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特開2024-108384車両用パワーウィンドウシステム、車両用パワーウィンドウ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108384
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】車両用パワーウィンドウシステム、車両用パワーウィンドウ装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/695 20150101AFI20240805BHJP
   H02P 5/46 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
E05F15/695
H02P5/46 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012718
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】ニデックモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101786
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 秀行
(72)【発明者】
【氏名】永田 達樹
(72)【発明者】
【氏名】野村 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】小野 航太朗
(72)【発明者】
【氏名】林 雅明
(72)【発明者】
【氏名】松▲崎▼ 慎也
【テーマコード(参考)】
2E052
5H572
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052BA01
2E052CA06
2E052EB01
2E052LA01
5H572AA03
5H572BB07
5H572HA04
5H572HC07
5H572JJ03
5H572JJ17
5H572LL24
5H572LL46
5H572MM01
5H572MM09
(57)【要約】
【課題】各席から運転席へ送られる席情報に異常があった場合でも、ウィンドウロック機能を維持できるようにする。
【解決手段】パワーウィンドウシステム100は、運転席に設けられた運転席パワーウィンドウ装置1と、運転席以外の席に設けられたパワーウィンドウ装置2~4と、これらを接続するネットワークNとから構成される。運転席パワーウィンドウ装置1の制御部10は、他席のパワーウィンドウ装置2~4による窓の開閉制御に必要なパラメータ12aが記憶されたメモリ12を有しており、パワーウィンドウ装置2~4から送信された席情報に基づいて、必要なパラメータを当該席のパワーウィンドウ装置へ配信する。席情報に異常があった場合、運転席パワーウィンドウ装置1は、ウィンドウロックスイッチ19の操作状態に応じたウィンドウロックの有効または無効を、ネットワークNを介してパワーウィンドウ装置2~4の全てに通知する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転席に対応して設けられた第1パワーウィンドウ装置と、
車両の運転席以外の席に対応して設けられた第2パワーウィンドウ装置と、
前記第1パワーウィンドウ装置と前記第2パワーウィンドウ装置とを接続するネットワークと、を備え、
前記第1パワーウィンドウ装置は、
運転席の窓の開閉を操作する運転席スイッチと、
運転席以外の窓の開閉を操作する他席スイッチと、
前記運転席スイッチの操作に基づいて運転席の窓の開閉を行う第1モータと、
前記第1パワーウィンドウ装置の動作を制御するとともに、前記ネットワークを介して前記第2パワーウィンドウ装置との間で双方向に通信を行う第1制御部と、を含み、
前記第2パワーウィンドウ装置は、
当該装置に対応する席の窓の開閉を操作する自席スイッチと、
前記自席スイッチの操作に基づいて当該席の窓の開閉を行う第2モータと、
前記第2パワーウィンドウ装置の動作を制御するとともに、前記ネットワークを介して前記第1パワーウィンドウ装置との間で双方向に通信を行う第2制御部と、を含み、
前記第1制御部は、前記第2パワーウィンドウ装置による窓の開閉制御に必要なパラメータがあらかじめ記憶されたメモリを有しており、
前記第2制御部は、前記第2パワーウィンドウ装置に対応する席の席情報を、前記ネットワークを介して前記第1制御部へ送信し、
前記第1制御部は、前記第2制御部から前記席情報を受信すると、当該席情報に対応するパラメータを前記メモリから読み出し、当該パラメータを前記ネットワークを介して、前記席情報を送信した前記第2制御部へ送信する、車両用パワーウィンドウシステムにおいて、
前記第1パワーウィンドウ装置は、前記第2パワーウィンドウ装置における前記自席スイッチの操作を有効または無効にするためのウィンドウロックスイッチを有しており、
前記第1制御部は、前記第2制御部から受信した前記席情報に異常がある場合に、前記ウィンドウロックスイッチの操作状態に応じたウィンドウロックの有効または無効を、前記ネットワークを介して、運転席以外の全ての席に対応する前記第2パワーウィンドウ装置へ通知する、ことを特徴とする車両用パワーウィンドウシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用パワーウィンドウシステムにおいて、
前記第2制御部は、
前記ウィンドウロックが有効な場合は、前記自席スイッチの操作に基づく窓の開閉動作を禁止し、
前記ウィンドウロックが無効な場合は、前記自席スイッチの操作に基づく窓の開閉動作を許可する、ことを特徴とする車両用パワーウィンドウシステム。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用パワーウィンドウシステムにおいて、
前記第2制御部は、
前記ウィンドウロックが無効な場合は、前記自席スイッチでマニュアル操作が行われたことに基づいて、手動で窓を開閉するマニュアル動作を許可する、ことを特徴とする車両用パワーウィンドウシステム。
【請求項4】
