(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108347
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】放熱フィラー粒子、放熱フィラーおよび放熱シート
(51)【国際特許分類】
C01B 33/18 20060101AFI20240805BHJP
H01L 23/373 20060101ALI20240805BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20240805BHJP
C09K 5/14 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
C01B33/18 C
H01L23/36 M
H01L23/36 D
C09K5/14 E ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012660
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大国 秀行
【テーマコード(参考)】
4G072
5F136
【Fターム(参考)】
4G072AA25
4G072AA28
4G072AA35
4G072AA36
4G072AA41
4G072BB05
4G072BB16
4G072CC13
4G072DD03
4G072GG02
4G072GG03
4G072HH17
4G072JJ38
4G072JJ45
4G072LL02
4G072MM01
4G072NN13
4G072NN21
4G072QQ09
4G072RR01
4G072RR11
4G072TT30
4G072UU09
4G072UU30
5F136BB18
5F136BC07
5F136FA13
5F136FA14
5F136FA52
5F136FA53
5F136FA54
5F136FA55
5F136FA63
(57)【要約】
【課題】放熱シートの放熱材として用いられた場合に、熱伝導率が高く、かつ、軽量化された放熱シートを得ることのできる、放熱フィラー粒子および放熱フィラー、並びに、熱伝導率が高く、かつ、軽量化された放熱シートを提供することを目的とする。
【解決手段】コア部と、前記コア部を被覆する被覆部と、からなる放熱フィラー粒子であって、前記コア部は、シリカ粒子からなり、前記被覆部は、酸化アルミニウムからなる、放熱フィラー粒子である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部と、前記コア部を被覆する被覆部と、からなる放熱フィラー粒子であって、
前記コア部は、シリカ粒子からなり、
前記被覆部は、酸化アルミニウムからなる、放熱フィラー粒子。
【請求項2】
前記シリカ粒子は、二酸化珪素と、酸化硼素、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化カリウム、酸化バリウムおよび酸化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の第1化合物と、からなる、請求項1に記載の放熱フィラー粒子。
【請求項3】
前記被覆部の平均厚さは1.0μm以上である、請求項1または請求項2に記載の放熱フィラー粒子。
【請求項4】
前記放熱フィラー粒子の体積V1に対する前記被覆部の体積V2の百分率は、50%以下である、請求項1または請求項2に記載の放熱フィラー粒子。
【請求項5】
複数の放熱フィラー粒子からなる、放熱フィラーであって、
前記放熱フィラー粒子は、コア部と、前記コア部を被覆する被覆部と、からなり、
前記コア部は、シリカ粒子からなり、
前記被覆部は、酸化アルミニウムからなる、放熱フィラー。
【請求項6】
前記コア部は、二酸化珪素と、酸化硼素、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化カリウム、酸化バリウムおよび酸化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の第1化合物と、からなる、請求項5に記載の放熱フィラー。
【請求項7】
前記被覆部の平均厚さは1.0μm以上である、請求項5または請求項6に記載の放熱フィラー。
【請求項8】
前記放熱フィラー粒子の体積V1に対する前記被覆部の体積V2の百分率は、50%以下である、請求項5または請求項6に記載の放熱フィラー。
【請求項9】
請求項5または請求項6に記載の放熱フィラーと、樹脂と、からなる放熱シートであって、
前記放熱フィラーの含有率は、70質量%以上85質量%以下である、放熱シート。
【請求項10】
前記放熱シートの熱伝導率C1と、前記放熱シートの密度D1とは、C1/D1≧1.25の関係を満たし、
ここで、C1の単位はW/m・Kであり、D1の単位はg/cm3である、請求項9に記載の放熱シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放熱フィラー粒子、放熱フィラーおよび放熱シートに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品(コンピュータ(CPU)、ビデオチップ、メモリー等の半導体)とヒートシンクとの間に配置され、ヒートシンクを電子部品に固定するとともに電子部品の動作により発生した熱を電子部品からヒートシンクに伝達する(電子部品の外部に放熱する)放熱シートが知られている。
【0003】
特許文献1には、シリコーンゲルと高分子量の液状シリコーンゴムのブレンド100重量部に対し、放熱材として、アルミナ(酸化アルミニウム)、マグネシア(酸化マグネシウム)、窒化ほう素の一種以上を50~60重量部添加した放熱シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている放熱材のうち、特にアルミナは、熱伝導率が高く、優れた耐水性を有し、放熱シートの寿命を長くすることができる。また、アルミナは他の材料よりコスト面で有利である。よって、アルミナは放熱材として広く用いられている。一方、アルミナは、シリコーンゲルおよび液状シリコーンゴムに対して、比重が大きい。このため、アルミナを含む放熱シートは密度が増加する。
【0006】
近年、携帯電話やスマートフォン等の携帯用電子機器では、軽量化が望まれている。よって、放熱シートにおいても、高い熱伝導率を維持したまま、軽量化が望まれている。
【0007】
そこで、本開示は、放熱シートの放熱材として用いられた場合に、熱伝導率が高く、かつ、軽量化された放熱シートを得ることのできる、放熱フィラー粒子および放熱フィラー、並びに、熱伝導率が高く、かつ、軽量化された放熱シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の放熱フィラー粒子は、
コア部と、前記コア部を被覆する被覆部と、からなる放熱フィラー粒子であって、
前記コア部は、シリカ粒子からなり、
