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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108365
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】スムージー様飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/52 20060101AFI20240805BHJP
   A23L 7/10 20160101ALI20240805BHJP
【FI】
A23L2/52
A23L2/00 E
A23L7/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012687
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】306019030
【氏名又は名称】ハウスウェルネスフーズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000111487
【氏名又は名称】ハウス食品グループ本社株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】木下 恭子
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 礼子
(72)【発明者】
【氏名】中村 有希
【テーマコード(参考)】
4B023
4B117
【Fターム(参考)】
4B023LC05
4B023LE30
4B023LK05
4B023LK08
4B117LC02
4B117LE10
4B117LK10
4B117LK13
4B117LL04
4B117LP17
(57)【要約】
【課題】本発明は、野菜や果物スムージーと同等、又は類似する物性を有する容器詰めスムージー様飲料を提供することを目的とする。
【解決手段】水不溶性又は難溶性である粒状の加工でん粉、油脂、及びゲル化剤を含む、容器詰めスムージー様飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水不溶性又は難溶性である粒状の加工でん粉、
油脂、及び
ゲル化剤を含む、
容器詰めスムージー様飲料。
【請求項2】
前記粒状の加工でん粉が、他の成分との混合前において、目開き400μmメッシュオンとなる量の割合が50質量%以下である、請求項1に記載のスムージー様飲料。
【請求項3】
前記粒状の加工でん粉が、リン酸架橋でん粉である、請求項1に記載のスムージー様飲料。
【請求項4】
前記粒状の加工でん粉の含有量が0.1~1質量%である、請求項1に記載のスムージー様飲料。
【請求項5】
前記油脂が粉末状の油脂である、請求項1に記載のスムージー様飲料。
【請求項6】
前記油脂の含有量が0.1~1.5質量%である、請求項1に記載のスムージー様飲料。
【請求項7】
前記ゲル化剤の含有量が0.01~2質量%である、請求項1に記載のスムージー様飲料。
【請求項8】
水不溶性又は難溶性である粒状の加工でん粉、
油脂、及び
ゲル化剤を
配合し、スムージー様飲料を得る工程を含む、容器詰めスムージー様飲料の製造方法。
【請求項9】
さらに、得られたスムージー様飲料を容器に充填する工程を含む、請求項8に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水不溶性又は難溶性である粒状の加工でん粉、油脂、及びゲル化剤を含む、容器詰めスムージー様飲料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スムージーは、生の又は凍らせた野菜や果物をミキサーやブレンダーにかけて製造された破砕物や裁断物を含んでなる飲み物であり、特有の繊維感(例えば、ざらつき感)、濃厚感、食感(例えば、もったり感)が好ましく、また、ジュースとは異なり、食物繊維や果肉も含め素材を丸ごと摂取することができ、健康志向の高まりから、近年、益々人気が高まっている。
【0003】
このため、容器詰めスムージー飲料の商品化が検討されているものの、工業的な製造において、野菜や果物の破砕物や裁断物、あるいは野菜や果物を裏ごし等して得られた搾汁液やピューレを使用する場合には、製造コストが上昇するだけでなく、容器詰め飲料とした最終製品(通常、製造後即時に飲まれることが想定されるものではない)を長期保存した場合に、沈殿や変色等を生じ安定性を確保することが容易ではない場合があった。
