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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108346
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】基板処理装置及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240805BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20240805BHJP
   H01L 21/308 20060101ALI20240805BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20240805BHJP
   G03F 7/42 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 647Z
H01L21/304 648K
H01L21/304 643A
H01L21/306 R
H01L21/308 G
H01L21/30 572B
G03F7/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012659
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 裕次
【テーマコード(参考)】
2H196
5F043
5F146
5F157
【Fターム(参考)】
2H196AA25
2H196LA01
5F043AA40
5F043BB30
5F043DD07
5F043DD13
5F043EE07
5F043EE08
5F146MA02
5F146MA03
5F146MA05
5F146MA06
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB33
5F157AB90
5F157BB22
5F157BC03
5F157BD43
5F157BE12
5F157BE23
5F157BE43
5F157CF04
5F157CF14
5F157CF34
5F157CF38
5F157CF42
5F157CF44
5F157CF60
5F157CF99
5F157DB02
5F157DB03
5F157DB12
5F157DB41
5F157DC84
5F157DC86
(57)【要約】      (修正有)
【課題】処理液の使用量の増大を抑えて、処理性能の維持が可能な基板処理装置及び基板処理方法を提供する。
【解決手段】実施形態の基板処理装置1は、硫酸を含む処理液により基板Wを処理する処理部10と、処理液を処理部10に供給する処理液供給部20と、処理部10に供給される処理液を加熱する加熱部27と、処理部10に供給される処理液に、氷水を供給する氷水供給部30と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸を含む処理液により基板を処理する処理部と、
前記処理液を前記処理部に供給する処理液供給部と、
前記処理部に供給される前記処理液を加熱する加熱部と、
前記処理部に供給される前記処理液に、氷水を供給する氷水供給部と、
を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記処理液供給部は、前記処理液を貯留する貯留部を有し、
前記貯留部には、前記処理液と、前記氷水供給部からの前記氷水とを混合する混合管が接続されていることを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記混合管は、前記処理部からの前記処理液を、前記貯留部に戻す液戻し部に設けられていることを特徴とする請求項2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記氷水供給部は、水にガスを供給することにより凍結させるガス供給部を有することを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記氷水における氷と水の質量は、水よりも氷の方が大きいことを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記氷水における氷と水の質量の比が100:37~100:15であることを特徴とする請求項5記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記処理液における硫酸の濃度を検出する検出部と、
