(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108327
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】全固体電池、及び全固体電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20240805BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240805BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20240805BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240805BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240805BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20240805BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240805BHJP
H01M 4/1395 20100101ALI20240805BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20240805BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0562
H01M10/0585
H01M4/38 Z
H01M4/525
H01M4/134
H01M4/62 Z
H01M4/1395
H01M50/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012636
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】藤井 正寛
(72)【発明者】
【氏名】四谷 真一
【テーマコード(参考)】
5H011
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011CC10
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL11
5H029AM12
5H029BJ12
5H050AA07
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB11
5H050DA09
5H050DA13
5H050EA02
5H050EA12
5H050FA02
5H050FA18
(57)【要約】
【課題】信頼性を向上させることが可能な全固体電池、及び全固体電池の製造方法を提供する。
【解決手段】正極集電体100と、負極電極200と、正極集電体100と負極電極200との間に配置された活物質複合体310と、を備え、負極電極200は、シリコンナノワイヤと、シリコンナノワイヤの表面に被覆されたリチウム膜と、を有し、活物質複合体310は、コバルト酸リチウムで構成された活物質形成体320と、活物質形成体320の周囲を覆う第1固体電解質330と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体と、
負極電極と、
前記正極集電体と前記負極電極との間に配置された活物質複合体と、
を備え、
前記負極電極は、シリコンナノワイヤと、前記シリコンナノワイヤの表面に被覆されたリチウム膜と、を有し、
前記活物質複合体は、コバルト酸リチウムで構成された活物質形成体と、前記活物質形成体の周囲を覆う第1固体電解質と、を有する、全固体電池。
【請求項2】
請求項1に記載の全固体電池であって、
前記活物質複合体は、第2固体電解質を介して、前記負極電極と接合されている、全固体電池。
【請求項3】
請求項1に記載の全固体電池であって、
前記負極電極の界面には、金とリチウムとの合金膜が配置されている、全固体電池。
【請求項4】
請求項1に記載の全固体電池であって、
前記正極集電体と前記負極電極と前記活物質複合体とが、順に複数積層された積層体を備え、
前記積層体は、アルミラミネート外装材で覆われている、全固体電池。
【請求項5】
活物質複合体を形成する工程と、
シリコン基板の表面にMACE法を用いてシリコンナノワイヤを形成する工程と、
前記シリコンナノワイヤの表面にリチウム膜を成膜して負極電極を形成する工程と、
正極集電体を準備する工程と、
前記正極集電体と前記活物質複合体と前記負極電極とを接合する工程と、
を有する、全固体電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池、及び全固体電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ケイ素ナノワイヤの構成と、エッチング液を用いたケイ素ナノワイヤの製造方法と、が開示されている。ケイ素ナノワイヤは、固体リチウム二次電池などのエネルギー蓄積デバイスに適用される。
