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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108317
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】サイリスター回路及び回路装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20240805BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20240805BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
H01L27/04 H
H01L27/04 A
H01L27/06 102A
H01L27/06 311C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012626
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】池田 益英
【テーマコード(参考)】
5F038
5F048
【Fターム(参考)】
5F038BH06
5F038BH07
5F038BH13
5F038CA02
5F038EZ20
5F048CC10
5F048CC18
(57)【要約】
【課題】チップ面積の増大を抑えつつクランプ電圧の増大を抑制できるサイリスター回路の提供。
【解決手段】サイリスター回路1は、アノード領域402とカソード領域403と不純物領域503と第1ゲート領域401と第2ゲート領域404を含む。アノード領域402は、第1導電型の第1ウェル505に設けられ、アノードラインL1に電気的に接続される。カソード領域403は、第2導電型の第2ウェル506に設けられ、カソードラインL2に電気的に接続される。不純物領域503は、第2ウェル506に設けられ、抵抗Rex1を介してアノードラインL1に電気的に接続される第1導電型の領域である。不純物領域503は、アノード領域402及びカソード領域403と第2ゲート領域404との間に配置される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の第1ウェルに設けられ、アノードラインに電気的に接続される第2導電型のアノード領域と、
前記第2導電型の第2ウェルに設けられ、カソードラインに電気的に接続される前記第1導電型のカソード領域と、
前記第2ウェルに設けられ、抵抗を介して前記アノードラインに電気的に接続される前記第1導電型の不純物領域と、
前記第1ウェルに設けられ、前記抵抗を介して前記アノードラインに電気的に接続される前記第1導電型の第1ゲート領域と、
前記第2ウェルに設けられ、前記カソードラインに電気的に接続される前記第2導電型の第2ゲート領域と、
を含み、
前記不純物領域は、前記アノード領域及び前記カソード領域と前記第2ゲート領域との間に配置されることを特徴とするサイリスター回路。
【請求項2】
請求項1に記載のサイリスター回路において、
前記第2ゲート領域は、第2抵抗を介して前記カソードラインに電気的に接続されることを特徴とするサイリスター回路。
【請求項3】
請求項1に記載のサイリスター回路において、
前記不純物領域と前記カソード領域との間に設けられるゲート電極を含み、
前記不純物領域は、前記ゲート電極を有するトランジスターのドレインであり、
前記カソード領域は、前記トランジスターのソースであることを特徴とするサイリスター回路。
【請求項4】
請求項1に記載のサイリスター回路において、
前記不純物領域は、前記第2ウェルをベースとするバイポーラトランジスターのコレクターであり、
前記カソード領域は、前記バイポーラトランジスターのエミッターであることを特徴とするサイリスター回路。
【請求項5】
第1導電型の第1ウェルに設けられ、アノードラインに電気的に接続される第2導電型のアノード領域と、
前記第2導電型の第2ウェルに設けられ、カソードラインに電気的に接続される前記第1導電型のカソード領域と、
前記第1ウェルに設けられ、抵抗を介して前記カソードラインに電気的に接続される前記第2導電型の不純物領域と、
前記第1ウェルに設けられ、前記アノードラインに電気的に接続される前記第1導電型の第1ゲート領域と、
前記第2ウェルに設けられ、前記抵抗を介して前記カソードラインに電気的に接続される前記第2導電型の第2ゲート領域と、
を含み、
前記不純物領域は、前記アノード領域及び前記カソード領域と前記第1ゲート領域との間に配置されることを特徴とするサイリスター回路。
【請求項6】
請求項5に記載のサイリスター回路において、
前記第1ゲート領域は、第2抵抗を介して前記アノードラインに電気的に接続されることを特徴とするサイリスター回路。
【請求項7】
請求項5に記載のサイリスター回路において、
前記不純物領域と前記アノード領域との間に設けられるゲート電極を含み、
前記不純物領域は、前記ゲート電極を有するトランジスターのドレインであり、
前記アノード領域は、前記トランジスターのソースであることを特徴とするサイリスター回路。
【請求項8】
請求項5に記載のサイリスター回路において、
前記不純物領域は、前記第1ウェルをベースとするバイポーラトランジスターのコレクターであり、
前記アノード領域は、前記バイポーラトランジスターのエミッターであることを特徴とするサイリスター回路。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のサイリスター回路において、
前記抵抗は、絶縁膜上に形成されたポリシリコン抵抗あることを特徴とするサイリスター回路。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のサイリスター回路において、
前記第1ウェルと前記第2ウェルは、前記第1導電型のディープウェル上に設けられることを特徴とするサイリスター回路。
【請求項11】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のサイリスター回路において、
前記第1ウェルと前記第2ウェルを囲むように前記第2導電型の基板に設けられるリング状の前記第2導電型の第2不純物領域を含むことを特徴とするサイリスター回路。
【請求項12】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のサイリスター回路において、
前記アノードラインに電気的に接続される第1端子と、
前記カソードラインに電気的に接続される第2端子と、
前記アノードラインと前記カソードラインの間に設けられ、前記アノードラインから前記カソードラインへの方向を順方向とするダイオードと、
を含むことを特徴とする回路装置。
【請求項13】
請求項12に記載の回路装置において、
前記サイリスター回路と前記ダイオードは、隣り合って配置されることを特徴とする回路装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイリスター回路及び回路装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、サイリスター回路を用いた保護素子が開示されている。当該保護素子においては、NMOSのドレインを形成しているN型拡散領域は、サイリスターのアノードを形成しているP型拡散領域とカソードを形成しているN型拡散領域の間に配置され、かつドレインを形成しているN型拡散領域はNウェルとPウェルの境界に存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-313110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された保護素子によれば、NMOSのドレインを形成しているN型拡散領域は、サイリスターのアノードを形成しているP型拡散領域とカソードを形成しているN型拡散領域の間に配置されている。このため、アノードとカソードの間のNウェルの距離は長くなり、Nウェルのウェル抵抗値が高くなる。従って、サージ電流が流れた際のクランプ電圧が高くなる可能性がある。また抵抗値を下げるために断面積を大きくするとチップ面積が大きくなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、第1導電型の第1ウェルに設けられ、アノードラインに電気的に接続される第2導電型のアノード領域と、前記第2導電型の第2ウェルに設けられ、カソードラインに電気的に接続される前記第1導電型のカソード領域、前記第2ウェルに設けられ、抵抗を介して前記アノードラインに電気的に接続される前記第1導電型の不純物領域と、前記第1ウェルに設けられ、前記抵抗を介して前記アノードラインに電気的に接続される前記第1導電型の第1ゲート領域と、前記第2ウェルに設けられ、前記カソードラインに電気的に接続される前記第2導電型の第2ゲート領域と、を含み、前記不純物領域は、前記アノード領域及び前記カソード領域と前記第2ゲート領域との間に配置されるサイリスター回路に関係する。
