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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108319
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】振動素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H03H 3/02 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
H03H3/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012628
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】小幡 直久
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108BB02
5J108CC04
5J108CC09
5J108KK01
5J108KK02
5J108MM08
5J108MM11
5J108MM14
(57)【要約】
【課題】個片後のバリの長さを低減した振動素子の製造方法を提供する。
【解決手段】振動素子2の製造方法は、水晶基板1をウエットエッチングすることにより、振動素子2、連結部3、及び支持枠部4を加工する加工工程と、連結部3を折り取ることにより振動素子2を支持枠部4から切り離す個片化工程と、を有し、加工工程は、連結部3が、Z’方向の一方の側に接続する第1連結部31と、Z’方向の他方の側に接続する第2連結部32と、を加工する工程を含み、更に、第1連結部31に、表主面2aと連続する第1連続部51と有底の第1溝61とを形成し、裏主面2bと連続する第2連続部52と有底の第2溝62と有底の第3溝63とを形成する工程と、第2連結部32に、裏主面2bと連続する第3連続部53と有底の第4溝64とを形成し、表主面2aと連続する第4連続部54と有底の第5溝65と有底の第6溝66とを形成する工程と、を含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶の結晶軸をX軸、Y軸、Z軸として、前記Y軸及び前記Z軸を前記X軸の回りに反時計方向に回転させてY’軸及びZ’軸とし、前記Z’軸と前記X軸とを含む+Y’側の面を第1主面及び前記Z’軸と前記X軸とを含む-Y’側の第2主面を表裏主面とする水晶基板をウエットエッチングすることにより、振動素子と、前記水晶基板の支持枠部と、前記振動素子を前記支持枠部に結合する連結部と、を加工する加工工程と、
前記連結部を折り取ることにより前記振動素子を前記支持枠部から切り離す個片化工程と、
を有し、
前記ウエットエッチングによる前記加工工程は、
前記連結部が、前記振動素子のZ’方向に沿う一方の辺の-Z’側に接続する第1連結部と、前記一方の辺の+Z’側に接続する第2連結部と、を含むように加工する工程を含み、
更に、前記ウエットエッチングによる前記加工工程は、
前記第1連結部が、+Y’側に、前記第1主面と連続する面を有する第1連続部を含み、前記第1連続部の-Z’側の外形辺は、前記振動素子のX方向に沿う-Z’側の辺を含む第1軸に沿っており、前記第1連続部より+Z’側に、前記一方の辺に沿う有底の第1溝を形成するように、且つ、-Y’側に、前記第2主面と連続する面を有する第2連続部を含み、前記第2連続部より-Z’側に、前記一方の辺に沿う有底の第2溝を形成するように、且つ、前記第2連続部より+Z’側に、前記一方の辺に沿う有底の第3溝を形成するように、加工する工程と、
前記第2連結部が、-Y’側に、前記第2主面と連続する面を有する第3連続部を含み、前記第3連続部の+Z’側の外形辺は、前記振動素子のX方向に沿う+Z’側の辺を含む第2軸に沿っており、前記第3連続部より-Z’側に、前記一方の辺に沿う有底の第4溝を形成するように、且つ、+Y’側に、前記第1主面と連続する面を有する第4連続部を含み、前記第4連続部より+Z’側に、前記一方の辺に沿う有底の第5溝を形成するように、且つ、前記第4連続部より-Z’側に、前記一方の辺に沿う有底の第6溝を形成するように、加工する工程と、を含む、
振動素子の製造方法。
【請求項2】
前記第1連続部及び前記第2連続部は、Y’方向の平面視において、重ならない位置に配置され、