【0003】
特許文献2には、リチウム二次電池を構成する電極複合体の構成と、電極複合体の製造方法と、が開示されている。リチウム二次電池は、電解質をガラス状態から晶化して製造することにより、高効率かつ高容量にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6383412号公報
【特許文献2】特許第6624892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、ケイ素合金の微細構造内に、ケイ素のナノ構造を形成する必要があったり、ナノワイヤの方向や大きさなどが結晶粒界ごとに不均一となったりするため、電池容量の最大化と耐久性との両立が難しいという課題がある。また、特許文献2に記載の構成では、電池の充放電を繰り返すことに伴い、電池容量が低下したり内部抵抗が増加したりするという課題がある。つまり、特許文献1に記載のナノワイヤを、特許文献2に記載の電極複合体に適用しても、充放電に対する耐久性を向上させることは難しいという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
全固体電池は、正極集電体と、負極電極と、前記正極集電体と前記負極電極との間に配置された活物質複合体と、を備え、前記負極電極は、シリコンナノワイヤと、前記シリコンナノワイヤの表面に被覆されたリチウム膜と、を有し、前記活物質複合体は、コバルト酸リチウムで構成された活物質形成体と、前記活物質形成体の周囲を覆う第1固体電解質と、を有する。
【0007】
全固体電池の製造方法は、活物質複合体を形成する工程と、シリコン基板の表面にMACE法を用いてシリコンナノワイヤを形成する工程と、前記シリコンナノワイヤの表面にリチウム膜を成膜して負極電極を形成する工程と、正極集電体を準備する工程と、前記正極集電体と前記活物質複合体と前記負極電極とを接合する工程と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】負極電極を構成するシリコン基板の構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、
図1を参照しながら、全固体電池1000の構成を説明する。
【0010】
図1に示すように、全固体電池1000は、例えば、ウエアラブル機器などに用いられ、円盤状に形成された、リチウムイオン電池などの全固体二次電池である。なお、全固体電池1000は、円盤状であることに限定されず、多角形の盤状であってもよい。
【0011】
全固体電池1000は、例えば、固体電解質300を挟んで正極集電体100と負極電極200とが配置されている。なお、正極集電体100、負極電極200、固体電解質300の積層体を、電池セル1000aと称する。
図1に示す全固体電池1000は、3つの電池セル1000aが接続されて構成されている。なお、電池セル1000a単体でも、電池として機能する。
【0012】
全固体電池1000は、積層された3つの電池セル1000aが、アルミラミネート外装材であるアルミラミネートフィルム400で覆われて構成されている。アルミラミネートフィルム400は、ポリアミド系樹脂などの絶縁性を有する基材に、表面(包装時に外面となる面)側にアルミ箔、内面(包装時に内面となる面)側に接合層などが形成されている。
【0013】
次に、
図2~
図5を参照しながら、全固体電池1000、即ち、電池セル1000aの構成を具体的に説明する。
【0014】
図2に示すように、電池セル1000aは、正極集電体100と、負極電極200と、正極集電体100と負極電極200との間に配置された固体電解質300と、を備えている。
【0015】
負極電極200は、シリコン基板210を備えている。
図3に示すように、シリコン基板210は、シリコンからなる基材211と、基材211の一面側に配置されたシリコンナノワイヤ212と、を有する。
図4に示すように、シリコンナノワイヤ212は、シリコンナノワイヤ212aと、シリコンナノワイヤ212aの表面に被覆されたリチウム膜212bと、を有する。
【0016】
固体電解質300は、活物質複合体310を備える。活物質複合体310は、コバルト酸リチウムで構成された活物質形成体320と、活物質形成体320の周囲を覆う第1固体電解質330と、を有する。第1固体電解質330は、例えば、ニオブ酸リチウムランタンジルコニウムである。言い換えれば、活物質形成体320は、第1固体電解質330に接して形成されている。また、固体電解質300は、活物質複合体310に加え、第2固体電解質340を有する。
【0017】
正極集電体100は、活物質複合体310の一面(一方の面)310aに接して設けられている。つまり、正極集電体100は、一面310aで露出する活物質形成体320に接している。正極集電体100は、活物質形成体320が正極活物質で構成されており、正極として機能する。
