(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108314
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】コイル部品および回路基板
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20240805BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20240805BHJP
H01F 27/30 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F27/29 123
H01F27/30 101A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012621
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】三村 大樹
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB03
5E070BB03
5E070DB02
5E070EA01
(57)【要約】
【課題】透磁率を確保しつつ、損失を抑えることができるコイル部品を提供する。
【解決手段】一態様に係るコイル部品によれば、周回部および引出部を有する導体と、金属磁性粒子を有し、上記周回部を内包する磁性基体と、上記引出部と電気的に接続される外部電極と、を有するコイル部品において、上記磁性基体は、第1金属磁性粒子を含む第1磁性部と、上記第1金属磁性粒子より粒径の小さい第2金属磁性粒子からなる第2磁性部を有し、上記周回部を挟んで当該第1磁性部が一方に位置し、当該第2磁性部が他方に位置し、上記外部電極は、上記第1磁性部と接して設けられる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周回部および引出部を有する導体と、
金属磁性粒子を有し、前記周回部を内包する磁性基体と、
前記引出部と電気的に接続される外部電極と、を有するコイル部品において、
前記磁性基体は、第1金属磁性粒子を含む第1磁性部と、前記第1金属磁性粒子より粒径の小さい第2金属磁性粒子からなる第2磁性部を有し、前記周回部を挟んで前記第1磁性部が一方に位置し、前記第2磁性部が他方に位置し、
前記外部電極は、前記第1磁性部と接して設けられる、
ことを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記外部電極は、前記第2磁性部から離間して設けられることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第1磁性部における最小厚みが、前記第2磁性部における最小厚みよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記磁性基体の、実装時に基板と対向する底面側に前記第1磁性部が設けられ、当該底面側と逆の上面側に前記第2磁性部が設けられ、
当該コイル部品は、前記底面に設けられた外部電極により前記基板に実装されることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のコイル部品と、
前記コイル部品が実装された基板と、を備えることを特徴とする回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品および回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の高性能化に伴い、電子機器に用いられる電子部品は数量の増加と共に小型化が必要となっている。また、多くの電子機器は動作速度が高速化しており、高速化に伴う損失の抑制も必要となっている。
小型化と損失抑制の必要性はコイル部品でも同様であり、コイル部品の小型化が進むのに伴って、より効率良く磁気性能を得ることが必要となっている。特に、金属磁性材料が用いられたコイル部品は、比較的高い電流の用途では、電流によって生じる損失を低く抑えることが求められる。このため、金属磁性材料として損失の少ない材料を選択することが必要となる。
【0003】
