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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108315
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】コイル部品および回路基板
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20240805BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20240805BHJP
   H01F 27/30 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F27/29 123
H01F27/30 101A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012622
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】三村 大樹
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB08
5E070BB03
5E070DB02
5E070EA01
(57)【要約】
【課題】漏れ磁束による影響を抑制する。
【解決手段】一態様に係るコイル部品によれば、周回部および引出部を有する導体と、金属磁性粒子を有し、上記周回部を内包する磁性基体と、上記引出部と電気的に接続される外部電極と、を有するコイル部品において、上記磁性基体の、上記周回部を間に挟んだ第1面と第2面のうち、上記第1面から上記周回部までの最小厚みが上記第2面から上記周回部までの最小厚みより大きく、上記外部電極は、上記第1面の外側に設けられる。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周回部および引出部を有する導体と、
金属磁性粒子を有し、前記周回部を内包する磁性基体と、
前記引出部と電気的に接続される外部電極と、を有するコイル部品において、
前記磁性基体の、前記周回部を間に挟んだ第1面と第2面のうち、前記第1面から前記周回部までの最小厚みが前記第2面から前記周回部までの最小厚みより大きく、
前記外部電極は、前記第1面の外側に設けられる、
ことを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記磁性基体の、外面から前記周回部分までの厚みが最小である第3箇所は、前記第1面および前記第2面に隣り合う第3面に位置し、かつ、前記第3箇所と前記外部電極との最短距離は、前記第2面側で前記磁性基体の最小厚みとなっている第2箇所と前記外部電極との最短距離よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記外部電極は前記第2面に達していないことを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記外部電極は、前記第1面、前記第2面および前記第3面に隣り合う第4面に至り、かつ、前記第4面から前記周回部までの最小厚みが前記第2面から前記周回部までの最小厚みより大きいことを特徴とする請求項2に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記外部電極は前記第3面に達していないことを特徴とする請求項2に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記外部電極が設けられた第1箇所における前記磁性基体の最小厚みは、前記第3箇所における前記磁性基体の厚みの2倍以上であることを特徴とする請求項2に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記外部電極が設けられた第1箇所における前記金属磁性粒子の粒径は、前記第2面側で前記磁性基体の最小厚みとなっている第2箇所における前記金属磁性粒子の粒径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか1項に記載のコイル部品と、
前記コイル部品が実装された基板と、を備えることを特徴とする回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品および回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の高性能化に伴い、電子機器に用いられる電子部品は数量が増加してきている。このため、電子機器においては、電子部品の搭載数量の増加のために、基板に搭載される電子部品の間隔の狭ピッチ化も図られており、部品サイズの小型化と共に高密度実装化が進んでいる。
