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特開2024-108358給紙装置、画像形成システム、給紙方法、及び、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108358
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】給紙装置、画像形成システム、給紙方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
   B65H 3/48 20060101AFI20240805BHJP
   B65H 3/12 20060101ALI20240805BHJP
   B65H 7/16 20060101ALI20240805BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
B65H3/48 310A
B65H3/12 310A
B65H7/16
G03G15/00 405
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012674
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄介
【テーマコード(参考)】
2H072
3F048
3F343
【Fターム(参考)】
2H072AA04
2H072AA07
2H072AA12
2H072AA22
2H072AA29
2H072BA04
2H072BA08
2H072BA13
3F048AA01
3F048AB01
3F048BA13
3F048BB02
3F048DA01
3F048DA04
3F048DA06
3F048DC12
3F048EA15
3F048EB08
3F048EB16
3F048EB27
3F343FA02
3F343FB01
3F343FC01
3F343GA01
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343JB05
3F343JB19
3F343JD03
3F343JD28
3F343JD34
3F343KB04
3F343KB05
3F343KB06
3F343KB20
3F343LA03
3F343LB08
3F343MA03
3F343MA13
3F343MA14
3F343MA15
3F343MA40
3F343MA45
3F343MB03
3F343MB13
3F343MB14
3F343MB15
3F343MC08
3F343MC13
(57)【要約】
【課題】記録材が屈曲した場合にも、記録材を効果的に捌くことでジャムの低減を図ることができる給紙装置、画像形成システム、給紙方法、及び、プログラムを提供する。
【解決手段】複数の記録材が積層された用紙束の、記録材の搬送方向下流側における先端側にエアを吹き付けて記録材を捌く送風部と、送風部によって捌かれた記録材を搬送する搬送部と、搬送部によって搬送されてきた記録材の、給紙開始位置における屈曲量に対応する値を検知すると共に、屈曲量に対応する値に基づいて送風部の風量を調整する制御部とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の記録材を重ねて収容する収容部と、
前記収容部から記録材を搬送する搬送部と、
前記収容部に重ねて収容された記録材の、搬送方向下流側の先端にエアを吹き付けて前記記録材を捌く送風部と、
前記搬送部によって搬送される前記記録材の屈曲量に対応する値を検知すると共に、前記屈曲量に対応する値に基づいて前記送風部の風量を調整する制御部と
を備える給紙装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記記録材の給紙基準位置に対する実際の給紙開始位置のずれ量を、前記記録材の屈曲量に対応する値として算出する
請求項1に記載の給紙装置。
【請求項3】
前記記録材の搬送路上に設けられ、前記記録材を検知する用紙検知センサを備え、
前記制御部は、前記記録材が給紙開始から前記用紙検知センサに到達するまでの時間に基づいて前記屈曲量に対応する値を算出する
請求項2に記載の給紙装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記屈曲量に対応する値が閾値以上の場合に、前記送風部の風量を小さくする
請求項3に記載の給紙装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記屈曲量に対応する値が閾値未満の場合に、前記送風部の風量を変更しない
請求項4に記載の給紙装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記屈曲量に対応する値が大きいほど、前記送風部の風量を小さくする
請求項4に記載の給紙装置。
【請求項7】
前記閾値は、前記記録材の物性情報又は/及び紙種情報に基づいて設定される
請求項4に記載の給紙装置。
【請求項8】
前記送風部の風量の下限値が設定されており、
前記制御部は、前記送風部の風量を、初期設定値から下限値までの間で調整する
請求項4に記載の給紙装置。
【請求項9】
前記送風部の風量の下限値は、前記記録材の物性情報又は/及び紙種情報に基づいて設定される
請求項8に記載の給紙装置。
【請求項10】
前記記録材の物性情報とは、坪量、剛度、目方向、厚み、及び、サイズ情報のうち少なくとも一つを含む
請求項7又は9に記載の給紙装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記記録材の物性情報又は/及び紙種情報に基づいて、前記送風部の風量の調整を行うか否かを判定する
請求項1に記載の給紙装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記記録材の物性情報のうち、坪量又は剛度に基づいて前記送風部の風量の調整を行うか否かを判定する
請求項11に記載の給紙装置。
【請求項13】
前記制御部は、ユーザーからの入力に基づいて、前記送風部の風量の調整を行うか否かを判定する
