(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108370
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】電動車
(51)【国際特許分類】
H02M 3/00 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
H02M3/00 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012694
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大浦 淳一
(72)【発明者】
【氏名】北川 泰久
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA16
5H730AS04
5H730AS13
5H730BB82
5H730BB88
5H730FF09
5H730FG12
(57)【要約】
【課題】第1から第6昇圧回路の駆動時間を平準化することができる技術を提供する。
【解決手段】電動車は、電力供給源と、昇圧コンバータと、制御装置と、を備えている。昇圧コンバータは、電力供給源に対して並列に接続されている第1から第6昇圧回路を有しており、第1から第6昇圧回路は、特定方向において、第1から第6昇圧回路の順に並んで配置されている。制御装置は、第1から第6運転パターンを記憶しており、トリップ毎に、前記第1から第6運転パターンのうちの一つを輪番的に選択して前記昇圧コンバータを制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力供給源と、
前記電力供給源の出力電圧を昇圧する昇圧コンバータと、
制御装置と、を備え、
前記昇圧コンバータは、前記電力供給源に対して並列に接続されている第1から第6昇圧回路を有しており、
前記第1から第6昇圧回路は、特定方向において、前記第1から第6昇圧回路の順に並んで配置されており、
前記制御装置は、第1から第6運転パターンを記憶しており、トリップ毎に、前記第1から第6運転パターンのうちの一つを輪番的に選択して前記昇圧コンバータを制御し、
前記第1運転パターンは、前記第1及び第4昇圧回路を駆動させる第1低負荷運転と、前記第1、第2、第4、及び、第5昇圧回路を駆動させる第1中負荷運転と、を含み、
前記第2運転パターンは、前記第2及び第5昇圧回路を駆動させる第2低負荷運転と、前記第1中負荷運転と、を含み、
前記第3運転パターンは、前記第3及び第6昇圧回路を駆動させる第3低負荷運転と、前記第1、第3、第4、及び、第6昇圧回路を駆動させる第2中負荷運転と、を含み、
前記第4運転パターンは、前記第1低負荷運転と、前記第2中負荷運転と、を含み、
前記第5運転パターンは、前記第2低負荷運転と、前記第2、第3、第5、及び、第6昇圧回路を駆動させる第3中負荷運転と、を含み、
前記第6運転パターンは、前記第3低負荷運転と、前記第3中負荷運転と、を含む、
電動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、電動車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、電力供給源と、記電力供給源の出力電圧を昇圧する昇圧コンバータと、制御装置と、を備える電動車が開示されている。昇圧コンバータは、電力供給源に対して並列に接続されている第1から第3昇圧回路を有している。第1から第3昇圧回路は、特定方向において、第1から第3昇圧回路の順に並んで配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動車において、昇圧コンバータが、電力供給源に対して並列に接続されている第1から第6昇圧回路を有している場合がある。この電動車では、第1から第6昇圧回路のうちの2個の昇圧回路を駆動させる低負荷運転と、第1から第6昇圧回路のうちの4個の昇圧回路を駆動させる中負荷運転と、が実行される。低負荷運転において駆動される昇圧回路、及び、中負荷運転で駆動される昇圧回路に固定されている場合がある。例えば、第1昇圧回路及び第6昇圧回路が、低負荷運転時の昇圧回路として固定されている場合、第1及び第6昇圧回路の駆動時間が、他の昇圧回路の駆動時間よりも長くなり、早期に故障しやすくなる。
【0005】
本明細書では、第1から第6昇圧回路の駆動時間を平準化することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術の第1の態様では、電動車は、電力供給源と、前記電力供給源の出力電圧を昇圧する昇圧コンバータと、制御装置と、を備えてもよい。前記昇圧コンバータは、前記電力供給源に対して並列に接続されている第1から第6昇圧回路を有しており、前記第1から第6昇圧回路は、特定方向において、前記第1から第6昇圧回路の順に並んで配置されていてもよい。前記制御装置は、第1から第6運転パターンを記憶しており、トリップ毎に、前記第1から第6運転パターンのうちの一つを輪番的に選択して前記昇圧コンバータを制御してもよい。前記第1運転パターンは、前記第1及び第4昇圧回路を駆動させる第1低負荷運転と、前記第1、第2、第4、及び、第5昇圧回路を駆動させる第1中負荷運転と、を含み、前記第2運転パターンは、前記第2及び第5昇圧回路を駆動させる第2低負荷運転と、前記第1中負荷運転と、を含み、前記第3運転パターンは、前記第3及び第6昇圧回路を駆動させる第3低負荷運転と、前記第1、第3、第4、及び、第6昇圧回路を駆動させる第2中負荷運転と、を含み、前記第4運転パターンは、前記第1低負荷運転と、前記第2中負荷運転と、を含み、前記第5運転パターンは、前記第2低負荷運転と、前記第2、第3、第5、及び、第6昇圧回路を駆動させる第3中負荷運転と、を含み、前記第6運転パターンは、前記第3低負荷運転と、前記第3中負荷運転と、を含んでもよい。
