(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108376
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
A01C 15/00 20060101AFI20240805BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
A01C15/00 G
A01C15/00 Z
A01B69/00 303Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012705
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】阿部 匡良
(72)【発明者】
【氏名】池田 一生
【テーマコード(参考)】
2B043
2B052
【Fターム(参考)】
2B043AB15
2B043BA02
2B043BA09
2B043BB04
2B043CA03
2B043DA17
2B043EA12
2B043EA32
2B043EB05
2B043EB15
2B043EB17
2B043EB22
2B043EB29
2B043EC16
2B043ED14
2B052BC05
2B052BC16
2B052DC07
2B052DC09
2B052DC12
2B052DC16
2B052DD03
(57)【要約】
【課題】 施肥マップ利用による施肥量のコントロールの精度を向上できる作業車両を提供する。
【解決手段】
施肥装置26と、自機位置を取得する測位装置130とを備え、前記測位装置130により取得した自機位置に基づき、特定の地点ごとに施肥量が設定された施肥マップDhを利用して前記施肥装置26の施肥量をコントロールするよう構成された作業車両1であって、
前記作業車両1は、位置情報を取得しながら圃場Hの外周を走行することにより、圃場の形状及び位置情報を含むティーチング圃場マップDqを作成し、
前記ティーチング圃場マップDqを用いて前記施肥マップDhに記録された前記特定の地点の位置情報を修正するように構成されたことを特徴とする作業車両1の提供により、上記課題が解決される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施肥装置と、自機位置を取得する測位装置とを備え、前記測位装置により取得した自機位置に基づき、特定の地点ごとに施肥量が設定された施肥マップを利用して前記施肥装置の施肥量をコントロールするよう構成された作業車両であって、
前記作業車両は、位置情報を取得しながら圃場の外周を走行することにより、圃場の形状及び位置情報を含むティーチング圃場マップを作成し、
前記ティーチング圃場マップを用いて前記施肥マップに記録された前記特定の地点の位置情報を修正するように構成されたことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記作業車両は、前記ティーチング圃場マップを、圃場の外周の走行によって取得した位置情報から作成された圃場外形の情報を含むように作成し、また、前記施肥マップから作業者の所定操作により作成された圃場外形の位置情報を含む施肥計画マップを作成し、前記施肥計画マップに設定された設定施肥量に基づき、前記施肥装置の施肥量をコントロールするよう構成され、さらに、
前記施肥計画マップの圃場外形の位置情報と、前記ティーチング圃場マップの圃場外形の位置情報を比較して、前記特定の地点の位置情報を修正するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記圃場外形の少なくとも1つの隅角部の位置情報を比較することによって、前記隅角部同士の位置の差異が最小となるように、前記特定の地点の位置情報を修正することを特徴とする請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
位置情報に基づき、前記施肥計画マップから取得した設定施肥量が、所定の施肥上下限値を越えているときは、前記設定施肥量が前記施肥上下限値内に納まるように、補正することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の作業車両。
【請求項5】
位置情報に基づき、前記施肥計画マップから取得した設定施肥量が、所定の施肥上下限値を越えているときは、肥沃度センサから取得した肥沃度に関する情報に基づき施肥量をコントロールするリアルタイム可変施肥モードに切り替えることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場に苗を植え付ける作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、測位装置により、自機の位置情報を取得し、取得した位置情報に基づき、圃場の地点ごとに設定施肥量が記録された施肥マップを参照して施肥量をコントロールする作業車両が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-101667号公報
【特許文献2】特開2019-187377号公報
【特許文献3】特開2019-41729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の作業車両は、測位装置により取得される自機位置と施肥マップから設定施肥量を取得する地点に誤差が生じ、施肥量のコントロールの精度が低下するおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題を解消し、施肥マップ利用による施肥量のコントロールの精度を向上できる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、第1の発明は、