前記検出部による検出値に基づいて、前記氷水の供給量を制御する制御部と、
を有することを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項8】
硫酸を含む処理液によって基板を処理する基板処理方法であって、
加熱部により前記処理液を加熱する加熱処理と、
氷水供給部により前記処理液に氷水を供給する氷水供給処理と、
を含むことを特徴とする基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や液晶パネルなどの製造工程では、ウェーハや液晶基板などの基板の処理対象面に処理液を供給し、処理対象面を処理する基板処理装置が用いられている。この基板処理装置の中には、バッチ式の装置、枚葉式の装置が存在する。バッチ式は、複数枚の基板を一括して処理液に浸漬させて処理するため、生産性が高い。枚葉式は、基板を回転させながら、基板の回転中心付近にエッチング用の処理液を供給して、基板の表面に処理液を遠心力により広げて、基板を一枚ずつ処理するため、各基板に形成された膜厚等の相違に応じて、基板ごとにエッチングの深さ等を細かく調整できる。
【0003】
このような基板処理装置においては、加熱されて高温となった処理液が、処理に用いられる場合がある。例えば、硫酸を含む溶液(以下、硫酸溶液とする)が、100℃以上に加熱され、レジスト剥離に用いられる。また、処理液として高温(例えば、160℃など)のSPM(硫酸溶液及び過酸化水素水の混合液)が使用される場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-165842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
硫酸溶液を高温(例えば、100℃以上)にすると、硫酸HSOから水HOが脱離し、三酸化硫黄SOが発生する。処理液中の三酸化硫黄の割合が高くなると、酸化性能の高い発煙硫酸が生じる。このため、所望の酸化性能となるように処理液を調節することが難しくなる。処理液における硫酸(濃硫酸)の濃度が低くなるなど、所望の酸化性能が得られなくなった場合には、例えば、硫酸溶液を廃棄して新たな硫酸溶液を使用する必要がある。すると、硫酸溶液の使用量が増大することになる。
【0006】
これに対処するため、処理液に水を添加して硫酸を希釈することにより、処理液中の硫酸濃度を調節することも考えられる。しかし、硫酸溶液に水を添加すると、硫酸と水との反応熱が大きいため、処理液の温度を制御し難くなる。処理液の温度も処理性能に大きく影響するため、水の添加により高温になり過ぎると、所望の処理性能を得ることができない。
【0007】
本発明の実施形態の目的は、処理液の使用量の増大を抑えて、処理性能の維持が可能な基板処理装置及び基板処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る基板処理装置は、硫酸を含む処理液により基板を処理する処理部と、前記処理液を前記処理部に供給する処理液供給部と、前記処理部に供給される前記処理液を加熱する加熱部と、前記処理部に供給される前記処理液に、氷水を供給する氷水供給部と、を有する。
【0009】
実施形態に係る基板処理方法は、硫酸を含む処理液によって基板を処理する基板処理方法であって、加熱部により前記処理液を加熱する加熱処理と、氷水供給部により前記処理液に氷水を供給する氷水供給処理と、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、処理液の使用量の増大を抑えて、処理性能の維持が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態の基板処理装置の概略構成を示す図である。
図2】第2の実施形態の基板処理装置の概略構成を示す図である。
図3】第3の実施形態の基板処理装置の概略構成を示す図である。
図4】変形例の基板処理装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施形態]
第1の実施形態の基板処理装置を、図面を参照して説明する。図1に示すように、基板処理装置1は、処理液によって基板Wを処理する装置である。処理液は、硫酸を含む溶液、つまり硫酸溶液である。本実施形態の処理液は、水を溶媒、硫酸を溶質とする濃硫酸である。処理対象となる基板Wは、例えば、ウェーハや液晶基板などであり、処理対象面Waにマスク用などのレジスト膜(レジスト層)を有している。処理液による処理は、硫酸溶液によるレジスト膜の除去である。なお、図1において、処理液の流れを実線の矢印で示し、氷水の流れを点線の矢印を示し、混合液の流れを実線と点線の矢印を並べて示す。