【0018】
正極集電体100の材料としては、例えば、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)およびパラジウム(Pd)からなる群から選ばれる1種の金属(金属単体)や、この群から選ばれる2種以上の金属元素を含む合金等が挙げられる。正極集電体100と、活物質複合体310とを含めて、電極複合体301と称する(
図5参照)。
【0019】
図5に示すように、活物質形成体320は、単結晶で構成された活物質粒子321が複数個、三次元的に連結して形成された形成体である。活物質粒子321は、遷移金属酸化物としてのリチウム複酸化物で構成される活物質を含む。
【0020】
リチウム複酸化物としては、例えば、LiCoO2(コバルト酸リチウム)、LiNiO2、LiMn2O4、LiNi0.5Mn1.5O4、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、Li2Mn2O3、LiNi0.8Co0.16Al0.04O2、LiFePO4、Li2FeP2O7、LiMnPO4、LiFeBO3、Li3V2(PO4)3、Li2CuO2、LiFeF3、Li2FeSiO4、Li2MnSiO4等が挙げられる。
【0021】
これらの中でも、リチウムと、コバルト、マンガンおよびニッケルのうちの少なくとも1種とを含む化合物を主材料として含有することが好ましく、具体的には、コバルト酸リチウム、ニッケル・マンガン・コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、およびニッケル・コバルト・アルミニウム酸リチウムからなる群から選択される化合物を主成分として含むことが好ましい。
【0022】
このようなリチウム複酸化物を含むことで、活物質粒子321は、複数の活物質粒子321同士で電子の受け渡しを行い、活物質粒子321と第1固体電解質330との間でリチウムイオンの受け渡しを行い、活物質としての機能を発揮する。
【0023】
第1固体電解質330は、リチウムイオン伝導性を有し、室温でガラス化している固体電解質で構成される。第1固体電解質330は、活物質形成体320と接している。活物質複合体310は、他面310b側において、第2固体電解質340を介して、負極電極200に接する。他面310b側では、活物質形成体320が露出することなく、第1固体電解質330が単独で露出するように設けられている。これにより、活物質形成体320と負極電極200との短絡を防止することができる。
【0024】
第2固体電解質340は、活物質複合体310と負極電極200との間に配置されている。このように、第2固体電解質340を介して活物質複合体310と負極電極200とが接合されているので、活物質複合体310と負極電極200との密着性が向上し、電池の内部抵抗を下げることができる。
【0025】
負極電極200の界面、即ち、シリコンナノワイヤ212と固体電解質300との間には、金(Au)とリチウム(Li)との合金膜220が配置されている。このように合金膜220を配置することにより、シリコンナノワイヤ212を形成する際、触媒金属として機能させる膜を金とした場合、リチウムイオンの部分的な析出を抑えることが可能となり、リチウムイオンの析出を均一化させることができる。
【0026】
次に、
図6~
図16を参照しながら、全固体電池1000の製造方法を具体的に説明する。
【0027】
図6に示す工程では、正極多孔体で構成されたグリーンシート320Aを形成し、グリーンシート320Aから、活物質形成体320となる前の多孔性正極320aの形状に、例えば、プレス加工により打ち抜く。
【0028】
図7及び
図8に示す工程では、グローブボックス内のドライエア中において、多孔性正極320aの空隙に、第1固体電解質330の前駆体溶液330aを含侵して、これを焼成して結晶化する。以上により、活物質複合体310が形成される。
【0029】
第1固体電解質330の材料は、例えば、前述した、リチウムイオン伝導性を備える、C、SiまたはBを含むリチウム酸化物が挙げられ、Bを含むリチウム酸化物(Li-B-OまたはLi-B-Oの構成元素を含む材料)が好ましく用いられる。これにより、得られる第1固体電解質330のイオン伝導性を優れたものとすることができるとともに、第1固体電解質330の前駆体溶液330aに、多孔性正極320aを確実に溶解させることができる。
【0030】
図9に示す工程では、真空中において、活物質複合体310の表面に、スパッタ法を用いて第2固体電解質340を成膜する。
【0031】
次に、負極電極200側の製造方法を説明する。
【0032】
