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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108381
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】車両用サイドエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/207 20060101AFI20240805BHJP
   B60R 21/2338 20110101ALI20240805BHJP
   B60R 21/233 20060101ALI20240805BHJP
   B60R 21/2165 20110101ALI20240805BHJP
【FI】
B60R21/207
B60R21/2338
B60R21/233
B60R21/2165
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012713
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智也
(72)【発明者】
【氏名】上野 一樹
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA07
3D054AA23
3D054BB23
3D054CC04
3D054CC11
3D054CC34
3D054CC42
3D054DD13
3D054FF16
(57)【要約】
【課題】エアバッグクッションの乗員拘束性能を向上させることが可能な車両用サイドエアバッグ装置を提供する。
【解決手段】サイドエアバッグ装置100のエアバッグモジュール110は、袋状であって巻回または折り畳まれた所定の収納形態になってサイドフレーム108に取り付けられるエアバッグクッション112と、エアバッグクッション112と共にサイドフレーム108に取り付けられるインフレータ114と、を含む。エアバッグクッション112は、インフレータ114からガスが供給されたとき、上方から見て、前端129と後端130とを結ぶ主軸L2が、シートバック104の幅方向外側の斜め前方に延びるよう膨張展開するメインチャンバ118を有することを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートのシートバック内に設けられるシートフレームのうち該シートバックの側部に沿ったサイドフレームと、該サイドフレームに取り付けられるエアバッグモジュールとを備える車両用サイドエアバッグ装置であって、
前記エアバッグモジュールは、
袋状であって巻回または折り畳まれた所定の収納形態になって前記サイドフレームに取り付けられるエアバッグクッションと、
前記エアバッグクッションと共に前記サイドフレームに取り付けられるインフレータと、
を含み、
前記エアバッグクッションは、前記インフレータからガスが供給されたとき、上方から見て、前端と後端とを結ぶ主軸が前記シートバックの幅方向外側の斜め前方に延びるよう膨張展開するメインチャンバを有することを特徴とする車両用サイドエアバッグ装置。
【請求項2】
前記エアバッグクッションはさらに、前記メインチャンバのうち膨張展開したときに前記車両用シートに正規の姿勢で着座した乗員の前方に位置する範囲に設けられて該メインチャンバから該車両用シート側に突出して膨張展開するサブチャンバを有することを特徴とする請求項1に記載の車両用サイドエアバッグ装置。
【請求項3】
前記エアバッグクッションはさらに、
前記メインチャンバの後端近傍と前記サイドフレームとにかけ渡されるリアストラップと、
当該エアバッグクッションのうち膨張展開したときに前記シートバックよりも前方に位置する箇所と該シートバック側の箇所または前記シートフレームとにかけ渡される1または複数のテザーと、
を有することを特徴とする請求項2に記載の車両用サイドエアバッグ装置。
【請求項4】
前記1または複数のテザーは、前記メインチャンバの上端近傍と前記シートフレームの上端近傍とにかけ渡される第1テザーを含むことを特徴とする請求項3に記載の車両用サイドエアバッグ装置。
【請求項5】
前記1または複数のテザーは、前記メインチャンバのうち上下方向中央よりも下方の箇所と該メインチャンバまたは前記シートフレームのうち該下方の箇所よりも上方の箇所とにかけ渡される第2テザーを含むことを特徴とする請求項3に記載の車両用サイドエアバッグ装置。
【請求項6】
前記1または複数のテザーは、一端が前記サブチャンバの前端近傍に接続され、他端が後方の前記メインチャンバまたは前記シートフレームの所定箇所に接続される第3テザーを含み、
前記第3テザーは、途中部分が該サブチャンバ上を渡っていることを特徴とする請求項3に記載の車両用サイドエアバッグ装置。
【請求項7】
前記他端は、前記メインチャンバの下端近傍に接続され、
前記途中部分は、少なくとも前記サブチャンバの下端を渡っていることを特徴とする請求項6に記載の車両用サイドエアバッグ装置。
【請求項8】
前記エアバッグクッションはさらに、一端が前記メインチャンバの上端近傍に接続され、他端が該メインチャンバの後端近傍または前記シートフレームに接続されるフックストラップを有し、
前記フックストラップは、途中部分が前記サブチャンバ上を渡っていることを特徴とする請求項2に記載の車両用サイドエアバッグ装置。
【請求項9】
前記サブチャンバは、前記乗員の頭部および上腕の前側の範囲に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の車両用サイドエアバッグ装置。
【請求項10】
前記メインチャンバは、前記サブチャンバの後方であって前記乗員の肩付近が位置する範囲に非膨張部を有することを特徴とする請求項9に記載の車両用サイドエアバッグ装置。
【請求項11】
