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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108308
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】組電池およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/262 20210101AFI20240805BHJP
   H01M 50/264 20210101ALI20240805BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20240805BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240805BHJP
【FI】
H01M50/262 E
H01M50/262 M
H01M50/262 S
H01M50/264
H01M10/658
H01M10/625
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012614
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小村 哲司
(72)【発明者】
【氏名】岩田 亮介
(72)【発明者】
【氏名】松田 茂樹
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031BB02
5H031CC01
5H031EE03
5H040AA07
5H040AS07
5H040AT01
5H040AT02
5H040AT04
5H040AY10
5H040CC23
5H040CC34
5H040JJ03
5H040LL06
5H040NN01
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】電池セルに作用する反力のばらつきが小さい組電池およびその製造方法を提供する。
【解決手段】組電池は、第1の方向に並ぶ複数の電池セルと、複数の電池セルの間にあるセパレータと、複数の電池セルおよびセパレータを第1の方向に沿って拘束する拘束部材とを備え、セパレータは、ベース部、およびベース部から第1の方向に突出する複数の凸部を含む第1部材と、複数の凸部の間にあり、第1部材に対して相対的に断熱性が高く、かつ、第1部材に対して相対的に変形しやすい第2部材とを含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に並ぶ複数の電池セルと、
前記複数の電池セルの間にあるセパレータと、
前記複数の電池セルおよび前記セパレータを前記第1の方向に沿って拘束する拘束部材とを備え、
前記セパレータは、
ベース部、および前記ベース部から前記第1の方向に突出する複数の凸部を含む第1部材と、
前記複数の凸部の間にあり、前記第1部材に対して相対的に断熱性が高く、かつ、前記第1部材に対して相対的に変形しやすい第2部材とを含む、組電池。
【請求項2】
前記組電池から前記セパレータを取り外した状態において、前記複数の凸部の突出高さは前記第2部材の厚みよりも大きい、請求項1に記載の組電池。
【請求項3】
前記第1部材および前記第2部材の外形寸法は互いに略等しい、請求項1または請求項2に記載の組電池。
【請求項4】
前記第1部材の前記ベース部と前記複数の凸部とが一体成形されている、請求項1または請求項2に記載の組電池。
【請求項5】
前記第2部材は発泡樹脂からなる、請求項1または請求項2に記載の組電池。
【請求項6】
複数の電池セルおよびセパレータを準備する工程と、
前記複数の電池セルと前記セパレータとを第1の方向に交互に配列する工程と、
前記複数の電池セルおよび前記セパレータを前記第1の方向に沿って拘束する工程とを備え、
前記セパレータを準備する工程は、
ベース部、および前記ベース部から前記第1の方向に突出する複数の凸部を含む第1部材を準備することと、
前記複数の凸部の間にあり、前記第1部材に対して相対的に断熱性が高く、かつ、前記第1部材に対して相対的に変形しやすい第2部材を設けることとを含み、
前記第1部材を準備することは、前記複数の凸部の突出高さを前記第2部材の厚みよりも大きくすることを含む、組電池の製造方法。
【請求項7】
前記セパレータを準備する工程は、前記第1部材の連続した前記凸部により囲まれる凹部内で樹脂を発泡させることにより、前記第1部材の前記複数の凸部の間に発泡樹脂からなる前記第2部材を配置することを含む、請求項6に記載の組電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、組電池およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中国実用新案第215119123号明細書(特許文献1)には、複数の電池セルの間に配置されるセパレータの構造として、断熱材と弾性体とを重ねた構造が開示されている。また、特開2021-150079号公報(特許文献2)には、軟質部の貫通孔から硬質部が突出する弾性体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国実用新案第215119123号明細書