施肥装置と、自機位置を取得する測位装置とを備え、前記測位装置により取得した自機位置に基づき、特定の地点ごとに施肥量が設定された施肥マップを利用して前記施肥装置の施肥量をコントロールするよう構成された作業車両であって、
前記作業車両は、位置情報を取得しながら圃場の外周を走行することにより、圃場の形状及び位置情報を含むティーチング圃場マップを作成し、
前記ティーチング圃場マップを用いて前記施肥マップに記録された前記特定の地点の位置情報を修正するように構成されたことを特徴とする作業車両を提供する。
【0007】
上記第1の発明によれば、施肥マップ利用による施肥量のコントロールの精度を向上できる。加えて、作業者が手動で自機位置を修正する手間が省かれる。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明の構成に加え、
前記作業車両は、前記ティーチング圃場マップを、圃場の外周の走行によって取得した位置情報から作成された圃場外形の情報を含むように作成し、また、前記施肥マップから作業者の所定操作により作成された圃場外形の位置情報を含む施肥計画マップを作成し、前記施肥計画マップに設定された設定施肥量に基づき、前記施肥装置の施肥量をコントロールするよう構成され、さらに、
前記施肥計画マップの圃場外形の位置情報と、前記ティーチング圃場マップの圃場外形の位置情報を比較して、前記特定の地点の位置情報を修正するように構成されたことを特徴とする。
【0009】
上記第2の発明によれば、上記第1の発明の効果に加え、より精度よく位置情報の修正が可能となる。
【0010】
第3の発明は、上記第2の発明の構成に加え、
前記圃場外形の少なくとも1つの隅角部の位置情報を比較することによって、前記隅角部同士の位置の差異が最小となるように、前記特定の地点の位置情報を修正することを特徴とする。
【0011】
上記第3の発明によれば、上記第2の発明の効果に加え、より精度よく位置情報の修正が可能となる。
【0012】
第4の発明は、上記第2または第3の発明の構成に加え、
位置情報に基づき、前記施肥計画マップから取得した設定施肥量が、所定の施肥上下限値を越えているときは、前記設定施肥量が前記施肥上下限値内に納まるように、補正することを特徴とする。
【0013】
上記第4の発明によれば、上記第2または第3の発明の効果に加え、施肥量を安定させ、作物の品質を向上できる。
【0014】
第5の発明は、上記第2または第3の発明の構成に加え、
位置情報に基づき、前記施肥計画マップから取得した設定施肥量が、所定の施肥上下限値を越えているときは、肥沃度センサから取得した肥沃度に関する情報に基づき施肥量をコントロールするリアルタイム可変施肥モードに切り替えることを特徴とする。
【0015】
上記第5の発明によれば、上記第2または第3の発明の効果に加え、施肥量を安定させ、作物の品質を向上できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、施肥マップ利用による施肥量のコントロールの精度を向上できる作業車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る作業車両1の左側面図である。
【
図2】
図2は、
図1の作業車両1の制御系に係る制御ブロック図である。
【
図3】
図3は、
図1に示される主変速レバーの要部斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1の作業車両を遠隔操作するリモートコントローラの概略平面図である。
【
図5】
図5は、
図1の作業車両1の作業工程の流れを説明する説明図である。
【
図6】
図6は、同上のティーチングの行程を説明する説明図である。
【
図7】
図7は、同上の自動走行モードにおける往復行程を示す図面である。
【
図8】
図8は、同上の往復行程中の植え幅の自動調整を説明する説明図である。
【
図9】
図9は、同上の自動走行モードにおける内周行程を説明する説明図である。
【
図10】
図10は、施肥マップによる施肥モードにおける制御部の処理を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、施肥計画マップの作成方法を説明する説明図である。
【
図12】
図12は、修正施肥計画マップの作成方法を説明する説明図である。
【
図13】
図13(a)及び
図13(b)は、制御部による圃場形状の修正方法を説明する説明図である。
【
図16】
図16は、変形例に係る第2の植付モード時の制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施形態につき、詳細に説明を加える。
まず、作業車両の基本構成について以下説明する。
【0019】
<作業車両の基本構成>
図1は、本発明の好ましい実施形態にかかる作業車両1の左側面図であり、
図2は、
図1の作業車両1の制御系に係る制御ブロック図である。
【0020】
また、
図3は、
図1に示される主変速レバーの要部斜視図であり、
図4は、作業車両1を遠隔操作するリモートコントローラの概略平面図である。
本明細書においては、
図1に矢印で示されるように、作業車両1の進行方向となる側を前方とし、特に断りがない限り、作業車両1の進行方向に向かって左側を「左」といい、その反対側を「右」という。
【0021】
本実施形態にかかる作業車両1は、所謂、田植機として構成されており、