請求項1に記載の給紙装置。
【請求項14】
前記制御部は、1回目の前記送風部の風量の調整後、前記屈曲量に対応する値が前記閾値以上である場合を複数回検知した場合には、印刷を中断する
請求項4に記載の給紙装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記印刷を中断した後、前記記録材が載置された前記収容部の、前記記録材の搬送方向上流側に設けられた後端規制板の位置の変更又は変更の通知を実施する
請求項14に記載の給紙装置。
【請求項16】
前記制御部は、前記送風部の風量の調整後、前記調整後の風量で連続して所定枚数の印刷が行われた場合に、前記調整後の風量を適正風量として用紙プロファイルに記憶させる
請求項4に記載の給紙装置。
【請求項17】
前記収容部の近傍に設けられ、前記送風部で裁かれた前記記録材を撮影可能な撮像部を備え、
前記制御部は、前記撮像部による前記記録材の撮像画像に基づいて前記屈曲量に対応する値を検知する
請求項2に記載の給紙装置。
【請求項18】
記録材に画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部に前記記録材を給紙する給紙装置とを備え、
前記給紙装置は、
複数枚の記録材を重ねて収容する収容部と、
前記収容部から記録材を搬送する搬送部と、
前記収容部に重ねて収容された記録材の、搬送方向下流側の先端にエアを吹き付けて前記記録材を捌く送風部と、
前記搬送部によって搬送される前記記録材の屈曲量に対応する値を検知すると共に、前記屈曲量に対応する値に基づいて前記送風部の風量を調整する制御部と、を備える
画像形成システム。
【請求項19】
複数枚の記録材を重ねて収容する収容部と、
前記収容部から記録材を搬送する搬送部と、
前記収容部に重ねて収容された記録材の、搬送方向下流側の先端にエアを吹き付けて前記記録材を捌く送風部と、を備える給紙装置における給紙方法であって、
前記収容部に収容された前記記録材に、前記送風部からエアを吹き付け、
前記送風部からのエアの吹き付けによって捌かれた前記記録材を前記搬送部で搬送し、
前記搬送される前記記録材の屈曲量に対応する値を検知し、
前記屈曲量に対応する値に基づいて前記送風部の風量を調整する
給紙方法。
【請求項20】
収容部に複数枚重ねて収容された記録材に送風部からエアを吹き付ける手順と、
前記送風部からのエアの吹き付けによって捌かれた前記記録材を搬送する手順と、
前記搬送される前記記録材の屈曲量に対応する値を検知する手順と、
前記屈曲量に対応する値に基づいて前記送風部の風量を調整する手順と、をコンピューターに実行させるための
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給紙装置、画像形成システム、給紙方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機等の画像形成装置は、複数の記録材が収容された給紙部から一枚ずつ記録材を給紙する給紙装置が用いられている。給紙部に収容された紙種によっては、重ねた状態で収容されている記録材間の分離性が悪く、給紙時に、複数枚が重なった状態で給紙してしまう問題や、給紙自体ができなくなるという問題が発生する。
【0003】
従来、給紙部に収容された給紙前の記録材の側面にファンからエアを吹き付けるエア捌き機構を有する給紙装置が知られている(特許文献1)。特許文献1では、給紙部に収容された紙種や、坪量等の用紙情報に応じて、ファンの出力を制御することによりエアによる記録材の捌き性能を向上させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-062959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、薄紙等の重ねた状態における用紙間吸着力が高い記録材では、より大きな風量のエアを吹き付ける必要がある。一方、薄紙は、屈曲しやすい性質を有する。このため、薄紙などの記録材を捌くためにより大きな風量でエアを吹き付けると、記録材が屈曲してしまい、積層された記録材と記録材との間にエアが入り込まず、記録材を捌けない場合が出てくる。記録材が捌けない場合、記録材の重送や不送りによる給紙ジャムの原因となる。
【0006】
そこで、本発明は、エアの吹き付けにより記録材が屈曲した場合にも、記録材を効果的に捌くことでジャムの低減を図ることができる給紙装置、画像形成システム、給紙方法、及び、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の給紙装置は、複数枚の記録材を重ねて収容する収容部と、給紙部から記録材を搬送する搬送部と、収容部に重ねて収容された記録材の、搬送方向下流側の先端にエアを吹き付けて記録材を捌く送風部と、を備える。また、搬送部によって搬送される記録材の屈曲量に対応する値を検知すると共に、屈曲量に対応する値に基づいて送風部の風量を調整する制御部とを備える。
【0008】
本発明の画像形成システムは、上記給紙装置を備える。
【0009】
本発明の給紙方法は、収容部に収容された前記記録材に、送風部からエアを吹き付け、送風部からのエアの吹き付けによって捌かれた記録材を前記搬送部で搬送し、搬送される記録材の屈曲量に対応する値を検知し、屈曲量に対応する値に基づいて送風部の風量を調整する。
【0010】
本発明のプログラムは、収容部に複数枚重ねて収容された記録材に送風部からエアを吹き付ける手順と、送風部からのエアの吹き付けによって捌かれた記録材を搬送する手順と、搬送される記録材の屈曲量に対応する値を検知する手順と、屈曲量に対応する値に基づいて送風部の風量を調整する手順とをコンピューターに実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、記録材を効果的に捌くことで、ジャムの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成システム1の全体構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る給紙部60を拡大して示した概略構成図である。
