(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108324
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】材料供給装置および可塑化装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/46 20060101AFI20240805BHJP
B29C 45/48 20060101ALI20240805BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240805BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240805BHJP
B33Y 40/10 20200101ALI20240805BHJP
【FI】
B29C45/46
B29C45/48
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y40/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012633
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】梶原 あさみ
(72)【発明者】
【氏名】丸山 英伸
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AR13
4F206JA07
4F206JD05
4F206JF01
4F206JF12
4F206JL02
4F206JM01
4F206JN01
4F206JN03
4F206JQ11
4F206JQ15
4F206JQ16
(57)【要約】
【課題】材料の供給不良を抑制できる材料供給装置を提供する。
【解決手段】材料を可塑化して可塑化材料を生成する可塑化部に、前記材料を供給する材料供給装置であって、前記可塑化部に前記材料を投入する投入口を有し、前記材料を収容する筐体と、前記筐体内に設けられ、前記投入口よりも上方に位置し、前記材料を前記投入口に間欠的に供給する供給機構と、を含み、前記筐体は、前記供給機構よりも上方において前記材料の収容空間を規定し、かつ、前記収容空間の容積を下方に向けて縮小するように傾斜した傾斜壁を有し、鉛直方向からみて、前記供給機構は、前記傾斜壁と少なくとも一部が重なる、材料供給装置。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料を可塑化して可塑化材料を生成する可塑化部に、前記材料を供給する材料供給装置であって、
前記可塑化部に前記材料を投入する投入口を有し、前記材料を収容する筐体と、
前記筐体内に設けられ、前記投入口よりも上方に位置し、前記材料を前記投入口に間欠的に供給する供給機構と、
を含み、
前記筐体は、前記供給機構よりも上方において前記材料の収容空間を規定し、かつ、前記収容空間の容積を下方に向けて縮小するように傾斜した傾斜壁を有し、
鉛直方向からみて、前記供給機構は、前記傾斜壁と少なくとも一部が重なる、材料供給装置。
【請求項2】
請求項1において、
モーターを含み、
前記供給機構は、前記モーターによって、鉛直方向と交差する回転軸を中心に回転する回転部材であり、
前記回転部材は、外周に凹部を有する、材料供給装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記筐体は、前記傾斜壁によって前記収容空間の容積が縮小した狭窄部を有し、
鉛直方向からみて、前記狭窄部の中心と前記投入口の中心との間に、前記回転軸が位置する、材料供給装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記回転軸に沿った方向のうち、前記狭窄部の中心が左に、前記投入口の中心が右に位置する方向から見た場合に、前記回転部材は、右回りに回転する、材料供給装置。
【請求項5】
請求項2において、
前記回転部材の外周に摺接し、前記回転部材の外周を前記回転軸に向けて付勢する摺接部材を含む、材料供給装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記摺接部材によって前記回転部材の外周に加えられる力は、0.1N以上19N未満である、材料供給装置。
【請求項7】
請求項1において、
前記傾斜壁の水平方向に対する傾斜角は、15°以上60°以下である、材料供給装置。
【請求項8】
請求項1において、
前記筐体の内壁の少なくとも一部には、マイクロディンプル処理およびフッ素コーティング処理のうちの少なくとも一方の処理が施されている、材料供給装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の材料供給装置と、
前記可塑化部と、
を含む、可塑化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料供給装置および可塑化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可塑化装置によって可塑化された材料を、キャビティーに向けて射出し、硬化させることによって成形品を成形する射出成形装置が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、材料を収容する筐体の内縁に沿って回転可能な回転部材を有し、少量ずつ材料を供給する供給機構を含む可塑化装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された供給機構では、回転部材と筐体との間に材料が入り込むことによって、回転部材の回転が阻害され、材料の供給不良が発生する場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る材料供給装置の一態様は、
材料を可塑化して可塑化材料を生成する可塑化部に、前記材料を供給する材料供給装置であって、
前記可塑化部に前記材料を投入する投入口を有し、前記材料を収容する筐体と、
前記筐体内に設けられ、前記投入口よりも上方に位置し、前記材料を前記投入口に間欠的に供給する供給機構と、
を含み、
前記筐体は、前記供給機構よりも上方において前記材料の収容空間を規定し、かつ、前記収容空間の容積を下方に向けて縮小するように傾斜した傾斜壁を有し、
