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特開2024-108378直動アクチュエータ、直動アクチュエータシステム、および、リードの算出方法
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  • 特開-直動アクチュエータ、直動アクチュエータシステム、および、リードの算出方法 図1
  • 特開-直動アクチュエータ、直動アクチュエータシステム、および、リードの算出方法 図2
  • 特開-直動アクチュエータ、直動アクチュエータシステム、および、リードの算出方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108378
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】直動アクチュエータ、直動アクチュエータシステム、および、リードの算出方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/06 20060101AFI20240805BHJP
   G01D 5/20 20060101ALI20240805BHJP
   H02P 29/00 20160101ALI20240805BHJP
   H02K 11/215 20160101ALI20240805BHJP
【FI】
H02K7/06 A
G01D5/20 110Z
H02P29/00
H02K11/215
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012708
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桑原 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】井野元 豊
(72)【発明者】
【氏名】三浦 祥太
【テーマコード(参考)】
2F077
5H501
5H607
5H611
【Fターム(参考)】
2F077AA46
2F077CC02
2F077DD18
2F077FF34
2F077NN16
2F077NN21
2F077PP26
5H501BB20
5H501JJ17
5H501LL35
5H501LL36
5H607BB01
5H607CC07
5H607EE52
5H607HH01
5H611BB01
5H611QQ03
5H611RR00
5H611UA04
(57)【要約】
【課題】停止位置の検知を簡便にすることができる直動アクチュエータを提供すること。
【解決手段】直動アクチュエータ1は、軸線A方向に沿ってナット20が移動可能に嵌合するねじ軸部材10と、ねじ軸部材10を回転させるモータ30と、ねじ軸部材10の軸線A回りの角度を検出するレゾルバ40と、を備え、ナット20は、軸線A方向において等間隔で位置する複数の停止位置Pのうち何れか1つの停止位置Pで停止し、ねじ軸部材10のリードの値は、下記式(1)および式(2)のいずれか一方で表される。
L=(α×γ)/(β+(1/ε))・・・(1)
L=(α×γ)/(β+((ε―1)/ε))・・・(2)
(L:リードの値、α:互いに隣り合う2つの停止位置Pの距離、γ:レゾルバ40の軸倍角数、ε:複数の停止位置Pの個数、β:0以上の実数であり、複数の停止位置Pに対応するレゾルバ40の複数の電気角度θrを互いに異ならせる値)
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線を有し、前記軸線回りに回転可能なねじ軸部材と、
前記ねじ軸部材と嵌合し、前記ねじ軸部材が回転することで前記軸線方向に沿って移動可能なナットと、
前記ねじ軸部材を前記軸線回りに回転させるモータと、
前記ねじ軸部材の前記軸線回りの角度を検出するレゾルバと、を備え、
前記ナットは、前記軸線方向において等間隔で位置する複数の停止位置のうち何れか1つの前記停止位置で停止し、
前記ねじ軸部材のリードの値は、下記式(1)および式(2)のいずれか一方で表される、
直動アクチュエータ。
L=(α×γ)/(β+(1/ε)) ・・・(1)
L=(α×γ)/(β+((ε―1)/ε)) ・・・(2)
Lは前記ねじ軸部材のリードの値であり、αは前記軸線方向において互いに隣り合う2つの前記停止位置の距離であり、γは前記レゾルバの軸倍角数であり、εは複数の前記停止位置の個数であり、βは、0以上の実数であり、複数の前記停止位置に対応する前記レゾルバの複数の電気角度を互いに異ならせる値である。
