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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108337
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】乗員膝部サポート装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/02 20060101AFI20240805BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20240805BHJP
   A47C 7/14 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
B60N2/02
B60N2/90
A47C7/14 A
A47C7/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012646
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】長澤 勇
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084BA00
3B087AA01
3B087BD15
3B087BD19
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】低筋力者が運転する場合にペダルの踏み替えに適した着座姿勢を維持することができる乗員膝部サポート装置を提供する。
【解決手段】乗員Pの腰部P1及び大腿部P2が乗せられる座面部10を有するシート1と、座面部の前方側に配置されるアクセルペダル41及びブレーキペダル42とを有する車両に設けられる乗員膝部サポート装置100を、座面部の側部に設けられた格納状態から座面部に対して前方側及び上方側に張り出し乗員の膝部外側面をサポートするサポート状態へ推移する膝部外側面サポート部材110と、座面部の前端部近傍に設けられ、乗員の膝部下面から離間した格納状態から、乗員の膝部下面をサポートするサポート状態へ推移する膝部下面サポート部材120と、膝部外側面サポート部材及び膝部下面サポート部材を格納状態からサポート状態へ推移させる駆動部130とを備える構成とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の腰部及び大腿部が乗せられる座面部を有するシートと、
前記シートの前記座面部の前方側に配置されるアクセルペダル及びブレーキペダルと
を有する車両に設けられる乗員膝部サポート装置であって、
前記座面部の側部に設けられた格納状態から前記座面部に対して前方側及び上方側に張り出し前記乗員の膝部外側面をサポートするサポート状態へ推移する膝部外側面サポート部材と、
前記座面部の前端部近傍に設けられ、前記乗員の膝部下面から離間した格納状態から、前記乗員の膝部下面をサポートするサポート状態へ推移する膝部下面サポート部材と、
前記膝部外側面サポート部材及び前記膝部下面サポート部材を前記格納状態から前記サポート状態へ推移させる駆動部と
を備えることを特徴とする乗員膝部サポート装置。
【請求項2】
前記アクセルペダルの踏面に対する前記乗員の足部の傾斜を検出する足部傾斜検出部を備え、
前記駆動部は、前記乗員の足部の前記傾斜の検出に応じて、前記膝部外側面サポート部材及び前記膝部下面サポート部材を前記格納状態から前記サポート状態へ推移させること
を特徴とする請求項1に記載の乗員膝部サポート装置。
【請求項3】
前記足部傾斜検出部は、前記アクセルペダルの踏面における踏力分布を検出する踏力分布センサを有すること
を特徴とする請求項2に記載の乗員膝部サポート装置。
【請求項4】
前記乗員が前記膝部外側面サポート部材及び前記膝部下面サポート部材の操作を行う操作部を有し、
前記駆動部は、前記操作部からの操作入力に応じて前記膝部外側面サポート部材及び前記膝部下面サポート部材を前記格納状態と前記サポート状態との間で推移させること
を特徴とする請求項1に記載の乗員膝部サポート装置。
【請求項5】
乗員の腰部及び大腿部が乗せられる座面部を有するシートと、
前記シートの前記座面部の前方側に配置されるアクセルペダル及びブレーキペダルと
を有する車両に設けられる乗員膝部サポート装置であって、
前記アクセルペダルの踏面に対する前記乗員の足部の傾斜を検出する足部傾斜検出部と、