前記第3連続部及び前記第4連続部は、Y’方向の平面視において、重ならない位置に配置されている、
請求項1に記載の振動素子の製造方法。
【請求項3】
電極を形成する電極形成工程を更に含み、
前記電極形成工程において、前記第1連続部又は前記第2連続部及び前記第3連続部又は前記第4連続部に、励振電極に電気的に接続された引出し配線を形成する
請求項1又は請求項2に記載の振動素子の製造方法。
【請求項4】
前記振動素子の厚みをTとして、
前記第1溝~前記第6溝の長さをLとすると、L/Tは、0.05以上、且つ、0.4以下であり、
前記連結部の幅をW1とすると、W1/Tは、2.17以上、且つ、5.51以下であり、
前記第1連続部~前記第4連続部の幅をW2とすると、W2/Tは、0.05以上、且つ、0.5以下である、
請求項1又は請求項2に記載の振動素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
振動デバイスに用いる振動素子の製造方法として、例えば、特許文献1には、振動素子と支持枠部との間の2つの連結部の一方については第1主面側に溝部を形成し、2つの連結部の他方については第2主面側に溝部を形成することで、振動素子を支持枠部から折り取り易くして、振動素子を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-178320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の振動素子の製造方法は、振動素子を個片化した際、連結部の一部が振動素子の外辺に残る「バリ」と呼ばれる残渣が生じ易いという課題あった。特に、バリの長さが長くなると、振動素子の外形形状に起因する不要なスプリアスが発生し易くなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
振動素子の製造方法は、水晶の結晶軸をX軸、Y軸、Z軸として、前記Y軸及び前記Z軸を前記X軸の回りに反時計方向に回転させてY’軸及びZ’軸とし、前記Z’軸と前記X軸とを含む+Y’側の第1主面及び前記Z’軸と前記X軸とを含む-Y’側の第2主面を表裏主面とする水晶基板をウエットエッチングすることにより、振動素子と、前記水晶基板の支持枠部と、前記振動素子を前記支持枠部に結合する連結部と、を加工する加工工程と、前記連結部を折り取ることにより前記振動素子を前記支持枠部から切り離す個片化工程と、を有し、前記ウエットエッチングによる前記加工工程は、前記連結部が、前記振動素子のZ’方向に沿う一方の辺の-Z’側に接続する第1連結部と、前記一方の辺の+Z’側に接続する第2連結部と、を含むように加工する工程を含み、更に、前記ウエットエッチングによる前記加工工程は、前記第1連結部が、+Y’側に、前記第1主面と連続する面を有する第1連続部を含み、前記第1連続部の-Z’側の外形辺は、前記振動素子のX方向に沿う-Z’側の辺を含む第1軸に沿っており、前記第1連続部より+Z’側に、前記一方の辺に沿う有底の第1溝を形成するように、且つ、-Y’側に、前記第2主面と連続する面を有する第2連続部を含み、前記第2連続部より-Z’側に、前記一方の辺に沿う有底の第2溝を形成するように、且つ、前記第2連続部より+Z’側に、前記一方の辺に沿う有底の第3溝を形成するように、加工する工程と、前記第2連結部が、-Y’側に、前記第2主面と連続する面を有する第3連続部を含み、前記第3連続部の+Z’側の外形辺は、前記振動素子のX方向に沿う+Z’側の辺を含む第2軸に沿っており、前記第3連続部より-Z’側に、前記一方の辺に沿う有底の第4溝を形成するように、且つ、+Y’側に、前記第1主面と連続する面を有する第4連続部を含み、前記第4連続部より+Z’側に、前記一方の辺に沿う有底の第5溝を形成するように、且つ、前記第4連続部より-Z’側に、前記一方の辺に沿う有底の第6溝を形成するように、加工する工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】複数の振動素子を加工した水晶基板の概略平面図。
図2図1中のA部の拡大図。
図3図2中のB1-B1線での断面図。
図4図2中のB2-B2線での断面図。
図5】振動素子の製造方法を示すフローチャート図。
図6】振動素子の製造方法における電極形成工程を説明する平面図。
図7】連結部における各部の寸法を示す平面図。
図8】連結部における各部の寸法を示す平面図。
