特開 2024-108341 天井下地吊金物、及び天井構造

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024108341

(43)【公開日】2024-08-13

(54)【発明の名称】天井下地吊金物、及び天井構造

(51)【国際特許分類】

   E04B 9/20 20060101AFI20240805BHJP

   E04B 9/18 20060101ALI20240805BHJP

【ＦＩ】

E04B9/20 A

E04B9/18 N

【審査請求】未請求

【請求項の数】7

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2023012651

(22)【出願日】2023-01-31

(71)【出願人】

【識別番号】390037154

【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100107766

【弁理士】

【氏名又は名称】伊東 忠重

(74)【代理人】

【識別番号】100070150

【弁理士】

【氏名又は名称】伊東 忠彦

(72)【発明者】

【氏名】南川 達浩

(72)【発明者】

【氏名】矢田 洋平

(57)【要約】

【課題】上向き作業の負担軽減を図りつつ高さ調整が可能な天井下地吊金物を提供すること。
【解決手段】天井下地吊金物１００は、天井下地材２１０を支持する天井下地吊金物１００であって、天井下地材２１０を支持する第１部材３０と、第１部材３０の上方に配置され、建物の梁１０に取り付けられる第２部材４０と、第２部材４０に対して支持され、上下方向に延びる軸５ｂ回りに回転可能であり、第２部材４０から下方に延びる吊りボルト５と、を備え、吊りボルト５は、第２部材４０の上に配置されたつば部５ａと、つば部５ａから下方に延び、第１部材３０を吊り下げる軸５ｂと、を有し、第１部材３０に対して軸５ｂが相対的に回転することにより、第１部材３０の高さを調整可能である。
【選択図】図３

【特許請求の範囲】

【請求項1】

天井下地材を支持する天井下地吊金物であって、
前記天井下地材を支持する第１部材と、
前記第１部材の上方に配置され、建物の梁に取り付けられる第２部材と、
前記第２部材に対して支持され、上下方向に延びる軸回りに回転可能であり、前記第２部材から下方に延びる吊りボルトと、を備え、
前記吊りボルトは、
前記第２部材の上に配置されたつば部と、
前記つば部から下方に延び、前記第１部材を吊り下げる軸と、を有し、
前記第１部材に対して前記軸が相対的に回転することにより、前記第１部材の高さを調整可能であることを特徴とする、天井下地吊金物。

【請求項2】

前記第２部材は、
前記梁に取り付けられる第１片と、
前記軸が挿通される挿通穴が形成され、前記第１片よりも下方に配置される第２片と、
前記第１片と前記第２片とを連結する第３片と、を有し、
前記つば部は、前記第２片の上に載置されて、前記軸回りに回転可能であり、
前記軸は、前記挿通穴に挿通され、下方に延びていることを特徴とする、請求項１に記載の天井下地吊金物。

【請求項3】

前記第１部材には、前記軸に螺合するめねじ部が形成されていることを特徴とする、請求項１に記載の天井下地吊金物。

【請求項4】

前記第１部材の上面に固定され、前記軸に螺合するナットを有することを特徴とする、請求項１に記載の天井下地吊金物。

【請求項5】

前記第１部材の下面に固定され、前記軸に螺合するナットを有することを特徴とする、請求項１に記載の天井下地吊金物。

【請求項6】

上下方向において前記第２部材と前記つば部との間に配置された防振部材を備えることを特徴とする、請求項１に記載の天井下地吊金物。

【請求項7】

天井面材と、
前記天井面材を支持する天井下地材と、
前記天井下地材を支持し、建物の梁に取り付けられた天井下地吊金物と、を備え、
前記天井下地吊金物は、
前記天井下地材を支持する第１部材と、
前記梁に取り付けられた第２部材と、
前記第２部材に対して支持され、上下方向に延びる軸回りに回転可能であり、前記第２部材から下方に延びる吊りボルトと、を備え、
前記吊りボルトは、
前記第２部材の上に配置されたつば部と、
前記つば部から下方に延び、前記第１部材を吊り下げる軸と、を有し、
前記第１部材に対して前記軸が相対的に回転することにより、前記第１部材の高さを調整可能であることを特徴とする、天井構造。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、天井下地吊金物、及び天井構造に関する。

【背景技術】

【0002】

天井面材を支持する天井下地材は、例えば梁に固定された吊金物を介して、梁に対して固定されている。特許文献１では、複数のバー状の部材を組み付けて鋼製天井フレームを構成し、この鋼製天井フレームを支持する天井吊金物が、Ｈ形鋼からなる梁の下フランジに取り付けられている。特許文献１に記載の天井吊金物は、梁に取り付け可能な吊り金具と、鋼製天井フレームの枠組みを形成する野縁に嵌め込み可能な野縁金具と、吊り金具に螺合された連結ボルトと、この連結ボルトに螺合され、野縁金具を挟持する一対のナットとを有する。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開平９－２１７４５８号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

