IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JFEスチール株式会社の特許一覧

特開2024-108343耐火物レンガ原料の製造方法およびその製造設備、ならびに耐火物レンガ表層スラグの分離方法およびその分離設備
<>
  • 特開-耐火物レンガ原料の製造方法およびその製造設備、ならびに耐火物レンガ表層スラグの分離方法およびその分離設備 図1
  • 特開-耐火物レンガ原料の製造方法およびその製造設備、ならびに耐火物レンガ表層スラグの分離方法およびその分離設備 図2
  • 特開-耐火物レンガ原料の製造方法およびその製造設備、ならびに耐火物レンガ表層スラグの分離方法およびその分離設備 図3
  • 特開-耐火物レンガ原料の製造方法およびその製造設備、ならびに耐火物レンガ表層スラグの分離方法およびその分離設備 図4
  • 特開-耐火物レンガ原料の製造方法およびその製造設備、ならびに耐火物レンガ表層スラグの分離方法およびその分離設備 図5
  • 特開-耐火物レンガ原料の製造方法およびその製造設備、ならびに耐火物レンガ表層スラグの分離方法およびその分離設備 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108343
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】耐火物レンガ原料の製造方法およびその製造設備、ならびに耐火物レンガ表層スラグの分離方法およびその分離設備
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/35 20220101AFI20240805BHJP
   B07B 1/00 20060101ALI20240805BHJP
   B02C 13/02 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
B09B3/35 ZAB
B07B1/00 B
B02C13/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012655
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩飽 達宏
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 成人
【テーマコード(参考)】
4D004
4D021
4D065
【Fターム(参考)】
4D004AA16
4D004AA50
4D004BA06
4D004CA04
4D004CA07
4D004CB13
4D004DA03
4D004DA13
4D021AA01
4D021DB20
4D021EA10
4D065AA01
4D065BB13
4D065EA03
4D065EB20
4D065ED23
4D065EE02
(57)【要約】
【課題】耐火物レンガ表面の付着スラグをはがれやすい状態にして瞬間的な力を加え、耐火物レンガから表層付着スラグを分離するリサイクル用耐火物レンガ原料の製造方法およびその製造設備、耐火物レンガ表層スラグの分離方法およびその分離装置について提案することを目的とする。
【解決手段】使用済み耐火物レンガを所定以下の粒径に破砕する破砕工程と、所定範囲の粒径の耐火物レンガを得る第1篩工程と、耐火物レンガから表層スラグを分離するケレン工程と、所定範囲の粒径の耐火物レンガ原料を得る第2篩工程と、を含むリサイクル用耐火物レンガ原料の製造方法又は耐火物レンガの分離方法である。ケレン工程では、整粒機の回転ドラムは内刃を有する内ドラムと外刃を有する外ドラムを備え、内ドラムと外ドラムは、逆方向に回転し、内ドラムの回転数が外ドラムの回転数より多くすることが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リサイクル用耐火物レンガ原料を製造する方法であって、
使用済み耐火物レンガを所定以下の粒径に破砕する破砕工程と、
前記所定以下の粒径に破砕された耐火物レンガを篩に掛けて、所定範囲の粒径の耐火物レンガを得る第1篩工程と、