【0003】
例えば、特許文献1には、電子部品の小型化と部品間の狭ピッチ化(高密度実装化)に対応したインダクタが提案されている。特許文献1のインダクタでは、小型の電子部品が高密度で実装される場合の、電子部品の相互間でのはんだによるショートが外部端子によって対策されている。また、特許文献1のインダクタにおいては、金属磁性粉末の充填率が高められることにより小型化が図られている。当該インダクタは、構造として金属磁性粉末でコイルを封止していることから、閉磁路構造のコイル部品となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-225479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、コイル部品の小型化が進み、特に高密度実装化に対応する場合、コイル部品として極力簡素な構造が求められており、金属磁性粉末から作られる磁性体の厚みは薄くなってきている。この結果、近年では、磁性体の厚みが薄い部分で磁束が外側に漏れ易くなっている。
【0006】
小型化と高密度実装化に伴う漏れ磁束の増加は、隣に実装される電子部品への影響を生じ、また外部電極などにおける渦電流損失につながることになる。
そこで、本発明は、漏れ磁束による影響を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、周回部および引出部を有する導体と、金属磁性粒子を有し、上記周回部を内包する磁性基体と、上記引出部と電気的に接続される外部電極と、を有するコイル部品において、上記磁性基体の、上記周回部を間に挟んだ第1面と第2面のうち、上記第1面から上記周回部までの最小厚みが上記第2面から上記周回部までの最小厚みより大きく、上記外部電極は、上記第1面の外側に設けられる。
【0008】
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記磁性基体の、外面から上記周回部分までの厚みが最小である第3箇所は、上記第1面および上記第2面に隣り合う第3面に位置し、かつ、上記第3箇所と上記外部電極との最短距離は、上記第2面側で上記磁性基体の最小厚みとなっている第2箇所と上記外部電極との最短距離よりも大きい。
【0009】
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記外部電極は上記第2面に達していない。
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記外部電極は、上記第1面、上記第2面および上記第3面に隣り合う第4面に至り、かつ、上記第4面から上記周回部までの最小厚みが上記第2面から上記周回部までの最小厚みより大きい
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記外部電極は上記第3面に達していない。
【0010】
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記外部電極が設けられた第1箇所における上記磁性基体の最小厚みは、上記第3箇所における上記磁性基体の厚みの2倍以上である。
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記外部電極が設けられた第1箇所における上記金属磁性粒子の粒径は、上記第2面側で上記磁性基体の最小厚みとなっている第2箇所における上記金属磁性粒子の粒径よりも大きい。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る回路基板は、いずれかの上記コイル部品と、上記コイル部品が実装された基板と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、漏れ磁束による影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係るコイル部品を示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係るコイル部品を示す正面図である。
図3】第1実施形態に係るコイル部品を示す断面図である
図4】コイル部品に生じる磁束を概念的に示すLW方向の断面図である。
図5】コイル部品に生じる磁束を概念的に示すLH方向の断面図である。
図6】磁性基体の構造を示すLW方向の断面図である。
図7】磁性基体の構造を示すLH方向の断面図である。
