機構、台形ねじ機構、空気圧駆動機構など、他のアクチュエータで行ってもよい。
【0055】
本実施形態において、ソレノイド式のロック装置211は、自律走行車120の車体の幅方向(x方向)の両端に1つずつ設置された駆動輪231の幅方向の中心位置であって、駆動輪231の回転軸C1上に設置されてもよい(
図8の一点鎖線参照)。
【0056】
図7に示すように、ソレノイド式のロック装置211は、圧縮コイルばね282を内蔵してもよく、ソレノイド280がONになると、ソレノイド280の内部に収容される可動部281が下方に吸引され、これに伴い可動部281の上方に連結されているロック装置211も下方に吸引されて、圧縮コイルばね282が縮む。一方、ソレノイド式のロック装置211は、ソレノイド280がOFFになると、圧縮コイルばね281の圧縮力により、上方(
図8の場合は紙面手前側)に突出する。なお、ソレノイド280のON/OFFは、制御装置310によって制御されてもよい。
【0057】
フォトリフレクタ330は、自律走行車120が、搬送対象となる棚の最下段の下側に進入した際に、搬送対象となる棚に取り付けられた突起440にロック装置211を突出させることが可能であるか否かを判定するための信号を出力してもよい。
【0058】
自律走行車120は、フォトリフレクタ330より出力された信号に基づいて、ロック装置211を突出させることが可能であると判定した場合に、ソレノイド280をOFFにする。なお、本実施形態ではフォトリフレクタ330を用いてロック装置211と突起440との対面状態を検出するようにしているが、フォトリフレクタ以外の方式で、この検出を行うようにしてもよい。フォトリフレクタ以外の方式としては、例えば、カメラや物理スイッチ、磁気式センサ、超音波センサ等を用いた方式が挙げられる。
【0059】
これにより、ロック装置211が突起440に向けて突出し、突出したロック装置211が突起440に挿入される。この結果、自律走行車120と、搬送対象の棚とのドッキングが完了する。
【0060】
なお、上述したように、ソレノイド式のロック装置211は、自律走行車120の車体の幅方向(x方向)の両端に1つずつ設置された駆動輪231の幅方向の中心位置に設置されていてもよい(幅方向において対称である)。これにより、自律走行車120は、搬送対象となる棚の最下段の下側へ進入する際、前進方向で進入することも後退方向で進入することもできる。
【0061】
一方、自律走行車120が、搬送対象の棚とドッキングした状態で、ソレノイド280をONにすることで、ロック装置211を吸引すると、自律走行車120と搬送対象の棚との間のドッキングが解除される。
【0062】
(a-3)各種入出力装置
次に、各種入出力装置について説明する。
図8に示すように、自律走行車120は、各種入出力装置として、上述したLIDAR212、前面RGBカメラ221、ToFカメラ222、後面RGBカメラ320に加えて、マイク301~304、スピーカ305を有してもよい。
【0063】
このうち、LIDAR212、前面RGBカメラ221、ToFカメラ222、後面RGBカメラ320の設置位置、設置方向、測定範囲、測定対象等については説明済みであるため、ここでは説明を省略する。
【0064】
マイク301~304は、音入力装置の一例であり、自律走行車120のコーナ部4か所(前面側2か所、後面側2か所)にそれぞれ設置されてもよく、それぞれの方向からの音を検出する。このように、自律走行車120のコーナ部4か所にマイク301~304を設置することで、自律走行車120の現在の位置及び向きに対して、音声指示を行ったユーザ110がいずれの方向にいるのかを判定し、ユーザ110の位置を推定することができる。
【0065】
スピーカ305は、音声出力装置の一例であり、自律走行車120の側面方向に向かって、音声を出力してもよい。スピーカ305は、例えば、ユーザ110による音声指示に対して、自律走行車120が認識したタスクの内容を確認するための音声を出力してもよい。スピーカ305は、例えば
図8に示すように自律走行車120の車体のx正方向側の側面付近に設置されてもよい。なお、本実施形態では、自律走行車120が単一のスピーカ305を備える構成を例示しているが、2個以上のスピーカを備える構成でもよい。
【0066】
また、自律走行車120の内部にはファン306が設けられてもよい。ファン306は、例えば発熱量の多い第1制御基板311に隣接して配置されてもよく、第1制御基板311を冷却する。つまり、ファン306は、第2制御基板312よりも第1制御基板311の近くに配置されてもよい。
図8の例では、ファン306は、自律走行車120の車体のx正方向側の側面付近で、スピーカ305と隣接して配置されている。
【0067】
(b-1)駆動輪
図8、