図1に示されるように、走行車体2(以下、単に「車体」ともいう。)と、走行車体2の後部に取り付けられた苗植付部63と、作業車両1の状態を表示する状態表示灯55と、圃場に肥料を供給する施肥装置26と、苗を植え付けながら走行する際の走行位置の目安となるラインを圃場上に形成する左右一対の線引きマーカー40と、走行車体2の前部に設けられた受信アンテナ130と、走行車体2の向く方位を検出する方位センサ80と、走行車体2の前部に設けられ、苗植付部63に供給される苗を収容する補助苗枠74と、外部から作業車両1を遠隔操作するリモートコントローラ44(
図2及び
図4参照)を備えている。
【0022】
受信アンテナ130および方位センサ80は、
図1に示されるアンテナカバー50に覆われている。
【0023】
受信アンテナ130はGNSS衛星からの電波を受け取るアンテナであり、車体の位置情報を取得することができる。取得した位置情報は走行車体2に設けられた制御部87のナビゲーションECU70に送信される(
図2参照)。位置情報の取得にはRTK-GNSSが用いられており、補正情報を受信することにより高精度な位置情報を取得できる。
【0024】
本実施形態においては、補正情報の入力インターフェイスとしてBluetooth(登録商標)のSPP(Serial Port Profile)を使用しており、携帯電話やBluetooth(登録商標)変換機がデバイス名で接続されて入力される。
【0025】
リモートコントローラ44は、作業者が、作業車両1を遠隔操作するものであり、所定操作を受け付けて、作業開始指示や前後進、停車等の指示を車両に設けられたリモコンアンテナ52に送信する。また、各種情報を表示可能な表示部44aを備えており、該表示部44aは、タッチパネルディスプレイとして構成され、作業者の操作を受け付けて、各種情報を取得可能となっている。なお、リモートコントローラ44と作業車両1が通信距離以上に離間すると、これを認識した作業車両1は、安全のため自動的に停車するように構成されている。
【0026】
図1に示されるように、走行車体2は、フロントカバー47に覆われた制御部87と、走行車体2の略中央に配置されたメインフレーム3と、メインフレーム3の後端部に取り付けられ、作業車両1の幅方向に延びる後部フレーム6と、メインフレーム3の上方に配置されたフロアステップ60と、フロアステップ60の上方に設けられた操縦席48と、操縦部49と、操縦席48の下方に設けられたエンジン7と、走行車輪としての左右一対の前輪8(操舵輪)および左右一対の後輪9と、エンジン7の動力を左右一対の前輪8および後輪9に伝達するミッションケース30などの伝達機構とを備えている。
【0027】
操縦部49は、走行車体2の前後進と車速を変更する主変速レバー35と、左右一対の前輪8を操舵するステアリングホイール56を含む操舵機構43と、ステアリングホイール56の左側近傍に設けられた直進アシストレバー79と、操作スイッチを有するモニタ61と、作業車両1を操作するための種々の操作スイッチが設けられた操作部54を備えている。
【0028】
直進アシストレバー79は、自動運転の一つである直進制御を開始または停止させる際に揺動操作される。
【0029】
操舵機構43は、ステアリングホイール56の他、ステアリングシャフト83、ピットマンアームおよびタイロッド(不図示)を備えている。
【0030】
一方、エンジン7から出力された駆動力は、
図1に示されるように、フロアステップ60の下方に設けられたベルト式動力伝達機構4および静油圧式無段変速機(HST)25を介してミッションケース30に伝動される。
【0031】
静油圧式無段変速機25は、トラニオン軸(図示せず)を備え、主変速レバー35が操作されると、トラニオン軸の開度がHSTサーボモータ150(
図2参照)の駆動によって調整されて、ミッションケース30への出力が変更され、車速が調整されるように構成されており、前進する場合、すなわち、
図3(b)に示される前進領域に主変速レバー35が位置する場合に、主変速レバー35がより前方の位置に操作されるほど、車速が高く調整される。
【0032】
ミッションケース30に伝達された動力は、その内部で変速されて、左右一対の前輪8および左右一対の後輪9への走行用の動力と、苗植付部63を駆動するための動力(駆動用の動力)とに分けて伝動される。
【0033】
走行用の動力は、前輪ファイナルケース13および前輪車軸31(
図1参照)を介して、左右一対の前輪8に伝達される他、
図1に示される左右一対の後輪伝動軸14、左右一対の後輪ギアケース51および車軸82を介して、左右一対の後輪9に伝達される。
【0034】
一方、駆動用の動力は、走行車体2の後部に設けられた植付クラッチ(図示せず)まで伝達され、植付クラッチが入れられた際に、さらに苗植付部63へ伝達される。
【0035】
苗植付部63は、
図1に示されるように、昇降リンク装置5を介して、走行車体2に取り付けられている。昇降リンク装置5は、上部リンクアーム85および左右一対の下部リンクアーム86を備え、苗植付部63を昇降可能に構成されている。
【0036】
上部リンクアーム85および下部リンクアーム86の前側の端部は、後部フレーム6に固定されたリンクベースフレーム10に取り付けられ、他端は苗植付部63の下部に位置する上下リンクアーム11に取り付けられている。
【0037】
ここで、制御部87によって電子油圧バルブ88(
図2参照)が制御されて、
図1に示される昇降油圧シリンダ12が油圧で縮められると、上部リンクアーム85が後ろ上がりに回動され、苗植付部63が非作業位置まで上昇されるように構成されている。苗植付部63が非作業位置にあるときには、その下端部がメインフレーム3の底部と略同一の高さに位置する。
【0038】
これに対して、昇降油圧シリンダ12が油圧で伸ばされると、上部リンクアーム85が後ろ下がりに回動され、苗植付部63が、苗の植付け作業が可能な作業位置(
図1に示された位置)まで下降される。
【0039】