前記所定範囲の粒径の耐火物レンガから表層スラグを分離するケレン工程と、
ケレン工程で処理された耐火物レンガを篩に掛けて、所定範囲の粒径の耐火物レンガ原料を得る第2篩工程と、
を含むことを特徴とする耐火物レンガ原料の製造方法。
【請求項2】
使用済み耐火物レンガを粒径50mm以下に破砕する破砕工程と、
粒径50mm以下に破砕された耐火物レンガを篩に掛けて、粒径20~50mmの耐火物レンガを得る第1篩工程と、
粒径20~50mmの耐火物レンガから表層スラグを分離するケレン工程と、
ケレン工程で処理された耐火物レンガを篩に掛けて、粒径20~40mmの耐火物レンガ原料を得る第2篩工程と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の耐火物レンガ原料の製造方法。
【請求項3】
前記破砕工程で、耐火物レンガを粒径50~40mmまで破砕することを特徴とする請求項2に記載の耐火物レンガ原料の製造方法。
【請求項4】
前記ケレン工程で、軸線に沿って伸びる円筒状をなす回転ドラムは、内ドラムと回転軸が偏心する位置にある外ドラムとを有し、前記内ドラムの外周面に設けられた内刃と前記外ドラムの内周面に設けられた外刃により、耐火物レンガを整粒し、かつ耐火物レンガから表層スラグを分離することを特徴とする請求項2又は3に記載の耐火物レンガ原料の製造方法。
【請求項5】
前記回転ドラムの内ドラムと外ドラムは、逆方向に回転し、前記内ドラムの回転数が前記外ドラムの回転数の1.1~1.3倍であることを特徴とする請求項4に記載の耐火物レンガ原料の製造方法。ここで、回転数とは、単位時間あたりの回転数(Hz)をいう。
【請求項6】
前記外ドラムの回転数を75Hz超え125Hz未満とすることを特徴とする請求項5に記載の耐火物レンガ原料の製造方法。
【請求項7】
使用済み耐火物レンガを所定以下の粒径に破砕する破砕装置と、
前記所定以下の粒径に破砕された耐火物レンガを篩に掛けて、所定範囲の耐火物レンガを得る第1篩装置と、
前記所定範囲の粒径の耐火物レンガから表層スラグを分離するケレン装置と、
ケレン装置で処理された耐火物レンガを篩に掛けて、所定範囲の粒径の耐火物レンガ原料を得る第2篩装置と、を備え、
前記ケレン装置は、
内ドラムと回転軸が偏心する位置にある外ドラムとを有する軸線に沿って伸びる円筒状をなす回転ドラムであって、
前記内ドラムの外周面に設けられた内刃と、
前記外ドラムの内周面に設けられた外刃と、
前記内ドラムと前記外ドラムは、逆方向に回転し、かつ前記内ドラムの回転数が前記外ドラムの回転数より多い機構と、
を持つことを特徴とする耐火物レンガ原料の製造設備。
【請求項8】
使用済み耐火物レンガを粒径50mm以下に破砕する破砕装置と、
粒径50mm以下に破砕された耐火物レンガを篩に掛けて、粒径20~50mmの耐火物レンガを得る第1篩装置と、
粒径20~50mmの耐火物レンガから表層スラグを分離するケレン装置と、
ケレン装置で処理された耐火物レンガを篩に掛けて、粒径20~40mmの耐火物レンガ原料を得る第2篩装置と、
前記内ドラムと前記外ドラムは、前記内ドラムの回転数が前記外ドラムの回転数の1.1~1.3倍とする機構と、
を持つことを特徴とする請求項7に記載の耐火物レンガ原料の製造設備。
【請求項9】
前記外ドラムの回転数を75Hz超え125Hz未満とすることを特徴とする請求項8に記載の耐火物レンガ原料の製造設備。
【請求項10】
使用済み耐火物レンガを所定以下の粒径に破砕する破砕工程と、
前記所定以下の粒径に破砕された耐火物レンガを篩に掛けて、所定範囲の粒径の耐火物レンガを得る第1篩工程と、
前記所定範囲の粒径の耐火物レンガから表層スラグを分離するケレン工程と、
ケレン工程で処理された耐火物レンガを篩に掛けて、所定範囲の粒径の耐火物レンガ原料を得る第2篩工程と、
を含むことを特徴とする耐火物レンガ表層スラグの分離方法。
【請求項11】
使用済み耐火物レンガを粒径50mm以下に破砕する破砕工程と、
粒径50mm以下に破砕された耐火物レンガを篩に掛けて、粒径20~50mmの耐火物レンガを得る第1篩工程と、
粒径20~50mmの耐火物レンガから表層スラグを分離するケレン工程と、