鉛直方向からみて、前記供給機構は、前記傾斜壁と少なくとも一部が重なる。
【0007】
本発明に係る可塑化装置の一態様は、
前記材料供給装置の一態様を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る射出成形装置を模式的に示す側面図。
【
図2】本実施形態に係る射出成形装置を模式的に示す断面図。
【
図3】本実施形態に係る射出成形装置のフラットスクリューを模式的に示す斜視図。
【
図4】本実施形態に係る射出成形装置のバレルを模式的に示す図。
【
図5】本実施形態に係る射出成形装置の材料供給装置を模式的に示す斜視図。
【
図6】本実施形態に係る射出成形装置の材料供給装置を模式的に示す側面図。
【
図7】本実施形態に係る射出成形装置の材料供給装置を模式的に示す断面図。
【
図8】本実施形態に係る三次元造形装置を模式的に示す断面図。
【
図9】モーターの駆動時間と、モーター負荷率と、の関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0010】
1. 射出成形装置
1.1. 全体の構成
まず、本実施形態に係る射出成形装置について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る射出成形装置100を模式的に示す側面図である。なお、
図1では、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、およびZ軸を示している。X軸方向およびY軸方向は、例えば、水平方向である。Z軸方向は、例えば、鉛直方向である。
【0011】
射出成形装置100は、
図1に示すように、例えば、材料供給装置10と、射出部20と、型部30と、型締部40と、制御部50と、を含む。
【0012】
材料供給装置10は、射出部20に原料となる材料を供給する。材料供給装置10から供給される材料の形状は、例えば、ペレット状、粉末状である。材料供給装置10から供給される材料の形状は、粉砕機で粉砕したバラバラな形状であってもよい。材料供給装置10の詳細は、後述する。
【0013】
射出部20は、材料供給装置10から供給された材料を可塑化して、可塑化材料にする。射出部20は、可塑化材料を型部30に向けて射出する。
【0014】
なお、可塑化とは、溶融を含む概念であり、固体から流動性を有する状態に変化させることである。具体的には、ガラス転移が起こる材料の場合、可塑化とは、材料の温度をガラス転移点以上にすることである。ガラス転移が起こらない材料の場合、可塑化とは、材料の温度を融点以上にすることである。
【0015】
型部30には、成形品の形状に相当するキャビティーが形成される。射出部20から射出された可塑化材料は、キャビティーに流れ込む。そして、可塑化材料が冷却されて固化され、成形品が生成される。
【0016】
型締部40は、型部30の開閉を行う。型締部40は、可塑化材料が冷却されて固化された後に、型部30を開く。これにより、成形品が外部に排出される。
【0017】
制御部50は、例えば、プロセッサーと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェースと、を有するコンピューターによって構成されている。制御部50は、例えば、主記憶装置に読み込んだプログラムをプロセッサーが実行することによって、種々の機能を発揮する。具体的には、制御部50は、射出部20および型締部40を制御する。なお、制御部50は、コンピューターではなく、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0018】
1.2. 具体的な構成
図2は、射出成形装置100を模式的に示す
図1のII-II線断面図である。射出部20は、
図2に示すように、例えば、可塑化部60と、射出機構70と、ノズル80と、を有している。
【0019】
可塑化部60は、材料供給装置10から供給された材料を可塑化し、流動性を有するペースト状の可塑化材料を生成して射出機構70へと導くように構成されている。可塑化部60および材料供給装置10は、可塑化装置102を構成している。可塑化装置102は、可塑化部60と、材料供給装置10と、を含む。可塑化部60は、例えば、スクリューケース62と、駆動モーター64と、フラットスクリュー110と、バレル120と、ヒーター130と、を含む。
【0020】
スクリューケース62は、フラットスクリュー110を収容する筐体である。スクリューケース62とバレル120とによって囲まれた空間に、フラットスクリュー110が収容されている。
【0021】
駆動モーター64は、スクリューケース62に接続されている。駆動モーター64は、フラットスクリュー110を回転させる。駆動モーター64は、例えば、サーボモーターである。駆動モーター64のシャフト66は、フラットスクリュー110に接続されている。駆動モーター64は、制御部50によって制御される。
【0022】
フラットスクリュー110は、回転軸R方向の大きさが、回転軸R方向と直交する方向の大きさよりも小さい略円柱形状を有している。図示の例では、回転軸Rは、Y軸と平行である。駆動モーター64が発生させるトルクによって、フラットスクリュー110は、回転軸Rを中心に回転する。フラットスクリュー110は、駆動モーター64側のモーター側面111と、モーター側面111とは反対側の溝形成面112と、溝形成面112に接続された接続面113と、を有している。ここで、
図3は、フラットスクリュー110を模式的に示す斜視図である。なお、便宜上、
図3では、
図2に示した状態とは上下の位置関係を逆向きとした状態を示している。
【0023】
フラットスクリュー110の溝形成面112には、
図3に示すように、第1溝114が形成されている。第1溝114の形状は、螺旋状である。第1溝114は、例えば、中央部115と、接続部116と、材料導入部117と、を有している。中央部115は、バレル120に形成された連通孔126と対向している。中央部115は、連通孔126と連通している。接続部116は、中央部115と材料導入部117とを接続している。図示の例では、接続部116は、中央部115から溝形成面112の外周に向かって渦状に形成されている。材料導入部117は、溝形成面112の外周に形成されている。すなわち、材料導入部117は、フラットスクリュー110の接続面113に形成されている。材料供給装置10から供給された材料は、材料導入部117から第1溝114に導入され、接続部116および中央部115を通って、バレル120に形成された連通孔126に搬送される。図示の例では、第1溝114は、2つ形成されている。