例えば特許文献1には、金属磁性粉末の充填率が高められることにより小型化が図られたインダクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、コイル部品の小型化や薄膜化が進む場合、コイル部品において金属磁性材料の占める割合が減少し、コイル部品に形成される磁束がコイル部品の外側に漏れることとなる。その結果、漏れ磁束が金属を通過することで損失を生じる。例えば、多くのコイル部品の外部電極は磁性基体の表面に設けられるものであり、漏れ磁束が外部電極を通過することで損失となる。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、透磁率を確保しつつ、損失を抑えることができるコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、周回部および引出部を有する導体と、金属磁性粒子を有し、上記周回部を内包する磁性基体と、上記引出部と電気的に接続される外部電極と、を有するコイル部品において、上記磁性基体は、第1金属磁性粒子を含む第1磁性部と、上記第1金属磁性粒子より粒径の小さい第2金属磁性粒子からなる第2磁性部を有し、上記周回部を挟んで上記第1磁性部が一方に位置し、上記第2磁性部が他方に位置し、上記外部電極は、上記第1磁性部と接して設けられる。
【0008】
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記外部電極は、上記第2磁性部から離間して設けられる。
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記第1磁性部における最小厚みよりも、上記第2磁性部における最小厚みの方が小さい。
【0009】
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記磁性基体の、実装時に基板と対向する底面側に上記第1磁性部が設けられ、当該底面側と逆の上面側に上記第2磁性部が設けられ、当該コイル部品は、上記底面に設けられた外部電極により上記基板に実装される。
【0010】
また、本発明の一態様に係る回路基板によれば、上述したいずれかのコイル部品と、上記コイル部品が実装された基板と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、透磁率を確保しつつ、損失を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るコイル部品を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係るコイル部品の正面図である。
【
図3】第1実施形態に係るコイル部品の断面図である。
【
図5】第1磁性部の微視的構造を示す模式的な拡大図である。
【
図6】第2磁性部の微視的構造を示す模式的な拡大図である。
【
図9】実施例におけるQ値とインダクタンスを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は本発明を限定するものではなく、実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の構成に必須のものとは限らない。実施形態の構成は、本発明が適用される装置の仕様や各種条件(使用条件、使用環境等)によって適宜修正または変更され得る。
【0014】
本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって画定され、以下の個別の実施形態によって限定されない。以下の説明に用いる図面は、各構成を分かり易くするため、実際の構造と縮尺および形状などを異ならせることがある。先に説明した図面に示された構成要素については、後の図面の説明で適宜に参照する場合がある。
【0015】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るコイル部品を示す斜視図である。
コイル部品1は、基板2aに実装されている。基板2aには、例えば2つのランド部3が設けられている。コイル部品1は、1つの磁性基体11と2つの外部電極12とを有する。コイル部品1は各外部電極12とランド部3とがはんだで接合されることで基板2aに実装される。H軸方向に見た場合、ランド部3の面積は、外部電極12の面積の1.6倍以下である。より望ましくは、H軸方向に見た場合、ランド部3の面積は、外部電極12の面積の1.3倍以下である。
【0016】
本発明の一実施形態による回路基板2は、コイル部品1と、このコイル部品1が実装された基板2aと、を備える。回路基板2は、様々な電子機器に備えられる。回路基板2を備えた電子機器としては、自動車の電装品、サーバ、ボードコンピュータおよびこれら以外の様々な電子機器が想定される。
【0017】
本明細書においては、文脈上別に解される場合を除き、方向の説明は、
