(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108298
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】加飾成形品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20240805BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20240805BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240805BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
B29C45/14
B32B7/027
B32B27/30 A
B32B27/00 E
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012596
(22)【出願日】2023-01-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-07-17
(71)【出願人】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】NISSHA株式会社
(72)【発明者】
【氏名】友部 優紀
(72)【発明者】
【氏名】北村 真一
【テーマコード(参考)】
4F100
4F206
【Fターム(参考)】
4F100AK15
4F100AK15B
4F100AK22
4F100AK22B
4F100AK25
4F100AK25A
4F100AK25C
4F100AR00D
4F100AR00E
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100CB00
4F100CB00B
4F100EH36
4F100HB00
4F100HB00C
4F100JA05
4F100JK12
4F100JK12D
4F100JL11
4F100JL11B
4F100JN06
4F100JN06E
4F206AA21
4F206AC03
4F206AD05
4F206AD09
4F206AD20
4F206AD34
4F206AF01
4F206AH26
4F206AH42
4F206AR13
4F206JA07
4F206JB12
4F206JB19
4F206JL02
(57)【要約】
【課題】良好な鉛筆硬度と伸びやすさを併せ持つ加飾シートを用い、かつ、加飾シートと射出成形体が良好に密着した加飾成形体を提供することを目的とする。
【解決手段】加飾成形品10は、Tgが110℃~130℃であるアクリル系樹脂からなる射出成形体11と、射出成形体11の上に塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂からなる接着層13を介して形成された加飾シート12とを備えている。
加飾シート12は、Tgが90℃~130℃であるアクリル系樹脂からなる基材14と、基材の上に形成されたハードコート層15と、ハードコート層15の上に形成された反射防止層16とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度が110℃~130℃であるアクリル系樹脂からなる射出成形体と、
前記射出成形体の上に形成された、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂からなる接着層と、
前記接着層の上に形成された加飾シートとを備え、
前記加飾シートは、ガラス転移温度が90℃~130℃であるアクリル系樹脂からなる基材と、前記基材の上に形成されたハードコート層と、前記ハードコート層の上に形成された反射防止層とを有し、
前記加飾シートの前記基材が前記射出成形体と接着された、加飾成形品。
【請求項2】
前記加飾シートの前記反射防止層側から測定された、鉛筆硬度が2B~3Hである、請求項1に記載の加飾成形品。
【請求項3】
前記加飾シートは、温度120℃において、前記加飾シートの10mm×100mmの試験片をチャック間距離40mm、標線間距離40mmで固定し、前記試験片の一端を200mm/分の一定速度で荷重をかけて引張試験を実施したときのクラック又は白化が発生した時の伸び率が100%~160%である、請求項1に記載の加飾成形品。
【請求項4】
前記ハードコート層は、アクリル樹脂ビーズを含み、前記反射防止層が形成された面に微細な凹凸を有する、請求項1に記載の加飾成形品。
【請求項5】
前記接着層と前記基材との間、又は、前記射出成形体の前記接着層が形成された面とは反対側の面に、加飾層を更に備えた、請求項1に記載の加飾成形品。
【請求項6】
前記射出成形体の前記接着層が形成された面とは反対側の面に、基体シートを更に備え、
前記基体シートと前記射出成形体との間、又は、前記基体シートの前記射出成形体が形成された面とは反対側の面に、加飾層を更に備えた、請求項1に記載の加飾成形品。
【請求項7】
ガラス転移温度が90℃~130℃であるアクリル系樹脂からなる基材と、前記基材の上に形成されたハードコート層と、前記ハードコート層の上に形成された反射防止層とを備えた、加飾シートを準備する工程と、
前記基材の前記ハードコート層が形成された面とは反対側の面に、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂からなる接着層を形成する工程と、
第1金型と、型締めによって前記第1金型との間にキャビティを形成する第2金型とを有する射出成形金型に、前記反射防止層が前記射出成形金型の前記第1金型のキャビティ面に向くように、前記接着層が形成された前記加飾シートを配置する工程と、