ケレン工程で処理された耐火物レンガを篩に掛けて、粒径20~40mmの耐火物レンガ原料を得る第2篩工程と、
を含むことを特徴とする請求項10に記載の耐火物レンガ表層スラグの分離方法。
【請求項12】
前記破砕工程で、耐火物レンガ粒径50~40mmまで破砕することを特徴とする請求項11に記載の耐火物レンガ表層スラグの分離方法。
【請求項13】
前記ケレン工程で、軸線に沿って伸びる円筒状をなす回転ドラムは、内ドラムと回転軸が偏心する位置にある外ドラムとを有し、前記内ドラムの外周面に設けられた内刃と前記外ドラムの内周面に設けられた外刃により、耐火物レンガを整粒し、かつ耐火物レンガから表層スラグを分離することを特徴とする請求項11又は12に記載の耐火物レンガ表層スラグの分離方法。
【請求項14】
前記回転ドラムの内ドラムと外ドラムは、逆方向に回転し、前記内ドラムの回転数が前記外ドラムの回転数の1.1~1.3倍であることを特徴とする請求項13に記載の耐火物レンガ表層スラグの分離方法。ここで、回転数とは、単位時間あたりの回転数(Hz)をいう。
【請求項15】
前記外ドラムの回転数を75Hz超え125Hz未満とすることを特徴とする請求項14に記載の耐火物レンガ表層スラグの分離方法。
【請求項16】
使用済み耐火物レンガを所定以下の粒径に破砕する破砕装置と、
前記所定以下の粒径に破砕された耐火物レンガを篩に掛けて、所定範囲の耐火物レンガを得る第1篩装置と、
前記所定範囲の粒径の耐火物レンガから表層スラグを分離するケレン装置と、
ケレン装置で処理された耐火物レンガを篩に掛けて、所定範囲の粒径の耐火物レンガ原料を得る第2篩装置と、を備え、
前記ケレン装置は、
内ドラムと回転軸が偏心する位置にある外ドラムとを有する軸線に沿って伸びる円筒状をなす回転ドラムであって、
前記内ドラムの外周面に設けられた内刃と、
前記外ドラムの内周面に設けられた外刃と、
前記内ドラムと前記外ドラムは、逆方向に回転し、かつ前記内ドラムの回転数が前記外ドラムの回転数より多い機構と、
を持つことを特徴とする耐火物レンガ表層スラグの分離設備。
【請求項17】
使用済み耐火物レンガを粒径50mm以下に破砕する破砕装置と、
粒径50mm以下に破砕された耐火物レンガを篩に掛けて、粒径20~50mmの耐火物レンガを得る第1篩装置と、
粒径20~50mmの耐火物レンガから表層スラグを分離するケレン装置と、
ケレン装置で処理された耐火物レンガを篩に掛けて、粒径20~40mmの耐火物レンガ原料を得る第2篩装置と、
前記内ドラムと前記外ドラムは、前記内ドラムの回転数が前記外ドラムの回転数の1.1~1.3倍とする機構と、
を持つことを特徴とする請求項16に記載の耐火物レンガ表層スラグの分離設備。
【請求項18】
前記外ドラムの回転数を75Hz超え125Hz未満とすることを特徴とする請求項17に記載の耐火物レンガ表層スラグの分離設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み耐火物レンガに付着したスラグを分離する、リサイクル用耐火物レンガ原料の製造方法およびその製造設備、リサイクル用耐火物レンガ表層スラグの分離方法およびその分離設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、製銑工程特に製鉄におけるリサイクル効率を高めるために、製銑プロセスで使用される耐火物レンガを再利用することが提案されている。耐火物レンガとは、トピードレンガ、転炉レンガ等があり、一般的に耐火物レンガの稼働面(溶鋼やスラグと接触する面)側には、耐火物中の気孔を通して鉄やスラグが付着し、一部それ以外の面にもモルタルが付着している場合がある。耐火物をリサイクルする場合、これらが混入すると耐火物として耐用性が著しく低下して使えなくなるため取り除く必要がある。
現在は、手作業の打撃で、一つ一つの耐火物レンガ表面に付着したスラグを分離した後に破砕することで、耐火物レンガの一部しか再利用されていない。耐火物レンガのリサイクルを効率的に実施するためには、耐火物レンガからの付着スラグの分離を自動化かつ大量に実施できるようにする必要がある。
【0003】