図9に示すように、自律走行車120は、車体の幅方向(x方向)の両端側に1つずつ設置された駆動輪231を有してもよい。上述したように、駆動輪231は、それぞれが独立してモータ駆動されることで、自律走行車120を、前進/後退方向(y方向)に移動させたり、z軸周りに旋回させたりすることができる。
【0068】
具体的には、駆動輪231の両方を正転させることで、自律走行車120を前進方向に移動させ、駆動輪231の両方を逆転させることで、自律走行車120を後退方向に移動させることができる。また、駆動輪231の一方を正転させ、他方を逆転させることで、自律走行車120を旋回させることができる。
【0069】
なお、上述したように、駆動輪231の一方の回転軸と他方の回転軸とは、同軸C1上に形成されており、ソレノイド式のロック装置211は、同軸C1上において、駆動輪231の一方と駆動輪231の他方との中心位置に設置されてもよい。これにより、駆動輪231の一方を正転させ、駆動輪231の他方を逆転させた場合、自律走行車120は、ソレノイド式のロック装置211を中心に、旋回することになる。
【0070】
図7に示すように、各駆動輪231には、回転軸C1に沿った自律走行車120の内部側にそれぞれモータなどの駆動源233が個別に連結されてもよく、これらの駆動源233から出力される動力によって独立駆動することができる。
【0071】
(b-2)従動輪
図9に示すように、自律走行車120は、車体の幅方向(x軸方向)の両端側に1つずつ設置された従動輪232を有してもよい。従動輪232は、それぞれが、z軸方向に延在する旋回軸C3周りに旋回可能に設置されてもよい。また、各従動輪232は、水平方向かつ旋回軸C3と直交する方向に回転軸C2を有してもよい。これにより、例えば、自律走行車120が前進方向または後退方向に移動した後に旋回する場合、従動輪232は、その向きを旋回方向に直ちに追従させることができる。また、例えば、自律走行車120が旋回した後に前進方向または後退方向に移動する場合、従動輪232は、その向きを前進または後退方向に直ちに追従させることができる。
【0072】
従動輪232は、駆動輪231に対して車体の前後方向に離間した位置に配置されてもよい。
図9の例では、従動輪232は駆動輪231より前方側に配置されている。
【0073】
なお、本実施形態では一対の従動輪232を備える構成を例示したが、少なくとも駆動輪231に対して車体の前後方向に離間した位置に配置されればよく、従動輪の個数はこれに限られない。例えば
図9に示す2つの従動輪232と同様の前後方向の位置において、車体の幅方向の中央に1個の従動輪を設ける構成でもよい。
【0074】
(c)第一錘、第二錘
特に本実施形態では、自律走行車120の内部に第一錘321と第二錘322の2つの錘が設置されてもよい。第一錘321は、駆動輪231と従動輪232との間に設置されてもよい。
図7に示すように、本実施形態では第1制御基板311が駆動輪231と従動輪232との間に配置されており、第一錘321は第1制御基板311の下方のスペースに設置されてもよい。
【0075】
また、本実施形態では第2制御基板312が駆動輪231より後方の位置に設置されてもよい。第2制御基板312の下方には、バッテリ323が配置されてもよい。第二錘322は、バッテリ323より下方のスペースに設置されてもよい。
【0076】
第一錘321と第二錘322は、例えば鉄、真鍮、鉛、アルミ、銅などの金属材料で形成されるのが好ましく、その中でも鉄など比重がより大きいの金属材料で形成されるのがさらに好ましい。「比重が大きいもの」とは、「密度が高いもの」や「なるべく体積が小さくて重いもの」とも表現できる。
【0077】
本実施形態に係る自律走行車120は、特に
図1に例示したような一般家庭の室内などで適用される場合、車体を小型化すると居室等の限られた空間での移動を容易にできるので、適用に有利である。ここで、自律走行車120の車体を小型化するためには、一般的には各部品の小型化や軽量化、各部品どうしの配置の工夫による空きスペースの削減などの対応が考えられる。このため、車体の小型化に伴って車重が軽量化する可能性が高いと考えられる。車体の小型化により車重が軽量化すると、牽引できる搬送対象の搬送重量も低減し、搬送対象に制約が生じる虞がある。
【0078】
これに対して本実施形態の自律走行車120は、
図7に示すように車体内部に第一錘321と第二錘322を備えるので、使用環境に応じて車体が小型化される場合でも、車体の小型化により車重が軽量化した分を第一錘321と第二錘322の重量で補填できる。これにより、車体の小型化による軽量化を回避して、搬送重量を維持できる。
【0079】
特に本実施形態では、