図8】第2箇所と第3箇所の外部電極に対する位置を示すLW方向の図である。
図9】第2箇所と第3箇所の外部電極に対する位置を示すLH方向の図である。
図10】第2実施形態のコイル部品を示すLW方向の断面図である。
図11】第2実施形態のコイル部品を示すLH方向の断面図である。
図12】第3実施形態のコイル部品を示す断面図である。
図13】第1磁性部の微視的構造を示す模式的な拡大図である。
図14】第2磁性部の微視的構造を示す模式的な拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は本発明を限定するものではなく、実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の構成に必須のものとは限らない。実施形態の構成は、本発明が適用される装置の仕様や各種条件(使用条件、使用環境等)によって適宜修正または変更され得る。
【0015】
本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって画定され、以下の個別の実施形態によって限定されない。以下の説明に用いる図面は、各構成を分かり易くするため、実際の構造と縮尺および形状などを異ならせることがある。先に説明した図面に示された構成要素については、後の図面の説明で適宜に参照する場合がある。
【0016】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るコイル部品を示す斜視図である。
コイル部品1は、基板2aに実装されている。基板2aには、例えば2つのランド部3が設けられている。コイル部品1は、1つの磁性基体11と2つの外部電極12とを有する。コイル部品1は各外部電極12とランド部3とがはんだで接合されることで基板2aに実装される。H軸方向に見た場合、ランド部3の面積は、外部電極12の面積の1.6倍以下である。より望ましくは、H軸方向に見た場合、ランド部3の面積は、外部電極12の面積の1.3倍以下である。
【0017】
本発明の一実施形態による回路基板2は、コイル部品1と、このコイル部品1が実装された基板2aと、を備える。回路基板2は、様々な電子機器に備えられる。回路基板2を備えた電子機器としては、自動車の電装品、サーバ、ボードコンピュータおよびこれら以外の様々な電子機器が想定される。
【0018】
本明細書においては、文脈上別に解される場合を除き、方向の説明は、図1の「L軸」方向、「W軸」方向および「H軸」方向を基準に用い、それぞれ、「長さ」方向、「幅」方向および「高さ」方向と称する。
コイル部品1は、直方体形状の外形を有する。即ちコイル部品1は、長さ方向Lの両端と、高さ方向Hの両端と、幅方向Wの両端とのそれぞれに外面を有する。
【0019】
直方体形状のコイル部品1における各辺の寸法は、長さ方向Lが例えば1.0~4.5mmの範囲にあり、幅方向Wが例えば0.5~3.2mmの範囲にあり、高さ方向Hが例えば0.5~1.0mmの範囲にある。また、高さ方向Hが長さ方向Lより小さく、更には高さ方向Hが幅方向Wより小さくなっている。
【0020】
コイル部品1の外面はいずれも、平坦な平面であってもよいし湾曲した湾曲面であってもよい。また、コイル部品1の8つの角部および12の稜線部は、丸みを有していてもよい。
本明細書においては、コイル部品1の外面の一部が湾曲している場合や、コイル部品1の角部や稜線部が丸みを有している場合にも、かかる形状を「直方体形状」と称することがある。つまり、本明細書において「直方体」又は「直方体形状」という場合には、数学的に厳密な意味での「直方体」を意味するものではない。
【0021】
<コイル部品の構造>
図2は、図1に示すコイル部品1の正面図であり、図3は、図1に示すコイル部品1の断面図である。図3には、図1に示すA-A線に沿った断面が示されている。以下、図1図3を参照して説明する。
【0022】
本発明の第1実施形態におけるコイル部品1は、磁性基体11と外部電極12を有し、磁性基体11の内部に導体14を有する。
本実施形態における磁性基体11は、金属磁性材料と結合材とから形成される磁性体である。結合材は、金属磁性材料の相互間を結合させるものであり、また電気的な導通を防ぐため、絶縁性の高いものでもある。結合材は、磁性基体11の比抵抗が10Ωcm以上となるものが用いられる。例えば、結合材としての比抵抗が10Ωcm以上であるものが選ばれ、また機械的強度を高める目的から、結合材としては、樹脂、ガラス、金属酸化物が選択され得る。
【0023】
結合材の樹脂としては、例えば、ガラス転位点(Tg)が150℃より高いものが選ばれ、Tgが180℃より高いものでもよい。このような高いTgの樹脂であると、ガラス、金属酸化物と同様に、高温の用途においても、環境変化に対応できる。