請求項2に記載の車両用パワーウィンドウシステムにおいて、
前記第2制御部は、
前記ウィンドウロックが無効な場合に、前記自席スイッチでオート操作が行われると、自動で窓を開閉するオート動作を禁止する、ことを特徴とする車両用パワーウィンドウシステム。
【請求項5】
請求項2に記載の車両用パワーウィンドウシステムにおいて、
前記第2制御部は、
前記ウィンドウロックが無効な場合に、前記自席スイッチでオート操作が行われると、手動で窓を開閉するマニュアル動作を許可する、ことを特徴とする車両用パワーウィンドウシステム。
【請求項6】
請求項2に記載の車両用パワーウィンドウシステムにおいて、
前記第2制御部は、
前記ウィンドウロックが無効な場合に、前記自席スイッチでオート操作が行われると、窓を限られた量だけ開閉する寸動動作を許可する、ことを特徴とする車両用パワーウィンドウシステム。
【請求項7】
請求項1に記載の車両用パワーウィンドウシステムにおいて、
前記第1制御部は、
異常な席情報を送信した前記第2制御部には前記パラメータを送信せず、
正常な席情報を送信した前記第2制御部には前記パラメータを送信する、ことを特徴とする車両用パワーウィンドウシステム。
【請求項8】
車両の運転席に対応して設けられ、運転席以外の席に対応して設けられた他のパワーウィンドウ装置とネットワークで接続されるパワーウィンドウ装置であって、
運転席の窓の開閉を操作する運転席スイッチと、
運転席以外の窓の開閉を操作する他席スイッチと、
前記運転席スイッチの操作に基づいて運転席の窓の開閉を行うモータと、
当該パワーウィンドウ装置の動作を制御するとともに、前記ネットワークを介して前記他のパワーウィンドウ装置との間で双方向に通信を行う制御部と、を含み、
前記制御部は、
前記他のパワーウィンドウ装置による窓の開閉制御に必要なパラメータがあらかじめ記憶されたメモリを有しており、
前記他のパワーウィンドウ装置から、当該装置に対応する席の席情報を受信すると、前記席情報に対応するパラメータを前記メモリから読み出し、当該パラメータを前記ネットワークを介して、前記席情報を送信した前記他のパワーウィンドウ装置へ送信する、車両用パワーウィンドウ装置において、
前記他のパワーウィンドウ装置に設けられた窓の開閉を操作するスイッチの操作を有効または無効にするためのウィンドウロックスイッチを有し、
前記制御部は、前記他のパワーウィンドウ装置から受信した前記席情報に異常がある場合に、前記ウィンドウロックスイッチの操作状態に応じたウィンドウロックの有効または無効を、前記ネットワークを介して、運転席以外の全ての席に対応する前記他のパワーウィンドウ装置へ通知する、ことを特徴とする車両用パワーウィンドウ装置。
【請求項9】
車両の運転席以外の席に対応して設けられ、運転席に対応して設けられた他のパワーウィンドウ装置とネットワークで接続されるパワーウィンドウ装置であって、
自席の窓の開閉を操作する自席スイッチと、
前記自席スイッチの操作に基づいて自席の窓の開閉を行うモータと、
当該パワーウィンドウ装置の動作を制御するとともに、前記ネットワークを介して前記他のパワーウィンドウ装置との間で双方向に通信を行う制御部と、を含み、
前記制御部は、
自席の席情報を前記ネットワークを介して、前記他のパワーウィンドウ装置へ送信し、
前記他のパワーウィンドウ装置から、自席の窓の開閉制御に必要なパラメータを受信する、車両用パワーウィンドウ装置において、
前記他のパワーウィンドウ装置が受信した前記席情報に異常がある場合に、前記他のパワーウィンドウ装置に設けられた、前記自席スイッチの操作を有効または無効にするためのウィンドウロックスイッチの操作状態に応じたウィンドウロックの有効または無効を、前記ネットワークを介して前記他のパワーウィンドウ装置から受信する、ことを特徴とする車両用パワーウィンドウ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチの操作に基づいて車両の窓をモータにより開閉するパワーウィンドウシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば自動四輪車においては、窓の開閉を操作するスイッチと、このスイッチの操作により開閉機構を介して窓の開閉を行うモータと、窓の開閉動作を制御する制御部とを有するパワーウィンドウ装置が、運転席・助手席・左後席・右後席の各席に対応して設けられている。運転席に設けられたパワーウィンドウ装置には、運転席の窓を開閉するためのスイッチのほか、助手席・左後席・右後席の窓を遠隔操作で開閉するためのスイッチが備わっている。また、助手席・左後席・右後席に設けられたパワーウィンドウ装置には、それぞれの席の窓のみを開閉するためのスイッチが備わっている。運転席のパワーウィンドウ装置と、助手席・左後席・右後席のパワーウィンドウ装置とは、LIN(Local Interconnect Network)などのネットワークにより接続されており、これらのパワーウィンドウ装置とネットワークによって、パワーウィンドウシステムが構成されている。特許文献1~5には、このようなパワーウィンドウシステムの具体例が開示されている。
【0003】
また、自動四輪車等においては、運転席以外の席、特に後部座席において、子どもや幼児が操作スイッチを勝手に操作すると、窓が閉じて手や首などが挟まれるおそれがある。そこで、これを回避するために、運転席以外の席におけるスイッチの操作を無効とするためのウィンドウロックスイッチが、運転席のパワーウィンドウ装置に設けられる。特許文献6および特許文献7には、このようなウィンドウロックスイッチを備えたパワーウィンドウ装置が記載されている。
【0004】
一般にパワーウィンドウ装置においては、モータと制御部とが一体化されたモータモジュールが用いられる。この場合、パワーウィンドウ装置は車両に複数搭載されることから、1台の車両につき同一の仕様および性能を有する複数のモータモジュールが用いられることが多い。しかるに、制御対象である各席の窓やその開閉機構には、形状や部材同士の摩擦係数などの物理的な個体差が存在する。たとえば、車両の前席の窓ガラスと後席の窓ガラスとでは形状や重量が異なり、窓ガラスと周辺部材(開閉機構や窓枠など)との間の摩擦係数も異なる。また、車種が異なる車両についても、ある車両の窓ガラスと他の車両の窓ガラスとでは形状や重量が異なり、窓ガラスと周辺部材との間の摩擦係数も車両間で異なる。