特許文献1に記載されるドラム式ケレン装置や、特許文献2に記載されるウォータージェットケレン装置のように、金属ワークの表面に付着したセメント、モルタル、塗料等を自動的にケレン(除去)できるようにする装置はすでに提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-131400号公報
【特許文献2】特開2001-9390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術には以下のような問題がある。
上記のような耐火物レンガの表面に付着したスラグの分離を行う場合、耐火物レンガの硬度が9.6MPa、スラグが14.0MPaとなり、母材であるレンガの方が付着スラグよりも硬度が低い。このため、表面付着スラグのみをケレンする必要があるが、必要以上のケレンを行うとレンガの歩留まりが低下するため、特許文献1又は2に開示されたケレン装置をそのまま使用することが出来ない。したがって、表面付着スラグがはがれやすい状態にしたうえで、瞬間的な力を加え、表面付着スラグをレンガからはがして分離することが必要となる。
【0006】
また、従来の手作業でケレン作業を行った場合には、作業の能率及びランニングコスト等の面で満足のいくものではなかった。また、すでに提案されている自動ケレン装置を用いた場合は、上記で述べたように、母材であるレンガの方が付着スラグよりも硬度が低いため、耐火物レンガを大きく削ってしまい歩留まりが低下する問題があった。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであり、表面付着スラグがはがれやすい状態にしたうえで、瞬間的な力を加え、表面付着スラグとレンガをはがして分離することを可能とする、耐火物レンガからの表層付着スラグ分離方法およびその分離設備、耐火物レンガ原料の製造方法およびその製造設備について提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意、実験及び検討を行った。その結果、耐火物レンガを整粒する際に、事前に破砕を行うことによって付着スラグをはがれやすくし、この破砕後に整粒することで、耐火物レンガに付着したスラグを効率よく除去できることを見出した。
【0009】
上記課題を有利に解決する本発明にかかる耐火物スラグ原料の製造方法は以下のように構成される。
[1]リサイクル用耐火物レンガ原料を製造する方法であって、使用済み耐火物レンガを所定以下の粒径に破砕する破砕工程と、前記所定以下の粒径に破砕された耐火物レンガを篩に掛けて、所定範囲の粒径の耐火物レンガを得る第1篩工程と、前記所定範囲の粒径の耐火物レンガから表層スラグを分離するケレン工程と、ケレン工程で処理された耐火物レンガを篩に掛けて、所定範囲の粒径の耐火物レンガ原料を得る第2篩工程と、を含む耐火物レンガ原料の製造方法である。
[2]上記の[1]において、使用済み耐火物レンガを粒径50mm以下に破砕する破砕工程と、粒径50mm以下に破砕された耐火物レンガを篩に掛けて、粒径20~50mmの耐火物レンガを得る第1篩工程と、粒径20~50mmの耐火物レンガから表層スラグを分離するケレン工程と、ケレン工程で処理された耐火物レンガを篩に掛けて、粒径20~40mmの耐火物レンガ原料を得る第2篩工程と、を含む耐火物レンガ原料の製造方法である。
[3]上記の[2]において、前記破砕工程で、耐火物レンガを粒度50~40mmまで破砕する耐火物レンガ原料の製造方法である。
[4]上記の[2]又は[3]において、前記ケレン工程で、軸線に沿って伸びる円筒状をなす回転ドラムは、内ドラムと回転軸が偏心する位置にある外ドラムとを有し、前記内ドラムの外周面に設けられた内刃と前記外ドラムの内周面に設けられた外刃により、耐火物レンガを整粒し、かつ耐火物レンガから表層スラグを分離する耐火物レンガ原料の製造方法である。
[5]上記の[4]において、前記回転ドラムの内ドラムと外ドラムは、逆方向に回転し、前記内ドラムの回転数が前記外ドラムの回転数の1.1~1.3倍である耐火物レンガ原料の製造方法である。ここで、回転数とは、単位時間あたりの回転数(Hz)をいう。