【0013】
[構成]
図1に示すように、基板処理装置1は、処理部10、処理液供給部20、氷水供給部30、混合管40、液戻し部50、制御部60を有する。
【0014】
(処理部)
処理部10は、処理液により基板Wを処理する。本実施形態の処理部10は、基板Wを1枚ずつ回転させながら、処理対象面Waに処理液を供給することにより処理する枚葉式である。処理部10は、テーブル11、回転機構12、カップ13を有する。テーブル11は図示しないチャンバ内に配置され、基板Wを水平状態で保持して回転可能な円板状の部材である。テーブル11は、複数の保持部材11aを有する。保持部材11aは、基板Wの外周に接離可能に設けられたピンなどの部材である。保持部材11aは、図示しない開閉機構によって、基板Wの外周に接して基板Wを保持する保持位置と、基板Wの外周から離れて基板Wを開放する開放位置との間を移動する。
【0015】
回転機構12は、テーブル11を回転させる機構である。回転機構12は、円形のテーブル11の中央を回転中心として、テーブル11を回転させる。この回転機構12は、テーブル11の中央に連結された回転軸やその回転軸を回転させるモータ(いずれも図示せず)などを具備している。
【0016】
カップ13は、テーブル11を周囲から囲んで、内部に間隔を空けて収容する円筒形状の部材である。カップ13の周壁の上部は、径方向の内側に向かって傾斜しており、テーブル11上の基板Wの処理対象面Waが露出するように開口している。このカップ13は、回転する基板Wの処理対象面Waやその反対面から飛散した処理液などを受ける。
【0017】
(処理液供給部)
処理液供給部20は、処理部10に処理液を供給する。処理液供給部20は、原液管21、貯留部22、給液管23、ノズル24、ポンプ25、検出部26、加熱部27、逆止弁28、開閉弁29を有する。原液管21は、工場などにおける処理液、つまり硫酸溶液の供給源に接続された配管である。
【0018】
貯留部22は、処理液を貯留する容器である。貯留部22は、原液管21に接続され、原液管21からの硫酸溶液が流入する。貯留部22には、加熱部22aが設けられている。加熱部22aは、例えば、貯留部22の内底部に配置されたヒータである。加熱部22aは、貯留部22において貯留した処理液を加熱することにより、処理部10に供給される処理液の温度を予め調整する。また、貯留部22においては、後述するように、氷水と処理液とが混合された混合液が流入することによって、処理液の硫酸の濃度及び温度が調整される。なお、貯留部22には、内部で発生した蒸気を排気するための排気管(不図示)も接続されている。
【0019】
給液管23は、貯留部22からの処理液が流通する配管である。給液管23の一端は貯留部22に接続されている。ノズル24は、処理液を基板Wの処理対象面Waに吐出する。ノズル24は、給液管23の他端に設けられている。ノズル24は、回転する基板Wの処理対象面Waの中央付近(中心からずれた位置)に、処理液を吐出する位置に設けられている。このように、中心からずれた位置に処理液を供給することにより、回転する基板Wの同じ位置に処理液が供給され続けることを防止して、処理対象面Waが均一に処理されるようにしている。
【0020】
ポンプ25は、貯留部22からの処理液をノズル24に送り出す装置である。検出部26は、処理液における硫酸の濃度を検出する装置である。検出部26は、例えば、粘度計を用いる。加熱部27は、処理部10に供給される処理液を加熱する加熱装置である。加熱部27は、例えばヒータである。
【0021】
加熱部27によって、ノズル24から吐出される処理液の温度が、予め調整される。つまり、加熱部27は、貯留部22において加熱された処理液の温度低下を補うとともに、氷水と処理液との混合液が流入した処理液を加熱して、処理に適した温度とする。例えば、加熱部27は、処理液を180℃~200℃に加熱することが好ましい。逆止弁28は、ノズル24に供給される処理液の逆流を防止する弁である。開閉弁29は、ノズル24から基板Wへの処理液の供給の有無を切り替える弁である。
【0022】
(氷水供給部)
氷水供給部30は、処理部10に供給する処理液に氷水を供給する。氷水は、純水からなる氷と純水とを含む。つまり、氷水は、固体である氷と液体である純水を含む流動体である。氷は配管内での流動性を損なわない程度の粒状である。
【0023】