【0005】
したがって、そのような個体差のある制御対象を、同一の仕様および性能を有するモータモジュールにより動作させるには、各モータモジュールがそれぞれに対応する制御対象を認識して、当該制御対象が正しく動作するようにモータを制御しなければならない。このため、各モータモジュールのメモリに、対応する制御対象の制御用パラメータを予め記憶させておくことが考えられる。しかしながら、このパラメータは制御対象ごとに異なるので、パラメータを記憶した複数のモータモジュールを管理するにあたっては、モータモジュールごとに異なる品番を付与して別々に管理する必要があり、取り扱いが煩雑になる。
【0006】
この対策として、特許文献1~3に記載されているように、各席の制御対象の制御用パラメータを、運転席のパワーウィンドウ装置のメモリに記憶させておくことが考えられる。特許文献1においては、運転席のパワーウィンドウ装置は、各席のパワーウィンドウ装置から送られてくる席情報、すなわちその席を特定するための情報に基づいて、当該席の制御対象に対応するパラメータをメモリから読み出し、これを各席のパワーウィンドウ装置へ配信する。このようにすれば、各モータモジュールのメモリにパラメータを記憶させておく必要がないので、同一の仕様および性能を有する複数のモータモジュールを用いた場合でも、モジュールごとに品番を異ならせて別々に管理することが不要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2022-47413号公報
【特許文献2】特開2022-47414号公報
【特許文献3】特開2022-48663号公報
【特許文献4】特開2022-135493号公報
【特許文献5】特開2009-150194号公報
【特許文献6】特開2022-161132号公報
【特許文献7】特開2000-352268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1~3のように、運転席のパワーウィンドウ装置が、各席から送られてくる席情報に基づいて、制御用パラメータを各席へ配信するシステムにおいて、席情報にエラーなどの異常があった場合、運転席のパワーウィンドウ装置は、パラメータを配信する席を特定することができず、配信が不可能となる。従来では、このような場合に運転席とそれ以外の席との間の通信が不成立となり、ウィンドウロックを含む全ての機能が不能状態となっていた。
【0009】
本発明は、各席から運転席へ送られる席情報に異常があった場合でも、ウィンドウロック機能を維持することが可能なパワーウィンドウシステムの提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のパワーウィンドウシステムは、車両の運転席に対応して設けられた第1パワーウィンドウ装置と、車両の運転席以外の席に対応して設けられた第2パワーウィンドウ装置と、第1パワーウィンドウ装置と第2パワーウィンドウ装置とを接続するネットワークとを備えている。
第1パワーウィンドウ装置は、運転席の窓の開閉を操作する運転席スイッチと、運転席以外の窓の開閉を操作する他席スイッチと、運転席スイッチの操作に基づいて運転席の窓の開閉を行う第1モータと、第1パワーウィンドウ装置の動作を制御するとともに、ネットワークを介して第2パワーウィンドウ装置との間で双方向に通信を行う第1制御部とを含む。
第2パワーウィンドウ装置は、当該装置に対応する席の窓の開閉を操作する自席スイッチと、この自席スイッチの操作に基づいて当該席の窓の開閉を行う第2モータと、第2パワーウィンドウ装置の動作を制御するとともに、ネットワークを介して第1パワーウィンドウ装置との間で双方向に通信を行う第2制御部とを含む。
第1制御部は、第2パワーウィンドウ装置による窓の開閉制御に必要なパラメータがあらかじめ記憶されたメモリを有している。第2制御部は、第2パワーウィンドウ装置に対応する席の席情報を、ネットワークを介して第1制御部へ送信する。第1制御部は、第2制御部から席情報を受信すると、当該席情報に対応するパラメータをメモリから読み出し、当該パラメータをネットワークを介して、席情報を送信した第2制御部へ送信する。
以上のようなパワーウィンドウシステムにおいて、第1パワーウィンドウ装置は、第2パワーウィンドウ装置における自席スイッチの操作を有効または無効にするためのウィンドウロックスイッチを有している。そして、第1制御部は、第2制御部から受信した席情報に異常がある場合に、ウィンドウロックスイッチの操作状態に応じたウィンドウロックの有効または無効を、ネットワークを介して、運転席以外の全ての席に対応する第2パワーウィンドウ装置へ通知する。
【0011】
このようにすれば、運転席以外の席に設けられた第2パワーウィンドウ装置から、運転席に設けられた第1パワーウィンドウ装置へ送信された席情報に異常があった場合に、ウィンドウロックスイッチの操作状態に応じたウィンドウロックの有効または無効が、第2パワーウィンドウ装置の全てに通知される。このため、第2パワーウィンドウ装置においては、ウィンドウロックの無効の通知を受信した場合、自席スイッチの操作に基づいて、所定の窓開閉動作を行うことができる。これにより、従来のように全ての機能が不能状態となることはなく、安全確保に必要なウィンドウロック機能を維持することができる。
【0012】
本発明において、第2制御部は、ウィンドウロックが有効な場合は、自席スイッチの操作に基づく窓の開閉動作を禁止し、ウィンドウロックが無効な場合は、自席スイッチの操作に基づく窓の開閉動作を許可してもよい。
【0013】
本発明において、第2制御部は、ウィンドウロックが無効な場合は、自席スイッチでマニュアル操作が行われたことに基づいて、手動で窓を開閉するマニュアル動作を許可してもよい。
【0014】
本発明において、第2制御部は、ウィンドウロックが無効な場合に、自席スイッチでオート操作が行われると、自動で窓を開閉するオート動作を禁止してもよい。
【0015】
本発明において、第2制御部は、ウィンドウロックが無効な場合に、自席スイッチでオート操作が行われると、手動で窓を開閉するマニュアル動作を許可してもよい。