【0024】
なお、第1溝114の数は、特に限定されない。図示はしないが、第1溝114は、3つ以上形成されていてもよいし、1つだけ形成されていてもよい。また、図示はしないが、可塑化部60は、フラットスクリュー110ではなく、側面に螺旋溝を有する長尺のインラインスクリューを有していてもよい。そして、可塑化部60は、インラインスクリューの回転によって材料を可塑化してもよい。
【0025】
バレル120は、
図2に示すように、フラットスクリュー110に対向して設けられている。バレル120は、フラットスクリュー110の溝形成面112に対向する対向面122を有している。対向面122は、Y軸方向において、溝形成面112と対向している。対向面122の中心には、連通孔126が形成されている。ここで、
図4は、バレル120を模式的に示す図である。
【0026】
バレル120の対向面122には、
図4に示すように、第2溝124と、連通孔126と、が形成されている。第2溝124は、複数形成されている。図示の例では、6つの第2溝124が形成されているが、その数は、特に限定されない。複数の第2溝124は、Y軸方向からみて、連通孔126の周りに形成されている。第2溝124は、一端が連通孔126に接続され、連通孔126から対向面122の外周に向かって渦状に延びている。第2溝124は、可塑化材料を連通孔126に導く機能を有している。連通孔126には、可塑化材料が流入する。連通孔126は、流入した可塑化材料を、バレル120の外部に流出させる。
【0027】
なお、第2溝124の形状は、特に限定されず、例えば、直線状であってもよい。また、第2溝124の一端は、連通孔126に接続されていなくてもよい。さらに、第2溝124は、対向面122に形成されていなくてもよい。ただし、連通孔126に可塑化材料を効率よく導くことを考慮すると、第2溝124は、対向面122に形成されていることが好ましい。
【0028】
ヒーター130は、
図2に示すように、バレル120に設けられている。ヒーター130は、フラットスクリュー110とバレル120との間に供給された材料を加熱する。ヒーター130は、第1溝114に供給された材料を加熱する。ヒーター130は、制御部50によって制御される。可塑化部60は、フラットスクリュー110、バレル120、およびヒーター130によって、材料を連通孔126に向かって搬送しながら加熱して可塑化材料を生成し、生成された可塑化材料を、連通孔126から射出機構70へと流出させる。
【0029】
射出機構70は、例えば、シリンダー72と、プランジャー74と、プランジャー駆動部76と、を有している。シリンダー72は、連通孔126に接続された略円筒状の部材である。プランジャー74は、シリンダー72の内部を移動する。プランジャー74は、モーターやギア等によって構成されたプランジャー駆動部76によって駆動される。プランジャー駆動部76は、制御部50によって制御される。なお、シリンダー72は、連通孔126よりも下流の流路に接続されていてもよい。
【0030】
射出機構70は、プランジャー74をシリンダー72内で摺動させることによって、計量操作および射出操作を実行する。計量操作とは、連通孔126から離れる-X軸方向にプランジャー74を移動させることによって、連通孔126に位置する可塑化材料をシリンダー72内へと導いて、シリンダー72内において計量する操作を指す。射出操作とは、連通孔126へ近付く+X軸方向にプランジャー74を移動させることによって、シリンダー72内の可塑化材料を、ノズル80を介して型部30に射出する操作を指す。
【0031】
ノズル80には、連通孔126と連通しているノズル孔82が形成されている。ノズル80は、可塑化部60から供給された可塑化材料を、型部30の成形型32に向けて射出する。具体的には、上述した計量操作および射出操作が実行されることによって、シリンダー72内で計量された可塑化材料が、射出機構70から連通孔126を介してノズル孔82へと送られる。そして、可塑化材料は、ノズル孔82から型部30へと射出される。
【0032】
型部30は、成形型32を有している。ノズル孔82に送られた可塑化材料は、ノズル孔82から成形型32のキャビティー34に射出される。具体的には、成形型32は、互いに対向する可動型36および固定型38を有し、可動型36と固定型38との間にキャビティー34を有している。キャビティー34は、成形品の形状に相当する空間である。可動型36および固定型38の材質は、金属である。なお、可動型36および固定型38の材質は、セラミック、樹脂であってもよい。
【0033】
型締部40は、例えば、型駆動部42と、ボールねじ部44と、を有している。型駆動部42は、例えば、モーター、ギアなどによって構成されている。型駆動部42は、ボールねじ部44を介して可動型36に接続されている。型駆動部42は、制御部50によって制御される。ボールねじ部44は、型駆動部42の駆動による動力を可動型36に伝達する。型締部40は、型駆動部42およびボールねじ部44によって可動型36を移動させることによって、型部30の開閉を行う。
【0034】
1.3. 材料供給装置
図5は、材料供給装置10を模式的に示す斜視図である。
図6は、材料供給装置10を模式的に示す側面図である。
図7は、材料供給装置10を模式的に示す
図5のVII-VII線断面図である。
【0035】
材料供給装置10は、
図5~
図7に示すように、例えば、筐体140と、回転機構180と、摺接部材190と、を含む。材料供給装置10は、可塑化部60に材料Pを供給する。可塑化部60は、材料Pを可塑化して、可塑化材料を生成する。なお、便宜上、
図5~
図7では、可塑化部60を簡略化して図示している。
【0036】
筐体140は、材料Pを収容する。筐体140の材質は、例えば、金属である。筐体140は、例えば、第1構造体150と、第2構造体160と、第3構造体170と、を有している。
【0037】
第1構造体150は、
図7に示すように、第1開口150aと、第2開口150bと、を有している。材料Pは、ユーザーによって、第1開口150aから材料供給装置10に投入され、第2開口150bに導かれる。Z軸方向からみて、第2開口150bは、第1開口150aと重なっている。
【0038】