前記主軸は、上方から見て、前記車両用シートの前後方向に対して30°から45°の範囲内の角度を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用サイドエアバッグ装置。
【請求項12】
当該車両用サイドエアバッグ装置はさらに、前記シートバック内の前記シートフレームの周囲に配置されるシートパッドを備え、
前記シートパッドは、前記収納形態のエアバッグクッションの前方に所定の脆弱部を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用サイドエアバッグ装置。
【請求項13】
前記エアバッグクッションはさらに、前記メインチャンバのうち膨張展開したときに前記車両用シートに正規の姿勢で着座した乗員の前方に位置する範囲に設けられて該メインチャンバから該車両用シート側に突出して膨張展開するサブチャンバと、
前記メインチャンバの後端近傍と前記サイドフレームとにかけ渡されるリアストラップと、
前記メインチャンバのうち膨張展開したときに前記シートバックよりも前方の上端近傍と該シートフレームの上端近傍とにかけ渡される第1テザーと、
前記メインチャンバのうち上下方向中央よりも下方の箇所と該メインチャンバまたは前記シートフレームのうち該下方の箇所よりも上方の箇所とにかけ渡される第2テザーと、
を有し、
前記サブチャンバは、前記乗員の頭部および上腕の前側の範囲に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用サイドエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに着座した乗員を拘束する車両用サイドエアバッグ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の車両にはエアバッグ装置がほぼ標準装備されている。エアバッグ装置は、車両衝突などの緊急時に作動する安全装置であって、ガス圧で膨張展開するエアバッグクッションを利用して乗員を受け止めて保護する。エアバッグ装置には、設置箇所や用途に応じて様々な種類がある。例えば、特許文献1の図5には、座席の側部に設けられるサイドエアバッグ装置の一形態として、ファーサイドエアバッグ装置19が開示されている。
【0003】
一般に、ファーサイドとは車両のうち衝突から遠い側のことを呼び、反対に車両のうち衝突に近い側のことはニアサイドと呼ばれる。特許文献1の技術では、段落0023および図2などに記載されているように、例えばシート13、14にファーサイドエアバッグ装置19を設け、これによって例えば側面衝突が起こったとき、ファーサイドのシート14の乗員P2がニアサイドのシート13の乗員P1などに干渉することを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-154365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、段落0033および図8などに記載されているように、エアバッグ21の先端部をテザー28によって乗員P2側に屈曲させてエアバッグ突出部27を形成し、乗員P2の頭部Tをエアバッグ突出部27によって受け止めることを可能にしている。しかしながら、乗員拘束性能のさらなる向上を目指す点においては、特許文献1の構成であっても改善の余地を残している。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、エアバッグクッションの乗員拘束性能を向上させることが可能な車両用サイドエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両用サイドエアバッグ装置の代表的な構成は、車両用シートのシートバック内に設けられるシートフレームのうちシートバックの側部に沿ったサイドフレームと、サイドフレームに取り付けられるエアバッグモジュールとを備える車両用サイドエアバッグ装置であって、エアバッグモジュールは、袋状であって巻回または折り畳まれた所定の収納形態になってサイドフレームに取り付けられるエアバッグクッションと、エアバッグクッションと共にサイドフレームに取り付けられるインフレータと、を含み、エアバッグクッションは、インフレータからガスが供給されたとき、上方から見て、前端と後端とを結ぶ主軸がシートバックの幅方向外側の斜め前方に延びるよう膨張展開するメインチャンバを有することを特徴とする。
【0008】
上記構成では、乗員がシートからエアバッグクッションに進入したとき、メインチャンバを斜めに配置することで、メインチャンバを前後方向に真っすぐ配置する場合に比べて、メインチャンバが乗員を拘束するときの動作(ストローク)を車幅方向において大きくし、荷重の吸収量を増やすことができる。よって、上記構成によれば、乗員からの荷重の吸収量を増やして乗員拘束性能を向上させることが可能になる。
【0009】
上記のエアバッグクッションはさらに、メインチャンバのうち膨張展開したときに車両用シートに正規の姿勢で着座した乗員の前方に位置する範囲に設けられてメインチャンバから車両用シート側に突出して膨張展開するサブチャンバを有してもよい。
【0010】
上記構成によれば、サブチャンバによって乗員を前方から拘束したり、メインチャンバとサブチャンバとで乗員の頭部付近を挟むように拘束したりすることが可能になり、乗員の移動を抑えると共に乗員からの荷重の吸収量を増やすことができる。
【0011】
上記のエアバッグクッションはさらに、メインチャンバの後端近傍とサイドフレームとにかけ渡されるリアストラップと、エアバッグクッションのうち膨張展開したときにシートバックよりも前方に位置する箇所とシートバック側の箇所またはシートフレームとにかけ渡される1または複数のテザーと、を有してもよい。
【0012】
上記構成によれば、リアストラップでメインチャンバの後端側の揺動を抑えると共に、テザーの張力を利用してエアバッグクッションの展開挙動を安定させたり拘束力を向上させたりすることが可能になる。
【0013】