特許文献１に記載された天井吊金物では、連結ボルトを用いて高さ位置の調整が可能であるが、モンキーレンチ等を使用して手締めする必要があり、作業者の上向き作業の負担が極めて大きいといった課題がある。また、特許文献１に記載の天井吊金物では、野縁金具を挟むように一対のナットが設けられており、これらのナットが緩むおそれがあるといった課題がある。

【0005】

本発明は、作業者の上向き作業の負担軽減を図りつつ高さ調整が可能な天井下地吊金物、及び天井構造を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0006】

前記目的を達成すべく、本発明による天井下地吊金物の一態様は、
天井下地材を支持する天井下地吊金物であって、
前記天井下地材を支持する第１部材と、
前記第１部材の上方に配置され、建物の梁に取り付けられる第２部材と、
前記第２部材に対して支持され、上下方向に延びる軸回りに回転可能であり、前記第２部材から下方に延びる吊りボルトと、を備え、
前記吊りボルトは、
前記第２部材の上に配置されたつば部と、
前記つば部から下方に延び、前記第１部材を吊り下げる軸と、を有し、
前記第１部材に対して前記軸が相対的に回転することにより、前記第１部材の高さを調整可能であることを特徴とする。

【0007】

本態様によれば、建物の梁に対して第２部材が取り付けられ、吊りボルトのつば部は、第２部材の上に配置され、吊りボルトの軸は、第２部材から下方に延びて、第１部材を吊り下げることができる。本態様では、作業者は、第１部材に対して吊ボルトを下方から相対的に回転することにより、第１部材を上下方向に変位させることができる。そのため、本態様では、作業者の上向き作業の負担軽減を図りつつ、天井下地材の高さを調整することができる。

【0008】

また、本発明の他の態様において、
前記第２部材は、
前記梁に取り付けられる第１片と、
前記軸が挿通される挿通穴が形成され、前記第１片よりも下方に配置される第２片と、
前記第１片と前記第２片とを連結する第３片と、を有し、
前記つば部は、前記第２片の上に載置されて、前記軸回りに回転可能であり、
前記軸は、前記挿通穴に挿通され、下方に延びていることを特徴とする。

【0009】

本態様によれば、吊りボルトの軸を下方から回転させることにより、第２部材の第２片の上に載置されたつば部が回転する。作業者は、下方から吊りボルトの軸を回転させて、第１部材の高さを調整することができる。また、本態様では、つば部が第２部材の上に載置されることにより、吊りボルトを安定して吊り下げることができる。

【0010】

また、本発明の他の態様において、
前記第１部材には、前記軸に螺合するめねじ部が形成されていることを特徴とする。

【0011】

本態様によれば、第１部材に形成されためねじ部を、吊りボルトの軸に螺合することにより、吊りボルトを用いて第１部材を吊り下げることができる。また、本態様によれば、軸を回転させることにより、第１部材を上下方向に変位させることができる。さらに、本態様によれば、吊りボルトの軸回りに第１部材を回転させることにより、第１部材を上下方向に変位させることができる。

【0012】

また、本発明の他の態様において、
前記第１部材の上面に固定され、前記軸に螺合するナットを有することを特徴とする。

【0013】

本態様によれば、第１部材の上面に固定されたナットを、吊りボルトの軸に螺合することにより、吊りボルトを用いて、第１部材を吊り下げることができる。また、本態様によれば、軸を回転させることにより、第１部材を上下方向に変位させることができる。さらに、本態様によれば、吊りボルトの軸回りに第１部材を回転させることにより、第１部材を上下方向に変位させることができる。

【0014】

また、本発明の他の態様において、
前記第１部材の下面に固定され、前記軸に螺合するナットを有することを特徴とする。

【0015】

本態様によれば、第１部材の下面に固定されたナットを、吊りボルトの軸に螺合することにより、吊りボルトを用いて、第１部材を吊り下げることができる。また、本態様によれば、軸を回転させることにより、第１部材を上下方向に変位させることができる。さらに、本態様によれば、吊りボルトの軸回りに第１部材を回転させることにより、第１部材を上下方向に変位させることができる。

【0016】

また、本発明の他の態様では、
上下方向において前記第２部材と前記つば部との間に配置された防振部材を備えることを特徴とする。

【0017】

本態様によれば、つば部と第２部材との間に防振部材が配置されていることにより、つば部が回転する際の振動が第２部材へ伝達されることが抑制される。そのため、吊りボルトの回転に伴う音の発生が抑制される。