【特許文献2】特開2021-150079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のセパレータにおいては、断熱材と弾性体との二層構造が採用されているため、断熱材の厚みの公差と、弾性体の厚みの公差との合計が、セパレータの厚みの公差となる。
【0005】
したがって、一部材からなるセパレータと比較して、セパレータの厚みの公差が大きくなる傾向にある。電池セルの積層方向の寸法の設計値が同じであっても、セパレータの厚みが大きい場合、電池セルの拘束荷重が大きくなる。電池セルの拘束荷重の最大値が大きくなることにより、電池モジュールにおける強度部材の強度を向上させる必要が生じ、電池モジュールの重量化、高コスト化に繋がり得る。
【0006】
また、特許文献2の記載の弾性体においては、二次電池モジュールに組み込まれた状態で、通常は軟質部は電極体から離間している。そして、弾性体に点在する硬質部が変形しやすくなることにより、電極体からの荷重を受けることが想定されている。
【0007】
本技術の目的は、電池セルに作用する反力のばらつきが小さい組電池およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本技術は、以下の組電池およびその製造方法を提供する。
【0009】
[1]第1の方向に並ぶ複数の電池セルと、複数の電池セルの間にあるセパレータと、複数の電池セルおよびセパレータを第1の方向に沿って拘束する拘束部材とを備え、セパレータは、ベース部、およびベース部から第1の方向に突出する複数の凸部を含む第1部材と、複数の凸部の間にあり、第1部材に対して相対的に断熱性が高く、かつ、第1部材に対して相対的に変形しやすい第2部材とを含む、組電池。
【0010】
[2]組電池からセパレータを取り外した状態において、複数の凸部の突出高さは第2部材の厚みよりも大きい、[1]に記載の組電池。
【0011】
[3]第1部材および第2部材の外形寸法は互いに略等しい、[1]または[2]に記載の組電池。
【0012】
[4]第1部材のベース部と複数の凸部とが一体成形されている、[1]から[3]のいずれか1項に記載の組電池。
【0013】
[5]第2部材は発泡樹脂からなる、[1]から[4]のいずれか1項に記載の組電池。
【0014】
[6]複数の電池セルおよびセパレータを準備する工程と、複数の電池セルとセパレータとを第1の方向に交互に配列する工程と、複数の電池セルおよびセパレータを第1の方向に沿って拘束する工程とを備え、セパレータを準備する工程は、ベース部、およびベース部から第1の方向に突出する複数の凸部を含む第1部材を準備することと、複数の凸部の間にあり、第1部材に対して相対的に断熱性が高く、かつ、第1部材に対して相対的に変形しやすい第2部材を設けることとを含み、第1部材を準備することは、複数の凸部の突出高さを第2部材の厚みよりも大きくすることを含む、組電池の製造方法。
【0015】
[7]セパレータを準備する工程は、第1部材の連続した凸部により囲まれる凹部内で樹脂を発泡させることにより、第1部材の複数の凸部の間に発泡樹脂からなる第2部材を配置することを含む、[6]に記載の組電池の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本技術によれば、電池セルに作用する反力のばらつきが小さい組電池およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】組電池の斜視図である。
図2】電池セルの斜視図である。
図3】電池モジュールの斜視図である。
図4】組電池に含まれるセパレータの断面図である。
図5図4に示すセパレータを電池セルの間に配置した状態を示す図である。
図6】セパレータにおける第1部材の上面図である。
図7】セパレータにおける第2部材の上面図である。
図8】比較例に係るセパレータの断面図である。
図9図8に示すセパレータを電池セルの間に配置した状態を示す図である。
図10】変形例に係るセパレータの上面図である。
図11図10におけるXI-XI断面図である。
図12】セパレータの第1部材に荷重を加えたときの変形を示す図である。
図13】セパレータの第2部材に荷重を加えたときの変形を示す図である。
図14】セパレータにおける第1部材および第2部材の荷重-厚み曲線の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本技術の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0019】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本技術の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本技術にとって必ずしも必須のものではない。また、本技術は、本実施の形態において言及する作用効果を必ずしもすべて奏するものに限定されない。