前記被覆部は、酸化アルミニウムからなる、放熱フィラー粒子である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、放熱シートの放熱材として用いられた場合に、熱伝導率が高く、かつ、軽量化された放熱シートを得ることのできる、放熱フィラー粒子および放熱フィラー、並びに、熱伝導率が高く、かつ、軽量化された放熱シートを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る放熱フィラー粒子の一例を示す模式的断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る放熱フィラー粒子の他の一例を示す模式的断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る放熱フィラー粒子の他の一例を示す模式的断面図である。
【
図4】
図4は、放熱フィラー粒子の被覆部の平均厚さの測定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示の放熱フィラー粒子は、
コア部と、前記コア部を被覆する被覆部と、からなる放熱フィラー粒子であって、
前記コア部は、シリカ粒子からなり、
前記被覆部は、酸化アルミニウムからなる、放熱フィラー粒子である。
【0012】
本開示の放熱フィラー粒子を放熱シートの放熱材として用いると、熱伝導率が高く、かつ、軽量化された放熱シートを得ることができる。
【0013】
(2)上記(1)において、前記シリカ粒子は、二酸化珪素と、酸化硼素、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化カリウム、酸化バリウムおよび酸化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の第1化合物と、からなってもよい。これによると、放熱フィラー粒子の熱伝導率が向上するため、該放熱フィラー粒子を含む放熱シートの熱伝導率も向上する。
【0014】
(3)上記(1)または(2)において、前記被覆部の平均厚さは1.0μm以上であってもよい。これによると、放熱フィラー粒子の熱伝導率が向上するため、該放熱フィラー粒子を含む放熱シートの熱伝導率も向上する。
【0015】
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、前記放熱フィラー粒子の体積V1に対する前記被覆部の体積V2の百分率は、50%以下であってもよい。これによると、放熱フィラー粒子がより軽量となるため、該放熱フィラー粒子を含む放熱シートもより軽量化される。
【0016】
(5)本開示の放熱フィラーは、
複数の放熱フィラー粒子からなる、放熱フィラーであって、
前記放熱フィラー粒子は、コア部と、前記コア部を被覆する被覆部と、からなり、
前記コア部は、シリカ粒子からなり、
前記被覆部は、酸化アルミニウムからなる、放熱フィラーである。
【0017】
本開示の放熱フィラーを放熱シートの放熱材として用いると、熱伝導率が高く、かつ、軽量化された放熱シートを得ることができる。
【0018】
(6)上記(5)において、前記コア部は、二酸化珪素と、酸化硼素、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化カリウム、酸化バリウムおよび酸化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の第1化合物と、からなってもよい。これによると、放熱フィラーの熱伝導率が向上するため、該放熱フィラーを含む放熱シートの熱伝導率も向上する。
【0019】
(7)上記(5)または(6)において、前記被覆部の平均厚さは1.0μm以上であってもよい。これによると、放熱フィラーの熱伝導率が向上するため、該放熱フィラーを含む放熱シートの熱伝導率も向上する。
【0020】
(8)上記(5)から(7)のいずれかにおいて、前記放熱フィラー粒子の体積V1に対する前記被覆部の体積V2の百分率は、50%以下であってもよい。これによると、放熱フィラーがより軽量となるため、該放熱フィラーを含む放熱シートもより軽量化される。
【0021】
(9)本開示の放熱シートは、上記(5)から(8)のいずれかに記載の放熱フィラーと、樹脂と、からなる放熱シートであって、
前記放熱フィラーの含有率は、70質量%以上85質量%以下である、放熱シートである。
【0022】
本開示の放熱シートは、熱伝導率が高く、かつ、軽量化されている。
【0023】
(10)上記(9)において、前記放熱シートの熱伝導率C1と、前記放熱シートの密度D1とは、C1/D1≧1.25の関係を満たし、
ここで、C1の単位はW/m・Kであり、D1の単位はg/cm3であってもよい。
【0024】
これによると、放熱シートは所望の熱伝導率を確保しながら、より軽量化される。
【0025】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の放熱フィラー粒子、放熱フィラーおよび放熱シートの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。本開示の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表すものである。また、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、必ずしも実際の寸法関係を表すものではない。
【0026】
本明細書において「A~B」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上B以下)を意味し、Aにおいて単位の記載がなく、Bにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とBの単位とは同じである。
【0027】
本明細書において化合物などを化学式で表す場合、原子比を特に限定しないときは従来公知のあらゆる原子比を含むものとし、必ずしも化学量論的範囲のもののみに限定されるべきではない。
【0028】
本開示において、数値範囲の下限および上限として、それぞれ1つ以上の数値が記載されている場合は、下限に記載されている任意の1つの数値と、上限に記載されている任意の1つの数値との組み合わせも開示されているものとする。例えば、下限として、a1以上、b1以上、c1以上が記載され、上限としてa2以下、b2以下、c2以下が記載されている場合は、a1以上a2以下、a1以上b2以下、a1以上c2以下、b1以上a2以下、b1以上b2以下、b1以上c2以下、c1以上a2以下、c1以上b2以下およびc1以上c2以下が開示されているものとする。
【0029】
[実施形態1:放熱フィラー粒子]
本開示の一実施形態(以下、「実施形態1」とも記す。)の放熱フィラー粒子について、
図1~
図3を用いて説明する。実施形態1の放熱フィラー粒子1は、コア部2と、該コア部2を被覆する被覆部3と、からなる放熱フィラー粒子1であって、該コア部2は、シリカ粒子からなり、該被覆部3は、酸化アルミニウムからなる、放熱フィラー粒子である。
【0030】
実施形態1に係る放熱フィラー粒子を放熱材として含む放熱シートは、熱伝導率が高く、かつ、軽量化されている。この理由は以下の通りと推察される。
【0031】
実施形態1の放熱フィラー粒子は、シリカ粒子からなるコア部と、該コア部を被覆する酸化アルミニウムからなる被覆部とからなる。シリカ粒子は、同一の大きさの酸化アルミニウムのみからなる放熱フィラー粒子よりも比重が小さい。これにより、実施形態1の放熱フィラー粒子を含む放熱シートを軽量化することができる。
【0032】
電子部品が発する熱は、放熱シート中の放熱材を伝って外部へ放出される。熱は、主に放熱材の表面を伝って外部へ放出される。実施形態1の放熱フィラー粒子は、その表面が熱伝導率の高い酸化アルミニウムである。よって、実施形態1の放熱フィラー粒子を含む放熱シートは、高い熱伝導率を有することができる。