【0006】
また本開示の他の態様は、第1導電型の第1ウェルに設けられ、アノードラインに電気的に接続される第2導電型のアノード領域と、前記第2導電型の第2ウェルに設けられ、カソードラインに電気的に接続される前記第1導電型のカソード領域と、前記第1ウェルに設けられ、抵抗を介して前記カソードラインに電気的に接続される前記第2導電型の不純物領域と、前記第1ウェルに設けられ、前記アノードラインに電気的に接続される前記第1導電型の第1ゲート領域と、前記第2ウェルに設けられ、前記抵抗を介して前記カソードラインに電気的に接続される前記第2導電型の第2ゲート領域と、を含み、前記不純物領域は、前記アノード領域及び前記カソード領域と前記第1ゲート領域との間に配置されるサイリスター回路に関係する。
【0007】
また本開示の他の態様は、上記に記載のサイリスター回路において、前記アノードラインに電気的に接続される第1端子と、前記カソードラインに電気的に接続される第2端子と、前記アノードラインと前記カソードラインの間に設けられ、前記アノードラインから前記カソードラインへの方向を順方向とするダイオードと、を含む回路装置に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の第1構成例の断面視での概略図。
図2】本実施形態の第1構成例の平面視での概略図。
図3】本実施形態の第1構成例の等価回路図。
図4】従来の構成例の断面視での概略図。
図5】従来の他の構成例の断面視での概略図。
図6】第1構成例の他の構成例の断面視での概略図。
図7】本実施形態の第2構成例の断面視での概略図。
図8】本実施形態の第3構成例の断面視での概略図。
図9】本実施形態の第3構成例の等価回路と回路動作について説明する図。
図10】本実施形態の第4構成例の断面視での概略図。
図11】本実施形態の回路装置の第1構成例の等価回路図。
図12】本実施形態の回路装置の第1構成例の平面視での概略図。
図13】本実施形態の回路装置の第1構成例の断面視での概略図。
図14】本実施形態の回路装置の第2構成例の等価回路図。
図15】本実施形態の回路装置の第2構成例の断面視での概略図。
図16】本実施形態の回路装置の第2構成例の平面視での概略図。
図17】本実施形態の回路装置の第3構成例の断面視での概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲の記載内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが必須構成要件であるとは限らない。
【0010】
1.サイリスター回路
図1に本実施形態のサイリスター回路1の基板構成を示す。図1は、基板2と基板2上に形成された素子を含むサイリスター回路1の第1構成例である。図1は、サイリスター回路1の第1構成例の断面視における概略図を示した図である。
【0011】
基板2は、例えばSi基板であり、例えばP型の不純物元素がドープされたSi基板を用いることができる。基板2のことを半導体基板ともいう。また図1に示すように、基板2を含む平面に対して下方を第1方向DR1とする。下方とは、基板2の厚み方向において表面から裏面に向かう方向である。第1方向DR1の反対方向、即ち基板2を含む平面に対して上方を第3方向DR3とする。即ち第1方向DR1、第3方向DR3は、半導体基板に直交する方向になっている。そして基板2を含む平面に沿う1方向を第2方向DR2とする。第2方向DR2は、後述の図2に示すように、例えば不純物領域503、アノード領域402、カソード領域403等が交互に並んで配置される方向に沿う方向を向いている。そして基板2を含む平面に沿う方向であって、第2方向DR2と直交する方向を第4方向DR4とする。平面視とは、第3方向DR3から基板2を見ることを指す。
【0012】
図1に示すように、本実施形態のサイリスター回路1は、アノード領域402とカソード領域403と不純物領域503と第1ゲート領域401と第2ゲート領域404を含む。
【0013】
アノード領域402は、N型の第1ウェル505の領域に設けられ、コンタクトANを介してアノードラインL1に接続され、アノード端子T1に接続されている。アノード領域402は、例えばP型の不純物元素がドープされた不純物領域である。
【0014】
カソード領域403は、P型の第2ウェル506に設けられ、コンタクトCSを介してカソードラインL2に接続され、カソード端子T2に接続されている。カソード領域403は、例えばN型の不純物元素がドープされた不純物領域である。
【0015】
不純物領域503は、P型の第2ウェル506に設けられ、コンタクトDと抵抗Rex1を介してアノードラインL1に電気的に接続され、アノード端子T1に接続されている。不純物領域503は、例えばN型の不純物元素がドープされた不純物領域である。
【0016】
第1ゲート領域401は、第1ウェル505の領域に設けられ、コンタクトG1と抵抗Rex1を介してアノードラインL1に電気的に接続され、アノード端子T1に接続されている。第1ゲート領域401は、例えばN型の不純物元素がドープされた不純物領域である。
【0017】
第2ゲート領域404は、第2ウェル506の領域に設けられ、コンタクトG2を介してカソードラインL2に電気的に接続され、カソード端子T2に接続されている。第2ゲート領域404は、例えばP型の不純物元素がドープされた不純物領域である。
【0018】
第1ウェル505は、図1に示すようにアノード領域402と第1ゲート領域401の第1方向DR1に設けられたN型の領域である。N型は第1導電型であり、P型が第2導電型である。第1ウェル505は、第1方向DR1側で、基板2と接している。第1ウェル505は第1ゲート領域401と同様に例えばN型であるが、その不純物濃度は第1ゲート領域401の濃度よりも低くなっている。このように第1ウェル505は、半導体基板に直交する方向を第1方向DR1としたとき、第1不純物領域の第1方向DR1に設けられる。
【0019】
第2ウェル506は、図1に示すようにカソード領域403、不純物領域503、第2ゲート領域404の第1方向DR1に設けられたP型の領域である。第1ウェル505は、第1方向DR1側で、基板2と接している。第2ウェル506は第2ゲート領域404と同様に例えばP型であるが、その不純物濃度は第2ゲート領域404の濃度よりも低くなっている。このように第2ウェル506は、半導体基板に直交する方向を第1方向DR1としたとき、第1不純物領域の第1方向DR1に設けられる。
【0020】
ゲート電極504は、第2ウェル506の領域において、カソード領域403と不純物領域503の間に設けられている。ゲート電極504は、例えばポリシリコン等の導電性材料によって構成される。図1に示すように、サイリスター回路1において、カソード領域403、不純物領域503、ゲート電極504、第2ウェル506を、ソース、ドレイン、ゲート、PウェルとするNMOSトランジスターTA3が構成される。
【0021】
なお、NMOSトランジスターTA3のソースは、サイリスターのカソード領域403を兼用し、NMOSトランジスターTA3のサブストレートは、サイリスターの第2ゲート領域404を兼用している。またNMOSトランジスターTA3のドレインに対応する不純物領域503は、メタル配線により第1ゲート領域401と接続され、抵抗Rex1を介してアノード端子T1と接続されている。NMOSトランジスターTA3のゲートに対応するゲート電極504は、メタル配線により、カソード領域403、第2ゲート領域404と接続されている。
【0022】
またアノード領域402と第1ウェル505と第2ウェル506は、それぞれをエミッター、ベース、コレクターとするPNPバイポーラトランジスターTA1とみなすことができる。カソード領域403、第2ウェル506、第1ウェル505は、それぞれをエミッター、ベース、コレクターとするNPNバイポーラトランジスターTA2とみなすことができる。
【0023】
図1に示すようにアノードラインL1は、サイリスター回路1のアノード端子T1に接続される。カソードラインL2は、サイリスター回路1のカソード端子T2に接続される。アノード端子T1及びカソード端子T2は、例えばサイリスター回路1を含む集積回路装置の端子であるが、これに限らず、集積回路装置の内部ノードであってもよい。アノードラインL1及びカソードラインL2は、集積回路装置の金属配線及びビアなどである。本実施形態において、アノード端子T1の電位がカソード端子T2の電位より高い状態で、サイリスター回路1が保護対象に接続される。以下、アノード端子T1の電位がカソード端子T2の電位より高いものとする。