第1構造体150は、
図5に示すように、例えば、傾斜壁152と、第1壁154と、第2壁156と、第3壁158と、を有している。
【0039】
傾斜壁152、第1壁154、第2壁156、および第3壁158は、筐体140の内壁を構成している。図示の例では、第1壁154は、傾斜壁152の-Y軸方向に設けられている。第2壁156は、傾斜壁152および第1壁154に接続されている。第3壁158は、傾斜壁152および第1壁154に接続されている。第3壁158は、第2壁156に対向して設けられている。
【0040】
傾斜壁152、第1壁154、第2壁156、および第3壁158は、例えば、ホッパーを構成している。壁152,154,156,158は、回転機構180の回転部材182よりも上方において、材料Pの収容空間である材料収容空間2を規定している。図示の例では、「上方」とは、+Z軸方向である。「下方」とは、-Z軸方向である。材料収容空間2は、
図7に示すように、第1開口150aと、第2開口150bと、を有し、第1開口150aから第2開口150bまで延びている。第1開口150aおよび第2開口150bの形状は、例えば、長方形である。
【0041】
傾斜壁152は、材料Pに対する材料収容空間2の容積を、下方に向けて縮小するように傾斜している。傾斜壁152は、第1開口150aから材料Pを受け、材料Pを第2開口150bに向けて滑らせて搬送する。図示の例では、材料収容空間2の幅は、-Z軸方向に向かうにつれて、狭くなる。なお、図示の例のように、第1開口150aから第2開口150bに向かうにつれて、材料収容空間2の幅は狭くなっていなくてもよく、第1開口150aから第2開口150bの間の一部は傾斜していなくてもよい。材料収容空間2の第2開口150bは、傾斜壁152によって材料収容空間の容積が縮小した狭窄部である。第2開口150bは、材料収容空間2の幅が最も狭くなる狭窄部である。
図7に示す例では、材料収容空間2の幅は、傾斜壁152と第1壁154との間の距離である。第2開口150bの開口面積は、材料収容空間2において、最も小さい。
【0042】
傾斜壁152の水平方向に対する傾斜角θは、例えば、15°以上60°以下である。具体的には、傾斜角θは、傾斜壁152の内面の水平方向に対する傾斜角である。壁154,156,158の内面は、例えば、水平方向に対して、垂直である。
【0043】
第2構造体160は、第1構造体150に接続されている。第2構造体160は、第1構造体150の下方に設けられている。第2構造体160は、第1構造体150と第3構造体170との間に設けられている。
図5に示す例では、第2構造体160は、第1支持部材162によって支持されている。
【0044】
第2構造体160は、
図7に示すように、第3開口160aと、第4開口160bと、を有している。第1構造体150の第2開口150bから供給された材料Pは、第3開口160aから第2構造体160に導入され、回転部材182を介して、第4開口160bに導かれる。図示の例では、第2開口150bおよび第3開口160aは、Z軸方向における位置が同じである。Z軸方向からみて、第4開口160bは、第3開口160aと重なっていない。
【0045】
第2構造体160は、例えば、第3開口160aからの材料Pを受ける受部164と、回転部材182が摺接される被摺接部166と、を有している。
【0046】
受部164は、Z軸方向からみて、第3開口160aと重なっている。受部164は、材料Pと接触する。受部164は、材料Pを回転部材182に導くように、水平方向に対して傾斜した形状を有している。
【0047】
被摺接部166は、受部164よりも下方に設けられている。被摺接部166は、受部164に接続されている。被摺接部166は、回転部材182の外周182aに沿った形状を有している。被摺接部166は、例えば、材料Pと接触しない。
【0048】
第3構造体170は、第2構造体160に接続されている。第3構造体170は、第2構造体160の下方に設けられている。第3構造体170は、第2構造体160と可塑化部60との間に設けられている。
【0049】
第3構造体170は、第5開口170aと、第6開口170bと、を有している。第2構造体160の第4開口160bから供給された材料Pは、第5開口170aから第3構造体170に導入され、第6開口170bに導かれる。そして、第6開口170bは、材料Pを可塑化部60に投入する。第6開口170bは、可塑化部60に材料Pを投入する投入口である。図示の例では、第4開口160bおよび第5開口170aは、Z軸方向における位置が同じである。Z軸方向からみて、第6開口170bは、第5開口170aと重なっている。
【0050】
第3構造体170は、例えば、第4壁172と、第5壁174と、を有している。壁172,174は、筐体140の内壁を構成している。壁172,174は、材料Pの流路である材料流路4を規定している。材料流路4は、第5開口170aと、第6開口170bと、を有し、第5開口170aから第6開口170bまで延びている。
【0051】
第4壁172は、材料流路4の幅が-Z軸方向に向かうにつれて幅が狭くなるように、水平方向に対して傾斜している。
図7に示す例では、材料流路4の幅は、第4壁172と第5壁174との間の距離である。第6開口170bの開口面積は、第5開口170aの開口面積よりも小さい。第4壁172は、材料Pと、接触してもよいし、接触しなくてもよい。
【0052】
筐体140の内壁の少なくとも一部には、例えば、マイクロディンプル(MD)処理が施されている。筐体140の内壁の全てに、MD処理が施されていてもよい。例えば、壁152,154,156,158、172,174、受部164、および被摺接部166には、MD処理が施されていてもよい。第6開口170bの開口面積は、開口150a,150b,160a,160b,170aの開口面積よりも小さい。したがって、第6開口170bにおける材料Pの詰まりを防ぐために、第6開口170bを規定する第3構造体170の内壁には、特に、MD処理が施されていることが好ましい。なお、MD処理の代わりに、フッ素コーティング処理を施してもよい。また、MD処理に加えて、フッ素コーティング処理を施してもよい。
【0053】
回転機構180は、例えば、回転部材182と、軸部材184と、モーター186と、を有している。
【0054】