【0018】

前記目的を達成すべく、本発明による天井構造の一態様は、
天井面材と、
前記天井面材を支持する天井下地材と、
前記天井下地材を支持し、建物の梁に取り付けられた天井下地吊金物と、を備え、
前記天井下地吊金物は、
前記天井下地材を支持する第１部材と、
前記梁に取り付けられた第２部材と、
前記第２部材に対して支持され、上下方向に延びる軸回りに回転可能であり、前記第２部材から下方に延びる吊りボルトと、を備え、
前記吊りボルトは、
前記第２部材の上に配置されたつば部と、
前記つば部から下方に延び、前記第１部材を吊り下げる軸と、を有し、
前記第１部材に対して前記軸が相対的に回転することにより、前記第１部材の高さを調整可能であることを特徴とする。

【0019】

本態様によれば、建物の梁に対して第２部材が取り付けられ、吊りボルトのつば部は、第２部材の上に配置され、吊りボルトの軸は、第２部材から下方に延びて、第１部材を吊り下げることができる。本態様では、作業者は、第１部材に対して吊ボルトを下方から相対的に回転することにより、第１部材を上下方向に変位させることができる。そのため、本態様では、作業者の上向き作業の負担軽減を図りつつ、天井下地材の高さを調整することができる。

【発明の効果】

【0020】

以上の説明から理解できるように、本発明によれば、作業者の上向き作業の負担軽減を図りつつ高さ調整が可能な天井下地吊金物及び天井構造を提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【0021】

【図1】第１実施形態に係る天井下地吊金物を備える天井構造の一例を示す斜視図である。

【図2】第１実施形態に係る天井下地吊金物の一例を示す正面図である。

【図3】天井下地パネルを示す平面図である。

【図4】天井下地パネルを示す断面図である。

【図5】第２実施形態に係る天井下地吊金物の要部を示す断面図である。

【図6】第３実施形態に係る天井下地吊金物の要部を示す断面図である。

【発明を実施するための形態】

【0022】

以下、実施形態に係る天井下地吊金物及び天井構造について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。

【0023】

［第１実施形態に係る天井下地吊金物］
図１～図４を参照して、第１実施形態に係る天井下地吊金物を備える天井構造の一例について説明する。図１は、第１実施形態に係る天井吊金物を備える天井構造の一例を示す斜視図である。図２は、第１実施形態に係る天井下地吊金物の一例を示す正面図である。また、各図において、互いに直交するＸ軸方向、Ｙ軸方向、及びＺ軸方向を示す矢印を適宜図示す場合がある。Ｘ軸方向及びＹ軸方向は、水平方向に沿う。Ｚ軸方向は、鉛直方向に沿う。

【0024】

＜天井構造＞
第１実施形態に係る天井下地吊金物１００は、図１に示される天井構造２００に適用可能である。図１に示される天井構造２００は、第１実施形態に係る天井下地吊金物１００を備える。天井構造２００を有する建物の躯体は、柱及び梁１０を備える。柱は、例えば鉄骨造（Ｓ造）の柱でもよい。柱は、鉄骨造の柱に限定されず、鉄筋コンクリート造（ＲＣ造）や鉄骨鉄筋コンクリート造（ＳＲＣ造）の柱でもよい。

【0025】

梁１０は、例えば鉄骨造の梁（鉄骨梁）である。梁１０は、大梁１０Ａ及び小梁１０Ｂを含む。大梁１０Ａの両端は、一対の柱に接続されている。小梁１０Ｂの両端は、一対の大梁１０Ａに接続されている。図１では、Ｙ軸方向に延設された大梁１０Ａと、Ｘ軸方向に延設された小梁１０Ｂが図示されている。なお、大梁１０Ａ及び小梁１０Ｂを区別しない場合には、梁１０と記載する。

【0026】

梁１０は、例えばＨ形鋼からなり、ウェブ１１と上フランジ１２と下フランジ１３とを有する。

【0027】

天井構造２００は、石膏ボード２と、石膏ボード２を支持する天井下地パネルフレーム２１０と、天井下地パネルフレーム２１０を支持し、梁１０に取り付けられた天井下地吊金物１００と、を備える。石膏ボード２は、天井面材の一例である。天井面材は、石膏ボードに限定されず、その他の材質から形成された板状の部材でもよい。

【0028】

＜天井下地パネルフレーム＞
次に、図３及び図４を参照して天井下地パネルフレーム２１０について説明する。図３は、天井下地パネルを示す平面図である。図４は、天井下地パネルを示す断面図である。