図5などを参照して説明したように、搬送対象の棚130を牽引するために自律走行車120は棚130の底板400の下方のスペースに進入して棚130と連結する。このため、自律走行車120の高さ寸法は、搬送対象の構成によって制約を特に受けやすい。錘によって軽量化を回避する構成とすれば、車体の高さ寸法を増やさずに薄くしつつ車重を増やすことが容易となるので、特に有利である。
【0080】
また、本実施形態に係る自律走行車120は、内部に第一錘321と第二錘322を備えることにより、
図9に示す重心位置Gを所望の位置に調整することができる。
【0081】
例えば
図9に示すように、平面視において、一対の駆動輪231のそれぞれの接地部分を、回転軸C1の直下の位置と仮定して接地点P1、P2とする。また、一対の従動輪232のそれぞれの接地部分を、回転軸C2の直下の位置と仮定して接地点P3、P4とする。
【0082】
このとき、一対の駆動輪231のそれぞれの接地点P1、P2と、一対の従動輪232の一方の接地点P3とにより形成される第一の三角形T1と、一対の駆動輪231のそれぞれの接地点P1、P2と、一対の従動輪232の他方の接地点P4とにより形成される第二の三角形T2と、を考える。
図9には、第一の三角形T1を点線で図示し、第二の三角形T2を二点鎖線で図示している。
【0083】
第一の三角形T1と、第二の三角形T2とは、共に三角形状の3つの頂点のうちの2つとして一対の駆動輪231の接地点P1、P2を含み、かつ、共に三角形状の一辺として接地点P1、P2を結ぶ線分を含む。このため、第一の三角形T1と、第二の三角形T2とは、この線分を含む一部分が必ず重畳する。また、第一の三角形T1と、第二の三角形T2とは、接地点P1、P2を結ぶ線分を共通の底辺とし、それぞれ一対の従動輪232の接地点P3、P4を三角形状の残りの1つの頂点とする配置となる。このため、第一の三角形T1と、第二の三角形T2との重畳部分は底辺を一辺とする三角形T3となる。本実施形態では、
図9に示すように、第一の三角形T1及び第二の三角形T2の重畳部分の三角形T3の内部に自律走行車120の重心Gが配置されるように、第一錘321及び第二錘322の位置及び重量が調整される。
【0084】
この構成により、上述の車体の小型化による軽量化を回避できるという効果に加えて、一対の駆動輪231に荷重を充分にかけることができるので、駆動輪231の接地圧を向上でき、駆動輪231による駆動力をより効率良く発生することが可能となる。これにより、重心位置Gが
図9に示す重畳部分T3から外れている場合と比較して、駆動源233から駆動輪231に同一の動力が伝達される場合でも、より大きな駆動力を出力することが可能となるので、車両の搬送重量を向上できる。
【0085】
なお、重心Gの位置は、第一の三角形T1及び第二の三角形T2の重畳部分の三角形T3のy方向高さの中心に配置されるのが好ましい。自律走行車120の搬送性能は床反力中心の位置に依存するが、床反力中心は床に置かれて静止している際は、自律走行車120の重心Gの位置に等しい。自律走行車120の床反力中心は、搬送時に搬送対象から受ける反力や、走行中の加減速などの影響で移動する状況が生じ得る。このように床反力中心が変動する場合でも、加減速の加速度が同じ場合は、重心Gを三角形T3のy方向高さの中心に配置しておけば、床反力中心が三角形T3から外れる可能性を最も低くできる。これにより、搬送対象の牽引中に自律走行車120の搬送性能の変動を抑制できる。
【0086】
また、本実施形態の自律走行車120は、駆動輪231と従動輪232との間に設置される第一錘321と、駆動輪231を挟んで従動輪232と反対側に配置される第二錘322と、を備えてもよい。この構成により、2つの錘の位置と重量を調整して重心Gの位置調整ができるので、錘の調整の自由度を増やすことが可能となる。これにより、自律走行車120のサイズや搬送重量の条件に応じたよりきめ細かい重心Gの調整が可能となり、自律走行車120の汎用性を向上できる。
【0087】
また、本実施形態の自律走行車120では、第一錘321は、第二錘322より重く形成されるのが好ましい。この構成により、第一錘321と第二錘322との重量差によって、駆動輪231と従動輪232との間に重心Gを配置しやすくできるので、重心Gの位置調整を容易にできる。
【0088】
なお、本実施形態では、自律走行車120の内部に第一錘321と第二錘322の2つの錘が設置される構成を例示したが、少なくとも第一の三角形T1及び第二の三角形T2の重畳部分の三角形T3の内部に自律走行車120の重心Gが配置されるように錘により調整することが可能であればよく、この構成に限られない。例えば上記の重心Gの条件を満たすことができれば、駆動輪231と従動輪232との間に設置される第一錘321のみを備える構成でもよい。また、3つ以上の錘を車体内部の任意の位置に配置する構成でもよい。
【0089】
また、第一錘321及び第二錘322は、