【0016】
本発明において、第2制御部は、ウィンドウロックが無効な場合に、自席スイッチでオート操作が行われると、窓を限られた量だけ開閉する寸動動作を許可してもよい。
【0017】
本発明において、第1制御部は、異常な席情報を送信した第2制御部にはパラメータを送信せず、正常な席情報を送信した第2制御部にはパラメータを送信してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、各席から運転席へ送られる席情報に異常があった場合でも、ウィンドウロック機能を維持することが可能なパワーウィンドウシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明による車両用パワーウィンドウシステムを示す図である。
図2】メモリに記憶されているパラメータを示す図である。
図3】席の判定方法を説明する図である。
図4】運転席と他席との間で行われる席情報とパラメータの送受信を説明する図である。
図5】席情報が異常である場合の送受信状態を示す図である。
図6】席情報が異常である場合の措置の例を示す図である。
図7】席情報が異常である場合の措置の他の例を示す図である。
図8】運転席のパワーウィンドウ装置の動作フローチャートである。
図9】他席のパワーウィンドウ装置の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。各図を通して同一の部分または対応する部分には、同一符号を付してある。また、図中の「PW」は「パワーウィンドウ装置」の略語であり、「WL」は「ウィンドウロック」の略語である。
【0021】
図1は、本発明による車両用パワーウィンドウシステム(以下、単に「パワーウィンドウシステム」という。)の構成図である。パワーウィンドウシステム100は、自動四輪車からなる車両に搭載されている。パワーウィンドウシステム100は、車両の運転席に対応して設けられた運転席パワーウィンドウ装置1と、運転席以外の席に対応して設けられた他席パワーウィンドウ装置2~4と、これらのパワーウィンドウ装置1~4を接続するネットワークNとを備えている。
【0022】
他席パワーウィンドウ装置は、助手席に対応して設けられた助手席パワーウィンドウ装置2、後左席に対応して設けられた後左席パワーウィンドウ装置3、および後右席に対応して設けられた後右席パワーウィンドウ装置4からなる。各パワーウィンドウ装置1~4は、ネットワークNを介してECU(Electronic Control Unit)50に接続されている。ECU50は、車両の動作を制御する電子制御ユニットであって、各パワーウィンドウ装置1~4の上位装置に相当する。ネットワークNは、冒頭でも示したLIN(Local Interconnect Network)などから構成されている。
【0023】
運転席パワーウィンドウ装置1には、制御部10、各席スイッチ13、モータ18、およびウィンドウロックスイッチ19が備わっている。制御部10は、CPU11とメモリ12を有しており、運転席パワーウィンドウ装置1の動作を制御するとともに、ネットワークNを介して、他席のパワーウィンドウ装置2~4との間で双方向に通信を行う。メモリ12には、各席の窓の開閉制御に必要なパラメータ12aがあらかじめ記憶されている。このパラメータ12aの詳細については後述する。また、制御部10には、各席スイッチ13が接続されるポートP1が設けられている。
【0024】
各席スイッチ13には、運転席の窓の開閉を操作する運転席スイッチ14と、助手席の窓の開閉を操作する助手席スイッチ15と、後左席の窓の開閉を操作する後左席スイッチ16と、後右席の窓の開閉を操作する後右席スイッチ17とが備わっている。
【0025】
モータ18は、運転席の窓を開閉するための開閉機構(図示省略)に連結されていて、一方向に回転することにより開閉機構を介して窓を開け、他方向に回転することにより開閉機構を介して窓を閉じる。本実施形態では、モータ18は制御部10と一体化されてモータモジュールを構成している。
【0026】
ウィンドウロックスイッチ19は、運転席以外の各席における窓開閉用スイッチの操作を有効または無効にするためのスイッチである。ウィンドウロックスイッチ19がONの状態では、ウィンドウロックが有効となって、後述する助手席スイッチ23、後左席スイッチ33、および後右席スイッチ43の操作が無効化され、窓の開閉動作が禁止される。また、ウィンドウロックスイッチ19がOFFの状態では、ウィンドウロックが無効となって、上記各スイッチ23、33、43の操作が有効となり、窓の開閉動作が許可される。
【0027】
助手席パワーウィンドウ装置2には、制御部20、助手席スイッチ23、およびモータ24が備わっている。制御部20は、CPU21とメモリ22を有しており、助手席パワーウィンドウ装置2の動作を制御するとともに、ネットワークNを介して、運転席パワーウィンドウ装置1の制御部10との間で双方向に通信を行う。メモリ22には、前述したパラメータはあらかじめ記憶されていないが、運転席パワーウィンドウ装置1からネットワークNを通して配信されるパラメータを格納する領域が設けられている。また、制御部20には、助手席スイッチ23が接続されるポートP2が設けられている。
【0028】
助手席スイッチ23は、助手席の窓の開閉を操作するスイッチであり、運転席に設けられている助手席スイッチ15と同様の機能を有している。モータ24は、助手席の窓を開閉するための開閉機構(図示省略)に連結されていて、一方向に回転することにより開閉機構を介して窓を開け、他方向に回転することにより開閉機構を介して窓を閉じる。このモータ24も、制御部20と一体化されてモータモジュールを構成している。
【0029】
後左席パワーウィンドウ装置3には、制御部30、後左席スイッチ33、およびモータ34が備わっている。制御部30は、CPU31とメモリ32を有しており、後左席パワーウィンドウ装置3の動作を制御するとともに、ネットワークNを介して、運転席パワーウィンドウ装置1の制御部10との間で双方向に通信を行う。メモリ32には、前述したパラメータはあらかじめ記憶されていないが、運転席パワーウィンドウ装置1からネットワークNを通して配信されるパラメータを格納する領域が設けられている。また、制御部30には、後左席スイッチ33が接続されるポートP3が設けられている。