前記接着層が形成された前記加飾シートを前記第1金型のキャビティ面の形状に沿って立体的に成形する工程と、
前記射出成形金型を型締めする工程と、
前記キャビティ内にガラス転移温度が90℃~130℃であるアクリル系樹脂からなる溶融樹脂を射出して射出成形体を成形すると同時に、前記射出成形体の表面に前記接着層を介して前記加飾シートを固着する工程と、
前記射出成形金型を型開きして、前記射出成形体を取り出す工程とを備えた、加飾成形品の製造方法。
【請求項8】
前記射出成形金型を型締めする工程の前に、基体シートと前記基体シートの上に形成された加飾層とを備えた、インサートシートを準備する工程、及び、前記基体シート又は前記加飾層が前記射出成型金型の前記第2金型のキャビティ面に向くように前記インサートシートを配置する工程とを更に備え、
前記射出成形体の表面に前記接着層を介して前記加飾シートを固着する工程は、前記キャビティ内にガラス転移温度が90℃~130℃であるアクリル系樹脂からなる溶融樹脂を射出して射出成形体を成形すると同時に、前記射出成形体の前記第1金型側の面に前記接着層を介して前記加飾シートを固着し、前記射出成形体の前記第2金型側の面に前記インサートシートの前記基体シート又は前記加飾層を固着する工程である、請求項7に記載の加飾成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加飾成形品及びその製造方法に関し、特に、良好な鉛筆硬度と伸びやすさを併せ持つ加飾シートを用いた、加飾成形品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、射出成形金型内で加飾シートと射出成形体を一体化するインモールド成形により、加飾成形品が製造されている。このような加飾成形品は、自動車の内装、電化製品の外装、ディスプレイのカバーパネルなどに使用されている。例えば、特許文献1には、アクリル系樹脂フィルムを用いた耐高温耐高湿性の加飾シートを立体形状に賦形し、その賦形された加飾シートを射出成形金型内に配置した後、溶融樹脂を射出することで加飾シートと射出成形体を一体化させて、車載用ディスプレイのカバーパネルを製造することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来のディスプレイのカバーパネルでは、良好な鉛筆硬度が要求される場合に、加飾シートにハードコート層を用いることがある。しかしながら、ハードコート層のみによって鉛筆硬度を高めた場合、加飾シートが伸びにくく、クラックが発生しやすい場合があった。射出成形金型に加飾シートを配置する前に加飾シートをプレフォームする場合には、予備加熱温度が80℃~160℃程度といった、比較的ゆるやかな条件で賦形できるため、上記のような加飾シートを用いてもクラックが発生しにくい。一方、射出成形金型内で、加飾シートを立体形状にフォーミングする場合においては、200℃~400℃程度といった高温かつ短時間の加熱条件及び吸引力のみでフォーミングするため、加飾シートにクラックが発生する可能性が高かった。このような課題を解決するために、本発明では、加飾シートの基材にガラス転移温度(Tg)が高いアクリル系樹脂を用いることで、良好な鉛筆硬度と伸びやすさを合わせ持つ加飾シートを実現した。
又、ディスプレイのカバーパネルでは、射出成形体に、耐熱性が高いポリカーボネート樹脂を使用することが一般的である。しかしながら、ポリカーボネート樹脂は鉛筆硬度が低い、成形温度が高いため加飾シートがダメージを受けやすい、複屈折によって虹見えが起きやすいといった課題があった。このような課題から、本発明では、これらの課題を解決できる、Tgが高い耐熱アクリル系樹脂を射出成形体に用いることを検討した。ところが、加飾シートの基材である耐熱アクリル系樹脂と射出成形体に用いる耐熱アクリル系樹脂は、互いに接着しにくく、加飾シートの基材と射出成形体との間に一般的な接着層を適用したとしても、加飾シートの基材と射出成形体が良好に密着しないといった、新たな課題を発見した。この課題は、特に、射出成形時の最終充填部のような温度が低くなりやすい部位において、顕著である。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、良好な鉛筆硬度と伸びやすさを併せ持つ加飾シートを用い、かつ、加飾シートと射出成形体が良好に密着した加飾成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、ガラス転移温度が110℃~130℃であるアクリル系樹脂からなる射出成形体と、射出成形体の上に形成された、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂からなる接着層と、接着層の上に形成された加飾シートとを備え、加飾シートは、ガラス転移温度が90℃~130℃であるアクリル系樹脂からなる基材と、基材の上に形成されたハードコート層と、ハードコート層の上に形成された反射防止層とを有し、加飾シートの基材が射出成形体と接着された、加飾成形品である。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、加飾シートの反射防止層側から測定された、鉛筆硬度が2B~3Hである、加飾成形品である。
【0008】
第3の発明は、第1の発明において、加飾シートは、温度120℃において、加飾シートの10mm×100mmの試験片をチャック間距離40mm、標線間距離40mmで固定し、試験片の一端を200mm/分の一定速度で荷重をかけて引張試験を実施したときのクラック又は白化が発生した時の伸び率が100%~160%である、加飾成形品である。
【0009】