図3】本発明の一実施形態に係る画像形成システム1の制御構成を示すブロック図である。
図4】記録材の屈曲時における記録材の浮上状態を示した図である。
図5】記録材が屈曲していない場合の用紙検知センサ66と、給紙開始位置にある記録材の位置関係とを示す図である。
図6】記録材が屈曲していた場合の用紙検知センサ66と、給紙開始位置にある記録材の位置関係とを示す図である。
図7】記録材の屈曲量に対する先端ファンの風量の変更量の一例を示した図である。
図8】先端ファン61の風量について下限値を設定した場合の、風量の変化例を示す。
図9】給紙装置100の制御方法を示すフローチャートである。
図10図10A図10Cは、給紙動作を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る給紙装置、画像形成システム、給紙方法、及び、プログラムの一例を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではない。以下で説明する各図において、共通の部材には同一の符号を付している。また、説明は、以下の順に行う。
1.画像形成システム
2.給紙装置の構成
3.画像形成システムの制御系の構成
4.記録材の屈曲量の算出方法
5.先端ファンの制御方法
6.給紙装置の制御方法
【0014】
1.画像形成システム
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成システムの全体構成図である。図1に示す画像形成システム1は、給紙装置100、画像形成装置200、及び、後処理装置300を備える。
【0015】
画像形成システム1は、給紙装置100内に積載された記録材Pが画像形成装置200に供給される。そして、画像形成装置200で記録材Pに画像が形成された後、記録材が画像形成装置200から後処理装置300に搬出される。そして、後処理装置300において画像形成処理後の記録材に所定の後処理が行われた後、後処理装置300から記録材Pが排出される。
【0016】
[給紙装置]
給紙装置100は、画像形成システム1において、画像形成用の記録材Pを収容し、画像形成ジョブに応じて画像形成装置200に記録材Pを供給する。図1に示すように、給紙装置100は、搬送部53、及び、記録材を収容可能に構成された複数の給紙部60等を備えている。
【0017】
給紙部60は、例えば、給紙装置100内に、複数(本実施形態では3つ)設けられている。それぞれの給紙部60は、上下方向に並べて配置されている。それぞれの給紙部60は、複数枚の記録材Pを重ねた状態で積載可能な給紙トレイ68(図2参照)と、記録材Pを捌きながら給紙するための用紙捌き機構67(図2参照)とを有する。各給紙部60には、種類やサイズが異なる記録材Pが個別に収容される。本実施形態では、用紙捌き機構67に特徴を有する。用紙捌き機構67の詳しい構成については後で詳述する。
【0018】
搬送部50は、各給紙部60から記録材Pを取り出す取り出しローラ(図示を省略する)と、所定の記録材搬送経路に沿って設けられた、記録材Pを搬送するための複数の搬送ローラ53を備えている。このため、搬送部50の搬送経路は、複数の給紙部60から1つに経路に合流している。これにより、搬送部50は、搬送ローラ53を駆動することにより、給紙部60から繰り出された記録材Pを画像形成装置200に搬送する。
【0019】
[画像形成装置]
次に、画像形成装置200について説明する。図1に示す画像形成装置200は、操作表示部220、画像読取部230、画像形成部240、及び、搬送部250等を備えている。
【0020】
操作表示部220は、操作部と表示部とから構成される。表示部は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置により構成され、制御部10(図3)から入力される表示信号の指示に従って各種画面を表示する。操作部は、表示部の表示画面上を覆うように形成されたタッチパネルや、数字ボタン、スタートボタン等の各種操作ボタンを備え、ユーザーの操作に基づく操作信号を後述する制御部10に出力する。操作部は、ユーザーからの操作指示を受け付ける。
【0021】
画像読取部230は、ADF(Auto Document Feeder:自動原稿供給装置)からコンタクトガラス上に搬送された原稿又はコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、光源から原稿へ照明走査した光の反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサーの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取り、読み取った画像をA/D変換し、画像データを生成する。
【0022】
画像形成部240は、画像データに基づいて、記録材Pに画像を形成する。画像形成部240は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色に対応する感光体ドラム241Y,241M,241C,241K、帯電部242Y,242M,242C,242K、露光部243Y,243M,243C,243K、現像部244Y,244M,244C,244K、一次転写ローラ245Y,245M,245C,245Kを備える。また、画像形成部240は、中間転写ベルト246、二次転写ローラ247、定着部248を備える。
【0023】
帯電部242Y,242M,242C,242Kは、感光体ドラム241Y,241M,241C,241Kを一様に帯電させる。露光部243Y,243M,243C,243Kは、レーザー光源、ポリゴンミラー、レンズ等から構成され、各色の画像データに基づいて感光体ドラム241Y,241M,241C,241Kの表面をレーザービームにより走査露光して静電潜像を形成する。現像部244Y,244M,244C,244Kは、感光体ドラム241Y,241M,241C,241K上の静電潜像に各色のトナーを付着させ、現像を行う。
【0024】
一次転写ローラ245Y,245M,245C,245Kは、感光体ドラム241Y,241M,241C,241K上に形成された各色のトナー像を中間転写ベルト246上に逐次転写させる(一次転写)。すなわち、中間転写ベルト246上には、4色のトナー像が重ね合わされたカラートナー像が形成される。