回転部材182は、筐体140内に設けられている。図示の例では、回転部材182は、第2構造体160内に設けられている。回転部材182は、第6開口170bよりも上方に位置している。回転部材182は、Z軸方向からみて、傾斜壁152と少なくとも一部が重なる。回転部材182は、Z軸方向からみて、全てが傾斜壁152と重なってもよい。傾斜壁152は、回転部材182に対して、材料Pを受ける庇として機能する。
【0055】
回転部材182は、モーター186によって、回転軸Qを中心に回転する。回転軸Qは、Z軸方向と交差する。回転軸Qは、例えば、Z軸方向と直交する。図示の例では、回転軸Qは、X軸と平行である。Z軸方向からみて、第2開口150bの中心C1と、第6開口170bの中心C2との間に、回転部材182および回転軸Qが位置している。
【0056】
回転部材182は、仮想平面Sに対して、第2開口150bの中心C1が左に、第6開口170bの中心C2が右に位置する方向からみた場合に、
図7に示す矢印Aのように、右回りする。回転部材182は、回転軸Qに沿った方向のうち、第2開口150bの中心C1が左に、第6開口170bの中心C2が右に位置する方向からみた場合に、右回りする。図示の例では、回転部材182は、時計回りする。仮想平面Sは、回転軸Qを含む鉛直方向に平行な平面である。図示の例では、仮想平面Sは、X軸およびZ軸を含む平面と平行である。
【0057】
回転部材182は、外周182aに凹部183を有している。凹部183は、複数設けられている。図示の例では、凹部183は、12個設けられている。複数の凹部183は、例えば、回転部材182の外周182aに、等間隔で設けられている。複数の凹部183によって、回転部材182は、歯車形状を有している。凹部183には、材料Pが供給される。回転部材182は、凹部183に供給された材料Pを、回転軸Qよりも上方に一度持ち上げて、開口160b,170aを介して、第6開口170bに供給する。回転部材182は、材料Pを、第6開口170bに間欠的に供給する供給機構である。
【0058】
軸部材184は、回転部材182に接続されている。X軸方向からみて、軸部材184の中心と回転軸Qとは、重なっている。軸部材184は、回転部材182に囲まれている。軸部材184が回転軸Qを中心に回転することによって、回転部材182は、回転する。軸部材184は、例えば、X軸方向に延在する棒状の部材である。
【0059】
モーター186は、
図5に示すように、筐体140の外に設けられている。図示の例では、モーター186は、板状部材187に配置されている。板状部材187は、第2支持部材188に支持されている。モーター186は、軸部材184に接続されている。モーター186は、軸部材184を介して、回転部材182を回転させる。モーター186は、サーボモーターである。モーター186は、制御部50によって制御される。
【0060】
摺接部材190は、
図7に示すように、筐体140内に設けられている。摺接部材190は、例えば、第2構造体160内に設けられている。図示の例では、摺接部材190は、固定部材192に固定されている。固定部材192は、第2構造体160の上板部材168の下面に設けられている。摺接部材190は、固定部材192に螺合されていてもよい。図示の例では、摺接部材190は、固定部材192から斜め下方に延びている。
【0061】
摺接部材190は、回転部材182の外周182aに摺接する。摺接部材190は、外周182aを、回転軸Qに向けて付勢する。摺接部材190は、凹部183に供給された材料Pと接触する。摺接部材190は、凹部183に供給された材料Pを、押さえつける。
【0062】
摺接部材190は、例えば、板ばねである。摺接部材190の材質は、例えば、ステンレス鋼である。摺接部材190の厚さは、例えば、0.1mm以上0.5mm未満であり、好ましくは0.15mm以上0.3mm以下である。摺接部材190の固定部材192と接する位置から、摺接部材190の外周182aと接する位置までの長さは、例えば、15mm40mm以下であり、好ましくは20mm以上35mm以下である。摺接部材190の幅は、例えば、35mm60mm以下であり、好ましくは40mm以上55mm以下である。図示の例では、摺接部材190の幅は、摺接部材190のX軸方向の大きさである。
【0063】
摺接部材190によって回転部材182の外周182aに加えられる力Fは、例えば、0.1N以上19N未満であり、好ましくは5N以上18N以下であり、より好ましくは10N以上14N以下であり、さらにより好ましくは12Nである。力Fは、外周182aを、回転軸Qに向けて付勢する力である。
【0064】
1.4. 作用効果
材料供給装置10では、可塑化部60に材料Pを投入する投入口としての第6開口170bを有し、材料Pを収容する筐体140と、筐体140に設けられ、第6開口170bも上方に位置し、材料Pを第6開口170bに間欠的に供給する供給機構としての回転部材182と、を含む。筐体140は、回転部材182よりも上方において材料Pの収容空間である材料収容空間2を規定し、かつ、材料収容空間2の容積を下方に向けて縮小するように傾斜した傾斜壁152を有する。鉛直方向からみて、回転部材182は、傾斜壁152と少なくとも一部が重なる。
【0065】
そのため、材料供給装置10では、傾斜壁152によって、材料Pの荷重が直接的に回転部材182に加えられないようにすることができ、材料Pの荷重が回転部材182に集中することを抑制できる。これにより、材料Pの詰まりなどによる回転部材182の動作不良を抑制できる。その結果、材料Pの供給不良を抑制できる。
【0066】
材料供給装置10では、モーター186を含み、回転部材182は、モーター186によって、鉛直方向と交差する回転軸Qを中心に回転し、外周182aに凹部183を有する。そのため、材料供給装置10では、凹部183に材料Pを供給し、凹部183に供給された材料Pを、第6開口170bに間欠的に少量ずつ供給できる。
【0067】
材料供給装置10では、筐体140は、傾斜壁152によって材料収容空間2の容積が縮小した狭窄部としての第2開口150bを有し、鉛直方向からみて、第2開口150bの中心C1と第6開口170bの中心C2との間に、回転軸Qが位置する。そのため、材料供給装置10では、第2開口150bからの材料Pを、回転部材182の回転によって、第6開口170bに供給できる。
【0068】