[6]上記の[5]において、前記外ドラムの回転数を75Hz超え125Hz未満とする耐火物レンガ原料の製造方法である。
【0010】
上記課題を有利に解決する本発明にかかる耐火物レンガ原料の製造設備は以下のように構成される。
[7]使用済み耐火物レンガを所定以下の粒径に破砕する破砕装置と、前記所定以下の粒径に破砕された耐火物レンガを篩に掛けて、所定範囲の粒径の耐火物レンガを得る第1篩装置と、前記所定範囲の粒径の耐火物レンガから表層スラグを分離するケレン装置と、ケレン装置で処理された耐火物レンガを篩に掛けて、所定範囲の粒径の耐火物レンガを得る第2篩装置と、を備え、前記ケレン装置は、内ドラムと回転軸が偏心する位置にある外ドラムとを有する軸線に沿って伸びる円筒状をなす回転ドラムであって、前記内ドラムの外周面に設けられた内刃と、前記外ドラムの内周面に設けられた外刃と、前記内ドラムと前記外ドラムは、逆方向に回転し、かつ前記内ドラムの回転数が前記外ドラムの回転数より多い機構と、を持つ耐火物レンガ原料の製造設備である。
[8]上記の[7]において、使用済み耐火物レンガを粒径50mm以下に破砕する破砕装置と、粒径50mm以下に破砕された耐火物レンガを篩に掛けて、粒径20~50mmの耐火物レンガを得る第1篩装置と、粒径20~50mmの耐火物レンガから表層スラグを分離するケレン装置と、ケレン装置で処理された耐火物レンガを篩に掛けて、粒径20~40mmの耐火物レンガを得る第2篩装置と、を備え、前記ケレン装置は、内ドラムと回転軸が偏心する位置にある外ドラムとを有する軸線に沿って伸びる円筒状をなす回転ドラムであって、前記内ドラムの外周面に設けられた内刃と、前記外ドラムの内周面に設けられた外刃と、前記内ドラムと前記外ドラムは、逆方向に回転し、かつ前記内ドラムの回転数が前記外ドラムの回転数の1.1~1.3倍とする機構と、を持つ耐火物レンガ原料の製造設備である。
[9]上記の[8]において、前記外ドラムの回転数を75Hz超え125Hz未満とする耐火物レンガ原料の製造設備である。
【0011】
上記課題を有利に解決する本発明にかかる耐火物レンガ表層スラグの分離方法は以下のように構成される。
[10]使用済み耐火物レンガを所定以下の粒径に破砕する破砕工程と、前記所定以下の粒径に破砕された耐火物レンガを篩に掛けて、所定範囲の粒径の耐火物レンガを得る第1篩工程と、前記所定範囲の粒径の耐火物レンガから表層スラグを分離するケレン工程と、ケレン工程で処理された耐火物レンガを篩に掛けて、所定範囲の粒径の耐火物レンガ原料を得る第2篩工程と、を含む耐火物レンガ表層スラグの分離方法である。
[11]上記の[10]において、使用済み耐火物レンガを粒径50mm以下に破砕する破砕工程と、粒径50mm以下に破砕された耐火物レンガを篩に掛けて、粒径20~50mmの耐火物レンガを得る第1篩工程と、粒径20~50mmの耐火物レンガから表層スラグを分離するケレン工程と、ケレン工程で処理された耐火物レンガを篩に掛けて、粒径20~40mmの耐火物レンガ原料を得る第2篩工程と、を含む耐火物レンガ表層スラグの分離方法である。
[12]上記の[11]において、前記破砕工程で、耐火物レンガ粒径50~40mmまで破砕する耐火物レンガ表層スラグの分離方法である。
[13]上記の[11]又は[12]において、前記ケレン工程で、軸線に沿って伸びる円筒状をなす回転ドラムは、内ドラムと回転軸が偏心する位置にある外ドラムとを有し、前記内ドラムの外周面に設けられた内刃と前記外ドラムの内周面に設けられた外刃により、耐火物レンガを整粒し、かつ耐火物レンガから表層スラグを分離する耐火物レンガ表層スラグの分離方法である。
[14]上記の[13]において、前記回転ドラムの内ドラムと外ドラムは、逆方向に回転し、前記内ドラムの回転数が前記外ドラムの回転数の1.1~1.3倍である耐火物レンガ表層スラグの分離方法である。ここで、回転数とは、単位時間あたりの回転数(Hz)をいう。
[15]上記の[14]において、前記外ドラムの回転数を75Hz超え125Hz未満とする耐火物レンガ表層スラグの分離方法である。
【0012】
上記課題を有利に解決する本発明にかかる耐火物レンガ表層スラグの分離設備は以下のように構成される。