図1の「L軸」方向、「W軸」方向および「H軸」方向を基準に用い、それぞれ、「長さ」方向、「幅」方向および「高さ」方向と称する。「高さ」方向については「厚さ」方向と呼ぶ場合もある。
【0018】
コイル部品1は、直方体形状の外形を有する。即ちコイル部品1は、長さ方向Lの両端と、高さ方向Hの両端と、幅方向Wの両端とのそれぞれに外面を有する。
直方体形状のコイル部品1における各辺の寸法は、長さ方向Lが例えば1.0~4.5mmの範囲にあり、幅方向Wが例えば0.5~3.2mmの範囲にあり、高さ方向Hが例えば0.5~1.0mmの範囲にある。また、高さ方向Hが長さ方向Lより小さく、更には高さ方向Hが幅方向Wより小さくなっている。
【0019】
コイル部品1の外面はいずれも、平坦な平面であってもよいし湾曲した湾曲面であってもよい。また、コイル部品1の8つの角部および12の稜線部は、丸みを有していてもよい。
本明細書においては、コイル部品1の外面の一部が湾曲している場合や、コイル部品1の角部や稜線部が丸みを有している場合にも、かかる形状を「直方体形状」と称することがある。つまり、本明細書において「直方体」又は「直方体形状」という場合には、数学的に厳密な意味での「直方体」を意味するものではない。
【0020】
<コイル部品の構造>
図2は、
図1に示すコイル部品1の正面図であり、
図3は、
図1に示すコイル部品1の断面図である。
図3には、
図1に示すA-A線に沿った断面が示されている。以下、
図1~
図3を参照して説明する。
【0021】
本発明の第1実施形態におけるコイル部品1は、磁性基体11と外部電極12を有し、磁性基体11の内部に導体14を有する。
本実施形態における磁性基体11は、金属磁性材料と結合材とから形成される磁性体である。結合材は、金属磁性材料の相互間を結合させるものであり、また電気的な導通を防ぐため、絶縁性の高いものでもある。結合材は、磁性基体11の比抵抗が106Ωcm以上となるものが用いられる。例えば、結合材としての比抵抗が108Ωcm以上であるものが選ばれ、また機械的強度を高める目的から、結合材としては、樹脂、ガラス、金属酸化物が選択され得る。
【0022】
結合材の樹脂としては、例えば、ガラス転位点(Tg)が150℃より高いものが選ばれ、Tgが180℃より高いものでもよい。このような高いTgの樹脂であると、ガラス、金属酸化物と同様に、高温の用途においても、環境変化に対応できる。
磁性基体11は、内部の比抵抗が非常に高く、また表面でも同様であり、表面にも結合材が存在している。金属磁性材料は、Fe、Ni、Coのうちの1以上の金属磁性粒子を含む。また、金属磁性材料は金属磁性粒子に加えて、Mg、Mn、Niのうちの1以上のセラミックの磁性粒子やシリカなどの非磁性粒子を含んでもよい。金属磁性粒子としては、Fe、Ni、Coの成分に加えてSi、Cr、Al、B、Pのうちの1以上の成分を含んでもよく、また複数種の金属磁性粒子が組み合わされてもよい。磁性基体11は、金属磁性粒子が絶縁物で結合されることで絶縁性を有している。絶縁物は、樹脂、酸化物または窒化物を含んでいる。
【0023】
金属磁性材料が金属磁性粒子以外に、金属微粒子、金属酸化物、セラミック材料などの他の材料を更に含む場合、当該他の材料の粒径は平均で0.01~1μmであり、金属磁性粒子より粒径が小さい。金属磁性粒子以外の材料を含む場合は、磁性体としての機能を高めることよりも、例えば空隙を減らす、または機械的強度を補うことができる。
【0024】
磁性基体11は、金属磁性材料の充填率が79vol%以上87vol%以下であり、残部が金属磁性材料以外のものであり、絶縁物または空隙を含んでいる。
磁性基体11は直方体形状を有し、高さ方向Hの一端に上面101を有し、高さ方向Hの他端に底面102を有し、長さ方向Lの両端それぞれに端面103を有し、幅方向Wの両端に前面104および後面105を有する。底面102は、コイル部品1が基板2aに実装される際に基板2aと対向する面である。
【0025】
導体14は、導電性に優れた金属材料から成る。導体14用の金属材料としては、例えば、Cu、Al、Ni、もしくはAgのうちの1以上の金属、又はこれらの金属のいずれかを含む合金が用いられ得る。導体14は、表面に絶縁物の皮膜が設けられた金属の導線が巻回されたものでもよいし、基板やシートなどの表面にめっきや印刷などによって形成されたものでもよい。
【0026】
本実施形態の導体14は、1ターン以上周回した周回部402を有する。周回部402の周回数は、例えば1.5ターン以上、10.5ターン以下である。また、コイル部品1の長さ方向Lが例えば1.0~2.5mmのような場合、例えば、1.5ターン以上6.5ターン以下である。周回部402の形状は平面状でもよく螺旋状でもよい。周回部402は、例えば、2つの周回が上側と下側で対向し、1つの集合体となっていてもよい。