【0033】
<コア部>
実施形態1の放熱フィラー粒子のコア部は、シリカ粒子からなる。本開示において、シリカ粒子とは、二酸化珪素(SiO2)を主成分として含む粒子を意味する。「シリカ粒子は、二酸化珪素を主成分として含む」とは、シリカ粒子の二酸化珪素の含有率が75質量%以上であることを意味する。シリカ粒子の二酸化珪素の含有率は、放熱フィラー粒子の軽量化の観点から、75質量%以上100質量%以下が好ましく、80質量%以上100質量%以下がより好ましく、100質量%がさらに好ましい。すなわち、コア部は二酸化珪素からなることができる。
【0034】
上記シリカ粒子は、二酸化珪素と、酸化硼素(B2O3)、酸化ナトリウム(Na2O)、酸化カルシウム(CaO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化カリウム(K2O)、酸化バリウム(BaO)および酸化マグネシウム(MgO)からなる群より選ばれる少なくとも1種の第1化合物と、からなることが好ましい。これによると、放熱フィラー粒子の密度を下げ、軽量化することができ、かつ、熱膨張率を下げ、被覆部との密着性を向上することができる。該シリカ粒子は、本開示の効果を損なわない範囲において、二酸化珪素および第1化合物に加えて、不純物を含んでいてもよい。実施形態1において、シリカ粒子は、75質量%以上の二酸化珪素と、第1化合物とからなることができる。実施形態1において、シリカ粒子は、75質量%以上の二酸化珪素と、第1化合物と、不純物とからなることができる。
【0035】
シリカ粒子の二酸化珪素の含有率および第1化合物の含有率は、シリカ粒子を押し固めてペレット状にし、蛍光X線分析法により各成分を分析することにより、測定される。
【0036】
コア部の形状は特に限定されない。例えば、球形、略球形、回転楕円体、略回転楕円体、幾何学的な形状などが挙げられる。
図1に示されるように、コア部2は、基本的に、1つのシリカ粒子22からなることができる。
【0037】
コア部2は、
図3に示されるように、複数のシリカ粒子22の凝集体であってもよい。コア部2が、複数のシリカ粒子22の凝集体である場合は、該凝集体を1つのコア部2と見做す。
【0038】
図2に示されるように、コア部2を構成するシリカ粒子は、外殻23と、外殻23により規定される中空部24とからなることが好ましい。これによると、放熱フィラー粒子がより軽量となるため、放熱シートをより軽量化することができる。
【0039】
<被覆部>
実施形態1の放熱フィラー粒子の被覆部は、酸化アルミニウムからなる。該被覆部は、本開示の効果を損なわない範囲において、酸化アルミニウムに加えて、不純物を含んでいてもよい。実施形態1の被覆部は、酸化アルミニウムと不純物とからなることができる。該不純物としては、例えば、炭素が挙げられる。被覆部における該不純物の含有率は、1%以下とすることができる。該不純物の含有率は、予めコア部の分析を行った上で誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS法)により測定される。
【0040】
被覆部は、基本的に、コア部の表面全体を被覆するが、本開示の効果を損なわない範囲において、コア部の表面の一部を被覆していなくてもよい。
図3に示されるように、コア部2が複数のシリカ粒子22の凝集体である場合、被覆部3は凝集体の表面全体を被覆していればよく、シリカ粒子22のそれぞれの表面全体が被覆部3により被覆されていなくてもよい。本開示の効果を損なわない範囲において、被覆部3は凝集体の一部を被覆していなくてもよい。
【0041】
実施形態1の放熱フィラー粒子において、被覆部の平均厚さは、放熱フィラー粒子が優れた熱伝導率を有することができれば、特に制限されない。被覆部の平均厚さの下限は、放熱フィラー粒子の熱伝導率の向上の観点から、0.2μm以上が好ましく、0.4μm以上が好ましく、1.0μm以上が好ましく、1.4μm以上がより好ましく、1.8μm以上がさらに好ましい。被覆部の平均厚さの上限は特に制限されないが、例えば、放熱フィラー粒子の軽量化の観点から、5.5μm以下が好ましく、3.5μm以下がより好ましい。被覆部の平均厚さは、0.2μm以上5.5μm以下が好ましく、1.0μm以上3.5μm以下がより好ましく、1.4μm以上3.5μm以下がさらに好ましい。
【0042】
実施形態1の放熱フィラー粒子の被覆部の平均厚さの測定方法について
図4を用いて説明する。該測定方法は、以下の工程A1~C1の通りである。
工程A1. 放熱フィラー粒子を光学顕微鏡により100倍または200倍で観察しながら、放熱フィラー粒子に対して、粒子の中心を通過するようにFIB加工(装置:Thermo Fisher Scientific社製「Quanta 3D 200i」(商標))を行う。これにより、放熱フィラー粒子の中心を含む断面を得る。
図4は、該断面を模式的に示す図である。
【0043】
工程B1. 放熱フィラー粒子の断面を電子顕微鏡により倍率200~2000倍で観察し、コア部の中心Cを特定する。コア部が外殻と、外殻により規定される中空部24とからなる場合は、外殻の外側表面により規定される円の中心を中心Cとする。コア部の断面が真円でない場合は、最小外接円の中心を中心Cとする。コア部が、複数のシリカ粒子22の凝集体である場合は、凝集体の最小外接円の中心を中心Cとする。被覆部の厚さが最も厚い部分に対応する放熱フィラー粒子の外縁上の点P1を特定する。ここで、被覆部の厚さは、放熱フィラー粒子の外縁上の1点から中心Cに向かう方向の厚さである。中心Cと、点P1とを結ぶ線分L1を引く。中心Cを通り、線分L1との角度が120°となる線分L2を引く。線分L2と、放熱フィラー粒子の外縁との交点を点P2とする。中心Cを通り、線分L2との角度が120°となる線分L3を引く。線分L3と、放熱フィラー粒子の外縁との交点を点P3とする。線分L2と線分L3とは異なる線分である。
【0044】
工程C1. 点P1から線分L1に沿う方向の被覆部の厚さT1を測定する。点P2から線分L2に沿う方向の被覆部の厚さT2を測定する。点P3から線分L3に沿う方向の被覆部の厚さT3を測定する。T1、T2およびT3の平均T4を算出する。該平均T4が実施形態1の放熱フィラー粒子における被覆部の平均厚さT4に該当する。
【0045】
同一の放熱フィラー粒子で測定する限り、FIB加工の位置を任意に選択しても、測定結果にばらつきがないことが確認されている。放熱フィラー粒子のコア部が、複数のシリカ粒子の凝集体である場合においても、FIB加工の位置を任意に選択しても、測定結果にばらつきがないことが確認されている。
【0046】
<(V2/V1)×100>
実施形態1の放熱フィラー粒子において、放熱フィラー粒子の体積V1に対する被覆部の体積V2の百分率(V2/V1)×100は、放熱フィラー粒子を軽量化することができれば、特に制限されない。該百分率(V2/V1)×100の上限は、例えば、60%以下とすることができる。該百分率(V2/V1)×100の上限は、50%以下であることが好ましい。これによると、放熱フィラー粒子がより軽量となるため、放熱シートをより軽量化することができる。ここで、コア部を構成するシリカ粒子が外殻23と、外殻23により規定される中空部24とからなる場合は、放熱フィラー粒子の体積V1は、中空部24の占める空間も含む。
【0047】