前記乗員の足部の前記傾斜の検出に応じて、前記座面部の側部に設けられた格納状態から前記座面部から前方側及び上方側に張り出し前記乗員の膝部外側面をサポートするサポート状態へ推移する膝部外側面サポート部材と、前記座面部の前端部近傍に設けられ、前記乗員の大腿部下面から離間した格納状態から前記乗員の膝部下面をサポートするサポート状態へ推移する膝部下面サポート部材との少なくとも一方を、前記格納状態から前記サポート状態へ推移させる駆動部と
を備えることを特徴とする乗員膝部サポート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに着座した乗員の膝部を支持する乗員膝部サポート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に設けられるシート等に関する技術として、特許文献1には、シートクッションと、シートバックと、変更量が大きい大可変部と小さい小可変部を含む複数の可変部を有し、該可変部によってシート面形状を変更するアクチュエータと、車両状態に関する情報又は乗員からの操作に関する情報を検出する検出手段と、乗員が重視すると予測されるシート面の状態を判定する予測手段と、予測手段の判定に基づき、シート面を乗員が重視すると予測される状態に変更する制御手段を備えたシートが記載されている。
また、アクセル開度、加速G、横Gの増大に応じて、クッションサイドサポート部が突出した状態となり、乗員の身体が横方向から確実に支持されることが記載されている。
特許文献2には、車両用座席装置において、運転時に伴う各種操作ペダルの踏込時に、腿部裏面が座席の腿サポート部に強く圧迫されることを防止するため、座面部の前部に左右に並んだ状態で配置された第1腿サポート部、第2腿サポート部を、先端が下方向に揺動可能に設けるとともに、各腿サポート部を上方に付勢することが記載されている。
特許文献3には、ドライバの体格に拘らずアクセルワークで右足の上腿が座面から浮き上がらないシートとして、シートの座面を左右方向に第1の部分と第2の部分とに分割し、第1、第2の部分を独立して昇降させる昇降手段を設けたものが記載されている。
特許文献4には、シートクッションに着座した乗員の膝部側面を適切にサポートするため、車両用シートには、シートクッションの車両幅方向両端部に、乗員の膝部をサポートするニーサポート装置が設けられているものが記載されている。ニーサポート装置は、乗員の膝部側面をサポートするニーサポート部と、ニーサポート部を支持する支持部と、支持部を回転可能に支持する軸部とを備え、ニーサポート部をシートクッションの内部に格納する格納装置が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3551453号
【特許文献2】実開昭61-179039号公報
【特許文献3】特開平11- 48838号公報
【特許文献4】特開2010-105604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば高齢者や運転に不慣れな人が自動車を運転する際に、アクセルペダルとブレーキペダルの踏み間違いで危険な状態に陥るケースが発生している。
このようなペダルの踏み間違いの要因の一つとして、脚部の筋力が低い低筋力者の場合には、膝が外側に倒れるように脚部が傾斜することが挙げられる。
このような低筋力者特有の着座姿勢となってしまうと、通常は脛とふくらはぎの筋肉によって行えるアクセルペダルとブレーキペダルとの踏み替えを、大腿部の筋肉も利用しないとできなくなってしまう。このとき、大腿部の筋力も不十分である場合には、アクセルペダルとブレーキペダルの踏み替えに支障が生じることが懸念される。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、低筋力者が運転する場合にペダルの踏み替えに適した着座姿勢を維持することができる乗員膝部サポート装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明の一態様に係る乗員膝部サポート装置は、乗員の腰部及び大腿部が乗せられる座面部を有するシートと、前記シートの前記座面部の前方側に配置されるアクセルペダル及びブレーキペダルとを有する車両に設けられる乗員膝部サポート装置であって、前記座面部の側部に設けられた格納状態から前記座面部に対して前方側及び上方側に張り出し前記乗員の膝部外側面をサポートするサポート状態へ推移する膝部外側面サポート部材と、前記座面部の前端部近傍に設けられ、前記乗員の膝部下面から離間した格納状態から、前記乗員の膝部下面をサポートするサポート状態へ推移する膝部下面サポート部材と、前記膝部外側面サポート部材及び前記膝部下面サポート部材を前記格納状態から前記サポート状態へ推移させる駆動部とを備えることを特徴とする。