【請求項2】
前記停止位置に対応する前記レゾルバの電気角度は、前記停止位置の個数で360°を等分した角度に対応する、
請求項1に記載の直動アクチュエータ。
【請求項3】
前記ねじ軸部材のリードの値は、正の整数である、
請求項1に記載の直動アクチュエータ。
【請求項4】
軸線を有し、前記軸線回りに回転可能なねじ軸部材と、
前記ねじ軸部材と嵌合し、前記ねじ軸部材が回転することで前記軸線方向に沿って移動可能なナットと、
前記ねじ軸部材を前記軸線回りに回転させるモータと、
前記ねじ軸部材の前記軸線回りの角度を検出するレゾルバと、
前記モータを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記レゾルバの検出結果に基づいて前記モータを制御することで、前記軸線方向において等間隔で位置する複数の停止位置のうち何れか1つの前記停止位置で前記ナットを停止させ、
前記ねじ軸部材のリードの値は、下記式(1)および式(2)のいずれか一方で表される、
直動アクチュエータシステム。
L=(α×γ)/(β+(1/ε)) ・・・(1)
L=(α×γ)/(β+((ε―1)/ε)) ・・・(2)
Lは前記ねじ軸部材のリードの値であり、αは前記軸線方向において互いに隣り合う2つの前記停止位置の距離であり、γは前記レゾルバの軸倍角数であり、εは複数の前記停止位置の個数であり、βは、0以上の実数であり、複数の前記停止位置に対応する前記レゾルバの複数の電気角度を互いに異ならせる値である。
【請求項5】
モータによって軸線回りに回転するねじ軸部材と嵌合し、前記軸線方向において等間隔で位置する複数の停止位置のうち何れか1つの前記停止位置で停止するナット、および、前記ねじ軸部材の前記軸線回りの角度を検出するレゾルバを備える直動アクチュエータに適用され、
前記ねじ軸部材のリードの値を下記式(1)および式(2)のいずれか一方で算出する、
リードの算出方法。
L=(α×γ)/(β+(1/ε)) ・・・(1)
L=(α×γ)/(β+((ε―1)/ε)) ・・・(2)
Lは前記ねじ軸部材のリードの値であり、αは前記軸線方向において互いに隣り合う2つの前記停止位置の距離であり、γは前記レゾルバの軸倍角数であり、εは複数の前記停止位置の個数であり、βは、0以上の実数であり、複数の前記停止位置に対応する前記レゾルバの複数の電気角度を互いに異ならせる値である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、直動アクチュエータ、直動アクチュエータシステム、および、リードの算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、メカ機構に適用される変調波レゾルバ装置が開示されている。メカ機構は、例えばモータおよびボールねじなどの回転駆動する構成要素を備えている。特許文献1の変調波レゾルバ装置(レゾルバ)は、当該構成要素と直結し、当該構成要素の回転角度を検出する。特許文献1において、レゾルバのコントローラは、不揮発性メモリを備え、当該構成要素の停止位置に対応するレゾルバロータが回転した数の検出結果(以下、多回転数の情報と称する)を不揮発性メモリに記憶する。これにより、メカ機構およびコントローラの電源が遮断された場合においても、電源が再投入された場合に、コントローラは、不揮発性メモリに記憶されている多回転数の情報を用いて、当該構成要素の停止位置を判定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-215220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のメカ機構には、例えば、モータの回転によって直線運動する構成要素(例えばナット)を備える直動アクチュエータがある。このような直動アクチュエータにおいて、構成要素の停止位置が複数ある場合、電源が遮断されて再投入されたときに、構成要素がどの停止位置に停止しているかをより簡便に検知したいとの要望がある。
【0005】