[16]使用済み耐火物レンガを所定以下の粒径に破砕する破砕装置と、前記所定以下の粒径に破砕された耐火物レンガを篩に掛けて、所定範囲の耐火物レンガを得る第1篩装置と、前記所定範囲の粒径の耐火物レンガから表層スラグを分離するケレン装置と、ケレン装置で処理された耐火物レンガを篩に掛けて、所定範囲の粒径の耐火物レンガ原料を得る第2篩装置と、を備え、前記ケレン装置は、内ドラムと回転軸が偏心する位置にある外ドラムとを有する軸線に沿って伸びる円筒状をなす回転ドラムであって、前記内ドラムの外周面に設けられた内刃と、前記外ドラムの内周面に設けられた外刃と、前記内ドラムと前記外ドラムは、逆方向に回転し、かつ前記内ドラムの回転数が前記外ドラムの回転数より多い機構と、を持つ耐火物レンガ表層スラグの分離設備である。
[17]上記の[16]において、使用済み耐火物レンガを粒径50mm以下に破砕する破砕装置と、粒径50mm以下に破砕された耐火物レンガを篩に掛けて、粒径20~50mmの耐火物レンガを得る第1篩装置と、粒径20~50mmの耐火物レンガから表層スラグを分離するケレン装置と、ケレン装置で処理された耐火物レンガを篩に掛けて、粒径20~40mmの耐火物レンガ原料を得る第2篩装置と、前記内ドラムと前記外ドラムは、前記内ドラムの回転数が前記外ドラムの回転数の1.1~1.3倍とする機構と、を持つ耐火物レンガ表層スラグの分離設備である。
[18]上記の[17]において、前記外ドラムの回転数を75Hz超え125Hz未満とする耐火物レンガ表層スラグの分離設備である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、破砕工程、篩工程、整粒工程(ケレン工程)、篩工程に使用済みの耐火物レンガを通すことで、耐火物レンガ表面に付着しているスラグを分離することができる。その結果、耐火物レンガ表面におけるスラグの残存率は2.7%以下、耐火物レンガの歩留りは70%以上を達成でき、高品質で大量のリサイクル用耐火物レンガ原料を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)は従来のリサイクル用耐火物レンガ原料の製造方法フローであり、(b)は本発明のリサイクル用耐火物レンガ原料の製造方法フローである。
図2】ケレン工程におけるケレン装置の模式図である。
図3】(a)は、手作業によるケレン方法を用いたリサイクル用耐火物レンガ原料の製造説明図であり(従来方法)、(b)は、回転ドラムによるケレン方法を用いたリサイクル用耐火物レンガ原料の製造説明図であり(従来方法)、(c)は、本発明の実施形態の一例を示したリサイクル用耐火物レンガ原料の製造説明図である。
図4】耐火物レンガの大きさ(粒径)とそのレンガに付着したスラグの含有割合の関係を示すグラフである。
図5】ケレン装置の外回転ドラムの回転数が、耐火物レンガに付着するスラグの含有割合へ及ぼす影響を示すグラフである。
図6】ケレン装置の外回転ドラムの回転数が、耐火物レンガの歩留まりへ及ぼす影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施する方法について具体的に説明する。なお、以下の説明は、本発明の好適な実施態様を示すものであり、本発明は以下の説明によって何ら限定されるものではない。
本発明の一実施形態であるリサイクル用耐火物レンガ原料の製造設備と製造方法、並びに耐火物レンガ表層スラグ分離方法と分離設備を併せて説明する。
【0016】
図1および図3に示すように、本発明の実施形態に係るリサイクル用耐火物レンガ原料の製造および耐火物レンガ表層スラグの分離は、下記(1)~(4)の工程を含む。
(1)破砕工程
(2)第1篩工程
(3)ケレン工程
(4)第2篩工程
【0017】
まず、本発明の一実施形態である耐火物レンガ原料の製造設備、耐火物レンガ表層スラグの分離設備について詳細に説明する。
<耐火物レンガ原料の製造設備、耐火物レンガ表層スラグの分離設備>
本実施形態の一例として図2および図3にリサイクル用耐火物レンガ原料の製造設備、耐火物レンガ表層スラグの分離設備を示す。