【0004】
このような課題を解決すべく、野菜や果物の破砕物や裁断物、又は搾汁液やピューレの配合量を必要最小限に抑えるか、それらを用いず、野菜や果物のジュース(食物繊維や果肉等の固形成分を含まない)とゲル化剤/増粘剤等を併用したスムージー様飲料が開発、製造されている。
【0005】
しかしながら、これらのスムージー様飲料においては、スムージー特有の繊維感、濃厚感、食感が十分に感じられない場合があり、当該分野においては、スムージーと同等、又は類似する物性を有する容器詰めスムージー様飲料の開発、商品化が切望されていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、スムージーと同等、又は類似する物性を有する容器詰めスムージー様飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、水不溶性又は難溶性である粒状の加工でん粉、油脂、及びゲル化剤を配合してなるスムージー様飲料が、野菜や果物の破砕物や裁断物、又は搾汁液やピューレを用いなくても、スムージーと同等、又は類似した、繊維感、濃厚感、食感を達成できることを見出した。
【0008】
本発明は、これらの新規知見に基づくものであり、以下の発明を包含する。
[1] 水不溶性又は難溶性である粒状の加工でん粉、
油脂、及び
ゲル化剤を含む、
容器詰めスムージー様飲料。
[2] 前記粒状の加工でん粉が、他の成分との混合前において、目開き400μmメッシュオンとなる量の割合が50質量%以下である、[1]のスムージー様飲料。
[3] 前記粒状の加工でん粉が、リン酸架橋でん粉である、[1]又は[2]のスムージー様飲料。
[4] 前記粒状の加工でん粉の含有量が0.1~1質量%である、[1]~[3]のいずれかのスムージー様飲料。
[5] 前記油脂が粉末状の油脂である、[1]~[4]のいずれかのスムージー様飲料。
[6] 前記油脂の含有量が0.1~1.5質量%である、[1]~[5]のいずれかのスムージー様飲料。
[7] 前記ゲル化剤の含有量が0.01~2.0質量%である、[1]~[6]のいずれかのスムージー様飲料。
【0009】
[8] 水不溶性又は難溶性である粒状の加工でん粉、
油脂、及び
ゲル化剤を
配合し、スムージー様飲料を得る工程を含む、容器詰めスムージー様飲料の製造方法。
[9] 前記粒状の加工でん粉が、他の成分との混合前において、目開き400μmメッシュオンとなる量の割合が50質量%以下である、[8]の製造方法。
[10] 前記粒状の加工でん粉が、リン酸架橋でん粉である、[8]又は[9]の製造方法。
[11] 前記粒状の加工でん粉を0.1~1質量%の量で配合する、[8]~[10]のいずれかの製造方法。
[12] 前記油脂が粉末状の油脂である、[8]~[11]のいずれかの製造方法。
[13] 前記油脂を0.1~1.5質量%の量で配合する、[8]~[12]のいずれかの製造方法。
[14] 前記ゲル化剤を0.01~2.0質量%の量で配合する、[8]~[13]のいずれかの製造方法。
[15] さらに、得られたスムージー様飲料を容器に充填する工程を含む、[8]~[14]のいずれかの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、野菜や果物の破砕物や裁断物、又は搾汁液やピューレを用いなくても、スムージーと同等、又は類似した繊維感、濃厚感、食感を有する容器詰めスムージー様飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、水不溶性又は難溶性である粒状の加工でん粉、油脂、及びゲル化剤を含む、容器詰めスムージー様飲料に関する。
【0012】
本発明において「スムージー様飲料」とは、野菜や果物等の植物由来原料(葉、茎、根、果肉、繊維)をミキサーやブレンダーにかけて得られた破砕物や裁断物、あるいは前記植物由来原料を裏ごし等して得られた搾汁液やピューレの配合量を必要最小限に抑えるか、好ましくはそれらを用いず、それによって低減又は消失した、スムージー特有の繊維感、濃厚感、食感を、水不溶性又は難溶性である粒状の加工でん粉、油脂、及びゲル化剤の添加によって補うことにより、スムージーと同等、又は類似する物性を付与した飲料、より詳細にはゼリー飲料を意味する。好ましくは、本発明のスムージー様飲料には、前記植物由来原料の前記破砕物や裁断物、又は搾汁液やピューレが含まれない。
