(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010836
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】インバート配管固定台車
(51)【国際特許分類】
E21F 16/02 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
E21F16/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112372
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596007979
【氏名又は名称】大栄工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】服部 泰士
(72)【発明者】
【氏名】三枝 修平
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 猛彦
(57)【要約】
【課題】配管の位置決めと浮き上がり防止を同時に達成可能なインバート配管固定台車を提供すること。
【解決手段】本発明のインバート配管固定台車1は、前方支持台11と後方支持台12を有する支持部10と、前方支持台11と後方支持台12の間に架け渡した架橋部20と、架橋部20の長手方向に沿って架橋部20の下部に設置した複数の配管定位部30と、を備え、配管定位部30が、下部を硬化したコンクリートC内に埋設した状態から上方に抜き出し可能な形状及び/又は構造からなることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル工事においてインバートコンクリート内に配管を固定するための、インバート配管固定台車であって、
前方支持台と後方支持台を有する支持部と、
前記前方支持台と前記後方支持台の間に架け渡した架橋部と、
前記架橋部の長手方向に沿って前記架橋部の下部に設置した複数の配管定位部と、を備え、
前記配管定位部が、下部を硬化したコンクリート内に埋設した状態から上方に抜き出し可能な形状及び/又は構造からなることを特徴とする、
インバート配管固定台車。
【請求項2】
前記配管定位部が、正面視及び/又は側面視において略楔形状を呈する箱抜き型枠であることを特徴とする、請求項1に記載のインバート配管固定台車。
【請求項3】
前記配管定位部が、水平方向に分割可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のインバート配管固定台車。
【請求項4】
前記配管定位部が、下端部に配管の外形に対応した弧状面を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のインバート配管固定台車。
【請求項5】
前記配管定位部が、前記配管定位部の下端部に配管を固定する固定ワイヤを備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載のインバート配管固定台車。
【請求項6】
前記後方支持台が、下端部に車輪を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のインバート配管固定台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバート配管固定台車に関し、特に配管の位置決めと浮き上がり防止を同時に達成可能なインバート配管固定台車に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネル工事において、地山の変位を抑制しトンネルとして必要な断面を確保するために、トンネル底部にインバートコンクリート(以下単に「インバート」という)を構築する。インバートの施工では、インバートの内部にドレーン管等の配管を埋設することがある。
特許文献1には、トンネル底部の底面インバート上にトンネル軸方向に沿って配管を設置し、底面インバート上を埋め戻し材で埋め戻すことで、インバート内に配管を埋設する工法が開示されている。
この他、トンネル底部を妻板で区画した打設空間内に、トンネル軸方向に沿って配管を設置し、打設空間内にコンクリートを打設することで、インバートの構築と同時に配管を埋設する工法が存在する。
この工法では、掘削地盤上に複数の架台(ウマ)を並列し、架台上に配管を吊り込んで位置決めする。
コンクリートの打設時には、配管には大きな浮力が働くため、浮き上がりを防止するために配管を掘削地盤上に固定する。詳細には、架台をアンカーで掘削地盤に固定しUボルト等で配管と連結する。この際、配管への応力集中を防ぐため、配管は長さ約1mごとに架台と連結する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インバートの構築と同時に配管を埋設する従来技術では、地盤の掘削後に掘削地盤上に架台を配置し、各架台をアンカーで固定し、架台上に配管を吊り込んで位置決めし、配管を各架台へボルト留めする多数の工程が必要となる。このため、施工に手間と時間がかかり、施工効率が悪い。