上記百分率(V2/V1)×100の上限は、放熱フィラー粒子の軽量化の観点から、50%以下が好ましく、40%以下が好ましく、25%以下がより好ましく、22%以下がさらに好ましい。上記百分率(V2/V1)×100の下限は特に制限されないが、例えば、放熱フィラー粒子の熱伝導率向上の観点から、7%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、17%以上がさらに好ましい。上記百分率(V2/V1)×100は、7%以上50%以下が好ましく、15%以上40%以下がより好ましく、17%以上25%以下がさらに好ましい。
【0048】
実施形態1の放熱フィラー粒子における上記百分率(V2/V1)×100の測定方法は、以下の工程A2~C2の通りである。
工程A2. 上記の放熱フィラー粒子の被覆部の平均厚さの測定方法の工程A1~C1と同一の方法で、放熱フィラー粒子の被覆部の平均厚さT4を算出する。
【0049】
工程B2. 上記の工程B1と同一の条件で、放熱フィラー粒子の断面を電子顕微鏡により観察し、線分L1、L2およびL3のそれぞれの長さを測定し、これらの平均L4を算出する。測定対象の放熱フィラー粒子を真球と見做す。従って、該平均L4×2の値が、放熱フィラー粒子の粒径Rに相当する。
【0050】
工程C2. 放熱フィラー粒子の粒径Rおよび被覆部の平均厚さT4に基づき、百分率(V2/V1)×100を算出する。
【0051】
同一の放熱フィラー粒子で測定する限り、FIB加工の位置を任意に選択しても、測定結果にばらつきがないことが確認されている。放熱フィラー粒子のコア部が、複数のシリカ粒子の凝集体である場合において、FIB加工の位置を任意に選択しても、測定結果にばらつきがないことが確認されている。
【0052】
実施形態1において、各放熱フィラー粒子の大きさは、どのような大きさであっても、熱伝導率が高く、かつ、軽量化された放熱シートを提供することができるため、特に限定されない。例えば、放熱フィラー粒子の粒径Rは、放熱フィラー粒子同士の接触性の向上、および、複数の放熱フィラー粒子からなる放熱フィラーの充填性の向上の観点から、8μm以上120μm以下が好ましく、12μm以上85μm以下がより好ましく、45μm以上65μm以下がさらに好ましい。ここで、複数の放熱フィラーの充填性とは、放熱フィラーのかさ体積に占める空間の割合である空間率εを意味する。空間率εは、以下の式で定義される。
ε=1-(ρb/ρp)=1-(M/ρpV)
上記式において、ρbは放熱フィラーのかさ密度、ρpは放熱フィラーの粒子密度、Mは放熱フィラーの質量、Vは放熱フィラーのかさ体積を示す。
【0053】
<放熱フィラー粒子の製造方法>
実施形態1の放熱フィラー粒子の製造方法の一例について説明する。まず、シリカ粒子からなる粉体を準備する。シリカ粒子の表面に、ミストCVD法を用いて酸化アルミニウムからなる被覆部を形成する。具体的には、まずアルミニウムアセチルアセトナートをメタノールに溶解して得られる原料溶液(アルミニウムアセチルアセトナート濃度:0.10mоl/L)を準備する。原料溶液を用いて、加熱反応部にシリカ粒子からなる粉体の攪拌機能を備えるミストCVD装置により、シリカ粒子の表面に酸化アルミニウムからなる被覆部を形成し、実施形態1の放熱フィラー粒子を得る。
【0054】
上記のミストCVD法の条件は、例えば、以下の通りである。
原料溶液搬送N2流量:2~3L/min
希釈N2流量:3~5L/min
成膜温度:350~600℃
粉体撹拌速度:0.5~3rpm
【0055】
成膜時間を調整することにより、被覆部の厚さを調整することができる。成膜時間は、例えば、1~50時間とすることができる。
【0056】
[実施形態2:放熱フィラー]
本開示の一実施形態(以下、「実施形態2」とも記す。)の放熱フィラーは、
複数の放熱フィラー粒子からなる、放熱フィラーであって、
該放熱フィラー粒子は、コア部と、該コア部を被覆する被覆部と、からなり、
該コア部は、シリカ粒子からなり、
該被覆部は、酸化アルミニウムからなる、放熱フィラーである。
ここで、「複数の放熱フィラー粒子からなる、放熱フィラー」とは、放熱フィラーが複数の放熱フィラー粒子が集合した集合体であることを意味する。
【0057】
実施形態2に係る放熱フィラーを放熱材として含む放熱シートは、熱伝導率が高く、かつ、軽量化されている。この理由は以下の通りと推察される。
【0058】
実施形態2の放熱フィラーは、複数の放熱フィラー粒子からなり、該放熱フィラー粒子は、シリカ粒子からなるコア部と、該コア部を被覆する酸化アルミニウム粒子からなる被覆部とからなる。シリカ粒子は、同一の大きさの酸化アルミニウムのみからなる放熱フィラー粒子よりも比重が小さい。これにより、実施形態2の放熱フィラーを含む放熱シートを軽量化することができる。
【0059】
電子部品が発する熱は、放熱シート中の放熱材を伝って外部へ放出される。熱は、主に放熱材の表面を伝って外部へ放出される。実施形態2の放熱フィラーを構成する放熱フィラー粒子は、その表面が熱伝導率の高い酸化アルミニウムである。よって、実施形態2の放熱フィラーを含む放熱シートは、高い熱伝導率を有することができる。
【0060】
<放熱フィラー粒子>
実施形態2の放熱フィラーは、複数の放熱フィラー粒子からなる放熱フィラーであって、該放熱フィラー粒子は、コア部と、該コア部を被覆する被覆部と、からなり、該コア部は、シリカ粒子からなり、該被覆部は、酸化アルミニウムからなる。
【0061】
<コア部>
実施形態2において、各放熱フィラー粒子のコア部は、実施形態1の放熱フィラー粒子のコア部と同一の構成(組成、形状)とすることができる。
【0062】
<被覆部>
実施形態2において、各放熱フィラー粒子の被覆部の組成およびコア部の被覆範囲は、実施形態1の放熱フィラー粒子の被覆部と同一の構成とすることができる。
【0063】
実施形態2の放熱フィラーにおいて、被覆部の平均厚さは、放熱フィラーが優れた熱伝導率を有することができれば、特に制限されない。被覆部の平均厚さの下限は、放熱フィラーの熱伝導率の向上の観点から、0.2μm以上が好ましく、0.4μm以上が好ましく、1.0μm以上が好ましく、1.4μm以上がより好ましく、1.8μm以上がさらに好ましい。被覆部の平均厚さの上限は特に制限されないが、例えば、放熱フィラーの軽量化の観点から、5.5μm以下が好ましく、3.5μm以下がより好ましい。被覆部の平均厚さは、0.2μm以上5.5μm以下が好ましく、1.0μm以上3.5μm以下がより好ましく、1.4μm以上3.5μm以下がさらに好ましい。
【0064】
実施形態2の放熱フィラーにおける被覆部の平均厚さの測定方法は、以下の工程A3~C3の通りである。
【0065】
工程A3. 放熱フィラーを光学顕微鏡により100倍または200倍で観察して、光学顕微鏡像を得る。該光学顕微鏡像中に500μm×1000μmの矩形の測定視野を設定する。該測定視野を縦3列×横3列に9分割して、9つの単位領域を設定する。各単位領域内で最も大きい放熱フィラー粒子を特定する。特定された9つの放熱フィラー粒子のそれぞれに対して、粒子の中心を通過するようにFIB加工(装置:Thermo Fisher Scientific社製 Quanta 3D 200i)を行う。これにより、放熱フィラー粒子の中心を含む断面を得る。
【0066】
工程B3. 上記9つの放熱フィラー粒子のそれぞれの断面において、実施形態1の放熱フィラー粒子の被覆部の平均厚さの測定方法に記載の工程B1および工程C1と同一の方法で、各放熱フィラー粒子の被覆部の平均厚さT4を測定する。