上記の1または複数のテザーは、メインチャンバの上端近傍とシートフレームの上端近傍とにかけ渡される第1テザーを含んでもよい。
【0014】
上記の第1テザーによれば、エアバッグクッションのうち特に上部側の展開挙動を安定させると共に拘束力を向上させることが可能になる。
【0015】
上記の1または複数のテザーは、メインチャンバのうち上下方向中央よりも下方の箇所とメインチャンバまたはシートフレームのうち下方の箇所よりも上方の箇所とにかけ渡される第2テザーを含んでもよい。
【0016】
上記の第2テザーによれば、エアバッグクッションのうち特に下部側の展開挙動を安定させると共に拘束力を向上させることが可能になる。
【0017】
上記の1または複数のテザーは、一端がサブチャンバの前端近傍に接続され、他端が後方のメインチャンバまたはシートフレームの所定箇所に接続される第3テザーを含み、第3テザーは、途中部分がサブチャンバ上を渡っていてもよい。
【0018】
上記の第3テザーによれば、エアバッグクッションの展開挙動を安定させるとともに、その張力を利用してサブチャンバの拘束力を高めることが可能になる。
【0019】
上記の他端は、メインチャンバの下端近傍に接続され、途中部分は、少なくともサブチャンバの下端を渡っていてもよい。
【0020】
上記構成の第3テザーによれば、サブチャンバの拘束力を効率よく高めることが可能になる。
【0021】
上記のエアバッグクッションはさらに、一端がメインチャンバの上端近傍に接続され、他端がメインチャンバの後端近傍またはシートフレームに接続されるフックストラップを有し、フックストラップは、途中部分がサブチャンバ上を渡っていてもよい。
【0022】
上記のフックストラップによっても、エアバッグクッションの展開挙動を安定させるとともに、その張力を利用してサブチャンバの拘束力を高めることが可能になる。
【0023】
上記のサブチャンバは、乗員の頭部および上腕の前側の範囲に設けられていてもよい。
【0024】
上記構成によれば、サブチャンバを利用して乗員の頭部および上腕を拘束することが可能になる。
【0025】
上記のメインチャンバは、サブチャンバの後方であって乗員の肩付近が位置する範囲に非膨張部を有してもよい。
【0026】
上記構成によれば、非膨張部によって形成される窪みに乗員の肩付近を収めることで、サブチャンバによる頭部等の拘束を行いやすくすることができる。
【0027】
上記の主軸は、上方から見て、車両用シートの前後方向に対して30°から45°の範囲内の角度を有してもよい。
【0028】
上記構成のエアバッグクッションによっても、乗員からの荷重を効率よく吸収することが可能になる。
【0029】
当該車両用サイドエアバッグ装置はさらに、シートバック内のシートフレームの周囲に配置されるシートパッドを備え、シートパッドは、収納形態のエアバッグクッションの前方に所定の脆弱部を有してもよい。
【0030】
上記の脆弱部を設けることで、エアバッグクッションをより円滑に膨張展開させることが可能になる。
【0031】
上記のエアバッグクッションはさらに、メインチャンバのうち膨張展開したときに車両用シートに正規の姿勢で着座した乗員の前方に位置する範囲に設けられてメインチャンバから車両用シート側に突出して膨張展開するサブチャンバと、メインチャンバの後端近傍とサイドフレームとにかけ渡されるリアストラップと、メインチャンバのうち膨張展開したときにシートバックよりも前方の上端近傍とシートフレームの上端近傍とにかけ渡される第1テザーと、メインチャンバのうち上下方向中央よりも下方の箇所とメインチャンバまたはシートフレームのうち下方の箇所よりも上方の箇所とにかけ渡される第2テザーと、を有し、サブチャンバは、乗員の頭部および上腕の前側の範囲に設けられていてもよい。
【0032】
上記構成においても、サブチャンバを利用して乗員を拘束すると共に、リアストラップや各テザーを利用してエアバッグクッションの展開挙動を安定させ、拘束力も向上させることが可能になる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、エアバッグクッションの乗員拘束性能を向上させることが可能な車両用サイドエアバッグ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の実施形態に係る車両用サイドエアバッグ装置を例示した図である。
図2図1(b)のエアバッグクッションを各方向から例示した図である。
図3図1(b)のサイドエアバッグ装置を各方向から例示した図である。
図4図3(a)のサイドエアバッグ装置が乗員を拘束する過程を例示した図である。
図5図4のサイドエアバッグ装置を別方向から例示した図である。
図6図4のサイドエアバッグ装置をさらに別方向から例示した図である。
図7図1(a)のサイドエアバッグ装置の断面図である。
図8図2のエアバッグクッションの第1変形例を例示した図である。
図9図8のエアバッグクッションを車両前方から見て例示した図である。
図10図2のエアバッグクッションの第2変形例を例示した図である。
図11図2のエアバッグクッションの第3変形例を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0036】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用サイドエアバッグ装置(以下、サイドエアバッグ装置100)を例示した図である。図1(a)は、サイドエアバッグ装置100の可動前の状態を例示した図である。図1(a)および図1(b)では、サイドエアバッグ装置100が適用された前列左側のシート102を、車幅方向左側、すなわち車幅方向外側(車外側)から例示している。
【0037】
図1では、シート102のシートバック104のうち、表皮やシートパッド(例えばウレタン材)を省略し、内部の骨格であるシートフレーム106のみを例示している。
【0038】