【0029】

天井下地パネルフレーム２１０は、一対の主材２１１と、主材２１１同士を繋ぐ複数の繋ぎ材２１２と、一対の主材２１１の中間位置において、繋ぎ材２１２同士を繋ぐ繋ぎ補助材２１３とを有する井桁状の天井下地である。図３に一例として示すように、天井下地パネルフレーム２１０はこれらの部材により井桁状に組み付けられており、全体の寸法は例えば１Ｐ（１モジュール幅を９１０ｍｍとする）×２Ｐであり、各格子は例えば０．５Ｐ×０．５Ｐの寸法を有する。天井下地パネルフレーム２１０は、工場にて図３に示す態様に組み付けられ、現場搬送されてそのまま施工される天井下地である。尚、長手方向の長さは、３Ｐ，４Ｐ等に設定されてもよい。この場合の長手方向は、例えばＹ軸方向に沿う。

【0030】

主材２１１、繋ぎ材２１２、及び繋ぎ補助材２１３はいずれも軽鉄等の鋼材を曲げ加工することにより形成されている。図４に示すように、主材２１１は、リップ２１１ｃを備える断面形状が略溝形の本体片２１１ａを有し、本体片２１１ａのウェブには、外側にＺ状に突設した係合片２１１ｂが設けられている。

【0031】

繋ぎ補助材２１３は、リップ２１３ａを備える断面形状が略溝形を呈している。また、繋ぎ材２１２も繋ぎ補助材２１３と同様に、リップを備える断面形状が略溝形を呈している。主材２１１、繋ぎ材２１２、及び繋ぎ補助材２１３は、相互に釘やビス、溶接、かしめ等により組み付けられている。

【0032】

天井下地パネルフレーム２１０の下面には、一層もしくは二層の石膏ボード２がドリル付きタッピングねじ等により張り付けられて、天井パネルが形成される。石膏ボード２は、図１及び図２に図示されている。この石膏ボード２の取り付けは、梁１０に対して天井下地吊金物１００を介して天井下地パネルフレーム２１０を垂下させた後に行われる。石膏ボード２の下面には、さらにクロスが貼り付けられることにより、天井パネルの施工が完了する。また、天井下地パネルフレーム２１０の上方には、現場においてロックウール等の吸音材が載置される。

【0033】

なお、天井下地パネルフレーム２１０は、図示例の軽鉄製の天井下地パネルフレームの他、木桟を井桁状に組み付けることにより形成される、木製の天井下地パネルフレームであってもよい。天井下地パネルフレーム２１０は、天井下地材の一例である。天井下地パネルフレームは、例えば、野縁や野縁受けなどのその他のバー状の部材を組み付けて構成されたものでもよい。

【0034】

＜天井下地吊金物＞
次に、図２を参照して、天井下地吊金物１００について説明する。図２示されるように、天井下地吊金物１００は、天井下地パネルフレーム２１０を支持する第１部材３０と、梁１０に取り付けられる第２部材４０と、第２部材４０に対して第１部材３０を吊り下げるための吊りボルト５と、第１部材３０に固定され吊りボルト５に螺合するナット７と、を備える。

【0035】

＜第１部材＞
第１部材３０は、台座３２と、台座３２から下方に垂れ下がる一対の支持片７０とを有する。一対の支持片７０は天井下地パネルフレーム２１０を支持する。台座３２及び支持片７０は、金属製部材により形成されている。なお、台座３２及び支持片７０は、硬質の樹脂により形成されていてもよい。台座３２及び支持片７０は、別体として形成されていてもよく、一体として形成されていてもよい。

【0036】

台座３２は、平面視矩形の水平片３４と、水平片３４から折り曲げられて形成された折り曲げ片３５とを有する。水平片３４には、水平片３４から上方に張り出すリブ３６が設けられている。リブ３６が設けられていることにより、水平片３４の剛性が高められている。なお、図３ではリブ３６の図示が省略されている。

【0037】

水平片３４には、下方に延びる係止片３７が形成されている。係止片３７は、Ｘ軸方向において、水平片３４の中央位置に設けられている。係止片３７は、Ｘ軸方向に複数形成されている。複数の係止片３７は、上端部が連結されて、例えばコの字形を成すように形成されている。また、係止片３７は、ボルト５と重ならない位置に形成されている。係止片３７は、Ｙ軸方向に複数形成されている。複数の係止片３７は、例えばカシメ等によって、水平片３４に固定されている。複数の係止片３７は、水平片３４に溶接されていてもよく、その他の方法によって固定されていてもよい。また、係止片３７は、水平片３４から折り曲げられて形成されていてもよい。

【0038】

係止片３７は、本体３７ａと、係合爪３７ｃとを有する。本体３７ａは、水平片３４から下方に延びる。本体３７ａは、板状を成し、本体３７ａの板厚方向は、例えばＸ軸方向に沿う。Ｘ軸方向において、複数の係止片３７の本体３７ａ同士の間には、ボルト５を配置可能なスペースが形成されている。

