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特開2024-108348慣性計測装置および慣性計測装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108348
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】慣性計測装置および慣性計測装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 19/5783 20120101AFI20240805BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
G01C19/5783
H01L29/84 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012661
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】小澤 諒平
【テーマコード(参考)】
2F105
4M112
【Fターム(参考)】
2F105AA01
2F105AA02
2F105BB04
2F105BB12
2F105BB14
2F105BB15
2F105BB17
2F105CC04
2F105CD02
2F105CD03
2F105CD05
2F105CD06
2F105CD13
4M112AA02
4M112BA07
4M112EA02
4M112EA11
4M112GA01
(57)【要約】
【課題】優れた防湿効果を有する慣性計測装置および慣性計測装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】慣性計測装置は、基板と、前記基板に接合されているキャップと、前記基板と前記キャップとの間の収容空間に収容され、慣性センサーおよび前記慣性センサーを覆う樹脂モールド材を備える慣性センサーデバイスと、前記収容空間に充填されている充填材と、を有し、前記基板または前記キャップに前記収容空間の内外を連通する第1孔が形成されている。また、前記第1孔と離間して配置され、前記収容空間の内外を連通する第2孔を有する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に接合されているキャップと、
前記基板と前記キャップとの間の収容空間に収容され、慣性センサーおよび前記慣性センサーを覆う樹脂モールド材を備える慣性センサーデバイスと、
前記収容空間に充填されている充填材と、を有し、
前記基板または前記キャップに前記収容空間の内外を連通する第1孔が形成されていることを特徴とする慣性計測装置。
【請求項2】
前記第1孔と離間して配置され、前記収容空間の内外を連通する第2孔を有する請求項1に記載の慣性計測装置。
【請求項3】
前記基板の平面視で、前記第1孔と前記第2孔は、それぞれ、前記収容空間の端部に連通し、前記収容空間の中心を介して互いに反対側に位置している請求項2に記載の慣性計測装置。
【請求項4】
前記第2孔は、前記基板と前記キャップとの間に形成されている隙間で構成されている請求項2に記載の慣性計測装置。
【請求項5】
前記基板は、前記キャップと接合されるランドを有し、
前記ランドは、前記基板と前記キャップとの間に前記隙間を形成する欠損部を有する請求項4に記載の慣性計測装置。
【請求項6】
前記充填材は、前記第1孔を埋めている請求項1に記載の慣性計測装置。
【請求項7】
前記キャップが前記第1孔を有する請求項1に記載の慣性計測装置。
【請求項8】
前記基板が前記第1孔を有する請求項1に記載の慣性計測装置。
【請求項9】
前記キャップを覆う封止材を有する請求項1に記載の慣性計測装置。
【請求項10】
基板と、前記基板に接合されているキャップと、前記基板と前記キャップとの間の収容空間に収容され、慣性センサーおよび前記慣性センサーを覆う樹脂モールド材を備える慣性センサーデバイスと、前記収容空間に充填されている充填材と、を有し、前記基板または前記キャップに前記収容空間の内外を連通する第1孔が形成されている慣性計測装置の製造方法であって、
前記基板を準備する基板準備工程と、
前記基板に前記慣性センサーデバイスおよび前記キャップを接合する接合工程と、
前記第1孔を介して前記収容空間に前記充填材を充填する充填剤充填工程と、を含むことを特徴とする慣性計測装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慣性計測装置および慣性計測装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加速度、角速度等の慣性量を計測することのできる慣性計測装置は、様々な電子機器や機械に組み込まれ、または自動車、バイクなどの移動体に搭載され、慣性量のモニタリングを行うことに用いられる。例えば、特許文献1には、封止樹脂により樹脂封止された慣性センサーを備えたセンサーユニットが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-049122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、封止樹脂に外部から水分が侵入すると封止樹脂の応力が変動し、それに起因して慣性センサーが変形し、出力が変動することにより慣性量の計測精度が低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の慣性計測装置は、基板と、