これによれば、乗員が低筋力者である場合には、膝部外側面サポート部材によって膝部外側面をサポートするとともに、膝部下面サポート部材によって膝部下面をサポートすることにより、膝部が外側に振り出される方向の脚部の傾斜を防止し、膝部を適切な位置に保持することができる。
これにより、アクセルペダルとブレーキペダルの踏み替えを主に脛部及び足部の動きによって行うことが可能となり、大腿部への負担が軽減されることで、ペダルを踏み間違えるリスクを軽減することができる。
また、低筋力者が運転する場合以外の場合には、膝部外側面サポート部材及び膝部下面サポート部材を格納状態とすることにより、乗降性が損なわれたり、運転中に圧迫感を受けることがなく、車両の利便性を確保することができる。
【0006】
本発明において、前記アクセルペダルの踏面に対する前記乗員の足部の傾斜を検出する足部傾斜検出部を備え、前記駆動部は、前記乗員の足部の前記傾斜の検出に応じて、前記膝部外側面サポート部材及び前記膝部下面サポート部材を前記格納状態から前記サポート状態へ推移させる構成とすることができる。
これによれば、アクセルペダルに対する乗員の足部の傾斜を検出した場合に、自動的に膝部外側面サポート部材及び膝部下面サポート部材をサポート状態へ推移させることにより、利便性を向上するとともに、適切に低筋力者の運転支援を行うことができる。
この場合、前記足部傾斜検出部は、前記アクセルペダルの踏面における踏力分布を検出する踏力分布センサを有する構成とすることができる。
これによれば、簡単な構成により適切に足部の傾斜を検出し、上述した効果を得ることができる。
【0007】
本発明において、前記乗員が前記膝部外側面サポート部材及び前記膝部下面サポート部材の操作を行う操作部を有し、前記駆動部は、前記操作部からの操作入力に応じて前記膝部外側面サポート部材及び前記膝部下面サポート部材を前記格納状態と前記サポート状態との間で推移させる構成とすることができる。
これによれば、膝部外側面サポート部材及び膝部下面サポート部材の状態を、乗員の意図に忠実に切り替えることが可能となる。
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明の他の一態様に係る乗員膝部サポート装置は、乗員の腰部及び大腿部が乗せられる座面部を有するシートと、前記シートの前記座面部の前方側に配置されるアクセルペダル及びブレーキペダルとを有する車両に設けられる乗員膝部サポート装置であって、前記アクセルペダルの踏面に対する前記乗員の足部の傾斜を検出する足部傾斜検出部と、前記乗員の足部の前記傾斜の検出に応じて、前記座面部の側部に設けられた格納状態から前記座面部から前方側及び上方側に張り出し前記乗員の膝部外側面をサポートするサポート状態へ推移する膝部外側面サポート部材と、前記座面部の前端部近傍に設けられ、前記乗員の大腿部下面から離間した格納状態から前記乗員の膝部下面をサポートするサポート状態へ推移する膝部下面サポート部材との少なくとも一方を、前記格納状態から前記サポート状態へ推移させる駆動部とを備えることを特徴とする。
これによれば、アクセルペダルに対する乗員の足部の傾斜を検出した場合に、自動的に膝部外側面サポート部材と膝部下面サポート部材との少なくとも一方をサポート状態へ推移させることにより、膝部が外側に振り出される方向の脚部の傾斜を防止し、膝部を適切な位置に保持することができる。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明によれば、低筋力者が運転する場合にペダルの踏み替えに適した着座姿勢を維持することができる乗員膝部サポート装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明を適用した乗員膝部サポート装置の第1実施形態を有する車両用シートに乗員が着座した状態を示す側面視図であって各サポート部材が格納状態である状態を示す図である。
図2図1のII-II部矢視図である。
図3】第1実施形態の乗員膝部サポート装置を有する車両用シートに乗員が着座した状態を示す側面視図であって各サポート部材がサポート状態である状態を示す図である。
図4図3のIV-IV部矢視図である。
図5】第1実施形態のシートを前方から見た図であって膝部外側面サポート部材の移動軌跡を模式的に示す図である。