【0067】
工程C3. 上記9つの放熱フィラー粒子のそれぞれの被覆部の平均厚さT4の平均T5を算出する。該平均T5が実施形態2の放熱フィラーを構成する複数の放熱フィラー粒子の被覆部の平均厚さT5に該当する。
【0068】
同一の放熱フィラーで測定する限り、測定視野を任意に選択し、また、放熱フィラー粒子のFIB加工の位置を任意に選択しても、測定結果にばらつきがないことが確認されている。放熱フィラー粒子のコア部が、複数のシリカ粒子の凝集体である場合において、FIB加工の位置を任意に選択しても、測定結果にばらつきがないことが確認されている。
【0069】
<(V2/V1)×100>
実施形態2の放熱フィラーにおいて、放熱フィラー粒子の体積V1に対する被覆部の体積V2の百分率(V2/V1)×100は、放熱フィラーを軽量化することができれば、特に制限されない。該百分率(V2/V1)×100の上限は、例えば、60%以下とすることができる。該百分率(V2/V1)×100は、50%以下であることが好ましい。これによると、放熱フィラーがより軽量となるため、該放熱フィラーを含む放熱シートもより軽量化される。ここで、コア部を構成するシリカ粒子が外殻23と、外殻23により規定される中空部24とからなる場合は、放熱フィラー粒子の体積V1は、中空部24の占める空間も含む。
【0070】
上記百分率(V2/V1)×100の上限は、放熱フィラーの軽量化の観点から、50%以下が好ましく、40%以下が好ましく、25%以下がより好ましく、22%以下がさらに好ましい。上記百分率(V2/V1)×100の下限は特に制限されないが、例えば、放熱フィラーの熱伝導率向上の観点から、7%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、17%以上がさらに好ましい。上記百分率(V2/V1)×100は、7%以上50%以下が好ましく、15%以上40%以下がより好ましく、17%以上25%以下がさらに好ましい。
【0071】
実施形態2の放熱フィラーにおける上記百分率(V2/V1)×100の測定方法は、以下の工程A4~D4の通りである。
工程A4. 上記の放熱フィラーにおける被覆部の平均厚さの測定方法の工程A3と同一の方法で、9つの放熱フィラー粒子を特定し、該9つの放熱フィラー粒子のそれぞれの断面を得る。
【0072】
工程B4. 上記9つの放熱フィラー粒子のそれぞれの断面において、上記工程B3および工程C3と同一の方法で、9つの放熱フィラー粒子のそれぞれの被覆部の平均厚さT4を測定し、これらの平均T5を算出する。
【0073】
工程C4. 上記9つの放熱フィラー粒子のそれぞれの断面において、実施形態1の放熱フィラー粒子における上記百分率(V2/V1)×100の測定方法の工程B2と同一の方法で、9つの放熱フィラー粒子のそれぞれの粒径Rを算出する。上記9つの放熱フィラー粒子のそれぞれの粒径Rの算術平均である平均粒径R1を算出する。
【0074】
工程D4. 測定対象の各放熱フィラー粒子を真球と見做し、平均粒径R1および被覆部の平均厚さT5に基づき、百分率(V2/V1)×100を算出する。
【0075】
同一の放熱フィラーで測定する限り、測定視野を任意に選択し、また、放熱フィラー粒子のFIB加工の位置を任意に選択しても、測定結果にばらつきがないことが確認されている。放熱フィラー粒子のコア部が、複数のシリカ粒子の凝集体である場合において、FIB加工の位置を任意に選択しても、測定結果にばらつきがないことが確認されている。
【0076】
実施形態2の放熱フィラーにおいて、各放熱フィラー粒子の大きさは、どのような大きさであっても、熱伝導率が高く、かつ、軽量化された放熱シートを提供することができるため、特に限定されない。例えば、放熱フィラーを構成する複数の放熱フィラー粒子の粒径の平均粒径R1は、放熱フィラー粒子同士の接触性、および、放熱フィラーの充填性の向上の観点から、8μm以上120μm以下が好ましく、12μm以上85μm以下がより好ましく、45μm以上65μm以下がさらに好ましい。
【0077】
実施形態2の放熱フィラーは、放熱シートに適用された場合、高い熱伝導率を実現することができ、複数の放熱フィラー粒子の粒径分布は特に限定されない。例えば、放熱フィラー粒子の粒径のD10は、10μm以上とすることができる。放熱フィラー粒子の粒径のD90は、200μm以下とすることができる。ここで、放熱フィラー粒子の粒径のD10とは、結晶粒の個数基準の累積粒度分布における、小径側からの累積10%粒径を意味する。放熱フィラー粒子の断面の直径のD90とは、結晶粒の個数基準の累積粒度分布における、小径側からの累積90%粒径を意味する。粒度分布はレーザー回折散乱式粒度分布測定装置MT3300II(マイクロトラックベル株式会社製)を用いて、体積基準の粒度分布を測定する。粒子を球形と見なして、ソフトウエアを用いて個数基準の粒度分布に変換する。
【0078】
<放熱フィラーの製造方法>
実施形態2の放熱フィラーの製造方法の一例について説明する。まず、複数のシリカ粒子からなる粉体を準備する。各シリカ粒子の表面に、実施形態1に記載の放熱フィラー粒子の製造方法と同一の方法および条件で、酸化アルミニウムからなる被覆部を形成することにより、実施形態2の放熱フィラーを得ることができる。
【0079】
[実施形態3:放熱シート]
本開示の一実施形態(以下、「実施形態3」とも記す。)の放熱シートは、実施形態2に記載の放熱フィラーと、樹脂と、からなる放熱シートであって、該放熱フィラーの含有率は、70質量%以上85質量%以下である、放熱シートである。
【0080】
<放熱フィラー>
実施形態3の放熱シートに含まれる放熱フィラーは、実施形態2に記載の放熱フィラーであり、軽量かつ熱伝導率が高い。実施形態3の放熱シートは、該放熱フィラーを70質量%以上含むため、放熱シート内で放熱フィラー粒子の少なくとも一部が互いに接している。これにより、放熱シートは、高い熱伝導率を有することができる。また、実施形態3の放熱シートは、従来の酸化アルミニウムのみからなる放熱フィラーを含む放熱シートに比べて、軽量化されている。
【0081】
実施形態3の放熱シートにおいて、放熱フィラーの含有率は、70質量%以上85質量%以下である。該放熱フィラーの含有率の下限は、放熱シートの熱伝導率向上の観点から、70質量%以上であり、75質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。該放熱フィラーの含有率の上限は、放熱シート中の適切な樹脂の含有率を確保できるという観点から85質量%以下である。該放熱フィラーの含有率は、70質量%以上85質量%以下であり、75質量%以上85質量%以下が好ましく、80質量%以上85質量%以下がより好ましい。実施形態3の放熱シートにおいて、放熱フィラーの含有率は、65質量%以上でもよい。
【0082】
実施形態3の放熱シートにおける放熱フィラーの含有率の測定方法は、以下の通りである。放熱シートの質量M1を測定する。放熱シートを、放熱シートの樹脂に応じた溶解剤に浸漬することにより、樹脂を溶出させて、複数の放熱フィラー粒子のみを取り出し、複数の放熱フィラーの質量M2を測定する。放熱シートにおける放熱フィラーの含有率(質量%)は、(M2/M1)×100を算出することにより得ることができる。後述の放熱シートにおける樹脂の含有率(質量%)は、100-[(M2/M1)×100]を算出することにより得ることができる。溶解剤としては、例えば、樹脂が付加反応型液状シリコーン樹脂の場合は、株式会社日新化学研究所社製の「シリコンクリーナーX-400」(商標)を用いることができる。