前記基板に接合されているキャップと、
前記基板と前記キャップとの間の収容空間に収容され、慣性センサーおよび前記慣性センサーを覆う樹脂モールド材を備える慣性センサーデバイスと、
前記収容空間に充填されている充填材と、を有し、
前記基板または前記キャップに前記収容空間の内外を連通する第1孔が形成されている。
【0006】
本発明の慣性計測装置の製造方法は、基板と、前記基板に接合されているキャップと、前記基板と前記キャップとの間の収容空間に収容され、慣性センサーおよび前記慣性センサーを覆う樹脂モールド材を備える慣性センサーデバイスと、前記収容空間に充填されている充填材と、を有し、前記基板または前記キャップに前記収容空間の内外を連通する第1孔が形成されている慣性計測装置の製造方法であって、
前記基板を準備する基板準備工程と、
前記基板に前記慣性センサーデバイスおよび前記キャップを接合する接合工程と、
前記第1孔を介して前記収容空間に前記充填材を充填する充填剤充填工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る慣性計測装置の断面図であり、図2中のA-A線断面図である。
図2】基板の上面図である。
図3】慣性センサーデバイスが備える角速度センサーの断面図である。
図4】慣性センサーデバイスが備える加速度センサーの断面図である。
図5】慣性計測装置の上面図である。
図6】充填材が充填されていない状態における慣性計測装置の斜視図である。
図7図2中のB-B線断面図である。
図8】慣性計測装置の製造方法を示すフローチャートである。
図9】慣性計測装置の製造方法を説明するための断面図である。
図10】慣性計測装置の製造方法を説明するための断面図である。
図11】慣性計測装置の製造方法を説明するための断面図である。
図12】慣性計測装置の製造方法を説明するための断面図である。
図13】慣性計測装置の製造方法を説明するための断面図である。
図14】慣性計測装置の製造方法を説明するための断面図である。
図15】第2実施形態に係る慣性計測装置の断面図である。
図16】第3実施形態に係る慣性計測装置の断面図である。
図17】第4実施形態に係る慣性計測装置の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の慣性計測装置および慣性計測装置の製造方法を添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、説明の便宜上、各図には互いに直交する3軸であるX軸、Y軸およびZ軸を図示する。そして、以下では、X軸に沿う方向を「X軸方向」とも言い、Y軸に沿う方向を「Y軸方向」とも言い、Z軸に沿う方向を「Z軸方向」とも言う。また、各軸の矢印側を「プラス側」とも言い、反対側を「マイナス側」とも言う。また、Z軸が鉛直方向に沿っており、矢印側を「上」、反対側を「下」とも言う。また、以下では、Z軸方向からの平面視を単に「平面視」とも言う。
【0009】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る慣性計測装置の断面図であり、図2中のA-A線断面図である。図2は、基板の上面図である。図3は、慣性センサーデバイスが備える角速度センサーの断面図である。図4は、慣性センサーデバイスが備える加速度センサーの断面図である。図5は、慣性計測装置の上面図である。図6は、充填材が充填されていない状態における慣性計測装置の斜視図である。図7は、図2中のB-B線断面図である。図8は、慣性計測装置の製造方法を示すフローチャートである。図9ないし図14は、それぞれ、慣性計測装置の製造方法を説明するための断面図である。
【0010】
図1に示す慣性計測装置1は、基板2と、基板2に接合されたキャップ4と、基板2とキャップ4との間の収容空間Q1に収容され、基板2に配置されている慣性センサーデバイス3と、収容空間Q1に充填されている充填材6と、を有する。
【0011】
[基板2]
図2に示すように、基板2は、平面視で矩形、特に、正方形である。なお、「矩形」は、矩形と一致する場合に加えて、本実施形態のように角部や辺部に切り欠きが形成されている、角部が丸み付けされているなど、矩形と一致しないが技術常識的に見て矩形と同一視できる形状を含む意味である。ただし、基板2の平面視形状は、特に限定されない。また、基板2は、リジッド基板であり、例えば、セラミック基板、ガラスエポキシ基板、ガラスコンポジット基板、樹脂基板などで構成されている。
