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特開2024-108321診断方法、診断装置及び診断システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108321
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】診断方法、診断装置及び診断システム
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20240805BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
G01H17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012630
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】降籏 公司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健太
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
【Fターム(参考)】
2G024AD34
2G024BA27
2G024CA13
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA11
2G064AA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB22
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC41
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】ユーザーが装置に起因する振動成分を特定するための診断情報を生成することが可能な診断方法を提供すること。
【解決手段】ダンパーを介して床に設置された装置の稼働時に前記床に配置された第1振動センサーから出力される検出信号に基づいて、前記床の振動を示す第1振動情報を算出し、前記装置の稼働時に前記装置に配置された第2振動センサーから出力される検出信号に基づいて、前記装置の振動を示す第2振動情報を算出し、前記第1振動情報と前記ダンパーの振動伝達率とに基づいて、前記床から前記ダンパーを介して前記装置に伝達する振動を示す基準情報を算出し、前記第2振動情報と前記基準情報とに基づいて、前記装置の振動に関する診断情報を生成する、診断方法。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダンパーを介して床に設置された装置の稼働時に前記床に配置された第1振動センサーから出力される検出信号に基づいて、前記床の振動を示す第1振動情報を算出し、
前記装置の稼働時に前記装置に配置された第2振動センサーから出力される検出信号に基づいて、前記装置の振動を示す第2振動情報を算出し、
前記第1振動情報と前記ダンパーの振動伝達率とに基づいて、前記床から前記ダンパーを介して前記装置に伝達する振動を示す基準情報を算出し、
前記第2振動情報と前記基準情報とに基づいて、前記装置の振動に関する診断情報を生成する、診断方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記診断情報として、前記第2振動情報と前記基準情報とを重ねた画像を生成する、診断方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記診断情報として、前記第2振動情報と前記基準情報との差を算出する、診断方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項において、
前記装置の非稼働時に前記第1振動センサーから出力される検出信号に基づいて、前記床の振動を示す第3振動情報を算出し、
前記装置の非稼働時に前記第2振動センサーから出力される検出信号に基づいて、前記装置の振動を示す第4振動情報を算出し、
前記第3振動情報と前記第4振動情報とに基づいて、前記振動伝達率を算出する、診断方法。
【請求項5】
ダンパーを介して床に設置された装置の稼働時に前記床に配置された第1振動センサーから出力される検出信号に基づいて、前記床の振動を示す第1振動情報を算出する第1振動情報算出部と、
前記装置の稼働時に前記装置に配置された第2振動センサーから出力される検出信号に基づいて、前記装置の振動を示す第2振動情報を算出する第2振動情報算出部と、
前記第1振動情報と前記ダンパーの振動伝達率とに基づいて、前記床から前記ダンパーを介して前記装置に伝達する振動を示す基準情報を算出する基準情報算出部と、