【0030】
後左席スイッチ33は、後左席の窓の開閉を操作するスイッチであり、運転席に設けられている後左席スイッチ16と同様の機能を有している。モータ34は、後左席の窓を開閉するための開閉機構(図示省略)に連結されていて、一方向に回転することにより開閉機構を介して窓を開け、他方向に回転することにより開閉機構を介して窓を閉じる。このモータ34も、制御部30と一体化されてモータモジュールを構成している。
【0031】
後右席パワーウィンドウ装置4には、制御部40、後右席スイッチ43、およびモータ44が備わっている。制御部40は、CPU41とメモリ42を有しており、後右席パワーウィンドウ装置4の動作を制御するとともに、ネットワークNを介して、運転席パワーウィンドウ装置1の制御部10との間で双方向に通信を行う。メモリ42には、前述したパラメータはあらかじめ記憶されていないが、運転席パワーウィンドウ装置1からネットワークNを通して配信されるパラメータを格納する領域が設けられている。また、制御部40には、後右席スイッチ43が接続されるポートP4が設けられている。
【0032】
後右席スイッチ43は、後右席の窓の開閉を操作するスイッチであり、運転席に設けられている後右席スイッチ17と同様の機能を有している。モータ44は、後右席の窓を開閉するための開閉機構(図示省略)に連結されていて、一方向に回転することにより開閉機構を介して窓を開け、他方向に回転することにより開閉機構を介して窓を閉じる。このモータ44も、制御部40と一体化されてモータモジュールを構成している。
【0033】
以上のパワーウィンドウシステム100において、運転席パワーウィンドウ装置1は、本発明の「第1パワーウィンドウ装置」に相当し、助手席パワーウィンドウ装置2、後左席パワーウィンドウ装置3、および後右席パワーウィンドウ装置4は、本発明の「第2パワーウィンドウ装置」に相当する。また、制御部10は、本発明の「第1制御部」に相当し、制御部20、30、40は、本発明の「第2制御部」に相当する。
【0034】
また、運転席における助手席スイッチ15、後左席スイッチ16、および後右席スイッチ17は、本発明の「他席スイッチ」に相当する。また、運転席以外の席における助手席スイッチ23、後左席スイッチ33、および後右席スイッチ43は、本発明の「自席スイッチ」に相当する。また、モータ18は、本発明の「第1モータ」に相当し、モータ24、34、44は、本発明の「第2モータ」に相当する。
【0035】
図2は、運転席パワーウィンドウ装置1のメモリ12に記憶されている、制御用のパラメータ12aの例を示している。パラメータ12aは、車両情報と対応付けて、テーブル形式でメモリ12に記憶されている。制御部10は、このパラメータテーブルを、ECU50からネットワークNを経由して取得する。
【0036】
図2において、車両情報の欄の「車両01、車両02、・・・車両12」は、車種を表している。また、「前席」は運転席と助手席を表しており、「後席」は後左席と後右席を表している。そして、各車種ごとに、前席用と後席用のパラメータが設定されている。ここでは、前席の左右(運転席と助手席)で窓機構に差異がないことを前提としているため、運転席と助手席とでパラメータは区別していない。また、後席の左右(後左席と後右席)でも窓機構に差異がないことを前提としているため、後左席と後右席とでパラメータは区別していない。したがって、1つの車両につき、前席用と後席用の2種類のパラメータが設定されている。
【0037】
パラメータ1、2、3、4・・・の具体例としては、たとえば、窓ガラスの重量、窓ガラスと周辺部材との間の摩擦係数、窓ガラスの移動量、窓ガラスの移動速度、異物の挟み込み検出に必要な閾値などが挙げられる。
【0038】
次に、運転席パワーウィンドウ装置1が、メモリ12に記憶されているパラメータ12aを、他のパワーウィンドウ装置2~4へ配信する場合の手順について説明する。このパラメータ12aの配信は、パワーウィンドウシステム100の初期設定時に行われる。
【0039】
初期設定時には、各パワーウィンドウ装置1~4において、モータモジュールとスイッチとが接続される。詳しくは、運転席パワーウィンドウ装置1では、モータモジュールを構成する制御部10のポートP1に、各席スイッチ13が接続される。このとき、ポートP1には、モータモジュールと各席スイッチ13に跨って設けられた分圧回路(図示省略)と、ポートP1に接続されるハーネス(図示省略)の種類とに応じて決まる電圧が印加される。この電圧値は、図3に示したようにVaからVbの範囲(DR)にあり、これは、パワーウィンドウ装置1の搭載された席が運転席であることを示している。なお、前記の特許文献1~3には、上述した分圧回路とハーネスの具体例が記載されている。
【0040】
また、助手席パワーウィンドウ装置2では、モータモジュールを構成する制御部20のポートP2に、助手席スイッチ23が接続される。このとき、ポートP2には、モータモジュールと助手席スイッチ23に跨って設けられた分圧回路(図示省略)と、ポートP2に接続されるハーネス(図示省略)の種類とに応じて決まる電圧が印加される。この電圧値は、図3に示したようにVcからVdの範囲(AS)にあり、これは、パワーウィンドウ装置2の搭載された席が助手席であることを示している。
【0041】
また、後左席パワーウィンドウ装置3では、モータモジュールを構成する制御部30のポートP3に、後左席スイッチ33が接続される。このとき、ポートP3には、モータモジュールと後左席スイッチ33に跨って設けられた分圧回路(図示省略)と、ポートP3に接続されるハーネス(図示省略)の種類とに応じて決まる電圧が印加される。この電圧値は、図3に示したようにVeからVfの範囲(RL)にあり、これは、パワーウィンドウ装置3の搭載された席が後左席であることを示している。
【0042】
また、後右席パワーウィンドウ装置4では、モータモジュールを構成する制御部40のポートP4に、後右席スイッチ43が接続される。このとき、ポートP4には、モータモジュールと後右席スイッチ43に跨って設けられた分圧回路(図示省略)と、ポートP4に接続されるハーネス(図示省略)の種類とに応じて決まる電圧が印加される。この電圧値は、図3に示したようにVgからVhの範囲(RR)にあり、これは、パワーウィンドウ装置4の搭載された席が後右席であることを示している。