【0025】
二次転写ローラ247は、中間転写ベルト246上のカラートナー像を、供給トレイから供給された記録材Pの一方の面上に一括して転写させる(二次転写)。定着部248は、定着ローラと加圧ローラにより形成されるニップ部に記録材Pを通過させることで、加熱・加圧により、記録材P上にトナー像を定着させる。
【0026】
搬送部250は、所定の搬送経路に沿って設けられた、記録材Pを搬送するための複数の搬送ローラ53等を備えている。搬送部250は、搬送ローラ53を駆動することにより、画像形成装置200内で記録材を所定の搬送経路に沿って搬送する。そして、画像形成後の記録材Pを後処理装置300に搬出する。
【0027】
[後処理装置]
後処理装置300は、画像形成装置200において画像形成された記録材Pが搬入される。後処理装置300は、例えば、複数の後処理ユニットを備え、ジョブによって指定された後処理ユニットにおいて所定の後処理が行われる。例えば、後処理装置300は、ミシン目加工、折り加工、箔押し加工、バインディング、断裁処理、ステープル、糊付け、綴じ等の処理を行う後処理ユニットを備える。
【0028】
後処理装置300において、画像形成装置200から搬送された画像形成処理済みの記録材Pが搬送部350によって図示しない後処理ユニットに搬送され、記録材Pに対して所定の後処理が行われる。搬送部350で搬送された記録材Pは、搬送経路に沿って設けられた排出部351から排出され、排紙トレイ352に排出される。
【0029】
2.給紙装置の構成
次に、給紙装置100の詳しい構成について説明する。図2は、本実施形態の給紙部60を拡大して示した概略構成図である。図2に示すように、給紙部60は、用紙捌き機構67と、収容部69と、を備える。箱状に構成された収容部69は、給紙トレイ68と、後端規制板69aと、先端規制板69bとを備える。また、送り出される記録材を捌いて搬送するために設けられた用紙捌き機構67は、吸着搬送部74と、吸着ファン64と、吸着センサ63と、サイドファン65と、先端ファン61と、先端ファン風向切替部62と、用紙検知センサ66とを備える。
【0030】
[収容部]
給紙トレイ68は、上面に記録材を積層可能に構成された板状部材で構成されており、後述するトレイ昇降モーター75(図3参照)によって上下方向に昇降可能に構成されている。本実施形態では、最上面に載置された記録材Pが、記録材Pの送り出し位置に配置されるようにトレイ昇降モーター75によって給紙トレイ68が昇降移動される。
【0031】
後端規制板69aは、記録材の搬送方向における上流側において、給紙トレイ68に積層された記録材の後端側の位置を規制する板状部材である。後端規制板69aは、給紙トレイ68の記録材の搬送方向における上流側端部に設けられ、用紙束の側面を覆うように立設して設けられている。
【0032】
先端規制板69bは、記録材の搬送方向における下流側において、給紙トレイ68に積層された記録材の先端の位置を規制する板状部材である。先端規制板69bは、給紙トレイ68の記録材の搬送方向における下流側の端部に設けられ、用紙束の側面を覆うように立設して設けられている。なお、先端規制板69bは、先端ファン61からの用紙束への送風や、送り出される記録材Pの搬送路を妨げない位置に設けられている。
【0033】
[用紙捌き機構]
用紙捌き機構67は、給紙トレイ68に積層された記録材を吸着して1枚ずつ搬送する搬送機構である。吸着搬送部74(本発明の搬送部に相当)は、給紙トレイ68に重ねて収容された記録材の上下方向における上部に設けられている。吸着搬送部74は、記録材の搬送方向(送り出し方向)に順に並べられた駆動ローラ72及び従動ローラ71と、駆動ローラ72及び従動ローラ71に巻き掛けられた無端状の吸着搬送ベルト70とで構成されている。
【0034】
駆動ローラ72と、従動ローラ71とは、所定の距離だけ離間して平行に配置されている。駆動ローラ72が回転駆動されることにより、吸着搬送ベルト70が回転移動すると共に、従動ローラ71が回転する。本実施形態では、駆動ローラ72及び従動ローラ71を挟んで上下方向に対向する吸着搬送ベルト70において、記録材を吸着する側となる下側の吸着搬送ベルト70が搬送方向に移動するように、駆動ローラ72が回転駆動される。
【0035】
吸着搬送ベルト70は、記録材を搬送可能な幅に構成されたベルトであり、後述する吸着ファン64によって、記録材側の空気を吸引可能な吸引孔が複数設けられている。吸着搬送ベルト70は、駆動ローラ72の回転によって回転される。
【0036】
吸着ファン64は、吸着搬送ベルト70の内周面側に配置されており、吸着搬送ベルト70に設けられた吸着穴を介して、吸着搬送ベルト70の外周面側の空気を吸引し、記録材を吸着させるための負圧を発生させる。本実施形態では、駆動ローラ72及び従動ローラ71を挟んで上下方向に対向する吸着搬送ベルト70において、記録材を吸着する側となる下側の吸着搬送ベルト70の吸引穴を介して吸着ファン64によって空気を吸引する。これにより、給紙トレイ68に載置された記録材のうち、上面側の記録材が吸着搬送ベルト70に吸着され搬送される。
【0037】
サイドファン65は、給紙トレイ68に積載された記録材からなる用紙束の側面側に配置される送風装置である。本実施形態では、サイドファン65は、記録材の搬送方向に直交する幅方向において、給紙トレイ68を挟む両側に配置され、積載された記録材の上部の側面側にエアを吹き付けることができるように配置されている。また、本実施形態では、サイドファン65から送風されるエアの送風方向は、例えば、後述する先端ファン61から吹き付けられるエアの送風方向と略同方向になるように設定されている。
【0038】
先端ファン61(本発明の送風部に相当)は、給紙トレイ68に積載された記録材の搬送方向において、先端規制板69bの下流側に配置される送風装置である。先端ファン61は、記録材の搬送方向における下流側から、給紙トレイ68に積載された記録材の上部側にエアを吹き付ける。本実施形態では、サイドファン65からの送風と、先端ファン61からの送風により、より効果的に最上面に積載された記録材を浮上させることができるように、サイドファン65及び先端ファン61の送風方向が決定されている。