図9】各寸法に対する振動素子残存率を示す表。
図10】各寸法に対する振動素子残存率を示す表。
図11】各寸法に対する振動素子残存率を示す表。
図12】各寸法に対する振動素子残存率を示す表。
図13】各寸法に対する振動素子残存率を示す表。
図14】各寸法に対する振動素子残存率を示す表。
図15】各寸法に対する振動素子残存率を示す表。
図16】各寸法に対する連結部の最大バリ長さを示す表。
図17】各寸法に対する連結部の最大バリ長さを示す表。
図18】各寸法に対する連結部の最大バリ長さを示す表。
図19】各寸法に対する連結部の最大バリ長さを示す表。
図20】連続部の幅に対する振動素子残存率を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0007】
1.振動素子
先ず、本実施形態に係る振動素子2について、図1図2図3、及び図4を参照して説明する。
本実施形態に係る振動素子2は、図1に示すように、水晶の結晶軸をX軸、Y軸、Z軸として、Y軸及びZ軸をX軸の回りに反時計方向に回転させてY’軸及びZ’軸とし、Z’軸とX軸とを含む±Y’面を主面とする水晶基板1をウエットエッチングすることにより外形加工され、±Y’面の主面に電極を形成後、連結部3を折り取ることで支持枠部4から切り離されることで製造される。
【0008】
尚、各図では、電極の図示を省略している。また、説明の便宜上、各図には、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y’軸、及びZ’軸を図示している。また、X軸に沿う方向を「X方向」、Y’軸に沿う方向を「Y’方向」、Z’軸に沿う方向を「Z’方向」と言う。また、各軸の矢印側を「+側」、矢印と反対側を「-側」とも言う。
【0009】
水晶基板1は、図1に示すように、複数の振動素子2、1つの支持枠部4、及び振動素子2と支持枠部4とを結合する複数の連結部3で構成されている。また、水晶基板1は、厚みすべり振動が可能なもので、典型的には、回転角度が35度15分のATカット水晶基板である。
【0010】
振動素子2は、図2に示すように、X方向を長手方向とし、Z’方向を幅方向とする矩形の平板である。また、振動素子2の+X側の端部が連結部3を介して支持枠部4に結合されている。振動素子2は、表裏主面2a,2bに電極パターンを形成することで、ATカット振動素子として振動させることができる。
【0011】
支持枠部4は、複数の振動素子2をそれぞれ2つの連結部3で接合しており、製造中に振動素子2が個片化するのを防止している。
【0012】
連結部3は、図2図3、及び図4に示すように、支持枠部4から-X側に延在し、振動素子2のZ’方向に沿う一方の辺2cに連結している。連結部3は、振動素子2のZ’方向に沿っている一方の辺2cの-Z’側に接合する第1連結部31と、一方の辺2cの+Z’側に接合する第2連結部32と、を含む。
【0013】
第1連結部31は、第1連結部31の+Y’側に、振動素子2の+Y’側の第1主面としての表主面2aと連続する面を有する第1連続部51を含み、第1連続部51の-Z’側の外形辺は、振動素子2のX方向に沿う-Z’側の辺2dを含む第1軸C1に沿っており、第1連続部51より+Z’側に、一方の辺2cに沿う有底の第1溝61が形成されている。また、第1連結部31の-Y’側に、振動素子2の-Y’側の第2主面としての裏主面2bと連続する面を有する第2連続部52を含み、第2連続部52より-Z’側に、一方の辺2cに沿う有底の第2溝62が形成され、第2連続部52より+Z’側に、一方の辺2cに沿う有底の第3溝63が形成されている。尚、第1連続部51及び第2連続部52は、Y’方向の平面視において、重ならない位置に配置されている。
【0014】
第2連結部32は、第2連結部32の-Y’側に、振動素子2の-Y’側の裏主面2bと連続する面を有する第3連続部53を含み、第3連続部53の+Z’側の外形辺は、振動素子2のX方向に沿う+Z’側の辺2eを含む第2軸C2に沿っており、第3連続部53より-Z’側に、一方の辺2cに沿う有底の第4溝64が形成されている。また、第2連結部32の+Y’側に、振動素子2の+Y’側の表主面2aと連続する面を有する第4連続部54を含み、第4連続部54より+Z’側に、一方の辺2cに沿う有底の第5溝65が形成され、第4連続部54より-Z’側に、一方の辺2cに沿う有底の第6溝66が形成されている。尚、第3連続部53及び第4連続部54は、Y’方向の平面視において、重ならない位置に配置されている。