【0039】

係合爪３７ｃは、天井下地パネルフレーム２１０の主材２１１のリップ２１１ｃに係合する。係合爪３７ｃは、Ｘ軸方向において、本体３７ａから張り出すように形成されている。係合爪３７ｃは、Ｘ軸方向において、本体３７ａに対して、ボルト５とは反対側に突出している。係合爪３７ｃは、例えば、本体３７ａから折り曲げられて形成されている。

【0040】

支持片７０は、斜め鉛直方向に延設する立ち上がり部７２と、立ち上がり部７２の上端において曲げ加工により形成される係止端７３と、立ち上がり部７２の下端において曲げ加工により７字状に形成される被係合部７４とを有する。折り曲げ片３５に対して係止端７３が上方から係止され、双方がかしめ部を介して固定されることにより、水平片３４に対して支持片７０が垂下された状態で固定される。図示するように、左右の支持片７０の有する被係合部７４は、天井下地吊金物１００の内側に突出している。例えば、Ｘ軸方向において、ボルト５及び袋ナット２０に近い方を内側とし、ボルト５及び袋ナット２０から遠い方を外側とする。

【0041】

＜第２部材＞
第２部材４０は、梁１０に取り付けられる一対の第１片４２と、第１片４２よりも第１部材３０に近い位置に配置される第２片４４と、第１片４２と第２片４４とを連結する一対の第３片４６とを有する。第２部材４０は、例えば逆ハット形状を成している。第２部材４０は、例えば金属材料からなる帯状のプレートを折り曲げることにより形成できる。また、第２部材４０は、絞り加工（鍛造）により台形状に形成したものでもよい。

【0042】

第１片４２及び第２片４４の板厚方向は、梁１０の下フランジ１３の板厚方向に沿う。第３片４６の板厚方向は、第１片４２及び第２片４４の板厚方向に対して傾斜している。
一対の第３片４６は、Ｘ軸方向において第２片４４の両側に設けられている。一対の第１片４２は、Ｘ軸方向において一対の第３片の外側に設けられている。第３片４６は、第２片４４の両端から折り曲げられ、斜め上方へ張り出している。第１片４２は、第３片４６の上端から折り曲げられ、第２片４４とは反対側へ張り出している。左右の第１片４２は、第３片４６の上端から互いに反対側へ曲げられている。

【0043】

第２片４４には、ボルト５が挿通される挿通穴４４ｃが形成されている。挿通穴４４ｃは、第２片４４の板厚方向に貫通する。挿通穴４４ｃには、吊りボルト５が挿通される。吊りボルト５のつば部５ａは、第２片４４の上面４４ａの上に配置されている。吊りボルト５のつば部５ａは、第２部材４０に対して固定されていない。第２片４４の上方であり、一対の第３片４６間には、所定の空間が形成されている。所定の空間は、上下方向において、第２片４４と下フランジ１３との間に形成されている。この第２片４４と下フランジ１３との間の空間は、吊りボルト５のつば部５ａを収容可能な大きさを有する。

【0044】

第１片４２には、ボルト８が挿通される挿通穴が形成されている。ボルト８は、天井下地吊金物１００を梁１０に固定するためのボルトである。また、天井下地吊金物１００の取付先である梁１０の下フランジ１３にも、ボルト８が挿通される挿通穴が形成されている。第１片４２は、ボルト８及びナット９により下フランジ１３に固定される。これにより、天井下地吊金物１００が梁１０にボルト固定される。なお、天井下地吊金物１００を固定するためのボルト８は、複数設けられていてもよく、１つでもよい。例えば、左右の第１片４２のうち、一方の第１片４２に挿通穴が形成されてボルト８が挿通されて、天井下地吊金物１００が梁１０に取り付けられていてもよい。

【0045】

＜吊りボルト及びナット＞
吊りボルト５は、つば部５ａ及び軸５ｂを有する。つば部５ａは、軸５ｂの上端に連結されている。つば部５ａは、円盤状を成す。つば部５ａの板厚方向は上下方向に沿う。つば部５ａの直径は、第２片４４に形成された挿通穴４４ｃの内径よりも大きい。つば部５ａは、第２片４４の上面４４ａの上に載置されている。

【0046】

つば部５ａは、上下方向において、第２片４４と梁１０の下フランジ１３との間に配置されている。つば部５ａの下面５ｇは、第２片４４の上面４４ａに当接する。つば部５ａの上面５ｆは、下フランジ１３の下面に当接してもよい。つば部５ａは、第２部材４０及び梁１０に対して固定されていない。つば部５ａの下面５ｇと第２片４４の上面４４ａとの間には、他の部材（防振部材、ワッシャー等）が挟まれていてもよい。