【0012】
また、基板2の上面には慣性センサーデバイス3との接合用の複数の第1ランド21およびキャップ4との接合用の第2ランド22が配置されている。なお、第1、第2ランド21、22は、金属材料で構成されている。第2ランド22は、矩形の枠状であり、その内側に複数の第1ランド21が所定のパターンで配置されている。また、第2ランド22は、第2ランド22の内側と外側とを連通する欠損部221を有する。欠損部221は、第2ランド22の1つの角部(X軸方向プラス側およびY軸方向マイナス側に位置する角部)に形成されている。一方、基板2の下面には上位装置の基板などと電気的に接続される複数の外部端子23が配置されている。基板2には、図示しない内部配線やビア(貫通電極)などが形成され、これらを介して第1ランド21や第2ランド22が対応する外部端子23と電気的に接続されている。
【0013】
[慣性センサーデバイス3]
図1に示すように、慣性センサーデバイス3は、Z軸方向に潰れた平たい直方体をなしており、導電性の接合部材B1を介して第1ランド21に接合されている。このような慣性センサーデバイス3は、基板30と、基板30の上面に並んで実装された慣性センサーとしての第1慣性センサー31および第2慣性センサー32と、第1慣性センサー31および第2慣性センサー32を封止する樹脂モールド材33と、を有する。
【0014】
また、基板30の下面には第1慣性センサー31および第2慣性センサー32と電気的に接続された複数の端子34が配置されている。複数の端子34は、複数の第1ランド21に対応したパターンで配置されている。そして、各端子34は、接合部材B1を介して対応する第1ランド21と電気的に接続されている。接合部材B1は、例えば、半田である。これにより、半田リフロー処理によって、慣性センサーデバイス3を基板2に接合することができる。ただし、接合部材B1としては、特に限定されない。
【0015】
また、図3に示すように、第1慣性センサー31は、気密な収容空間Q2を有するパッケージ311と、収容空間Q2に収容された第1角速度センサー素子312、第2角速度センサー素子313および第3角速度センサー素子314と、を有する。また、パッケージ311は、第1、第2、第3角速度センサー素子312、313、314を支持する基板311aと、基板311aの上面に接合され、基板311aとの間に第1、第2、第3角速度センサー素子312、313、314を収容するリッド311bと、を有する。
【0016】
第1角速度センサー素子312は、X軸まわりの角速度を検出し、第2角速度センサー素子313は、Y軸まわりの角速度を検出し、第3角速度センサー素子314は、Z軸まわりの角速度を検出する。第1、第2、第3角速度センサー素子312、313、314は、それぞれ、MEMS技術を用いてシリコン基板を加工して製造された素子であり、基板311aに固定された固定電極指と、固定電極指に対して受けた角速度に応じて変位する可動電極指と、を備え、固定電極指と可動電極指との間の容量変化に基づいて角速度を検出する。
【0017】
なお、第1慣性センサー31は、第1角速度センサー素子312、第2角速度センサー素子313および第3角速度センサー素子314を有していたが、これに限られず、2つの角速度センサー素子のみを有していてもよいし、1つの角速度センサー素子のみを有していてもよい。1つの角速度センサー素子の場合、この角速度センサー素子が、X軸まわりの角速度を検出し、Y軸まわりの角速度を検出し、Z軸まわりの角速度を検出してもよい。
【0018】
また、図4に示すように、第2慣性センサー32は、気密な収容空間Q3を有するパッケージ321と、収容空間Q3に収容された第1加速度センサー素子322、第2加速度センサー素子323および第3加速度センサー素子324と、を有する。また、パッケージ321は、第1、第2、第3加速度センサー素子322、323、324を支持する基板321aと、基板321aの上面に接合され、基板321aとの間に第1、第2、第3加速度センサー素子322、323、324を収容するリッド321bと、を有する。
【0019】
第1加速度センサー素子322は、X軸方向の加速度を検出し、第2加速度センサー素子323は、Y軸方向の加速度を検出し、第3加速度センサー素子324は、Z軸方向の加速度を検出する。第1、第2、第3加速度センサー素子322、323、324は、それぞれ、MEMS技術を用いてシリコン基板を加工して製造された素子であり、基板321aに固定された固定電極指と、固定電極指に対して受けた加速度に応じて変位する可動電極指と、を備え、固定電極指と可動電極指との間の容量変化に基づいて加速度を検出する。
【0020】