【0024】
図2は本実施形態のサイリスター回路1の平面視における概略図である。即ち、図2図1に示すサイリスター回路1を第3方向DR3側から見たときの概略図である。
【0025】
第1ウェル505は、平面視においては、図2の破線で示すように設けられている。そして、第1ウェル505の領域の中に第1ゲート領域401、アノード領域402が設けられている。平面視において、第1ウェル505の第2方向DR2には、第2ウェル506が設けられている。平面視において、第2ウェル506の領域の中に、カソード領域403、ゲート電極504、不純物領域503、第2ゲート領域404が設けられている。そして、第1ゲート領域401、アノード領域402、カソード領域403、ゲート電極504、不純物領域503及び第2ゲート領域404は、平面視において、例えば第2方向に沿って、第1ゲート領域401、アノード領域402、カソード領域403、ゲート電極504、不純物領域503、第2ゲート領域404の順に設けられている。
【0026】
図3に第1構成例のサイリスター回路1に対応する等価回路図を示す。図1に示すように、サイリスター回路1は、等価回路において電源電圧VDDに設定されたアノード端子T1とグランド電位に設定されたカソード端子T2を有する。そして、アノード端子T1に接続されたノードN1と、カソード端子T2に接続されたノードN2の間に、PNPN構造のサイリスターと、NMOSトランジスターTA3が並列に設けられている。サイリスターについては、前述のPNPバイポーラトランジスターTA1、NPNバイポーラトランジスターTA2を含むものとみなすことができる。
【0027】
抵抗Rex1はサイリスターのうち、PNPバイポーラトランジスターTA1にあたる部分のエミッターとベースの間に設けられる。そしてウェル抵抗Rn1、Rn2は、抵抗Rex1とNPNバイポーラトランジスターTA2のコレクターに対応する部分の間に直列に存在する。なおウェル抵抗は、例えば図1に示すサイリスター回路1で第1ウェル505や第2ウェル506などを流れる電流経路で発生する抵抗である。またウェル抵抗Rp1、Rp2は、PNPバイポーラトランジスターTA1のコレクターに対応する部分と、VSSに設定されたカソード端子T2の間に直列に存在する。
【0028】
ウェル抵抗について補足すると、ウェル抵抗Rn1は、第1ゲート領域401からアノード領域402の直下までのNウェルの寄生抵抗に対応する。ウェル抵抗Rn2は、アノード領域402の直下から第1ウェル505と第2ウェル506の境界までの第1ウェル505の寄生抵抗に対応する。ウェル抵抗Rp1は、第2ゲート領域404からカソード領域403の直下までの第2ウェル506の寄生抵抗に対応する。ウェル抵抗Rp2は、カソード領域403の直下から第1ウェル505と第2ウェル506の境界までの第2ウェル506の寄生抵抗に対応する。
【0029】
図3に示す第1構成例の等価回路の動作について説明する。まず、アノード端子T1に正のサージ電圧が印加され、又はカソード端子T2に負のサージ電圧が印加された場合、アノード端子T1とカソード端子T2の間に設けられるNMOSトランジスターTA3に電圧が印加される。具体的には、NMOSトランジスターTA3のドレインと、第2ウェル506の間に、ドレインと第2ウェル506によるPN接合の降伏電圧を超える電圧が印加され、ドレインとPウェルによるPN接合が降伏する。これにより、サイリスター回路1のスナップバック動作が開始する。当該リーク電流は、図3の矢印(1)に示すように、アノード端子T1から、ノードN1、NMOSトランジスターTA3を経由して、ノードN2へ流れる電流経路でカソード端子T2へと流れる。
【0030】
NMOSトランジスターTA3に流れるリーク電流はノードN1に設けられた抵抗Rex1を流れるため、サイリスターのうち、PNPバイポーラトランジスターTA1に対応する部分のベース電位はアノード端子T1の電位のVDDに比べて抵抗Rex1とウェル抵抗Rn2での電圧降下の分だけ小さくなる。これにより、矢印(2)に示すベース電流が流れてPNPバイポーラトランジスターTA1はオンし、矢印(3)に示すコレクター電流が流れる。
【0031】
矢印(3)に示すコレクター電流は、ウェル抵抗Rp2、Rp1を経由してカソード端子T2へと流れる。このとき、NPNバイポーラトランジスターTA2のベース電位は、PNPバイポーラトランジスターTA1のコレクター電流がウェル抵抗Rp1を流れる際の電圧降下の分だけカソード端子T2の電位よりも高くなる。このため、矢印(4)に示すベース電流が流れてNPNバイポーラトランジスターTA2はオンし、矢印(5)に示すコレクター電流が流れるようになる。このようにしてPNPN構造のサイリスターがオンし、サイリスター回路1は、サイリスターを流れる電流によって被保護素子を静電破壊から保護することができる。
【0032】
図3において、NMOSトランジスターTA3にサージ電圧に基づく電圧が印加され、降伏電流が発生し、これに起因してサイリスター回路1はオンする。このことから、NMOSトランジスターTA3をサイリスター回路1のトリガーデバイスともいう。第1構成例においては、NMOSトランジスターTA3をトリガーデバイスとして用いているが、トリガーデバイスはバイポーラトランジスター等、その他の素子であってもよい。
【0033】
以上のように本実施形態のサイリスター回路1は、アノード領域402とカソード領域403と不純物領域503と第1ゲート領域401と第2ゲート領域404を含む。アノード領域402は、N型の第1ウェル505に設けられ、アノードラインL1に電気的に接続される。カソード領域403は、P型の第2ウェル506に設けられ、カソードラインL2に電気的に接続される。不純物領域503は、第2ウェル506に設けられ、抵抗Rex1を介してアノードラインL1に電気的に接続されるN型の領域である。第1ゲート領域401は、第1ウェル505に設けられ、抵抗Rex1を介してアノードラインL1に電気的に接続されるN型の領域である。第2ゲート領域404は、第2ウェル506に設けられ、カソードラインL2に電気的に接続されるP型の領域である。不純物領域503は、アノード領域402及びカソード領域403と第2ゲート領域404との間に配置される。
【0034】
本実施形態によれば、P型のアノード領域402はN型の第1ウェル505に設けられ、N型のカソード領域403はP型の第2ウェル506に設けられる。そして、N型の第1ウェル505とP型の第2ウェル506は隣接して設けられる。このためアノード領域402、第1ウェル505、第2ウェル506、カソード領域403によりPNPNサイリスターが構成される。このとき、アノード領域402、第2ウェル506及びカソード領域403、第1ウェル505を、それぞれエミッター、コレクター、ベースをとするPNPバイポーラトランジスターTA1が構成され、カソード領域403、第1ウェル505、第2ウェル506を、それぞれエミッター、コレクター、ベースをとするNPNバイポーラトランジスターTA2が構成されるものとみなすことができる。
【0035】
N型の不純物領域503にはアノード端子T1から正の電圧が印加され、P型の第2ウェル506にはカソード端子T2からカソード領域403を介してグランド電位が印加される。このため、不純物領域503と第2ウェル506を含むPN接合には逆バイアスの電圧がかかる。そして、アノード端子T1の正の電位を大きくすると、PNダイオードは降伏し、降伏電流は抵抗Rex1を流れ、降伏電流に応じた電圧降下が生じる。このため、PNPバイポーラトランジスターTA1のベース電位は、抵抗Rex1を流れる降伏電流による電圧降下の分だけ小さくなり、PNPバイポーラトランジスターTA1がオンする。
【0036】
またPNPバイポーラトランジスターTA1がオンすることで、PNPバイポーラトランジスターTA1のエミッターとコレクターの間にコレクター電流が流れる。そして、コレクター電流は、ウェル抵抗Rp2、Rp1を流れ、アノード領域402に流れる。このため、NPNバイポーラトランジスターTA2のベース電位は、グランド電位からウェル抵抗Rp1での電圧降下の分だけ電位が大きくなる。これにより、NPNバイポーラトランジスターTA2もオンする。
【0037】
また不純物領域503は、アノード領域402及びカソード領域403と第2ゲート領域404との間に配置されるため、アノード領域402とカソード領域403の間に不純物領域503は設けられなくなる。このため、アノード領域402とカソード領域403の距離を短くすることができ、PNPバイポーラトランジスターTA1とNPNバイポーラトランジスターTA2の電流経路は短くなり、サイリスター回路1のオン抵抗を下げることができる。従って、サイリスターがオンした場合のオン抵抗を小さくすることができ、サージ電流が流れたときのクランプ電圧を下げ、被保護デバイスを確実に保護できるようになる。