第1の発明から第3の発明のように構成すると、射出成形体に、一般的なアクリル系樹脂よりもTgが高いアクリル系樹脂を用いることから、耐熱性を有する。又、射出成形体がアクリル樹脂であることから、複屈折が起こりにくい。そのため、ディスプレイのカバーパネルに用いても、画面が不鮮明になりにくい。
又、加飾シートの基材に、一般的なアクリル系樹脂よりもTgが高いアクリル系樹脂を用いることから、加飾シートが硬さと伸びやすさを併せ持つ。そのため、ハードコート層のみで加飾シートの鉛筆硬度を高める場合と比較して、硬さを維持しながら、クラックが発生しにくい加飾シートとなる。
更に、接着層に塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂を用いていることから、互いに接着しにくいTgが高いアクリル系樹脂からなる射出成形体とTgが高いアクリル系樹脂からなる加飾シートの基材とが良好に接着する。そのため、射出成形体と加飾シートの基材とが剥離しにくい加飾成形体となる。
【0010】
第4の発明は、第1の発明において、ハードコート層は、アクリル樹脂ビーズを含み、反射防止層が形成された面に微細な凹凸を有する、加飾成形品である。
【0011】
このように構成すると、アクリル樹脂ビーズによって、ハードコート層に写り込みを抑制する機能を付与しているため、写り込みを抑制するために一般的に添加される粒子であるシリカビーズを用いた場合と比較して、クラックが発生しにくく、耐薬品性が高い加飾成形品となる。
【0012】
第5の発明は、第1の発明において、接着層と基材との間、又は、射出成形体の接着層が形成された面とは反対側の面に、加飾層を更に備えた加飾成形品である。
【0013】
第6の発明は、第1の発明において、射出成形体の接着層が形成された面とは反対側の面に、基体シートを更に備え、基体シートと射出成形体との間、又は、基体シートの射出成形体が形成された面とは反対側の面に、加飾層を更に備えた、加飾成形品である。
【0014】
第5の発明及び第6の発明のように構成すると、加飾層によって加飾成形品を装飾することができるため、様々なデザインに対応できる。
【0015】
第7の発明は、ガラス転移温度が90℃~130℃であるアクリル系樹脂からなる基材と、基材の上に形成されたハードコート層と、ハードコート層の上に形成された反射防止層とを備えた、加飾シートを準備する工程と、基材のハードコート層が形成された面とは反対側の面に、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂からなる接着層を形成する工程と、第1金型と、型締めによって第1金型との間にキャビティを形成する第2金型とを有する射出成形金型に、反射防止層が射出成形金型の第1金型のキャビティ面に向くように、接着層が形成された加飾シートを配置する工程と、接着層が形成された加飾シートを第1金型のキャビティ面の形状に沿って立体的に成形する工程と、射出成形金型を型締めする工程と、キャビティ内にガラス転移温度が90℃~130℃であるアクリル系樹脂からなる溶融樹脂を射出して射出成形体を成形すると同時に、射出成形体の表面に接着層を介して加飾シートを固着する工程と、射出成形金型を型開きして、射出成形体を取り出す工程とを備えた、加飾成形品の製造方法である。
【0016】
第8の発明は、第7の発明において、射出成形金型を型締めする工程の前に、基体シートと基体シートの上に形成された加飾層とを備えた、インサートシートを準備する工程、及び、基体シート又は加飾層が射出成型金型の前記第2金型のキャビティ面に向くようにインサートシートを配置する工程とを更に備え、射出成形体の表面に接着層を介して加飾シートを固着する工程は、キャビティ内にガラス転移温度が90℃~130℃であるアクリル系樹脂からなる溶融樹脂を射出して射出成形体を成形すると同時に、射出成形体の前記第1金型側の面に前記接着層を介して前記加飾シートを固着し、射出成形体の第2金型側の面にインサートシートの基体シート又は加飾層を固着する工程である、加飾成形品の製造方法である。
【0017】
第7の発明及び第8の発明のように構成すると、接着層に塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂を用いることから、Tgが高いアクリル系樹脂である射出成形体とTgが高いアクリル系樹脂である加飾シートの基材が接着しやすいため、射出成形体と加飾シートの基材とが剥離しにくい。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、加飾シートが良好な鉛筆硬度と伸びやすさを併せ持ち、かつ、加飾シートと射出成形体が良好に密着した加飾成形体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明の第1実施形態に係る加飾成形品の斜視図である。
【
図2】その(a)は、
図1で示すII-IIラインの概略断面図である。その(b)は、ハードコート層の概略断面図である。
【
図3】この発明の第1実施形態に係る加飾成形品の製造工程を説明する概略断面図である。
【
図4】その(a)は、引張試験機の概略平面図である。その(b)は、引張試験機の概略断面図である。
【
図5】この発明の第2実施形態に係る加飾成形品の概略断面図である。
【
図6】この発明の第3実施形態に係る加飾成形品の概略断面図である。
【
図7】この発明の第4実施形態に係る加飾成形品の概略断面図である。
【
図8】この発明の第5実施形態に係る加飾成形品の概略断面図である。
【
図9】この発明の第4実施形態に係る加飾成形品の製造工程を説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、この発明の第1実施形態に係る加飾成形品10について図を参照しながら説明する。
【0021】