【0043】
このようにして、パワーウィンドウ装置1~4の各制御部10、20、30、40は、ポートP1~P4の印加電圧の値に基づいて、自身の属するパワーウィンドウ装置がどの席に搭載されたものであるかを判定する。したがって、この電圧値は、席を特定するための席情報の一形態である。助手席パワーウィンドウ装置2、後左席パワーウィンドウ装置3、および後右席パワーウィンドウ装置4の各制御部20、30、40は、それぞれの席情報を、ネットワークNを介して運転席パワーウィンドウ装置1の制御部10へ送信する。
【0044】
次に、運転席パワーウィンドウ装置1の制御部10は、ECU50からネットワークNを介して、当該車両の車両情報を取得する。そして、制御部10は、メモリ12のパラメータテーブル(図2)を参照して、パラメータ12aのうち、該当する車両情報に対応する前席および後席のパラメータを読み出す。続いて、制御部10は、読み出した前席のパラメータを、ネットワークNを経由して、助手席パワーウィンドウ装置2の制御部20へ送信するとともに、読み出した後席のパラメータを、ネットワークNを経由して、後左席パワーウィンドウ装置3および後右席パワーウィンドウ装置4の各制御部30、40へ送信する。
【0045】
助手席パワーウィンドウ装置2の制御部20は、運転席パワーウィンドウ装置1から配信された前席のパラメータを受信すると、これをメモリ22の所定領域に格納する。そして、制御部20は、このパラメータに基づいてモータ24を制御し、所定の窓開閉動作を実行する。
【0046】
また、後左席パワーウィンドウ装置3の制御部30は、運転席パワーウィンドウ装置1から配信された後席のパラメータを受信すると、これをメモリ32の所定領域に格納する。そして、制御部30は、このパラメータに基づいてモータ34を制御し、所定の窓開閉動作を実行する。
【0047】
また、後右席パワーウィンドウ装置4の制御部40は、運転席パワーウィンドウ装置1から配信された後席のパラメータを受信すると、これをメモリ42の所定領域に格納する。そして、制御部40は、このパラメータに基づいてモータ44を制御し、所定の窓開閉動作を実行する。
【0048】
なお、運転席パワーウィンドウ装置1の制御部10も、メモリ12に記憶されているパラメータ12aのうち、該当する車両情報に対応する前席のパラメータを読み出し、このパラメータに基づいてモータ18を制御することで、所定の窓開閉動作を実行する。
【0049】
図4および図5は、運転席パワーウィンドウ装置1と他のパワーウィンドウ装置2~4との間で行われる、席情報とパラメータの送受信の様子を示している。図4は、運転席パワーウィンドウ装置1が受信した他のパワーウィンドウ装置2~4からの席情報がすべて正常な場合、すなわち、ポートP2~P4の印加電圧が図3のAS、RL、RRの範囲内にある場合を示している。この場合には、運転席パワーウィンドウ装置1から、他のパワーウィンドウ装置2~4の全てにパラメータが配信される。
【0050】
これに対し、図5は、運転席パワーウィンドウ装置1が受信した席情報のうち、後右席パワーウィンドウ装置4からの席情報が異常な場合、すなわち、ポートP4の印加電圧が、図3のRRの範囲外にある場合を示している。このような異常の原因としては、前述した分圧回路の抵抗に断線や短絡が発生したことなどが考えられる。席情報が異常であれば、運転席パワーウィンドウ装置1から、後右席パワーウィンドウ装置4へのパラメータ配信が行われない。一方、正常な席情報を送信した助手席パワーウィンドウ装置2と後左席パワーウィンドウ装置3に対しては、パラメータの配信が行われる。
【0051】
このように、図5の場合は、席情報の一部が異常であっても、運転席以外の全てのパワーウィンドウ装置2~4へのパラメータ配信を停止するのではなく、正常な席情報を送信したパワーウィンドウ装置2、3へはパラメータ配信を実行することで、システムの機能が制限された縮退動作が継続されることになる。
【0052】
図6および図7は、本発明における縮退動作の例を示している。図6(a)は、上述した図5に相当する例であって、運転席パワーウィンドウ装置1において、各席スイッチ13のうち、運転席以外の他席スイッチ15~17が操作された場合、席情報が正常であれば、操作された他席へパラメータを配信して、当該他席のパワーウィンドウ装置を駆動する。一方、席情報が異常であれば、当該他席へパラメータを配信せず、当該他席のパワーウィンドウ装置を駆動しない。しかし、席情報が正常な他席へはパラメータを配信し、当該他席のパワーウィンドウ装置を駆動する。
【0053】
図6(b)~(d)は、縮退動作が行われない例を示している。上述したように、席情報が異常な場合は当該席にパラメータが配信されないが、パラメータの配信停止は、通信線が物理的に切断されて双方向の通信が不可能となる通信断とは異なる。したがって、運転席パワーウィンドウ装置1から他席のパワーウィンドウ装置2~4へ通信を行うことは可能である。そこで、図6(b)~(d)では、他席の席情報が異常であっても、所定の機能については、運転席から他席への通信に基づいて正常時と同じ機能が担保されるようにしている。以下、詳細に説明する。
【0054】
図6(b)は、運転席パワーウィンドウ装置1のウィンドウロックスイッチ19の操作状態に応じて、他席のパワーウィンドウ装置2~4の動作を許可する例である。ウィンドウロックスイッチ19がONの状態ではウィンドウロックが有効となり、ウィンドウロックスイッチ19がOFFの状態ではウィンドウロックが無効となる。そこで、ウィンドウロックスイッチ19がOFFであれば、そのことを他席のパワーウィンドウ装置2~4へ通知し、各装置の動作を許可する。これにより、他席のパワーウィンドウ装置2~4では、席情報が異常であっても、自席のスイッチ23、33、43を操作することで動作が可能となる。なお、この場合のスイッチ操作は、手動で窓を開閉するマニュアル操作に限られる(自動で窓を開閉するオート操作は禁止)。一方、ウィンドウロックスイッチ19がONであれば、そのことを他席のパワーウィンドウ装置2~4へ通知し、各装置の動作を禁止する。