前記第2振動情報と前記基準情報とに基づいて、前記装置の振動に関する診断情報を生成する診断情報生成部と、
を含む、診断装置。
【請求項6】
請求項5に記載の診断装置と、
表示装置と、を備え、
前記表示装置は、
前記診断情報を表示する、診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断方法、診断装置及び診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、床の振動に基づいて、選択された除振台を床と装置との間に設置した場合の装置に対する制振に係る診断結果を表示する診断システムが記載されている。特許文献1に記載の診断システムによれば、ユーザーは、診断結果に基づいて、選択した除振台を設置した場合に装置に伝達される振動のレベルが許容され得るか否かを判断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-71488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の診断システムは、ユーザーが装置に起因する振動成分を特定するための診断情報を提供することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る診断方法の一態様は、
ダンパーを介して床に設置された装置の稼働時に前記床に配置された第1振動センサーから出力される検出信号に基づいて、前記床の振動を示す第1振動情報を算出し、
前記装置の稼働時に前記装置に配置された第2振動センサーから出力される検出信号に基づいて、前記装置の振動を示す第2振動情報を算出し、
前記第1振動情報と前記ダンパーの振動伝達率とに基づいて、前記床から前記ダンパーを介して前記装置に伝達する振動を示す基準情報を算出し、
前記第2振動情報と前記基準情報とに基づいて、前記装置の振動に関する診断情報を生成する。
【0006】
本発明に係る診断装置の一態様は、
ダンパーを介して床に設置された装置の稼働時に前記床に配置された第1振動センサーから出力される検出信号に基づいて、前記床の振動を示す第1振動情報を算出する第1振動情報算出部と、
前記装置の稼働時に前記装置に配置された第2振動センサーから出力される検出信号に基づいて、前記装置の振動を示す第2振動情報を算出する第2振動情報算出部と、
前記第1振動情報と前記ダンパーの振動伝達率とに基づいて、前記床から前記ダンパーを介して前記装置に伝達する振動を示す基準情報を算出する基準情報算出部と、
前記第2振動情報と前記基準情報とに基づいて、前記装置の振動に関する診断情報を生成する診断情報生成部と、
を含む。
【0007】
本発明に係る診断システムの一態様は、
前記診断装置の一態様と、
表示装置と、を備え、
前記表示装置は、
前記診断情報を表示する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】診断システムの構成例を示す図。
図2】診断システムの他の構成例を示す図。
図3】第1実施形態の診断装置の構成例を示す図。
図4】第1実施形態の診断方法の手順の一例を示すフローチャート図。
図5】第1振動情報の一例を示す図。
図6】第2振動情報の一例を示す図。
図7】ダンパーの振動伝達率の一例を示す図。
図8】基準情報の一例を示す図。
図9】診断情報の一例を示す図。
図10】診断情報の他の一例を示す図。
図11】第2実施形態の診断装置の構成例を示す図。
図12】第2実施形態の診断方法の手順の一例を示すフローチャート図。
図13】第3振動情報の一例を示す図。
図14】第4振動情報の一例を示す図。
図15】ダンパーの振動伝達率の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0010】
1.第1実施形態
1-1.診断システムの構成
図1は、本実施形態の診断システムの構成例を示す図である。また、図2は、本実施形態の診断システムの他の構成例を示す図である。
【0011】
図1及び図2に示すように、診断システム1は、診断装置2と表示装置3とを備える。図1の例において、例えば、診断装置2がパーソナルコンピューターの本体であり、表示装置3が当該パーソナルコンピューターのディスプレイであってもよい。また、図1及び図2の例において、診断装置2と表示装置3がそれぞれ別々のパーソナルコンピューターであってもよい。また、表示装置3は、単体の装置であってもよいし、複数の装置によって構成されてもよい。また、表示装置3は、例えば、クラウドサーバー等の診断装置2とデータ通信を行うクライアント端末であってもよい。
【0012】