本開示の態様は、直線運動する構成要素の停止位置の検知をより簡便にすることができる直動アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る直動アクチュエータは、軸線を有し、前記軸線回りに回転可能なねじ軸部材と、前記ねじ軸部材と嵌合し、前記ねじ軸部材が回転することで前記軸線方向に沿って移動可能なナットと、前記ねじ軸部材を前記軸線回りに回転させるモータと、前記ねじ軸部材の前記軸線回りの角度を検出するレゾルバと、を備え、前記ナットは、前記軸線方向において等間隔で位置する複数の停止位置のうち何れか1つの前記停止位置で停止し、前記ねじ軸部材のリードの値は、下記式(1)および式(2)のいずれか一方で表される。
L=(α×γ)/(β+(1/ε)) ・・・(1)
L=(α×γ)/(β+((ε―1)/ε)) ・・・(2)
Lは前記ねじ軸部材のリードの値であり、αは前記軸線方向において互いに隣り合う2つの前記停止位置の距離であり、γは前記レゾルバの軸倍角数であり、εは複数の前記停止位置の個数であり、βは、0以上の実数であり、複数の前記停止位置に対応する前記レゾルバの複数の電気角度を互いに異ならせる値である。
【0007】
これによれば、複数の停止位置に対応するレゾルバの複数の電気角度が互いに異なり、電気角度に基づいて、複数の停止位置のうちどの停止位置にナットが停止しているかを判定することができる。よって、直動アクチュエータは、ねじ軸部材に対して相対的に直線運動するナットの停止位置の検知をより簡便にすることができる。
【0008】
望ましい態様として、前記停止位置に対応する前記レゾルバの電気角度は、前記停止位置の個数で360°を等分した角度に対応する。
【0009】
これにより、複数の停止位置に対応するレゾルバの複数の電気角度の間隔を増大させることができる。よって、直動アクチュエータは、ナットの停止位置の検知をより簡便にすることができる。
【0010】
望ましい態様として、ねじ軸部材のリードの値は、正の整数である。
【0011】
これにより、ねじ軸部材の製造の簡便化を図ることができる。
【0012】
本開示の一態様に係る直動アクチュエータシステムは、軸線を有し、前記軸線回りに回転可能なねじ軸部材と、前記ねじ軸部材と嵌合し、前記ねじ軸部材が回転することで前記軸線方向に沿って移動可能なナットと、前記ねじ軸部材を前記軸線回りに回転させるモータと、前記ねじ軸部材の前記軸線回りの角度を検出するレゾルバと、前記モータを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記レゾルバの検出結果に基づいて前記モータを制御することで、前記軸線方向において等間隔で位置する複数の停止位置のうち何れか1つの前記停止位置で前記ナットを停止させ、前記ねじ軸部材のリードの値は、下記式(1)および式(2)のいずれか一方で表される。
L=(α×γ)/(β+(1/ε)) ・・・(1)
L=(α×γ)/(β+((ε―1)/ε)) ・・・(2)
Lは前記ねじ軸部材のリードの値であり、αは前記軸線方向において互いに隣り合う2つの前記停止位置の距離であり、γは前記レゾルバの軸倍角数であり、εは複数の前記停止位置の個数であり、βは、0以上の実数であり、複数の前記停止位置に対応する前記レゾルバの複数の電気角度を互いに異ならせる値である。
【0013】
これによれば、直動アクチュエータシステムは、上記の直動アクチュエータと同様に、ねじ軸部材に対して相対的に直線運動するナットの停止位置の検知をより簡便にすることができる。
【0014】
また、本開示の一態様に係るリードの算出方法は、モータによって軸線回りに回転するねじ軸部材と嵌合し、前記軸線方向において等間隔で位置する複数の停止位置のうち何れか1つの前記停止位置で停止するナット、および、前記ねじ軸部材の前記軸線回りの角度を検出するレゾルバを備える直動アクチュエータに適用され、前記ねじ軸部材のリードの値を下記式(1)および式(2)のいずれか一方で算出する。
L=(α×γ)/(β+(1/ε)) ・・・(1)
L=(α×γ)/(β+((ε―1)/ε)) ・・・(2)
Lは前記ねじ軸部材のリードの値であり、αは前記軸線方向において互いに隣り合う2つの前記停止位置の距離であり、γは前記レゾルバの軸倍角数であり、εは複数の前記停止位置の個数であり、βは、0以上の実数であり、複数の前記停止位置に対応する前記レゾルバの複数の電気角度を互いに異ならせる値である。
【0015】