【0013】
また、好ましくは、本発明において「スムージー様飲料」とは、酸味が比較的弱く、繊維質な果物の一又は複数を原料として含んでなるスムージーと同等、又は類似した繊維感、濃厚感、食感を有するスムージー様飲料である。「酸味が比較的弱く、繊維質な果物」としては、モモ、ラフランスやトロピカル系フルーツ(例えば、バナナ、マンゴー、パイナップル、アテモヤ、アボカド、イシガキサンゴ、カニステル、キワノ、グァバ、パパイヤ、スターフルーツ、タマリンド、チェリモヤ、トゥナ、ドラゴンフルーツ、ドリアン、マンゴスチン、ライチ、レンブ等)が挙げられるが、これらに限定はされない。特に好ましくは、本発明において「スムージー様飲料」とは、バナナを原料として含んでなるスムージーと同等、又は類似した繊維感、濃厚感、食感を有する、スムージー様飲料である。
【0014】
本発明において「加工でん粉」は、水不溶性又は難溶性であり、粒状の形状を有する。
【0015】
本発明における粒状の加工でん粉の大きさ(平均粒径)は、特に限定されるものではないが、他の成分との混合前において、好ましくは5μm以上、より好ましくは50μm以上、さらに好ましくは100μm以上であり、その上限は特に限定されないが、好ましくは1000μm以下、より好ましくは700μm以下、さらに好ましくは400μm以下とすることができる。本発明における粒状の加工でん粉の大きさ(平均粒径)は、前記上限及び下限の数値よりそれぞれ選択される2つの数値を用いて表すことができ、例えば、その大きさ(平均粒径)は、他の成分との混合前において、5μm~1000μmが好ましく、より好ましくは50μm~700μm、さらに好ましくは100μm~400μmである。なお、本明細書において「平均粒径」とは、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。
【0016】
本発明における粒状の加工でん粉の粒度分布は、他の成分との混合前において、好ましくは目開き400μmメッシュオンとなる量の割合が50質量%以下である。
【0017】
このような平均粒径を有する粒状の加工でん粉を用いることで、スムージー特有の繊維感(例えば、ざらつき感)や食感(例えば、もったり感)を高めることができ好ましい。
【0018】
また、本発明における加工でん粉は、水不溶性又は難溶性である。このような加工でん粉としては、例えば、アセチル化アジピン酸架橋でん粉、アセチル化リン酸架橋でん粉、アセチル化酸化でん粉、オクテニルコハク酸でん粉、酢酸でん粉、酸化でん粉、ヒドロキシプロピルでん粉、ヒドロキシプロピルリン酸架橋でん粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋でん粉、リン酸化でん粉、リン酸架橋でん粉等が挙げられるが、これらに限定はされない。本発明における加工でん粉は、これらのうちの一種を用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
好ましくは、本発明における加工でん粉は、リン酸架橋でん粉である。このような架橋でん粉を用いれば、上記粒状の条件と相まって、スムージー特有の繊維感(例えば、ざらつき感)や食感(例えば、もったり感)を高めることができ好ましい。
【0020】
本発明における加工でん粉は、例えば、馬鈴薯でん粉、タピオカでん粉、甘薯でん粉、タロイモでん粉、米でん粉、コーンでん粉、ワキシーコーンでん粉、ハイアミロースコーンでん粉、緑豆でん粉、クズでん粉、カタクリでん粉、ワラビでん粉、サゴでん粉、レンコンでん粉、小麦でん粉等(これらに限定はされない)を原料とすることができる。好ましくは、本発明における加工でん粉は、コーンでん粉を原料とすることができる。
【0021】