本実施形態の製造設備および分離設備は、使用済み耐火物レンガを所定以下の粒径に破砕する破砕装置と、所定以下の粒径に破砕された耐火物レンガを篩に掛けて、所定範囲の耐火物レンガを得る第1篩装置と、所定範囲の粒径の耐火物レンガから表層スラグを分離するケレン装置と、ケレン装置で処理された耐火物レンガを篩に掛けて、所定範囲の粒径の耐火物レンガ原料を得る第2篩装置と、を備える。
【0018】
破砕装置
破砕装置は、使用済み耐火物レンガを、ジョークラッシャーなどの破砕機を用いて粉砕する。例えば、粒径50mm以下の耐火物レンガが、クラッシャーから落下するようにクラッシャーの両刃の間隔を設定する。
ここで、耐火物レンガの粒径とは、円相当径を粒径とする。
【0019】
第1篩装置
第1篩装置は、使用済み耐火物レンガが、破砕装置により、例えば、粒径50mm以下の耐火物レンガから粒径20~50mmの耐火物レンガを選別する篩である。粒径20mm以上とは、目開き20mmの篩の篩上となることをいう。この篩分けにより異なる複数の画分の耐火物レンガを分離回収する。第1篩装置は、目開き20mmの篩を使用するが、選別して目的とする粒径により、種々のサイズの篩を設定することができる。また、第1篩装置は、異種サイズの目開きの篩で構成してもよい。
【0020】
ケレン装置(整粒装置)
図2にケレン装置の一例であるPGS整粒機5を示す。ケレン装置は、軸線に沿って伸びる円筒状をなす内ドラム7とその内ドラムを覆う外ドラム6の2機の回転ドラムからなり、外ドラム6は内ドラム7と回転軸51が偏心する位置にある。内ドラム7の外周面に内刃71が、螺旋状に個々の刃が並び取り付けられている。外ドラム6の内周面に外刃61が、螺旋状に個々の刃が並び取り付けられている。なお、本発明では、整粒装置は、PGS整粒機に限定しない。
内ドラムと外ドラムは、逆方向に回転し、前記内ドラムの回転数が前記外ドラムの回転数より多い機構を持つ。好ましくは、内ドラムの回転数が外ドラムの回転数の1.1~1.3倍となる機構とする。
【0021】
第2篩装置
第2篩装置は、ケレン工程を経た耐火物レンガ、スラグなどの物体から粒径20~40mmの耐火物レンガを選別する篩である。この篩分けにより粒径20~40mmの耐火物レンガを分離回収する。第2篩装置は、20mm篩を使用するが、選別して目的とする粒径により、種々のサイズの篩を設定することができる。また、第2篩装置は、異種サイズの目開きの篩で構成してもよい。ここで、粒径20~40mmとは、目開き40mmの篩の篩下であって、目開き20mmの篩の篩上であることをいう。
【0022】
次に、本発明の一実施形態である耐火物レンガ原料の製造方法、耐火物レンガ表層スラグの分離方法について詳細に説明する。
<耐火物レンガ原料の製造方法、耐火物レンガ表層スラグの分離方法>
本実施形態の製造方法および分離方法は、耐火物レンガを所定以下の粒径に破砕する破砕工程と、前記所定以下の粒径に破砕された耐火物レンガを篩に掛けて、所定範囲の粒径の耐火物レンガを得る第1篩工程と、前記所定範囲の粒径の耐火物レンガから表層スラグを分離するケレン工程と、ケレン工程で処理された耐火物レンガを篩に掛けて、所定範囲の粒径の耐火物レンガ原料を得る第2篩工程と、を含む方法である。
【0023】
破砕工程
使用済み耐火物レンガを破砕装置で分離する。この破砕工程において、使用済み耐火物レンガの粒径50mm以下に破砕することが重要である。これは、リサイクルに必要となる耐火物レンガ粒径を保ちつつ、耐火物レンガ粒径50mm以下とすることで、表面付着スラグの付着面積を小さくすることで次のケレン工程(整粒工程)により、スラグをはがしやすくする効果があるためである。好ましくは、耐火物レンガ粒径が50~40mmとなるように破砕する。
【0024】
第1篩工程
破砕工程を経た粒径50mm以下の耐火物レンガは、続いて、第1篩工程として、篩目開き20mmとする篩により粒径20~50mmの耐火物レンガと粒径20mm以下の耐火物レンガ、スラグを選別する。この篩分けにより粒径20~50mmの耐火物レンガを次工程用として分離回収する。
【0025】
ケレン工程(整粒工程)