【0027】
導体14は、外部との電気的な導通を取るための引き出し部401を有する。引き出し部401は周回部402の両端に設けられており、外部電極12を導体14と接続するものである。導体14の作製には、巻線、薄膜、積層のいずれかのプロセスが用いられ、特に制限されることはない。
【0028】
図3には、導線が磁性基体11の底面102と上面101に沿って周回した、いわゆる水平巻きの周回部402が例示されている。導体14は、導線が磁性基体11の端面103に沿って周回した、いわゆる垂直巻きの周回部を有してもよい。
コイル部品1は、磁性基体11の底面102に2つの外部電極12を備えている。外部電極12は、Ag、Cu、Ti、Ni、Snのうちの1以上の金属からなる金属層を有する。金属層は、例えば厚みが1~5μmの層である。外部電極12は複数の金属層が組み合わされたものでもよく、合計の厚みは例えば5~10μmとなる。また、外部電極12は、一部に樹脂を含んだ金属層が組み合わされてもよく、合計の厚みは例えば10~20μmとなる。
【0029】
外部電極12は、導体14と同じ成分の層、および導体14よりも抵抗の高い成分の層の一方あるいは双方からなる。また、外部電極12は、導体14と同じ充填率の層、および導体14よりも低い充填率の層の一方あるいは双方からなる。
【0030】
図3に示す例の場合、外部電極12は、下地層201とめっき層202とを有する。下地層201には、Ag、Cu、Ti、Niなどの金属材料が用いられる。下地層201は、めっき、金属材料の塗布、スパッタリング法、あるいは蒸着法により磁性基体11の表面に設けられる。また、下地層201は、厚みが1μm以下であり、一部分が他の部分から離間して存在していてもよい。下地層201は、磁性基体11の表面および導体14の引き出し部401と密着することで、外部電極12を磁性基体11と一体化させるとともに外部電極12と導体14との導通を得る。
【0031】
めっき層202は、導電性に優れた金属材料から成る。金属材料としては、例えばCu、Agが用いられ、更にNi、Pd、Snが用いられる。めっき層202は、それぞれの金属材料を主成分とする層、または一部で合金化した層が重なり、層状に形成される。
【0032】
<磁性基体の構造>
図4は、磁性基体11の構造を示す断面図である。
図4の断面図は、
図3の断面図と同一箇所の断面を示しているが、磁性基体11の詳細構造に着目した図示となっている。
磁性基体11は、第1磁性部11aと第2磁性部11bとを含んでおり、第1磁性部11aと第2磁性部11bは、間に導体14の周回部402を挟んでいる。即ち、磁性基体11は、第1磁性部11aを、周回部402を挟んだ一方に有するとともに、第2磁性部11bを、上記一方に対する他方に有する。
【0033】
図4に示す例では、第1磁性部11aは周回部402の底面102側に位置し、第2磁性部11bは周回部402の上面101側に位置する。磁性基体11は、周回部402の周囲を第1磁性部11aおよび第2磁性部11bにより取り囲んで閉磁路化している。
外部電極12は、第1磁性部11aの表面に設けられている。即ち、第1磁性部11aと接して磁性基体11の外面に設けられる。上述したように磁性基体11は絶縁性を有するため、外部電極12は、磁性基体11の外面に直接設けられることが可能である。
図4に示す例では、第1磁性部11aが周回部402の底面102側に位置するので、外部電極12は、磁性基体11の底面102側に設けられている。
【0034】
図5は、第1磁性部11aの微視的構造を示す模式的な拡大図であり、
図6は、第2磁性部11bの微視的構造を示す模式的な拡大図である。
第1磁性部11aは、第1金属粒子11cが互いに結合された構造を有する。第1金属粒子11cは粒度分布を有し、平均粒径は3~30μmである。
【0035】
第2磁性部11bは、第2金属粒子11dが互いに結合された構造を有する。第2金属粒子11dは粒度分布を有し、平均粒径は2~15μmである。
第1金属粒子11cの平均粒径は、第2金属粒子11dの平均粒径に対して1.5倍以上5倍以下の範囲にある。このような粒径の関係を満たす第1金属粒子11cおよび第2金属粒子11dとしては、例えばレーザ回折式の粒度分布測定装置によって求められる数値に基づいた適切な粒径の金属粒子が選択されて磁性基体11の作製に用いられる。
【0036】