【0039】
先端ファン風向切替部62は、先端ファン61の送風口に設けられたソレノイドであり、先端ファン61から排出されるエアの向きを切り替える。先端ファン風向切替部62は、例えば、吸着搬送ベルト70の内周面に配置された、記録材の吸着搬送ベルト70への吸着を検知する吸着センサ63からの信号に基づいて、先端ファン61から排出されるエアの送風方向を切り替える。記録材の吸着搬送ベルト70への吸着時の前後において、先端ファン61から吹き付けられるエアの送風方向を切り替えることにより、積載された記録材から、搬送する最上面の記録材をより効果的に分離することができる。
【0040】
吸着センサ63は、例えば、吸着搬送ベルト70の内周面に配置され、記録材が吸着搬送ベルト70に吸着されたことを検知する。吸着センサ63で検知された記録材の吸着のタイミングに関する情報は、制御部10(図3参照)に送信される。
【0041】
用紙検知センサ66は、吸着搬送ベルト70に吸着され、搬送方向に搬送されてきた記録材の先端位置を検知する。用紙検知センサ66において、記録材の先端位置が検知されたタイミングに関する情報は、制御部10に送信される。
【0042】
本実施形態では、後述する制御部10において、用紙検知センサ66における記録材の先端位置の検出タイミングに基づいて、記録材の屈曲量に対応する値(以下、単に、屈曲量と記す場合もある)が算出される。制御部10における、記録材の屈曲量の算出方法については後で詳述する。
【0043】
3.画像形成システムの制御系の構成
次に、画像形成システム1の制御系の構成について説明する。図3は、本実施形態の画像形成システム1の制御構成を示すブロック図である。図3に示すように、画像形成システム1は、制御部10、記憶部81、通信部82、操作表示部220、画像読取部230、給紙装置100、画像形成部240を備える。なお、以下では上述の図1に示す画像形成システム1の説明と重複する構成は説明を省略する。
【0044】
制御部10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only
Memory)、RAM(Random Access Memory)等から構成される。制御部10は、画像形成システム1の各部の動作を制御するコンピューターの一例として用いられる。CPUは、画像形成システム1に係わる演算部の一例であり、ROM(記録材の一例)に格納された画像形成システム1の各種処理に係わるソフトウェアのプログラムコードを読み出してRAMに展開し、展開されたプログラムに従って、画像形成システム1の各部の動作を集中制御する。なお、CPUに代えて、MPU(Micro Processing Unit)等の他の演算装置を演算部として用いてもよい。ROMは、画像形成システム1の各部を制御するための各種処理プログラム、当該プログラムの実行に必要なパラメーターやデータテーブル、各種のファイル等を記憶している。RAMは、揮発性の半導体メモリにより構成され、CPUにより実行制御される各種処理において、ROMから読み出された各種処理プログラム、入力若しくは出力データ及びパラメーター等を一時的に記憶するワークエリアを形成する。
【0045】
本実施形態では、制御部10において、用紙検知センサ66から送信されてきた用紙位置に基づいて、記録材の屈曲量を算出する。さらに、制御部10は、記録材の屈曲量に応じて、先端ファン61の風量を制御する。記録材の屈曲量に応じた先端ファン61の風量の制御方法については後で詳述する。
【0046】
記憶部81は、不揮発性ストレージ等からなる記録材の一例であり、CPUにより実行される各種処理プログラム、OS等のプログラム、当該プログラムの実行に必要な自装置の処理機能に関する情報、画像読取部230が読み取った画像データ、図示しないクライアント装置などから入力された画像データ、制御部90が演算に用いる各種データテーブル等を記憶する。記憶部81は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)や、SSD(Solid State Drive)、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード等が用いられる。
【0047】
通信部82は、NIC(Network Interface Card)やモデムなどで構成され、給紙装置100、画像形成装置200、及び、後処理装置300を、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続し、外部の情報機器(例えばクライアント装置)との間で各種データの送受信を行う。
【0048】
操作表示部220は、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどの表示部上に、透明電極が格子状に配置された感圧式や静電容量式などの操作部(タッチセンサ)を設けたタッチパネルなどで構成され、表示部及び操作部として機能する。表示部は、制御部10から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面の表示を行う。操作部は、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部10に出力する。
【0049】
画像読取部230は、コンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサの受光面上に結像させて原稿画像を読み取る。画像読取部230によって読み取られた画像(アナログ画像信号)は、画像処理部80において所定の画像処理が施される。
【0050】
給紙装置100の給紙部60は、用紙捌き機構67の他、トレイ昇降モーター75を有する。トレイ昇降モーター75は、給紙トレイ68を上下方向に昇降移動させる。
【0051】
4.記録材の屈曲量の算出方法
以下に、本実施形態における記録材の屈曲量算の出方法について説明する。ここで、屈曲量の算出方法を説明する前に、先端ファン61からの不適切な風量によって、記録材が屈曲する例について説明する。