図1を参照して、この発明の第1実施形態に係る加飾成形品10は、平面視が矩形形状であり、平板形状の平面部61と、平面部61の短辺側の2辺から、下方に向かって同一の高さで立ち上がる立上がり部62とを備えている。対向する2つの立上がり部62は、下方に向かって立ち上がるに従い、互いに遠ざかるように、平面部61に対して鈍角に接続されている。
図1及び
図2(a)を参照して、加飾成形品10は、射出成形体11と射出成形体11の上に接着層13を介して形成された加飾シート12とを備えている。接着層13及び加飾シート12は、射出成形体11の立上がり部62が立ち上がる方向とは反対側に形成されている。
加飾シート12は、基材14と、基材14の上に形成されたハードコート層15と、ハードコート層15の上に形成された反射防止層16とを備えている。加飾シート12の基材14が、接着層13を介して射出成形体11の上に形成される。加飾成形品10は、例えば、ディスプレイのカバーパネルや、車載の内装、電化製品の外装に適用される。
【0022】
射出成形体11は、ガラス転移温度(Tg)が高い、耐熱性のアクリル系樹脂からなる。射出成形体11のTgは、例えば、110℃~130℃である。Tgが110℃以上であれば、車載用のディスプレイのカバーパネルや車載の内装といった、高温が想定される環境に用いても、良好な耐熱性が得られる。Tgが130℃以下であれば、射出成形によって射出成形体11を形成する際に、成形温度や金型温度を高くしすぎることなく射出成形体11を成形できるため、射出成形体11の上に形成される加飾シート12がダメージを受けにくくなる。
射出成形体11の厚みは、例えば、1mm~4mmである。厚みが1mm以上であれば、射出成形時の溶融樹脂が金型内で冷めにくく、射出成形体11と加飾シート12の基材14が密着しやすくなる。厚みが4mm以下であれば、射出成形によるヒケやボイドが発生しにくくなる。
【0023】
基材14は、Tgが高い耐熱性のアクリル系樹脂からなる。基材14のTgは、例えば、90℃~130℃である。Tgが90℃以上であれば、良好な鉛筆硬度が得られる。Tgが130℃以下であれば、基材14が脆くなりにくくなる。
基材14の厚みは、例えば、90μm~250μmである。厚みが90μm以上であれば、良好な鉛筆硬度が得られる。厚みが250μm以下であれば、射出成形金型内でフォーミングする際に加飾シート12に熱が伝わりやすく、加飾シートが伸びやすくなる。
【0024】
ハードコート層15は、加飾成形品に硬度を付与する層である。ハードコート層15の材料は、熱、紫外線又は電子線等のエネルギーによって、架橋又は硬化する材料を用いることができ、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ゴム系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂や、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂等のコポリマーが挙げられる。射出成形前の加飾シート12の状態では、ハードコート層15は、硬化された状態でもよく、未硬化又は半硬化の状態でもよい。未硬化又は半硬化のハードコート層15は、加飾シート12を用いて加飾成形品10を製造した後に硬化させることができる。
ハードコート層15の厚みは、例えば、0.5μm~20μmである。厚みが0.5μm以上であれば、良好な鉛筆硬度が得られる。厚みが20μm以下であれば、ハードコート層15にクラックが発生しにくくなる。
【0025】
又、ハードコート層15に、防眩機能を付与してもよい。例えば、
図2(b)を参照して、ハードコート層15の材料中に、アクリル樹脂ビーズ65を添加することによって、防眩機能を付与できる。アクリル樹脂ビーズ65の平均粒子径は、0.5μm~3μmである。平均粒子径が0.5μm以上であれば、入射光を十分に拡散でき、平均粒子径が3μm以下であれば、アクリル樹脂ビーズ65によるギラツキを抑制できる。ここで平均粒子径とは、レーザ回折・散乱式 粒子径分布測定装置によって測定された、一次粒子の平均粒子径である。アクリル樹脂ビーズは、同じ粒子径のもののみを用いてもよく、異なる粒子径のものを組み合わせて用いてもよい。ハードコート層15は、反射防止層16が形成される面に微細な凹凸66が形成されている。微細な凹凸66は、ハードコート層15の反射防止層16側の表面近くに存在するアクリル樹脂ビーズ65によって、表面が盛り上がることで形成される。
【0026】
反射防止層16は、外光が加飾成形品10によって反射される光を弱めるための層である。反射防止層16の材料は、例えば、Al2O3、ZnO2、MgF2などの金属化合物の蒸着層や、SiO2、MgF2などの低屈折率の金属化合物とZnO2、TiO2などの高屈折率の金属化合物とを積層した蒸着層や、フッ素系ポリマーや酸化ケイ素ゲルなどからなる樹脂コーティング層などを用いることができる。また、これらを組み合わせたものであってもよい。
反射防止層16の厚みは、例えば、50nm~130nmである。厚みが50nm以上であれば、良好な鉛筆硬度が得られる。反射防止層16の厚みが低い場合には、反射防止層16が削れやすく、削れた部分の反射率変化が大きくなるため、傷を認識しやすくなってしまう。一方、厚みが130nm以下であれば、良好な反射防止効果が得られる。反射防止層16の厚みが厚過ぎると、反射防止層16とハードコート層15との界面で反射される光と、反射防止層16の表面で反射される光とが、互いに弱めあうことが困難となり、良好な反射防止効果が得られない場合がある。
【0027】
接着層13は、加飾シート12の基材14と射出成形体11を密着させるための層である。接着層13は、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂からなる。接着層13の厚みは、例えば、0.1μm~10μmである。厚みが0.1μm以上であれば、良好な密着性が得られる。厚みが10μm以下であれば、鉛筆硬度の低下を抑制できる。