【0055】
図6(c)は、イグニッションの状態に応じて、他席のパワーウィンドウ装置2~4の動作を許可する例である。運転席パワーウィンドウ装置1は、イグニッションスイッチ(図示省略)がONであれば、他席のパワーウィンドウ装置2~4へ動作許可を通知する。これにより、他席のパワーウィンドウ装置2~4では、席情報が異常であっても、自席のスイッチ23、33、43を操作することで動作が可能となる。この場合のスイッチ操作も、手動で窓を開閉するマニュアル操作に限られる。一方、イグニッションスイッチがOFFであれば、他席のパワーウィンドウ装置2~4へ動作禁止を通知する。
【0056】
図6(d)は、車両のスモールライト(車幅灯)を点灯させたときにドアノブのLEDを点灯させる機能が、席情報が異常な場合でも継続される例である。この場合、席情報が異常な席のドアノブのLEDは、消灯したままにすることも可能である。
【0057】
なお、図6の(a)~(d)に示されている各措置は、適宜組み合わせて運用することができる。また、次に述べる図7の措置と組み合わせて運用することもできる。
【0058】
図7は、運転席以外のパワーウィンドウ装置2~4において、自席のスイッチ23、33、43によりマニュアル操作およびオート操作が行われた場合の、縮退動作の例を示している。席情報が正常な場合は、スイッチ操作どおりの動作が行われる。すなわち、マニュアル操作であれば、手動で窓を開閉するマニュアル動作が実行され、オート操作であれば、自動で窓を開閉するオート動作が実行される。一方、席情報が異常な場合は、マニュアル操作がされると、操作どおりマニュアル動作が実行されるが、オート操作がされると、オート動作は禁止されマニュアル動作のみが許可される。
【0059】
すなわち、オート操作の場合は、席情報の異常により縮退機能が働いて、窓の開閉動作が制限される。このようにした理由は、席情報が異常な席に対しては、パラメータ(挟み込み検出用のパラメータを含む)が配信されないので、オート動作を許可すると、異物の挟み込みが発生した場合にこれを検出することができず、安全が脅かされるためである。一方、マニュアル動作を許可しても、マニュアル動作ではユーザの意思で窓の開閉が行われるので、挟み込みが発生するおそれはない。
【0060】
図8は、運転席パワーウィンドウ装置1の動作の一例を示したフローチャートである。本フローチャートの各ステップは、制御部10のCPU11によって実行される。なお、便宜上、他席のパワーウィンドウ装置2~4で実行される処理も加えてある(破線で示したステップ)。
【0061】
ステップS1において、運転席パワーウィンドウ装置1が他席のパワーウィンドウ装置2~4から席情報を受信すると、ステップS2で当該席情報が正常か否かを判定する。判定の結果、席情報が正常であれば(ステップS2:YES)、ステップS3へ進んで、メモリ12に記憶されているパラメータ12aの中から必要なパラメータを抽出し、これを当該席のパワーウィンドウ装置へ配信する。
【0062】
その後、ステップS4で、他席でスイッチ操作が行われたことを当該席のパワーウィンドウ装置から受信すると(ステップS4:YES)、ステップS5へ進んで、ウィンドウロックが無効か否かを確認する。ウィンドウロックスイッチ19がOFFであれば、ウィンドウロックは無効であり(ステップS5:YES)、この場合は、ステップS6でウィンドウロックの無効を通知する。この無効通知は、他席のパワーウィンドウ装置で受信される(ステップS7)。
【0063】
続いて、ステップS8において、スイッチ操作が行われた他席のパワーウィンドウ装置へ、当該操作に対応した動作を行うよう指示する動作指示を送信する。この動作指示は、他席のパワーウィンドウ装置で受信される(ステップS9)。
【0064】
一方、ステップS5において、ウィンドウロックスイッチ19がONで、ウィンドウロックが有効であれば(ステップS5:NO)、ステップS10でウィンドウロックの有効を通知する。この有効通知は、他席のパワーウィンドウ装置で受信される(ステップS11)。
【0065】
また、ステップS2において、席情報が異常であれば(ステップS2:NO)、ステップS12へ進んで、ウィンドウロックが無効か否かを確認する。そして、ウィンドウロックが無効であれば(ステップS12:YES)、ステップS13でウィンドウロックの無効を通知する。この無効通知は、他席のパワーウィンドウ装置で受信される(ステップS14)。一方、ステップS12において、ウィンドウロックが有効であれば(ステップS12:NO)、ステップS15でウィンドウロックの有効を通知する。この有効通知は、他席のパワーウィンドウ装置で受信される(ステップS16)。
【0066】
なお、ステップS2で席情報が異常であった場合、運転席パワーウィンドウ装置1は、他席のパワーウィンドウ装置2~4からの通信を受信できない状態となっているので、他席でのスイッチ操作の情報を受信することができない。しかし、運転席パワーウィンドウ装置1から他席のパワーウィンドウ装置2~4への通信は可能なため、他席のパワーウィンドウ装置2~4へウィンドウロックの状態を通知することはできる。
【0067】
図9は、他席のパワーウィンドウ装置2~4の動作の一例を示したフローチャートである。本フローチャートの各ステップは、各装置の制御部20、30、40のCPU21、31、41によって実行される。
【0068】
ステップS101では、スイッチ23、33、44の接続によって制御部20、30、40のポートP2~P4に印加される電圧の値から、席情報を取得する(図3)。続いて、ステップS102において、この席情報を運転席パワーウィンドウ装置1へ送信する。次のステップS103では、図8のステップS3において運転席パワーウィンドウ装置1から配信されたパラメータを受信できたか否かを判定する。
【0069】
パラメータを受信できた場合は(ステップS103:YES)、ステップS104へ進んで、運転席パワーウィンドウ装置1から、ウィンドウロックの状態(有効または無効)を受信する。そして、スイッチ23、33、44が操作されると、ステップS105でそのことを判定する。
【0070】