【0015】
2.振動素子の製造方法
次に、本実施形態に係る振動素子2の製造方法について、図5及び図6を参照して説明する。
本実施形態の振動素子2の製造方法は、図5に示すように、外形パターン形成工程、加工工程、電極形成工程、及び個片化工程を含む。
【0016】
2.1.外形パターン形成工程
ステップS1において、表裏主面2a,2bが鏡面研磨されたATカット水晶基板等の水晶基板1を準備し、水晶基板1の全面にスパッタ装置又は蒸着装置等で、金等の金属膜を成膜する。次に、フォトリソグラフィー技術により振動素子2、連結部3、及び支持枠部4等の外形パターンを形成する。
【0017】
2.2.加工工程
ステップS2において、反応性イオンエッチング装置等により外形パターン以外の基板が露出した部分にウエットエッチングによるエッチング加工を施し、支持枠部4に連結部3によって接合された振動素子2を有する水晶基板1を形成する。
【0018】
連結部3は、振動素子2のZ’方向に沿う一方の辺2cの-Z’側に接合する第1連結部31と、一方の辺2cの+Z’側に接合する第2連結部32と、を含むように加工する。
【0019】
第1連結部31は、第1連結部31の+Y’側に、振動素子2の+Y’側の表主面2aと連続する面を有する第1連続部51を含み、第1連続部51の-Z’側の外形辺は、振動素子2のX方向に沿う-Z’側の辺2dを含む第1軸C1に沿っており、第1連続部51より+Z’側に、一方の辺2cに沿う有底の第1溝61を形成するように、且つ、第1連結部31の-Y’側に、振動素子2の-Y’側の裏主面2bと連続する面を有する第2連続部52を含み、第2連続部52より-Z’側に、一方の辺2cに沿う有底の第2溝62を形成するように、且つ、第2連続部52より+Z’側に、一方の辺2cに沿う有底の第3溝63を形成するように加工する。尚、第1連続部51及び第2連続部52は、Y’方向の平面視において、重ならない位置に配置するように加工する。
【0020】
第2連結部32は、第2連結部32の-Y’側に、振動素子2の-Y’側の裏主面2bと連続する面を有する第3連続部53を含み、第3連続部53の+Z’側の外形辺は、振動素子2のX方向に沿う+Z’側の辺2eを含む第2軸C2に沿っており、第3連続部53より-Z’側に、一方の辺2cに沿う有底の第4溝64を形成するように、且つ、第2連結部32の+Y’側に、振動素子2の+Y’側の表主面2aと連続する面を有する第4連続部54を含み、第4連続部54より+Z’側に、一方の辺2cに沿う有底の第5溝65を形成するように、且つ、第4連続部54より-Z’側に、一方の辺2cに沿う有底の第6溝66を形成するように加工する。尚、第3連続部53及び第4連続部54は、Y’方向の平面視において、重ならない位置に配置するように加工する。
【0021】
尚、第1溝61~第6溝66は、水晶基板1を貫通して外形パターンが形成される前に、水晶のエッチング異方性により発生する結晶面がストッパーとして作用し、ハーフエッチングされた状態で形成される。
【0022】
2.3.電極形成工程
ステップS3において、水晶基板1の全面にスパッタ装置又は蒸着装置等で、金等の金属膜を成膜する。その後、フォトリソグラフィー技術により各振動素子2に電極パターンを形成する。図6は、支持枠部4に検査用電極端子75が設けられた電極パターンである。
【0023】
電極パターンは、図6に示すように、振動素子2の中央部の表裏主面2a,2bに設けられた励振電極71と、表主面2aの励振電極71と連結部3との間に設けられた振動素子2をパッケージ等に電気的に機械的に接合するための電極端子73と、励振電極71と電極端子73とを電気的に接続するリード電極72と、支持枠部4に設けられた検査用電極端子75と、電極端子73と検査用電極端子75とを電気的に接続する引出し配線74と、で構成されている。
【0024】
裏主面2bの励振電極71と電気的に接続するリード電極72と表主面2aの電極端子73とは、振動素子2の-Z’側に設けられた図示しない側面電極により電気的に接続されている。尚、引出し配線74は、電極端子73が設けられた表主面2aと連続する第1連続部51及び第4連続部54に設けられている。つまり、励振電極71と電気的に接続する引出し配線74が第1連続部51及び第4連続部54に形成されている。また、裏主面2bに電極端子73が設けられた電極パターンの場合には、引出し配線74は、第2連続部52及び第3連続部53に形成する。