図6】第1実施形態の乗員膝部サポート装置の制御システムの構成を示す図である。
図7】第1実施形態の乗員膝部サポート装置のアクチュエータユニットの構成を模式的に示す図である。
図8】第1実施形態における第1リンク機構の構成を示す模式図である。
図9】第1実施形態における第2リンク機構の構成を示す模式図である。
図10】本発明を適用した乗員膝部サポート装置の第2実施形態における制御システムの構成を示す図である。
図11】本発明を適用した乗員膝部サポート装置の第3実施形態が設けられたシートの模式的正面視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
以下、本発明を適用した乗員膝部サポート装置の第1実施形態について説明する。
第1実施形態の乗員膝部サポート装置は、例えば、乗用車等の自動車の運転席に設けられるものである。
運転席は、例えば、前席右側に設けられる構成とすることができる。
図1は、実施形態の乗員膝部サポート装置を有する車両用シートに乗員が着座した状態を示す側面視図であって各サポート部材が格納状態である状態を示す図である。
図2は、図1のII-II部矢視図である。
【0012】
シート1は、車両の運転者である乗員Pが着座するものである。
シート1は、シートクッション10、バックレスト20、ヘッドレスト30等を有して構成されている。
シートクッション10、バックレスト20、ヘッドレスト30は、例えば、金属等の硬質材料からなるフレーム状の芯材の周囲を、例えばウレタンフォーム等の可撓性を有する弾性材料で覆って構成されている。
シートクッション10、バックレスト20、ヘッドレスト30の表面には、弾性材料を覆って、例えば編物、織物、天然皮革、合成皮革等からなるシート表皮が設けられる。
【0013】
シートクッション10は、乗員Pの腰部P1、大腿部P2が乗せられる座面部を有する。
乗員Pの膝部P3、脛部P4、足部P5は、シートクッション10の前端部よりも前方側に配置されている。
足部P5の後端部(踵部)は、図示しない床面部の上に乗せられている。
踵部は、乗員Pがアクセルペダル41等の踏込操作を行う際の支点となる。
【0014】
バックレスト20は、乗員Pの腰部P1、上体部P6を後方側から支持する背もたれ部である。
バックレスト20は、シートクッション10の後端部近傍から上方側へ張り出している。
ヘッドレスト30は、乗員Pの頭部P7を後方側から支持する枕状の部分である。
ヘッドレスト30は、バックレスト20の上端部から上方側へ張り出している。
【0015】
図2に示すように、シートクッション10の前方側における床面部付近には、右側から順に、アクセルペダル41、ブレーキペダル42、フットレスト43が設けられている。
アクセルペダル41は、乗員Pが右の足部P5で踏み込むことにより、例えばエンジン、モータ等の車両の走行用動力源の出力を調整し、加速操作などを行うものである。
ブレーキペダル42は、乗員Pが右の足部P5で踏み込むことにより、車両のブレーキ装置を操作し、減速操作などを行うものである。
フットレスト43は、乗員Pが左の足部P5を乗せ、下半身を支持するとともに左脚を休ませるものである。
【0016】
乗員Pが例えば高齢者などの低筋力者である場合には、図2に示すように、アクセルペダル41を操作する際に、右の膝部P3が外側(左側)に振り出される方向に、大腿部P2、脛部P4、足部P5が傾斜(回動)する場合がある。
これにより、足部P5の足裏面(アクセルペダル41との接触面)は、通常の運転姿勢に対して、アクセルペダル41に対して、爪先側が踵側に対して右側に倒れる方向に傾斜する。
このような状態になると、アクセルペダル41とブレーキペダル42とを踏み替える際に、足部P5、脛部P4だけでなく、大腿部P2も比較的大きく動かす必要が生じるため、低筋力者にとっては負担が大きくなり、ペダルの踏み間違いのリスクが増大する。
【0017】
そこで、第1実施形態においては、低筋力者によくみられるこのような姿勢を矯正し、右脚の膝部P3を適切な位置に保持するため、以下説明する乗員膝部サポート装置100を備えている。
図3は、実施形態の乗員膝部サポート装置を有する車両用シートに乗員が着座した状態を示す側面視図であって各サポート部材がサポート状態である状態を示す図である。
図4は、図3のIV-IV部矢視図である。
【0018】
乗員膝部サポート装置100は、膝部外側面サポート部材110、膝部下面サポート部材120等を有する。