磁性基体11は、内部の比抵抗が非常に高く、また表面でも同様であり、表面にも結合材が存在している。金属磁性材料は、Fe、Ni、Coのうちの1以上の金属磁性粒子を含む。また、金属磁性材料は金属磁性粒子に加えて、Mg、Mn、Niのうちの1以上のセラミックの磁性粒子やシリカなどの非磁性粒子を含んでもよい。金属磁性粒子としては、Fe、Ni、Coの成分に加えてSi、Cr、Al、B、Pのうちの1以上の成分を含んでもよく、また複数種の金属磁性粒子が組み合わされてもよい。磁性基体11は、金属磁性粒子が絶縁物で結合されることで絶縁性を有している。絶縁物は、樹脂、酸化物または窒化物を含んでいる。
【0024】
金属磁性材料が金属磁性粒子以外に、金属微粒子、金属酸化物、セラミック材料などの他の材料を更に含む場合、当該他の材料の粒径は平均で0.01~1μmであり、金属磁性粒子より粒径が小さい。金属磁性粒子以外の材料を含む場合は、磁性としての機能を高めることよりも、例えば空隙を減らす、または機械的強度を補うことができる。
【0025】
磁性基体11は、金属磁性材料の充填率が79vol%以上87vol%以下であり、残部が金属磁性材料以外のものであり、絶縁物または空隙を含んでいる。
磁性基体11は直方体形状を有し、高さ方向Hの一端に上面101を有し、高さ方向Hの他端に底面102を有し、長さ方向Lの両端それぞれに端面103を有し、幅方向Wの両端に前面104および後面105を有する。底面102は、コイル部品1が基板2aに実装される際に基板2aと対向する面である。
【0026】
導体14は、導電性に優れた金属材料から成る。導体14用の金属材料としては、例えば、Cu、Al、Ni、もしくはAgのうちの1以上の金属、又はこれらの金属のいずれかを含む合金が用いられ得る。導体14は、表面に絶縁物の皮膜が設けられた金属の導線が巻回されたものでもよいし、基板やシートなどの表面にめっきや印刷などによって形成されたものでもよい。
【0027】
本実施形態の導体14は、1ターン以上周回した周回部402を有する。周回部402の周回数は、例えば1.5ターン以上、10.5ターン以下である。また、コイル部品1の長さ方向Lが例えば1.0~2.5mmのような場合、例えば、1.5ターン以上6.5ターン以下である。周回部402の形状は平面状でもよく螺旋状でもよい。周回部402は、例えば、2つの周回が上側と下側で対向し、1つの集合体となっていてもよい。
【0028】
導体14は、外部との電気的な導通を取るための引き出し部401を有する。引き出し部401は周回部402の両端に設けられており、外部電極12を導体14と接続するものである。導体14の作製には、巻線、薄膜、積層のいずれかのプロセスが用いられ、特に制限されることはない。
【0029】
図3には、導線が磁性基体11の底面102と上面101に沿って周回した、いわゆる水平巻きの周回部402が例示されている。導体14は、導線が磁性基体11の端面103に沿って周回した、いわゆる垂直巻きの周回部を有してもよい。
コイル部品1は、磁性基体11の底面102に2つの外部電極12を備えている。上述したように磁性基体11は絶縁性を有するため、外部電極12は、磁性基体11の外面に直接設けられることが可能である。外部電極12は、Ag、Cu、Ti、Ni、Snのうちの1以上の金属からなる金属層を有する。金属層は、例えば厚みが1~5μmの層である。外部電極12は複数の金属層が組み合わされたものでもよく、合計の厚みは例えば5~10μmとなる。また、外部電極12は、一部に樹脂を含んだ金属層が組み合わされてもよく、合計の厚みは例えば10~20μmとなる。
【0030】
外部電極12は、導体14と同じ成分の層、および導体14よりも抵抗の高い成分の層の一方あるいは双方からなる。また、外部電極12は、導体14と同じ充填率の層、および導体14よりも低い充填率の層の一方あるいは双方からなる。
【0031】
図3に示す例の場合、外部電極12は、下地層201とめっき層202とを有する。下地層201には、Ag、Cu、Ti、Niなどの金属材料が用いられる。下地層201は、めっき、金属材料の塗布、スパッタリング法、あるいは蒸着法により磁性基体11の表面に設けられる。また、下地層201は、厚みが1μm以下であり、一部分が他の部分から離間して存在していてもよい。下地層201は、磁性基体11の表面および導体14の引き出し部401と密着することで、外部電極12を磁性基体11と一体化させるとともに外部電極12と導体14との導通を得る。
【0032】
めっき層202は、導電性に優れた金属材料から成る。金属材料としては、例えばCu、Agが用いられ、更にNi、Pd、Snが用いられる。めっき層202は、それぞれの金属材料を主成分とする層、または一部で合金化した層が重なり、層状に形成される。