【0038】
また本実施形態のサイリスター回路1は、不純物領域503とカソード領域403との間に設けられるゲート電極504を含む。不純物領域503は、ゲート電極504を有するトランジスターのドレインであり、カソード領域403は、トランジスターのソースである。
【0039】
このようにすれば、ゲート電極504は不純物領域503とカソード領域403の間に設けられるため、カソード領域403、不純物領域503、ゲート電極504、第2ウェル506をそれぞれ、ソース、ドレイン、ゲート、ウェルとするNMOSトランジスターTA3を設けることができる。そして、カソード端子T2をグランドに設定することで、NMOSトランジスターTA3のソース、ゲートにあたるカソード領域403、ゲート電極504をグランドに設定できる。またアノード端子T1を正の電位に設定することで、NMOSトランジスターTA3のドレインにあたる不純物領域503を正の電位に設定できる。従って、NMOSトランジスターTA3のドレイン、第2ウェル506間の寄生ダイオードに逆バイアスが印加された状態となり、その寄生ダイオードが降伏することで、サイリスターのスナップバック動作のトリガーになる。
【0040】
また本実施形態のサイリスター回路1では、抵抗Rex1は、絶縁膜上に形成されたポリシリコン抵抗ある。このようにすれば、ポリシリコン抵抗を利用して抵抗Rex1を構成できる。
【0041】
図4は、特許文献1に開示される保護素子を用いたサイリスター回路1の一例の断面視における概略図である。図4に示す従来の構成例では、図1に示す第1構成例と異なり、不純物領域503がアノード領域402とカソード領域403の間に設けられている。そして、不純物領域503は第1ウェル505と第2ウェル506の間に跨って配置されている。このように第1構成例で説明したトリガーデバイスとしてのNMOSトランジスターTA3のドレインに対応する不純物領域503を、アノード領域402とカソード領域403の間に設けている点が第1構成例と異なっている。なお、図4に示す従来例においても、図1等に示す第1構成例と同様に、NMOSトランジスターTA3のソースであるカソード領域403は、サイリスター400のカソード領域403と兼用になっている。
【0042】
図4に示す従来の構成例では、サイリスター400のアノード領域402とカソード領域403の間の距離407は、第1構成例におけるアノード領域402とカソード領域403の間の距離417と比較して長いため、第1ウェル505のウェル抵抗Rn2と、第2ウェルのウェル抵抗Rp2は、第1構成例におけるウェル抵抗Rn2、Rp2よりも高い抵抗値になる。
【0043】
また図3で説明した通り、サイリスターがオンすると、PNPバイポーラトランジスターTA1とNPNバイポーラトランジスターTA2のエミッター、コレクター間に電流が流れる。即ち、図4に示す断面の概略図において、アノード領域402からウェル抵抗Rn2、ウェル抵抗Rn2からウェル抵抗Rp2、ウェル抵抗Rp2からカソード領域403の順序に電流が流れる。以上により、サイリスターがオンした後のオン抵抗はウェル抵抗Rn2、Rp2が主要因になっているため、サイリスター400のオン抵抗は、第1構成例のサイリスターのオン抵抗よりも高くなる。サイリスターのオン抵抗が高くなると、サージ電流が流れたときのクランプ電圧が高くなるため、被保護デバイスが静電破壊に至るリスクが高くなる。
【0044】
図5は、特許文献1に開示される保護素子を用いたサイリスター回路1の他の一例の断面視における概略図である。図5に示す例は、図4に示す従来例と異なり、トリガーデバイスであるNMOSトランジスターがサイリスター400とは独立に設けられている。このような構成にすれば、ウェル抵抗Rn2、Rp2の抵抗値が大きくなることを回避することはできるが、トリガーデバイスを独立して設けた分だけサイリスター回路全体の面積が大きくなるという課題がある。
【0045】
本実施形態では、サイリスターのアノード領域とカソード領域の距離を最小距離に保ちつつ、例えば図1に示すNMOSトランジスターTA3のようなトリガー用デバイスが設けられる。そして、トリガー用デバイスの拡散領域、例えばMOSトランジスターであればソース、バイポーラトランジスターであればエミッターは、サイリスターのアノード領域、またはカソード領域と兼用されている。
【0046】
図1に本実施形態の第1構成例では、不純物領域503と第2ゲート領域404を、カソード領域403を基準に、アノード領域402とは逆側に設けるようにしてNMOSトランジスターTA3を形成し、抵抗Rex1が設けられている。またサイリスター回路1のアノード領域402とカソード領域403の距離517は、図5に示す従来の構成例におけるアノード領域402とカソード領域403の距離417と同じであるため、サイリスターのオン抵抗も同じとなる。以上よりチップ面積を増大させることなく、特許文献1に記載されるサイリスターよりもオン抵抗を下げることができる。従って、サージ電流が流れた場合のクランプ電圧を下げることができ、被保護デバイスの静電破壊リスクを下げることが可能になる。
【0047】
2.サイリスター回路のその他の構成例
図6は、第1構成例の他の構成例の断面視における概略図である。本実施形態では、第1構成例と基本的には同じ構成であるが、第2ゲート領域404は、コンタクトG2を介して第2抵抗Rex2と接続されている。第2ゲート領域404をメタル配線で直接、カソード端子T2へ接続することなく、第2抵抗Rex2を介して接続することにより、サイリスターがオンしやすくなる。即ち、図3に示す等価回路において、ウェル抵抗Rp1とカソードラインL2との間に第2抵抗Rex2が挿入されるので、矢印(3)に示す電流が流れたときにNPNバイポーラトランジスターTA2のベース-エミッター間電圧が高くなりやすい。これにより、NPNバイポーラトランジスターTA2はオンしやすくなり、矢印(4)に示すNPNバイポーラトランジスターTA2のベース電流は流れやすくなる。
【0048】
そして、例えば抵抗Rex1を5~20Ω、第2抵抗Rex2を100Ω~1kΩに設定することで、第1ウェル505と第2ウェル506のウェル抵抗の抵抗値やそのバラツキによらず、安定したサイリスター回路1の動作を実現できるようになる。
【0049】
即ち本実施形態のサイリスター回路1では、第2ゲート領域404は、第2抵抗Rex2を介してカソードラインL2に電気的に接続される。
【0050】
このようにすれば、N型の不純物領域503とP型の第2ウェル506のPN接合に降伏電流が流れた場合に、降伏電流は第2ゲート領域404とカソード領域403の間に設けられる第2抵抗Rex2を流れるため、第2抵抗Rex2を流れる降伏電流による電圧降下分だけ、NPNバイポーラトランジスターTA2のベース電位は大きくなる。従って、NPNバイポーラトランジスターTA2のベース電位を低くすることが容易になり、NPNバイポーラトランジスターTA2はオンしやすくなる。よって、サイリスター回路1のクランプ電圧を下げることができる。
【0051】
図7は本実施形態の第2構成例である。第2構成例は、図1等に示す第1構成例において、ゲート電極504を設けていない場合の構成例である。即ち、第1構成例ではトリガーデバイスとしてNMOSトランジスターTA3が設けられていたが、第2構成例ではトリガーデバイスとしてNPNバイポーラトランジスターTA4が設けられている。なおNPNバイポーラトランジスターTA4のエミッターは、サイリスターのカソードであるカソード領域403を兼用し、NPNバイポーラトランジスターTA4のベースは、サイリスター回路1の第2ゲート領域404を兼用している。またNPNバイポーラトランジスターTA4のコレクターである不純物領域503は、メタル配線により、第1ゲート領域401と接続されており、抵抗Rex1を介してアノードラインL1によりアノード端子T1と接続されている。第2ゲート領域404は、第2抵抗Rex2を介してカソードラインL2によりカソード端子T2と接続している。第2構成例において、アノード領域402とカソード領域403の距離517は、第1構成例の場合と変わらない。従って、チップ面積を増大させることなく、図4に示す従来の構成例と比較してウェル抵抗などによるオン抵抗を下げることができるため、サージ電流が流れたときのクランプ電圧を下げることができ、被保護デバイスの静電破壊リスクを下げることができる。
【0052】
また本実施形態のサイリスター回路1では、不純物領域503は、第2ウェル506をベースとするバイポーラトランジスターのエミッターであり、カソード領域403は、バイポーラトランジスターのコレクターである。