膝部外側面サポート部材110は、乗員Pの右の膝部P3の外側面(右側の面)をサポートするものである。
膝部外側面サポート部材110は、前後方向及び上下方向に延在するボード状に形成されている。
【0019】
膝部外側面サポート部材110は、格納状態とサポート状態との間で推移可能となっている。
図1図2に示す格納状態においては、膝部外側面サポート部材110は、シートクッション10の右側面に沿って、シートクッション10の側部に配置された状態となっている。
図3図4に示すサポート状態においては、膝部外側面サポート部材110は、シートクッション10の上部に対して上方に張り出し、かつ、シートクッション10の前端部に対して前方に張り出した状態となっている。
サポート状態においては、膝部外側面サポート部材110は、図3に示す側面視において、乗員Pの膝部P3と重畳した状態となっている。
また、サポート状態において、膝部外側面サポート部材110は、乗員Pの膝部P3の外側面と当接し、膝部P3の外側(右側)への変位を規制している。
膝部外側面サポート部材110の後部は、シートクッション10の側部の上方に配置されている。
【0020】
膝部下面サポート部材120は、シートクッション10の前端部に設けられ、乗員Pの右の膝部P3の下面をサポートするものである。
膝部下面サポート部材120は、例えば、左右方向に延在する中心軸を有する円柱状に形成されている。
【0021】
膝部下面サポート部材120は、格納状態とサポート状態との間で推移可能となっている。
図1図2に示す格納状態においては、膝部下面サポート部材120は、シートクッション10の前端部における下部に収納された状態となっている。
格納状態においては、膝部下面サポート部材120は、乗員Pの膝部P3から上下方向に離間している。
図3図4に示すサポート状態においては、膝部下面サポート部材120は、シートクッション10の前端部から前方側に張り出した状態で、乗員Pの膝部P3の下面に当接している。
【0022】
膝部外側面サポート部材110には、ガイドレール111が設けられている。
ガイドレール111は、膝部下面サポート部材120の突端部と係合し、膝部下部サポート部材120を膝部外側面サポート部材110に対して直進案内するものである。
ガイドレール111は、膝部外側面サポート部材110の側面視において、前端部が後端部に対して高くなるよう傾斜して配置されている。
膝部下面サポート部材120は、格納状態においては、ガイドレール111の前端部と係合し、サポート状態においては、ガイドレール111の後端部と係合している。
このような構成により、膝部外側面サポート部材110は、膝部下面サポート部材120に対して、格納状態からサポート状態への推移に応じて、前進しながら上昇するよう構成されている。
また、このとき、膝部下面サポート部材120は、膝部外側面サポート部材110と連動して、格納状態からサポート状態へ推移する。
【0023】
図5は、第1実施形態のシートを前方から見た図であって膝部外側面サポート部材の移動軌跡を模式的に示す図である。
図5に示すように、膝部外側面サポート部材110は、シートクッション10の側部の上方側へ回り込むため、前方側から見たときに外側が凸となる円弧状の軌跡に沿って、格納状態からサポート状態へ推移する。
このような移動軌跡を実現するための駆動機構等の具体的構成については、後に詳しく説明する。
【0024】
図6は、第1実施形態の乗員膝部サポート装置の制御システムの構成を示す図である。
第1実施形態の乗員膝部サポート装置100は、さらに、アクチュエータユニット130、アクセルペダル面圧センサ140、アクチュエータ制御ユニット150等を備えている。
アクチュエータユニット130は、膝部外側面サポート部材110、膝部下面サポート部材120を駆動し、格納状態とサポート状態とを推移させる駆動装置(駆動部)である。
アクチュエータユニット130は、例えば、DCモータなどの電動モータ、電動モータの出力軸回転を減速する減速機構、及び、減速機構の出力軸回転を並進運動等に変換する連動機構などを備えている。
【0025】
アクセルペダル面圧センサ140は、アクセルペダル41の踏面部における接触面圧分布を検出する踏力分布センサである。
アクセルペダル面圧センサ140は、例えば、アクセルペダル41の踏面部にマトリクス状に配列された複数の感圧素子を有する構成とすることができる。
【0026】
アクチュエータ制御ユニット150は、アクセルペダル面圧センサ140の出力に基づいて、アクチュエータユニット130に動作指令を与え、膝部外側面サポート部材110、膝部下面サポート部材120の状態を、格納状態とサポート状態との間で推移させる制御装置である。