【0047】

吊りボルト５の軸５ｂは、上下方向に延在し、第１部材３０及び第２部材４０を貫通するように配置されている。ボルト５の軸５ｂは、第２部材４０の第２片４４と、第１部材３０の水平片３４とを上下方向に貫通する。軸５ｂは、第１部材３０よりも下方まで延びている。

【0048】

吊りボルト５の軸５ｂに螺合するナット７は、第１部材３０に固定されている。ナット７は、水平片３４の上面に溶接されている。ナット７は、その他の方法により水平片３４に固定されていてもよい。ナット７の開口部は、水平片３４に形成された開口部に対応する位置に配置されている。ナット７は、吊りボルト５に取り付けられている。ナット７が吊りボルト５に取り付けられることにより、第１部材３０は、吊りボルト５を介して、第２部材４０に吊り下げられて支持されている。ナット７及び第１部材３０は、一体として、吊りボルト５の軸５ｂ回り回転可能である。

【0049】

吊りボルト５の軸５ｂの下端面には、ドライバの刃先が差し込まれる溝が形成されている。軸５ｂの下端面に形成された溝は、例えばプラスドライバに対応するものでもよく、マイナスドライバに対応するものでもよい。軸５ｂには、吊りボルト５を回転させるためのその他の形状が形成されていてもよい。例えば、軸５ｂに下端部に、ボルトの頭が形成されていてもよい。

【0050】

例えば、第１部材３０の回転を防止した状態で、吊りボルト５を回転させることにより、ナット７及び第１部材３０を上下方向に変位させることができる。例えば、作業者は、第１部材３０を手で押さえながら、吊りボルト５を回転させて、ナット７及び第１部材３０を上下方向に変位させることができる。また、第１部材３０に対して、天井下地パネルフレーム２１０が装着されている状態では、第１部材３０の回転が抑制される。第１部材３０に対して天井下地パネルフレーム２１０が装着されている状態において、吊りボルト５を回転させることにより、ナット７、第１部材３０及び天井下地パネルフレーム２１０を上下方向に変位させることができる。

【0051】

また、第１部材３０に対して、天井下地パネルフレーム２１０が装着されていない状態において、第１部材３０を吊りボルト５に対して回転させることにより、第１部材３０を上下方向に変位させることができる。

【0052】

＜吊りボルトの長さ＞
吊りボルト５の長さは、例えば、吊りボルト５が梁１０及び第２部材４０に対して設置されている状態において、主材（野縁）２１１の本体片２１１ａよりも下方に張り出さない長さとなっている。吊りボルト５の軸５ｂの長さは、第１部材３０及び天井下地パネルフレーム２１０の高さ位置の調整代に対向する。軸５ｂを長くすることにより、第１部材３０及び天井下地パネルフレーム２１０の調整代を増やすことができる。

【0053】

＜天井下地吊金物の梁への取付＞
天井下地吊金物１００は、上述したように、梁１０の下フランジ１３に取り付けられる。第２部材４０の上面が、下フランジ１３の下面に当接するように、第２部材４０が配置されている。第２部材４０は、ボルト８及びナット９を用いて梁１０に固定されている。天井下地吊金物１００が、梁１０に固定された状態において、吊りボルト５はＺ軸方向に延在する。吊りボルト５は、梁１０及び第２部材４０に対して回転自在である。吊りボルト５の軸５ｂは、第２部材４０及び第１部材３０を貫通して、第１部材３０よりも下方まで延びている。

【0054】

天井下地吊金物１００では、吊りボルト５に対して、ナット７を下方から取り付けることにより、第１部材３０を吊り下げて支持することができる。天井下地吊金物１００では、第１部材３０に対して、天井下地パネルフレーム２１０を嵌めることができる。例えば、作業者は、電動工具を下方から挿入して、吊りボルト５を回転させることにより、ナット７及び第１部材３０の高さ位置を調整することができる。これにより、天井下地パネルフレーム２１０の高さ位置を調整することができる。

【0055】

（天井下地吊金物の作用効果）
第１実施形態に係る天井下地吊金物１００は、天井下地材である天井下地パネルフレーム２１０を支持する天井下地吊金物１００であって、天井下地パネルフレーム２１０を支持する第１部材３０と、第１部材３０の上方に配置され、建物の梁１０に取り付けられる第２部材４０と、第２部材４０に対して支持され、上下方向に延びる軸５ｂ回りに回転可能であり、第２部材４０から下方に延びる吊りボルト５と、を備える。吊りボルト５は、第２部材４０の上に配置されたつば部５ａと、つば部５ａから下方に延び、第１部材３０を吊り下げる軸５ｂと、を有する。天井下地吊金物１００では、第１部材３０に対して軸５ｂが相対的に回転することにより、第１部材３０の高さを調整可能である。