【0053】
このようにすれば、バイポーラトランジスターのエミッターにあたる不純物領域503にアノード端子T1から正の電位を印加し、バイポーラトランジスターのベースにあたる第2ウェル506にカソード端子T2からグランド電位を印加することで、PNダイオードに逆バイアスの電圧を印加することができる。従って、PNダイオードの降伏電流を発生させることで、バイポーラトランジスターのベース電位を下げることができ、サイリスターをオンさせることができる。
【0054】
図8は、本実施形態の第3構成例である。第1構成例との違いは、トリガーデバイスとしてのトランジスターが、アノード領域402から見て、カソード領域403とは逆側に、PMOSトランジスターTB3をとして設けられている点である。そして、図6に示す構成例と同様に、第2ゲート領域404とカソード端子T2の間に抵抗Rex2が設けられている。本構成例では、抵抗Rex1が「第2抵抗」に相当する。以下、Rex1を第2抵抗と呼ぶ。なお、図8では第2抵抗Rex1を設けた例を示すが、第2抵抗Rex1は省略されてもよい。なおPMOSトランジスターTB3のソースは、サイリスターのアノード領域402と兼用し、PMOSトランジスターTB3のサブストレートは、サイリスターの第1ゲート領域401を兼用している。
【0055】
またPMOSトランジスターTB3のドレインにあたる不純物領域803は、第1ウェル505の領域に、第1ゲート領域401とアノード領域402の間に設けられている。不純物領域803は、メタル配線により、第2ゲート領域404と接続し、抵抗Rex2を介してカソードラインL2によりカソード端子T2と接続され、第1ゲート領域401は、第2抵抗Rex1を介して、アノードラインL1によりアノード端子T1と接続されている。第1構成例において説明したように、第2抵抗Rex1を設けることにより、サイリスターはよりオンしやすくなる。
【0056】
図9は第3構成例の等価回路と回路の動作について説明する図である。第3構成例においても、図3に示す第1構成例と同様に、トリガーデバイスとして設けられるPMOSトランジスターTB3のドレインと第1ウェル505によるPN接合の降伏電圧を超える電圧が印加され、PN接合が降伏することをトリガーとして、サイリスター回路1の動作が開始される。PN接合が降伏の降伏に伴う降伏電流は、図9の矢印(1)に示すように、アノード端子T1から、ノードN1、PMOSトランジスターTB3を経由して、ノードN2へ流れる電流経路でカソード端子T2へと流れる。
【0057】
PMOSトランジスターTB3に流れるリーク電流はノードN2に設けられた抵抗Rex2を流れるため、サイリスターのうち、NPNバイポーラトランジスターTB1に対応する部分のベース電位は、カソード端子の電位に比べてウェル抵抗Rp1、抵抗Rex2での電圧降下の分だけ大きくなる。これにより、矢印(2)に示すベース電流が流れてNPNバイポーラトランジスターTB1はオンし、矢印(3)に示すコレクター電流が流れる。
【0058】
矢印(3)に示すコレクター電流は、第2抵抗Rex1、ウェル抵抗Rn1、Rn2を経由してカソード端子T2へと流れる。このとき、PNPバイポーラトランジスターTB2のベース電位は、NPNバイポーラトランジスターTB1のコレクター電流が抵抗Rex1、ウェル抵抗Rn1を流れる際の電圧降下の分だけアノード端子T1の電位よりも小さくなる。このため、矢印(4)に示すベース電流が流れてPNPバイポーラトランジスターTA1はオンし、矢印(5)に示すコレクター電流が流れるようになる。このようにしてPNPN構造のサイリスターがオンし、サイリスター回路1は、サイリスターを流れる電流によって被保護素子を静電破壊から保護することができる。なお、第1構成例と同様に、トリガーデバイスはバイポーラトランジスター等、その他の素子であってもよい。
【0059】
第3構成例において、サイリスターのアノード領域402とカソード領域403の距離817は、図5に示すトリガーデバイスを独立して設けた場合のアノード領域402とカソード領域403の距離417と同様であるため、サイリスターのオン抵抗の増加は生じない。以上よりチップ面積を増大させることなく、サイリスターのオン抵抗を下げることができるため、サージ電流が流れたときのクランプ電圧を下げることができ、被保護デバイスの静電破壊リスクを下げることができる。
【0060】
また図6で説明した第1構成例の他の構成例と同様に、例えば抵抗Rex2を5~20Ω、第2抵抗Rex1を100Ω~1kΩに設定することで、ウェル抵抗の抵抗値やそのバラツキによらず、安定したサイリスター回路1の動作を実現できるようになる。
【0061】
本実施形態のサイリスター回路1は、アノード領域402とカソード領域403と不純物領域803と第1ゲート領域401と第2ゲート領域404を含む。アノード領域402は、N型の第1ウェル505に設けられ、アノードラインL1に電気的に接続されるP型の領域である。カソード領域403は、P型の第2ウェル506に設けられ、カソードラインL2に電気的に接続されるN型の領域である。不純物領域803は、第1ウェル505に設けられ、抵抗Rex2を介してカソードラインL2に電気的に接続されるP型の領域である。第1ゲート領域401は、第1ウェル505に設けられ、アノードラインL1に電気的に接続されるN型の領域である。第2ゲート領域404は、第2ウェル506に設けられ、抵抗Rex2を介してカソードラインL2に電気的に接続されるP型の領域である。不純物領域803は、アノード領域402及びカソード領域403と第1ゲート領域401との間に配置される。
【0062】
本実施形態によれば、P型のアノード領域402はN型の第1ウェル505に設けられ、N型のカソード領域403はP型の第2ウェル506に設けられる。そして、N型の第1ウェル505とP型の第2ウェル506は隣接して設けられる。このためアノード領域402、第1ウェル505、第2ウェル506、カソード領域403によりPNPNサイリスターが構成される。このとき、カソード領域403、第1ウェル505、第2ウェル506を、それぞれエミッター、コレクター、ベースをとするNPNバイポーラトランジスターTB1が構成され、アノード領域402、第2ウェル506、第1ウェル505を、それぞれエミッター、コレクター、ベースをとするPNPバイポーラトランジスターTB2が構成されるとみなすことができる。従って、これらのPNPバイポーラトランジスターTB2とNPNバイポーラトランジスターTB1を含むサイリスター回路1を構成できる。
【0063】
P型の不純物領域803にはカソード端子T2からグランド電位が印加され、N型の第1ウェル505にはアノード端子T1からアノード領域402を介して正の電位が印加される。このため、不純物領域803と第1ウェル505を含むPN接合には逆バイアスの電圧がかかる。そして、アノード端子T1の正の電位を大きくすると、PNダイオードは降伏し、降伏電流は抵抗Rex2を流れ、降伏電流に応じた電圧降下が生じる。このため、NPNバイポーラトランジスターTB1のベース電位は、抵抗Rex2を流れる降伏電流による電圧降下の分だけ大きくなり、NPNバイポーラトランジスターTB1がオンする。
【0064】
不純物領域803は、アノード領域402及びカソード領域403と第1ゲート領域401との間に配置されるため、アノード領域402とカソード領域403の間に不純物領域803は設けられなくなる。このため、アノード領域402とカソード領域403の距離817を短くすることができ、NPNバイポーラトランジスターTB1、PNPバイポーラトランジスターTB2の電流経路は短くなり、オン抵抗を下げることができる。従って、サイリスターがオンした場合のオン抵抗を小さくすることができ、サージ電流が流れたときのクランプ電圧を下げ、被保護デバイスを確実に保護できるようになる。
【0065】
また本実施形態のサイリスター回路1では、第1ゲート領域401は、第2抵抗Rex1を介してアノードラインL1に電気的に接続される。
【0066】
このようにすれば、P型の不純物領域803とN型の第1ウェル505のPN接合に降伏電流が流れた場合に、降伏電流は第2ゲート領域404とカソード端子T2の間に設けられる抵抗Rex2を流れるため、抵抗Rex2を流れる降伏電流による電圧降下分だけNPNバイポーラトランジスターTB1のベース電位は大きくなる。従って、NPNバイポーラトランジスターTB1のベース電位を低くすることが容易になり、NPNバイポーラトランジスターTB1はオンしやすくなる。よって、サイリスター回路1のクランプ電圧を下げることができる。
【0067】
また本実施形態のサイリスター回路1は、不純物領域803とアノード領域402との間に設けられるゲート電極804を含み、不純物領域は803、ゲート電極804を有するトランジスターのドレインであり、アノード領域402は、トランジスターのソースである。