なお、第2慣性センサー32は、第1加速度センサー素子322、第2加速度センサー素子323および第3加速度センサー素子324を有していたが、これに限られず、2つの加速度センサー素子のみを有していてもよいし、1つの加速度センサー素子のみを有していてもよい。2つの加速度センサー素子を有している場合、一方の加速度センサー素子が、X軸方向の加速度を検出し、Y軸方向の加速度を検出し、他方の加速度センサー素子が、Z軸方向の加速度を検出してもよい。また、慣性センサーデバイス3において、第1慣性センサー31は基板311aを有し、第2慣性センサー32は基板321aを有していたが、これに限られず、第1慣性センサー31の角速度センサー素子および第2慣性センサー32の加速度センサー素子を支持する共通の基板を有していてもよい。すなわち、基板311aおよび基板321aは一体化して構成してもよいし、さらに、基板30も基板311aおよび基板321aと一体化して構成してもよい。また、リッド311bおよびリッド321bを一体化して構成してもよい。
【0021】
図1図3および図4に示すように、樹脂モールド材33は、基板30の上面に配置され、第1慣性センサー31および第2慣性センサー32を覆っている。つまり、第1慣性センサー31および第2慣性センサー32が樹脂モールド材33で封止されている。これにより、優れた防湿効果を有する慣性センサーデバイス3となる。なお、樹脂モールド材33としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂を用いることができる。
【0022】
以上、慣性センサーデバイス3について説明したが、慣性センサーデバイス3の構成は、特に限定されない。慣性センサーデバイス3は、少なくとも1つの慣性量を計測することができればよく、例えば、第1、第2慣性センサー31、32の一方を省略してもよい。また、第1慣性センサー31から第1、第2、第3角速度センサー素子312、313、314の1つまたは2つを省略してもよいし、第2慣性センサー32から第1、第2、第3加速度センサー素子322、323、324の1つまたは2つを省略してもよい。
【0023】
また、第1、第2、第3角速度センサー素子312、313、314や第1、第2、第3加速度センサー素子322、323、324は、それぞれ、別々のパッケージに収容されていてもよい。また、第1、第2、第3角速度センサー素子312、313、314や第1、第2、第3加速度センサー素子322、323、324は、MEMS技術で形成されたシリコン基板素子に限定されず、例えば、受けた慣性量に基づく信号を出力する水晶振動素子で構成してもよい。
【0024】
また、収容空間Q1に2つ以上の慣性センサーデバイス3が配置されていてもよい。この場合、慣性センサーデバイス3の構成は、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。異なる場合は、例えば、第1の慣性センサーデバイスとして角速度センサーデバイスを配置し、第2の慣性センサーデバイスとして加速度センサーデバイスを配置してもよい。また、収容空間Q1に、慣性センサーデバイス3の駆動を制御する制御回路素子を配置してもよい。
【0025】
[キャップ4]
図1に示すように、キャップ4は、下側に開口する凹部を有するキャビティ状の基部41と、基部41の下端部から外側へ延出する環状のフランジ42と、を有する。また、基部41は、板状の頂部411と、頂部411の外縁部からZ軸方向マイナス側に立設した枠状の壁部412と、を有する。また、図5に示すように、基部41およびフランジ42は、それぞれ、平面視で、矩形、特に正方形である。ただし、基部41およびフランジ42の平面視形状は、特に限定されない。
【0026】
また、頂部411には、収容空間Q1の内外を連通する第1孔7が形成されている。そして、第1孔7から収容空間Q1内に充填材6が充填される。また、第1孔7は、頂部411の外縁部、具体的には、X軸方向マイナス側およびY軸方向プラス側に位置する角部に形成されている。また、フランジ42は、欠損部421を有する。欠損部421は、1つの角部(X軸方向プラス側およびY軸方向マイナス側に位置する角部)に形成され、第2ランド22の欠損部221と重なっている。
【0027】
なお、後述する第2実施形態のように、第1孔7をキャップ4ではなく基板2に形成してもよいが、基板2には第1、第2ランド21、22、外部端子23、内部配線、ビアなどが形成されているため、第1孔7の形成位置が制限される。それに比べて、キャップ4には形成位置の制限がなく、第1孔7の配置自由度が増す。そのため、第1孔7を収容空間Q1の角部に容易に形成することができる。
【0028】
キャップ4の構成材料としては、特に限定されないが、本実施形態では金属材料である。これにより、キャップ4の機械的強度を容易に高めることができる。また、金属材料としては、例えば、真鍮、コバール、アルミニウム、ステンレス鋼などを用いることができる。また、金属材料の他にも、例えば、各種樹脂材料、各種セラミックスなどを用いることができる。
【0029】