図1および
図2に示されるように、苗植付部63は、土付きのマット状の苗(以下、「苗マット」という。)を立て掛ける台65と、台65の後方かつ下方に設けられた複数の植付装置64と、苗植付部63の下部に設けられたセンターフロート38と、センターフロート38の左右に配置されたサイドフロート39を備えている。
【0040】
複数の植付装置64は作業車両1の幅方向に並べて設けられ、各植付装置64は、前後方向に並ぶ左右二対の植付具69を備えている。植付クラッチが入れられて、
図1に示される駆動軸67が回転されると、
図1に示される前側の植付具69と後ろ側の植付具69とが、駆動軸67まわりに回転しつつ、交互に台65の下端部に位置する苗を取出し、圃場に植え付けるように構成されている。
【0041】
センターフロート38およびサイドフロート39はそれぞれ、作業車両1が走行するのに伴って、圃場上を滑走し、整地するように構成され、各フロート38,39によって整地された圃場に、各植付装置64によって苗が植え付けられる。センターフロート38およびサイドフロート39はそれぞれ、圃場の凹凸に合わせて揺動される。
【0042】
図1に示される左右一対の線引きマーカー40はそれぞれ、走行車体2が走行する際に、圃場上を転動して線を形成する線引き体41と、線引き体41と走行車体2とを結ぶ正面視L字状のマーカーロッド42を備え、線引き体41が圃場に接触する作用姿勢と、線引き体41が圃場に接触しない非作用姿勢との間で切り換え可能に構成されている。
【0043】
作業車両1が圃場上を直進走行しつつ、苗を植え付けるときに、左右一対の線引きマーカー40のうち、次に苗を植付けする(旋回後の)列の方の線引きマーカー40が作用姿勢にある状態で直進走行することによって、旋回後に直進走行する際の走行位置の目安となるラインが圃場上に形成される。なお、
図1には、作用姿勢にある左側の線引きマーカー40と、非作用姿勢にある右側の線引きマーカー40が示されている。
【0044】
図1、
図2に示されるように、作業車両1の前部かつ幅方向中央部には、センターマスコット18が設けられており、作業車両1が圃場上を旋回し、次の列上を直進走行するときに、線引きマーカー40によって形成されたライン上を、センターマスコット18が通過するように、ステアリングホイール56を操作しつつ、直進走行することによって、適切な位置に苗を植え付けることができる。
【0045】
補助苗枠74は、台65に補充する苗マットを収容するため、
図1に示されるように、補助苗枠74を支持するフレーム77を介して、走行車体2の前部に取り付けられている。
【0046】
<制御系の構成>
制御部87は、
図2に示されるように、ナビゲーションECU70と操舵ECU71を備えている。
【0047】
ナビゲーションECU70は、GNSS衛星からの位置情報並びに圃場の形状情報に基づき、作業時の自動運転による走行(自動運転走行)の経路を算出し、その走行に合わせた適切な操舵情報を操舵ECU71に伝達する。
【0048】
また、リモコンアンテナ52がリモートコントローラ44から操作信号を受信すると、ナビゲーションECU70に操作信号が伝達されるよう構成されており、ナビゲーションECU70は、リモートコントローラ44から取得した操作情報に基づき、HSTサーボモータ150を駆動して車速を変更したり、油圧機器の制御を行う。
【0049】
操舵ECU71は、自動運転時にナビゲーションECU70から出力された情報に基づき、ステアリングモータ57を制御する。手動運転モード時には、ステアリングホイール56の操舵角に基づきステアリングモータ57を駆動するステアバイワイヤ方式が採用されている。
【0050】
また、
図2に示されるように、作業車両1の入力系は、作業車両1の前後進および車速を変更する主変速レバー35(
図1および
図3参照)の操作位置を検出する主変速レバーセンサ36と、走行車体2の位置情報を取得する際、又は直進制御を開始し、あるいは停止する際に、上下一方に揺動操作される直進アシストレバー79の操作を検知する直進アシストレバーセンサ81と、苗植付部63の昇降を行うフィンガーレバー23の揺動操作を検知するフィンガーレバーセンサ16と、苗の植付作業の入切の切り換え操作を行う植付入切スイッチ19と、
図8に示されるモニタ61と、左右の各線引きマーカー40の姿勢の切り換え操作を行うマーカースイッチ28と、旋回制御を設定する旋回制御スイッチ17を備えている。マーカースイッチ28および旋回制御スイッチ17は操作部54に設けられている。また、フィンガーレバー23と植付入切スイッチ19は、
図3に示される主変速レバー35に設けられている。
【0051】
本実施形態においては、直進アシストレバー79は上方および下方に揺動操作が可能であり、上下いずれかの方向に揺動操作された後には、スプリングによって自動的に元の上下位置に戻るように構成されている。
【0052】
図2に示されるように、作業車両1の駆動系は、操縦席48の下方に設けられたエンジン7の吸気量を調節するスロットルモータ97と、苗植付部35が昇降される際に昇降油圧シリンダ12を伸縮させる電子油圧バルブ88と、静油圧式無段変速機25内のトラニオン軸の開度を調整し、作業車両1の前後進および車速を変更するHSTサーボモータ150と、ステアリングシャフト83およびステアリングホイール56を回動させるステアリングモータ57と、後輪9のサイドクラッチを入切する電磁バルブ103と、パワーステアリング108と、植付クラッチを作動させる植付クラッチモータ27と、左右一対の各線引きマーカー40を揺動させるマーカーモータ34と、施肥装置26による圃場への施肥量を調節する施肥量調節モータ66を備えている。
【0053】