本発明のスムージー様飲料には前記加工でん粉を、当該スムージー様飲料全体の0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.4質量%以上の量で含み、その上限は、1.5質量%未満、例えば、1質量%以下の量で含むことができる。本発明のスムージー様飲料における加工でん粉の含量の範囲は前記上限及び下限の数値よりそれぞれ選択される2つの数値を用いて表すことができ、例えば、当該加工でん粉の含量は、当該スムージー様飲料全体の0.1質量%以上1.5質量%未満、例えば、0.1質量%~1質量%、好ましくは0.2質量%~1質量%、より好ましくは0.3質量%~1質量%、さらに好ましくは0.4質量%~1質量%の範囲である。本発明のスムージー様飲料における加工でん粉の含量は、目的とするスムージーの物性、特に繊維感(例えば、ざらつき感)や食感(例えば、もったり感)に応じて、上記量より適宜選択することができる。一方、本発明のスムージー様飲料に含まれる加工でん粉の量が上記範囲よりも少ない場合、及び多い場合のいずれにおいても、スムージー特有の繊維感、濃厚感、食感の一又は複数が達成できない場合がある。
【0022】
本発明において「油脂」とは、食用に供される動植物性油脂(食用油とも呼ばれる場合がある)を意味し、このような油脂としては、例えば、植物性油脂(例えば、キャノーラ油、菜種油、大豆油、コーン油、綿実油、落花生油、ゴマ油、米油、米糠油、ツバキ油、ベニバナ油、オリーブ油、アマニ油、シソ油、エゴマ油、ヒマワリ油、パーム油、茶油、ヤシ油、アボガド油、ククイナッツ油、グレープシード油、ココアバター、ココナッツ油、小麦胚芽油、アーモンド油、月見草油、ひまし油、ヘーゼルナッツ油、マカダミアナッツ油、ローズヒップ油、ブドウ油、カカオ油、ホホバ油、パーム核油、モクロウ等)、及び動物性油脂(例えば、牛脂、豚油、鯨油)、ならびにそれらの水素添加油脂、分別油脂、エステル交換油脂等の硬化油脂;ワックス類(例えば、ライスワックス、ミツロウ、サトウキビロウ、パラフィンワックス、スクワレン、スクワラン、マイクロクリスタリンワックス等);パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ミリスチン酸等を挙げることができる(これらに限定はされない)。本発明における油脂は、これらのうちの一種を用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。好ましくは、本発明において「油脂」とは、植物性油脂である。
【0023】
油脂の形態は特に限定されず、液状の油脂、又は粉末状の油脂を用いることが可能であり、好ましくは粉末状の油脂である。
【0024】
「粉末状の油脂」とは、油脂が粒状、フレーク状、球状、棒状等の形状を有する粒子の集合体であり、粉体として振る舞うものを意味する。粉末状の油脂は、従来公知の油脂の粉末化方法、すなわち、溶解した油脂を噴霧冷却して粉末化するスプレークーリング法、溶解した油脂を冷却粉砕して粉末化するドラムフレーク法、水中油型の乳化液をつくりスプレードライヤーなどで噴霧乾燥して粉末化するスプレードライ法等(これらに限定されない)を用いて製造されたものを利用することができる。
【0025】
粉末状の油脂の大きさ(平均粒径)は、特に限定されるものではないが、他の成分との混合前において、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上であり、その上限は特に限定されないが、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下とすることができる。粉末状の油脂の大きさ(平均粒径)は、前記上限及び下限の数値よりそれぞれ選択される2つの数値を用いて表すことができ、例えば、その大きさ(平均粒径)は、0.1μm~10μmが好ましく、より好ましくは0.3μm~5μm、さらに好ましくは0.5μm~3μmである。このような粉末状の油脂を用いれば、上記粒状の条件と相まって、スムージー特有の濃厚感や食感(例えば、もったり感)を高めることができ、特に好ましい。
【0026】
本発明のスムージー様飲料には油脂を、当該スムージー様飲料全体の0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.4質量%以上、よりさらに好ましくは0.5質量%以上、とりわけ好ましくは0.6質量%以上、特に好ましくは0.7質量%以上の量で含み、その上限は、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.2質量%以下の量で含むことができる。