以上、キャップ4について説明したが、キャップ4の構成は、特に限定されない。例えば、フランジ42から欠損部421を省略してもよい。また、欠損部421が壁部412まで延在していてもよい。また、第1孔7を壁部412に形成してもよい。
【0030】
このようなキャップ4は、図1に示すように、フランジ42において接合部材5を介して基板2の第2ランド22に接合されている。接合部材5は、例えば、半田である。これにより、半田リフロー処理によって、キャップ4を基板2に接合することができる。ただし、接合部材5としては、特に限定されない。
【0031】
前述したように、第2ランド22に欠損部221が形成されており、半田リフロー処理時において、欠損部221には接合部材5である半田が濡れ広がらない。したがって、図6に示すように、キャップ4と基板2との間に第2ランド22の厚み程度の隙間からなる第2孔8が形成される。そして、この第2孔8を介してキャップ4の内外が連通する。このように、第2孔8をキャップ4と基板2との間の隙間で構成することにより、第2孔8の形成が容易となる。また、第2孔8を基板2やキャップ4に形成する必要がなくなるため、基板2やキャップ4の機械的強度の低下を抑制することもできる。
【0032】
第2孔8は、第1孔7から収容空間Q1内に充填材6を充填する際に、収容空間Q1内の空気を排気する排気孔として機能する。これにより、収容空間Q1内への充填材6の充填をスムーズに行うことができる。特に、本実施形態では、平面視で、第1孔7および第2孔8は、それぞれ、収容空間Q1の端部に連通し、収容空間Q1の中心を介して互いに反対側に位置している。具体的には、第1孔7と第2孔8とが収容空間Q1の対角線上の角部に位置している。そのため、収容空間Q1内の空気を最後まで排気し易くなり、収容空間Q1内に空気溜りが残存し難くなる。したがって、収容空間Q1内に充填材6をより密に充填することができる。
【0033】
前述したように、本実施形態では、フランジ42にも欠損部421を形成し、第2ランド22と重なる部分を除去している。そのため、フランジ42を介して欠損部221上に接合部材5が濡れ広がり、第2孔8が塞がってしまうのを効果的に抑制することができる。
【0034】
なお、第2孔8は、省略してもよい。また、第2孔8をキャップ4または基板2に形成してもよい。
【0035】
[充填材6]
図7に示すように、充填材6は、収容空間Q1内に充填されている。なお、充填材6は、第1孔7から収容空間Q1内に充填される。このように、収容空間Q1内に充填材6を充填することにより、慣性計測装置1の防湿性が高まり、慣性センサーデバイス3への外部からの水分の浸入を効果的に抑制することができる。したがって、水分の影響を低減し、優れた計測精度を有する慣性計測装置1となる。言い換えると、耐湿性に優れ、信頼性の高い慣性計測装置1を提供することができる。さらには、慣性計測装置1の剛性を高めることができ、湿度変化や温度変化による慣性センサーデバイス3の応力変形を効果的に抑制することができる。そのため、慣性量の計測精度を高めることができる。また、振動、衝突などの外乱の影響を受け難くなり、ロバスト性を高めることもできる。
【0036】
また、充填材6は、第1孔7および第2孔8をそれぞれ埋めている。これにより、第1孔7および第2孔8から収容空間Q1内への水分の侵入を防ぐことができる。そのため、より高い防湿効果を発揮することができる。特に、本実施形態では、第1孔7および第2孔8から漏れ出すまで充填材6を充填している。これにより、より確実に、第1孔7および第2孔8を埋めることができる。
【0037】
なお、充填材6としては、特に限定されないが、絶縁性を有するものが好ましい。このような材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリ-(4-メチルペンテン-1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
以上、慣性計測装置1の構成について説明した。このような慣性計測装置1は、前述したように、基板2と、基板2に接合されているキャップ4と、基板2とキャップ4との間の収容空間Q1に収容され、慣性センサーである第1、第2慣性センサー31、32および第1、第2慣性センサー31、32を覆う樹脂モールド材33を備える慣性センサーデバイス3と、収容空間Q1に充填されている充填材6と、を有し、基板2またはキャップ4に収容空間Q1の内外を連通する第1孔7が形成されている。このように、収容空間Q1内に充填材6を充填することにより、慣性計測装置1の防湿性が高まり、慣性センサーデバイス3への外部からの水分浸入を効果的に抑制することができる。したがって、水分の影響を低減し、優れた計測精度を有する慣性計測装置1となる。さらには、慣性計測装置1の剛性が高まり、湿度変化や温度変化による慣性センサーデバイス3の応力変形を効果的に抑制することができる。そのため、慣性量の計測精度を高めることができる。また、振動、衝突などの外乱の影響を受け難くなり、ロバスト性を高めることもできる。また、第1孔7を介して収容空間Q1内に充填材6を充填することができるため、慣性計測装置1の製造が容易となる。