【0068】
このようにすれば、ゲート電極804は不純物領域803とアノード領域402の間に設けられるため、アノード領域402、不純物領域803、ゲート電極804、第1ウェル505をそれぞれ、ソース、ドレイン、ゲート、NウェルとするPMOSトランジスターTB3を設けることができる。そして、アノード端子T1を正の電位に設定することで、PMOSトランジスターTB3のソース、ゲートにあたるアノード領域402、ゲート電極804を正の電位に設定できる。またカソード端子T2をグランドに設定することで、PMOSトランジスターTB3のドレインにあたる不純物領域803をグランドに設定できる。従って、PMOSトランジスターTB3のドレイン、第1ウェル505間の寄生ダイオードに逆バイアスが印加された状態となり、その寄生ダイオードが降伏することで、サイリスターのスナップバック動作のトリガーになる。
【0069】
図10は、本実施形態の第4構成例である。第4構成例は、第3構成例において、トリガーデバイスとして設けられるPMOSトランジスターTB3をPNPバイポーラトランジスターTB4にした場合の構成例である。
【0070】
即ち、不純物領域803を、アノード領域402を基準にして、カソード領域403とは逆側に設けるようにして、PNPバイポーラトランジスターTB4が設けられている。また、PNPバイポーラトランジスターTB4のエミッターは、サイリスターのアノード領域402と兼用し、PNPバイポーラトランジスターTB4のベースは、サイリスターの第1ゲート領域401と兼用している。そして、第3構成例の場合と同様に抵抗Rex2が設けられることで、サイリスターはオンしやすくなる。
【0071】
このように第4構成例により、チップ面積を増大させることなく、サイリスターのオン抵抗を下げることができるため、サージ電流が流れたときのクランプ電圧を下げることができ、被保護デバイスの静電破壊リスクを下げることができる。
【0072】
即ち本実施形態のサイリスター回路1では、不純物領域803は、第1ウェル505をベースとするバイポーラトランジスターのコレクターであり、アノード領域402は、バイポーラトランジスターのエミッターである。
【0073】
このようにすれば、チップ面積を増大させることなく、サイリスターのオン抵抗を下げることができるため、サージ電流が流れたときのクランプ電圧を下げることができ、被保護デバイスの静電破壊リスクを下げることができる。
【0074】
3.回路装置
図11に本実施形態の回路装置5の第1構成例の等価回路図を示す。本実施形態の回路装置5の第1構成例は、上述したサイリスター回路1とダイオード1005と内部回路1006を含む。そして、第1構成例は、PIN端子T3と、例えば電圧がVSSに設定されるカソード端子T2の間に、サイリスター回路1を適用した例である。またダイオード1005は、例えば電圧がVSSに設定されるカソード端子T2から、PIN端子T3へ静電気を放電させる。サイリスター回路1は、アノードからカソードへの放電経路は存在するものの、カソードからアノードへの放電経路はPN接合のアバランシェの動作含む経路になっており、サージ電流に対して放電能力は低い場合がある。このため、サイリスター回路1と並列にダイオードを接続することもできる。
【0075】
内部回路1006は、PMOSトランジスターTC1、NMOSトランジスターTC2を含む。PMOSトランジスターTC1は、ノードN1とノードN3の間に、例えばソースがノードN1側、ドレインがノードN2側になるように設けられている。また、NMOSトランジスターTC2は、例えばドレインがノードN3側、ソースがノードN2側になるように設けられている。
【0076】
図12は、回路装置5の第1構成例のサイリスター回路1及びダイオード1005の平面視における概略図である。第1構成例では、第1ゲート領域1101、1112は、コンタクトG2を設ける第2ゲート領域1104を基準に、線対称になるように配置される。ここで、第1ゲート領域1101、1112は、平面視において、第1ゲート領域1118、1126と繋がっており、第2ゲート領域1104及びNMOSトランジスターTA3を囲むようにリング状に設けられている。さらに平面視においてリング状の設けられるP型の不純物領域1117、1113、1122、1119が、第1ゲート領域1101、1112の外周をリング状に囲うようにして設けられている。
【0077】
なお、抵抗Rex1は、平面視において、例えば、第2ゲート領域1104及びNMOSトランジスターTA3の第4方向DR4側に配置される。図12のように、第1ゲート領域1101、1112、1118、1126が第2ゲート領域1104及びNMOSトランジスターTA3を囲む配置であるとき、抵抗Rex1は第1ゲート領域1101、1112、1118、1126の内側に配置されてもよい。例えば、抵抗Rex1は、第1ゲート領域1118と、第2ゲート領域1104及びNMOSトランジスターTA3との間に配置されてもよい。
【0078】
図13は、回路装置5の第1構成例のサイリスター回路1及びダイオード1005の断面視における概略図である。上述したように、サイリスター回路1の中央付近に第2ゲート領域1104が設けられており、その両側に不純物領域1123、1109、カソード領域1103、1110、アノード領域1102、1111、第1ゲート領域1101、1112、P型の不純物領域1117、1113が線対称に設けられている。そして、第2ゲート領域1104の第2方向DR2と反対方向側には、第1構成例と同様にPNPバイポーラトランジスターTA1、NPNバイポーラトランジスターTA2と、トリガーデバイスとしてNMOSトランジスターTA3が設けられている。第2ゲート領域1104の第2方向DR2側にも、PNPバイポーラトランジスターTA1、NPNバイポーラトランジスターTA2と、トリガーデバイスとしてNMOSトランジスターTA3が設けられている。ダイオード1005は、図13の右側に示すように、例えば第2ウェル1107上に設けられるP型不純物領域1114、1116、N型不純物領域1115により、ダイオードD1、D2を含む。
【0079】
第2ゲート領域1104は、例えばP型である基板2により、VSSとショートとしている。そして第1ゲート領域1101、1112、1118、1126、第1ウェル505、1108及びP型の不純物領域1113、1117、1119、1122はリング状に配置される。
【0080】
即ち本実施形態のサイリスター回路1では、第1ウェル505、1108と第2ウェル506を囲むようにP型の基板2に設けられるリング状のP型の不純物領域1113、1117、1119、1122を含む。
【0081】
このようにすれば、リング内の第2ウェル506のウェル抵抗は、リング外に設けられたダイオード1005や内部回路1006などの影響を受けにくくなる。よって、サイリスター回路1は、より安定してオンするようになる。以上では、回路装置5に、図1で説明した本実施形態のサイリスター回路1の第1構成例を適用した場合を例に説明してきたが、サイリスター回路1の第2構成例、第3構成例、第4構成例を適用した場合においても同様の効果が得られる。
【0082】
また本実施形態の回路装置5は、アノードラインL1に電気的に接続されるアノード端子T1と、カソードラインL2に電気的に接続されるカソード端子T2と、アノードラインL1とカソードラインL2の間に設けられ、アノードラインL1からカソードラインL2への方向を順方向とするダイオード1005と、を含む。
【0083】
このようにすれば、回路装置5のアノード端子T1に正の電圧が印加され、カソード端子T2へサージ電流が流れるときに、サイリスターにより放電することができるだけでなく、カソード端子T2に正の電圧が印加され、アノード端子T1へサージ電流が流れる場合にも放電を行うことが可能になる。
【0084】
また本実施形態の回路装置5では、サイリスター回路1とダイオードは、隣り合って配置される。
【0085】
このようにすれば、回路装置5においてサイリスター回路1とダイオードは並列設けられる。従って、アノード端子T1に正の電圧が印加され、カソード端子T2へサージ電流が流れるときには、サイリスター回路1に降伏電流が流れることにより静電気等の放電が可能になる。またカソード端子T2に正の電圧が印加され、アノード端子T1へサージ電流が流れるときには、ダイオードに順バイアス方向の電流が流れることで、静電気等の放電が可能になる。従って、アノード端子T1、カソード端子T2のいずれに高電圧が印加されても静電気等の放電が可能になる。
【0086】