本発明のスムージー様飲料における油脂の含量の範囲は前記上限及び下限の数値よりそれぞれ選択される2つの数値を用いて表すことができ、例えば、油脂の含量は、当該スムージー様飲料全体の0.1質量%以上1.5質量%以下、好ましくは0.2質量%~1.5質量%、より好ましくは0.3質量%~1.5質量%、さらに好ましくは0.4質量%~1.5質量%、よりさらに好ましくは0.5質量%~1.5質量%、とりわけ好ましくは0.6質量%~1.2質量%、特にこの好ましくは0.7質量%~1.2質量%の範囲である。本発明のスムージー様飲料における油脂の含量は、目的とするスムージーの物性、特に濃厚感に応じて、上記量より適宜選択することができる。一方、本発明のスムージー様飲料に含まれる油脂の量が上記範囲よりも少ない場合、及び多い場合のいずれにおいても、スムージー特有の繊維感、濃厚感、食感の一又は複数が達成できない場合がある。
【0027】
本発明において「ゲル化剤」とは、一般的に、水に溶解し、粘性を付与する物質(増粘剤、増粘安定剤、糊料等とも呼ばれる場合がある)を意味する。本発明において利用可能な水溶性ゲル化剤としては、ローカストビーンガム、グアーガム、グルコマンナン、κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、λ-カラギーナン、ジェランガム、キサンタンガム、寒天、タマリンドガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ウェランガム、カードラン、タラガム、ペクチン、ゼラチン、アルギン酸塩、スクシノグリカン等(これらに限定はされない)を挙げることができる。本発明における水溶性ゲル化剤は、これらのうちの一種を用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
本発明のスムージー様飲料にはゲル化剤を、当該スムージー様飲料全体の0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上の量で含み、その上限は、2質量%以下、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは0.7質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下の量で含むことができる。本発明のスムージー様飲料におけるゲル化剤の含量の範囲は前記上限及び下限の数値よりそれぞれ選択される2つの数値を用いて表すことができ、例えば、ゲル化剤の含量は、当該スムージー様飲料全体の例えば、0.01質量%~2質量%、好ましくは0.05質量%~1.5質量%、より好ましくは0.1質量%~0.7質量%、さらに好ましくは0.2質量%~0.5質量%の範囲である。本発明のスムージー様飲料におけるゲル化剤の含量は、目的とするスムージーの物性に応じて、上記量より適宜選択することができる。一方、本発明のスムージー様飲料に含まれるゲル化剤の量が上記範囲よりも少ない場合、及び多い場合のいずれにおいても、スムージー特有の繊維感、濃厚感、食感の一又は複数が達成できない場合がある。
【0029】
本発明のスムージー様飲料には、上記成分に加えて、必要に応じてさらに、飲食品の製造において一般的に用いられている、果汁及び/又は野菜汁(固形成分を含まないもの、いわゆるジュース等)、糖類、天然高分子(例えば、澱粉、デキストリン等)、ビタミン(例えばビタミンC、ビタミンB群等)、ミネラル(例えばカルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄等)、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、希釈剤、安定化剤、等張化剤、pH調製剤、緩衝剤、湿潤剤、溶解補助剤、懸濁化剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤、香料、酸化防止剤、甘味料、呈味成分、酸味料、アミノ酸(例えばグルタミン、システイン、ロイシン、アルギニン等)、多価アルコール(例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、糖アルコール等)、乳化剤(例えば、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン(例えば、大豆レシチン、菜種レシチン、ヒマワリレシチン、綿実レシチン、トウモロコシレシチン、落花生レシチン、パームレシチン、ゴマレシチン、コメレシチン、エゴマレシチン、アマニレシチン、卵黄レシチン、ならびにそれらの酵素分解レシチン、水素添加レシチン等)、ミネラル類等のその他成分の一又は複数を、本発明の効果を損なわない範囲の量で適宜含めることができる。