【0020】
なお、本明細書において、「備える(comprise)」および「含む(include)」、「有する(have)」の記載は、オープンエンド形式である。すなわち、ある構成を含む場合に、当該構成以外の他の構成を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0021】
また、本明細書において幾何学的な文言および位置・方向関係を表す文言、たとえば「平行」、「直交」、「斜め45°」、「同軸」、「沿って」などの文言が用いられる場合、それらの文言は、製造誤差ないし若干の変動を許容する。本明細書において「上側」、「下側」などの相対的な位置関係を表す文言が用いられる場合、それらの文言は、1つの状態における相対的な位置関係を示すものとして用いられるものであり、各機構の設置方向(たとえば機構全体を上下反転させる等)により、相対的な位置関係は反転ないし任意の角度に回動し得る。
【0022】
本明細書において、「電池」は、リチウムイオン電池に限定されず、ニッケル水素電池およびナトリウムイオン電池などの他の電池を含み得る。
【0023】
本明細書において、「電池セル」は必ずしも角形のものに限定されず、円筒型、パウチ型、ブレード型など、他の形状のセルも含み得る。また、「電池セル」は、ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、および電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)などに搭載可能である。ただし、「電池セル」の用途は、車載用に限定されるものではない。
【0024】
図1は、組電池1Aの斜視図である。図1に示す組電池1Aは、電池セル100と、セパレータ200(セル間セパレータ)とを含む。電池セル100とセパレータ200とは、Y軸方向(第1の方向)に沿って交互に配列されている。
【0025】
電池セル100は、角形の電池セルであって、Y軸方向に沿って複数設けられる。複数の電池セル100は、図示しないバスバーを介して互いに電気的に接続される。
【0026】
セパレータ200は、複数の電池セル100の間に設けられる。セパレータ200は、隣接する電池セル100の意図しない電気的導通を防止する。セパレータ200は、隣接する電池セル100の電気的絶縁性を確保する。
【0027】
図2は、電池セル100の斜視図である。図2に示すように、電池セル100は、角形形状を有する。電池セル100は、電極端子110と、電池ケース120と、ガス排出弁130とを有する。
【0028】
電極端子110は、電池ケース120上に形成されている。電極端子110は、Y軸方向(第1の方向)に直交するX軸方向(第2の方向)に沿って並ぶ正極端子111および負極端子112を有する。正極端子111および負極端子112は、X軸方向において、互いに離れて設けられている。
【0029】
電池ケース120は、直方体形状を有し、電池セル100の外観をなす。電池ケース120は、図示しない電極体および電解液を収容するケース本体120Aと、ケース本体120Aの開口を封止する封口板120Bとを含む。封口板120Bは、溶接によりケース本体120Aに接合される。
【0030】
電池ケース120は、上面121と、下面122と、第1側面123と、第2側面124と、2つの第3側面125とを有する。
【0031】
上面121は、Y軸方向およびX軸方向に直交するZ軸方向(第3の方向)に直交する平面である。上面121には、電極端子110が配置されている。下面122は、Z軸方向に沿って上面121に対向している。
【0032】
第1側面123および第2側面124の各側面は、Y軸方向に直交する平面からなる。第1側面123および第2側面124の各側面は、電池ケース120が有する複数の側面のうちで最も大きい面積を有する。第1側面123および第2側面124の各側面は、Y軸方向に見て、矩形形状を有する。第1側面123および第2側面124の各側面は、Y軸方向に見て、X軸方向が長手方向となり、Z軸方向が短手方向となる矩形形状を有する。
【0033】
複数の電池セル100は、Y軸方向に隣り合う電池セル100,100の間において、第1側面123どうし、第2側面124どうしが向かい合わせとなるように積層されている。これにより、複数の電池セル100が積層されるY軸方向において、正極端子111と負極端子112とが、交互に並んでいる。
【0034】
ガス排出弁130は、上面121に設けられている。ガス排出弁130は、電池セル100の温度が上昇し(熱暴走)、電池ケース120の内部で発生したガスにより電池ケース120の内圧が所定値以上となった場合に、そのガスを電池ケース120の外部に排出する。
【0035】
図3は、電池モジュール1の斜視図である。図3に示すように、電池モジュール1は、電池セル100と、セパレータ200と、拘束部材300と、エンドプレート400とを備える。
【0036】
Y軸方向(第1方向)に沿って交互に配列された電池セル100およびセパレータ200は、エンドプレート400によって押圧され、2つのエンドプレート400の間で拘束されている。
【0037】