【0025】
尚、本実施形態では、支持枠部4に検査用電極端子75が設けられた電極パターンを挙げ説明したが、電極パターンは、これに限定されるものではなく、検査用電極端子75や引出し配線74の無い電極パターンでも構わない。
【0026】
2.4.個片化工程
ステップS4において、連結部3を折り取ることにより振動素子2を支持枠部4から切り離すことで、個片化した振動素子2を得ることができる。
【0027】
3.連結部の最適設計
次に、連結部3の各寸法に対する個片化工程前までの振動素子2が支持枠部4から脱落しない振動素子残存率と、個片化工程後の連結部3の一部が振動素子2の一方の辺2cに残るバリ長さと、の関係について、図7図20を参照して説明する。
【0028】
図7は、連結部3における各部の寸法を示す平面図であり、表主面2a側における第1溝61、第5溝65、及び第6溝66のX方向の長さL,Laと、第1連結部31及び第2連結部32のZ’方向の長さである幅W1と、第1連続部51及び第4連続部54のZ’方向の長さである幅W2と、の位置を示している。また、図8は、連結部3における各部の寸法を示す平面図であり、裏主面2b側における第2溝62、第3溝63、及び第4溝64のX方向の長さL,Lbと、第1連結部31及び第2連結部32のZ’方向の長さである幅W1と、第2連続部52及び第3連続部53のZ’方向の長さである幅W2と、の位置を示している。従って、長さLaは、表主面2a側の溝61,65,66の長さであり、長さLbは、裏主面2b側の溝62,63,64の長さである。また、幅W1及び幅W2は、表主面2a側と裏主面2b側で同じである。
【0029】
表主面2a側の溝61,65,66の長さLa及び裏主面2b側の溝62,63,64の長さLbを変化させた場合の連結部3の幅W1ごとに振動素子残存率の測定値を示した表を図9図15に示す。
尚、長さLa,Lb、幅W1、幅W2は、振動素子2のY’方向の長さである厚みTで基準化している。また、図9図15では、W2/T=0.20と一定である。
【0030】
図9は、W1/T=1.50の場合であり、La/T及びLb/Tが0.05以上0.15未満では、振動素子残存率が100%であるが、La/T及びLb/Tが0.15以上となると振動素子残存率は、0%となる。
図10は、W1/T=2.17の場合であり、La/T及びLb/Tが0.05以上0.25未満までは、振動素子残存率が100%であるが、La/T及びLb/Tが0.25において振動素子残存率は、33%である。尚、従来設計であった、La/T及びLb/Tが0、つまり、溝61~66が形成されていない場合の振動素子残存率は、100%である。
図11は、W1/T=2.84の場合であり、La/T及びLb/Tが0.05以上0.25以下では、振動素子残存率が100%である。
【0031】
図12図13図14図15は、それぞれW1/T=3.51、W1/T=4.18、W1/T=4.84、W1/T=5.51の場合であり、La/T及びLb/Tが0.05以上0.25以下では、振動素子残存率が100%である。
【0032】
従って、W1/T=2.84以上とすると、La/T及びLb/Tが0.05以上0.25以下の範囲で振動素子残存率を100%とすることができる。
【0033】
次に、前述の振動素子残存率を測定した図9図12に示す水晶基板1を個片化した際に生じた連結部3の一部が振動素子2の一方の辺2cに残る最大バリ長さD1,D2の測定値を示した表を図16図19に示す。尚、「バリ長さ」とは、振動素子2の一方の辺2cから+X側に突出した連結部3の残渣の長さである。また、D1は、2つの連結部3の一方の最大バリ長さであり、D2は、2つの連結部3の他方の最大バリ長さである。
【0034】
図16は、W1/T=1.50の場合であり、La/T及びLb/Tが0.15以上0.25以下では、素子脱落のため、測定値が無い。尚、Lb/Tが0.05において、La/Tが0.05以上0.25以下の範囲で、不要なスプリアスが発生し難い外辺となる最大バリ長さD1,D2が20μm以下を満たしている。
図17は、W1/T=2.17の場合であり、La/T及びLb/Tが0.25では、素子脱落のため、測定値が無い。尚、La/Tが0.15以上0.25以下の範囲で、Lb/Tが0.05以上0.25以下の範囲で、不要なスプリアスが発生し難い外辺となる最大バリ長さD1,D2が20μm以下を満たしている。尚、従来品であった、La/T及びLb/Tが0であり、溝61~66が形成されていない場合は、D1=67μm、D2=15μmであり、不要なスプリアスが発生し難い寸法を満たしていない。