【0052】
図4は、記録材の屈曲時における記録材の浮上状態を示した図である。状況に応じた先端ファン61の風量が制御されない場合、記録材が薄紙である場合等、記録材の紙種や物性によっては浮上した記録材全体が後端規制板69a側に押し付けられ、屈曲してしまう現象が起きる。これは、記録材の紙種又は物性に対して、先端ファン61の風量が大きすぎる場合に起こる。そうすると、記録材が屈曲することにより、先端ファン61からのエアが記録材の側面ではなく、表面側に当たってしまう。この結果、記録材を、さらに後端規制板69a側に押しやってしまい、記録材を捌くことができない。これにより、重送ジャムが発生したり、記録材の不送りが発生したりする。
【0053】
本実施形態では、このような問題点に鑑み、吸着搬送ベルト70への吸着時における記録材の屈曲量(実際には、屈曲量に対応する値)を算出し、その屈曲量に応じて先端ファン61の風量を調節する。まず、記録材の屈曲量の算出方法について説明する。
【0054】
本実施形態では、用紙検知センサ66で搬送されてきた記録材を検知したタイミングに基づいて、記録材の屈曲量を算出する。この屈曲量の算出は、制御部10において行われる。図5は、記録材が屈曲していない場合の用紙検知センサ66と、給紙開始位置にある記録材の位置関係とを示す図である。また、図6は、記録材が屈曲していた場合の用紙検知センサ66と、給紙開始位置にある記録材の位置関係とを示す図である。
【0055】
図5に示すように、記録材が屈曲していない場合、記録材が吸着搬送ベルト70に吸着した位置(給紙開始位置)における記録材の搬送方向下流側の端部が、用紙検知センサ66に到達するまでの時間をT1[s]とする。一方、記録材が屈曲している場合、図6に示すように、記録材が撓んだ分だけ記録材の搬送方向下流側の端部の位置は、搬送方向上流側にΔL[m]だけずれる。記録材が屈曲している場合、図6に示すように、記録材が吸着搬送ベルト70に吸着した位置(給紙開始位置)から、記録材の搬送方向下流側の端部が、用紙検知センサ66に到達するまでの時間をT2[s]とする。
【0056】
吸着搬送ベルト70の搬送速度をS[m/s]とすると、ΔLは、ΔL=(T2-T1)×Sで表すことができる。ΔL[m]は、記録材の屈曲量に比例して大きくなる量であるから、ΔLを記録材の屈曲量に対応する量とすることができる。記録材の屈曲量に対応する値を、(T2-T1)×Sで算出することができる。
【0057】
本実施形態において、図5に示すように、記録材が屈曲していない状態で吸着搬送ベルト70に吸着された記録材の位置を給紙基準位置とすると、給紙基準位置から記録材が用紙検知センサ66に到達するまでの到達時間T1[s]は、予め求めておくことができる。
【0058】
一方、実際に記録材が吸着搬送ベルト70に吸着され、搬送開始されてから、用紙検知センサ66に到達するまでの到達時間をT2[s]とする。到達時間T2[s]は、吸着搬送ベルト70による記録材の搬送開始から、記録材の下流側端部が用紙検知センサ66に到達するまでの時間によって求めることができる。したがって、制御部10は、吸着搬送ベルト70から送信されてくる記録材の搬送開始に関する情報と、用紙検知センサ66から送信されてきた記録材の下流側端部の到達タイミングに関する情報とから、実際に搬送される記録材の到達時間T2を算出することができる。
【0059】
本実施形態では、制御部10において、予め記憶されている基準の到達時間T1と、実際の記録材の搬送時における到達時間T2とを用いて、記録材の屈曲量に対応する値ΔLを算出することができる。
【0060】
5.先端ファンの制御方法
次に、記録材の屈曲量に対応する先端ファン61の制御方法について説明する。図7は、記録材の屈曲量に対する先端ファン61の風量の変更量の一例を示した図である。本実施形態では、記録材の屈曲量が所定の閾値以上である場合、記録材が屈曲している状態であると判断し、先端ファン61の風量を小さくする。本実施形態では、図7に示すように、例えば、記録材の屈曲量が大きくなるにつれて、先端ファン61の風量を小さくする量(変更量)が、20%、40%、60%と段階的に大きくなるように設定する。これにより、制御部10は、算出された記録材の屈曲量に応じて、先端ファン61の変更量を抽出し、抽出された変更量に基づいて、先端ファン61の風量を変更する。
【0061】
なお、記録材の屈曲量が閾値未満である場合には、制御部10は、記録材が屈曲していない状態と判断し、先端ファン61の風量の変更は為されない。この場合の閾値は、記録材の物性情報、又は/及び、紙種情報に応じて設定可能であり、記録材の屈曲による重送ジャムを防ぐことができる値に設定される。例えば、記録材の物性情報から、記録材の剛度が普通紙よりも低い場合には、設定される閾値を、普通紙の場合の閾値よりも小さくする。一方、紙種情報から、塗工紙であることがわかっている場合には、他の紙種に比較して閾値を小さくする。なお、先端ファン61の風量の変更は、段階的であっても、連続的であってもよい。
【0062】
ところで、紙種又は物性によっては、先端ファン61の風量が小さすぎる場合、記録材が浮上しないという問題も出てくる。そこで、本実施形態では、先端ファン61の風量において、下限値を設定することが好ましい。図8は、先端ファン61の風量について下限値を設定した場合の、風量の変化例を示す。図8の横軸は、印刷枚数であり、縦軸は、先端ファン61の風量を示している。
【0063】
初期設定値における先端ファン61の風量を100%とし、先端ファン61の風量の下限値をX%(100>X)とする。図8に示す例では、印刷枚数が5枚目と、10枚目で記録材の屈曲を検知したため、その屈曲量に応じて風量が小さくなるように、先端ファン61が制御されている。一方、印刷枚数が15枚目のときも記録材の屈曲を検知したが、この場合、11枚目の印刷時に、先端ファン61の風量が下限値Xに到達している。したがって、15枚目以降は、先端ファン61の風量の変更は為されない。
【0064】
このように、記録材の物性情報又は/及び紙種情報に応じて、先端ファン61の風量に適切な下限値を設けることで、風量が低くなりすぎて、記録材が浮上しないという問題を防ぐ。なお、記録材の物性情報と紙種情報とに対応する風量の下限値の調整は以下の通りである。