アクチュエータ制御ユニット150は、アクセルペダル面圧センサ140の出力に基づいて、上述した乗員Pの足部P5のアクセルペダル41に対する傾斜(典型的には、アクセルペダル41の踏面の法線回りにおける足部P5の傾斜(回動))を判別する。
アクチュエータ制御ユニット150は、アクセルペダル面圧センサ140と協働して本発明の足部傾斜検出部として機能する。
そして、足部P5がアクセルペダル41の踏面部の法線回りに、所定の正常状態に対して予め設定された閾値以上傾斜(回動)したと認識された場合には、乗員Pの右脚部に膝部P3が外側(右側)に振り出される方向の傾斜(回転)が生じているものと判別する。
【0027】
アクチュエータ制御ユニット150は、乗員Pの右脚部の傾斜が生じていると判別した場合、これを矯正して膝部P3の位置を適正に維持するため、アクチュエータユニット130によって、膝部外側面サポート部材110、膝部下面サポート部材120を、格納位置からサポート位置へ推移させる。
なお、膝部外側面サポート部材110、膝部下面サポート部材120をサポート位置へ推移させた後は、当該ドライビングサイクルが終了するまで、あるいは運転者が交代するまでの間は、各サポート部材はサポート状態に保持される。
【0028】
図7は、第1実施形態におけるアクチュエータユニットの構成を模式的に示す図である。
アクチュエータユニット130は、例えば、シートクッション10の芯材である図示しないシートクッションフレームの側部に取り付けられる。
アクチュエータユニット130は、格納状態にあるときの膝部外側面サポート部材110の下方かつ車幅方向内側に収容される構成とすることができる。
【0029】
アクチュエータユニット130は、第1出力軸131、第2出力軸132を有する。
第1出力軸131は、アクチュエータユニット130の前端部から前方側に突出した回転軸である。
第2出力軸132は、アクチュエータユニット130の前端部から右側に突出した回転軸である。
第1出力軸131、第2出力軸132は、例えば、同一のモータによって連動して回転駆動される構成とすることができる。
第1出力軸131は、後述する第1リンク機構200を介して、膝部外側面サポート部材110を主に上下方向に駆動する。
第2出力軸132は、後述する第2リンク機構300を介して、膝部外側面サポート部材110を主に前後方向に駆動する。
【0030】
図8は、第1実施形態における第1リンク機構の構成を示す模式図である。
図8において、第1リンク機構200をシート1の前方側から見た状態を示している。
図8(a)乃至図8(d)は、膝部外側面サポート部材110が格納状態からサポート状態へ至る状態を順次示している。
【0031】
第1リンク機構200は、クランク210、ロッド220、ガイドピン230等を有する。
クランク210は、一方の端部が第1出力軸131に取り付けられ、第1出力軸131回りに回動するアーム状の部材である。
クランク210の他方の端部は、ジョイントJ1を介して、ロッド220の下端部に揺動可能に連結されている。
【0032】
ロッド220は、クランク210及び膝部外側面サポート部材110に両端部が連結され、クランク210の動きを膝部外側面サポート部材110に伝達する連動部材である。
ロッド220は、膝部外側面サポート部材110が格納状態にある場合(図8(a))及びサポート状態にある場合(図8(d))に、長手方向が鉛直方向とほぼ沿うように配置されている。
ロッド220のジョイントJ1側とは反対側の端部(上端部)は、ジョイントJ2を介して、膝部外側面サポート部材110に揺動可能に連結されている。
【0033】
ロッド220の長手方向における中間部には、長穴221が形成されている。
ガイドピン230は、例えばシートクッションフレーム等のシート1本体側の部品に固定された軸状の部材であって、長穴221に挿入されている。
ガイドピン230及び長穴221は、ロッド220へのガイドピン230の挿入箇所が長穴221の長手方向に沿って移動するよう、ロッド220を案内する。
【0034】
図8(a)に示す状態(格納状態)においては、ジョイントJ1は、第1出力軸131の下方に位置し、ガイドピン230及びジョイントJ2は第1出力軸131の上方に位置している。
図8(a)に示す状態から、クランク210を反時計回りに回動させることによって、膝部外側面サポート部材110に接続されたジョイントJ2は、弧状の軌跡をとりつつ上昇する。