【0007】
上記の構成によると、制御装置は、トリップ毎に、第1から第6運転パターンのうちの一つを輪番的に選択する。この場合、各昇圧回路が、低負荷運転、及び、中負荷運転で使用される昇圧回路として特定される頻度を平準化することができる。従って、第1から第6昇圧回路の駆動時間を平準化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】第1パターンテーブル26a~第6パターンテーブル26fの一例を示す図である。
【
図3】パターンテーブル決定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(電動車2の構成)
図1に示すように電動車2は、燃料電池10と、昇圧コンバータ12と、インバータ16と、モータ18と、制御装置20と、を備えている。なお、本明細書における電動車とは、車輪を駆動するモータを有する電動車を広く意味する。例えば、電動車には、ハイブリッド車に加えて、バッテリ電動車、燃料電池車、プラグインハイブリッド車等が含まれる。
【0010】
燃料電池10は、水素タンク(図示省略)から供給される水素と、車外から取り込まれる酸素と、を反応させて直流電力を生成する。
【0011】
昇圧コンバータ12は、燃料電池10によって生成される直流電力を昇圧し、昇圧された直流電力をインバータ16に供給する。なお、変形例では、昇圧コンバータ12は、燃料電池10に代えて、バッテリに接続されていてもよい。昇圧コンバータ12は、6相の昇圧回路14U~14Zを備えている。6相の昇圧回路14U~14Zは、燃料電池10及びインバータ16に対して並列に接続されている。6相の昇圧回路14U~14Zは、昇圧回路14U~14Zは、特定方向(
図1では上下方向)に沿って、昇圧回路14U、昇圧回路14V、昇圧回路14W、昇圧回路14X、昇圧回路14Y、昇圧回路14Zの順に並んでいる。
【0012】
インバータ16は、昇圧コンバータ12によって昇圧された直流電力を交流電力に変換して、モータ18に供給する。
【0013】
制御装置20は、CPU22と、メモリ24と、を備えている。CPU22は、昇圧コンバータ12、インバータ16等の動作を制御する。メモリ24には、第1パターンテーブル26a~第6パターンテーブル26fが記憶されている。CPU22は、6相の昇圧回路のうちの2相を駆動させる低負荷運転と、6相の昇圧回路のうちの4相を駆動させる中負荷運転と、6相の昇圧回路を駆動させる高負荷運転と、を実行可能に構成されている。第1パターンテーブル26a~第6パターンテーブル26fは、低負荷運転、中負荷運転、及び、高負荷運転の運転パターンに対応する情報を含む。
【0014】
図2を参照して、第1パターンテーブル26a~第6パターンテーブル26fの内容について説明する。各テーブル26a~26fの一番上の行の「U」、「V」、「W」、「X」、「Y」、「Z」は、それぞれ、昇圧回路14U、昇圧回路14V、昇圧回路14W、昇圧回路14X、昇圧回路14Y、昇圧回路14Zに対応する。各テーブル26a~26fの一番左の列の「2相」、「4相」、「6相」は、それぞれ、低負荷運転、中負荷運転、高負荷運転に対応する。各テーブル26a~26fの「〇」は、昇圧回路を駆動させることを意味し、「-」は、昇圧回路を駆動させないことを意味する。
【0015】
第1運転パターンを含む第1パターンテーブル26aは、2相の昇圧回路14U、14Xを駆動させる第1低負荷運転と、4相の昇圧回路14U、14V、14X、14Yを駆動させる第1中負荷運転と、6相の昇圧回路14U~14Zを駆動させる高負荷運転と、に対応する情報を含む。第2運転パターンを含む第2パターンテーブル26bは、2相の昇圧回路14V、14Yを駆動させる第2低負荷運転と、第1中負荷運転と、高負荷運転と、に対応する情報を含む。第3運転パターンを含む第3パターンテーブル26cは、2相の昇圧回路14W、14Zを駆動させる第3低負荷運転と、4相の昇圧回路14U、14W、14X、14Zを駆動させる第2中負荷運転と、高負荷運転と、に対応する情報を含む。第4運転パターンを含む第4パターンテーブル26dは、第1低負荷運転と、第2中負荷運転と、高負荷運転と、に対応する情報を含む。第5運転パターンを含む第5パターンテーブル26eは、第2低負荷運転と、4相の昇圧回路14V、14W、14Y、14Zを駆動させる第3中負荷運転と、高負荷運転と、に対応する情報を含む。第6運転パターンを含む第6パターンテーブル26fは、第3低負荷運転と、第3中負荷運転と、高負荷運転と、に対応する情報を含む。