材料供給装置10では、回転軸Qに沿った方向のうち、第2開口150bの中心C1が左に、第6開口170bの中心C2が右に位置する方向から見た場合に、回転部材182は、右回りに回転する。そのため、材料供給装置10では、回転部材182は、凹部183に供給された材料Pを、回転軸Qよりも上方に一度持ち上げることができる。これにより、凹部183に供給された材料Pを、材料Pの自重によって、第6開口170bに供給できる。
【0069】
材料供給装置10では、回転部材182の外周182aに摺接し、回転部材182の外周182aを回転軸Qに向けて付勢する摺接部材190を含む。そのため、材料供給装置10では、凹部183に供給された材料Pが飛散する可能性を小さくすることができる。
【0070】
材料供給装置10では、摺接部材190によって回転部材182の外周182aに加えられる力Fは、0.1N以上19N未満である。材料供給装置10では、力Fが0.1N以上であるため、凹部183に供給された材料Pが飛散する可能性を小さくすることができる。さらに、力Fが19N未満であるため、後述する実験例に示すように、モーター186の負荷を低減できる。さらに、力Fが19N未満であるため、摺接部材190と外周182aとの接触によって発生する騒音を抑制できる。
【0071】
材料供給装置10では、傾斜壁152の水平方向に対する傾斜角θは、15°以上60°以下である。材料供給装置10では、傾斜角θが15°以上であるため、傾斜壁152は、材料Pを滑らせて搬送できる。さらに、傾斜角θが60°以下であるため、材料Pを、筐体140内に一時的に貯留できる。具体的には、材料Pを、第1構造体150内に一時的に貯留できる。
【0072】
材料供給装置10では、筐体140の内壁の少なくとも一部は、MD処理およびフッ素コーティング処理のうちの少なくとも一方の処理が施されている。そのため、材料供給装置10では、筐体140の内壁の少なくとも一部において、材料Pの滑りを向上できる。これにより、材料Pが詰まる可能性を小さくすることができる。
【0073】
なお、上記では、材料Pを間欠的に供給する供給機構として、回転部材182を用いる例について説明したが、供給機構は、回転部材182に限定されない。供給機構は、例えば、材料Pを間欠的に供給する弁であってもよい。
【0074】
1.5. 材料供給装置から供給される材料
材料供給装置10から供給される材料Pは、例えば、熱可塑性を有する材料、金属材料、セラミック材料等の種々の材料を主材料である。ここで、「主材料」とは、射出成形装置100で成形される成形品の形状を形作っている中心となる材料を意味し、成形品において50質量%以上の含有率を占める材料を意味する。上述した材料には、それらの主材料を単体で溶融したものや、主材料とともに含有される一部の成分が溶融してペースト状にされたものが含まれる。
【0075】
熱可塑性を有する材料としては、例えば、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)が挙げられる。
【0076】
熱可塑性樹脂は、汎用エンジニアリングプラスチックであってもよい。汎用エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリアセタール(POM )、ポリアミド(PA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)が挙げられる。
【0077】
熱可塑性樹脂は、スーパーエンジニアリングプラスチックであってもよい。スーパーエンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリサルフォン(PSU)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアリレート(PAR)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が挙げられる。
【0078】
熱可塑性を有する材料は、エラストマーであってもよい。エラストマーとしては、例えば、ポリスチレン系(TPS)、オレフィン/アルケン系(TPO)、ポリ塩化ビニル系(TPVC)、ポリウレタン系(TPU)、ポリエステル系(TPEE)、ポリアミド系(TPAE)が挙げられる。エラストマーは、小さいヤング率および大きい破壊ひずみを有し、隙間に入り込み易い。このようなエラストマーが材料Pであっても、材料供給装置10は、傾斜壁152によって、材料Pの荷重が回転部材182に集中することを抑制できるため、供給不良を抑制できる。
【0079】
熱可塑性を有する材料には、顔料、金属、セラミック、その他に、ワックス、難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤などの添加剤等が混入されていてもよい。熱可塑性を有する材料は、可塑化部60において、フラットスクリュー110の回転と、ヒーター130の加熱と、によって可塑化されて溶融した状態に転化される。このように生成された可塑化材料は、ノズル80から堆積された後、温度の低下によって硬化する。熱可塑性を有する材料は、ガラス転移点以上に加熱されて完全に溶融した状態で、ノズル80から吐出されることが望ましい。
【0080】
可塑化部60では、上述した熱可塑性を有する材料の代わりに、例えば、金属材料が主材料として用いられてもよい。この場合には、金属材料を粉末状にした粉末材料に、可塑化材料の生成の際に溶融する成分が混合されて、可塑化部60に投入されることが望ましい。
【0081】
金属材料としては、例えば、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)やクロム(Cr)、アルミニウム (Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)の単一の金属、もしくはこれらの金属を1つ以上含む合金、また、マルエージング鋼、ステンレス鋼、コバルトクロムモリブデン、チタニウム合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、コバルト合金、コバルトクロム合金が挙げられる。
【0082】
可塑化部60においては、上記の金属材料の代わりに、セラミック材料が主材料として用いられてもよい。セラミック材料としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどの酸化物セラミックや、窒化アルミニウムなどの非酸化物セラミックなどが挙げられる。
【0083】