診断装置2は、ダンパー7を介して床5に設置された装置6の稼働時に床5に配置された第1振動センサー4aから出力される検出信号に基づいて、床5の振動を示す第1振動情報を算出する。また、診断装置2は、装置6の稼働時に装置6に配置された第2振動センサー4bから出力される検出信号に基づいて、装置6の振動を示す第2振動情報を算出する。装置6は、例えば、各種の計測装置、検査装置、製造装置、モーター、ポンプ等、振動を生じ得る何らかの装置であればよい。ダンパー7は、例えば、種々の除振台であってもよいし、剛性架台であってもよいし、除振台と剛性架台のセットであってもよい。
【0013】
図1の例のように、診断装置2は、第1振動センサー4a及び第2振動センサー4bと接続されて第1振動センサー4a及び第2振動センサー4bから検出信号を取得してもよい。また、図2の例のように、表示装置3が第1振動センサー4a及び第2振動センサー4bと接続されて第1振動センサー4a及び第2振動センサー4bから検出信号を取得し、診断装置2は、ローカルエリアネットワークやインターネット等のネットワーク8を介して表示装置3から検出信号を取得してもよい。また、図1及び図2の例において、診断装置2及び表示装置3とは異なる装置が、第1振動センサー4a及び第2振動センサー4bから検出信号を取得し、取得した検出信号のデータを記憶媒体に格納されたファイルに書き込み、診断装置2は当該ファイルを取得してもよい。
【0014】
第1振動センサー4a及び第2振動センサー4bは、同じ種類のセンサーであり、同じ型番のセンサーであることが好ましい。例えば、第1振動センサー4a及び第2振動センサー4bは加速度センサーであり、検出信号は加速度の検出信号であってもよい。また、第1振動センサー4a及び第2振動センサー4bは角速度センサーであり、検出信号は角速度の検出信号であってもよい。また、第1振動センサー4a及び第2振動センサー4bは加速度センサー及び角速度センサーを有する慣性計測ユニットであり、検出信号は加速度及び角速度の検出信号であってもよい。また、第1振動センサー4a及び第2振動センサー4bの検出軸は、1軸であってもよいし、2軸以上であってもよい。
【0015】
第1振動情報は、装置6の稼働時の床5における振動の周波数とその大きさを示す情報であってもよい。例えば、検出信号が加速度の検出信号であれば、振動の周波数と振動により生じる加速度の大きさを示す情報であってもよいし、振動の周波数と振動により生じる速度の大きさを示す情報であってもよい。
【0016】
第2振動情報は、装置6の稼働時の装置6における振動の周波数とその大きさを示す情報であってもよい。例えば、検出信号が加速度の検出信号であれば、振動の周波数と振動により生じる加速度の大きさを示す情報であってもよいし、振動の周波数と振動により生じる速度の大きさを示す情報であってもよい。
【0017】
さらに、診断装置2は、第1振動情報とダンパー7の振動伝達率とに基づいて、床5からダンパー7を介して装置6に伝達する振動を示す基準情報を算出する。
【0018】
本実施形態では、ダンパー7の振動伝達率は既知であり、例えば、ダンパー7の仕様書等に記載された情報であってもよい。ダンパー7の振動伝達率の情報は、診断装置2の内蔵メモリーや外付けの記憶媒体に記憶されていてもよいし、診断装置2がネットワーク8を介して取得してもよい。
【0019】
基準情報は、装置6の稼働時に床5からダンパー7を介して装置6に伝達する振動の周波数とその大きさを示す情報であってもよい。例えば、検出信号が加速度の検出信号であれば、振動の周波数と振動により生じる加速度の大きさを示す情報であってもよいし、振動の周波数と振動により生じる速度の大きさを示す情報であってもよい。例えば、診断装置2は、第1振動情報の各周波数の信号成分にダンパー7の振動伝達率を乗算して基準情報を算出してもよい。
【0020】
そして、診断装置2は、第2振動情報と基準情報とに基づいて、装置6の振動に関する診断情報を生成し、生成した診断情報を表示装置3に表示させる。診断装置2は、診断情報として、第2振動情報と基準情報との差を算出してもよい。診断装置2は、診断情報として、第2振動情報と基準情報との比を算出してもよい。診断情報は、第2振動情報と基準情報との差を示す画像情報であってもよい。また、診断装置2は、診断情報として、第2振動情報と基準情報とを重ねた画像を生成してもよい。診断情報は、トリパタイトグラフの画像であってもよい。トリパタイトグラフは、振動の周波数、速度、加速度及び変位の数値を含むグラフであってもよい。
【0021】
診断装置2は、生成した診断情報を表示装置3に出力し、表示装置3に診断情報が表示される。例えば、図1の例では、診断装置2は、診断情報を直接的に表示装置3に出力し、図2の例では、診断装置2は、診断情報を、ネットワーク8を介して表示装置3に出力する。
【0022】