【0028】
加飾成形品10は、加飾シート12の反射防止層16側から測定される鉛筆硬度が2B~3Hであることが好ましい。鉛筆硬度は、下記の方法によって測定する。鉛筆を試験面に対して45度±1度となるように設置し、荷重750g、速度2mm/sで長さが7mm以上となるように、試験面を引っかき、5回中3回以上傷が入らない硬度を加飾成形品10の鉛筆硬度とする。加飾成形品10の鉛筆硬度は、ハードコート層15のみが寄与するのではなく、基材14である高いTgを有するアクリル系樹脂とハードコート層15両方によって、良好な鉛筆硬度が得られていることが好ましい。例えば、基材14にTgが高いアクリル系樹脂を用いずに、ハードコート層15のみによって、最終的な加飾成形品10として必要とされる鉛筆硬度を達成した場合には、その硬さによって、加飾シート12が伸びにくく、クラックが発生しやすくなる。一方で、基材14にTgが高いアクリル樹脂を用い、必要とされる鉛筆硬度よりも低いハードコート層15と基材14を組み合わせて、必要とされる鉛筆硬度を達成した場合には、良好な鉛筆硬度と伸びやすさを併せ持つ加飾シート12となる。ここで、ハードコート層15の鉛筆硬度は、射出成形体11にハードコート層15のみを積層させた状態で、加飾成形品10と同じ方法によって測定される。
【0029】
又、加飾シート12は、伸び率が100%~160%であることが好ましく、130%~140%であることがより好ましい。伸び率が100%以上であれば、加飾シート12にクラックや白化が発生しにくくなる。伸び率が160%以下であれば、鉛筆硬度や反射率といった物性が低下しにくい。加飾シート12の伸び率の測定方法については、後述する。
【0030】
以上から、上記のような加飾成形品10は、射出成形体11に、一般的なアクリル系樹脂よりもTgが高いアクリル系樹脂を用いることから、耐熱性を有する。又、射出成形体にアクリル系樹脂を用いることから、複屈折が起こりにくい。そのため、ディスプレイのカバーパネルに用いても、画面が不鮮明になりにくい。
又、加飾シート12の基材14に、一般的なアクリル系樹脂よりもTgが高いアクリル系樹脂を用いることから、加飾シート12が硬さと伸びやすさを併せ持つ。そのため、ハードコート層15のみで加飾シート12の鉛筆硬度を高める場合と比較して、硬さを維持しながら、クラックが発生しにくい加飾シート12となる。
更に、接着層13に塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂を用いていることから、互いに接着しにくいTgが高いアクリル系樹脂からなる射出成形体11とTgが高いアクリル系樹脂からなる加飾シート12の基材14とが良好に接着する。そのため、射出成形体11と加飾シート12の基材14とが剥離しにくい加飾成形体10となる。
【0031】
次に、この発明の第1実施形態に係る加飾成形品10の製造方法の概略について、図を参照しながら説明する。
【0032】
図3(a)を参照して、加飾シート12を準備する。加飾シート12は、基材14と基材14の上に形成されたハードコート層15と、ハードコート層15の上に形成された反射防止層16を備えている。
図3では、加飾シート12の各層の記載は省略する。次に、加飾シート12の基材14に接着層13を形成する。尚、製造方法の説明においては、「接着層13が形成された加飾シート12」についても、「加飾シート12」と表現する。次に、射出成形金型80に、加飾シート12を配置する。射出成形金型80は、第1金型81と第2金型82とからなる。第1金型81には、加飾成形品10の形状に対応するキャビティ面83が形成され、第2金型82には、溶融樹脂を射出する射出口84が形成されている。又、第1金型81と第2金型82を型締めすることで、第1金型81と第2金型82との間に空間が形成される。この空間をキャビティ87という。加飾シート12を射出成形金型80に配置する工程では、加飾シート12は、第1金型81の上方からガイドローラ85の上を通って、反射防止層16が第1金型81のキャビティ面83に向くように、第1金型81と第2金型82の間に配置されている。次に、加飾シート12を切断刃86によって、切断する。次に、
図3(b)を参照して、200℃~400℃での加熱、及び、第1金型81側から吸引することで、加飾シート12を第1金型81のキャビティ面83の形状に沿って、立体的に成形する。次に、
図3(c)を参照して、第1金型81と第2金型82を型締めする。次に、Tgが90℃~130℃のアクリル系樹脂からなる溶融樹脂を第2金型82の射出口84から射出して、射出成形体11を成形すると同時に、射出成形体11の第1金型81側の表面と、接着層13を介して、加飾シート12を固着する。次に、射出成形金型80を型開きし、加飾シート12を固着した射出成形体11を取り出す。次に、
図3(d)を参照して、加飾シート12の不要な部分を切断刃88によってトリミングして、加飾成形品10を製造する。
【0033】
この発明の加飾シート12は、上記の製造方法のように、射出成形金型内で立体的に成形するシートとして、特に効果的に使用することができる。一般的に、射出成形前に加飾シートをプレフォームする方法では、プレフォームの加熱温度が80℃~160℃といった緩やかな条件で加工できる一方、射出成形金型内で立体的に成形する方法では、例えば200℃~400℃といった高温かつ短時間の加熱条件と、吸引力のみでフォーミングするため、クラックが発生しやすい。特に、鉛筆硬度が高い場合に、クラックが発生しやすい。この発明の加飾シート12は、良好な鉛筆硬度と伸びやすさを併せ持つため、射出成形金型内で立体的に成形するシートに用いても、クラックが発生しにくく、かつ、良好な鉛筆硬度を有する成形品となる。