【0083】
<樹脂>
実施形態3の放熱シートに含まれる樹脂としては、熱硬化性ポリマーを用いることが好ましい。熱硬化性ポリマーとしては、例えば、架橋ゴム、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン、ポリイミドシリコーン、熱硬化型ポリフェニレンエーテル、熱硬化型変性ポリフェニレンエーテルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0084】
架橋ゴムとしては、天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、水添ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、ポリイソブチレンゴム、シリコーンゴムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0085】
熱硬化性ポリマーは、成形加工性、耐候性に優れると共に、電子部品に対する密着性および追従性の点から、シリコーン樹脂であることが好ましい。シリコーン樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、付加反応型液状シリコーン樹脂、過酸化物を加硫に用いる熱加硫型ミラブルタイプのシリコーン樹脂などが挙げられる。電子機器の放熱シートに用いる場合は、電子部品の発熱面とヒートシンク面との密着性が要求されるため、付加反応型液状シリコーン樹脂が特に好ましい。
【0086】
付加反応型液状シリコーン樹脂としては、ビニル基を有するポリオルガノシロキサンをA液、Si-H基を有するポリオルガノシロキサンをB液とした、2液性の付加反応型シリコーン樹脂が好ましい。A液とB液との混合比率は所望とする放熱シートの柔軟性によって適宜選択される。
【0087】
実施形態3の放熱シートにおいて、樹脂の含有率は、15質量%以上であってもよい。これによると、放熱シートは柔軟性を有し、電子部品の放熱シートとして好適である。該樹脂の含有率の下限は、放熱シートの柔軟性向上の観点から、20質量%以上が好ましい。樹脂の含有率の上限は、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。樹脂の含有率は、15質量%以上30質量%以下が好ましく、20質量%以上25質量%以下がより好ましい。
【0088】
<放熱シートの組成>
実施形態3の放熱シートは、放熱フィラーと、樹脂とからなる。実施形態3の放熱シートは、本開示の効果を損なわない範囲において、不純物を含んでいてもよい。実施形態3の放熱シートは、放熱フィラーと、樹脂と、不純物とからなることができる。放熱シートにおける該不純物の含有率は、1質量%以下とすることができる。
【0089】
<被覆部の平均厚さおよび(V2/V1)×100測定方法>
実施形態3の放熱シートにおいて、放熱フィラーの被覆部の平均厚さおよび放熱フィラー粒子の体積V1に対する被覆部の体積V2の百分率(V2/V1)×100の測定方法は以下の通りである。
【0090】
放熱シートを、放熱シートの樹脂に応じた溶解剤に浸漬することにより、樹脂を溶出させて、複数の放熱フィラー粒子のみを露出または取り出す。溶解剤としては、例えば、樹脂が付加反応型液状シリコーン樹脂の場合は、株式会社日新化学研究所社製の「シリコンクリーナーX-400」(商標)を用いることができる。露出または取り出された複数の放熱フィラー粒子に対して、実施形態2の放熱フィラーにおける被覆部の平均厚さの測定方法の工程A3~C3と同一の工程を行うことにより、放熱フィラーの被覆部の平均厚さが測定される。また、該複数の放熱フィラー粒子に対して、実施形態2の放熱フィラーにおける上記百分率(V2/V1)×100の測定方法の工程A4~D4を同一の工程を行うことにより、放熱フィラー粒子の体積V1に対する被覆部の体積V2の百分率(V2/V1)×100が測定される。
【0091】
<熱伝導率>
実施形態3の放熱シートの熱伝導率C1(W/m・K)の下限は、放熱性向上の観点から1.1W/m・K以上が好ましく、1.9W/m・K以上がより好ましく、2.2W/m・K以上がさらに好ましい。該放熱シートの熱伝導率C1の上限は特に制限されないが、例えば、2.8W/m・K以下とすることができる。該放熱シートの熱伝導率C1は、1.1W/m・K以上2.8W/m・K以下が好ましく、1.9W/m・K以上2.8W/m・K以下がより好ましく、2.2W/m・K以上2.8W/m・K以下がさらに好ましい。
【0092】
実施形態3の放熱シートの熱伝導率は、米国材料試験協会規格(ASTM)D5470に準拠した熱抵抗測定装置(リンザイス社製「サーマルインターフェイスマテリアルテスター」(商標))を用いて測定される。測定時には、放熱シートからなるサンプルを2つのアルミブロックで上面および下面から挟み、荷重3.0kgf/cm2をかけてサンプルの厚み方向の熱伝導率(W/m・K)を測定する。測定時のサンプルの上面温度が30℃となるように、上部ヒータおよび冷却プレートを調整して測定する。
【0093】
<密度>
実施形態3の放熱シートの密度D1(g/m3)の上限は、軽量化の観点から2.10g/cm3以下が好ましく、1.15g/cm3以下がより好ましく、1.10g/cm3以下がさらに好ましい。該放熱シートの密度D1の下限は特に制限されないが、例えば、0.70g/cm3以上とすることができる。該放熱シートの密度D1は、0.70g/m3以上2.10g/m3以下が好ましく、0.70g/m3以上1.15g/m3以下がより好ましく、0.70g/m3以上1.10g/m3以下がさらに好ましい。実施形態3の放熱シートの密度D1は、アルキメデス法により測定される。
【0094】
<熱伝導率C1と密度D1との関係>
実施形態3の放熱シートの熱伝導率C1(W/m・K)と、放熱シートの密度D1(g/m3)とは、C1/D1≧1.25の関係を満たすことが好ましい。これによると、放熱シートは所望の熱伝導率を確保しながら、より軽量化され、放熱シートしての熱伝導率の向上率が良好である。上記C1/D1の下限は、1.25以上が好ましく、1.50以上がより好ましく、2.00以上がさらに好ましい。上記C1/D1の上限は特に制限されないが、例えば、2.60以下とすることができる。上記C1/D1は、1.25以上2.60以下が好ましく、1.50以上2.60以下がより好ましく、2.00以上2.60以下がさらに好ましい。
【0095】
<放熱シートの厚さ>
実施形態3の放熱シートの平均厚さは特に制限されず、用途によって適宜調整することができる。該放熱シートの平均厚さは、例えば、0.1mm以上5mm以下が好ましく、0.1mm以上2mm以下がより好ましく、0.1mm以上1mm以下がさらに好ましい。放熱シートの平均厚さは、放熱シートの任意の3箇所の厚さを測定し、これらの平均を算出することにより得られる。
【0096】
<放熱シートの製造方法>