図10に示す工程では、シリコン基板210の上に、金(Au)膜230aを成膜する。具体的には、金膜230aは、スパッタ法、蒸着法や置換めっき法等によりシリコン基板210の上に成膜する。金膜230aは、シリコン基板210に、シリコンナノワイヤ212aを形成するMACE(メタルアシステッドケミカルエッチング)の触媒膜として機能する。また、この金膜230aは、MACE後もシリコンナノワイヤ212a表面や基材211のシリコンナノワイヤ212a側の面に残留し、リチウム(Li)のシリコンナノワイヤ212aへの蒸着によりリチウムとの合金膜220を形成して、全固体電池1000の充放電時のリチウムイオンの析出を均一化する膜として機能する合金膜220の材料となる。
【0033】
次に、図示はしないが、金膜230aの上にアルミニウム膜を成膜し、アルミニウム膜に陽極酸化法を用いて細孔を形成する。
【0034】
図11に示す工程では、細孔230cを有する金膜パターン230bを形成する。具体的には、上記した細孔を有するアルミ陽極酸化膜をマスクとし、アルゴン(Ar)を用いたスパッタ法を用いて、金膜230aをエッチングする。これにより、金膜230aには、細孔230cの形状が反映された金膜パターン230bが形成される。
【0035】
図12に示す工程では、MACE加工を行って、シリコンナノワイヤ212aを形成する。MACE加工は、フッ酸と過酸化水素水を適量に混合した液を、室温で浸漬するだけで行える簡単なエッチング方法である。シリコンナノワイヤ212aの長さは、浸漬時間を調整することにより、容易に制御することができる。
【0036】
MACE法を用いることにより、直径数nm~100nmで、長さ5μm程度の高いアスペクト比のシリコンナノワイヤ212aを形成することができる。
【0037】
図13に示す工程では、アルゴン(Ar)雰囲気の真空中において、シリコンナノワイヤ212aの表面に、リチウム(Li)膜を、蒸着法を用いて形成する。以上により、シリコン基板210が完成する。
【0038】
図14に示す工程では、固体電解質300の一面310a側に、正極集電体100を形成する。更に、固体電解質300の他面310c側に、負極電極200を接合する。
【0039】
具体的には、別体として準備した正極集電体100を、固体電解質300の一面310a側に接合してもよく、固体電解質300の一面310a側に、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などを用いて正極集電体100を成膜してもよい。
【0040】
また、固体電解質300の他面310c側に、金とリチウムとの合金膜220を介して、シリコン基板210、即ち、負極電極200を圧接して接合する。以上により、電池セル1000aが完成する。
【0041】
図15に示す工程では、電池セル1000aを積層し、引き出し電極501,502を介して、電池セルを並列接続させる。具体的には、上下に重なる電池セル1000aは、表裏逆となって積層されている。全固体電池1000は、およそ14層以上の電池セル1000aを用いることにより、1.5V程度の電圧を得ることができる。
【0042】
図16に示す工程では、積層された複数の電池セル1000aを、アルミラミネートフィルム400によって包装する。以上により、全固体電池1000が完成する。
【0043】
図17及び
図18は、実施形態の一例である、全固体電池1001において、電池セル1110の電極取り出し方法、電池セル1110の固定方法、電池セル1110の包装方法を示している。
【0044】
図17に示すように、ケース1130に重畳して収容された、電池セル1110、正極基板(図示せず)、負極基板1124は、ケース1130の側壁1131,1132,1133、凸部1140、底部(図示せず)によって保持される。側壁1131,1132,1133は、切欠き1150を有し、この切欠き1150によって、側壁1131,1132に分割されている。
【0045】
図18に示すように、全固体電池1001は、2枚のアルミラミネートフィルム1161,1162を用いて、上方と下方とが覆われている。
【0046】
アルミラミネートフィルム1161,1162は伸縮性を有している。そのため、アルミラミネートフィルム1161は、全固体電池1001の側面(ケース1130の側壁)、全固体電池1001の上方の面などの全固体電池1001の外形に沿って、全固体電池1001の上方を覆っている。アルミラミネートフィルム1162は、全固体電池1001の下方の面を覆っている。アルミラミネートフィルム1161,1162は、全固体電池1001の下方の面から庇状にせり出した領域で、内面同士が接合されて一体に形成されている。
【0047】
引き出し電極として機能する、正極タブ1122aおよび負極タブ1124aは、上記の庇状にせり出した領域で、アルミラミネートフィルム1161,1162の間から外側に引き出されている。アルミラミネートフィルム1161,1162は、正極タブ1122aおよび負極タブ1124aに密着し、上記の庇状にせり出した領域で一体となっている。そのため、全固体電池1001は、正極タブ1122aおよび負極タブ1124aを除いて、アルミラミネートフィルム1161,1162によって密封されている。全固体電池1001は、アルミラミネートフィルム1161,1162で包装されることにより、水分やガスなどの影響を低減することができる。