氷水供給部30は、給水部31、給氷部32、氷水生成部33、氷水流通部34を有する。給水部31は、純水を供給する。給水部31は、給水管311、調整弁312を有する。給水管311は、工場などにおける純水の供給源に接続された配管である。調整弁312は、給水管311を開閉して、純水の供給の有無を切り替えるとともに、供給量を調整する弁である。
【0024】
給氷部32は、製氷機321、給氷管322、調整弁323を有する。製氷機321は、純水から氷を製造する装置である。給氷管322は、製氷機321に接続され、製氷機321で製造された氷が流通する配管である。調整弁323は、給氷管322を開閉して、氷の供給の有無を切り替えるとともに、供給量を調整する弁である。
【0025】
氷水生成部33は、氷水を生成する。氷水生成部33は、給水管311と給氷管322が接続され、給水管311からの純水と、給氷管322からの氷を混合する容器331を有する。調整弁312、323が、給水部31の供給量と給氷部32からの氷の供給量を調整することにより、氷と水の質量の比を所望の値とすることができる。
【0026】
氷水流通部34は、氷水生成部33からの氷水が流通する。氷水流通部34は、氷水供給管341、ポンプ342、逆止弁343、調整弁344を有する。氷水供給管341は、氷水生成部33に接続され、氷水生成部33からの氷水を貯留部22に供給する配管である。但し、氷水供給管341は、貯留部22に直接接続されておらず、後述する混合管40を介して貯留部22に接続されている。
【0027】
ポンプ342は、氷水生成部33からの氷水を、送り出す装置である。逆止弁343は、氷水供給管341の氷水の逆流を防止する弁である。調整弁344は、氷水生成部33から、混合管40を介して貯留部22に供給される氷水の供給量を調整する弁である。
【0028】
(混合管)
混合管40は、処理部10に供給される処理液に、氷水供給部30からの氷水を混合する。給液管23から分岐して、貯留部22に接続された分岐管23aの一部である。つまり、混合管40は、貯留部22から給液管23に流入した処理液が、貯留部22に戻る循環路Cに含まれる。混合管40には、氷水供給部30の氷水供給管341が接続されている。これにより、給液管23から混合管40を介して貯留部22に戻る処理液に、氷水供給管341からの氷水が流入するので、混合管40内で処理液と氷水が混合されて、貯留部22に流入する。なお、分岐管23aには、循環路Cの開閉を行う開閉弁23bが設けられている。
【0029】
(液戻し部)
液戻し部50は、処理部10において使用された処理液を、貯留部22に戻す。液戻し部50は、カップ13が受けた処理液を排出する排液口と、貯留部22との間に接続された配管である戻し管51を有する。
【0030】
(制御部)
制御部60は、基板処理装置1の各部を制御する。制御部60は、基板処理装置1の各種の機能を実現するべく、プログラムを実行するプロセッサと、プログラムや動作条件などの各種情報を記憶するメモリ、各要素を駆動する駆動回路を有する。つまり、制御部60は、処理部10、処理液供給部20、氷水供給部30などを制御する。また、制御部60は、情報を入力する入力装置、情報を表示する表示装置を有している。
【0031】
制御部60は、回転機構12、開閉弁23b、ポンプ25、加熱部27、開閉弁29、加熱部22a、加熱部27、開閉弁29、調整弁312、製氷機321、調整弁323、ポンプ342、調整弁344に接続され、これらの駆動を制御する。特に、本実施形態の制御部60は、検出部26により検出された検出値に基づいて、氷水の供給量を制御する。本実施形態の検出部26は粘度計を用いる。硫酸は、濃度が高いと粘度も高くなるので、制御部60は、検出値である粘度が所定のしきい値よりも高くなったことを判定した場合に、酸化性能を維持するために氷水を供給する。つまり、濃度の検出には、間接的に濃度を検出する場合も含まれる。
【0032】
また、制御部60は、処理液に混合される際の氷水における氷と水との質量が、水よりも氷の方が大きくなるように、調整弁312、調整弁323を制御することにより、氷水生成部33への純水の供給量、氷の供給量を調整する。より具体的には、制御部60は、氷水における氷と水との質量の比が100:37~100:15となるように制御する。さらに、制御部60は、処理部10に供給される処理液が、処理に適した温度、例えば、180℃~200℃程度に維持されるように、加熱部22a、加熱部27を制御する。
【0033】
[動作]
上記のような構成の基板処理装置1の動作を説明する。なお、以下のような基板処理装置1による基板処理方法、処理基板製造方法も本実施形態の一態様である。
【0034】
(処理液の加熱)