ステアリングモータ57は、直進制御および旋回制御並びに無人自動運転モードにおいて自動的にステアリングホイール56を回転させることを目的として制御部87により制御される。
【0054】
また、制御部87は、リンクセンサ89からの出力信号に基づいて苗植付部35の現在の高さ(上下位置)を算出可能に構成されている。
【0055】
加えて、作業車両1が苗を植え付けつつ、圃場上を走行しているときには、制御部87は、フロートセンサ33からの検出信号に基づき、電子油圧バルブ88を制御して、
図1に示された昇降油圧シリンダ12を伸縮させ、
図1に示された苗植付部63を昇降させることにより、圃場への苗の植付深さを一定に維持することができる。
【0056】
<作業工程>
図5は、作業車両1の作業工程の流れを説明する説明図である。
本実施形態にかかる作業車両1の作業工程は、ティーチング行程、往復行程、内周行程、仕上げ行程の4行程からなっている。最初のティーチング行程は、ティーチングモードにより圃場Hの外周の3辺(苗供給を行う1辺を除く辺)を作業者が乗車して田植えを行い、田植え作業と共に受信アンテナ130により位置情報を取得し、これにより、制御部87が、圃場の形状を示す情報であるティーチング情報マップDqを作成する工程である。このティーチング情報マップDqが作成されると、これに基づき、予め設定された作業幅等の情報に基づいて、続く往復行程、内周行程における作業車両1の走行経路の軌跡の位置情報を示す予定走行経路が算出される。これにより、作業車両1は、往復行程、内周行程においては、無人による自律走行が可能となっており、算出された予定走行経路に沿って、自動運転走行での田植えを行う。最後の仕上げ行程は、残った外周の1辺を作業者が乗車して田植えを行うことで田植作業を完了させる行程である。
【0057】
より詳細には、以下の手順により作業が進行する。
(1)始動
作業車両1のメインスイッチが回され、全システムが起動し、受信アンテナ130を用いた位置情報の取得が開始される。
(2)方位角の認識
作業者が、作業車両1のメインスイッチを始動まで回してエンジン7を掛け、約2m作業車両1を走行させる。これにより、作業車両1が車体の向きを認識する。この作業は前進、後進どちらでも可能で、2m程度で完了する。そのため、通常通りに圃場へ進入するなどすれば認識は完了する。
(3)圃場への進入とティーチングまでの準備
圃場への進入からティーチング開始位置(作業開始位置)までの移動は、通常の田植機と同じである。
また、植付深さの調節や苗のかき取り量の調節も通常の田植機と同様である。ティーチング行程では実際に苗を植え付けるため、作業開始前に苗の枚数や肥料・除草剤の量を確認する必要がある。
(4)ティーチング
図6は、ティーチングの行程を説明する説明図である。
なお、ティーチングは、作業者の所定操作により、手動運転モードからティーチングモードに切り替えられることで、制御部87において必要な処理が実行される。
【0058】
ティーチングの行程は、圃場Hの外周3辺(ln1、ln2、ln3)を畦に沿って、手動運転で苗を植えながら移動する。作業機の上げ下げは手動操作によって行われ、植え残しがないように作業を行われる。このとき、受信アンテナ130により、位置情報を取得しながら走行することにより、適宜、後述するティーチング圃場マップDqの情報も作成され、制御部87に記憶される。
【0059】
外周3辺(ln1、ln2、ln3)の植付作業が終了したら、作業者の所定操作により、自動運転モードに切り替えられる。例えば、リモートコントローラ44で、丸Fスイッチと開始+丸Fスイッチが同時に押圧操作されることで、この操作情報を取得した制御部87が、必要な処理を実行することにより、往復行程、内周行程における自動走行が開始される。
【0060】
(5)往復行程(自動走行)
図7は、自動走行モードにおける往復行程を示す図面である。
降車後、作業者が、ティーチングの行程後、リモートコントローラ44を用いて所定操作を行うと、この操作情報を取得した制御部87が、必要な処理を実行し、往復行程に係る自動走行が開始される。
【0061】
往復行程においては、作業車両1は、予定走行経路に沿って、直進経路と旋回経路を交互に往復するように自動走行するよう構成されている。作業車両1は、直進経路の終端(圃場Hの畦際)に到達すると、旋回経路に沿って自動的に旋回して、次の直進経路に入るよう走行が制御される。なお、旋回するスペースを確保するため、旋回前に1mほど自動後進する。このとき、苗植付部63の上げ下げ(旋回経路走行時は上げ、直進経路走行時は下げられる。)も自動で行われる。このように、往復行程においては、以上の手順を繰り返すことで、圃場H内を往復しながら、自動で田植作業を行う。
【0062】
(6)植え幅の自動調整
図8は、往復行程中の植え幅の自動調整を説明する説明図である。
圃場の大きさによって、終わりから2番目の往復行程では、条止めや空走行が行われる場合がある。終わりから2番目の往路または復路で、自動的に条止め作業を行って植え幅の調節を行うよう構成されている。
【0063】
往路で条止め作業が行われた場合、復路は1行程飛ばして空走行が行われる。その後に、最後の往復行程の作業が行われる。
【0064】
(7)内周行程(自動走行)
図9は、自動走行モードにおける内周行程を説明する説明図である。
作業車両1は、自動走行時、往復行程が終了すると、ティーチング行程と往復行程の間に残った内周を走行しながら植え付けを行う内周行程に移行する。このとき、必要に応じて、苗・肥料の補給と枕地ロータの設定が行われる。
【0065】
こうして、内周行程が行われた後に、補給路と自動植えが行われた間(
図9における図面下部)を手動走行モードにより苗の植え付けが行われる。
【0066】
<施肥量調節手段>
次に、作業車両1の施肥量調節手段について説明する。