【0034】
次に、接着層13として、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂を用いる場合の作用・効果について、説明する。表1を参照して、実施例1では、接着層として塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂(塩酢ビ系)を用いた。比較例1では、接着層を用いなかった。比較例2、比較例3では、それぞれアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂を接着層として用いた。又、それぞれの厚みは表1に記載の通りである。実施例1と比較例1~比較例3について、射出成形体と基材との密着具合を確認した。尚、密着具合の確認には、JISK5600-5-6に規定されるクロスカット試験を用いた。塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂を接着層に用いた実施例1のみが良好に密着する結果となった。接着層を用いなかった比較例1では、射出成形体と基材の密着性の悪さから互いに密着しなかった。比較例2においては、射出成形体と基材に用いられる樹脂と同系統の樹脂であるアクリル系樹脂を用いたにも関わらず、射出成形体と基材が良好に密着しなかった。比較例3においては、接着層として一般的によく用いられるポリエステル系樹脂を用いたが、射出成形体と基材が良好に密着しなかった。実施例1に用いた、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂のみが良好な密着性が得られた理由としては、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂には、塩化ビニルに由来する強靭性と酢酸ビニルに由来する付着性と可塑性があるため、良い密着性を示したと考えられる。
【0035】
【0036】
次に、
図4を参照して、加飾シート12の伸び率の測定方法について、説明する。
幅10mm、長さ100mmの加飾シート12の試験片71を準備する。次にチャック72によって、試験片71の上方を掴み、チャック73によって、試験片71の下方を掴む。チャック72及びチャック73によって試験片71を掴む位置は、チャック72及びチャック73に形成されたネジ74及びネジ75によって固定される。チャック72とチャック73との間の距離がチャック間距離76である。標線間距離77は、試験前のチャック間距離と同じである。加飾シート12の伸び率とは、温度120℃の条件下、チャック間距離及び標線間距離をともに40mmとし、幅10mm、長さ100mmの試験片71を固定し、チャック73を200mm/分の速度で下方に向かって移動させ、試験片71に引張力を作用させた場合に、試験片71にクラック又は白化が発生した際の伸び率をいう。ここで、伸び率とは、(試験前からクラック又は白化発生時のチャック間距離の増加量)÷(試験前のチャック間距離)×100(%)である。尚、「試験前のチャック間距離」とは、試験片71に引張力を作用させる前のチャック間距離であり、すなわち、40mmである。
【0037】
次に、防眩機能を付与する目的で、ハードコート層15にアクリル樹脂ビーズ65を用いた場合の作用・効果について説明する。
【0038】
表2を参照して、実施例2は、ハードコート層にアクリル樹脂ビーズを添加したアクリル系紫外線硬化樹脂を用いた。比較例4は、ハードコート層にシリカ粒子を添加したアクリル系紫外線硬化樹脂を用いた。アクリル樹脂ビーズ及びシリカ粒子によって、ハードコート層に防眩性が付与される。又、その他の層の材料、厚みについては、表2に記載の通りである。防眩性については、実施例2、比較例4ともに、良好であった。成形性については、実施例2は良好であった一方、比較例4では、射出成形後に加飾シートにクラックが発生した。耐薬品性は、学振形摩擦試験機(摩擦試験機II形)で、エタノールに浸漬した白綿布により、荷重200g、往復距離100mm、速度30回往復/分の条件で、加飾成形品表面の摩耗を評価した。実施例2では、加飾成形品の表面に摩耗は見られなかった一方、比較例4では、加飾成形品の表面に傷がつき、良好な耐薬品性は得られなかった。以上の結果から、防眩性は、アクリル樹脂ビーズとシリカ粒子のどちらも良好であったものの、アクリル樹脂ビーズは、シリカ粒子と比較して成形性や耐薬品性が良好であり、加飾成形品の形状や適用場所によっては、アクリル樹脂ビーズを用いることが好ましい。
【0039】
【0040】
次に、この発明の第2実施形態に係る加飾成形品20について、第1実施形態に係る加飾成形品10と異なる点を中心に説明する。
【0041】
図5を参照して、加飾成形品20は、基材24とハードコート層25と反射防止層26とを備えた加飾シート22と、射出成形体21、接着層23によって形成されている点は同じであるが、加飾シート22が更に、加飾層27を有する点で第1実施形態に係る加飾成形品10とは異なっている。加飾層27は、加飾シート22の基材25において、ハードコート層25が形成された面とは反対側に形成されており、加飾成形品20の接着層23と基材25の間に位置する。その他の層の積層順は、第1実施形態に係る加飾成形品10と同じである。
【0042】
加飾層27は、加飾成形品20を加飾するための層である。加飾層27は、例えば、グラビアインキによって形成される。グラビアインキは、バインダー樹脂と、溶剤と、着色剤とを含んでいる。バインダー樹脂としては、例えば、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂及びポリウレタン系樹脂がある。溶剤は、樹脂を溶かすためのものであり、樹脂に合わせて選定される。グラビアインキの溶剤には、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル及びイソプロピルアルコールがある。加飾層27は、例えば加飾成形品20の外周部分に部分的に形成される。