まず、処理部10への処理液の供給による基板Wの処理動作を説明する。処理開始前は、開閉弁29は閉じている。処理液は、原液管21を介して貯留部22に供給されて貯留され、加熱部22aによって加熱される。貯留部22で加熱された処理液は、ポンプ25により給液管23に送り出されて、混合管40を含む分岐管23aを介して貯留部22に戻ることで、循環路Cを循環する。このように、循環路Cで加熱することにより、処理液全体の温度を一定に維持し易くなる。
【0035】
(氷水の生成)
また、氷水の生成動作について説明する。調整弁312、調整弁323が開いて、給水管311から氷水生成部33へ純水が供給され、製氷機321から給氷管322を介して氷水生成部33へ氷が供給されることにより、氷水が生成される。制御部60は、純水と氷の質量の比が所望の値となるように、調整弁312及び調整弁323の開度を制御することにより、純水及び氷の供給量を調整する。
【0036】
(処理液の供給)
処理部10には、搬送ロボットにより基板Wがテーブル11上に搬入され、保持部材11aが開放位置から保持位置に移動することにより、基板Wを保持する。回転機構12がテーブル11を回転させることにより、基板Wが回転を開始する。開閉弁29が開くことにより、給液管23を介してノズル24へ流れる処理液が、加熱部27によって所定の温度まで加熱されて、ノズル24から基板Wの処理対象面Waの中央付近に吐出する。
【0037】
処理液は、遠心力によって処理対象面Waの中央付近から、外周に向かって広がることにより、処理対象面Waの全体に行き渡って液膜を形成する。これにより、処理液が処理対象面Waのレジストを除去する。
【0038】
(氷水の供給)
以上のような処理液による処理においては、処理液が高温となることにより、硫酸HSOの濃度が低下する。これは、上記のように、硫酸HSOから水HOが脱離し、三酸化硫黄SOが発生することによる。すると、酸化性能が高い発煙硫酸が生じるため、所望の処理性能を得られない。本実施形態では、検出部26により検出される処理液の粘度から、硫酸の濃度を間接的に検出し、粘度がしきい値を超える場合には、氷水供給部30が処理液に氷水を供給する。
【0039】
すなわち、調整弁344が開いて、ポンプ342が作動することにより、氷水生成部33からの氷水が、氷水供給管341を介して混合管40に供給される。これにより、混合管40を流れる処理液に氷水が混合される。すると、水により硫酸が希釈されるので、処理液の硫酸の濃度が低下する。このとき、硫酸と水による発熱反応が発生することになるが、硫酸と固体である氷による吸熱反応により、温度上昇による酸化力の上昇を抑えることができる。
【0040】
このように基板処理に適した温度及び硫酸濃度から逸脱するような変化を抑えるために、氷と水の質量は、水よりも氷の方を大きくして、温度上昇を抑える吸熱反応量が確保できるようにする。氷水は、氷と水の質量の比が100:37であると、硫酸と水による発熱反応と、硫酸と氷による吸熱反応の均衡がとれる。このため、氷と水の質量の比を100:37とすれば、温度を変化させることなく、硫酸濃度を下げることができる。但し、吸熱反応による温度低下量を、加熱部22a、27による加熱で、所定の温度に制御できればよい。従って、例えば、氷水における氷と水の質量の比が、100:37~100:15とすることが好ましい。
【0041】
なお、氷水における氷と水の質量の比は、氷水供給管341を経ることによる変化が小さい場合には、氷水生成部33において、上記の値となっていればよい。氷水供給管341を経ることによる変化が大きい場合には、混合管40に混合される直前に、質量の比が上記の値となるように、氷水生成部33における混合比を予め試験等により求めておいて調整してもよい。
【0042】
[効果]
(1)本実施形態の基板処理装置1は、硫酸を含む処理液により基板Wを処理する処理部10と、処理液を処理部10に供給する処理液供給部20と、処理部10に供給される処理液を加熱する加熱部27と、処理部10に供給される処理液に、氷水を供給する氷水供給部30と、を有する。
【0043】
また、本実施形態は、硫酸を含む処理液によって基板Wを処理する基板処理方法であって、加熱部27により処理液を加熱する加熱処理と、氷水供給部30により処理液に氷水を供給する氷水供給処理と、を含む。
【0044】
このため、処理液の硫酸を水により希釈して酸化力の上昇を抑えつつ、硫酸と水の発熱反応による温度上昇を、硫酸と氷による吸熱反応によって抑えることができる。従って、処理性能の維持が可能となり、処理液を廃棄して新たな処理液を使用する量を低減することができる。
【0045】