作業車両1の制御装置87は、施肥マップによる施肥モード、リアルタイム可変施肥モードの施肥量の決定・調節方法の異なる2種類のモードを切り替え可能に構成されている。換言するならば、制御装置87は、施肥マップによる施肥モード、リアルタイム可変施肥モードで、それぞれ、異なった制御量で施肥量調節モータ66を制御するよう構成されている。なお、施肥マップによる施肥モード、リアルタイム可変施肥モードは、作業者の所定操作(例えば、リモートコントローラ44のボタン操作)により、作業者の任意のタイミングで切り替え可能となっている。
【0067】
<施肥マップによる施肥モード>
図10~
図12を用いて、施肥マップDhによる施肥モードについて説明する。
図10は、施肥マップDhによる施肥モードにおける制御部87の処理を示すフローチャートである。また、
図11は、施肥計画マップDpの作成方法を説明する説明図であり、修正施肥計画マップの作成方法を説明する説明図である。
【0068】
施肥マップによる施肥モードは、特定の地点(区画)ごとに施肥量が設定された施肥マップDhを利用して施肥量を決定・調節(コントロール)するモードである。所定操作により、施肥マップDhによる施肥モードが選択されると、制御部87は、施肥マップDhの情報を取得する(ステップS10)。
【0069】
施肥マップDfは、
図11に示されるように、所定の大きさの矩形の区画がマトリクス状に並んだ構成である。各区画は圃場及びその周辺を含む特定の領域に対応する。施肥マップDfは、それぞれの区画を二次元座標で特定できるようにデータ化されており、任意の地点Pmは、座標X、Yで位置が特定され、座標ごとに、施肥量設定値Mが設定されている。なお、施肥マップDfは、予め制御部87に記憶されていてもよいし、ネットワークを介して、外部の記憶装置から取得するよう構成されてもよい。なお、この施肥マップDfのデータは施肥量設定値Mの量に応じて、色分けされている。
図11の場合、5段階に色分けされており、それぞれ、1の色は65、2の色は57、3の色は45、4の色は35、5の色は32の5段階に色分されている。ここに、量の単位はkg/10aである。
【0070】
次に、制御部87は、地理マップDtの情報を取得する(ステップS11)。
地理マップDtは、圃場周辺の地図情報であり、該地図情報は地図と対応する位置情報も含んでいる。地理マップDtは、予め制御部87に記憶されていてもよいし、ネットワークを介して、外部の記憶装置から取得するよう構成されてもよい。地理マップDtを取得した制御部87は、リモートコントローラ44の表示部44aに地図を表示し、作業者の操作を受け付け、圃場Hの外形Hgに関する情報(圃場外形情報)を取得する(ステップS12)。すなわち、作業者は、表示された地図を指でなぞり、これにより、圃場の外形Hgを入力することが可能となっている。なお、係る圃場の外形Hgの入力は、リモートコントローラ44以外にも、モニタ61に地図を表示して、モニタ61上の操作により入力を受け付けてもよい。
【0071】
続いて、制御部87は、取得した施肥マップDfと、入力された圃場Hの外形Hgに関する情報に基づき、施肥計画マップDpを作成する。施肥計画マップDpは、圃場Hの外形Hgに沿って施肥マップDfを切り取るようにして作成されたデータであり、より詳細には、制御部87は、入力された圃場Hの外形Hgから、圃場の外形Hgの位置情報を算出し、施肥マップDfのうち、圃場の外形Hg内の位置に属する区画の施肥量設定値Mが位置情報とともに記録された施肥計画マップDpを作成する。これにより、施肥計画マップDpには、少なくとも、作業対象となる圃場Hの四隅の位置情報P1(X1、X2)、P2(X2、Y2)、P3(X3、Y3)、P4(X4、Y4)と、その四隅を結ぶ圃場外形Hp内の、任意の区画X、Y毎の施肥量設定値Mに関する情報が含まれることとなる。なお、圃場Hの四隅の位置情報P1(X1、X2)、P2(X2、Y2)、P3(X3、Y3)、P4(X4、Y4)は、入力された圃場Hの外形Hgの四隅の位置から算出されるものである。
【0072】
その後、制御部87は、ティーチング圃場マップDqを取得し(ステップS13)、施肥計画マップDpとティーチング圃場マップDqから、修正施肥計画マップDpqを作成する(ステップS14)。この修正施肥計画マップDpqは、施肥計画マップDpをティーチング圃場マップDqの情報に基づき、修正したものである。
【0073】
ここで、ティーチング圃場マップDqは、ティーチングの行程において、受信アンテナ130により、位置情報を取得しながら、圃場Hの外周3辺(ln1、ln2、ln3)を畦に沿って、手動運転で苗を植えながら移動することで作成される、圃場Hの形状及び位置情報を含むデータである。
図12に示されるように、ティーチング圃場マップDqは、圃場Hの第1辺ln1を走行することにより、走行軌跡L(L1)の位置情報が得られ、続いて、第2辺ln2の走行により走行軌跡L(L2)の位置情報が、第3辺ln3の走行により走行軌跡L(L3)の位置情報が得られる。
【0074】
圃場形状Hqの第1隅角部Q1の位置情報Q1(x1、y1)は、例えば、手動運転モードからティーチングモードに切り替え後、苗植付部63の下げ操作時に、受信アンテナ130により、取得した位置情報とすることができる。
【0075】
圃場形状Hqの第2隅角部Q2の位置情報Q2(x2、y2)は、例えば、作業車両1が圃場Hの第1辺ln1を走行後、苗植付部63を上げ操作し、再び下げ操作したときに、受信アンテナ130により、取得した位置情報とすることができる。
【0076】
同様の要領で、圃場形状Hqの第3隅角部Q3の位置情報Q3(x3、y3)は、例えば、作業車両1が圃場Hの第2辺ln2を走行後、苗植付部63を上げ操作し、再び下げ操作したときに、受信アンテナ130により、取得した位置情報とすることができる。