図7の例では車体内部の他の部品とは別の単独の部品として設ける構成を例示しているが、自律走行車120の重心Gを調整する機能を発揮できるものあればよく、単独部品に限られない。例えば第1制御基板311や第2制御基板312の基板自体を厚く形成して基板自体の重量を増やす構成や、車体内部のシャーシなどの既存部品の一部として追加する構成でもよい。
【0090】
本実施形態では上述のように、第1制御基板311は、例えば、電子デバイスを制御し、第2制御基板312は、例えば、駆動デバイスを制御する。言い換えると、第1制御基板311は、自律走行車120に搭載される各種センサ(LIDAR212など)やアプリケーションを制御する。第2制御基板312は、アクチュエータ(駆動源233など)やバッテリ323などを制御する。
【0091】
第1制御基板311と第2制御基板312には、共に演算処理用のICチップが搭載されてもよい。第1制御基板311は主に第2制御基板312よりも相対的に高負荷な処理を行うため、第1制御基板311には相対的に性能の高いCPU(Central Processing Unit)が搭載されてもよい。一方、第2制御基板312は低負荷で低遅延が必要な処理を行うため、第2制御基板312には相対的に性能の低いMCU(Micro Controller Unit)が搭載されてもよい。
【0092】
また、第1制御基板311と第2制御基板312との処理性能の差別化のために、第1制御基板311にはDRAM(Dynamic Random Access Memory)が搭載され、第2制御基板312にはDRAMが搭載されない構成、または、第1制御基板311と第2制御基板312の両方にDRAMが搭載されるが、第1制御基板311のほうがDRAMの容量が大きい構成としてもよい。
【0093】
第1制御基板311と第2制御基板312とは通信可能に電気的に接続され、第1制御基板311から第2制御基板312にアクチュエータ制御の指令を出力することができる。
【0094】
上述のように、
図7に示すようにバッテリ323は第2制御基板312の下方に配置されてもよい。第2制御基板312はバッテリ323の充電や放電の動作を制御する機能を有するので、バッテリ323と有線で接続する必要がある。この配置により、第2制御基板312とバッテリ323との物理的な距離を短くできるので、バッテリ323までの配線も短くでき、配線を簡略化できる。
【0095】
本実施形態では、
図7、
図8に示すように、第1制御基板311は駆動輪231と従動輪232との間に設置され、第2制御基板312は駆動輪231を挟んで従動輪232と反対側、すなわち駆動輪231より車体後方側に設置されてもよい。そして本実施形態では、
図7に示すように、金属製の第一錘321は第1制御基板311の直下に設置される。
【0096】
第1制御基板311は、第2制御基板312と比較して高負荷処理を行うため、発熱量が大きくなる傾向がある。本実施形態では、金属製の第一錘321を第1制御基板311の直下に設置する構成により、第1制御基板311の全体を第一錘321と接続し、第一錘321によって第1制御基板311の熱を逃がす放熱構造を構成することができる。
【0097】
ここで、自律走行車120は
図8に示すように、放熱機能を有するファン306を備えてもよい。しかし、自律走行車120を室内で利用する場合、車体の高さ制限によりファン306を小型化する必要がある。また、静かな室内環境でも動き、音声認識を入れるためファン306を静音化する必要もある。本実施形態ではこのような制約があるため、自律走行車120に搭載できるファン306の放熱機能が制限される。そこで本実施形態では、上述のように第一錘321が第1制御基板311の放熱機能を発揮することによって、制約を受けるファン306の放熱機能を補填できる。これによりファン306をさらに小型化でき、自律走行車120の小型化を促進できる。
【0098】
また、金属製の錘は熱容量が大きく蓄熱できるため、基板からの放熱時は熱平衡状態になるまで長時間稼働できる。一方、放熱に時間がかかるが、自律走行車120は人の命令により動く機器のため、夜間など稼働していない時間を長くとることで錘の放熱ができる。したがって、金属製の第一錘321を第1制御基板311の放熱構造として利用する構成とすれば、自律走行車120の放熱機能の低コスト化や長寿命化を図ることができる。
【0099】
また、金属製の第一錘321を第1制御基板311の放熱構造として利用する場合、第一錘321のうち少なくとも第1制御基板311と接触する部分には、熱伝導率が高いアルミや銅を用いるのが好ましい。同様に、第1制御基板311上で大電流が必要なICの直下の部分に限定して、熱伝導率が高く熱を逃がしやすいアルミや銅を用いる構成でもよい。
【0100】
図10を参照して内部構造の変形例を説明する。
図10は、内部構造の変形例に係る自律走行車120の縦断面図である。
【0101】