これにより、膝部外側面サポート部材110は、シートクッション10の側部との干渉を避けつつ、シートクッション10の上方側へ回り込むことができる。
【0035】
図8(d)に示すように、ジョイントJ1が第1出力軸131の上方に位置した状態において、サポート状態への推移が完了し、膝部外側面サポート部材110の上昇は終了する。
このとき、膝部下面サポート部材120は、ガイドレール111を介して膝部外側面サポート部材110と連動して上昇し、サポート状態への推移を完了する。
【0036】
図9は、第1実施形態における第2リンク機構の構成を示す模式図である。
図9において、第2リンク機構300をシート1の側方(右側)から見た状態を示している。
図9(a)乃至図9(c)は、膝部外側面サポート部材110が格納状態からサポート状態へ至る状態を順次示している。
【0037】
第2リンク機構300は、クランク310、ロッド320、スライダ330、スライドレール340等を有する。
クランク310は、一方の端部が第2出力軸132に取り付けられ、第2出力軸132回りに回動するアーム状の部材である。
クランク310の他方の端部は、ジョイントJ3を介して、ロッド320の一方の端部に揺動可能に連結されている。
【0038】
ロッド320は、クランク310及びスライダ330に両端部が連結され、クランク310の動きを膝部外側面サポート部材110に伝達する連動部材である。
ロッド320は、膝部外側面サポート部材110が取り付けられている。
ロッド320は、膝部外側面サポート部材110が格納状態にあるときに、長手方向が前後方向に沿うように配置されている。
ロッド320の前端部は、ジョイントJ3を介して、クランク310と揺動可能に連結されている。
ロッド320の後端部は、ジョイントJ4を介して、スライダ330と揺動可能に連結されている。
【0039】
スライダ330は、ロッド320の後端部がジョイントJ4を介して連結されるとともに、スライドレール340によって前後方向に直進案内される部材である。
スライドレール340は、例えばシートクッション10のフレーム部分等に固定され、前後方向に延在している。
【0040】
図9(a)に示す状態(格納状態)においては、ジョイントJ3は、第2出力軸132の後方に位置し、クランク310、ロッド320は、前後方向に沿って直線状に配列された状態となっている。
図9(a)に示す状態から、クランク310を時計回り方向に回動させることによって、膝部外側面サポート部材110が取り付けられたロッド320は、前端部が後端部に対して上昇する方向に回動しつつ前進する。
このとき、膝部下面サポート部材120は、膝部外側面サポート部材110と連動して上昇する。
【0041】
図9(c)に示すように、ジョイントJ3が第2出力軸132の上方に位置した状態において、サポート状態への推移が完了し、膝部外側面サポート部材110の前進は終了する。
このとき、膝部下面サポート部材120は、ガイドレール111に沿って膝部外側面サポート部材110に対して相対的に後退するため、膝部外側面サポート部材110の前進を阻害することはない。
【0042】
上述したジョイントJ1乃至J4は、第1リンク機構200と第2リンク機構300の動作が相互に干渉しないよう、例えばスフェリカルベアリング等の球面支承を有する構成とすることができる。
【0043】
上述した第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)乗員Pが例えば高齢者等の低筋力者である場合には、膝部外側面サポート部材110によって膝部P3の外側面をサポートするとともに、膝部下面サポート部材120によって膝部P3の下面をサポートすることにより、膝部P3が外側に振り出される方向の大腿部P2、脛部P4、足部P5の傾斜を防止し、膝部P3を適切な位置に保持することができる。
これにより、アクセルペダル41とブレーキペダル42の踏み替えを主に脛部P4及び足部P5の動きによって行うことが可能となり、大腿部P2への負担が軽減されることで、ペダルを踏み間違えるリスクを軽減することができる。
また、低筋力者が運転する場合以外の場合には、膝部外側面サポート部材110及び膝部下面サポート部材120を格納状態とすることにより、乗降性が損なわれたり、運転中に圧迫感を受けることがなく、車両の利便性を確保することができる。
(2)アクセルペダル41に対する乗員Pの足部P3の傾斜を検出した場合に、自動的に膝部外側面サポート部材110及び膝部下面サポート部材120をサポート状態へ推移させることにより、利便性を向上するとともに、適切に低筋力者の運転支援を行うことができる。