また、磁性基体11として作製された後に第1金属粒子11cおよび第2金属粒子11dの粒径が求められる場合は、磁性基体11の断面が例えば光学顕微鏡で観察され、個々の粒子について、粒子外形の最大寸法として粒径が求められる。そして、平均粒径としては、最大寸法が1μm以上である粒子が選択され、磁性基体11の断面の一定面積における平均値が算出される。
【0037】
第1金属粒子11cと第2金属粒子11dは、互いに同種の磁性材料からなる粒子であってもよいし、互いに異なる種類の磁性材料からなる粒子であってもよい。また、第1金属粒子11cと第2金属粒子11dとのそれぞれは、単一種類の磁性材料からなる粒子であってもよいし、複数種類の磁性材料が組み合わされた粒子であってもよい。
【0038】
磁性基体11は、金属磁性材料の充填率が79vol%以上87vol%以下であり、第1磁性部11aと第2磁性部11bにおける金属磁性材料の充填率は、互いに同じか、第2磁性部11bの方が5%高い。これにより、比透磁率は第1磁性部11aと第2磁性部11bのいずれについても30以上50以下の範囲になる。また、第1磁性部11aは第2磁性部11bより高い比透磁率を有し、第2磁性部11bに対し第1磁性部11aの比透磁率は5%以上20%以下の範囲で高い。比透磁率がこの範囲であれば、磁性基体11が磁束410(
図4参照)の大部分を内部に導くことができ、コイル部品1全体では閉磁路化が実現される。
【0039】
第1磁性部11aと第2磁性部11bが上述した充填率を有し、第1金属粒子11cの平均粒径が第2金属粒子11dの平均粒径よりも大きいため、第2磁性部11bは第1磁性部11aに較べて磁気飽和特性が高い。
【0040】
図4に戻って説明を続ける。
磁性基体11は、第1磁性部11aと第2磁性部11bを備えることで、望ましい磁性特性を有する。即ち、第1磁性部11aは透磁率に寄与し、第2磁性部11bは損失に寄与している。このためコイル部品1は、透磁率を確保しつつ損失を抑えることが可能となり、より効率よく磁気性能を得ることができる。
【0041】
外部電極12と接する第1磁性部11aの最小厚みD1は、例えば0.2mm以上0.5mm以下であり、第2磁性部11bの最小厚みD2は、例えば0.05mm以上0.2mm以下である。厚みD1と厚みD2の比率D2/D1は、例えば1より小さく0.2以上である。つまり、外部電極12と接する第1磁性部11aの最小厚みが第2磁性部11bの最小厚みより大きい。
【0042】
第1磁性部11aと第2磁性部11bそれぞれの厚みとは、導体14から磁性基体11の外面までの距離である。外部電極12と接する第1磁性部11aの最小厚みは、外部電極12から導体14までの最短距離であり、外部電極12と導体14に挟まれた第1磁性部11aの最小距離となる。第2磁性部11bの最小厚みは、外部電極12のない部分の導体14から第2磁性部11bの外面までの最短距離であり、第2磁性部11bの最小距離となる。
【0043】
第1磁性部11aと第2磁性部11bそれぞれの最小厚みは、対象部分の断面の観察によって求められる。即ち、最小厚みは、外部電極12の広がる面に直交するとともに、周回部402を流れる電流にも直交する任意の断面において最小の厚みとして求められる。
【0044】
図4には、導体14の周回部402で生じた磁束410が示されている。コイル部品1は全体として閉磁路化が実現されているため、磁性基体11の外部に至る磁束410は一部であるが、磁性基体11の外部に漏れた磁束410による損失の抑制が求められる。
第1磁性部11aの最小厚みが第2磁性部11bの最小厚みよりも大きいことで、第1磁性部11a側では十分な厚みが得られる。この結果、第1磁性部11a内を通過する磁束410は、最小厚みの箇所でも、第1磁性部11a内に閉じ込め可能な許容範囲を超えることが無く、磁束410の漏れが抑制される。この結果、第2磁性部11b側では磁束410の一部が磁性基体11の外部に漏れているのに対し、第1磁性部11a側において磁束410は磁性基体11の内部にほぼ閉じ込められている。上述したように、外部電極12は第1磁性部11aの表面に設けられているため、磁束410が外部電極12を通ることによる損失が抑制される。
【0045】
磁性基体11の外部に漏れた磁束410の影響は、コイル部品1内だけに留まらず、コイル部品1が実装される回路基板2にもおよび、基板2aに形成されたパターンのうち特にランド部分3で生じる損失の抑制が求められる。
図1、
図2に示すように、コイル部品1の実装時には外部電極12がランド部分3にはんだ付けされるので、外部電極12が第1磁性部11aの表面に設けられることで磁束410によるランド部分3での損失も抑制される。