図10に示すように、自律走行車120の車体内部にグランド部品324を設ける構成としてもよい。グランド部品324は、第一部分324Aと、第二部分324Bと、第三部分324Cと、第四部分324Dと、第五部分324Eと、第六部分324Fと、が連結されて一体的な部品として構成されてもよい。グランド部品324は金属材料で形成されてもよい。
図10では、グランド部品324の各部分の境界が点線で図示されている。
【0102】
第一部分324Aは、ToFカメラ222の下面に沿って配置されてもよく、ToFカメラ222が電気的に接続されてもよい。第一部分324Aは、例えばアルミや銅などの熱伝導率の高い金属材料で形成されるのが好ましい。
【0103】
第二部分324Bは、第一部分324Aと第三部分324Cとを連結してもよい。第二部分324Bは例えば鉄などの任意の金属材料で形成されてもよい。
【0104】
第三部分324Cは、第1制御基板311の直下に配置されてもよく、第1制御基板311が電気的に接続されてもよい。また、第三部分324Cは、上記実施形態の第一錘321と同様の機能も有する。第三部分324Cは例えば鉄など比重が大きい金属材料で形成されてもよい。また、第三部分324Cのうち第1制御基板311との接触部分324C1はアルミや銅などの熱伝導率の高い金属材料で形成されてもよい。
【0105】
第四部分324Dは、第三部分324Cと、第五部分324E及び第六部分324Fとを連結してもよい。第四部分324Dは、例えばロック装置211の下方に連結されるソレノイド280の外周を包囲するよう形成されてもよい。第四部分324Dは例えば鉄などの任意の金属材料で形成されてもよい。
【0106】
第五部分324Eは、第2制御基板312の直下に配置され、第2制御基板312が電気的に接続されてもよい。第五部分324Eは、例えばアルミや銅などの熱伝導率の高い金属材料で形成されてもよい。
【0107】
第六部分324Fは、バッテリ323の直下に配置されてもよい。また、第六部分324Fは、上記実施形態の第二錘322と同様の機能も有する。第六部分324Fは例えば鉄など比重が大きい金属材料で形成されてもよい。
【0108】
グランド部品324のうち、少なくとも車体内部の他部品のToFカメラ222、第1制御基板311、第2制御基板312と接続する第一部分324A、第三部分324C、第五部分324Eは、幅方向の寸法が各部品の幅方向の寸法と同様の長さで形成されてもよい。これにより、ToFカメラ222、第1制御基板311、第2制御基板312の全面と接触することができる。
【0109】
グランド部品324は、第一部分324AにてToFカメラ222と電気的に接続されてもよく、第三部分324Cにて第1制御基板311と電気的に接続されてもよく、第五部分324Eにて第2制御基板312と電気的に接続されてもよい。これにより、グランド部品324は、ToFカメラ222、第1制御基板311、第2制御基板312の共通のグランドとして機能する。
【0110】
また、グランド部品324は、車体内部の前方のToFカメラ222から、後方の第2制御基板312までの間、すなわち車体内部の前後方向の大部分を板金で繋げてもよい。これにより、車体の剛性強化と、車体内部の各部品の放熱効果とを両立できる。グランド部品324の第四部分324Dは、
図10に示すようにロック装置211の下方に連結されるソレノイド280の外周に配置されてもよい。これにより、グランド部品324は、第四部分324Dを介してロック装置211から伝達されるドッキングの牽引荷重を受けることができる。また、グランド部品324が牽引荷重を受けることができると、ロック装置211と駆動輪231とが同軸C1上に配置することを維持でき、ロック装置211と駆動輪231(駆動源233)との位置関係が歪まないようにすることができる。さらに、サスペンションなどの緩衝装置を追加しなくても、これらの牽引荷重を受けることや、歪み防止を実現できる。
【0111】
本実施形態では、
図8を参照して説明したように、一対の駆動輪231の回転軸は同軸C1上に形成されており、ソレノイド式のロック装置211は、同軸C1上において、駆動輪231の一方と駆動輪231の他方との中心位置に設置されてもよい。さらに、一対の駆動輪231とロック装置211は、平面視において車体の前後方向の中央Cより後方側に配置されてもよい。
【0112】
図11は、駆動輪231とロック装置211を車体後方側に配置する利点を説明する図である。