【0048】
以上述べたように、本実施形態の全固体電池1000は、正極集電体100と、負極電極200と、正極集電体100と負極電極200との間に配置された活物質複合体310と、を備え、負極電極200は、シリコンナノワイヤ212aと、シリコンナノワイヤ212aの表面に被覆されたリチウム膜212bと、を有し、活物質複合体310は、コバルト酸リチウムで構成された活物質形成体320と、活物質形成体320の周囲を覆う第1固体電解質330と、を有する。
【0049】
この構成によれば、負極電極200が、リチウム膜212bで被覆されたシリコンナノワイヤ212で構成されているので、充放電を繰り返すことによって発生する膨張収縮による応力を、シリコンナノワイヤ212で吸収することが可能となり、充放電時における負極電極200が破損することを抑えることができる。よって、全固体電池1000の耐久性を向上させることができる。加えて、負極電極200がシリコンナノワイヤ212で構成されているため、負極電極200の表面積を増やすことが可能となり、充放電の容量を大きくすることができる。よって、全固体電池1000の寿命を延ばすことができる。また、電池セル1000aを小型にできるので、電池セル1000aを積層した場合でも、全固体電池1000が大型化することを抑えることができる。
【0050】
また、本実施形態の全固体電池1000において、活物質複合体310は、第2固体電解質340を介して、負極電極200と接合されていることが好ましい。この構成によれば、第2固体電解質340を介して活物質複合体310と負極電極200とが接合されているので、活物質複合体310と負極電極200との密着性が向上し、全固体電池1000の内部抵抗を下げることができる。
【0051】
また、本実施形態の全固体電池1000において、負極電極200の界面には、金とリチウムとの合金膜220が配置されていることが好ましい。この構成によれば、金とリチウムとの合金膜220が配置されているので、MACEに用いる触媒金属として機能させる膜を金とした場合、シリコンナノワイヤ212表面に残留する微量の金を利用してリチウムの蒸着によりAu/Li合金を負極界面となるシリコンナノワイヤ表面に形成して、全固体電池1000の繰り返し充放電時のリチウムイオンの部分的な析出を抑えることが可能となり、リチウムイオンの析出を均一化させ更に応力を緩和し、充放電の繰り返しによる電池容量の低下を防止することができる。
【0052】
また、本実施形態の全固体電池1000において、正極集電体100と負極電極200と活物質複合体310とが、順に複数積層された積層体、即ち、電池セル1000aを備え、積層体は、アルミラミネートフィルム400で覆われていることが好ましい。この構成によれば、上記構成の積層体がアルミラミネートフィルム400で覆われているので、所定の電池容量を有する全固体電池1000として、取り扱いやすくすることができる。
【0053】
また、本実施形態の全固体電池1000の製造方法は、活物質複合体310を形成する工程と、シリコン基板210の表面にMACE法を用いてシリコンナノワイヤ212aを形成する工程と、シリコンナノワイヤ212aの表面にリチウム膜212bを成膜して負極電極200を形成する工程と、正極集電体100を準備する工程と、正極集電体100と活物質複合体310と負極電極200とを接合する工程と、を有する。
【0054】
この方法によれば、負極電極200を、リチウム膜212bで被覆されたシリコンナノワイヤ212で形成するので、充放電によって発生する膨張収縮による応力を、シリコンナノワイヤ212で吸収することが可能となり、充放電時における負極電極200が破損することを抑えることができる。よって、全固体電池1000の耐久性を向上させることができる。加えて、負極電極200がシリコンナノワイヤ212で構成されているため、負極電極200の表面積を増やすことが可能となり、充放電の容量を大きくすることができる。よって、全固体電池1000の寿命を延ばすことができる。
【符号の説明】
【0055】
100…正極集電体、200…負極電極、210…シリコン基板、211…基材、212…シリコンナノワイヤ、212a…シリコンナノワイヤ、212b…リチウム膜、220…合金膜、230a…金膜、230b…金膜パターン、230c…細孔、300…固体電解質、301…電極複合体、310…活物質複合体、310a…一面、310b…他面、310c…他面、320…活物質形成体、320a…多孔性正極、320A…グリーンシート、321…活物質粒子、330…第1固体電解質、330a…前駆体溶液、340…第2固体電解質、400…アルミラミネートフィルム、501,502…引き出し電極、1000…全固体電池、1000a…電池セル、1001…全固体電池、1110…電池セル、1122a…正極タブ、1124…負極基板、1124a…負極タブ、1130…ケース、1140…凸部、1161,1162…アルミラミネートフィルム。