本実施形態においては、シート102に対して乗員P1(図4(a)等参照)が正規の姿勢で着座した際に、乗員P1が向いている方向を前方、その反対である背中の方向を後方、乗員P1の右手側を右方向、乗員P1の左手側を左方向とする。さらに、乗員P1が正規の姿勢で着座した際に、乗員P1の頭部方向を上方、乗員P1の足元方向を下方とする。そして、以下の説明において用いる図面では、必要に応じて、上述した正規着座位置の乗員P1を基準とした前後左右上下方向を、矢印F(Forward)、B(Back)、L(Left)、R(Right)、U(Up)、D(Down)で示す。
【0039】
エアバッグモジュール110は、乗員P1(図4(a)等参照)を拘束するエアバッグクッション112と、エアバッグクッション112にガスを供給するインフレータ114を含んで構成されている。
【0040】
サイドフレーム108は、シートフレーム106のうちシートバック104の左右の側面に沿った部位である。本実施形態のエアバッグモジュール110は、シートフレーム106のサイドフレーム108に、シートバック104の幅方向の外側から組み付けられる。
【0041】
本実施形態では、エアバッグモジュール110は、シートバック104の幅方向右側のサイドフレーム108に組み付けている。このシートバック104の幅方向右側は、車両の左側面にて衝突が起こったとき、前列左側のシート102に着座した乗員P1(図4(a)等参照)から見て、衝突に遠い側、いわゆるファーサイドである。反対に、シート102の乗員から見て、車幅方向左側は衝突に近い側、いわゆるニアサイドである。すなわち、当該エアバッグモジュール110は、シートバック104のファーサイドに設置されている。
【0042】
なお、エアバッグモジュール110は、シートバック104の幅方向左側のサイドフレームに組み付けることも可能である。すなわち、エアバッグモジュール110は、シートバック104に対してファーサイドにもニアサイドにも、どちらにも設置可能である。
【0043】
エアバッグクッション112は、ガスで膨張可能な袋状の部材であって、車両に衝撃が発生した場合などの緊急時に膨張展開して、シート102に着座した乗員P1(図4(a)等参照)を拘束する。エアバッグクッション112は、可動前においては巻回または折り畳まれた収納状態になっている。収納状態のエアバッグクッション112は、その上をシートカバー等が覆っているため、外部からは視認不能である。
【0044】
インフレータ114は、ガス発生装置であって、実施形態ではシリンダ型(円筒型)のものを採用している。インフレータ114は、エアバッグクッション112のうち後述するメインチャンバ118の後側下部に、シートバック104に沿って上下方向に長手になる向きで内包されている。インフレータ114は、車両側と電気的に接続され、車両側から衝撃の検知に起因する信号を受けると可動し、エアバッグクッション112にガスを供給する。
【0045】
現在普及しているインフレータには、ガス発生剤が充填されていてこれを燃焼させてガスを発生させるタイプや、圧縮ガスが充填されていて熱を発生させることなくガスを供給するタイプ、または燃焼ガスと圧縮ガスとを両方利用するハイブリッドタイプのものなどがある。インフレータ114としては、いずれのタイプのものも利用可能である。
【0046】
インフレータ114には、その長手方向に離間して、2本のスタッドボルト116a、116bが備えられている。スタッドボルト116a、116bは、エアバッグクッション112のパネルを貫通して外部に露出し、サイドフレーム108に締結固定される。エアバッグクッション112も、スタッドボルト116a、116bのサイドフレーム108への締結を利用して、サイドフレーム108に取り付けられている。
【0047】
図1(b)は、図1(a)のサイドエアバッグ装置100の可動後の状態を例示した図である。サイドエアバッグ装置100は、各種センサおよび所定の電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)を介して衝突を検知または予測すると、エアバッグモジュール110を可動させる。
【0048】
インフレータ114は、上述したECU等から送られた可動信号に起因してガスを噴出する。エアバッグクッション112は、インフレータ114からのガスを利用してシートバック104の表皮等を退け、室内空間へ膨張展開する。
【0049】
本実施例のエアバッグクッション112は、乗員P1(図4(a)等参照)を拘束する膨張部として、広い形状のメインチャンバ118と、メインチャンバ118から乗員側に突出したサブチャンバ120とを備えた構成になっている。
【0050】
メインチャンバ118は、エアバッグクッション112の主要な部分を構成していて、シートバック104から前方に広がるように膨張展開する。メインチャンバ118の外表面は、幅方向左側であって乗員側に位置するメインパネル118aと、幅方向右側であって乗員とは反対側のメインパネル118bが構成している。メインパネル118a、118bは基布から作られていて、縫製や接着などによって袋状のメインチャンバ118を形成している。なお、メインチャンバ118は、OPW(One-Piece Woven)を用いての紡織などによっても形成可能である。
【0051】
サブチャンバ120は、メインチャンバ118の乗員側の上部のやや前側から、乗員側に突出して膨張展開する。本実施例のサブチャンバ120は、主に乗員P1(図5(b)参照)の頭部140から肩144および上腕142付近にかけての部位を拘束する。
【0052】
図2は、図1(b)のエアバッグクッション112を各方向から例示した図である。図2(a)は、図1(b)のエアバッグクッション112を平面に置いた状態で例示した図である。
【0053】
メインチャンバ118は、インフレータ114が後側下部に内蔵されていて、インフレータ114からガスを直接的に受給して膨張展開する。メインチャンバ118の内部には、インフレータ114の取付位置の付近に不図示の補強布なども設置される。