材料供給装置10から供給される金属材料やセラミック材料の粉末材料は、単一の金属の粉末や合金の粉末、セラミック材料の粉末を、複数種類、混合した混合材料であってもよい。金属材料やセラミック材料の粉末材料は、例えば、上述の熱可塑性樹脂、または、それ以外の熱可塑性樹脂によってコーティングされていてもよい。この場合には、可塑化部60において、粉末材料をコーティングしている熱可塑性樹脂が溶融して、流動性が発現されてもよい。
【0084】
材料供給装置10から供給される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、溶剤を添加することもできる。溶剤としては、例えば、水;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸iso-ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;テトラアルキルアンモニウムアセテート類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;ピリジン、γ-ピコリン、2,6-ルチジン等のピリジン系溶剤;テトラアルキルアンモニウムアセテート(例えば、テトラブチルアンモニウムアセテート等);ブチルカルビトールアセテート等のイオン液体等が挙げられる。
【0085】
その他に、材料供給装置10から供給される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、バインダーが添加されていてもよい。バインダーとしては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂またはその他の合成樹脂、PLA、PA、PPS、PEEKまたはその他の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0086】
2. 三次元造形装置
次に、本実施形態に係る三次元造形装置について、図面を参照しながら説明する。
図8は、本実施形態に係る三次元造形装置200を模式的に示す断面図である。
【0087】
三次元造形装置200は、例えば、
図8に示すように、材料供給装置10と、制御部50と、可塑化部60と、ノズル80と、ステージ210と、位置変更部220と、を含む。三次元造形装置200は、FDM(Fused Deposition Modeling)(登録商標)方式の三次元造形装置である。なお、便宜上、
図8では、材料供給装置10を簡略化して図示している。
【0088】
材料供給装置10は、供給路202を介して、可塑化部60に材料を供給する。可塑化部60は、材料を可塑化して可塑化材料を生成する。
【0089】
ノズル80は、可塑化部60から供給された可塑化材料を、ステージ210に向かって吐出する。具体的には、三次元造形装置200は、ノズル80からステージ210に可塑化材料を吐出させつつ、位置変更部220を駆動して、ノズル80とステージ210との相対的な位置を変化させる。これにより、三次元造形装置200は、ステージ210上に所望の形状の三次元造形物を造形する。
【0090】
ステージ210は、ノズル80の下方に設けられている。図示の例では、ステージ210の形状は、直方体である。ステージ210は、ノズル80から吐出された可塑化材料を支持する。ステージ210は、可塑化材料が堆積される堆積面212を有している。
【0091】
ステージ210の材質は、例えば、アルミニウムなどの金属である。ステージ210は、金属板と、金属板に設けられた密着シートと、で構成されていてもよい。この場合、堆積面212は、密着シートによって構成される。密着シートは、ステージ210と、ノズル80から吐出される可塑化材料と、の密着性を向上できる。
【0092】
ステージ210は、図示はしないが、溝が形成された金属板と、溝を埋めるように設けられた下地層と、で構成されていてもよい。この場合、堆積面212は、下地層によって構成される。下地層の材質は、例えば、可塑化材料と同じである。下地層は、ステージ210と、ノズル80から吐出される可塑化材料と、の密着性を向上できる。
【0093】
位置変更部220は、ステージ210を支持している。位置変更部220は、ノズル80とステージ210との相対的な位置を変更する。図示の例では、位置変更部220は、ステージ210をX軸方向およびY軸方向に移動させることによって、X軸方向およびY軸方向において、ノズル80とステージ210との相対的な位置を変更する。さらに、位置変更部220は、ノズル80をZ軸方向に移動させることによって、Z軸方向において、ノズル80とステージ210との相対的な位置を変更する。
【0094】
位置変更部220は、例えば、第1電動アクチュエーター222と、第2電動アクチュエーター224と、第3電動アクチュエーター226と、を有している。第1電動アクチュエーター222は、ステージ210をX軸方向に移動させる。第2電動アクチュエーター224は、ステージ210をY軸方向に移動させる。第3電動アクチュエーター226は、ノズル80をZ軸方向に移動させる。第3電動アクチュエーター226は、例えば、可塑化部60のスクリューケース62を支持している。
【0095】
なお、位置変更部220は、ノズル80とステージ210との相対的な位置を変更できれば、その構成は、特に限定されない。位置変更部220は、例えば、ステージ210をZ軸方向に移動させ、ノズル80をX軸方向およびY軸方向に移動させる構成であってもよいし、ステージ210またはノズル80をX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向に移動させる構成であってもよい。
【0096】
3. 実験例
回転部材に摺接する摺接部材として板ばねを用いて、回転部材を回転させるモーターの負荷に関する実験を行った。
【0097】
板ばねは、ステンレス鋼製の板ばねを用いた。板ばねの固定部材と接する位置から、板ばねの回転部材外周と接する位置までの長さを、28mmとした。板ばねの幅を、48mmとした。板ばねは、厚さが、0.2mmのものと、0.5mmのものと、の2つを用意した。
【0098】
材料として、東レ株式会社製のABS樹脂「500-322」を用いた。ABS樹脂の搬送量を300ccとした。回転部材を回転させるモーターの回転数を1.2rpmとした。そして、板ばねの厚さが0.2mmと0.5mmとの場合で、モーターにかかるモーター負荷率を算出した。モーター負荷率は、モーターが異常をきたすトルク値を100%とした場合の、モーターのトルク値の割合である。