診断システム1のユーザーは、表示装置3に表示される診断情報に基づいて、装置6の状態について解析することができる。例えば、ユーザーは、第2振動情報と基準情報とに大きな差がなければ、ダンパー7によって装置6に対する制振が十分であると判断することができる。また、ユーザーは、第2振動情報に振動のピークが含まれている場合は、装置6が何らかの要因で発生させている振動であると判断し、その要因を特定することができる。
【0023】
1-2.診断装置の構成
図3は、第1実施形態の診断装置2の構成例を示す図である。図3に示すように、診断装置2は、処理回路21、記憶回路22及び通信部23を含む。なお、診断装置2は、図3の構成要素の一部を省略又は変更し、あるいは、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
【0024】
処理回路21は、第1振動センサー4aから出力される検出信号及び第2振動センサー4bから出力される検出信号を取得し、取得した検出信号に基づいて各種の計算処理を行う。また、処理回路21は、表示装置3とデータ通信を行うために通信部23を制御する処理等を行う。処理回路21は、例えば、CPUやDSPによって実現される。CPUは、Central Processing Unitである。DSPは、Digital Signal Processorの略である。
【0025】
処理回路21は、記憶回路22に記憶されている診断プログラム221を実行することにより、検出信号取得部211、第1振動情報算出部212、第2振動情報算出部213、基準情報算出部214、診断情報生成部215及び出力部216として機能する。すなわち、診断装置2は、検出信号取得部211、第1振動情報算出部212、第2振動情報算出部213、基準情報算出部214、診断情報生成部215及び出力部216を含む。
【0026】
検出信号取得部211は、ダンパー7を介して床5に設置された装置6の稼働時に、床5に配置された第1振動センサー4aから出力される検出信号を取得する。また、検出信号取得部211は、装置6の稼働時に、装置6に配置された第2振動センサー4bから出力される検出信号を取得する。例えば、検出信号取得部211は、第1振動センサー4a及び第2振動センサー4bから検出信号を直接的に取得してもよいし、検出信号のデータが書き込まれたファイルを取得してもよい。
【0027】
第1振動情報算出部212は、装置6の稼働時に検出信号取得部211が取得した第1振動センサー4aの検出信号に基づいて、床5の振動を示す第1振動情報を算出する。
【0028】
第2振動情報算出部213は、装置6の稼働時に検出信号取得部211が取得した第2振動センサー4bの検出信号に基づいて、装置6の振動を示す第2振動情報を算出する。
【0029】
基準情報算出部214は、第1振動情報算出部212が算出した第1振動情報とダンパー7の振動伝達率とに基づいて、床5からダンパー7を介して装置6に伝達する振動を示す基準情報を算出する。ダンパー7の振動伝達率は記憶回路22に記憶されている振動伝達率情報222に含まれており、基準情報算出部214は、記憶回路22から振動伝達率情報222を読み出して基準情報の算出に用いる。ただし、振動伝達率情報222は、外付けの不図示の記憶媒体に記憶されていてもよいし、ネットワーク8に接続されているサーバーから取得されてもよい。例えば、基準情報算出部214は、第1振動情報の各周波数の信号成分にダンパー7の振動伝達率を乗算して基準情報を算出してもよい。
【0030】
診断情報生成部215は、第2振動情報算出部213が算出した第2振動情報と基準情報算出部214が算出した基準情報とに基づいて、装置6の振動に関する診断情報を生成する。診断情報生成部215は、診断情報として、第2振動情報と基準情報との差を算出してもよい。診断情報は、第2振動情報と基準情報との差を示す画像情報であってもよい。また、診断情報生成部215は、診断情報として、第2振動情報と基準情報とを重ねた画像を生成してもよい。診断情報は、トリパタイトグラフの画像であってもよい。
【0031】
出力部216は、診断情報生成部215が生成した診断情報を、通信部23を介して表示装置3に出力する。また、出力部216は、振動伝達率情報222、第1振動情報算出部212が算出した第1振動情報、第2振動情報算出部213が算出した第2振動情報及び基準情報算出部214が算出した基準情報を、通信部23を介して表示装置3に出力してもよい。表示装置3には、出力部216から出力された診断情報等の各種の情報が表示される。
【0032】
記憶回路22は、不図示のROM及びRAMを有している。ROMは、Read Only Memoryの略である。RAMは、Random Access Memoryの略である。ROMは、診断プログラム221等の各種のプログラムや振動伝達率情報222等の予め用意された各種のデータを記憶する。RAMは、処理回路21の作業領域として用いられ、ROMから読み出されたプログラムやデータ、処理回路21が取得した検出信号や処理回路21が生成した第1振動情報、第2振動情報、基準情報、診断情報等の各種のデータを記憶する。