また、アクセルペダル面圧センサ140を用いて足部P5の傾斜を検出することにより、簡単な構成により適切に足部P5の傾斜を検出し、上述した効果を得ることができる。
【0044】
<第2実施形態>
次に、本発明を適用した乗員膝部サポート装置の第2実施形態について説明する。
以下説明する各実施形態において、上述した第1実施形態と同様の箇所には同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
図10は、第2実施形態の乗員膝部サポート装置の制御システムの構成を示す図である。
【0045】
第2実施形態においては、第1実施形態のアクセルペダル面圧センサ140に代えて、乗員Pにより操作される操作部であるスイッチ160を備えている。
乗員Pは、スイッチ160を用いて、膝部外側面サポート部材110、膝部下面サポート部材120の格納状態とサポート状態との選択操作を入力する。
アクチュエータ制御ユニット150は、スイッチ160からの入力に応じて、アクチュエータユニット130に作動指令を与え、膝部外側面サポート部材110、膝部下面サポート部材120の格納状態とサポート状態とを推移させる。
以上説明した第2実施形態によれば、上述した第1実施形態の効果と同様の効果((2)項に記載の効果を除く)に加えて、膝部外側面サポート部材110及び膝部下面サポート部材120の状態を、乗員Pの意図に忠実に切り替えることが可能となる。
【0046】
<第3実施形態>
次に、本発明を適用した乗員膝部サポート装置の第3実施形態について説明する。
図11は、第3実施形態の乗員膝部サポート装置が設けられたシートの模式的正面視図である。
第3実施形態の乗員膝部サポート装置100Aにおいては、第1実施形態の膝部外側面サポート部材110に代えて、シートクッション10の側部11を膝部外側面サポート部材として用いている。
シートクッション10の側部11は、シート1の通常使用状態である格納状態から、図示しないアクチュエータによって上昇することによって、乗員Pの膝部P3の外側面をサポートする。
以上説明した第3実施形態によれば、上述した第1実施形態の効果と同様の効果に加えて、部品点数を低減するとともに、乗員膝部サポート装置を使用しない場合に膝部外側面サポート部材がシートの外側に張り出すことがないことから、車両の利便性、意匠性を向上することができる。
【0047】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)乗員膝部サポート装置、シート、車両の構成は、上述した各実施形態に限らず、適宜変更することができる。
例えば、膝部外側面サポート部材、膝部下面サポート部材の形状、構造、材質、製法、個数、配置や、格納状態とサポート状態とを推移する際の移動態様などの構成は、実施形態の構成に限定されず適宜変更することができる。
(2)膝部外側面サポート部材、膝部下面サポート部材を格納状態とサポート状態との間で推移させる駆動機構(アクチュエータ、リンク機構等)の構成は、実施形態の構成に限らず、適宜変更することができる。
また、実施形態のように膝部外側面サポート部材、膝部下面サポート部材が連動して単一のアクチュエータによって駆動される構成に限らず、各部材にそれぞれ独立した駆動機構を設ける構成としてもよい。
(3)アクセルペダルに対する乗員の足部の傾斜(回動)を検出する具体的手法は、実施形態の構成に限らず、適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 シート 10 シートクッション
11 側部 20 バックレスト
30 ヘッドレスト 41 アクセルペダル
42 ブレーキペダル 43 フットレスト
P 乗員 P1 腰部
P2 大腿部 P3 膝部
P4 脛部 P5 足部
P6 上体部 P7 頭部
100,100A 乗員膝部サポート装置
110 膝部外側面サポート部材 111 ガイドレール
120 膝部下面サポート部材 130 アクチュエータユニット
131 第1出力軸 132 第2出力軸
140 アクセルペダル面圧センサ 150 アクチュエータ制御ユニット
160 スイッチ
200 第1リンク機構 210 クランク
220 ロッド 221 長穴
230 ガイドピン
300 第2リンク機構 310 クランク
320 ロッド 330 スライダ
340 スライドレール
J1~J4 ジョイント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11