【0054】
図2(b)は、図2(a)のエアバッグクッション112のA-A断面図である。サブチャンバ120は、メインチャンバ118の乗員側のメインパネル118aに接続されている。メインチャンバ118のメインパネル118aとサブチャンバ120のサブパネル120bとの接続領域には、1または複数のガス受給口122が設けられている。サブチャンバ120は、ガス受給口122を利用してメインチャンバ118からガスを受給し、メインチャンバ118からシート102(図1(b)参照)側に突出した状態に膨張展開する。
【0055】
図2(a)に例示するように、当該エアバッグクッション112には、リアストラップ124および複数のテザー(第1テザー126および第2テザー128)が設けられている。これらリアストラップ124および第1テザー126等は、メインチャンバ118等に張力を加えて展開挙動を安定させたり、拘束力を高めたりする機能を有している。
【0056】
リアストラップ124は、紐状の部材であって、メインチャンバ118の後端130の近傍の上部に設けられている。リアストラップ124は、メインチャンバ118の後端130の近傍とサイドフレーム108(図3(b)参照)とにかけ渡され、メインチャンバ118の後端130側を固定して膨張展開時における揺動を抑えている。
【0057】
第1テザー126および第2テザー128は、メインパネル118a(図2(b)参照)等と同様の素材で形成された、細長い三角形の布状の部材である。第1テザー126および第2テザー128は、メインチャンバ118のうち膨張展開したときにシートバック104よりも前方に位置する箇所と、メインチャンバ118のシートバック104(図1(b)参照)側の箇所またはシートフレーム106とにかけ渡され、メインチャンバ118を後方に引っ張ることで展開挙動の安定化や拘束力の向上などを図っている。
【0058】
図3は、図1(b)のサイドエアバッグ装置100を各方向から例示した図である。図3(a)は、図1(b)のサイドエアバッグ装置100を上方から見て例示した図である。
【0059】
本実施形態のエアバッグクッション112は、メインチャンバ118がサイドフレーム108からシートバック104の幅方向外側の斜め前方に延びた状態に膨張展開するよう配置される。このときのエアバッグクッション112の傾斜した姿勢は、上述したリアストラップ124と第1テザー126および第2テザー128(図3(b)参照)によって保持される。
【0060】
図2(a)に例示するように、第1テザー126は、幅広の前端126aが、メインチャンバ118のうちサブチャンバ120の上側の上端近傍に設けられた上側接続部132に接続される。図3(a)に例示するように、第1テザー126の後端126bは、シートフレーム106の上端134の近傍に接続される。
【0061】
第1テザー126は、エアバッグクッション112が膨張展開したときに、メインチャンバ118とシートフレーム106との間で緊張した状態になり、メインチャンバ118の上部を後方かつシートフレーム106側に引っ張る。これによって第1テザー126は、メインチャンバ118の特に上部側の展開挙動を安定させ、かつその張力によってメインチャンバ118の拘束力を高めている。
【0062】
図2(a)に例示するように、第2テザー128は、幅広の前端128aが、メインチャンバ118のうち上下方向中央よりも下方の下端近傍に設けられた下側接続部136に接続される。第2テザー128の後端128bは、下側接続部136よりも上方にて、メインチャンバ118の後端130の近傍から突出するインフレータ114のスタッドボルト116bに引っ掛けて留められる。
【0063】
図3(b)は、図1(b)のサイドエアバッグ装置100を車幅方向左側から見て例示した図である。第2テザー128によれば、膨張展開したメインチャンバ118の下部を後方かつ上側に引っ張り、これによってメインチャンバ118の特に下部側の展開挙動を安定させ、その拘束力を高めることができる。なお、第2テザー128の後端128bは、下側接続部136よりも上方の箇所であれば、サイドフレーム108に直接的に接続させることも可能である。
【0064】
図3(a)に例示するように、上記リアストラップ124、第1テザー126および第2テザー128によって、メインチャンバ118は傾斜した姿勢に膨張展開する。詳しくは、メインチャンバ118は、インフレータ114からガスが供給されたとき、上方から見て、メインチャンバ118の前端129と後端130とを直線的に結ぶ主軸L2が、シートバック104の幅方向外側の斜め前方に延びるよう膨張展開する。
【0065】
本実施形態では、エアバッグクッション112の主軸L1は、上方から見て、シート102の前後方向L1に対する角度αが30°から45°の範囲内になるよう設定されている(45°≧α≧30°)。この角度αは、リアストラップ124や、第1テザー126および第2テザー128の長さを変更することによって調節可能である。
【0066】
図4は、図3(a)のサイドエアバッグ装置100が乗員P1を拘束する過程を例示した図である。図4(a)は、図3(a)のサイドエアバッグ装置100が可動した初期の様子を例示している。
【0067】
上述したように、メインチャンバ118は、主軸L2がシートバック104の幅方向外側の斜め前方に延びるよう膨張展開する。このとき、サブチャンバ120は、メインチャンバ118のうち膨張展開したときにシート102に正規の姿勢で着座した乗員P1の前方の範囲に位置するよう設けられている。
【0068】
図4(b)は、図4(a)の乗員P1が移動したときの様子を例示している。本実施形態では、乗員P1がシート102からエアバッグクッション112に向かって車幅方向に進入したとき、メインチャンバ118を斜めに配置することで、メインチャンバ118を前後方向L1(図4(a)参照)に沿って真っすぐ配置する場合に比べて、メインチャンバ118が乗員P1を拘束するときの動作(ストロークS1)を車幅方向において大きく確保することができる。メインチャンバ118のストロークS1が大きく確保できれば、乗員P1からの荷重の吸収量も増えるため、これによって乗員拘束性能を向上させることができる。