[記録材の物性情報]
剛度が高くなるにつれて、風量の下限値を大きくする。
厚みが大きくなるにつれて、風量の下限値を大きくする。
サイズが大きくなるにつれて、風量の下限値を大きくする。
坪量が大きくなるにつれて、風量の下限値を大きくする。
目方向が横目であれば、縦目の場合に比較して風量の閾値を大きくする。
[記録材の紙種情報]
塗工紙の場合には、他の紙種に比べて風量の閾値を大きくする。
【0065】
以上のように、制御部10は、記録材の屈曲量が大きくなるにつれて、先端ファン61の風量を小さくする量(変更量)を段階的又は連続的に大きくする。一方、先端ファン61の風量の調整時において、風量下限値に到達した場合には、風量の調整を終了する。これにより、記録材が屈曲することに起因する重送ジャムや、風量不足によって記録材が捌かれずに不送りとなるジャムを防ぐことができる。
【0066】
6.給紙装置の制御方法
次に、本実施形態の給紙装置100の制御方法(給紙方法)について説明する。図9は、給紙装置100の制御方法を示すフローチャートである。
【0067】
スタートボタンが操作される等により、ジョブが開始される。
【0068】
ジョブが開始された場合、制御部10は、ジョブが正常に開始されているか否かを判定する(ステップS1)。ジョブが開始されていない場合、すなわち、ステップS1において「NO」と判定された場合には、ステップS1の判定を繰り返す。
【0069】
一方、ジョブが開始されていると判定された場合、すなわち、ステップS1において「YES」と判定有れた場合には、制御部10の制御のもと、給紙動作を開始する(ステップS2)。
【0070】
給紙動作は、制御部10の制御のもと、吸着ファン64、サイドファン65、及び、先端ファン61の駆動を開始すると共に、吸着搬送ベルト70の回転駆動を開始することで行う。図10A図10Cに、給紙動作を示す概略構成図を示す。
【0071】
給紙動作時には、まず、図10Aに示すように、先端ファン61及びサイドファン65からの送風と、吸着ファン64からの吸引とによって記録材を吸着搬送ベルト70側に浮上させる。このとき、先端ファン61から出力されるエアは、先端ファン風向切替部62によって積層された記録材の上部側の側面に当たるように調節される。その後、図10Bに示すように、先端ファン風向切替部62によって先端ファン61から出力されるエアが、記録材の浮上に伴って吸着搬送ベルト70側に向かうように調節される。この動作により、一番上に積層された記録材が浮上し、吸着搬送ベルト70に着される。その後、吸着センサ63が、吸着搬送ベルト70への記録材の吸着を検知した場合、制御部10は、記録材は給紙可能な状態であると判定し、そのタイミングで吸着搬送ベルト70を回転させ、図10Cに示すように、記録材の給紙を開始する。
【0072】
給紙開始後、1枚目の記録材の給紙動作では、先端ファン61の風量は初期設定値に制御されている。初期設定値は予め記録材の紙種や物性等で定められた値である。
【0073】
次に、制御部10は、用紙検知センサ66からの信号に基づき記録材が用紙検知センサ66に到達したか否かを判定する(ステップS3)。制御部10は、例えば1ms周期の間隔で用紙検知センサ66の状態を監視し、記録材が用紙検知センサ66に到達したか否かを判定する。制御部10において、用紙検知センサ66に記録材が到達していないと判定された場合、すなわち、ステップS3において「NO」と判定された場合、ステップS3の判定を繰り返す。
【0074】
一方、制御部10において、用紙検知センサ66に記録材が到達したと判定された場合、すなわち、ステップS3において「YES」と判定された場合、制御部10は、搬送時間の計測を行う(ステップS4)。搬送時間は、吸着搬送ベルト70による記録材の搬送開始のタイミング(時間)と、その記録材の給紙後、用紙検知センサ66が搬送されてきた記録材を検知したタイミング(時間)との差によって求めることができる。なお、搬送時間は、記録材の給紙開始位置から記録材の搬送方向下流側の端部が用紙検知センサ66に到達するまでの時間を計測できる構成であれば種々の変更が可能である。
【0075】
次に、制御部10は、記録材の屈曲量に対応する値を算出する(ステップS5)。記録材の屈曲量に対応する値ΔLの算出方法は、図5及び図6を用いて説明した通りであり、ΔL=(T2-T1)×Sで求めることができる。なお、T1は、記録材の搬送方向における下流側の先端が給紙基準位置から用紙検知センサ66に到達するまでの基準時間である。T2は、実際に、記録材が吸着搬送ベルト70に吸着された位置(給紙開始位置)から、記録材の搬送方向における下流側の先端が用紙検知センサ66に到達するまでの時間である。また、Sは、搬送速度である。
【0076】
次に、制御部10は、先端ファン61の風量の調整制御が実施中であるか否かを判定する(ステップS6)。ジョブ中に、先端ファン61の風量の調整制御を行うか否かの選択は、予め、ユーザーによって入力されていてもよく、制御部10が、記録材の物性情報に基づいて判断してもよい。制御部10が記録材の物性情報に基づいて判断する場合には、例えば、制御部10は、記録材の坪量又は剛度に基づいて送風部の風量の調整を行うか否かを判定する
【0077】
ステップS6において、先端ファン61の風量の調整制御中で無いと判定された場合、すなわち、ステップS6において「NO」と判定された場合、ステップS14に進む。
【0078】
一方、ステップS6において、先端ファン61の風量の調整制御中であると判定された場合、すなわち、ステップS6において「YES」と判定された場合、制御部10は、用紙情報を取得する(ステップS7)。用紙情報は、搬送される記録材の物性に関する情報であり、坪量、剛度、目方向、厚み、サイズ情報の少なくとも1つを含む。
【0079】
次に、制御部10は、記録材が屈曲しているか否かを判定する(ステップS8)。ここでは、ステップS5で算出された屈曲量に対応する値と、予め設定された所定に閾値とを比較することで、記録材が屈曲しているか否かの判定がなされる。例えば、屈曲量に対応する値が、閾値以上であれば、屈曲していると判定され、閾値未満である場合には、屈曲していないと判定される。