図14は、本実施形態の回路装置5の第2構成例である。第2構成例の回路装置5は、第1構成例と同様にサイリスター回路1、ダイオード1205、内部回路1206を有するが、第1構成例と異なり、サイリスター回路1はアノード端子T1とPIN端子T3の間に設けられている。このためダイオード1205はPIN端子T3からアノード端子T1へ静電気を放電できる。
【0087】
図15は、本実施形態の回路装置5の第2構成例の断面視における概略図である。第2構成例では、サイリスターに対してディープウェル8を設け、ダイオード1205に対してディープウェル9、不純物領域1214、1218、第1ウェル1231、1233を設けられている。ディープウェル8、9は図15に示すように第1ウェル、或いは第2ウェルの第1方向DR1側に設けたられたウェルである。図16は、回路装置5の第2構成例の平面視における概略図である。サイリスター回路1については、アノード端子1202、カソード端子1203等の配置は図12に示す回路装置5の第1構成例と同様になっているが、ダイオード1205については構成が異なっている。具体的には、平面視においてN型の不純物領域1216の両側にP型不純物領域1215、1217が設けられ、その周りを囲うようにN型の不純物領域1214、1218と第1ウェル1231、1233が設けられている。
【0088】
即ち本実施形態のサイリスター回路1では、第1ウェル505、1208と第2ウェル506は、N型のディープウェル8上に設けられる。
【0089】
このようにすれば、サイリスターの第2ゲート領域1204はP型の基板2とディープウェル8によって分離され、ダイオード1205のアノードもP型の基板2とディープウェル8によって分離されるため、サイリスターのカソードの接続場所は、例えばVSSに設定されているP型の下地基板以外の端子にも接続できるようになる。以上では、回路装置5に、図1で説明した本実施形態のサイリスター回路1の第1構成例を適用した場合を例に説明してきたが、サイリスター回路1の第2構成例、第3構成例、第4構成例を適用した場合においても同様の効果が得られる。
【0090】
図17は本実施形態の回路装置5の第3構成例の断面視における概略図である。第2構成例では、サイリスター回路1とダイオード1205は、それぞれ別のディープウェル8、9により基板2と分離していたのに対し、1つのディープウェル6により基板2と分離されている。即ち、第3構成例におけるダイオード1205のディープウェル9は、サイリスター回路1のディープウェル8を兼用し、ダイオード1405のディープウェル6への電圧供給は、サイリスター回路1の第1ゲート領域1201、第1ウェル505により。即ちダイオード1405のディープウェル6はサイリスターの第1ウェル1208を兼用し、ダイオード1405のディープウェル6へ電位を与える不純物領域1218と第1ウェル1233は、サイリスターの第1ゲート領域1212と第1ウェル1208を兼用する。従って、第3構成例では、第2構成例におけるP型拡散領域1213、第2ウェル1235を設けなくても、回路装置5を構成できるようになり、第2構成例と比較して、面積を小さくすることができる。以上では、回路装置5に、図1で説明した本実施形態のサイリスター回路1の第1構成例を適用した場合を例に説明してきたが、サイリスター回路1の第2構成例、第3構成例、第4構成例を適用した場合においても同様の効果が得られる。
【0091】
以下において、第1導電型、第2導電型という用語を用いる。以上の実施形態においては、第1導電型がN型であり、第2導電型がP型である場合を例に説明したが、第1導電型がP型であり、第2導電型がN型であってもよい。
【0092】
以上のように本実施形態のサイリスター回路1は、アノード領域とカソード領域と不純物領域と第1ゲート領域と第2ゲート領域を含む。アノード領域は、第1導電型の第1ウェルに設けられ、アノードラインに電気的に接続される。カソード領域は、第2導電型の第2ウェルに設けられ、カソードラインに電気的に接続される。不純物領域は、第2ウェルに設けられ、抵抗を介してアノードラインに電気的に接続される第1導電型の領域である。第1ゲート領域は、第1ウェルに設けられ、抵抗を介してアノードラインに電気的に接続される第1導電型の領域である。第2ゲート領域は、第2ウェルに設けられ、カソードラインに電気的に接続される第2導電型の領域である。不純物領域は、アノード領域及びカソード領域と第2ゲート領域との間に配置される。
【0093】
第1導電型の不純物領域にはアノード端子から正の電圧が印加され、第2導電型の第2ウェルにはカソード端子からカソード領域を介してグランド電位が印加される。このため、不純物領域と第2ウェルを含むPN接合には逆バイアスの電圧がかかる。そして、アノード端子の正の電位を大きくすると、PNダイオードは降伏し、降伏電流は抵抗を流れ、降伏電流に応じた電圧降下が生じる。このため、PNPバイポーラトランジスターのベース電位は、抵抗を流れる降伏電流による電圧降下の分だけ小さくなり、PNPバイポーラトランジスターがオンする。またPNPバイポーラトランジスターがオンすることで、PNPバイポーラトランジスターのエミッターとコレクターの間にコレクター電流が流れる。そして、コレクター電流は、ウェル抵抗を流れ、アノード領域に流れる。このため、NPNバイポーラトランジスターのベース電位は、グランド電位からウェル抵抗での電圧降下の分だけ電位が大きくなる。これにより、NPNバイポーラトランジスターもオンする。また不純物領域は、アノード領域及びカソード領域と第2ゲート領域との間に配置されるため、アノード領域とカソード領域の間に不純物領域は設けられなくなる。このため、アノード領域とカソード領域の距離を短くすることができ、PNPバイポーラトランジスターとNPNバイポーラトランジスターの電流経路は短くなり、サイリスター回路のオン抵抗を下げることができる。従って、サイリスターがオンした場合のオン抵抗を小さくすることができ、サージ電流が流れたときのクランプ電圧を下げ、被保護デバイスを確実に保護できるようになる。
【0094】
即ち本実施形態のサイリスター回路では、第2ゲート領域は、第2抵抗を介してカソードラインに電気的に接続される。
【0095】
このようにすれば、第1導電型の不純物領域と第2導電型の第2ウェルのPN接合に降伏電流が流れた場合に、降伏電流は第2ゲート領域とカソード領域の間に設けられる第2抵抗を流れるため、第2抵抗を流れる降伏電流による電圧降下分だけ、NPNバイポーラトランジスターのベース電位は大きくなる。従って、NPNバイポーラトランジスターのベース電位を低くすることが容易になり、NPNバイポーラトランジスターはオンしやすくなる。よって、サイリスター回路のクランプ電圧を下げることができる。
【0096】
また本実施形態のサイリスター回路は、不純物領域とカソード領域との間に設けられるゲート電極を含む。不純物領域は、ゲート電極を有するトランジスターのドレインであり、カソード領域は、トランジスターのソースである。
【0097】
このようにすれば、ゲート電極は不純物領域とカソード領域の間に設けられるため、カソード領域、不純物領域、ゲート電極、第2ウェルをそれぞれ、ソース、ドレイン、ゲート、ウェルとするNMOSトランジスターを設けることができる。そして、カソード端子をグランドに設定することで、NMOSトランジスターのソース、ゲートにあたるカソード領域、ゲート電極をグランドに設定できる。またアノード端子を正の電位に設定することで、NMOSトランジスターのドレインにあたる不純物領域を正の電位に設定できる。従って、NMOSトランジスターのドレイン、第2ウェル間の寄生ダイオードに逆バイアスが印加された状態となり、その寄生ダイオードが降伏することで、サイリスターのスナップバック動作のトリガーになる。
【0098】
また本実施形態のサイリスター回路では、不純物領域は、第2ウェルをベースとするバイポーラトランジスターのコレクターであり、カソード領域は、バイポーラトランジスターのエミッターである。
【0099】
このようにすれば、バイポーラトランジスターのエミッターにあたる不純物領域にアノード端子から正の電位を印加し、バイポーラトランジスターのベースにあたる第2ウェルにカソード端子からグランド電位を印加することで、PNダイオードに逆バイアスの電圧を印加することができる。従って、PNダイオードの降伏電流を発生させることで、バイポーラトランジスターのベース電位を下げることができ、サイリスターをオンさせることができる。
【0100】
本実施形態のサイリスター回路は、アノード領域とカソード領域と不純物領域と第1ゲート領域と第2ゲート領域を含む。アノード領域は、第1導電型の第1ウェルに設けられ、アノードラインに電気的に接続される第2導電型の領域である。カソード領域は、第2導電型の第2ウェルに設けられ、カソードラインに電気的に接続される第1導電型の領域である。不純物領域は、第1ウェルに設けられ、抵抗を介してカソードラインに電気的に接続される第2導電型の領域である。第1ゲート領域は、第1ウェルに設けられ、アノードラインに電気的に接続される第1導電型の領域である。第2ゲート領域は、第2ウェルに設けられ、抵抗を介してカソードラインに電気的に接続される第2導電型の領域である。不純物領域は、アノード領域及びカソード領域と第1ゲート領域との間に配置される。