【0033】
通信部23は、処理回路21と表示装置3との間のデータ通信を成立させるための各種制御を行う。
【0034】
なお、処理回路21の少なくとも一部が、専用のハードウエアで実現されてもよい。また、診断装置2は、単体の装置であってもよいし、複数の装置によって構成されてもよい。また、診断装置2は、例えば、クラウドサーバー等の装置であってもよい。
【0035】
1-3.診断方法
図4は、診断装置2によって実行される診断方法の手順の一例を示すフローチャート図である。
【0036】
図4に示すように、まず、工程S10において、診断装置2は、ダンパー7を介して床5に設置された装置6の稼働時に、床5に配置された第1振動センサー4aから出力される検出信号を取得する。
【0037】
次に、工程S20において、診断装置2は、装置6の稼働時に、装置6に配置された第2振動センサー4bから出力される検出信号を取得する。
【0038】
次に、工程S30において、診断装置2は、工程S10で取得した第1振動センサー4aの検出信号に基づいて、床5の振動を示す第1振動情報を算出する。図5に、第1振動情報の一例を示す。図5において、横軸は周波数であり、縦軸は強度である。診断装置2は、算出した第1振動情報を表示装置3に出力してもよい。
【0039】
次に、工程S40において、診断装置2は、工程S20で取得した第2振動センサー4bの検出信号に基づいて、装置6の振動を示す第2振動情報を算出する。図6に、第2振動情報の一例を示す。図6において、横軸は周波数であり、縦軸は強度である。診断装置2は、算出した第2振動情報を表示装置3に出力してもよい。
【0040】
次に、工程S50において、診断装置2は、工程S30で算出した第1振動情報と振動伝達率情報222に含まれるダンパー7の振動伝達率とに基づいて、床5からダンパー7を介して装置6に伝達する振動を示す基準情報を算出する。例えば、診断装置2は、第1振動情報の各周波数の信号成分にダンパー7の振動伝達率を乗算して基準情報を算出してもよい。図7に、ダンパー7の振動伝達率の一例を示す。図7において、横軸は周波数であり、縦軸はゲインである。また、図8に、基準情報の一例を示す。図8において、横軸は周波数であり、縦軸は強度である。診断装置2は、振動伝達率情報222や第2振動情報を表示装置3に出力してもよい。
【0041】
次に、工程S60において、診断装置2は、工程S40で算出した第2振動情報と工程S50で算出した基準情報とに基づいて、装置6の振動に関する診断情報を生成する。診断装置2は、診断情報として、第2振動情報と基準情報との差を算出してもよい。図9に、診断情報の一例として、第2振動情報と基準情報との差の画像を示す。図9において、横軸は周波数であり、縦軸は強度である。また、診断装置2は、診断情報として、第2振動情報と基準情報とを重ねた画像を生成してもよい。図10に、診断情報の一例として、第2振動情報と基準情報とを重ねた画像を示す。図10において、横軸は周波数であり、縦軸は強度である。実線は第2振動情報であり、破線は基準情報である。
【0042】
最後に、工程S70において、診断装置2は、工程S60で生成した診断情報を表示装置3に出力する。例えば、表示装置3には、図9図10に示した診断情報が表示される。ユーザーは、表示装置3に表示される診断情報に基づいて、装置6の状態について解析することができる。図9及び図10の例では、第2振動情報に含まれる数百Hzの振動ピークを除いて第2振動情報と基準情報とに大きな差がないので、ダンパー7によって装置6に対する制振が十分であると判断することができる。また、ユーザーは、第2振動情報に含まれる数百Hzの振動成分が、装置6の正常動作時には発生しない振動成分であれば、その要因を解析し、特定することができる。
【0043】
1-4.作用効果
以上に説明したように、第1実施形態では、診断装置2が、装置6の稼働時の第1振動センサー4aの検出信号に基づいて床5の振動を示す第1振動情報を生成し、装置6の稼働時の第2振動センサー4bの検出信号に基づいて装置6の振動を示す第2振動情報を生成する。さらに、診断装置2が、床5からダンパー7を介して装置6に伝達する振動を示す基準情報を算出し、第2振動情報と基準情報とに基づいて装置6の振動に関する診断情報を生成する。第2振動情報と基準情報との差は装置6が発生させる振動に相当するので、第1実施形態によれば、ユーザーが装置6に起因する振動成分を特定するための診断情報を生成することができる。
【0044】
また、第1実施形態によれば、診断装置2が、第2振動情報と基準情報とを重ねた画像を生成することにより、ユーザーが装置6に起因する振動成分を視覚的に特定するための診断情報を生成することができる。
【0045】