(2)処理液供給部20は、処理液を貯留する貯留部22を有し、貯留部22には、処理液と、氷水供給部30からの氷水とを混合する混合管40が接続されている。このため、処理部10に供給される前に貯留部22に貯留された処理液に、混合管40において氷水と混合させた処理液を供給することができるので、貯留部22における処理液に、直接氷水を混合させる場合の突沸を防ぐことができる。つまり、安全上、貯留部22ではなく配管中で混合した方が好ましい。また、混合管40の長さによって、混合する時間を確保することができる。さらに、貯留部22に直接氷水を入れた場合、完全に混合されるまで濃度が安定せず、貯留部22内で濃度に大きなばらつきが出ることがあるが、循環路Cに少しずつ供給することで、濃度が安定する。
【0046】
(3)氷水における氷と水の質量は、水よりも氷の方が大きい。このため、硫酸と氷による吸熱反応を大きくして、硫酸と水による発熱反応による温度上昇を小さくすることができる。温度低下は、加熱部27による加熱によって補うことが可能である。
【0047】
(4)氷水における氷と水の質量の比が100:37~100:15である。このため、水の比率を、発熱反応と吸熱反応とが均衡をとれる値とするか、吸熱反応の方を大きくすることができるので、温度上昇を防止できる。温度低下は、加熱部27による加熱によって補うことが可能である。
【0048】
(5)処理液における硫酸の濃度を検出する検出部26と、検出部26による検出値に基づいて、氷水の供給量を制御する制御部60と、を有する。このため、硫酸の濃度に応じて氷水の供給量を制御することにより、処理に適した硫酸の濃度を維持しつつ、処理液の温度上昇を抑えることができる。
【0049】
[第2の実施形態]
第2の実施形態の基板処理装置1を、図2を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0050】
[構成]
本実施形態の基板処理装置1は、氷水供給部30が、ガス供給部36を有する。ガス供給部36は、給水部31により供給される水に、ガスを供給する。ここでいうガスは、例えば、CО、N2、空気などである。ガス供給部36は、ガス供給管361、ノズル362を有する。ガス供給管361は、工場などにおけるガスの供給源から給水部31の給水管311に接続された配管である。ノズル362は、給水管311内の純水にガスを吹き付ける。ガスが吹き付けられた純水は、断熱膨張により凍結して氷水が生成される。つまり、本実施形態においては、給水部31の一部、つまり給水管311の一部が氷水生成部33となる。
【0051】
[動作]
上記のような本実施形態の動作を説明する。基板処理装置1による以下のような基板処理方法、処理基板製造方法も本実施形態の一態様である。なお、処理液の加熱、処理液の供給、氷水の供給については、上記の実施形態と同様であるため、説明は省略し、氷水の生成について説明する。
【0052】
すなわち、調整弁312が開いて、給水管311へ純水が供給されるとともに、ガス供給部36のガス供給管361のガスが、ノズル362によって、給水管311の純水に吹き付けられる。これにより、断熱膨張により純水が凍結するので、氷水が生成される。制御部60は、純水と氷の質量比が所望の値となるように、調整弁312及びノズル362のガスの吹き付け量を制御することにより、純水及び氷の供給量を調整する。この場合にも、氷と水の質量の比が、上記と同様となるように、氷水が生成されることが好ましい。
【0053】
[効果]
以上のような本実施形態は、水にガスを供給することにより凍結させるガス供給部36を有する。このため、第1の実施形態と同様の効果を奏するとともに、製氷機321などが不要となり、装置構成を簡略化でき、コストを低減できる。また、第1の実施形態と比較して、小さい氷を作りやすい。そのため、氷と水の比率を、より細かく制御することができる。また、氷が小さいと、氷と水の質量比が所定の比率である氷水を、少量生成することができるので、硫酸溶液の濃度の調整が容易となる。さらに、氷が小さいと、硫酸溶液に供給したときに、速やかに氷が融解されて混合するため、より素早く濃度を安定させることができ、濃度を均一にできる。
【0054】
[第3の実施形態]
第3の実施形態の基板処理装置1を、図3を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0055】
[構成]
本実施形態の基板処理装置1は、混合管40が、液戻し部50に設けられている。つまり、処理部10において使用された処理液を貯留部22に戻す戻し管51に、氷水供給部30の氷水供給管341が接続されている。これにより、戻し管51の一部が、混合管40として機能する。
【0056】
[動作]