【0035】
図18は、W1/T=2.84の場合であり、La/T及びLb/Tが0.15以上0.25以下の範囲で、不要なスプリアスが発生し難い外辺となる最大バリ長さD1,D2が20μm以下を満たしている。
【0036】
図19は、W1/T=3.51の場合であり、La/Tが0.15以上0.25以下の範囲で、Lb/Tが0.05以上0.25以下の範囲で、不要なスプリアスが発生し難い外辺となる最大バリ長さD1,D2が20μm以下を満たしている。
【0037】
従って、W1/T=2.17以上において、La/T及びLb/Tが0.15以上0.25以下の範囲で、不要なスプリアスが発生し難い外辺となる最大バリ長さD1,D2が20μm以下を満たすことができる。
【0038】
次に、第1連続部51~第4連続部54の幅W2を変化させた場合の振動素子残存率の測定値を示した表を、図20に示す。
尚、図20では、L/T=0.25、W1/T=1.50と一定である。
【0039】
図20は、W2/T=0.15以上において、振動素子残存率が100%である。従って、W2/T=0.15以上とすることで振動素子残存率を100%とすることができる。
【0040】
以上の結果から、生産性に適した振動素子残存率で、不要なスプリアスが発生し難い外辺となる最大バリ長さD1,D2が20μm以下となる連結部3の各部の寸法は、以下の値となる。
第1溝61~第6溝66の長さLは、L/Tが0.05以上、且つ、0.4以下である。尚、L/Tが0.4より大きいと、連結部3が脆弱となり振動素子残存率が低下すると予想されるからである。また、L/Tが0.15以上、且つ、0.25以下であることがより好ましい。
また、連結部3の幅W1は、W1/Tが2.17以上、且つ、5.51以下である。尚、W1/Tが5.51より大きいと、連結部3の強度が増し最大バリ長さD1,D2が20μmより大きくなると予想されるからである。また、W1/Tが2.84以上、且つ、3.51以下であることがより好ましい。
また、第1連続部51~第4連続部54の幅W2は、W2/Tが0.05以上、且つ、0.50以下である。尚、W2/Tが0.50より大きいと、連結部3の強度が増し最大バリ長さD1,D2が20μmより大きくなると予想されるからである。また、W2/Tが0.17以上、且つ、0.25以下であることがより好ましい。
【0041】
以上述べたように、本実施形態の振動素子2の製造方法は、ウエットエッチングによる加工工程において、第1連結部31の+Y’側に、振動素子2の+Y’側の表主面2aと連続する面を有する第1連続部51を含み、第1連続部51の-Z’側の外形辺は、振動素子2のX方向に沿う-Z’側の辺2dを含む第1軸C1に沿っており、第1連続部51より+Z’側に、一方の辺2cに沿う有底の第1溝61を形成するように加工している。また、第1連結部31の-Y’側に、振動素子2の-Y’側の裏主面2bと連続する面を有する第2連続部52を含み、第2連続部52より-Z’側に、一方の辺2cに沿う有底の第2溝62と、第2連続部52より+Z’側に、一方の辺2cに沿う有底の第3溝63を形成するよう加工している。そのため、生産性に適した振動素子残存率を維持しつつ、振動素子2を個片化した際、連結部3の一部が振動素子2の外辺に残るバリの長さを小さくすることができる。従って、振動素子2の外形形状に起因する不要なスプリアスの発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0042】
1…水晶基板、2…振動素子、2a…表主面、2b…裏主面、2c…一方の辺、2d,2e…辺、3…連結部、4…支持枠部、31…第1連結部、32…第2連結部、51…第1連続部、52…第2連続部、53…第3連続部、54…第4連続部、61…第1溝、62…第2溝、63…第3溝、64…第4溝、65…第5溝、66…第6溝、71…励振電極、72…リード電極、73…電極端子、74…引出し配線、75…検査用電極端子、C1…第1軸、C2…第2軸、D1,D2…最大バリ長さ、L,La,Lb…長さ、T…厚み、W1,W2…幅。
図1
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