図10に示すように、駆動輪231とロック装置211を車体後方側に配置することにより、搬送対象の棚130とドッキングした状態において、車体の後端が棚130からはみ出ることを抑制できる。このように車体の後端が棚130からはみ出ないようにドッキングできると、例えば棚130を壁260に寄せて設置する際に、自律走行車120の車体の後端が壁260と棚130との間に介在して棚130の壁260への接近を阻害することを防止できるので、棚130の移動をより円滑にできる。また、棚130を壁260と近接する位置まで移動させた状態で、ロック装置211と突起440との係合を解除すれば、自律走行車120は前進するだけで棚130を壁際に設置したままで、棚130から容易に離れることができる。このように、家具を壁まで寄せる際にドッキングやアンドッキングをしやすくできる。
【0113】
さらに、駆動輪231とロック装置211を車体後方側に配置することにより、
図10に示すように棚130の突起440との連結位置を棚130の中央に近い位置にしやすくできる。これにより、棚130と連結した状態における、棚130を含めた自律走行車120の旋回半径Rを小さくできる。旋回半径Rを小さくできると、自律走行車120が搬送対象の棚130を牽引する際に小回りが可能となり、より狭い空間内での移動が可能となるので、汎用性をさらに向上できる。
【0114】
なお、自律走行車120の各部寸法は例えば下記のとおりである。
・車体の前後方向の寸法:389mm
・車体の幅方向の寸法:240mm
・車体前端からの駆動輪231の回転軸C1までの距離:239mm
・従動輪232と駆動輪231との間のホイールベース:183.5mm
・一対の従動輪232の旋回軸C3間の距離:154mm
・駆動輪231の直径:91mm
・一対の駆動輪231のトレッド(各駆動輪231の接地中心間の距離):200mm
【0115】
また、本実施形態では、車体の前後左右方向の側面を形成するカバー部材のうち、前面RGBカメラ221とToFカメラ222が設置される前面部分(
図2参照)と、後面RGBカメラ320が設置される後面部分(
図4参照)は、前面部分と後面部分との間に配置される左右側面部分と別部材で形成されてもよい。カバー部材の前面部分は、前方側からネジ締結などによって車体に固定されてもよい。カバー部材の後面部分は、後方側からネジ締結などによって車体に固定されてもよい。カバー部材の左右側面部分は、上方側からネジ締結などによって車体に固定されてもよい。また、車体の上面210を形成する天板は、例えば両面テープなどによって側面のカバー部材に固定されてもよい。
【0116】
カバー部材は、車両内部の各種部品のメンテナンス用に取り外すことがある。一方、前面RGBカメラ221、ToFカメラ222、後面RGBカメラ320などの各カメラは、撮像画像に基づく物体認識などの精度を維持するために、車体との相対位置関係を一定に維持するのが望ましい。このため、カバー部材を取り外す際にも、カメラとカメラカバーの位置関係を動かしたくない。そこで本実施形態では、カバー部材のうち、前面RGBカメラ221とToFカメラ222が設置される前面部分と、後面RGBカメラ320が設置される後面部分と、を左右側面及び上面部分と別部材で形成し、メンテナンス時には左右側面及び上面部分のみを取り外す構成とする。この構成により、車両に搭載される各カメラの精度を維持しつつ、メンテナンス性も確保できる。
【0117】
また、前面RGBカメラ221、ToFカメラ222、後面RGBカメラ320などの各カメラをなるべく外側に近くするため、また、前後方向に各カメラや他の機能(照明、スイッチなど)を持たせるためには、各カメラが設置されるカバー部材の前面部分と後面部分を前後方向から車体に固定できる構造とすると都合が良い。
【0118】
[その他の実施形態]
本明細書(請求項を含む)において、「a、b及びcの少なくとも1つ(一方)」又は「a、b又はcの少なくとも1つ(一方)」の表現(同様な表現を含む)が用いられる場合は、a、b、c、a-b、a-c、b-c又はa-b-cのいずれかを含む。また、a-a、a-b-b、a-a-b-b-c-c等のように、いずれかの要素について複数のインスタンスを含んでもよい。さらに、a-b-c-dのようにdを有する等、列挙された要素(a、b及びc)以外の他の要素を加えることも含む。
【0119】
本明細書(請求項を含む)において、「データを入力として/を用いて/データに基づいて/に従って/に応じて」等の表現(同様な表現を含む)が用いられる場合は、特に断りがない場合、データそのものを用いる場合や、データに何らかの処理を行ったもの(例えば、ノイズ加算したもの、正規化したもの、データから抽出した特徴量、データの中間表現等)を用いる場合を含む。また、「データを入力として/を用いて/データに基づいて/に従って/に応じて」何らかの結果が得られる旨が記載されている場合(同様な表現を含む)、特に断りがない場合、当該データのみに基づいて当該結果が得られる場合や、当該データ以外の他のデータ、要因、条件及び/又は状態にも影響を受けて当該結果が得られる場合を含む。また、「データを出力する」旨が記載されている場合(同様な表現を含む)、特に断りがない場合、データそのものを出力として用いる場合や、データに何らかの処理を行ったもの(例えば、ノイズ加算したもの、正規化したもの、データから抽出した特徴量、各種データの中間表現等)を出力として用いる場合を含む。