【0033】
図4および図5は、コイル部品1に生じる磁束を概念的に示す図である。図4には、コイル部品1がLW方向に切断された断面が示され、図5には、コイル部品1がLH方向に切断された断面が示されている。
磁束410は、導体14の周回部402を取り巻くように生じ、磁性基体11は磁束410の大部分を内部に導いていて、コイル部品1全体では閉磁路化が実現される。しかしながら、磁束410は、磁性基体11の内部に完全に閉じ込められているわけではなく、磁束410の一部が漏れ磁束として磁性基体11の外部に出ている。そして、磁性基体11の外部に漏れた磁束410が外部電極12やランド部3などの金属部分を通ると、渦電流による損失が生じることになる。
【0034】
磁束410は、磁性基体11の外面から周回部402までの厚みが小さい箇所で漏れが大きくなる。例えば、上面101や底面102では、周回部402に沿った部分で厚みが小さく、磁束410の漏れが大きい。また、前面104や後面105では、長さ方向Lの中央付近で厚みが小さく、磁束410の漏れが大きい。また、端面103では、幅方向Wの中央付近で厚みが小さく、磁束410の漏れが大きい。
【0035】
コイル部品1は全体として閉磁路化が実現されているため、磁性基体11の外部に至る磁束410は一部であるが、磁性基体11の外部に漏れた磁束410による損失の抑制が求められる。本実施形態のコイル部品1では、磁性基体11の厚みが小さい箇所と外部電極12との配置が工夫されることで漏れ磁束による影響が抑制されている。
【0036】
<磁性基体の構造>
図6および図7は、磁性基体11の構造を示す断面図である。図6には、コイル部品1がLW方向に切断された断面が示され、図7には、コイル部品1がLH方向に切断された断面が示されている。
【0037】
本実施形態のコイル部品1では、外部電極12が設けられている範囲において第1箇所31が磁性基体11の最小厚みD1となっている。即ち、第1箇所31における最小厚みD1は、周回部402と外部電極12との最短距離である。また、本実施形態の場合、第1箇所31は、底面102側において磁性基体11が最小厚みとなっている箇所にも相当する。また、上面101側においては、周回部402と上面101との間に位置する第2箇所32が磁性基体11の最小厚みD2となっている。そして、第1箇所31における最小厚みD1の方が、第2箇所32における最小厚みD2よりも大きい。
【0038】
つまり、磁性基体11の周回部402を間に挟んだ上面101と底面102のうち、外部電極12は、外面から当該周回部402までの磁性基体11の最小厚みが大きい方の底面102側に設けられている。このため、周回部402で生じる磁束410は、外部電極12が設けられた底面102側で、上面101側よりも漏れが少なく、外部電極12による損失が抑制される。
【0039】
即ち、第1箇所31における最小厚みD1が第2箇所32における最小厚みD2よりも大きいことで、第1箇所31では磁性基体11の十分な厚みが得られる。この結果、第1箇所31を通過する磁束410は磁性基体11内に閉じ込め可能な許容範囲を超えることが無く、磁束410の漏れが抑制される。つまり、第2箇所32側では磁束410の一部が磁性基体11の外部に漏れているのに対し、第1箇所31側において磁束410は磁性基体11の内部にほぼ閉じ込められている。従って第1箇所31側に設けられた外部電極12を磁束410が通ることによる損失が抑制される。
【0040】
磁性基体11の外部に漏れた磁束410の影響は、コイル部品1内だけに留まらず、コイル部品1が実装される回路基板2にもおよび、基板2aに形成されたパターンのうち特にランド部分3で生じる損失の抑制が求められる。
【0041】
図1図2に示すように、コイル部品1の実装時には外部電極12がランド部分3にはんだ付けされるので、外部電極12が第1箇所31に設けられることで磁束410によるランド部分3での損失も抑制される。
本実施形態のコイル部品1では、前面104および後面105それぞれで長さ方向Lの中央付近に位置する第3箇所33が、前面104および後面105における最小厚みD3となっている。そして、第3箇所33における最小厚みD3が、磁性基体11全体における最小厚みとなっていて、磁束410の漏れは第3箇所33で大きい。つまり、磁性基体11の外面の、周回部402までの距離が最短である第3箇所33は、上面101および底面102とは異なる前面104および後面105に位置する。
【0042】