その後、ステップS106へ進み、図8のステップS8において運転席パワーウィンドウ装置1から送信された動作指示を受信したか否かを判定する。動作指示を受信した場合は(ステップS106:YES)、ステップS107において、ステップS104で受信したウィンドウロックの状態が無効か否かを確認する。その結果、ウィンドウロックが無効であれば(ステップS107:YES)、ステップS108に進んで、ステップS105のスイッチ操作に応じた動作を実行する。一方、ウィンドウロックが有効であれば(ステップS107:NO)、ステップS108を実行することなく、処理を終了する。
【0071】
また、ステップS106において、動作指示を受信しなかった場合は(ステップS106:NO)、ステップS109において、一定期間スイッチ操作を判定したか否かを確認する。一定期間スイッチ操作を判定しなかった場合は(ステップS109:NO)、処理を終了する。また、一定期間スイッチ操作を判定した場合は(ステップS109:YES)、ステップS110において、ウィンドウロックの状態が無効か否かを確認する。その結果、ウィンドウロックが無効であれば(ステップS110:YES)、ステップS111に進んで、スイッチ操作に基づくマニュアル動作を実行する。一方、ウィンドウロックが有効であれば(ステップS110:NO)、ステップS111を実行することなく、処理を終了する。
【0072】
また、ステップS103において、パラメータを受信できなかった場合は(ステップS103:NO)、ステップS112へ進んで、運転席パワーウィンドウ装置1から、ウィンドウロックの状態(有効または無効)を受信する。そして、スイッチ23、33、44が操作されると、ステップS113でそのことを判定する。
【0073】
なお、ステップS103でパラメータを受信できなかった場合、すなわち席情報が異常であった場合は、他席のパワーウィンドウ装置2~4は、運転席パワーウィンドウ装置1から個別の情報を受信できない状態となっているので、図8のステップS8の動作指示を受信することはできない。しかし、運転席パワーウィンドウ装置1から他席のパワーウィンドウ装置2~4への通信は可能なため、他席のパワーウィンドウ装置2~4でウィンドウロックの状態を受信することはできる。
【0074】
次に、ステップS114において、一定期間スイッチ操作を判定したか否かを確認する。一定期間スイッチ操作を判定しなかった場合は(ステップS114:NO)、処理を終了する。また、一定期間スイッチ操作を判定した場合は(ステップS114:YES)、ステップS115において、ウィンドウロックの状態が無効か否かを確認する。その結果、ウィンドウロックが無効であれば(ステップS115:YES)、ステップS116に進んで、スイッチ操作に基づくマニュアル動作を実行する。一方、ウィンドウロックが有効であれば(ステップS115:NO)、ステップS116を実行することなく、処理を終了する。
【0075】
上述した実施形態によれば、運転席以外の席に設けられたパワーウィンドウ装置2~4から運転席パワーウィンドウ装置1へ送信された席情報に異常があった場合に、ウィンドウロックスイッチ19の操作状態に応じたウィンドウロックの有効または無効が、運転席以外のパワーウィンドウ装置2~4の全てに通知される。このため、パワーウィンドウ装置2~4においては、ウィンドウロックの無効の通知を受信した場合、スイッチ23、33、43の操作に基づいて、一定の制限の下で、所定の窓開閉動作を行うことができる。たとえば、オート動作は禁止されるが、マニュアル動作は許可される(図7)。
【0076】
また、上述した実施形態によれば、席情報に異常があった場合に、異常な席情報を送信したパワーウィンドウ装置にはパラメータが配信されないが、それ以外のパワーウィンドウ装置にはパラメータが配信される。このため、正常な席情報を送信したパワーウィンドウ装置においては、配信されたパラメータを用いて、通常の動作を実行することができる(図6(a))。
【0077】
その結果、席情報に異常があった場合でも、従来のように全ての機能が不能状態となることはなく、安全確保に必要なウィンドウロック機能を維持することができる。
【0078】
本発明では、上述した実施形態以外にも、種々の実施形態を採用することができる。
【0079】
たとえば、前記の実施形態では、運転席以外のパワーウィンドウ装置2~4においてオート操作が行われた場合に、マニュアル動作のみ許容し、オート動作を禁止したが、オート動作を禁止する替わりに、窓を限られた量だけ開閉する寸動動作を許可してもよい。
【0080】
また、前記の実施形態では、車両に4台のパワーウィンドウ装置1~4が搭載されている例を挙げたが、搭載するパワーウィンドウ装置の数は、これに限定されるものではなく、車両の種類に応じて決定すればよい。
【0081】
また、前記の実施形態では、ネットワークNとしてLINを例に挙げたが、これに代えて、LAN(Local Area Network)やCAN(Controller Area Network)などのネットワークを用いてもよい。
【0082】
さらに、前記の実施形態では、車両として自動四輪車を例に挙げたが、本発明のパワーウィンドウシステムは、自動四輪車以外の車両にも搭載が可能なことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0083】
1 運転席パワーウィンドウ装置(第1パワーウィンドウ装置)
2 助手席パワーウィンドウ装置(第2パワーウィンドウ装置)
3 後左席パワーウィンドウ装置(第2パワーウィンドウ装置)
4 後右席パワーウィンドウ装置(第2パワーウィンドウ装置)
10 制御部(第1制御部)
20、30、40 制御部(第2制御部)
12、22、32、42 メモリ
12a パラメータ
14 運転席スイッチ
15 助手席スイッチ(他席スイッチ)
16 後左席スイッチ(他席スイッチ)
17 後右席スイッチ(他席スイッチ)
23 助手席スイッチ(自席スイッチ)
33 後左席スイッチ(自席スイッチ)
43 後右席スイッチ(自席スイッチ)
18 モータ(第1モータ)
24、34、44 モータ(第2モータ)
19 ウィンドウロックスイッチ
100 車両用パワーウィンドウシステム
N ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9