【0069】
当該エアバッグクッション112は、メインチャンバ118が側方から乗員P1に接触しつつ、サブチャンバ120が前方から乗員P1に接触する。特に、サブチャンバ120はメインチャンバ118との間に谷間V1(図4(a)参照)を形成し、エアバッグクッション112は谷間V1によって乗員P1の頭部140を挟み込むように拘束することができる。首を軸にした頭部140の回転は、その角速度ωZが早くなるほど乗員P1の傷害値を高めやすい傾向にあることが知られている。メインチャンバ118とサブチャンバ120とによれば、谷間V1を形成して頭部140との接触面積を増やし、これによって頭部140の回転および角速度ωZを抑えて拘束し、乗員P1の傷害値を下げることが可能になる。
【0070】
エアバッグクッション112の膨張展開時において、リアストラップ124はメインチャンバ118の後端130側を固定し、第1テザー126および第2テザー128はメインチャンバ118をシート102側に引っ張る。これによって、エアバッグクッション112の展開挙動が安定するとともに、エアバッグクッション112による乗員拘束時の荷重の吸収量も増えるため、乗員拘束性能の向上を図ることができる。
【0071】
図5は、図4のサイドエアバッグ装置100を別方向から例示した図である。図5(a)は、図4(a)のサイドエアバッグ装置100等を車幅方向左側から見て例示した図である。
【0072】
図5(a)に例示する乗員P1は、平均的な米国成人男性の50%に適合する体格(身長175cm、体重78kg)を模した試験用のダミー人形AM50を例示したものである。本実施形態では、乗員としてAM50を想定し、このAM50の寸法を基準にしてサブチャンバ120の位置等を設定している。
【0073】
本実施形態では、サブチャンバ120は、膨張展開したメインチャンバ118のうちシート102に正規の姿勢で着座する乗員P1から見て前方に位置する範囲であって、この乗員P1の頭部140から肩144および上腕142にかけての前側の範囲に設けられている。
【0074】
図5(b)は、図4(b)のサイドエアバッグ装置100等を車幅方向左側から見て例示した図である。エアバッグクッション112は、メインチャンバ118とサブチャンバ120とを利用して、乗員P1の頭部140から上腕142にかけての部位を挟み込むように拘束し、これによって乗員P1の上半身の前方への移動や頭部140の前屈などを好適に抑えることができる。
【0075】
緊急時において、乗員P1には上半身が腰を中心にして前方に倒れるような挙動が生じやすく、頭部140の回転は角速度ωYが早くなるほど傷害値が高まる傾向にある。当該エアバッグクッション112であれば、メインチャンバ118とサブチャンバ120とを利用することで、乗員P1の傷害値を抑えて保護することが可能になる。
【0076】
図5(a)に例示するように、メインチャンバ118には、サブチャンバ120の後方であって乗員P1の肩144付近が位置する範囲に、非膨張部146が設けられている。図2(b)に例示するように、非膨張部146は、メインチャンバ118を形成するメインパネル118a、118bが接合した非膨張の領域であり、メインチャンバ118に窪みを形成する。
【0077】
図5(b)に例示するように、非膨張部146によって形成される窪みに乗員P1の肩144付近を収めることで、上述したサブチャンバ120による頭部140等の拘束をより行いやすくすることができる。
【0078】
図6は、図4のサイドエアバッグ装置100をさらに別方向から例示した図である。図6(a)は、図4(a)のサイドエアバッグ装置100等を前方から見て例示した図である。
【0079】
サブチャンバ120は、メインチャンバ118が膨張展開したときに乗員P1の頭部140から肩144および上腕142にかけての前側に位置する範囲に設けられている。よって、サブチャンバ120によれば、乗員P1の頭部140から上腕142にかけての部位を拘束することが可能になっている。
【0080】
図6(b)は、図4(b)のサイドエアバッグ装置100等を前方から見て例示した図である。本実施形態によれば、シート102とは反対側から支持する他の構造物が存在しなくても、第1テザー126および第2テザー128の張力を利用してメインチャンバ118を支え、乗員P1を十全に拘束することができる。特に、第1テザー126および第2テザー128によれば、乗員P1がシート102の幅方向外側に倒れないよう支えると共に頭部140の左右方向への回転および角速度ωXの上昇を防ぎ、傷害値を抑えて拘束することができる。
【0081】
上述したように、メインチャンバ118には乗員P1の肩144付近が位置する範囲に非膨張部146が設けられていて、エアバッグクッション112はメインチャンバ118の非膨張部146の窪みに乗員P1の肩144付近を収めたうえでサブチャンバ120も利用して頭部140等を拘束することができる。すなわち、当該エアバッグクッション112は、谷間V1(図4(a)参照)や非膨張部146を利用して人体に沿った形状で乗員P1に接触しつつ、乗員P1が倒れる方向にストロークS1(図4(b)参照)を大きく確保することができるため、乗員P1の傷害値を効率よく抑えることが可能になっている。
【0082】