本実施形態の場合、外部電極12は底面102のみに設けられているため、外部電極12は、第2箇所32が位置する上面101に到達しておらず、かつ、第3箇所33が位置する前面104および後面105にも到達していない。つまり、外部電極12は磁束410の漏れが大きい第2箇所32および第3箇所33から離されているため、外部電極12による損失が更に抑制される。
【0043】
各箇所31、32、33における最小厚みD1、D2、D3は、図6および図7に示す断面上での測定によって求められる。第1箇所31における最小厚みD1は、例えば0.2mm以上0.5mm以下である。第2箇所32における最小厚みD2は、例えば0.05mm以上0.2mm以下である。そして、第1箇所31と第2箇所32の最小厚みD1、D2の比率D2/D1は1より小さく、0.2以上である。
【0044】
第3箇所33における最小厚みD3は、例えば0.03mm以上0.15mm以下である。本実施形態では、第3箇所33における最小厚みD3が磁性基体11全体における最小厚みであり、第1箇所31と第3箇所33の最小厚みD1、D3の比率D3/D1は、1より小さく、0.2以上である。特に、第1箇所31の最小厚みD1は第3箇所33の最小厚みD3の2倍以上であることが望ましく、これにより、外部電極12による損失が十分に抑制される。
【0045】
図8および図9は、第2箇所32と第3箇所33の外部電極12に対する位置を示す図である。図8には、コイル部品1がLW方向に切断された断面が示され、図9には、コイル部品1がLH方向に切断された断面が示されている。
第3箇所33と外部電極12との最小距離D4は、第3箇所33から外部電極12の縁に向かう斜め方向の距離であり、第2箇所32と外部電極12との最小距離D5は、第2箇所32から外部電極12に向かう高さ方向Hの距離である。第3箇所33と外部電極12との最小距離D4は、第2箇所32と外部電極12との最小距離D5よりも大きく、1.5倍以上であることが望ましい。
【0046】
磁性基体11全体における最小厚みの箇所である第3箇所33が外部電極12から大きく離れているため、第3箇所33で生じやすい漏れ磁束による外部電極12等の損失が抑制される。
【0047】
<他の実施形態>
次に、コイル部品の他の実施形態について説明する。以下では第1実施形態との相違点に着目した説明を行い、第1実施形態の構成要素と同様の構成要素には同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0048】
図10および図11は、第2実施形態のコイル部品110を示す図である。図10には、コイル部品110がLW方向に切断された断面が示され、図11には、コイル部品110がLH方向に切断された断面が示されている。
第2実施形態のコイル部品110では、外部電極12が磁性基体11の底面102と端面103に設けられている。即ち、外部電極12は、底面102の端部から、当該端部に繋がった端面103へと延びている。但し、第2実施形態の場合も、外部電極12は、第2箇所32が存在する上面101には到達していないとともに、第3箇所33が存在する前面104および後面105にも到達していない。このため、第1実施形態よりも広い面積の外部電極12を備えた第2実施形態のコイル部品110でも、漏れ磁束の影響による外部電極12等での損失が抑制される。
【0049】
底面102から端面103に至る外部電極12では、端面103部分での外部電極12の面積が底面102部分での外部電極12の面積よりも小さく、比率は1より小さく0.2以上である。また、端面103部分での外部電極12の厚さが底面102部分での外部電極12の厚さよりも小さい。外部電極12は底面102部分よりも端面103部分の方が漏れ磁束の影響を受けやすいので、端面103部分の面積や厚さが小さいことで外部電極12による損失が抑制される。
外部電極12が設けられた端面103側では、外部電極12と周回部402との間に位置する第4箇所34で最小厚みD6となっている。そして、第4箇所34の最小厚みD6は、第2箇所32の最小厚みD2よりも大きい。従って、底面102から端面103に至る外部電極12の全体に亘り、周回部402との距離が第2箇所32の最小厚みD2よりも大きいので、外部電極12による損失が抑制される。
【0050】
図12は、第3実施形態のコイル部品120を示す断面図である。
第3実施形態のコイル部品120において、磁性基体11は、第1磁性部11aと第2磁性部11bとを含んでおり、第1磁性部11aと第2磁性部11bは、間に導体14の周回部402を挟んでいる。即ち、磁性基体11は、第1磁性部11aを、周回部402を挟んだ一方に有するとともに、第2磁性部11bを、上記一方に対する他方に有する。
【0051】