エンドプレート400は、Y軸方向の両端に配置されている。エンドプレート400は、電池モジュール1を収納するケースなどの基台に固定される。拘束部材300は、2つのエンドプレート400を互いに接続し、複数の電池セル100およびセパレータ200をY軸方向に沿って拘束する。
【0038】
電池セル100、セパレータ200およびエンドプレート400の積層体に対してY軸方向の圧縮力を作用させた状態で拘束部材300をエンドプレート400に固定し、その後に圧縮力を解放することにより、2つのエンドプレート400を接続する拘束部材300に引張力が働く。その反作用として、拘束部材300は、2つのエンドプレート400を互いに近づける方向に押圧する。これにより、電池モジュール1が構成される。
【0039】
電池モジュール1をパックケースに収納することにより、電池パックが構成される(Cell-Module-Pack構造)。これに代えて、図1に示す組電池1Aをパックケースの壁面が直接支持する構造(Cell-to-Pack構造)としてもよい。
【0040】
図4は、セパレータ200の断面図である。図5は、図4に示すセパレータ200を電池セル100の間に配置した状態を示す図である。図6は、第1部材210の上面図であり、図7は、第2部材220の上面図である。
【0041】
図4ないし図7に示すように、セパレータ200は、第1部材210と、第2部材220とを含む。第1部材210と、第2部材220とは、複数の電池セル100の積層方向(Y軸方向)に重ねられる。
【0042】
第1部材210は、ベース部211と、ベース部211からY軸方向に突出する複数の凸部212とを含む。凸部212は、先端に向かって縮径するテーパ形状を有する。図4の例では、ベース部211と複数の凸部212とが一体成形されているが、別体として設けられたベース部211と凸部212とが接合された構造としてもよい。
【0043】
第2部材220は、孔部221を有する。第1部材210の凸部212が第2部材220の孔部221に挿入される。この結果、第2部材220は、複数の凸部212の間に位置する。一例として、第1部材210および第2部材220の外形寸法は互いに略等しい。
【0044】
典型的には、図4に示すように、組電池1Aからセパレータ200を取り外した状態において、複数の凸部212の突出高さは第2部材220の厚みよりも大きい。ただし、本技術の範囲はこれに限定されない。図4に示すセパレータ200を準備した後、複数の電池セル100とセパレータ200とがY軸方向に交互に配列され、さらに、Y軸方向に沿って拘束される。このとき、図5に示すように、第1部材210の凸部212が第2部材220とともに圧縮される。
【0045】
第1部材210は、弾性体から構成し得る。第1部材210は、たとえば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム(EPM,EPDM)、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ノルボルネンゴムなど(好ましくは、シリコーンゴムまたはフッ素ゴム)から構成され得る。
【0046】
第1部材210は、以下の方法により測定される弾性率が1MPa以上10MPa以下程度の素材により構成されることが好ましい。
[弾性率の測定方法]
(1)一辺5cm(電池セルと対向する面)の正方形の試験片を準備する。
(2)上記試験片について、荷重変位曲線(F-S曲線)を、加圧力3.9MPaまで取得する(加圧速度:30N/分)。
(3)横軸を圧縮率、縦軸を圧力としたグラフにおいて、圧縮率1%~20%の傾きから弾性率を算出する。
【0047】
また、上記加圧試験の後(除荷後)に2時間静止させ、マイクロメータで測定した試料の厚みが、初期状態(加圧試験前)から-20%以下程度となるような素材を用いて第1部材210を構成することが好ましい。
【0048】
第2部材220は、第1部材210に対して相対的に断熱性が高く、かつ、第1部材210に対して相対的に変形しやすい性質を有する。
【0049】
第2部材220は発泡樹脂から構成し得る。第2部材220は、たとえば、無機繊維(セラミック繊維等)、無機繊維および有機質バインダー成型、無機フィラーおよび有機バインダー、内部に空間を有する発泡シリコンシートなどにより構成され得る。
【0050】
第2部材220は、好ましくは0.15W/mK以下程度の断熱性を有することが好ましく、より好ましくは0.1W/mK以下程度の断熱性を有することが好ましい。
【0051】
図4ないし図7に示すように、相対的に弾性率の高い第1部材210と相対的に断熱性の高い第2部材220との二層構造を有するセパレータ200とすることにより、セパレータ200における変形吸収性と断熱性とを両立させることができる。
【0052】
図8は、比較例に係るセパレータ200Aの断面図である。図9は、図8に示すセパレータ200Aを電池セル100の間に配置した状態を示す図である。
【0053】
図8図9に示すセパレータ200Aにおいては、相対的に弾性率の高い第1部材210Aと相対的に断熱性の高い第2部材220Aとが重ねられた二層構造が開示されている。
【0054】