これによれば、複数の停止位置に対応するレゾルバの複数の電気角度が互いに異なり、電気角度に基づいて、複数の停止位置のうちどの停止位置にナットが停止しているかを判定することができる。よって、本開示のリードの算出方法は、ねじ軸部材に対して相対的に直線運動するナットの停止位置の検知をより簡便にすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示の態様によれば、アクチュエータは、直線運動する構成要素の停止位置の検知をより簡便にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本開示の実施形態に係る直動アクチュエータシステムの構成を示す模式図である。
図2図2は、レゾルバの平面図である。
図3図3は、表1の組合せ「1」における、複数の停止位置に対応するレゾルバの電気角度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示はこれに限定されない。以下で説明する各実施形態のおよび各変形例の構成要素は、適宜組合せることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0019】
図1は、本開示の実施形態に係る直動アクチュエータシステム100の構成を示す模式図である。直動アクチュエータシステム100は、直動アクチュエータ1および制御装置2を備える。
【0020】
直動アクチュエータ1は、ねじ軸部材10、ナット20、モータ30、および、レゾルバ40を備えている。
【0021】
ねじ軸部材10は、軸線Aを有し、軸線A回りに回転する。ねじ軸部材10は、例えばボールねじである。
【0022】
ナット20は、ねじ軸部材10と嵌合し、ねじ軸部材10が回転することでねじ軸部材10に対して軸線A方向に沿って移動する。軸線A方向は、軸線Aに沿う方向である。つまり、ナット20は、ねじ軸部材10に対して相対移動可能に取り付けられている。ナット20は、例えばボールナットである。
【0023】
モータ30は、ねじ軸部材10を軸線A回りに回転させる。モータ30は、ハウジング31、モータステータ32、モータロータ33、出力軸部材34を備えている。
【0024】
モータステータ32は、ハウジング31に固定されている。モータロータ33は、モータステータ32に対して軸線A回りに回転可能に配置されている。
【0025】
出力軸部材34は、軸受(不図示)を介してハウジング31に配置されている。出力軸部材34は、モータロータ33と軸線A回りに一体回転する。また、出力軸部材34は、モータロータ33を貫通している。出力軸部材34は、第1端部でカップリング50を介してねじ軸部材10と接続し、ねじ軸部材10と一体回転する。つまり、モータ30は、回転力をねじ軸部材10に直接伝達するダイレクトドライブモータである。
【0026】
レゾルバ40は、ねじ軸部材10の軸線A回りの角度を検出する。レゾルバ40は、モータ30のハウジング31に収容されている。レゾルバ40は、レゾルバロータ41、および、レゾルバステータ42を備える。
【0027】
レゾルバロータ41は、出力軸部材34の第2端部に固定され、出力軸部材34と一体回転する。レゾルバロータ41は、磁性体で形成されている。レゾルバステータ42はハウジング31に固定されており、レゾルバステータ42の内周面は、レゾルバロータ41の外周面と対向する。
【0028】
図2は、レゾルバ40の平面図である。レゾルバロータ41は、平面視環状である。レゾルバロータ41の外周縁には、径方向外側に突出する複数(例えば4個)の凸部41aが周方向に沿って配置されている。つまり、レゾルバロータ41の外周面は周方向に沿って凹凸状である。
【0029】
レゾルバステータ42は、平面視環状である。レゾルバステータ42の内周面には、複数の鉄心42aが周方向に沿って均等に配置されている。複数(例えば16個)の鉄心42aそれぞれには、コイル42bが巻かれている。複数のコイル42bそれぞれのリラクタンスは、凹凸状であるレゾルバロータ41の外周面と鉄心42aとの距離に応じて変化する。すなわち、複数のコイル42bそれぞれのリラクタンスは、レゾルバロータ41の軸線A回りの位置(角度)によって変化する。なお、凸部41aの個数および鉄心42aの個数は、上記の個数に限定されないことは言うまでもなく、レゾルバ40の軸倍角数に基づいて定められる。
【0030】
上記のように構成されている直動アクチュエータ1は、図1に示す制御装置2によって制御される。制御装置2は、レゾルバ制御回路2a、モータ制御回路2b、記憶部2cを備えている。
【0031】