【0120】
本明細書(請求項を含む)において、「接続される(connected)」及び「結合される(coupled)」との用語が用いられる場合は、直接的な接続/結合、間接的な接続/結合、電気的(electrically)な接続/結合、通信的(communicatively)な接続/結合、機能的(operatively)な接続/結合、物理的(physically)な接続/結合等のいずれをも含む非限定的な用語として意図される。当該用語は、当該用語が用いられた文脈に応じて適宜解釈されるべきであるが、意図的に或いは当然に排除されるのではない接続/結合形態は、当該用語に含まれるものして非限定的に解釈されるべきである。
【0121】
本明細書(請求項を含む)において、「AがBするよう構成される(A configured to B)」との表現が用いられる場合は、要素Aの物理的構造が、動作Bを実行可能な構成を有するとともに、要素Aの恒常的(permanent)又は一時的(temporary)な設定(setting/configuration)が、動作Bを実際に実行するように設定(configured/set)されていることを含んでよい。例えば、要素Aが汎用プロセッサである場合、当該プロセッサが動作Bを実行可能なハードウェア構成を有するとともに、恒常的(permanent)又は一時的(temporary)なプログラム(命令)の設定により、動作Bを実際に実行するように設定(configured)されていればよい。また、要素Aが専用プロセッサ、専用演算回路等である場合、制御用命令及びデータが実際に付属しているか否かとは無関係に、当該プロセッサの回路的構造等が動作Bを実際に実行するように構築(implemented)されていればよい。
【0122】
本明細書(請求項を含む)において、含有又は所有を意味する用語(例えば、「含む(comprising/including)」、「有する(having)」等)が用いられる場合は、当該用語の目的語により示される対象物以外の物を含有又は所有する場合を含む、open-endedな用語として意図される。これらの含有又は所有を意味する用語の目的語が数量を指定しない又は単数を示唆する表現(a又はanを冠詞とする表現)である場合は、当該表現は特定の数に限定されないものとして解釈されるべきである。
【0123】
本明細書(請求項を含む)において、ある箇所において「1つ又は複数(one or more)」、「少なくとも1つ(at least one)」等の表現が用いられ、他の箇所において数量を指定しない又は単数を示唆する表現(a又はanを冠詞とする表現)が用いられているとしても、後者の表現が「1つ」を意味することを意図しない。一般に、数量を指定しない又は単数を示唆する表現(a又はanを冠詞とする表現)は、必ずしも特定の数に限定されないものとして解釈されるべきである。
【0124】
本明細書において、ある実施形態の有する特定の構成について特定の効果(advantage/result)が得られる旨が記載されている場合、別段の理由がない限り、当該構成を有する他の1つ又は複数の実施形態についても当該効果が得られると理解されるべきである。但し、当該効果の有無は、一般に種々の要因、条件及び/又は状態に依存し、当該構成により必ず当該効果が得られるものではないと理解されるべきである。当該効果は、種々の要因、条件及び/又は状態が満たされたときに実施形態に記載の当該構成により得られるものに過ぎず、当該構成又は類似の構成を規定したクレームに係る発明において、当該効果が必ずしも得られるものではない。
【0125】
本明細書(請求項を含む)において、複数のハードウェアが所定の処理を行う場合、各ハードウェアが協働して所定の処理を行ってもよいし、一部のハードウェアが所定の処理の全てを行ってもよい。また、一部のハードウェアが所定の処理の一部を行い、別のハードウェアが所定の処理の残りを行ってもよい。本明細書(請求項を含む)において、「1又は複数のハードウェアが第1の処理を行い、前記1又は複数のハードウェアが第2の処理を行う」等の表現(同様な表現を含む)が用いられている場合、第1の処理を行うハードウェアと第2の処理を行うハードウェアは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。つまり、第1の処理を行うハードウェア及び第2の処理を行うハードウェアが、前記1又は複数のハードウェアに含まれていればよい。なお、ハードウェアは、電子回路、電子回路を含む装置等を含んでよい。
【0126】