【0099】
図9は、モーターの駆動時間と、モーター負荷率と、の関係を示すグラフである。
図9に示すように、板ばねの厚さが0.2mmの場合は、板ばねの厚さが0.5mmの場合よりも、モーター負荷率が小さく安定していた。板ばねの厚さが0.2mmの場合、モーター負荷率の最大値は、9.4%であった。板ばねの厚さが0.5mmの場合、モーター負荷率の最大値は、17.0%であった。
【0100】
板ばねによって回転部材外周に加えられる力Fを、下記式(1)に基づいて計算した。板ばねの厚さが0.2mmの場合は、F=12Nであった。板ばねの厚さが0.5mmの場合は、F=19Nであった。したがって、力Fを19N未満とすることにより、モーター負荷率を小さくし、かつモーターの駆動の安定化を図れることがわかった。
【0101】
【0102】
なお、上記式(1)において、δは、板ばねの回転部材外周と接する位置における撓み量である。Lは、板ばねの固定部材と接する位置から、板ばねの回転部材外周と接する位置までの長さである。Eは、板ばねの縦弾性係数である。Iは、板ばねの断面二次モーメントである。
【0103】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0104】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成できる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0105】
上述した実施形態および変形例から以下の内容が導き出される。
【0106】
材料供給装置の一態様は、
材料を可塑化して可塑化材料を生成する可塑化部に、前記材料を供給する材料供給装置であって、
前記可塑化部に前記材料を投入する投入口を有し、前記材料を収容する筐体と、
前記筐体内に設けられ、前記投入口よりも上方に位置し、前記材料を前記投入口に間欠的に供給する供給機構と、
を含み、
前記筐体は、前記供給機構よりも上方において前記材料の収容空間を規定し、かつ、前記収容空間の容積を下方に向けて縮小するように傾斜した傾斜壁を有し、
鉛直方向からみて、前記供給機構は、前記傾斜壁と少なくとも一部が重なる。
【0107】
この材料供給装置によれば、材料の詰まりなどによる供給機構の動作不良を抑制できる。その結果、材料の供給不良を抑制できる。
【0108】
材料供給装置の一態様において、
モーターを含み、
前記供給機構は、前記モーターによって、鉛直方向と交差する回転軸を中心に回転する回転部材であり、
前記回転部材は、外周に凹部を有してもよい。
【0109】
この材料供給装置によれば、凹部に材料を供給し、凹部に供給された材料を、投入口に間欠的に少量ずつ供給できる。
【0110】
材料供給装置の一態様において、
前記筐体は、前記傾斜壁によって前記収容空間の容積が縮小した狭窄部を有し、
鉛直方向からみて、前記狭窄部の中心と前記投入口の中心との間に、前記回転軸が位置してもよい。
【0111】
この材料供給装置によれば、狭窄部からの材料を、回転部材の回転によって、投入口に供給できる。
【0112】
材料供給装置の一態様において、
前記回転軸に沿った方向のうち、前記狭窄部の中心が左に、前記投入口の中心が右に位置する方向から見た場合に、前記回転部材は、右回りに回転してもよい。
【0113】
この材料供給装置によれば、凹部に供給された材料を、材料の自重によって、投入口に供給できる。
【0114】
材料供給装置の一態様において、
前記回転部材の外周に摺接し、前記回転部材の外周を前記回転軸に向けて付勢する摺接部材を含んでもよい。
【0115】
この材料供給装置によれば、凹部に位置する材料が飛散する可能性を小さくすることができる。
【0116】
材料供給装置の一態様において、
前記摺接部材によって前記回転部材の外周に加えられる力は、0.1N以上19N未満であってもよい。
【0117】
この材料供給装置によれば、凹部に位置する材料が飛散する可能性を小さくすることができ、さらに、モーターの負荷を低減できる。
【0118】
材料供給装置の一態様において、
前記傾斜壁の水平方向に対する傾斜角は、15°以上60°以下であってもよい。
【0119】
この材料供給装置によれば、傾斜壁は、材料を滑らせて搬送でき、さらに、材料を、筐体内に一時的に貯留できる。
【0120】
材料供給装置の一態様において、
前記筐体の内壁の少なくとも一部には、マイクロディンプル処理およびフッ素コーティング処理のうちの少なくとも一方の処理が施されていてもよい。
【0121】
この材料供給装置によれば、筐体の内壁の少なくとも一部において、材料の滑りを向上できる。
【0122】
可塑化装置の一態様は、
前記材料供給装置の一態様と、
前記可塑化部と、
を含む。
【符号の説明】
【0123】
2…材料収容空間、4…材料流路、10…材料供給装置、20…射出部、30…型部、32…成形型、34…キャビティー、36…可動型、38…固定型、40…型締部、42…型駆動部、44…ボールねじ部、50…制御部、60…可塑化部、62…スクリューケース、64…駆動モーター、66…シャフト、70…射出機構、72…シリンダー、74…プランジャー、76…プランジャー駆動部、80…ノズル、82…ノズル孔、100…射出成形装置、102…可塑化装置、110…フラットスクリュー、111…モーター側面、112…溝形成面、113…接続面、114…第1溝、115…中央部、116…接続部、117…材料導入部、120…バレル、122…対向面、124…第2溝、126…連通孔、130…ヒーター、140…筐体、150…第1構造体、150a…第1開口、150b…第2開口、152…傾斜壁、154…第1壁、156…第2壁、158…第3壁、160…第2構造体、160a…第3開口、160b…第4開口、162…第1支持部材、164…受部、166…被摺接部、168…上板部材、170…第3構造体、172…第4壁、174…第5壁、180…回転機構、182…回転部材、182a…外周、183…凹部、184…軸部材、186…モーター、187…板状部材、188…第2支持部材、190…摺接部材、192…固定部材、200…三次元造形装置、202…供給路、210…ステージ、212…堆積面、220…位置変更部、222…第1電動アクチュエーター、224…第2電動アクチュエーター、226…第3電動アクチュエーター