図12に示す例では、第1磁性部11aは周回部402の底面102側に位置し、第2磁性部11bは周回部402の上面101側に位置する。磁性基体11は、周回部402の周囲を第1磁性部11aおよび第2磁性部11bにより取り囲んで閉磁路化している。
外部電極12は、第1磁性部11aの表面に設けられている。即ち、第1磁性部11aと接して磁性基体11の外面に設けられる。図12に示す例では、第1磁性部11aが周回部402の底面102側に位置するので、外部電極12は、磁性基体11の底面102側に設けられている。
【0052】
図13は、第1磁性部11aの微視的構造を示す模式的な拡大図であり、図14は、第2磁性部11bの微視的構造を示す模式的な拡大図である。
第1磁性部11aは、第1金属粒子11cが互いに結合された構造を有する。第1金属粒子11cは粒度分布を有し、平均粒径は3~30μmである。
【0053】
第2磁性部11bは、第2金属粒子11dが互いに結合された構造を有する。第2金属粒子11dは粒度分布を有し、平均粒径は2~15μmである。
第1金属粒子11cの平均粒径は、第2金属粒子11dの平均粒径に対して1.5倍以上5倍以下の範囲にある。このような粒径の関係を満たす第1金属粒子11cおよび第2金属粒子11dとしては、例えばレーザ回折式の粒度分布測定装置によって求められる数値に基づいた適切な粒径の金属粒子が選択されて磁性基体11の作製に用いられる。
【0054】
また、磁性基体11として作製された後に第1金属粒子11cおよび第2金属粒子11dの粒径が求められる場合は、磁性基体11の断面が例えば光学顕微鏡で観察され、個々の粒子について、粒子外形の最大寸法として粒径が求められる。そして、平均粒径としては、最大寸法が1μm以上である粒子が選択され、磁性基体11の断面の一定面積における平均値が算出される。
【0055】
第1金属粒子11cと第2金属粒子11dは、互いに同種の磁性材料からなる粒子であってもよいし、互いに異なる種類の磁性材料からなる粒子であってもよい。また、第1金属粒子11cと第2金属粒子11dとのそれぞれは、単一種類の磁性材料からなる粒子であってもよいし、複数種類の磁性材料が組み合わされた粒子であってもよい。
【0056】
第3実施形態でも磁性基体11は、金属磁性材料の充填率が79vol%以上87vol%以下であり、第1磁性部11aと第2磁性部11bにおける金属磁性材料の充填率は、互いに同じか、第2磁性部11bの方が5%高い。これにより、比透磁率は第1磁性部11aと第2磁性部11bのいずれについても30以上50以下の範囲になる。また、第1磁性部11aは第2磁性部11bより高い比透磁率を有し、第2磁性部11bに対し第1磁性部11aの比透磁率は5%以上20%以下の範囲で高い。比透磁率がこの範囲であれば、磁性基体11が磁束410の大部分を内部に導くことができ、コイル部品1全体では閉磁路化が実現される。
【0057】
第1磁性部11aと第2磁性部11bが上述した充填率を有し、第1金属粒子11cの平均粒径が第2金属粒子11dの平均粒径よりも大きいため、第2磁性部11bは第1磁性部11aに較べて磁気飽和特性が高い。
【0058】
図12に戻って説明を続ける。
磁性基体11は、第1磁性部11aと第2磁性部11bを備えることで、望ましい磁性特性を有する。即ち、第1磁性部11aは透磁率に寄与し、第2磁性部11bは損失に寄与している。このためコイル部品1は、透磁率を確保しつつ損失を抑えることが可能となり、より効率よく磁気性能を得ることができる。
【0059】
第3実施形態では、第2箇所32は第2磁性部11bの一部であり、第1箇所31は第1磁性部11aの一部である。そして、第1磁性部11aと第2磁性部11bを備える第3実施形態の場合、第2箇所32と第1箇所31の最小厚みD1、D2の比率D2/D1は0.5以上であってよい。即ち、第1箇所31と第2箇所32とで最小厚みD1、D2の差が小さくても、外部電極12による損失が抑制される。同様に、第2箇所32と第3箇所33の最小厚みD2、D3の比率D3/D2は0.5以上であってよい。
【0060】
最小厚みD1、D2、D3の差が小さいことで、第2箇所32や第3箇所33における機械的強度の低下が防止される。
【符号の説明】
【0061】
1 コイル部品
2 回路基板
2a 基板
3 ランド部
11 磁性基体
11a 第1磁性部
11b 第2磁性部
11c 第1金属粒子
11d 第2金属粒子
12 外部電極
14 導体
401 引出部
402 周回部
101 上面
102 底面
103 端面
104 前面
105 後面
31 第1箇所
32 第2箇所
33 第3箇所
D1、D2、D3 最小厚み
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14