【0077】
また、圃場形状Hqの第4隅角部Q4の位置情報Q4(x4、y4)は、例えば、作業車両1が圃場Hの第3辺ln3を走行後、苗植付部63を上げ操作したときに、受信アンテナ130により、取得した位置情報とすることができる。
【0078】
このようにして、制御部87は、圃場形状Hqの第1~4隅角部Q1~Q4の位置情報が得られると、これらを結ぶようにして、圃場形状Hqを算出することで、圃場Hの形状及び位置情報を含むティーチング圃場マップDqを得る。
【0079】
次に、ティーチング圃場マップDqに基づき、施肥計画マップDpを修正した修正施肥計画マップDpqを作成する。より詳細には、
図12に示されるように、施肥計画マップDp中の位置情報X、Yを、ΔX、ΔYだけ平行移動させる。これにより、例えば、施肥計画マップDpにおいて、Pm地点の施肥量設定値Mは、平行移動によって、位置(X、Y)から位置(X+ΔX、Y+ΔY)の施肥量の設定値となる。
【0080】
制御部87は、修正施肥計画マップDpqが作成されると、作業走行中、該修正施肥計画マップDpqの施肥量設定値Mとなるように、適宜、位置情報を取得しながら施肥量をコントロールする(ステップS15)。すなわち、位置情報を取得し、その位置情報から修正施肥計画マップDpq上においてその位置と対応する施肥量設定値Mを取得し、取得した施肥量設定値Mとなるように、施肥量調節モータ66を制御する。このように、施肥計画マップDpに代えて、自機が取得した圃場の位置情報に基づいて修正した修正施肥計画マップDpqに基づいて、施肥をコントロールすることで、施肥計画マップDp上における自機位置のズレを修正できるため、施肥量の精度を向上できる。加えて、施肥計画マップDp中の位置情報X、Yを、ΔX、ΔYだけ平行移動させることで、作業開始時、作業者が手動で、施肥計画マップDpにおける自機位置の設定を、施肥計画マップDp中の圃場の位置に合わせて修正する手間が省かれる。すなわち、従来は、作業開始時に、位置情報を取得したとき、施肥計画マップDp上における自機位置が、実際の圃場の位置とズレが生じている場合、作業者が、手動で自機位置をズレが解消するように設定し直さなければならなかったが、上記構成により、その手間を省くことができる。なお、従来、施肥計画マップDp上における自機位置が、実際の圃場の位置と所定のズレが生じる原因は、施肥計画マップDpに含まれている位置情報と、自機が受信アンテナ130により取得する位置情報の対応関係が、必ずしも一致せず、様々な要因により誤差が生じるためである。上記構成により、その誤差を良好に解消できる。
【0081】
図13(a)及び
図13(b)は、制御部87による圃場形状Hqの修正方法を説明する説明図である。
図13(a)に示されるように、制御部87は、上記
図10のステップS13の処理において、圃場形状Hqの1辺と連続する他の1辺のなす角αが一定角度以上である場合、その2辺を統合するよう構成されてもよい。これにより、精度良く圃場形状Hqが作成できる。また、
図13(b)に示されるように、圃場形状Hqの特定の1辺の距離が一定以下である場合、その1辺を削除するよう構成されてもよい。これにより、圃場形状Hqを簡略化して、処理時間を短縮することができる。
【0082】
<移動量の決定方法>
次に、上記
図10のステップS14において、施肥計画マップDp中の位置情報X、Yを、ΔX、ΔYだけ平行移動させる際、
図12において矢線で示される移動量D(ΔX、ΔY)の決定方法について説明する。制御部87は、例えば、以下のように移動量Dを決定できる。下記のいずれかの方法により、受信アンテナ130により取得される自機位置と施肥マップから設定施肥量を取得する地点に誤差が生じることを防止し、施肥マップ利用による施肥量のコントロールの精度を向上できる。加えて、作業者が手動で自機位置を修正する手間が省かれる。
【0083】
(1)移動量Dの決定方法の例1
図14は、上記
図10において、移動量Dの決定方法の一例を説明する説明図である。
図14に示されるように、圃場形状Hqが圃場の外形Hgの内側に入るよう、移動量D(ΔX、ΔY)を決定できる。ここで、ティーチングの行程の後、自機位置Aは、圃場形状Hqの内側に来ているため、圃場形状Hqが圃場の外形Hgの内側に入ることで、自機位置Aを確実に圃場の外形Hgの内側に位置させることができる。これにより、制御部87は、例えば、往復行程開始時、圃場の外形Hgの位置情報が、算出過程の誤差などの要因で正しい位置から外れていることにより、圃場の外形Hg外に自機位置Aが位置してしまい、正しい施肥量を施肥計画マップDpから取得できないという事態が回避され、確実に施肥量設定値Mを取得して位置情報に基づき、施肥量をコントロールすることができる。このとき、
図15に示されるように、基準とする圃場形状Hqは、車体の方位と、自機位置Aからの距離で決定する構成としてもよい。
【0084】
(2)移動量Dの決定方法の例2
移動量D(ΔX、ΔY)は、P1とQ1の位置の差(|X1-x1|、|Y1―y1|)、P2とQ2の位置の差(|X2-x2|、|Y2―y2|)、P3とQ3の位置の差(|X3-x3|、|Y3―y3|)、P4とQ4の位置の差(|X4-x4|、|Y4―y4|)の合計が、最小となるように、決定されてもよい。これにより、圃場形状Hqと圃場の外形Hgの位置情報が重ね合わさるように、移動量D(ΔX、ΔY)を決定できる。その結果、自機位置Aを、圃場形状Hqの内側に位置させて、位置情報に基づき、良好に、施肥量設定値Mを取得して、施肥量をコントロールできる。
【0085】
(3)移動量Dの決定方法の例3