【0030】
本発明のスムージー様飲料は、水と、上述の加工でん粉、油脂、及びゲル化剤、ならびに必要に応じて上記その他成分を、所定の量にて混合することによって製造することができる。各成分は全て一緒に混合してもよいし、各成分を別々にもしくは任意の組み合わせで順次添加して(順序は問わない)混合してもよい。
【0031】
製造されたスムージー様飲料は、容器への充填、及び/又は加熱殺菌処理に付すことができ、容器へ充填された形態で提供される。
【0032】
加熱殺菌処理は、清涼飲料水やゼリー飲料などの飲料に一般的に用いられる方法にて、必要な殺菌価を担保できる条件で適宜行えばよく、スムージー様飲料の容器への充填前に行ってもよいし、容器への充填後に行ってもよいし、あるいは容器への充填の前後に行うこともできる。典型的には、スムージー様飲料を容器に充填密封した後に加熱殺菌処理を施す様式(後殺菌)と、スムージー様飲料を予め加熱殺菌処理し、加熱殺菌処理の温度を保持した状態でスムージー様飲料を容器に充填密封し、容器を殺菌する様式(ホットパック殺菌)とが挙げられる。
【0033】
容器の形態は特に限定されないが、パウチ、缶、瓶、チューブ、ボトル等の形状とすることができる。特に、携帯性や摂取の容易性から、スパウト付きパウチ(スパウチ、チアーパック、ソフトパウチ等と呼ばれることもある)が好ましい。容器の大きさは特に限定されないが、例えば、10~500mL(典型的には10mL、15mL、20mL、30mL、40mL、50mL、95mL、100mL、150mL、180mL、200mL、250mL、300mL、350mL、400mL、450mL又は500mL)の大きさとすることができる。
【0034】
以下、本発明を実施例により、更に詳しく説明する。
【実施例0035】
1.スムージー様飲料の調製
下記表1の組成にしたがって、粒状加工デンプン、ゲル化剤、糖類を水に加え、ミキサーで1400rpmにて1分攪拌し、加熱溶解後に、粉末状の油脂、残りの原料、水を加えて100質量%ととし、得られた調整液を加熱殺菌処理してスパウト付きパウチに充填・容器殺菌を行い、比較例1~3及び実施例1~6の容器詰めスムージー様飲料を調製した。粒状の加工でん粉は、粒状(平均粒径:約320μm)のリン酸架橋でん粉を使用し、粉末状の油脂は粉末状(平均粒径:約1μm)のヤシ油を使用した。なお、表中の各成分の量は、得られるスムージー様飲料自体を100質量%とする質量%の量にて示される。
【0036】
2.スムージー様飲料の官能評価
よく訓練された官能検査員3名が、比較例1~3及び実施例1~6のスムージー様飲料を試飲し、「繊維感」、「濃厚感」、「食感」について、それぞれ以下の基準に基づいて官能評価を行った。
【0037】
<評価基準>
・繊維感について
◎:繊維様のざらつきが感じられる
〇:ざらざらとした食感が感じられる
△:僅かに舌にざらつきが感じられる
×:ざらつきが感じられない
【0038】
・濃厚感について
◎:もったりとした濃厚感が感じられる
〇:風味に重厚さが感じられる
△:風味に厚みが感じられる
×:風味に厚みが感じられない
【0039】
・食感について
◎:スムージー様の繊維感と濃厚感が感じられる
〇:スムージー様の繊維感または濃厚感が感じられる
△:僅かにスムージー様の舌触りが感じられる
×:スムージー様の食感が感じられない
【0040】
3.結果
官能評価の結果を、下記表1に示す。
この結果より、粒状の加工でん粉と粉末状油脂を配合し飲料中に分散させることによって、野菜や果物(ここではバナナ)をミキサーやブレンダーにかけて作ったスムージーのような独特な繊維感、濃厚感、及び食感を、ゼリー飲料に付与できることが確認された(比較例1、2及び実施例1~6)。
【0041】
一方、粒状の加工でん粉の配合量が過多であると、繊維感、及び濃厚感がとりわけ強く感じられ、野菜や果物(ここではバナナ)のスムージーのようなもったりとした良好な食感が得られないことが確認された(比較例3)
【0042】
【表1】
【0043】
以上の結果より、粒状の加工でん粉と油脂を配合したゼリー飲料によれば、野菜や果物の破砕物や裁断物、又は搾汁液やピューレを配合することなく、スムージーが有する独特な繊維感、濃厚感、及び食感を達成できることが示された。