【0080】
ステップS8において、記録材が屈曲していないと判定された場合、すなわち、ステップS8において「NO」と判定された場合には、ステップS6に戻る。
【0081】
一方、ステップS8において、記録材が屈曲していると判定された場合、すなわち、ステップS8において「YES」と判定された場合には、制御部10は、先端ファン61の風量の調整を行う(ステップS9)。先端ファン61の風量の調整は、例えば、図7で示したように、屈曲量に対応して調整される。
【0082】
次に、制御部10は、先端ファン61の風量の調整回数が所定回数変更されたか否かを判定する(ステップS10)。ステップS10における「所定回数」はユーザーによって適宜設定される値であり、先端ファン61の風量以外の要因により屈曲量が大きくなっていると推定可能な値に設定される。
【0083】
ステップS10において、先端ファン61の風量の調整回数が所定回数変更されたと判定された場合、すなわち、ステップS10において「YES」と判定された場合には、制御部10はプリントを中断する(ステップS11)。その後、ステップS15に進む。なお、ステップS11においてプリントが中断された場合には、制御部10は、例えば、後端規制板69aの位置を変更する制御を行うか、後端規制板69aの位置を変更する通知を表示部に表示する制御を行う。これにより、記録材の屈曲の要因が後端規制板69aの位置による場合に、屈曲要因を排除することができる。
【0084】
ステップS10において、先端ファン61の風量の調整回数が所定回数変更されていないと判定された場合、すなわち、ステップS10において「NO」と判定された場合には、ステップS12に進む。
【0085】
ステップS12では、制御部10は、現在の風量で所定の枚数だけ連続してプリントしたか否かを判定する。ここで「所定の枚数」は、ユーザーによって予め設定される値であり、例えば、100枚等、所定の風量レベルで安定して給紙可能であると判定できる値に設定される。
【0086】
ステップS12において、所定枚数連続してプリントしていないと判定された場合、すなわち、ステップS12において「NO」と判定された場合には、ステップS14に進む。
【0087】
ステップS12において、所定枚数だけプリントしたと判定された場合、すなわち、ステップS12において「YES」と判定された場合には、現在の風量を先端ファン61の風量の設定値として更新する。
【0088】
ステップS14では、制御部10は、ジョブが終了したか否かを判定する。ステップS14でジョブが終了していないと判定された場合、すなわち、ステップS14で「NO」と判定された場合には、ステップS2に戻り、ステップS2以降のフローを繰り返す。
【0089】
一方、ステップS14でジョブが終了したと判定された場合、すなわち、ステップS14で「YES」と判定された場合には、ステップS15に進む。ステップS15では、ステップS13において、先端ファン61の風量が更新された場合、その更新された風量を、該当する記録材に用いる風量の適正値であるとして記録材のプロファイルに登録する。記録材のプロファイルに記録された風量が、その記録材を給紙する場合における先端ファン61の風量の初期設定値として用いられる。その後、図9に係る制御を終了する。
【0090】
以上のように、本実施形態では、給紙される記録材の屈曲量に対応する値に基づいて、先端ファン61の風量を調整することができるため、より効果的に記録材を捌くことができる。これにより、重送ジャムや、不送りジャムを防ぐことができる。
【0091】
なお、図9のフローチャートでは、図8を用いて説明した下限値に基づく判定が用いられていないが、下限値に基づく判定を適宜組み合わせることもできる。この場合には、例えば、ステップS9とステップS10との間に、風量が下限値に到達したか否かを判定するフローを設ける。そして、下限値に達した場合には、風量の調整を行わない制御を行うことにより、先端ファン61の風量不足により、記録材が捌かれない問題を防ぐことができる。
【0092】
また、本実施形態では、記録材の給紙開始位置における屈曲量に対応する値を、用紙検知センサ66からの情報に基づいて算出する方法としたが、これに限られるものではない。例えば、給紙トレイ68の近傍に、記録材の給紙開始位置を撮像可能な撮像部を設け、給紙開始位置における記録材を撮影することで、記録材の屈曲量に対応する値を算出することができる。
【0093】
撮像部で撮影された画像を用いる場合には、例えば、給紙開始位置にセットされた記録材の搬送方向下流側の端部の位置を検知することにより、屈曲量に対応する値を算出することができる。そして、撮像部からの撮影画像に基づいて屈曲量に対応する値を算出する場合には、記録材を搬送する前に屈曲量に対応する値を算出することができるため、より早く、先端ファン61の風量の調整を実施することができる。その他、撮像部で撮影された画像から、記録材の曲率を検知する構成であってもよい。
【0094】
上述した実施形態例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成について他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0095】
1…画像形成システム、10…制御部、60…給紙部、61…先端ファン、62…先端ファン風向切替部、63…吸着センサ、64…吸着ファン、65…サイドファン、66…用紙検知センサ、67…用紙捌き機構、68…給紙トレイ、69…収容部、69a…後端規制板、69b…先端規制板、70…吸着搬送ベルト、71…従動ローラ、72…駆動ローラ、74…吸着搬送部、75…トレイ昇降モーター、80…画像処理部、81…記憶部、82…通信部、100…給紙装置、200…画像形成装置、220…操作表示部、230…画像読取部、240…画像形成部、246…中間転写ベルト、247…二次転写ローラ、248…定着部、25…搬送部、300…後処理装置、350…搬送部、351…排出部、352…排紙トレイ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10