【0016】
図1のCPU22は、後述する
図3のパターンテーブル決定処理を実行することによって、今回のトリップで利用すべきパターンテーブルを特定するように構成されている。
【0017】
メモリ24は、さらに、前回のトリップで利用されていたパターンテーブルに関する情報である前回トリップのパターン番号Noldを記憶するように構成されている。パターン番号「1」、「2」、「3」、「4」、「5」、「6」は、それぞれ、第1パターンテーブル26a、第2パターンテーブル26b、第3パターンテーブル26c、第4パターンテーブル26d、第5パターンテーブル26e、第6パターンテーブル26fに対応する。
【0018】
(パターンテーブル決定処理;
図3)
図3を参照して、CPU22によって実行されるパターンテーブル決定処理について説明する。CPU22は、新たなトリップが開始される場合に、
図3の処理を実行する。
【0019】
S10において、CPU22は、メモリ24に記憶されている前回トリップのパターン番号Noldを特定する。
【0020】
S12において、CPU22は、S10で特定した前回トリップのパターン番号Noldが「6」であるのか否かを判断する。CPU22は、前回トリップのパターン番号Noldが「6」である場合(S12でYES)にS14に進み、前回トリップのパターン番号Noldが「6」でない場合(S12でNO)にS16に進む。
【0021】
S14において、CPU22は、今回トリップで利用されるべきパターンテーブルに対応する今回トリップのパターン番号Nnewとして「1」を特定する。
【0022】
S16において、CPU22は、今回トリップのパターン番号Nnewとして、前回のパターン番号Noldに「1」を加算した値を特定する。
【0023】
S18において、CPU22は、メモリ24内の前回トリップのパターン番号Noldを更新する。具体的には、CPU22は、S14又はS16で特定した今回トリップのパターン番号Nnewを前回トリップのパターン番号Noldとして記憶する。CPU22は、S18が終了すると、
図3の処理を終了する。このように、CPU22は、トリップ毎に、第1パターンテーブル26a~第6パターンテーブル26fのうちの一つを輪番的に選択するように構成されている。
【0024】
その後、CPU22は、S14又はS16で特定された今回のパターン番号Nnewに対応するパターンテーブルを利用して、昇圧コンバータ12の動作を制御する。
【0025】
上述のように、電動車2は、燃料電池10(「電力供給源」の一例)と、燃料電池10の出力電圧を昇圧する昇圧コンバータ12と、制御装置20と、を備えている。昇圧コンバータ12は、燃料電池10に対して並列に接続されている昇圧回路14U~昇圧回路14Z(「第1から第6昇圧回路」の一例)を有しており、昇圧回路14U~14Zは、特定方向において、昇圧回路14U~14Zの順に並んで配置されている。制御装置20は、第1から第6運転パターンを記憶しており、トリップ毎に、第1から第6運転パターンのうちの一つを輪番的に選択して昇圧コンバータを制御する(
図3)。第1運転パターンは、第1低負荷運転と第1中負荷運転と、を含み、第2運転パターンは、第2低負荷運転と、第1中負荷運転と、を含み、第3運転パターンは、第3低負荷運転と、第2中負荷運転と、を含み、第4運転パターンは、第1低負荷運転と、第2中負荷運転と、を含み、第5運転パターンは、第2低負荷運転と、第3中負荷運転と、を含み、第6運転パターンは、第3低負荷運転と、第3中負荷運転と、を含む。
【0026】
上記の構成によると、制御装置20は、トリップ毎に、第1から第6運転パターンのうちの一つを輪番的に選択する。この場合、各昇圧回路14U~14Zが、低負荷運転、及び、中負荷運転で使用される昇圧回路として特定される頻度を平準化することができる。従って、昇圧回路14U~14Zの駆動時間を平準化することができる。
【0027】
また、隣接する昇圧回路が駆動する場合に、駆動している昇圧回路のリアクトルの間で磁気干渉が発生する。このため、低負荷運転、及び、中負荷運転において、磁気干渉が発生する箇所を少なくすることが望ましい。本実施例の低負荷運転では、隣接する昇圧回路が駆動させないように構成されているので、磁気干渉の発生が抑制される。また、仮に、中負荷運転において、隣接する4相の昇圧回路を駆動させる場合、3箇所で磁気干渉が発生する。本実施例の中負荷運転では、磁気干渉が発生するのが1箇所に制限される。このため、中負荷運転において隣接する4相の昇圧回路を駆動させる構成と比較して、磁気干渉の発生が抑制される。従って、昇圧回路14U~14Zの駆動時間を平準化することができ、かつ、磁気干渉の発生を抑制することができる。
【0028】
以上、本明細書が開示する技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独で、あるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0029】
2:電動車、10:燃料電池、12:昇圧コンバータ、14U~14Z:昇圧回路、16:インバータ、18:モータ、20:制御装置、22:CPU、24:メモリ、26a~26f:第1パターンテーブル~第6パターンテーブル