また、金属製の架台をインバート内に多数残置するため、材料コストが嵩む。
【0005】
本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決するためのインバート配管固定台車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のインバート配管固定台車は、前方支持台と後方支持台を有する支持部と、前方支持台と後方支持台の間に架け渡した架橋部と、架橋部の長手方向に沿って架橋部の下部に設置した複数の配管定位部と、を備え、配管定位部が、下部を硬化したコンクリート内に埋設した状態から上方に抜き出し可能な形状及び/又は構造からなることを特徴とする。
【0007】
本発明のインバート配管固定台車は、配管定位部が、正面視及び/又は側面視において略楔形状を呈する箱抜き型枠であってもよい。
この構成によれば、硬化したコンクリート内から配管定位部を容易に抜き出すことができる。
【0008】
本発明のインバート配管固定台車は、配管定位部が、水平方向に分割可能であってもよい。
この構成によれば、硬化したコンクリート内から配管定位部を容易に抜き出すことができる。
【0009】
本発明のインバート配管固定台車は、配管定位部が、下端部に配管の外形に対応した弧状面を有していてもよい。
この構成によれば、配管を配管定位部に安定して固定することができる。
【0010】
本発明のインバート配管固定台車は、配管定位部が、配管定位部の下端部に配管を固定する固定ワイヤを備えていてもよい。
この構成によれば、配管を配管定位部に安定して固定することができる。
【0011】
本発明のインバート配管固定台車は、後方支持台が、下端部に車輪を有していてもよい。
この構成によれば、前方支持台を吊り上げ、後方支持台をインバート上に走行させることで、インバート配管固定台車を移動させることができる。
【0012】
本発明のインバート配管固定台車は、架橋部の幅方向に延在し架橋部の下部に連結した妻板を備えていてもよい。
この構成によれば、インバート配管固定台車の移動と共に妻板を搬送することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のインバート配管固定台車は、以上の構成を備えるため、次の効果のうち少なくとも一つを備える。
<1>架橋部の下部に沿って配管を固定するだけで、配管の位置決めと浮き上がり防止を同時に達成することができる。このため、施工効率が非常に高い。
<2>箱抜き型枠(配管定位部)を繰り返し利用できるため、無駄な材料コストがかからない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係るインバート配管固定台車の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明のインバート配管固定台車について詳細に説明する。なお本発明において「前」「前方」とは坑内における切羽側(
図1における手前側)を、「後」「後方」とは坑口側(
図1における奥側)を意味する。
【実施例0016】
[インバート配管固定台車]
<1>全体の構成(
図1)
本発明のインバート配管固定台車1は、インバートコンクリートの打設工程においてインバートコンクリート内に配管Aを固定するための台車である。
インバート配管固定台車1は、前方支持台11と、後方支持台12と、前方支持台11と後方支持台12の間に架け渡した架橋部20と、架橋部20の下部に架橋部20の長手方向に沿って配列置した複数の配管定位部30と、を少なくとも備える。
インバート配管固定台車1は、コンクリートCの打設時、複数の配管定位部30によって、配管Aを所定の高さに位置決めすると共に、その自重によってコンクリートC内における配管Aの浮力に抵抗して、配管Aの浮き上がりを防止する。
【0017】
<2>支持部(
図2)
支持部10は、架橋部20を支持する構成要素である。
支持部10は、架橋部20の前方を支持する前方支持台11と、架橋部20の後方を支持する後方支持台12と、を少なくとも備える。
本例では前方支持台11及び後方支持台12として、形鋼を組んでなる概ね門型形状の架台を採用する。
本例では後方支持台12が、移動用の車輪13と、高さ調整用のジャッキ14を備える。
前方支持台11は、供用時、掘削後の地盤上に立設する。
後方支持台12は、供用時、前施工区間のインバート上に立設する。このため、車輪13の下端部は、後述する配管定位部30の下端部より上方に位置する。
【0018】
<3>架橋部(
図2)
架橋部20は、配管定位部30を介して配管Aの浮き上がりを防止する構成要素である。
架橋部20の長さは、一施工サイクルにおけるコンクリートCの打設スパンに対応する。すなわち、架橋部20は少なくとも、前方支持台11と後方支持台12の間において、コンクリートCの打設空間S上に架け渡し可能な長さを有する。
本例では架橋部20として、2本の桁材21の間に複数の梁材22を架け渡してなる鋼製の桟橋を採用する。複数の梁材22の上にはその長手方向にわたって歩行用の複数の足場板23を敷設する。
架橋部20の下部には、その長手方向に沿って複数の配管定位部30を配列する。
【0019】
<4>配管定位部(