レゾルバ制御回路2aは、レゾルバステータ42の複数のコイル42bに正弦波を有する励磁信号S1を送信する。複数のコイル42bは、それぞれ、コイル42bのリラクタンスに応じた出力信号S2をレゾルバ制御回路2aに送信する。上記のように、コイル42bのリラクタンスはレゾルバロータ41の軸線A回りの位置によって変化する。
【0032】
つまり、レゾルバ制御回路2aは、レゾルバロータ41が停止している場合、出力信号S2に基づいて、レゾルバステータ42に対するレゾルバロータ41の軸線A回りの角度を検知する。レゾルバ制御回路2aは、当該角度を電気角度として検知する。また、レゾルバ制御回路2aは、レゾルバロータ41が回転した場合に、出力信号S2に基づいて検知する電気角度からレゾルバステータ42に対するレゾルバロータ41の回転角度を検知する。
【0033】
また、上記のようにレゾルバロータ41は、出力軸部材34およびねじ軸部材10と一体回転する。つまり、レゾルバ制御回路2aは、電気角度に基づいて、ねじ軸部材10の軸線A回りの角度および回転角度を検知する。レゾルバ制御回路2aは、検知結果をモータ制御回路2bに送信する。
【0034】
モータ制御回路2bは、レゾルバ制御回路2aの検知結果に基づいてモータ30を制御する制御信号S3を送信することでナット20の位置を調節する。制御信号S3によってモータステータ32に電圧が印加されてモータロータ33とねじ軸部材10とが一体回転する。上記のようにモータロータ33とレゾルバロータ41とは一体回転する。よって、レゾルバロータ41の角度および回転角度は、ねじ軸部材10の角度および回転角度に相当する。ねじ軸部材10が回転することで、ねじ軸部材10に対してナット20が軸線A方向に沿って移動する。
【0035】
ナット20の移動量は、ねじ軸部材10の回転角度および予め定められているねじ軸部材10のリードによって定まる。ねじ軸部材10のリードは、記憶部2cに格納されている。よって、モータ制御回路2bは、レゾルバ制御回路2aによって検知されるねじ軸部材10の回転角度、および、記憶部2cに格納されているねじ軸部材10のリードに基づいて、ナット20の移動量を調節する。
【0036】
また、モータ制御回路2bは、軸線A方向において等間隔で位置する複数の停止位置Pのうち何れか1つの停止位置Pでナット20を停止させる。図1に示すように、第1停止位置P1、第2停止位置P2、第3停止位置P3、および、第4停止位置P4の4つの停止位置Pが軸線Aに沿ってこの順に並んでいる。また、図1には、互いに隣り合う2つの停止位置Pの距離はαで示されている。なお、停止位置Pの個数が4個に限定されないことは言うまでもない。第1停止位置P1、第2停止位置P2、第3停止位置P3、および、第4停止位置P4を区別することなく説明するときは単に「停止位置P」と称する。
【0037】
モータ制御回路2bは、第1停止位置P1と第4停止位置P4との間でナット20を移動させる。つまり、停止位置Pの個数をεとした場合、ナット20のストロークは、α×(ε-1)に相当する。なお、ナット20が第1停止位置P1に位置する場合、ねじ軸部材10の回転角度、および、レゾルバ40の電気角度は、それぞれ0°に調節されている。記憶部2cには、停止位置Pの距離(α)がさらに格納されており、制御装置2は、ナット20の第1停止位置P1からの移動量に基づいて、ナット20を第2停止位置P2、第3停止位置P3および第4停止位置P4に停止させる。
【0038】
また、ねじ軸部材10のリードの値は、下記式(1)および式(2)のいずれか一方で定められている。
L=(α×γ)/(β+(1/ε)) ・・・(1)
L=(α×γ)/(β+((ε―1)/ε)) ・・・(2)
【0039】
Lはねじ軸部材10のリードの値であり、αは軸線A方向において互いに隣り合う2つの停止位置Pの距離であり、γはレゾルバ40の軸倍角数であり、εは複数の停止位置Pの個数であり、βは、0以上の実数であり、複数の停止位置Pに対応するレゾルバ40の複数の電気角度を互いに異ならせる値である。
【0040】
式(1),(2)を用いてねじ軸部材10のリード(L)を定めた場合の具体例を表1に示す。表1には、式(1),(2)のε、α、γ、βの組合せの例を7つ示されている。すなわち、表1の「ε」、「α」、「γ」、「β」の欄には、各組合せに対応する値が格納されている。また、表1の「式」の欄には、各組合せで用いられた式の番号が格納されている。
【表1】
【0041】
具体的には、組合せ「1」では、ε=4、α=2、γ=4、β=4と定め、式(1)に適用することで、L=1.8824が算出される。
【0042】