本明細書(請求項を含む)において、複数の記憶装置(メモリ)がデータの記憶を行う場合、複数の記憶装置のうち個々の記憶装置は、データの一部のみを記憶してもよいし、データの全体を記憶してもよい。また、複数の記憶装置のうち一部の記憶装置がデータを記憶する構成を含んでもよい。
【0127】
以上、本開示の実施形態について詳述したが、本開示は上記した個々の実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲において、種々の追加、変更、置き換え、部分的削除等が可能である。例えば、前述した実施形態において、数値又は数式を説明に用いている場合、これらは例示的な目的で示されたものであり、本開示の範囲を限定するものではない。また、実施形態で示した各動作の順序も例示的なものであり、本開示の範囲を限定するものではない。
【0128】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
【0129】
<1> 駆動輪と、
前記駆動輪に対して車体の前後方向に離間した位置に配置される従動輪と、
搬送対象と連結可能な連結部と、
前記駆動輪と前記従動輪との間に設置される第一錘と、
を備える自律走行車。
【0130】
<2> 前記自律走行車の車体内部に設置された第一制御基板を備える、
前記<1>に記載の自律走行車。
【0131】
<3> 前記第一制御基板は、前記第一錘の直上に配置される又は前記第一錘と接続している、
前記<2>に記載の自律走行車。
【0132】
<4> 前記駆動輪を挟んで前記従動輪と反対側に設置される第二錘と、
を備え、
前記第一制御基板は、前記第一錘の直上に配置される又は前記第一錘と接続している、
前記<2>に記載の自律走行車。
【0133】
<5> 前記第一錘は、前記第二錘より重く形成される、
前記<4>に記載の自律走行車。
【0134】
<6> 前記自律走行車の車体内部に設置された第二制御基板を備え、
前記第二制御基板は前記駆動輪を挟んで前記従動輪と反対側に設置される、
前記<4>に記載の自律走行車。
【0135】
<7> 一対の前記駆動輪と、一対の前記従動輪とを備え、
平面視において、前記一対の駆動輪のそれぞれと、前記一対の従動輪の一方とにより形成される第一の三角形と、前記一対の駆動輪のそれぞれと、前記一対の従動輪の他方とにより形成される第二の三角形と、の重畳部分に前記自律走行車の重心が配置されるように、前記第一錘の位置及び重量が調整される、
前記<1>に記載の自律走行車。
【0136】
<8> 前記駆動輪を挟んで前記従動輪と反対側に設置される第二錘と、
を備える、前記<7>に記載の自律走行車。
【0137】
<9> 前記第一錘は、前記第二錘より重く形成される、
前記<8>に記載の自律走行車。
【0138】
<10> 前記自律走行車の車体内部に設置された第一制御基板と、第二制御基板と、を備え、
前記第一制御基板は前記駆動輪と前記従動輪との間に設置され、
前記第二制御基板は前記駆動輪を挟んで前記従動輪と反対側に設置され、
前記第一錘は金属製であり、前記第一制御基板の直下に設置される、
前記<8>に記載の自律走行車。
【0139】
<11> 前記自律走行車の車体内部に設置されるバッテリを備え、
前記第二制御基板は前記バッテリの動作を制御し、
前記バッテリは前記第二制御基板の下方に配置される、
前記<10>に記載の自律走行車。
【0140】
<12> 前記第一制御基板と前記第二制御基板とに電気的に接続され、共通のグランドとして機能するグランド部品を備え、
前記グランド部品は、前記第一錘に対応する部分と、前記第二錘に対応する部分も含み、一体的な部品として構成される、
前記<10>に記載の自律走行車。
【0141】
<13> 前記自律走行車の車体は平面視において略長方形状であり、進行方向の前後方向が長辺であり、
前記駆動輪は一対の駆動輪が前記車体の幅方向両側に配置され、前記一対の駆動輪が前記幅方向に沿った同軸上に配置され、
前記連結部は、前記同軸上において、前記一対の駆動輪の一方と他方との中心位置に設置され、
前記一対の駆動輪と前記連結部は、平面視において前記前後方向の中央より後方側に配置される、
前記<1>に記載の自律走行車。
【0142】
<14> 前記自律走行車の前方の物体を撮像する前面カメラと、
前記自律走行車の後方の物体を撮像する後面カメラと、
前記自律走行車の車体の前後左右方向の側面を形成し、前記前面カメラと前記後面カメラが設置されるカバー部材と、
を備え、
前記カバー部材は、前記前面カメラが設置される前面部分と、前記後面カメラが設置される後面部分と、前記前面部分と前記後面部分との間に配置される左右側面部分とが別部材で形成される、
前記<1>に記載の自律走行車。
【0143】
<15> 前記前面部分は、前記自律走行車の前方側から前記車体に固定され、
前記後面部分は、前記自律走行車の後方側から前記車体に固定される、
前記<14>に記載の自律走行車。