【0039】
また、前述したように、第1孔7と離間して配置され、収容空間Q1の内外を連通する第2孔8を有する。これにより、第1孔7から収容空間Q1内に充填材6を充填する際に、第2孔8から収容空間Q1内の空気を排気することができる。そのため、収容空間Q1内への充填材6の充填をスムーズに行うことができる。
【0040】
また、前述したように、基板2の平面視で、第1孔7と第2孔8は、それぞれ、収容空間Q1の端部に連通し、収容空間Q1の中心を介して互いに反対側に位置している。これにより、収容空間Q1内の空気を最後まで排気し易くなり、収容空間Q1内に空気溜りが残存し難くなる。したがって、収容空間Q1内に充填材6をより密に充填することができる。
【0041】
また、前述したように、第2孔8は、基板2とキャップ4との間に形成されている隙間で構成されている。これにより、第2孔8の形成が容易となる。また、第2孔8を基板2やキャップ4に形成しなくても済むため、基板2やキャップ4の機械的強度の低下を抑制することもできる。
【0042】
また、前述したように、基板2は、キャップ4と接合されるランドである第2ランド22を有し、第2ランド22は、基板2とキャップ4との間に隙間を形成する欠損部221を有する。これにより、第2孔8の形成が容易となる。
【0043】
また、前述したように、充填材6は、第1孔7を埋めている。これにより、収容空間Q1内への水分の侵入を防ぐことができる。そのため、より高い防湿効果を発揮することができる慣性計測装置1となる。
【0044】
また、前述したように、キャップ4が第1孔7を有する。これにより、第1孔7の配置自由度が増す。そのため、本実施形態のように、第1孔7を収容空間Q1の角部に形成し易くなる。
【0045】
次に、慣性計測装置1の製造方法について説明する。慣性計測装置1の製造方法は、図8に示すように、基板2を準備する基板準備工程S1と、基板2上に接合部材5、B1を配置する接合部材配置工程S2と、基板2に慣性センサーデバイス3を載置する慣性センサーデバイス載置工程S3と、基板2にキャップ4を載置するキャップ載置工程S4と、慣性センサーデバイス3およびキャップ4を基板2に接合する接合工程S5と、収容空間Q1内に充填材6を充填する充填剤充填工程S6と、を含む。以下、図7に相当する断面図を用いて各工程について順に説明する。
【0046】
[基板準備工程S1]
基板準備工程S1では、図9に示すように、基板2を準備する。
【0047】
[接合部材配置工程S2]
接合部材配置工程S2では、図10に示すように、第1、第2ランド21、22上に接合部材B1、5、具体的には接合部材B1、5の母材となる半田クリーム50を塗布する。半田クリーム50の塗布は、例えば、スクリーン印刷により行うことができる。ただし、半田クリーム50の塗布方法は、特に限定されない。
【0048】
[慣性センサーデバイス載置工程S3]
慣性センサーデバイス載置工程S3では、図11に示すように、基板2の第1ランド21上に慣性センサーデバイス3を載置する。
【0049】
[キャップ載置工程S4]
キャップ載置工程S4では、図12に示すように、基板2の第2ランド22上にキャップ4を載置する。
【0050】
[接合工程S5]
接合工程S5では、慣性センサーデバイス3およびキャップ4が載置された状態の基板2をリフロー処理する。これにより、半田クリーム50が溶融、固化し、図13に示すように、慣性センサーデバイス3およびキャップ4がそれぞれ基板2に接合される。この際、第1孔7や第2孔8から、収容空間Q1内の膨張した空気を逃がすことができ、キャップ4の浮き上がりを抑制することができる。そのため、基板2とキャップ4とをより強固に接合することができる。
【0051】
[充填剤充填工程S6]
充填剤充填工程S6では、図14に示すように、第1孔7から収容空間Q1内に充填材6を充填する。この際、第2孔8から収容空間Q1内の空気が排気されるため、充填材6の充填をスムーズに行うことができる。また、前述したように、平面視で、第1孔7と第2孔8とが対角線上の角部に位置しているため、収容空間Q1内の空気を最後まで排気し易くなり、収容空間Q1内に空気溜りが残存し難くなる。そのため、収容空間Q1内に充填材6をより密に充填することができる。
【0052】
なお、本工程では、第2孔8から収容空間Q1内に充填材6を充填しつつ、第1孔7から収容空間Q1内の空気を排気してもよい。
【0053】
以上により、慣性計測装置1が製造される。このような製造方法によれば、優れた防湿効果を有する慣性計測装置1を容易に製造することができる。
【0054】