移動量D(ΔX、ΔY)は、P1とQ1の位置の差(|X1-x1|、|Y1―y1|)、P2とQ2の位置の差(|X2-x2|、|Y2―y2|)、P3とQ3の位置の差(|X3-x3|、|Y3―y3|)、P4とQ4の位置の差(|X4-x4|、|Y4―y4|)のいずれか1つが、最小となるように、決定されてもよい。これにより、例えば、ティーチング工程において、Q1の位置情報しか取得していない段階においても、P1とQ1の位置の差(|X1-x1|、|Y1―y1|)が最小となるように、移動量D(ΔX、ΔY)を決定できるため、ティーチング工程においても、自機位置Aを、圃場形状Hqの内側に位置させて、位置情報に基づき、良好に、施肥量設定値Mを取得して、施肥量をコントロールできる。
【0086】
(4)移動量Dの決定方法の例4
ティーチング工程中に、移動量D(ΔX、ΔY)をリアルタイムで更新し、これに伴い、修正施肥計画マップDpqを後進するよう構成されてもよい。例えば、Q1の位置情報が取得された段階で、P1とQ1の位置の差(|X1-x1|、|Y1―y1|)が最小となる移動量Dで修正施肥計画マップDpqを作成する。次に、Q2の位置情報が取得されたら、P1とQ1の位置の差(|X1-x1|、|Y1―y1|)、P2とQ2の位置の差(|X2-x2|、|Y2―y2|)の和が、最小となるように、移動量D(ΔX、ΔY)を決定し、修正施肥計画マップDpqを更新する。同様の要領で、Q3の位置情報が取得された段階、Q3の位置情報が取得された段階で、修正施肥計画マップDpqを更新する。これにより、ティーチング工程中においても、自機位置Aを、圃場形状Hqの内側に良好に位置させて、位置情報に基づき、良好に、施肥量設定値Mを取得して、施肥量をコントロールできる。
【0087】
<施肥量の自動調整>
制御部87は、取得した位置情報に基づき、修正施肥計画マップDpqの利用により取得した施肥設定値が、施肥装置26が繰り出し可能な施肥上下限値を越えている場合(例えば、上限80kg/10a、下限10kg/a)、施肥量が、施肥上下限値内に納まるように、自動で、施肥量を調整するように構成されている。より詳細には、施肥上下限値内に納まるように、所定の基本施肥量からの辺さが小さくなるよう施肥量を補正する(レンジを狭める)。これにより、誤作動を防止しながら適切な施肥量のコントロールが可能となる。なお、このとき、作業者にブザー等により警告を報知するよう構成されてもよい。
【0088】
<リアルタイム可変施肥>
図16は、リアルタイム可変施肥モードにおける制御部87の処理を示すフローチャートである。
図16に示されるように、リアルタイム可変施肥モード87においては、位置情報とともに、前輪8に取り付けられた肥沃度(SFV:Soil Fertility Value)を検出する肥沃度センサから、適宜、肥沃度に関する情報を取得し(ステップS21~ステップS22)、取得した肥沃度の数値に基づき、施肥量をリアルタイムでコントロール(増減)する(ステップS24)。なお、肥沃度の数値に対する施肥量の設定は、予め制御部87に記憶されている。
【0089】
<施肥マップによる施肥モードとリアルタイム可変施肥モードの自動切り替え>
制御部87は、施肥マップによる施肥モードとリアルタイム可変施肥を自動で切り替えるよう構成されてもよい。例えば、施肥マップDhによる施肥モード中に、正施肥計画マップDpqの利用により取得した施肥設定値が、施肥装置26が繰り出し可能な施肥上下限を越えている場合(例えば、上限80kg/10a、下限10kg/a)、上記施肥量の自動調整に代え、自動で、リアルタイム可変施肥モードに切り替えるよう構成されてもよい。
【0090】
以上、本発明の実施形態を説明した。本件発明は、前記した実施形態の態様にのみ限定されない。技術的思想の範囲内で、適宜変更であることは言うまでも無い。
【符号の説明】
【0091】
1 作業車両
2 走行車体
3 メインフレーム
4 ベルト式動力伝達機構
5 昇降リンク装置
6 後部フレーム
7 エンジン
8 前輪
9 後輪
10 リンクベースフレーム
11 上下リンクアーム
12 昇降油圧シリンダ
13 前輪ファイナルケース
14 後輪伝動軸
15 動力伝達機構
16 フィンガーレバーセンサ
17 旋回制御スイッチ
18 センターマスコット
19 植付入切スイッチ
20 副変速機構
21 前輪回転センサ
23 フィンガーレバー
24 副変速レバー
25 静油圧式無段変速機
26 施肥装置
27 植付クラッチモータ
28 マーカースイッチ
29 後輪回転センサ
30 ミッションケース
31 前輪車軸
32 ディスプレイ
33 フロートセンサ
34 マーカーモータ
35 主変速レバー
36 主変速レバーセンサ
37 傾斜検知センサ
38 センターフロート
39 サイドフロート
40 線引きマーカー
41 線引き体
42 マーカーロッド
43 操舵機構
44 リモートコントローラ
45 ステアリングセンサ
46 フレーム
47 フロントカバー
48 操縦席
49 操縦部
50 アンテナカバー
51 後輪ギアケース
52 リモコンアンテナ
54 操作部
55 状態表示灯
56 ステアリングホイール
57 ステアリングモータ
60 フロアステップ
61 モニタ
62 操作スイッチ
63 苗植付部
64 植付装置
66 施肥量調節モータ
67 駆動軸
68 プレート
69 植付具
70 ナビゲーションECU
71 操舵ECU
74 補助苗枠
79 直進アシストレバー
80 方位センサ
81 直進アシストレバーセンサ
82 後輪車軸
83 ステアリングシャフト
85 上部リンクアーム
86 下部リンクアーム
87 制御部
88 電子油圧バルブ
89 リンクセンサ
96 エンジン回転センサ
97 スロットルモータ
102 インジケータ
103 電磁バルブ
108 パワーステアリング
110 シートスイッチ
111 トルクセンサ
112 スピーカー
150 HSTサーボモータ