本実施形態では、乗員P1(図5(a)参照)としてAM50を想定し、このAM50の寸法を基準にしてサブチャンバ120の位置等を設定している。上述したように、AM50は、成人男性を想定したダミーである。しかしながら、当該サイドエアバッグ装置100のエアバッグクッション112は、成人男性以外にも、成人女性の他、子供の拘束などを想定して設定することも可能である。その場合、例えば女性用のAF50や、子供用のP-0等などのダミーを基準にしてサブチャンバ120の位置を決定することが可能である。このうち、AF5は、米国成人女性の5%に適合する体格(身長145cm、体重45kg)を模した試験用ダミーである。また、子供用のダミーとして、P-0は新生児(身長48cm、体重3kg)、P-3/4は9か月児(身長71cm、体重9kg)、P-1.5は18か月児(身長82cm、体重11kg)、P-3は3歳児(身長98cm、体重15kg)、P-6は6歳児(身長120cm、体重22kg)、P-10は10歳児(身長138cm、体重32kg)を想定した試験用ダミーである。
【0083】
また、本実施形態では、エアバッグクッション112をシートバック104のファーサイドに設けた場合を想定して説明を行った。エアバッグクッション112は、シートバック104のファーサイドに設けられることで、衝突時にファーサイドに移動しようとする乗員P1を好適に拘束することができる。しかし、当然ながら、エアバッグクッション112は、シートバック104のニアサイドに設けてもよく、その場合にもメインチャンバ118およびサブチャンバ120を利用して乗員P1(図4(a)等参照)を好適に拘束することが可能になる。
【0084】
図7は、図1(a)のサイドエアバッグ装置100の断面図である。図7(a)は、図1(a)のサイドエアバッグ装置100のB-B断面図である。図7(a)では、図1(b)では省略したシートバック104内のシートパッド150および表皮152を例示している。
【0085】
当該サイドエアバッグ装置100では、収納形態のエアバッグクッション112の前方に脆弱部154を設けている。脆弱部154は、エアバッグクッション112の膨張展開時に開裂を誘発する部位であって、シートパッド150の境界156や、表皮152のつなぎ目158、さらには表皮のつなぎ目を縫製する破断可能な糸160などを含んで構成されている。
【0086】
図7(b)は、図7(a)のエアバッグクッション112が膨張展開したときの様子を例示した図である。エアバッグクッション112の前方に脆弱部154が設けられていることで、エアバッグクッション112がシートパッド150および表皮152を押圧したとき、脆弱部154は迅速に開裂してエアバッグクッション112を円滑に膨張展開させることが可能になっている。脆弱部154は例えばシートバック104の縁に沿って上下方向に設けることができ、脆弱部154が広く開裂することで上述した第1テザー126および第2テザー128も円滑に展開することが可能になる。
【0087】
(変形例)
図8は、図2のエアバッグクッション108の第1変形例(エアバッグクッション200)を例示した図である。図8以降の各図では、既に説明した構成要素と同じものには同じ符号を付していて、これによって既出の構成要素については説明を省略する。また、以下の説明において、既に説明した構成要素と同じ名称のものについては、例え異なる符号を付していても、特に明記しない場合は同じ機能を有しているものとする。
【0088】
図8(a)は、図2(a)に対応してエアバッグクッション200を例示した図である。エアバッグクッション200は、図2(a)の第2テザー128を省略し、新たに第3テザー202を備えている点で、エアバッグクッション112と構成が異なっている。
【0089】
第3テザー202もまた、メインパネル118a等と同様の素材で形成された、細長い三角形の布状の部材である。第3テザー202は、幅広の前端202aがサブチャンバ120の前端側の前側接続部204に接続される。当該前側接続部204は、メインチャンバ118が膨張展開したときにシートバック104よりも前方に位置する箇所である。
【0090】
第3テザー202の後端202bは、メインチャンバ118の後端130近傍のスタッドボルト116aにかけ渡される。なお、第3テザー202の後端202bは、サイドフレーム108に直接的に接続させることも可能である。
【0091】
図8(b)は、図2(b)に対応してエアバッグクッション200を例示した図である。第3テザー202は、サブチャンバ120を後方に引っ張ることで、エアバッグクッション200の展開挙動の安定化や拘束力の向上などを図ることができる。
【0092】
第3テザー202は、後端202bがメインチャンバ118の後側の下端近傍のスタッドボルト116aに接続されることで、エアバッグクッション200が膨張展開したとき、途中部分202cがサブチャンバ120の下端206を渡った状態に緊張する。すなわち、第3テザー202は、エアバッグクッション200の膨張展開時において、サブチャンバ120の下端206をメインチャンバ118側に押した状態に緊張する。
【0093】
第3テザー202によれば、エアバッグクッション200の展開挙動を安定させるとともに、その張力を利用してサブチャンバ120の拘束力を高めることが可能になる。特に、第3テザー202は、途中部分202cがサブチャンバ120上を渡っていることで、メインチャンバ118とサブチャンバ120との間における乗員P1(図4(b)参照)の頭部140の拘束力を効率よく高めることができる。
【0094】
図9は、図8のエアバッグクッション200を車両前方から見て例示した図である。図9(a)は、図8(a)のエアバッグクッション200等を前方から見て例示した図である。
【0095】
第3テザー202は、サブチャンバ120の前端側を後方に引っ張りつつ、その張力によってサブチャンバ120の下端206近傍をメインチャンバ118側に押圧している。よって、サブチャンバ120の姿勢が安定し、サブチャンバ120は乗員P1の頭部140や上腕142等を十全に拘束することができる。
【0096】
図9(b)は、図8(b)のエアバッグクッション200等を前方から見て例示した図である。本実施形態においても、シート102とは反対側から支持する他の構造物が存在しなくても、第1テザー126および第3テザー202の張力を利用してメインチャンバ118を支え、乗員P1を十全に拘束することができる。第1テザー126および第3テザー202によれば、乗員P1がシート102の幅方向外側に倒れないよう支えると共に、頭部140の左右方向への回転および角速度ωXの上昇を防ぎ、傷害値を抑えて拘束することができる。