このような慣性計測装置1の製造方法は、前述したように、基板2と、基板2に接合されているキャップ4と、基板2とキャップ4との間の収容空間Q1に収容され、慣性センサーである第1、第2慣性センサー31、32および第1、第2慣性センサー31、32を覆う樹脂モールド材33を備える慣性センサーデバイス3と、収容空間Q1に充填されている充填材6と、を有し、基板2またはキャップ4に収容空間Q1の内外を連通する第1孔7が形成されている慣性計測装置1の製造方法であって、基板2を準備する基板準備工程S1と、基板2に慣性センサーデバイス3およびキャップ4を接合する接合工程S5と、第1孔7を介して収容空間Q1に充填材6を充填する充填剤充填工程S6と、を含む。このような製造方法によれば、優れた防湿効果を有する慣性計測装置1を容易に製造することができる。
【0055】
<第2実施形態>
図15は、第2実施形態に係る慣性計測装置の断面図である。
【0056】
本実施形態の慣性計測装置1は、第1孔7の形成位置が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、本実施形態の図において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0057】
図15に示すように、本実施形態の慣性計測装置1では、基板2が第1孔7を有する。このように、第1孔7を基板2に形成することにより、第1孔7の形成が容易となる。
【0058】
このような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0059】
<第3実施形態>
図16は、第3実施形態に係る慣性計測装置の断面図である。
【0060】
本実施形態の慣性計測装置1は、さらに、封止材9を有すること以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、本実施形態の図において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0061】
図16に示すように、本実施形態の慣性計測装置1は、基板2の上面に配置され、キャップ4を覆う封止材9を有する。これにより、慣性計測装置1の防湿効果、剛性などがさらに高まる。なお、本実施形態では、充填材6が封止材9を兼ねており、充填材6および封止材9が一体形成されている。これにより、封止材9の形成が容易となる。ただし、これに限定されず、充填材6と封止材9とが別体で形成されていてもよい。また、この場合は、充填材6と封止材9とが異なる材料で構成されていてもよい。
【0062】
以上のように、本実施形態の慣性計測装置1は、キャップ4を覆う封止材9を有する。これにより、慣性計測装置1の防湿効果がさらに高まる。
【0063】
このような第3実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0064】
<第4実施形態>
図17は、第4実施形態に係る慣性計測装置の上面図である。
【0065】
本実施形態の慣性計測装置1は、第2ランド22の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、本実施形態の図において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0066】
図17に示すように、本実施形態の第2ランド22では、欠損部221が第2ランド22の内縁に開口するが、外縁に開口していない。
【0067】
このような第4実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0068】
以上、本発明の慣性計測装置および慣性計測装置の製造方法を図示の実施形態に基づいて説明したが本発明はこれに限定されるものではない。各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物や他の任意の工程が付加されていてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…慣性計測装置、2…基板、21…第1ランド、22…第2ランド、221…欠損部、23…外部端子、3…慣性センサーデバイス、30…基板、31…第1慣性センサー、311…パッケージ、311a…基板、311b…リッド、312…第1角速度センサー素子、313…第2角速度センサー素子、314…第3角速度センサー素子、32…第2慣性センサー、321…パッケージ、321a…基板、321b…リッド、322…第1加速度センサー素子、323…第2加速度センサー素子、324…第3加速度センサー素子、33…樹脂モールド材、34…端子、4…キャップ、41…基部、411…頂部、412…壁部、42…フランジ、421…欠損部、5…接合部材、50…半田クリーム、6…充填材、7…第1孔、8…第2孔、9…封止材、B1…接合部材、Q1…収容空間、Q2…収容空間、Q3…収容空間、S1…基板準備工程、S2…接合部材配置工程、S3…慣性センサーデバイス載置工程、S4…キャップ載置工程、S5…接合工程、S6…充填剤充填工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17