【0056】

本態様によれば、建物の梁１０に対して第２部材４０が取り付けられ、吊りボルト５のつば部５ａは、第２部材４０の上に配置され、吊りボルト５の軸５ｂは、第２部材４０から下方に延びて、第１部材３０を吊り下げることができる。本態様では、作業者は、第１部材３０に対して吊ボルト５を下方から相対的に回転することにより、第１部材３０を上下方向に変位させることができる。そのため、本態様では、作業者の上向き作業の負担軽減を図りつつ、天井下地材の高さを調整することができる。

【0057】

天井下地吊金物１００では、天井下地吊金物１００の下側から電動ドライバの先端部を差し込んで、吊りボルト５を回すことにより、第２部材４０に対して第１部材３０の相対位置を変化させて、第１部材３０の高さを調整することができる。そのため、本態様では、作業者の上向き作業の負担軽減を図りつつ第１部材３０の高さを調整できる。

【0058】

また、天井下地吊金物１００において、第２部材４０は、梁１０に取り付けられる第１片４２と、軸５ｂが挿通される挿通穴４４ｃが形成され、第１片４２よりも下方に配置される第２片４４と、第１片４２と第２片４４とを連結する第３片４６と、を有する。つば部５ａは、第２片４４の上に載置されて、軸回りに回転可能であり、軸５ｂは、挿通穴４４ｃに挿通され、下方に延びている。

【0059】

本態様によれば、吊りボルト５の軸５ｂを下方から回転させることにより、第２部材４０の第２片４４の上に載置されたつば部５ａが回転する。作業者は、下方から吊りボルト５の軸５ｂを回転させて、第１部材３０の高さを調整することができる。また、本態様では、つば部５ａが第２部材４０の第２片４４の上に載置されることにより、吊りボルト５を安定して吊り下げることができる。また、つば部５ａが梁１０の下フランジ１３に当接可能であることにより、吊りボルト５の上方への移動が抑制される。例えば、吊りボルト５に対して、電動ドライバを下方から差し込んだ際に、吊りボルト５の上下方向の位置が拘束される。

【0060】

また、天井下地吊金物１００は、第１部材３０の上面に固定され、軸５ｂに螺合するナット７を有する。本態様によれば、第１部材３０の上面に固定されたナット７を、吊りボルト５の軸５ｂに螺合することにより、吊りボルト５を用いて、第１部材３０を吊り下げることができる。また、本態様によれば、軸５ｂを回転させることにより、ナット７及び第１部材３０を上下方向に変位させることができる。さらに、本態様によれば、吊りボルト５の軸５ｂ回りに第１部材３０を回転させることにより、第１部材３０を上下方向に変位させることができる。

【0061】

天井下地吊金物１００を備える天井構造２００によれば、石膏ボード２を支持する天井下地パネルフレーム２１０を、天井下地吊金物１００を介して、梁１０に取り付けることができる。天井構造２００は、天井下地吊金物１００を備えることにより、作業者は、電動ドライバを用いて、吊りボルト５の軸５ｂを回すことで、石膏ボード２の高さを容易に調整できる。

【0062】

［第２実施形態に係る天井下地吊金物］
次に、図５を参照して、第２実施形態に係る天井下地吊金物１００Ｂについて説明する。図５は、第２実施形態に係る天井下地吊金物の要部を示す断面図である。第２実施形態に係る天井下地吊金物１００Ｂが、第１実施形態に係る天井下地吊金物１００と違う点は、第１部材３０の水平片３４にめねじ部３８が形成され、ナット７を備えていない点である。なお、第２実施形態の説明において、第１実施形態と同様の説明は省略する。

【0063】

めねじ部３８は、水平片３４を貫通する開口部の内周面に形成されている。水平片３４の開口部にタップ加工を施工することにより、めねじ部３８が形成されている。このめねじ部３８が吊りボルト５の軸５ｂに螺合することにより、第１部材３０が吊りボルト５によって吊り下げられる。

【0064】

吊りボルト５を回すことにより、第１部材３０を上下方向に変位させることができる。また、第１部材３０に天井下地パネルフレーム２１０が装着されていない状態において、第１部材３０を回すことにより、第１部材３０を上下方向に変位させることができる。

【0065】

このような第２実施形態に係る天井下地吊金物１００Ｂにおいても、第１実施形態と同様の作用効果を奏する。なお、天井下地吊金物１００Ｂにおいて、第１部材３０に固定された他の部材（取付プレート）にめねじ部３８が形成されていてもよい。

【0066】

［第３実施形態に係る天井下地吊金物］
次に、図６を参照して、第３実施形態に係る天井下地吊金物１００Ｃについて説明する。図６は、第３実施形態に係る天井下地吊金物の要部を示す断面図である。第３実施形態に係る天井下地吊金物１００Ｃが、第１実施形態に係る天井下地吊金物１００と違う点は、第１部材３０の上面３４ａに固定されたナット７に代えて、第１部材３０の下面３４ｂに固定されたナット７を備える点である。なお、第３実施形態の説明において、上記の第１及び第２実施形態と同様の説明は省略する。