また、第1実施形態によれば、診断装置2が、第2振動情報と基準情報との差を算出することにより、ユーザーが装置6に起因する振動成分を直接的に特定するための診断情報を生成することができる。
【0046】
2.第2実施形態
以下、第2実施形態について、第1実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付し、第1実施形態と重複する説明は省略または簡略し、主に第1実施形態と異なる内容について説明する。
【0047】
第2実施形態の診断システム1の構成は、図1又は図2と同様であるため、その図示及び説明を省略する。第2実施形態では、診断装置2の構成が第1実施形態と異なる。
【0048】
図11は、第2実施形態の診断装置2の構成例を示す図である。図11に示すように、第2実施形態の診断装置2は、第1実施形態と同様、処理回路21、記憶回路22及び通信部23を含む。なお、診断装置2は、図11の構成要素の一部を省略又は変更し、あるいは、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
【0049】
第2実施形態では、処理回路21は、装置6の非稼働時に第1振動センサー4aから出力される検出信号及び第2振動センサー4bから出力される検出信号に基づいて、振動伝達率情報222を算出する。
【0050】
処理回路21は、記憶回路22に記憶されている診断プログラム221を実行することにより、検出信号取得部211、第1振動情報算出部212、第2振動情報算出部213、基準情報算出部214、診断情報生成部215、出力部216、第3振動情報算出部217、第4振動情報算出部218及び振動伝達率算出部219として機能する。すなわち、第2実施形態の診断装置2は、検出信号取得部211、第1振動情報算出部212、第2振動情報算出部213、基準情報算出部214、診断情報生成部215、出力部216、第3振動情報算出部217、第4振動情報算出部218及び振動伝達率算出部219を含む。
【0051】
検出信号取得部211は、ダンパー7を介して床5に設置された装置6の非稼働時に、床5に配置された第1振動センサー4aから出力される検出信号を取得する。また、検出信号取得部211は、装置6の非稼働時に、装置6に配置された第2振動センサー4bから出力される検出信号を取得する。例えば、検出信号取得部211は、第1振動センサー4a及び第2振動センサー4bから検出信号を直接的に取得してもよいし、検出信号のデータが書き込まれたファイルを取得してもよい。
【0052】
第3振動情報算出部217は、装置6の非稼働時に検出信号取得部211が取得した第1振動センサー4aの検出信号に基づいて、床5の振動を示す第3振動情報を算出する。第3振動情報は、装置6の非稼働時の床5における振動の周波数とその大きさを示す情報であってもよい。例えば、検出信号が加速度の検出信号であれば、振動の周波数と振動により生じる加速度の大きさを示す情報であってもよいし、振動の周波数と振動により生じる速度の大きさを示す情報であってもよい。
【0053】
第4振動情報算出部218は、装置6の非稼働時に検出信号取得部211が取得した第2振動センサー4bの検出信号に基づいて、装置6の振動を示す第4振動情報を算出する。第4振動情報は、装置6の非稼働時の装置6における振動の周波数とその大きさを示す情報であってもよい。例えば、検出信号が加速度の検出信号であれば、振動の周波数と振動により生じる加速度の大きさを示す情報であってもよいし、振動の周波数と振動により生じる速度の大きさを示す情報であってもよい。
【0054】
振動伝達率算出部219は、第3振動情報算出部217が算出した第3振動情報と第4振動情報算出部218が算出した第4振動情報とに基づいて、ダンパー7の振動伝達率を算出する。例えば、振動伝達率算出部219は、第4振動情報の各周波数の信号成分の強度を第3振動情報の各周波数の信号成分の強度で除算して振動伝達率を算出してもよい。振動伝達率算出部219は、算出したダンパー7の振動伝達率を含む情報を振動伝達率情報222として記憶回路22に記憶させる。
【0055】
その後、検出信号取得部211は、装置6の稼働時に、第1振動センサー4aから出力される検出信号及び第2振動センサー4bから出力される検出信号を取得する。そして、第1振動情報算出部212、第2振動情報算出部213、基準情報算出部214、診断情報生成部215及び出力部216は、第1実施形態と同様の処理を行う。
【0056】
第2実施形態の診断装置2のその他の構成は第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0057】
図12は、第2実施形態の診断装置2によって実行される診断方法の手順の一例を示すフローチャート図である。図12において、図4と同じ工程には同じ符号が付されており、その説明を省略する。