上記のような本実施形態の動作を説明する。以下のような基板処理方法、処理基板製造方法も本実施形態の一態様である。なお、処理液の加熱、氷水の生成、処理液の供給については、上記の実施形態と同様であるため、説明は省略し、氷水の供給について説明する。
【0057】
すなわち、調整弁344が開いて、ポンプ342が作動することにより、氷水生成部33からの氷水が、氷水供給管341を介して混合管40に供給される。これにより、混合管40を流れる処理液に氷水が混合される。すると、水により硫酸が希釈されて、処理液の濃度が低下する。硫酸と水による発熱反応が発生することになるが、硫酸と氷による吸熱反応により、温度上昇による酸化力の上昇を抑えることができる。
【0058】
[効果]
以上のような本実施形態は、混合管40が、液戻し部50に設けられている。このため、基板Wの処理により温度が低下した処理液に氷水を混合するので、求められる吸熱反応を抑えることができ、氷の供給量を少なくすることができる。
【0059】
[変形例]
本実施形態は、上記の態様に限定されるものではなく、以下のような変形例も構成可能である。
【0060】
(1)処理液は、硫酸が含まれる溶液であればよい。硫酸と過酸化水素水の混合溶液であるSPMを処理液としてもよい。例えば、図4に示すように、処理部10に供給される処理液に、過酸化水素水を供給する過酸化水素水供給部70を設ける。過酸化水素水供給部70は、貯留部71、供給管72、ポンプ73、逆止弁74、開閉弁75を有する。貯留部71は、過酸化水素水を貯留する容器である。供給管72は、貯留部71からの処理液が流通する配管である。供給管72の一端は貯留部71に接続され、他端は給液管23のノズル24の手前に接続されている。ポンプ73は、貯留部71からの過酸化水素水を給液管23に送り出す装置である。逆止弁74は、過酸化水素水の逆流を防止する弁である。開閉弁75は、過酸化水素水の供給の有無を切り替える弁である。
【0061】
このような態様では、ポンプ73が作動して開閉弁75が開くことにより、ノズル24から基板Wへ供給される処理液に、過酸化水素水を混合することにより、SPMによる処理を行うことができる。また、開閉弁75の開閉により、処理液のみによる処理を行うか、過酸化水素水による処理を行うかを選択的に切り替えることができる。
【0062】
(2)処理液の供給による処理される基板Wの処理対象面Waは、基板Wの一方の面には限定されず、他方の面又は双方の面であってもよい。
【0063】
(3)上記の態様では、検出部26を粘度計として、濃度を間接的に検出していたが、濃度計を用いて、濃度を直接検出してもよい。
【0064】
(4)処理部10は、複数枚の基板Wを処理槽に収容して、処理液に浸漬させることにより、複数枚の基板Wを一括して処理するバッチ式であってもよい。このようなバッチ式の処理部10であっても、上記と同様に、処理液に氷水を供給することによって、処理性能の維持と処理液の使用量の低減が可能となる。
【0065】
(5)製氷機321から氷を供給する構成に代えて、氷水生成部33を、容器331内に冷却機構と攪拌機構とを有する構成としてもよい。これにより、容器331内に供給された水を冷却機構により冷却させながら、攪拌機構により攪拌することで、容器331内でシャーベット状の氷水を生成できる。
【0066】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態及び各部の変形例を説明したが、この実施形態や各部の変形例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述したこれら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
1 基板処理装置
10 処理部
11 テーブル
11a 保持部材
12 回転機構
13 カップ
20 処理液供給部
21 原液管
22 貯留部
22a 加熱部
23 給液管
23a 分岐管
23b 開閉弁
24 ノズル
25 ポンプ
26 検出部
27 加熱部
28 逆止弁
29 開閉弁
30 氷水供給部
31 給水部
32 給氷部
33 氷水生成部
34 氷水流通部
36 ガス供給部
40 混合管
50 液戻し部
51 戻し管
60 制御部
70 過酸化水素水供給部
71 貯留部
72 供給管
73 ポンプ
74 逆止弁
75 開閉弁
311 給水管
312 調整弁
321 製氷機
322 給氷管
323 調整弁
331 容器
341 氷水供給管
342 ポンプ
343 逆止弁
344 調整弁
361 ガス供給管
362 ノズル
C 循環路
W 基板
Wa 処理対象面
図1
図2
図3
図4