さらに、表1の「停止位置Pに対応するレゾルバ40の電気角度θr」の欄には、各組合せが有する複数の停止位置Pに対応するレゾルバ40の電気角度θrが格納されている。
【0043】
具体的には、組合せ「1」では、ε=4であり、4つの停止位置P(第1停止位置P1、第2停止位置P2、第3停止位置P3、第4停止位置P4)を有し、4つの停止位置Pに対応するレゾルバ40の電気角度θrが格納されている。なお、組合せ「1」では、第5停止位置(5つ目の停止位置P)が存在しないため、「第5停止位置」の欄には、電気角度θrが存在しないことを示す「N」が格納されている。
【0044】
図3は、表1の組合せ「1」における、複数の停止位置Pに対応するレゾルバ40の電気角度θrを示す図である。上記のように、第1停止位置P1において、レゾルバ40の電気角度θrおよびねじ軸部材10の回転角度θsは、それぞれ0°である。
【0045】
モータ30が駆動することで、ねじ軸部材10が回転すると、ねじ軸部材10の回転角度θsが増加し、ナット20が第1停止位置P1から第2停止位置P2に向けて移動する。ねじ軸部材10が1回転すると、回転角度θsは360°(=0°)となり、ナット20の移動量はねじ軸部材10のリード(L)に相当する。またこのとき、レゾルバ40の軸倍角数(γ)は4であることで、電気角度θrは回転角度θsの4倍に相当し、ねじ軸部材10の1回転はレゾルバ40の4サイクルに相当する。回転角度θsが360°であるとき、電気角度θrは360°(=0°)である。
【0046】
さらに、ねじ軸部材10が回転し、ナット20が第2停止位置P2で停止すると、電気角度θrは90°となる。また、ナット20が第3停止位置P3で停止すると、電気角度θrは180°である。そして、ナット20が第4停止位置P4で停止すると、電気角度θrは270°である。
【0047】
このように、複数の停止位置Pに対応するレゾルバ40の複数の電気角度θrは互いに異なる。また、停止位置Pに対応するレゾルバ40の電気角度θrは、停止位置Pの個数(ε)で360°を等分した角度に対応する。組合せ「1」において、停止位置Pに対応するレゾルバ40の電気角度θrは、360°をε(=4)等分した角度に相当する、0°(=360)、90°、180°、270°のいずれかに対応する。
【0048】
換言すれば、複数の停止位置Pに対応するレゾルバ40の複数の電気角度θrが互いに異なり、かつ、複数の停止位置Pに対応するレゾルバ40の複数の電気角度θrが停止位置Pの個数(ε)で360°を等分した角度に対応するように、βの値が定められている。
【0049】
また、表1の組合せ「2」は、組合せ「1」から「式」および「β」の値を変更したものである。表1の組合せ「3」は、組合せ「1」から「γ」の値を変更したものである。表1の組合せ「4」は、組合せ「1」から「γ」および「β」の値を変更したものである。表1の組合せ「5」は、組合せ「1」から「ε」および「α」の値を変更したものである。これにより、組合せ「2」,「3」,「4」,「5」におけるねじ軸部材10のリード(L)は、互いに異なるとともに、組合せ「1」と異なる。
【0050】
また、組合せ「2」,「3」,「4」においても、複数の停止位置Pに対応するレゾルバ40の複数の電気角度θrは互いに異なり、かつ、複数の停止位置Pに対応するレゾルバ40の複数の電気角度θrは停止位置Pの個数(ε)で360°を等分した角度に対応する。なお、組合せ「5」において、停止位置Pに対応するレゾルバ40の電気角度θrは、360°をε(=5)等分した角度に相当する、0°(=360)、72°、144°、216°、288°のいずれかに対応する。
【0051】
また、表1の組合せ「6」,「7」において、ねじ軸部材10のリード(L)の値は正の整数である。換言すれば、「L」の値が正の整数となるように、「β」の値が定められている。組合せ「6」,「7」は、組合せ「1」から「α」および「β」の値を変更したものである。
【0052】
さらに、組合せ「6」,「7」においても、複数の停止位置Pに対応するレゾルバ40の複数の電気角度θrは互いに異なり、かつ、複数の停止位置Pに対応するレゾルバ40の複数の電気角度θrは停止位置Pの個数(ε)で360°を等分した角度に対応する。
【0053】
制御装置2の記憶部2cには、複数の停止位置Pに対応するレゾルバ40の複数の電気角度θrが格納されている。例えば、組合せ「1」においては、第1停止位置P1に対応する電気角度θr(0°)、第2停止位置P2に対応する電気角度θr(90°)、第3停止位置P3に対応する電気角度θr(180°)、および、第4停止位置P4に対応する電気角度θr(270°)が格納されている。