次いで、ケレン工程では、第1篩工程後の粒径20~50mmの耐火物レンガから表面付着スラグを分離する。このケレン工程で乾式回転ドラム整粒機を用いて耐火物レンガの表面付着スラグを分離する。本発明では、上記のケレン装置を使用する。
【0026】
ここで、図2に示す整粒装置の一例であるPGS整粒機を用いて、耐火物レンガの表面に付着するスラグの分離能力解析実験を行った。
なお、リサイクル用耐火物レンガの使用される環境から、リサイクル用耐火物レンガの目標値を、表面付着スラグの含有率は2.7mass%以下、耐火物レンガ歩留り(リサイクル用耐火物レンガに利用される使用済み耐火物レンガの割合)は70%以上とした。
【0027】
図4に耐火物レンガの粒径が耐火物レンガの表面に付着するスラグの含有率(mass%)に及ぼす影響のグラフを示す。
これより、耐火物レンガの破砕粒径を50mm以下にすることで、表面付着スラグの残存率(含有率)を2.7mass%以下まで下げることができる。
【0028】
また、PGS整粒機の回転ドラム(外ドラム)の回転速度を変更し、表面付着スラグの含有率および耐火物レンガ歩留りを評価した試験結果を図5および図6に示す。
図5より、外ドラム回転数(Hz)を75超えとすることにより、耐火物レンガの表面に付着するスラグの含有率を2.7mass%以下とすることができる。
図6より、外ドラム回転数(Hz)を125未満とすることにより、耐火物レンガ歩留りを70%以上とすることができる。
【0029】
このように、ケレン工程を活用する理由は、第1篩工程で粒径20~50mmとした耐火物レンガから表面付着スラグをはがすうえで、スラグ残存率2.7%以下、耐火物レンガ歩留まり70%以上を保つ効果があるためである。
【0030】
ケレン工程において、上記のケレン装置における回転ドラムの内ドラムと外ドラムは、逆方向に回転し、内ドラムの回転数が外ドラムの回転数の1.1~1.3倍とすることが好ましい。ここで、回転数とは、単位時間あたりの回転数(Hz)をいう。
逆回転するのは、より効率的に整粒し、耐火物レンガから表面付着スラグをはがすことができるからである。また、内ドラムの回転数を外ドラムの回転数より多くするのは、内ドラムと外ドラムの挟圧部で耐火物レンガが閉塞を起こさないようにするためである。一方、内ドラムの回転数が外ドラムの回転数より多すぎると耐火物レンガが挟圧部まで運ばれず、レンガ表面の整粒効率が下がるため、内ドラムの回転数は、外ドラムの回転数の1.1~1.3倍とする。
【0031】
さらに、外ドラムの回転数を75Hz超え125Hz未満とすることが好ましい。
外ドラム回転数(Hz)を75超え125未満とすることにより、耐火物レンガの表面に付着するスラグの含有率を2.7mass%以下とし、かつ、耐火物レンガ歩留りを70%以上とすることができる。
【0032】
第2篩工程
次に、第2篩工程により、ケレン工程(整粒工程)の耐火物レンガ、分離された表面付着スラグを篩により異なる複数の画分に分離回収する。ここでは、篩目開きを40mmとすることで、篩上に粒径40~50mmの耐火物レンガ原料、篩下に表面付着スラグを含むそれ以外の物質に分ける効果がある。
これらの工程によって、耐火物レンガから表面付着スラグを高精度かつ大量に分離することが可能となる。
【実施例0033】
図1(a)に示す方法により、使用済み耐火物レンガからリサイクル用耐火物レンガ原料を製造した。ケレン工程では、PGS整粒機を使用して、回転ドラムの内ドラムと外ドラムは、逆方向に回転させ、内ドラムの回転数は120Hz、外ドラムの回転数は100Hzで実施した。
これによって、本発明の実施では、従来方法では満たせなかった処理量4t/hを実現しつつ、表面付着スラグ含有率(残存率)2.5mass%、耐火物レンガ歩留り74%が得られた。
【0034】
なお、上記の実施例では本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限るものでない。
【符号の説明】
【0035】
5 整粒機
51 回転軸
6 外ドラム
61 外ドラム刃(外刃)
7 内ドラム
71 内ドラム刃(内刃)
8 圧力
9 外ドラム回転方向
10 内ドラム回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6