図3)
配管定位部30は、コンクリートC内に配管Aを位置決めする構成要素である。
配管定位部30は、硬化したコンクリートC内から上方に抜き出し可能な形状及び/又は構造を備える。ここで「形状」とは、例えば正面視や側面視において下端側の幅が狭まった形状等を意味する。また「構造」とは、例えば硬化したコンクリートC内で分解して取り出し可能な構造を意味する。
本例では配管定位部30として、正面視及び側面視において略楔形状を呈する中空の箱抜き型枠を採用し、かつ配管定位部30を幅方向に分割可能な構造とする。詳細には、対称な形状の2つの分割型枠31をボルトで連結することで、1つの配管定位部30を組み立てる。
本例では配管定位部30の下端部に、配管Aの外形に対応した弧状面32を設ける。これによって、配管Aのセット時、弧状面32が配管Aの外周に面状に接することで、配管Aを配管定位部30に安定して固定することができる。
また、配管定位部30は、弧状面32に配管Aを固定するための固定ワイヤ33を備えていてもよい。
【0020】
<5>施工方法
本発明のインバート配管固定台車1を用いて、例えば以下のような施工方法によってインバートを構築する。
前施工区間のインバートが完成した直後の状態では、架橋部20の下部から配管定位部30が取り外され、後方支持台12の車輪13が前施工区間のインバート上に載り、前方支持台11の下端部がインバートの前方の地盤上に載っている。
【0021】
<5.1>地盤の掘削
地盤を掘削する。
詳細には、前施工区間で構築したインバートの前方を、コンクリートCの打設スパンにわたって掘削する。この際、トンネル側壁沿いの一側は工事車両の通路として残し、配管Aを配置する中央部を含んだ領域を掘削する。
【0022】
<5.2>インバート配管固定台車の移動
インバート配管固定台車1を移動する。
詳細には、前方支持台11に牽引用のワイヤを連結し、ワイヤを介して重機で前方支持台11を上方に吊り上げつつ切羽側へ牽引する。
これによって、前方支持台11と地盤の縁が切れ、インバート配管固定台車1が、後方支持台12の車輪13に載って切羽側へ移動する(
図4)。
移動後、桁材21の下部に沿って複数の配管定位部30をボルト留めする。
【0023】
<5.3>配管のセット
インバート配管固定台車1に配管Aをセットする。
詳細には、まず、インバート配管固定台車1の下方に架橋部20の長手方向に沿って配管Aを設置し(
図5)、配管Aの後端を前施工区間の配管Aの先端と接続する。
続いて、配管Aの下部に固定ワイヤ33を通して配管Aを持ち上げ、配管Aの上面を配管定位部30の弧状面32に当接させる(
図6)。当接後に固定ワイヤ33を架橋部20に固定して、配管Aを架橋部20から吊り下げる。
同様の作業を全ての配管定位部30に行って、配管Aを架橋部20に固定する。
【0024】
<5.4>型枠のセット
型枠をセットして打設空間Sを画設する。
詳細には、施工スパンの前端部に妻板40を設置し、車両通路側に側板(不図示)を設置して、前施工区間のインバートと、妻板40と、側板との間に打設空間Sを画設する(
図7)。
ここで、妻板40は、中央付近に配管Aの径に対応した貫通孔42を有し、貫通孔42の上部は着脱可能な固定ピース41である。このため、配管Aを貫通孔42内に配置し、上方から固定ピース41で挟み込んで固定することで(
図8)、配管Aの先端を打設空間Sの外側に延出させることができる。
配管定位部30の外面や側板等に離型剤を塗布する。
なお妻板40は、架橋部20の下部に固定して、インバート配管固定台車1の移動と同時に搬送できるようにしてもよい。
【0025】
<5.5>コンクリートの打設
打設空間S内にコンクリートCを打設する。
詳細には、妻板40や側板をサポート材(不図示)で支保して、打設空間S内にコンクリートCを打設する(
図9)。
コンクリートCの充填に伴い、中空の配管Aには浮力が生じる。しかし、配管Aの上部は配管定位部30の弧状面32に当接しているため、インバート配管固定台車1の自重によって配管Aの浮き上がりが阻止される。
これによって、配管Aの上部が弧状面32内に押し付けられて、配管Aが設置位置に確実に位置決めされる。
なお、配管Aに浮力が生じることによって、配管Aを架橋部20から吊り下げる必要がなくなる、そこで、コンクリートCが硬化する前に、固定ワイヤ33を引き抜いて配管Aから取り外す(
図10)。
【0026】
<5.6>脱型
コンクリートCを脱型する。
詳細には、コンクリートCの硬化後、妻板40と側板を取り外す。
続いて、架橋部20と配管定位部30の固定を解除し、コンクリートCから配管定位部30を引き抜く(
図11)。この際、配管定位部30を2つの分割型枠31に分解して、分割型枠31を1つずつ引き抜くことで、コンクリートCとの接触面積が小さくなると共に重量が軽くなるため、引抜き作業が楽になる。
配管定位部30を引き抜いた箱抜き孔にコンクリートを充填して埋める。
【0027】
<5.7>インバート残部の構築
通路として残していた一側を掘削し、前端部に妻板を設置して打設空間を画設する。この際、工事車両は構築済みの片側インバート上を通行させる。
打設空間内にコンクリートを打設してインバートの残部を構築する。
以上によってインバートが完成する。