【0054】
これにより、制御装置2は、第1停止位置P1に対するナット20の移動量に加え、電気角度θrによっても、複数の停止位置Pのうちどの停止位置Pにナット20が停止しているかを判定することができる。
【0055】
さらに、ナット20が停止位置Pに停止している場合に直動アクチュエータ1および制御装置2の電源が遮断された後、電源が再投入されたときに、制御装置2は、レゾルバ制御回路2aが検知する電気角度θrに基づいて、複数の停止位置Pのうちどの停止位置Pにナット20が停止しているかを判定することができる。つまり、制御装置2は、レゾルバロータ41の回転した数(多回転数の情報)を演算する必要もなく、また多回転数の情報を記憶する大容量の不揮発性メモリを備えることなく、ナット20の停止位置Pを判定することができる。
【0056】
このように、直動アクチュエータ1は、直線運動するナット20の停止位置Pの検知を簡便にすることができる。
【0057】
以上、説明したように、本実施形態によれば、直動アクチュエータ1は、軸線Aを有し、軸線A回りに回転可能なねじ軸部材10と、ねじ軸部材10と嵌合し、ねじ軸部材10が回転することで軸線A方向に沿って移動可能なナット20と、ねじ軸部材10を軸線A回りに回転させるモータ30と、ねじ軸部材10の軸線A回りの角度を検出するレゾルバ40と、を備える。ナット20は、軸線A方向において等間隔で位置する複数の停止位置Pのうち何れか1つの停止位置Pで停止する。ねじ軸部材10のリードの値は、下記式(1)および式(2)のいずれか一方で表される。
L=(α×γ)/(β+(1/ε)) ・・・(1)
L=(α×γ)/(β+((ε―1)/ε)) ・・・(2)
Lはねじ軸部材10のリードの値であり、αは軸線A方向において互いに隣り合う2つの停止位置Pの距離であり、γはレゾルバ40の軸倍角数であり、εは複数の停止位置Pの個数であり、βは、0以上の実数であり、複数の停止位置Pに対応するレゾルバ40の複数の電気角度θrを互いに異ならせる値である。
【0058】
これによれば、複数の停止位置Pに対応するレゾルバ40の複数の電気角度θrが互いに異なり、電気角度θrに基づいて、複数の停止位置Pのうちどの停止位置Pにナット20が停止しているかを判定することができる。よって、直動アクチュエータ1は、ねじ軸部材10に対して相対的に直線運動するナット20の停止位置Pの検知をより簡便にすることができる。
【0059】
また、停止位置Pに対応するレゾルバ40の電気角度θrは、停止位置Pの個数で360°を等分した角度に対応する。
【0060】
これにより、複数の停止位置Pに対応するレゾルバ40の複数の電気角度θrの間隔を増大させることができる。よって、直動アクチュエータ1は、ナット20の停止位置Pの検知をより簡便にすることができる。
【0061】
また、ねじ軸部材10のリードの値は、正の整数である。
【0062】
これにより、ねじ軸部材10の製造の簡便化を図ることができる。
【0063】
また、直動アクチュエータシステム100は、軸線Aを有し、軸線A回りに回転可能なねじ軸部材10と、ねじ軸部材10と嵌合し、ねじ軸部材10が回転することで軸線A方向に沿って移動可能なナット20と、ねじ軸部材10を軸線A回りに回転させるモータ30と、ねじ軸部材10の軸線A回りの角度を検出するレゾルバ40と、モータ30を制御する制御装置2と、を備える。制御装置2は、レゾルバ40の検出結果に基づいてモータ30を制御することで、軸線A方向において等間隔で位置する複数の停止位置Pのうち何れか1つの停止位置Pでナット20を停止させ、ねじ軸部材10のリードの値は、下記式(1)および式(2)のいずれか一方で表される。
L=(α×γ)/(β+(1/ε)) ・・・(1)
L=(α×γ)/(β+((ε―1)/ε)) ・・・(2)
Lはねじ軸部材10のリードの値であり、αは軸線A方向において互いに隣り合う2つの停止位置Pの距離であり、γはレゾルバ40の軸倍角数であり、εは複数の停止位置Pの個数であり、βは、0以上の実数であり、複数の停止位置Pに対応するレゾルバ40の複数の電気角度θrを互いに異ならせる値である。
【0064】