実施形態3の放熱シートの製造方法の一例について説明する。以下では、樹脂として付加反応型液状シリコーン樹脂を用いる場合について説明する。実施形態2に記載の放熱フィラーと、ビニル基を有するポリオルガノシロキサンをA液と、Si-H基を有するポリオルガノシロキサンをB液とを混合し、シリコーン樹脂組成物を調整する。該シリコーン樹脂組成物を押出機に投入し、平板形状の吐出口から押出成形してシリコーン形成体を得る。該シリコーン成形体をオーブンにて70℃で0.5時間加熱し、シリコーン硬化物を得る。該シリコーン硬化物を超音波カッターで切断することにより、所望の厚さの実施形態3の放熱シートを得ることができる。
【0097】
<用途>
実施形態3の放熱シートは、電子部品、車載インバータ、パワーモジュール・スイッチング電源等の放熱材に適用可能である。
【0098】
[付記1]
コア部と、前記コア部を被覆する被覆部と、からなる放熱フィラー粒子であって、
前記コア部は、シリカ粒子からなり、
前記被覆部は、酸化アルミニウムからなる、放熱フィラー粒子。
【0099】
[付記2]
前記シリカ粒子は、二酸化珪素と、酸化硼素、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化カリウム、酸化バリウムおよび酸化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の第1化合物と、からなる、付記1に記載の放熱フィラー粒子。
【0100】
[付記3]
前記被覆部の平均厚さは1.0μm以上である、付記1または付記2に記載の放熱フィラー粒子。
【0101】
[付記4]
前記放熱フィラー粒子の体積V1に対する前記被覆部の体積V2の百分率は、50%以下である、付記1から付記3のいずれかに記載の放熱フィラー粒子。
【0102】
[付記5]
複数の放熱フィラー粒子からなる、放熱フィラーであって、
前記放熱フィラー粒子は、コア部と、前記コア部を被覆する被覆部と、からなり、
前記コア部は、シリカ粒子からなり、
前記被覆部は、酸化アルミニウムからなる、放熱フィラー。
【0103】
[付記6]
前記コア部は、二酸化珪素と、酸化硼素、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化カリウム、酸化バリウムおよび酸化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の第1化合物と、からなる、付記5に記載の放熱フィラー。
【0104】
[付記7]
前記被覆部の平均厚さは1.0μm以上である、付記5または付記6に記載の放熱フィラー。
【0105】
[付記8]
前記放熱フィラー粒子の体積V1に対する前記被覆部の体積V2の百分率は、50%以下である、付記5から付記7のいずれかに記載の放熱フィラー。
【0106】
[付記9]
付記5から付記8のいずれかに記載の放熱フィラーと、樹脂と、からなる放熱シートであって、
前記放熱フィラーの含有率は、70質量%以上85質量%以下である、放熱シート。
【0107】
[付記10]
前記放熱シートの熱伝導率C1と、前記放熱シートの密度D1とは、C1/D1≧1.25の関係を満たし、
ここで、C1の単位はW/m・Kであり、D1の単位はg/cm3である、付記9に記載の放熱シート。
【0108】
[付記11]
付記5から付記8のいずれかに記載の放熱フィラーと、樹脂と、からなる放熱シートであって、
前記放熱フィラーの含有率は、65質量%以上85質量%以下である、放熱シート。
【実施例0109】
本実施の形態を実施例によりさらに具体的に説明する。ただし、これらの実施例により本実施の形態が限定されるものではない。
【0110】
[検討1]
[放熱フィラーの作製]
<試料1~試料8>
シリカ(SiO2)粒子からなる粉体として、以下の粉体1および粉体2を準備した。以下の粉体に含まれるシリカ粒子は、中空の粒子である。
粉体1:スリーエムジャパン(株)社製の「3MグラスバブルスiM30K」(商標)、組成:SiO2含有率が75質量%以上、その他の成分として、Na2O、CaO、Al2O3およびB2O3を含む。平均粒径は16.1μm、D10は8.8μm、D90は35.2μm。表1および以下において「iM30K」と記す。
粉体2:スリーエムジャパン(株)社製の「3MグラスバブルズK1」(商標)、組成:SiO2含有率が75質量%以上、その他の成分として、Na2O、CaO、Al2O3およびB2O3を含む。平均粒径は65.1μm、D10は28.9μm、D90は120.8μm。表1および以下において「K1」と記す。
各試料で用いられた粉体の種類は、表1の「粉体」の「種類」欄に記載の通りである。
【0111】
アルミニウムアセチルアセトナート(富士フィルム和光純薬(株)社製、純度98%)をメタノール(富士フィルム和光純薬(株)社製、試薬特級、純度99.8%以上)に溶解し、アルミニウムアセチルアセトナート濃度0.10mol/Lの原料溶液を準備した。
【0112】
上記原料溶液を用いて、ミストCVD法により、シリカ粒子の表面に酸化アルミニウムからなる被覆部を形成し、各試料の放熱フィラーを得た。上記のミストCVD法の条件は以下の通りとした。
原料溶液搬送N2流量:2L/min
希釈N2流量:3L/min
成膜温度:500℃
粉体撹拌速度:0.5~3rpm
成膜時間:表1の「製造条件」の「成膜時間」欄に記載の通り。
【0113】
<試料9~試料11>
シリカ粒子からなる粉体として、iM30KおよびK1を準備した。試料1と同一の原料溶液を準備した。iM30KおよびK1のそれぞれについて、ミストCVD法により、シリカ粒子の表面に酸化アルミニウムからなる被覆部を形成し、iM30Kをコア部とする第1放熱フィラー、および、K1をコア部とする第2放熱フィラーを得た。上記のミストCVD法の条件は以下の通りとした。
原料溶液搬送N2流量:2L/min
希釈N2流量:3L/min
成膜温度:400℃
粉体撹拌速度:0.5~3rpm
成膜時間:表1の「製造条件」の「成膜時間」欄に記載の通り。
【0114】
第1放熱フィラーと第2放熱フィラーとを、表1の「放熱フィラー」の「混合比」欄に記載の質量比で混合して混合フィラーを得た。試料9では、第1放熱フィラーと第2放熱フィラーとを質量比で第1放熱フィラー:第2放熱フィラー=6.1:93.9で混合して混合フィラーを得た。試料10では、第1放熱フィラーと第2放熱フィラーとを質量比で第1放熱フィラー:第2放熱フィラー=16:84で混合して混合フィラーを得た。試料11では、第1放熱フィラーと第2放熱フィラーとを質量比で第1放熱フィラー:第2放熱フィラー=2:98で混合して混合フィラーを得た。
【0115】
試料9の混合フィラー中の第1放熱フィラーと第2放熱フィラーの粒子数の比は、第1放熱フィラー:第2放熱フィラー=1:1である。試料9の混合フィラーにおいて、放熱フィラー粒子のコア部を構成するシリカ粒子の平均粒径は24.0μ、D10は12.4μm、D90は100.2μmである。
【0116】
試料10の混合フィラー中の第1放熱フィラーと第2放熱フィラーの粒子数の比は、第1放熱フィラー:第2放熱フィラー=3:1である。試料10の混合フィラーにおいて、放熱フィラー粒子のコア部を構成するシリカ粒子の平均粒径は17.1μ、D10は8.4μm、D90は78.5μmである。
【0117】
試料11の混合フィラー中の第1放熱フィラーと第2放熱フィラーの粒子数の比は、第1放熱フィラー:第2放熱フィラー=1:3である。試料11の混合フィラーにおいて、放熱フィラー粒子のコア部を構成するシリカ粒子の平均粒径は57.5μ、D10は13.5μm、D90は110.2μmである。
【0118】
<試料1-1>