【0043】
その他の層の材料については、第1実施形態に係る加飾成形品10と同じである。
【0044】
次に、この発明の第3実施形態に係る加飾成形品30について、先の各実施形態とは異なる点を中心に説明する。
【0045】
図6を参照して、加飾成形品30は、基材34とハードコート層35と反射防止層36とを備えた加飾シート32と、射出成形体31、接着層33によって形成されている点は同じであるが、加飾シート32が更に、加飾層37を有する点で第1実施形態に係る加飾成形品10とは異なっている。又、加飾層37が形成される位置が第2実施形態に係る加飾成形品20とは異なっている。加飾成形体30の加飾層37は、加飾シート32には形成せずに、射出成形体31の接着層33が形成された面とは反対側に形成されている。
【0046】
加飾層37は、例えば、射出成形によって、射出成形体31と加飾シート32とを接着層33を介して接着させた後、シルク印刷によって、射出成形体31に形成される。加飾層37は従来からシルク印刷に用いられている材料を使用することができる。
その他の層については、先の各実施形態に係る加飾成形品と同じである。
【0047】
次に、この発明の第4実施形態に係る加飾成形品40について、先の各実施形態とは異なる点を中心に説明する。
【0048】
図7を参照して、加飾成形品40は、基材44とハードコート層45と反射防止層46とを備えた加飾シート42と、射出成形体41、接着層43によって形成されている点は同じであるが、更に、射出成形体41の接着層43が形成された面とは反対側にインサートシート47が形成されている点が、先の各実施形態とは異なっている。
【0049】
インサートシート47は、基体シート48と基体シート48の上に形成された加飾層49を備えている。インサートシート47の基体シート48が射出成形体41に積層されている。
【0050】
基体シート48は、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン、シリコン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS系樹脂などの熱可塑性樹脂およびこれらの積層品である。又、基体シート48の厚みは、例えば、12μm~200μmが好ましい。基体シート48の厚みが12μm以上であれば、ハンドリング性に優れた厚みを有し、厚みが200μm以下であれば、適度な剛性となるため良好な屈曲性を有する。特にアクリル系樹脂やポリカーボネート系樹脂を用いることが好ましい。アクリル系樹脂やポリカーボネート系樹脂を用いると、金型への形状追従性がより良くなる。
【0051】
加飾層49は、第2実施形態に係る加飾成形品20と同じ材料を用いることができる。
【0052】
その他の層については、先の各実施形態に係る加飾成形品と同じである。
【0053】
次に、第4実施形態に係る加飾成形品40の製造方法について、第1実施形態に係る加飾成形品10の製造方法とは異なる点を中心に説明する。
【0054】
図9(a)を参照して、加飾シート42を準備する工程、加飾シートに接着層43を形成する工程は同じである。次に、
図9(b)を参照して、射出成形金型80の第1金型のキャビティ面83に加飾シートを配置するとともに、第2金型82のキャビティ面89に加飾層49が向くように、インサートシート47を配置する。次に、
図9(c)を参照して、第1金型81と第2金型82を型締めする。次に、Tgが90℃~130℃のアクリル系樹脂からなる溶融樹脂を第2金型82の射出口84から射出して、射出成形体41を成形すると同時に、接着層43を介して、射出成形体41の第1金型81側の面と、加飾シート42を固着し、射出成形体41の第2金型82側の面と、インサートシート47を固着する。次に、射出成形金型80を型開きし、加飾シート12を固着した射出成形体11を取り出す。次に、
図9(d)を参照して、加飾シート42の不要な部分を切断刃88によってトリミングして、加飾成形品40を製造する。
【0055】
次に、第5実施形態に係る加飾成形品50について、先の各実施形態とは異なる点を中心に説明する。
【0056】
図8を参照して、加飾成形品50は、射出成形体51の一方の面に、基材54とハードコート層55と反射防止層56とを備えた加飾シート52が形成され、射出成形体51のもう一方の面に、基体シート58と加飾層59とを備えたインサートシート57が形成されている点では、第4実施形態に係る加飾成形品40と同じである。一方、インサートシート57の加飾層59が形成された面が射出成形体51と積層している点で異なっている。
【0057】
その他の点については、製造方法を含め、第4実施形態に係る加飾成形品40と同じである。
【0058】
尚、上記の第1実施形態に係る加飾成形品では、平面部と立上がり部を有する立体的な形状であるが、射出成形によって形成できる形状であればどのような形状でもよく、平面形状やその他の立体形状であってもよい。
【0059】
又、上記の第2実施形態から第5実施形態に係る加飾成形品では、加飾層を加飾成形品の外周に形成したが、加飾層によって加飾成形品が加飾されさえすればよく、加飾成形品の外周以外に部分的に形成してもよく、又、加飾成形品の全面に形成してもよい。
【0060】
更に、上記の第2実施形態に係る加飾成形品では、グラビアインキを用いて加飾層を形成し、第3実施形態に係る加飾成形品では、シルク印刷によって加飾層を形成したが、加飾層によって射出成形体を加飾できればよく、その他のインキや印刷法によって、加飾層を形成してもよい。
【0061】