セパレータ200Aにおいては、第1部材210Aと第2部材220Aとの二層構造が採用されているため、第1部材210Aの厚みの公差と、第2部材220Aの厚みの公差との合計が、セパレータ200Aの厚みの公差となる。
【0055】
このように、2つの部材の厚みの公差が合計されることにより、一部材からなるセパレータと比較して、セパレータの厚みの公差が大きくなる。この結果、電池セル100の積層方向(Y軸方向)の寸法の設計値が同じであっても、セパレータ200Aの厚みによっては、電池セル100およびセパレータ200Aの拘束荷重が大きくなる。この結果、組電池1Aないし電池モジュール1における強度部材の強度を向上させる必要が生じ、電池モジュール1の重量化、高コスト化に繋がり得る。
【0056】
これに対し、本実施の形態に係るセパレータ200においては、第1部材210の凸部212の間に第2部材220を設ける構造とすることで、第1部材210および第2部材220のうち、第1部材210のみの寸法公差を管理すればよいことになり、セパレータ200の厚みのばらつきが全体として小さくなる。結果として、電池セル100に作用する反力のばらつきが小さい電池モジュール1が提供され、電池モジュールの軽量化ないし製造コスト削減に寄与し得る。
【0057】
図10は、変形例に係るセパレータ200の上面図である。図11は、図10におけるXI-XI断面図である。
【0058】
図10図11に示す変形例においては、第2部材220として、内部に空気層をもつ発泡体が用いられる。このセパレータ200を準備するときは、第1部材210の連続した凸部212により囲まれる凹部213内において樹脂を発泡させる。この結果、第1部材210の複数の凸部212の間に発泡樹脂からなる第2部材220が形成される。
【0059】
次に、図12図14を用いて、第1部材210の弾性率と第2部材220の弾性率との関係について説明する。
【0060】
図12は、セパレータ200の第1部材210に荷重を加えたときの変形を示す図である。図13は、セパレータ200の第2部材220に荷重を加えたときの変形を示す図である。
【0061】
図12に示すように、無荷重時に厚みTを有する第1部材210に荷重F1を作用させると、主として凸部212が圧縮変形し、第1部材210の厚みはT’にまで減少する。
【0062】
図13に示すように、無荷重時に厚みSを有する第2部材220に荷重F2を作用させると、第2部材220は圧縮変形し、第2部材220の厚みはS’にまで減少する。
【0063】
図14は、セパレータ200における第1部材210および第2部材220の荷重-厚み曲線の例を示すグラフである。図14において、曲線10は、セパレータ200における第1部材210の荷重-厚み曲線の例であり、曲線20A,20Bは、各々、セパレータ200における第2部材220の荷重-厚み曲線の例である。また、図14の縦軸はセパレータ200における第1部材210および第2部材に作用する荷重を示し、横軸はセパレータ200(第1部材210)の厚みである。
【0064】
図14の曲線10,20A,20Bが示すように、セパレータ200における第1部材210および第2部材220に作用する荷重は、セパレータ200(第1部材210)の厚みが減少することに伴って各々増大する。
【0065】
ここで、少なくともセパレータ200(第1部材210)の厚みが無荷重時の厚みTの50%~90%である領域(図14中のT50~T90の領域)において、第1部材210に作用する荷重(第1部材210の弾性力)が第2部材220に作用する荷重(第2部材220の弾性力)よりも大きいことが好ましい(曲線20A,20Bの例はいずれも該当)。さらに好ましくは、少なくともセパレータ200(第1部材210)の厚みが無荷重時の厚みTの40%~95%である領域(図14中のT40~T95の領域)において、第1部材210に作用する荷重(第1部材210の弾性力)が第2部材220に作用する荷重(第2部材220の弾性力)よりも大きいことが好ましい(曲線20A,20Bの例はいずれも該当)。
【0066】
このようにすることで、セパレータ200の実用的な範囲内において、第1部材210の変形吸収性に過度な影響を及ぼさないように第2部材220を設けることができる。
【0067】
以上、本技術の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本技術の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0068】
1 電池モジュール、1A 組電池、10,20A,20B 曲線、100 電池セル、110 電極端子、111 正極端子、112 負極端子、120 電池ケース、120A ケース本体、120B 封口板、121 上面、122 下面、123 第1側面、124 第2側面、125 第3側面、130 ガス排出弁、200,200A セパレータ、210,210A 第1部材、211 ベース部、212 凸部、220,220A 第2部材、221 孔部、300 拘束部材、400 エンドプレート。
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