【0067】

天井下地吊金物１００Ｃでは、ナット７は、水平片３４の下面３４ｂに溶接されている。係止片３７は、Ｙ軸方向においてナット７と重ならない位置に設けられている。また、ナット７は、Ｘ軸方向に対向する一対の主材２１１のリップ２１１ｃ間に配置されている。ナット７は、ボルト５の軸５ｂに螺合する。ナット７は、ボルト５の軸５ｂの軸方向において、上下に変位可能である。

【0068】

このような第３実施形態に係る天井下地吊金物１００Ｃにおいても、第１実施形態と同様の作用効果を奏する。

【0069】

尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。

【0070】

上記の実施形態に係る天井下地吊金物１００では、ナット７が第１部材３０の上面に固定されている場合について例示しているが、ナット７は第１部材３０に下面に固定されていてもよく、第１部材３０に埋め込まれていてもよい。また、ナット７は、水平片３４から離れた位置に配置されていてもよい。また、天井下地吊金物１００は、ナット７に代えて、めねじ部３８が形成されたプレート等を備えるものでもよい。天井下地吊金物では、吊りボルト５を回すことにより、第１部材３０を軸５ｂに沿って変位可能であればよい。

【0071】

上記の実施形態では、第２部材４０は、第１片４２、第２片４４、及び第３片４６を有する点について例示しているが、第２部材４０はこれに限定されない。第２部材４０は、Ｙ軸方向から見た場合に、直線的に形成されていてもよい。天井下地吊金物１００では、上下方向において、梁１０と第２部材４０との間に、つば部５ａが配置されていればよい。

【0072】

また、吊りボルト５のつば部５ａは、円盤状のものに限定されない。つば部５ａは、軸５ｂの径方向において、軸５ｂよりも張り出していればよい。天井下地吊金物１００では、つば部５ａを第２部材４０の上に載置して、軸５ｂが下方に延在していればよい。つば部５ａは、ボルトの頭でもよい。

【0073】

また、天井下地吊金物１００は、上下方向において第２部材４０とつば部５ａとの間に配置された防振部材を備えていてもよい。防振部材は、例えば、弾性部材でもよい。防振部材は、例えばゴム、フェルトでもよい。本態様によれば、つば部５ａと第２部材４０との間に防振部材が配置されていることにより、つば部５ａが回転する際の振動が第２部材４０へ伝達されることが抑制される。そのため、吊りボルトの回転に伴う音の発生が抑制される。なお、つば部５ａと下フランジ１３との間に、防振部材が配置されていてもよい。

【0074】

また、天井下地吊金物１００において、つば部５ａの下面５ｇと第２部材４０の水平片３４の上面３４ａとの間に、板バネ等の付勢部材（ばね部材）が配置されていてもよい。同様に、つば部５ａの上面５ｆと下フランジ１３の下面１３ｂとの間に、板バネ等の付勢部材が配置されていてもよい。このようなばね部材を備えることにより、吊りボルト５を上下方向に付勢することにより、ナット７を第１部材３０に押し当てて、ナット７の緩みを防止できる。

【0075】

また、上下方向において、第２部材４０の下面と、ナット７との間に圧縮コイルばね等（ばね部材）が配置されていてもよい。ばね部材は例えば板バネでもよい。このようなばね部材を設けることにより、ナット７を第１部材３０に押し当てて、ナット７の緩みを防止できる。

【符号の説明】

【0076】

１００，１００Ｂ，１００Ｃ：天井下地吊金物
２００：天井構造
２：石膏ボード（天井面材）
５：ボルト
５ａ：つば部
５ｂ：ボルトの軸
７：ナット
８：ボルト
９：ナット
１０：梁
１０Ａ：大梁（梁）
１０Ｂ：小梁（梁）
１１：ウェブ
１２：上フランジ
１３：下フランジ
３０：第１部材
３２：台座
３４：水平片
３４ａ：上面
３４ｂ：下面
３５：折り曲げ片
３６：リブ
３７：係止片
３７ａ：本体
３７ｃ：係合爪
３８：めねじ部
４０：第２部材
４２：第１片
４４：第２片
４４ａ：上面
４４ｂ：下面
４４ｃ：挿通穴
４６：第３片
７０：支持片
７２：立ち上がり部
２１０：天井下地パネルフレーム（天井下地材）
２１１：主材（野縁）
２１１ａ：本体片
２１１ｂ：係合片
２１１ｃ：リップ
２１２：繋ぎ材
２１３：繋ぎ補助材
２１３ａ：リップ

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】