【0101】
本実施形態によれば、第2導電型の不純物領域にはカソード端子からグランド電位が印加され、第1導電型の第1ウェルにはアノード端子からアノード領域を介して正の電位が印加される。このため、不純物領域と第1ウェルを含むPN接合には逆バイアスの電圧がかかる。そして、アノード端子の正の電位を大きくすると、PNダイオードは降伏し、降伏電流は抵抗を流れ、降伏電流に応じた電圧降下が生じる。このため、NPNバイポーラトランジスターのベース電位は、抵抗を流れる降伏電流による電圧降下の分だけ大きくなり、NPNバイポーラトランジスターがオンする。不純物領域は、アノード領域及びカソード領域と第1ゲート領域との間に配置されるため、アノード領域とカソード領域の間に不純物領域は設けられなくなる。このため、アノード領域とカソード領域の距離を短くすることができ、NPNバイポーラトランジスター、PNPバイポーラトランジスターの電流経路は短くなり、オン抵抗を下げることができる。従って、サイリスターがオンした場合のオン抵抗を小さくすることができ、サージ電流が流れたときのクランプ電圧を下げ、被保護デバイスを確実に保護できるようになる。
【0102】
また本実施形態のサイリスター回路では、第1ゲート領域は、第2抵抗を介してアノードラインに電気的に接続される。
【0103】
このようにすれば、第2導電型の不純物領域と第1導電型の第1ウェルのPN接合に降伏電流が流れた場合に、降伏電流は第2ゲート電極とカソード端子の間に設けられる第2抵抗を流れるため、第2抵抗を流れる降伏電流による電圧降下分だけNPNバイポーラトランジスターのベース電位は大きくなる。従って、NPNバイポーラトランジスターのベース電位を低くすることが容易になり、NPNバイポーラトランジスターはオンしやすくなる。よって、サイリスター回路のクランプ電圧を下げることができる。
【0104】
また本実施形態のサイリスター回路は、不純物領域とアノード領域との間に設けられるゲート電極を含み、不純物領域は、ゲート電極を有するトランジスターのドレインであり、アノード領域は、トランジスターのソースである。
【0105】
このようにすれば、ゲート電極は不純物領域とアノード領域の間に設けられるため、アノード領域、不純物領域、ゲート電極、第1ウェルをそれぞれ、ソース、ドレイン、ゲート、NウェルとするPMOSトランジスターを設けることができる。そして、アノード端子を正の電位に設定することで、PMOSトランジスターのソース、ゲートにあたるアノード領域、ゲート電極を正の電位に設定できる。またカソード端子をグランドに設定することで、PMOSトランジスターのドレインにあたる不純物領域をグランドに設定できる。従って、PMOSトランジスターのドレイン、第1ウェル間の寄生ダイオードに逆バイアスが印加された状態となり、その寄生ダイオードが降伏することで、サイリスターのスナップバック動作のトリガーになる。
【0106】
即ち本実施形態のサイリスター回路では、不純物領域は、第1ウェルをベースとするバイポーラトランジスターのコレクターであり、アノード領域は、バイポーラトランジスターのエミッターである。
【0107】
このようにすれば、チップ面積を増大させることなく、サイリスターのオン抵抗を下げることができるため、サージ電流が流れたときのクランプ電圧を下げることができ、被保護デバイスの静電破壊リスクを下げることができる。
【0108】
また本実施形態のサイリスター回路では、抵抗は、絶縁膜上に形成されたポリシリコン抵抗ある。
【0109】
このようにすれば、ポリシリコン抵抗を利用して抵抗を構成できる。
【0110】
即ち本実施形態のサイリスター回路では、第1ウェルと第2ウェルは、第1導電型のディープウェル上に設けられる。
【0111】
このようにすれば、サイリスターの第2ゲート領域は第2導電型の基板とディープウェルによって分離され、ダイオードのアノードも第2導電型の基板とディープウェルによって分離されるため、サイリスターのカソードの接続場所は、例えばVSSに設定されている第2導電型の下地基板以外の端子にも接続できるようになる。
【0112】
即ち本実施形態のサイリスター回路では、第1ウェルと第2ウェルを囲むように第2導電型の基板に設けられるリング状の第2導電型の第2不純物領域を含む。
【0113】
このようにすれば、リング内の第2ウェルのウェル抵抗は、リング外に設けられたダイオードや内部回路などの影響を受けにくくなる。よって、サイリスター回路は、より安定してオンするようになる。
【0114】
また本実施形態の回路装置は、アノードラインに電気的に接続される第1端子と、カソードラインに電気的に接続される第2端子と、アノードラインとカソードラインの間に設けられ、アノードラインからカソードラインへの方向を順方向とするダイオードと、を含む。
【0115】
このようにすれば、回路装置のアノード端子T1に正の電圧が印加され、カソード端子へサージ電流が流れるときに、サイリスターにより放電することができるだけでなく、カソード端子に正の電圧が印加され、アノード端子へサージ電流が流れる場合にも放電を行うことが可能になる。
【0116】
また本実施形態の回路装置では、サイリスター回路とダイオードは、隣り合って配置される。
【0117】
このようにすれば、回路装置においてサイリスター回路とダイオードは並列設けられる。従って、アノード端子に正の電圧が印加され、カソード端子へサージ電流が流れるときには、サイリスター回路に降伏電流が流れることにより静電気等の放電が可能になる。またカソード端子に正の電圧が印加され、アノード端子へサージ電流が流れるときには、ダイオードに順バイアス方向の電流が流れることで、静電気等の放電が可能になる。従って、アノード端子、カソード端子のいずれに高電圧が印加されても静電気等の放電が可能になる。
【0118】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本開示の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。またサイリスター回路、回路装置の構成・動作等も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0119】
1…サイリスター回路、2…基板、5…回路装置、6、8、9…ディープウェル、400…サイリスター、401…第1ゲート領域、402…アノード領域、403…カソード領域、404…第2ゲート領域、407、417…距離、503…不純物領域、504…ゲート電極、505…第1ウェル、506…第2ウェル、517…距離、803…不純物領域、804…ゲート電極、817…距離、1005…ダイオード、1006…内部回路、1101…第1ゲート領域、1102…アノード領域、1103…カソード領域、1104…第2ゲート領域、1107…第2ウェル、1108…第1ウェル、1109…不純物領域、1110…カソード領域、1111…アノード領域、1112…第1ゲート領域、1113、1114、1115、1116、1117…不純物領域、1118…第1ゲート領域、1119、1122、1123…不純物領域、1126、1201…第1ゲート領域、1202…アノード端子、1203…カソード端子、1204…第2ゲート領域、1205…ダイオード、1206…内部回路、1208…第1ウェル、1213…P型拡散領域、1214、1215、1216、1217、1218…不純物領域、1231、1233…第1ウェル、1235…第2ウェル、1304…第1ウェル、1405…ダイオード、AN、CS、D…コンタクト、D1、D2…ダイオード、DR1…第1方向、DR2…第2方向、DR3…第3方向、DR4…第4方向、G1、G2…コンタクト、L1…アノードライン、L2…カソードライン、N1、N2、N3…ノード、Rex1…抵抗、Rex2…第2抵抗、Rn1、Rn2、Rp1、Rp2…ウェル抵抗、T1…アノード端子、T2…カソード端子、T3…PIN端子、TA1…PNPバイポーラトランジスター、TA2…NPNバイポーラトランジスター、TA3…NMOSトランジスター、TA4…NPNバイポーラトランジスター、TB1…NPNバイポーラトランジスター、TB2…PNPバイポーラトランジスター、TB3…PMOSトランジスター、TB4…PNPバイポーラトランジスター、TC1…PMOSトランジスター、TC2…NMOSトランジスター、VDD…電源電圧
図1
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