更に、上記の各実施形態に係る加飾成形品の製造方法では、第2金型に射出口を有する射出成形金型を用いているが、射出口から射出成形金型のキャビティに溶融樹脂を射出できればよく、射出口は第1金型及び第2金型のどちらに配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10 加飾成形品
11 射出成形体
12 加飾シート
13 接着層
14 基材
15 ハードコート層
16 反射防止層
20 加飾成形品
21 射出成形体
22 加飾シート
23 接着層
24 基材
25 ハードコート層
26 反射防止層
27 加飾層
30 加飾成形品
31 射出成形体
32 加飾シート
33 接着層
34 基材
35 ハードコート層
36 反射防止層
37 加飾層
40 加飾成形品
41 射出成形体
42 加飾シート
43 接着層
44 基材
45 ハードコート層
46 反射防止層
48 基体シート
49 加飾層
50 加飾成形品
51 射出成形体
52 加飾シート
53 接着層
54 基材
55 ハードコート層
56 反射防止層
58 基体シート
59 加飾層
65 アクリル樹脂ビーズ
66 微細な凹凸
71 試験片
76 チャック間距離
77 標線間距離
80 射出成形金型
81 第1金型
82 第2金型
83 キャビティ面
87 キャビティ
89 キャビティ面
【手続補正書】
【提出日】2024-06-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度が110℃~130℃であるアクリル系樹脂からなる射出成形体と、
前記射出成形体の上に形成された、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂からなる接着層と、
前記接着層の上に形成されたガラス転移温度が90℃~130℃であるアクリル系樹脂からなる基材と、前記基材の上に形成されたハードコート層と、前記ハードコート層の上に形成された反射防止層とを含む加飾シートと、
前記接着層と前記基材との間、又は、前記射出成形体の前記接着層が形成された面とは反対側の面に形成された加飾層とを備え、
前記加飾シートの前記基材が前記射出成形体と接着された、加飾成形品。
【請求項2】
前記加飾シートの前記反射防止層側から測定された、鉛筆硬度が2B~3Hである、請求項1に記載の加飾成形品。
【請求項3】
前記加飾シートは、温度120℃において、前記加飾シートの10mm×100mmの試験片をチャック間距離40mm、標線間距離40mmで固定し、前記試験片の一端を200mm/分の一定速度で荷重をかけて引張試験を実施したときのクラック又は白化が発生した時の伸び率が100%~160%である、請求項1に記載の加飾成形品。
【請求項4】
前記ハードコート層は、アクリル樹脂ビーズを含み、前記反射防止層が形成された面に微細な凹凸を有する、請求項1に記載の加飾成形品。
【請求項5】
ガラス転移温度が110℃~130℃であるアクリル系樹脂からなる射出成形体と、
前記射出成形体の上に形成された、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂からなる接着層と、
前記接着層の上に形成された加飾シートと、
前記射出成形体の前記接着層が形成された面とは反対側の面に形成された基体シートと、
前記基体シートと前記射出成形体との間、又は、前記基体シートの前記射出成形体が形成された面とは反対側の面に形成された加飾層とを備え、
前記加飾シートは、ガラス転移温度が90℃~130℃であるアクリル系樹脂からなる基材と、前記基材の上に形成されたハードコート層と、前記ハードコート層の上に形成された反射防止層とを有し、
前記加飾シートの前記基材が前記射出成形体と接着された、加飾成形品。
【請求項6】
ガラス転移温度が90℃~130℃であるアクリル系樹脂からなる基材と、前記基材の上に形成されたハードコート層と、前記ハードコート層の上に形成された反射防止層とを備えた、加飾シートを準備する工程と、
前記基材の前記ハードコート層が形成された面とは反対側の面に、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂からなる接着層を形成する工程と、
第1金型と、型締めによって前記第1金型との間にキャビティを形成する第2金型とを有する射出成形金型に、前記反射防止層が前記射出成形金型の前記第1金型のキャビティ面に向くように、前記接着層が形成された前記加飾シートを配置する工程と、
前記接着層が形成された前記加飾シートを前記第1金型のキャビティ面の形状に沿って立体的に成形する工程と、
前記射出成形金型を型締めする工程と、
前記キャビティ内にガラス転移温度が90℃~130℃であるアクリル系樹脂からなる溶融樹脂を射出して射出成形体を成形すると同時に、前記射出成形体の表面に前記接着層を介して前記加飾シートを固着する工程と、
前記射出成形金型を型開きして、前記射出成形体を取り出す工程とを備えた、加飾成形品の製造方法。
【請求項7】
前記射出成形金型を型締めする工程の前に、基体シートと前記基体シートの上に形成された加飾層とを備えた、インサートシートを準備する工程、及び、前記基体シート又は前記加飾層が前記射出成形金型の前記第2金型のキャビティ面に向くように前記インサートシートを配置する工程とを更に備え、
前記射出成形体の表面に前記接着層を介して前記加飾シートを固着する工程は、前記キャビティ内にガラス転移温度が90℃~130℃であるアクリル系樹脂からなる溶融樹脂を射出して射出成形体を成形すると同時に、前記射出成形体の前記第1金型側の面に前記接着層を介して前記加飾シートを固着し、前記射出成形体の前記第2金型側の面に前記インサートシートの前記基体シート又は前記加飾層を固着する工程である、請求項7に記載の加飾成形品の製造方法。