【0058】
図12に示す手順は、図4に示す手順に対して、工程S10の前に、工程S1~S5が追加されている。
【0059】
図12に示すように、まず、工程S1において、診断装置2は、ダンパー7を介して床5に設置された装置6の非稼働時に、床5に配置された第1振動センサー4aから出力される検出信号を取得する。
【0060】
次に、工程S2において、診断装置2は、装置6の非稼働時に、装置6に配置された第2振動センサー4bから出力される検出信号を取得する。
【0061】
次に、工程S3において、診断装置2は、工程S1で取得した第1振動センサー4aの検出信号に基づいて、床5の振動を示す第3振動情報を算出する。図13に、第3振動情報の一例を示す。図13において、横軸は周波数であり、縦軸は強度である。診断装置2は、算出した第3振動情報を表示装置3に出力してもよい。
【0062】
次に、工程S4において、診断装置2は、工程S2で取得した第2振動センサー4bの検出信号に基づいて、装置6の振動を示す第4振動情報を算出する。図14に、第4振動情報の一例を示す。図14において、横軸は周波数であり、縦軸は強度である。診断装置2は、算出した第4振動情報を表示装置3に出力してもよい。
【0063】
次に、工程S5において、診断装置2は、工程S3で算出した第3振動情報と工程S4で算出した第4振動情報とに基づいて、ダンパー7の振動伝達率を算出する。例えば、診断装置2は、第4振動情報の各周波数の信号成分の強度を第3振動情報の各周波数の信号成分の強度で除算して振動伝達率を算出してもよい。工程S5で算出されたダンパー7の振動伝達率を含む情報は、振動伝達率情報222として記憶回路22に記憶される。図15に、算出されたダンパー7の振動伝達率の一例を示す。図15において、横軸は周波数であり、縦軸はゲインである。診断装置2は、振動伝達率情報222を表示装置3に出力してもよい。
【0064】
次に、診断装置2は、図4と同様の工程S10~S40の処理を行った後、工程S50において、工程S30で算出した第1振動情報と工程S5で算出したダンパー7の振動伝達率とに基づいて、床5からダンパー7を介して装置6に伝達する振動を示す基準情報を算出する。
【0065】
最後に、診断装置2は、図4と同様の工程S60,S70の処理を行う。ユーザーは、工程S70において表示装置3に表示される診断情報に基づいて、装置6の状態について解析することができる。例えば、ユーザーは、第2振動情報と基準情報とに大きな差がなければ、ダンパー7によって装置6に対する制振が十分であると判断することができる。また、ユーザーは、第2振動情報に振動のピークが含まれている場合は、装置6が何らかの要因で発生させている振動であると判断し、その要因を特定することができる。
【0066】
以上に説明した第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0067】
また、第2実施形態では、診断装置2が、装置6の非稼働時の第1振動センサー4aの検出信号及び第2振動センサー4bの検出信号に基づいて、ダンパー7の振動伝達率を算出する。したがって、第2実施形態によれば、ダンパー7の振動伝達率が不明の場合や、ダンパー7の振動伝達率が経時変化した場合でも、実測によりダンパー7の正確な振動伝達率が得られるので、ユーザーが装置6に起因する振動成分を特定するためのより正確な診断情報を生成することができる。また、ダンパー7の振動伝達率が仕様書等に記載されている場合には、ユーザーは、仕様書等に記載されている振動伝達率と、算出した振動伝達率とを比較してダンパー7の性能の劣化度合を判定し、必要に応じてダンパー7を取り換える等の処置を行うことができる。
【0068】
3.変形例
本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0069】
例えば、上記の各実施形態において、診断装置2は、記憶回路22に、装置6が発生させる振動のパラメーターと当該パラメーターに関連づけられる要因との関係を規定した要因情報が記憶されており、第2振動情報と基準情報との差を装置6が発生させる振動のパラメーターとして、要因情報に基づいて装置6が振動を発生させる要因を特定してもよい。そして、診断装置2が、装置6が振動を発生させる要因を表示装置3に表示させることにより、当該要因をユーザーに提示してもよい。さらに、要因情報が、装置6が振動を発生させる要因に関連づけられる解決策の情報を含み、診断装置2は、要因情報に基づいて、特定した要因に関連づけられる解決策を表示装置3に表示させることにより、当該解決策をユーザーに提示してもよい。
【0070】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0071】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0072】