【0046】
図4では、外部電極12が底面102のみの1面に設けられる例が示されているが、外部電極12は、例えば底面102および端面103の2面に設けられてもよい。但し、外部電極12の面積、厚みは、小さい方が好ましい。外部電極12は、端面103に設けられた部分と底面102に設けられた部分との面積が較べられた場合、底面102側より端面103側の方が小さいことが望ましい。また、外部電極12は、端面103に設けられた部分と底面102に設けられた部分との厚みが較べられた場合、底面102側より端面103側の方が小さいことが望ましい。
【0047】
<他の実施形態>
以下、本発明のコイル部品の他の実施形態について説明する。以下では、第1実施形態との相違点に着目して説明を行い、第1実施形態の構成要素と同様の構成要素については同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0048】
図7は、第2実施形態のコイル部品110を示す図である。
第2実施形態のコイル部品110では、第1磁性部11aが外部電極12と第2磁性部11bとの間に延びて端面103に達している。この結果、外部電極12は第2磁性部11bから離間して設けられている。
【0049】
第2磁性部11bから外部電極12が離間していることにより、外部電極12における第2磁性部11bからの磁束410の漏れの影響は、第2磁性部11bと外部電極12が接触する場合に較べて減少する。従って、外部電極12における損失が一層抑制される。
【0050】
図8は、第3実施形態のコイル部品120を示す図である。
第3実施形態のコイル部品120では、周回部402の内周側に第2磁性部11bが設けられ、周回部402の外周側に第1磁性部11aが設けられている。この結果、端面103側での磁束410の漏れが抑制される。従って、他の電子部品などに対する磁束410の影響が小さいので高い密度での実装が可能である。
【0051】
<実施例>
第1実施形態のコイル部品1について、具体的な数値例を適用した実施例について説明する。
図9は、実施例におけるQ値とインダクタンスを示すグラフである。
図9の横軸は、第1磁性部11aと第2磁性部11bの最小厚みの比率D2/D1を示す。
図9の右側の縦軸は、比率D2/D1が1の場合を基準としたインダクタンスの変化(ΔL)を示し、左の縦軸は、比率D2/D1が1の場合を基準としたQ値の変化(ΔQ)を示す。
【0052】
Q値およびインダクタンスの算出に際し、第1磁性部11aの比透磁率は35、第2磁性部11bの比透磁率は30とした。また、コイル部品1のサイズは、長さ2.0mm、幅1.6mm、高さ0.8mmとした。コイル部品1の高さおよび導体14のサイズは固定としたため、第1磁性部11aと第2磁性部11bの最小厚みD1、D2は連動して変動する。第1磁性部11aの最小厚みD1と第2磁性部11bの最小厚みD2は、0.16mmを基準として変動させた。
【0053】
最小厚みの比率D2/D1に対してQ値とインダクタンスを算出した結果をグラフに示した。Q値は黒丸が付されたグラフで示され、インダクタンスは白い四角が付されたグラフで示されている。比率D2/D1が「1」である場合のQ値とインダクタンスに較べ、比率D2/D1が「1」よりも大きい場合は、Q値とインダクタンスが減少することがわかる。
【0054】
Q値は、周波数f、インダクタンスLおよび抵抗Rに対してQ=2πfL/Rの関係を有し、Q値の逆数が損失係数である。従って、第1磁性部11aの最小厚みD1が第2磁性部11bの最小厚みD2よりも小さいと、等しい場合よりも損失が増すことになる。この結果は、第1磁性部11aの最小厚みD1が小さいと磁束410が外部電極12を通過し、渦電流損失により損失が生じるためと考えられる。
【0055】
これに対し、比率D2/D1が「1」よりも小さい場合は、比率D2/D1が「1」である場合に較べてQ値とインダクタンスが増大傾向にあることがわかる。従って、第1磁性部11aの最小厚みD1が第2磁性部11bの最小厚みD2よりも大きいと、等しい場合よりも損失が減少する。この結果は、透磁率の高い第1磁性部11aの最小厚みD1が厚くなったことで、第1磁性部11a側での磁束410の漏れが減少し、外部電極12を通過する磁束410も減少したためと考えられる。
【符号の説明】
【0056】
1 コイル部品
2 回路基板
2a 基板
3 ランド部
11 磁性基体
11a 第1磁性部
11b 第2磁性部
11c 第1金属粒子
11d 第2金属粒子
12 外部電極
14 導体
401 引出部
402 周回部
101 上面
102 底面