【0097】
図10は、図2のエアバッグクッション108の第2変形例(エアバッグクッション220)を例示した図である。図10(a)は、図2(b)に対応してエアバッグクッション220を例示した図である。エアバッグクッション220は、図2(a)の第2テザー128を省略し、新たにフックストラップ222を備えている点で、エアバッグクッション112と構成が異なっている。
【0098】
フックストラップ222は、サブチャンバ120を押さえる紐状の部材であって、一端222aがメインチャンバ118の上端近傍に接続され、他端222bがメインチャンバ118の後端130近傍のスタッドボルト116aに接続される。フックストラップ222は、接続部224によってサブチャンバ120の下端206近傍に接続されていて、これによって途中部分222cがサブチャンバ120上を上下方向に渡った構成になっている。なお、フックストラップ222の他端222bは、サブフレーム108に直接的に接続させることも可能である。
【0099】
図10(b)は、図3(b)に対応してエアバッグクッション220を例示した図である。図10(b)に例示するように、フックストラップ222は、エアバッグクッション220が膨張展開したときに緊張し、途中部分222cによってサブチャンバ120をメインチャンバ118側に押さえることができる。フックストラップ222によっても、第3テザー202(図8(b)参照)と同様に、エアバッグクッション220の展開挙動を安定させるとともに、サブチャンバ120の拘束力を高めて乗員P1(図9(b)等参照)の頭部140および上腕142等を十全に拘束することが可能になる。
【0100】
図11は、図2のエアバッグクッション108の第3変形例(エアバッグクッション240)を例示した図である。図11(a)は、図2(a)に対応してエアバッグクッション240を例示した図である。エアバッグクッション240は、エアバッグクッション112に比べて、パネル構成が簡略化されている。
【0101】
エアバッグクッション240は、メインチャンバ118と、サブチャンバ242とを備えた構成になっている。サブチャンバ242もまた、乗員P1(図4(b)等参照)の頭部140および上腕142付近を拘束することが可能になっている。なお、エアバッグクッション240もまた、上述したリアストラップ124、第1テザー126、第2テザー128、さらには図8(a)の第3テザー202や、図10(a)のフックストラップ222などを備えることができる。
【0102】
図11(b)は、図11(a)のエアバッグクッション112のC-C断面図である。サブチャンバ242は、サブパネル242a、242bを含んで構成されている。特に、サブパネル242aはメインパネル118a、118bと共に縫製されたうえ、サブパネル242bはサブパネル120b(図2(b)参照)に比べて形状が省略された構成になっている。
【0103】
サブチャンバ242は、サブチャンバ120(図2(b)参照)と同様にメインチャンバ118からシート102側に突出するよう形成されつつ、サブチャンバ120に比べてパネル構成が簡略化されている。よって、エアバッグクッション240は、材料コストを抑えることが可能になっている。
【0104】
当該エアバッグクッション240においても、エアバッグクッション112(図4(b)参照)と同様に、メインチャンバ118とサブチャンバ242とによって乗員P1の頭部140、肩144、および上腕142などを挟み込むように拘束し、これによって乗員P1の上半身の移動や頭部140の前屈などを好適に抑えることが可能である。
【0105】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、以上に述べた実施形態は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施または遂行できる。特に本願明細書中に限定される主旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。
【0106】
したがって、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、車両用シートに着座した乗員を拘束する車両用サイドエアバッグ装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0108】
100…サイドエアバッグ装置、102…シート、104…シートバック、106…シートフレーム、108…サイドフレーム、110…エアバッグモジュール、112…エアバッグクッション、114…インフレータ、116a、116b…スタッドボルト、118…メインチャンバ、118a、118b…メインパネル、120…サブチャンバ、120a、120b…サブパネル、122…ガス受給口、124…リアストラップ、126…第1テザー、126a…前端、126b…後端、128…第2テザー、128a…前端、128b…後端、129…前端、130…後端、132…上側接続部、134…上端、136…下側接続部、140…頭部、142…上腕、144…肩、146…非膨張部、150…シートパッド、152…表皮、154…脆弱部、156…境界、158…つなぎ目、160…糸、L1…前後方向、L2…主軸、P1…乗員、S1…ストローク、V1…谷間、200…エアバッグクッション、202…第3テザー、202a…前端、202b…後端、202c…途中部分、204…前側接続部、206…下端、220…エアバッグクッション、222…フックストラップ、222a…一端、222b…他端、222c…途中部分、224…接続部、240…エアバッグクッション、242…サブチャンバ
図1
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