上述した実施形態および変形例から以下の内容が導き出される。
【0073】
診断方法の一態様は、
ダンパーを介して床に設置された装置の稼働時に前記床に配置された第1振動センサーから出力される検出信号に基づいて、前記床の振動を示す第1振動情報を算出し、
前記装置の稼働時に前記装置に配置された第2振動センサーから出力される検出信号に基づいて、前記装置の振動を示す第2振動情報を算出し、
前記第1振動情報と前記ダンパーの振動伝達率とに基づいて、前記床から前記ダンパーを介して前記装置に伝達する振動を示す基準情報を算出し、
前記第2振動情報と前記基準情報とに基づいて、前記装置の振動に関する診断情報を生成する。
【0074】
この診断方法では、第2振動情報は装置の振動を示し、基準情報は床からダンパーを介して装置に伝達する振動を示すので、第2振動情報と基準情報との差は装置が発生させる振動に相当する。したがって、この診断方法によれば、ユーザーが装置に起因する振動成分を特定するための診断情報を生成することができる。
【0075】
前記診断方法の一態様は、
前記診断情報として、前記第2振動情報と前記基準情報とを重ねた画像を生成してもよい。
【0076】
この診断方法によれば、ユーザーが装置に起因する振動成分を視覚的に特定するための診断情報を生成することができる。
【0077】
前記診断方法の一態様は、
前記診断情報として、前記第2振動情報と前記基準情報との差を算出してもよい。
【0078】
この診断方法によれば、ユーザーが装置に起因する振動成分を直接的に特定するための診断情報を生成することができる。
【0079】
前記診断方法の一態様は、
前記装置の非稼働時に前記第1振動センサーから出力される検出信号に基づいて、前記床の振動を示す第3振動情報を算出し、
前記装置の非稼働時に前記第2振動センサーから出力される検出信号に基づいて、前記装置の振動を示す第4振動情報を算出し、
前記第3振動情報と前記第4振動情報とに基づいて、前記振動伝達率を算出してもよい。
【0080】
この診断方法によれば、ダンパーの振動伝達率が不明の場合や、ダンパーの振動伝達率が経時変化した場合でも、実測によりダンパーの正確な振動伝達率が得られるので、ユーザーが装置に起因する振動成分を特定するためのより正確な診断情報を生成することができる。また、ダンパーの振動伝達率が仕様書等に記載されている場合には、ユーザーは、仕様書等に記載されている振動伝達率と、算出した振動伝達率とを比較してダンパーの性能の劣化度合を判定し、必要に応じてダンパーを取り換える等の処置を行うことができる。
【0081】
診断装置の一態様は、
ダンパーを介して床に設置された装置の稼働時に前記床に配置された第1振動センサーから出力される検出信号に基づいて、前記床の振動を示す第1振動情報を算出する第1振動情報算出部と、
前記装置の稼働時に前記装置に配置された第2振動センサーから出力される検出信号に基づいて、前記装置の振動を示す第2振動情報を算出する第2振動情報算出部と、
前記第1振動情報と前記ダンパーの振動伝達率とに基づいて、前記床から前記ダンパーを介して前記装置に伝達する振動を示す基準情報を算出する基準情報算出部と、
前記第2振動情報と前記基準情報とに基づいて、前記装置の振動に関する診断情報を生成する診断情報生成部と、
を含む。
【0082】
この診断装置によれば、第2振動情報と基準情報との差は装置が発生させる振動に相当するので、ユーザーが装置に起因する振動成分を特定するための診断情報を生成することができる。
【0083】
診断システムの一態様は、
前記診断装置の一態様と、
表示装置と、を備え、
前記表示装置は、
前記診断情報を表示する。
【0084】
この診断システムによれば、第2振動情報と基準情報との差は装置が発生させる振動に相当するので、ユーザーが装置に起因する振動成分を特定するための診断情報を生成することができる。
【符号の説明】
【0085】
1…診断システム、2…診断装置、3…表示装置、4a…第1振動センサー、4b…第2振動センサー、5…床、6…装置、8…ネットワーク、21…処理回路、22…記憶回路、23…通信部、211…検出信号取得部、212…第1振動情報算出部、213…第2振動情報算出部、214…基準情報算出部、215…診断情報生成部、216…出力部、217…第3振動情報算出部、218…第4振動情報算出部、219…振動伝達率算出部、221…診断プログラム、222…振動伝達率情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
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図13
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図15