これにより、直動アクチュエータシステム100は、ねじ軸部材10に対して相対的に直線運動するナット20の停止位置Pをより簡便に検知することができる。また、上記のように、制御装置2は、レゾルバロータ41の回転した数(多回転数の情報)を演算する必要もなく、また多回転数の情報を記憶する大容量の不揮発性メモリを備えることなく、ナット20の停止位置Pを判定することができる。よって、直動アクチュエータシステム100の低コスト化を図ることができる。
【0065】
また、本実施形態のリード(L)の算出方法は、モータ30によって軸線A回りに回転するねじ軸部材10と嵌合し、軸線A方向において等間隔で位置する複数の停止位置Pのうち何れか1つの停止位置Pで停止するナット20、および、ねじ軸部材10の軸線A回りの角度を検出するレゾルバ40を備える直動アクチュエータ1に適用され、ねじ軸部材10のリードの値を下記式(1)および式(2)のいずれか一方で算出する。
L=(α×γ)/(β+(1/ε)) ・・・(1)
L=(α×γ)/(β+((ε―1)/ε)) ・・・(2)
Lは前記ねじ軸部材10のリードの値であり、αは軸線A方向において互いに隣り合う2つの停止位置Pの距離であり、γはレゾルバ40の軸倍角数であり、εは複数の停止位置Pの個数であり、βは、0以上の実数であり、複数の停止位置Pに対応するレゾルバ40の複数の電気角度θrを互いに異ならせる値である。
【0066】
これによれば、複数の停止位置Pに対応するレゾルバ40の複数の電気角度θrが互いに異なり、電気角度θrに基づいて、複数の停止位置Pのうちどの停止位置Pにナット20が停止しているかを判定することができる。よって、本実施形態のリード(L)の算出方法は、ねじ軸部材10に対して相対的に直線運動するナット20の停止位置Pの検知をより簡便にすることができる。
【0067】
なお、本実施形態において、停止位置Pに対応するレゾルバ40の電気角度θrは、停止位置Pの個数で360°を等分した角度に対応していなくてもよい。例えば、式(2)を用いて、ε=3、α=2、γ=1、β=0.3と定めた場合、第1停止位置P1、第2停止位置P2および第3停止位置P3に対応する電気角度θrは、停止位置Pの個数(ε(=3))で360°を等分した角度(120°、240°)に対応しておらず、0°、336°、348°に対応する。
【0068】
また、本実施形態の変形例に係る直動アクチュエータ1において、ナット20を軸線A方向に移動できないようにして、ナット20が軸線A回りに回転することでねじ軸部材10が軸線A方向に沿って移動する構成としてもよい。
【0069】
具体的には、本変形例に係る直動アクチュエータ1において、モータ30は出力軸部材34を備えない。また、ナット20は、モータロータ33に固定されてモータロータ33と軸線A回りに一体回転する。なお、ナット20とモータロータ33は、軸受を介してハウジング31内に配置される。さらに、レゾルバロータ41は、モータロータ33に固定され、モータロータ33およびナット20と一体回転する。すなわち、レゾルバ40は、ナット20の軸線A回りの角度および回転角度を検出する。モータ制御回路2bは、レゾルバ制御回路2aの検知結果に基づいてモータ30を制御する制御信号S3を送信することでねじ軸部材10の位置を調節する。モータ制御回路2bは、複数の停止位置Pのうち何れか1つの停止位置Pでねじ軸部材10を停止させる。
【0070】
つまり、本変形例に係る直動アクチュエータ1は、軸線Aを有し、軸線A回りに回転可能なナット20と、ナット20と嵌合し、ナット20が回転することで軸線A方向に沿って移動可能なねじ軸部材10と、ナット20を軸線A回りに回転させるモータ30と、ナット20の軸線A回りの角度を検出するレゾルバ40と、を備える。本変形例のねじ軸部材10において、例えばねじ軸部材10の先端が、軸線A方向において等間隔で位置する複数の停止位置Pのうち何れか1つの停止位置Pで停止する。本変形例のねじ軸部材10のリードの値は、上記式(1)および式(2)のいずれか一方で表される。
【0071】
本変形例の直動アクチュエータ1においても、上記の実施形態の直動アクチュエータ1と同様に、複数の停止位置Pのうちどの停止位置Pにねじ軸部材10が停止しているかを判定することができる。よって、直動アクチュエータ1は、ナット20に対して相対的に直線運動するねじ軸部材10の停止位置Pの検知を簡便にすることができる。
【符号の説明】
【0072】
1 直動アクチュエータ
2 制御装置
10 ねじ軸部材
20 ナット
30 モータ
40 レゾルバ
100 直動アクチュエータシステム
P 停止位置
θr 電気角度
図1
図2
図3