試料1-1では、酸化アルミニウム(Al2O3)粒子(住友化学社製の「AA-18」(商標))を放熱フィラーとして用いた。「AA-18」の平均粒径は20.3μ、D10は4.6μ、D90は53.4μmである。
【0119】
<試料1-2>
試料1-2では、K1を放熱フィラーとして用いた。
【0120】
[放熱フィラーの評価]
各試料の放熱フィラーについて、被覆部の平均厚さおよび放熱フィラー粒子の体積V1に対する被覆部の体積V2の百分率(V2/V1)×100を測定した。具体的な測定方法は、実施形態1および実施形態2に記載の通りである。結果を表1の「放熱フィラー」の「被覆部の平均厚さ」および「V2/V1」欄に示す。
【0121】
試料1~試料11の放熱フィラーについて、放熱フィラー粒子のコア部の組成を確認したところ、シリカ粒子から粉体の組成を維持していることが確認された。
【0122】
各試料の放熱フィラー粒子の粒度分布を測定し、平均粒径R1、D10、D90を求めた。粒度分布の測定方法は実施形態2に記載の通りである。平均粒径R1を表1の「放熱フィラー」の「平均粒径R1」欄に示す。
【0123】
試料1~試料8の各試料の粒度分布を示すヒストグラムでは、D10は10μm以上であり、D90は200μ以下であり、平均粒径R1の近傍に1つの鋭いピークが確認された。
【0124】
試料9~試料11の粒度分布を示すヒストグラムでは、D10は10μm以上であり、D90は200μ以下であり、粒径が10~30μmの範囲にピークトップを有する第一ピークおよび粒径が60~90μmの範囲にピークトップを有する第二ピークが確認された。
【0125】
【0126】
[検討2]
[放熱シートの作製]
<試料21~試料31、試料2-21~試料2-25>
シリコーンA液(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社社製「TSE3062-A」(商標))と、シリコーンB液(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社社製「TSE3062-B」(商標))とを1:1の質量比で混合したシリコーン樹脂を準備した。該シリコーン樹脂に、上記の検討1で作製した各試料の放熱フィラーを分散させて、シリコーン樹脂組成物を調製した。各試料で用いた放熱フィラーの試料No.は、表2の「放熱シート」の「放熱フィラー試料No.」欄に記載の通りである。例えば、試料21では、検討1で作製された試料1の放熱フィラーを用いた。
【0127】
各試料において、シリコーン樹脂と、放熱フィラーとの混合比は、シリコーン樹脂組成物中の放熱フィラーの含有率およびシリコーン樹脂の含有率が、表2の「放熱シート」の「放熱フィラー含有率」欄および「樹脂含有率」欄に記載の通りとなるように調整した。なお、上記混合比は、放熱シートにおいても維持されることが確認された。
【0128】
得られたシリコーン樹脂組成物を押出機中に投入し、平板形状の吐出口から押出成形してシリコーン成形体を作製した。得られたシリコーン成形体をオーブンにて70℃で0.5時間加熱して、シリコーン硬化物とした。該シリコーン硬化物を用いて、各評価項目に応じた放熱シートを作製した。
【0129】
[放熱シートの評価]
<熱伝導率C1および密度D1>
得られたシリコーン硬化物を、平均厚みが100μmとなるように超音波カッターで押出し方向に対して垂直方向にスライス切断した。以上により、平均厚み100μm、縦30mm、横30mmの正方形状の各試料の放熱シート(以下、「第1放熱シート」とも記す。)を得た。
【0130】
各試料の第1放熱シートについて、熱伝導率C1および密度D1を測定した。具体的な測定方法は、実施形態3に記載の通りである。結果を表2の「放熱シート」の「熱伝導率C1」および「密度D1」欄に示す。第1放熱シートの熱伝導率C1が1.1W/m・K以上の場合、該第1放熱シートは高い熱伝導率を有すると判断される。第1放熱シートの密度D1が試料1-1の放熱シートの密度よりも小さい場合、該第1放熱シートは軽量であると判断される。
【0131】
熱伝導率C1および密度D1に基づき、C1/D1を算出した。結果を表2の「放熱シート」の「C1/D1」欄に示す。
【0132】
<柔軟性>
得られたシリコーン硬化物を、平均厚みが2.5mmとなるように超音波カッターで押出し方向に対して垂直方向にスライス切断して各試料の放熱シート(以下、「第2放熱シート」とも記す。)を得た。第2放熱シートの厚み方向に荷重2.0kgf/cm2をかけた時の厚みの圧縮率を測定した。表2において、圧縮率が20%以上を「A」、圧縮率が20%未満を「B」と記載した。「A」は柔軟性を有し、電子部品の放熱シートとして好適であることを示し、「B」は柔軟性が不十分であることを示す。
【0133】
各試料の第2放熱シートにおいて、被覆部の平均厚さおよび放熱フィラー粒子の体積V1に対する被覆部の体積V2の百分率(V2/V1)×100を測定した。具体的な測定方法は実施形態3に記載の通りである。全ての試料において、これらの値は、放熱フィラーにおいて測定された被覆部の平均厚さおよび放熱フィラー粒子の体積V1に対する被覆部の体積V2の百分率(V2/V1)×100と同一であることが確認された。
【0134】
【0135】
<評価>
試料1~試料11の放熱フィラーは実施例に該当する。試料21~試料31の放熱シートは実施例に該当する。これらの放熱シートは、高い熱伝導率を確保しながら、軽量化されており、シートとしての熱伝導率の向上率が良好であることが確認された。なお、試料1~試料8の放熱フィラーの粒度分布を示すヒストグラムにおいて、1つのピークが確認され、試料9~試料11の放熱フィラーの粒度分布を示すヒストグラムでは、2つのピークが確認されているが、試料1~試料11をそれぞれ用いた試料21~試料31の放熱シートは、すべて高い熱伝導率を実現している。すなわち、試料1~試料11の放熱フィラーは、これらの粒度分布にかかわらず、高い熱伝導率を有する放熱シートを実現できることが確認された。これは、粒径が所定の範囲内であり、放熱シートが放熱フィラーを所定量以上含む場合、放熱フィラーの粒度分布に関わらず、放熱シート中で放熱フィラーの少なくとも一部が互いに接することができるためと推察される。
【0136】
試料1-1の放熱フィラーおよび試料2-21の放熱シートは、放熱フィラーがAl2O3粒子からなり、比較例に該当する。試料2-21の放熱シートは、軽量化されていない。
【0137】
試料1-2の放熱フィラーおよび試料2-22の放熱シートは、放熱フィラーが中空ガラス粒子のみからなり、比較例に該当する。試料2-22の放熱シートは、熱伝導率が低いことが確認された。
【0138】
試料2-23および試料2-24の放熱シートは、試料7の放熱フィラーを用いているが、放熱フィラーの含有率が65質量%以下であり、比較例に該当する。試料2-23および試料2-24の放熱シートは、「C1/D1」が1.25未満であり、シートしての熱伝導率の向上率が不十分であった。試料2-24の放熱シートは、熱伝導率も低かった。
【0139】
試料2-25の放熱シートは、試料8の放熱フィラーを用いているが、放熱フィラーの含有率が98質量%であり、比較例に該当する。試料2-25の放熱シートは、熱伝導率が低く、柔軟性が不十分であった。
【0140】
以上のように本開示の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせたり、様々に変形することも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。