(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108389
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】芳香低減抑制剤、芳香低減抑制方法、飲食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20240805BHJP
A23F 3/16 20060101ALI20240805BHJP
A23F 5/24 20060101ALI20240805BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20240805BHJP
A23F 3/34 20060101ALI20240805BHJP
A23F 5/14 20060101ALI20240805BHJP
A23F 3/30 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23F3/16
A23F5/24
A23L2/38 C
A23F3/34
A23F5/14
A23F3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012728
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】306018376
【氏名又は名称】クラシエ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 正志
(72)【発明者】
【氏名】角谷 直紀
(72)【発明者】
【氏名】秋山 朝子
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 健司
【テーマコード(参考)】
4B027
4B047
4B117
【Fターム(参考)】
4B027FB13
4B027FB15
4B027FB22
4B027FB24
4B027FE08
4B027FK02
4B027FP85
4B027FQ17
4B027FQ19
4B027FQ20
4B047LB08
4B047LF07
4B047LG14
4B117LC02
4B117LG18
4B117LK06
(57)【要約】
【課題】
芳香組成物の抽出、濃縮、乾燥、殺菌の際の加熱や減圧による香気成分の低減を抑制できる芳香低減抑制剤、又は芳香低減抑制方法、さらにはこの芳香低減抑制剤を配合した飲食品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
N-アセチルグルコサミンを有効成分とすることを特徴とする芳香低減抑制剤により上記課題を解決する。好ましくは、前記芳香が、芳香組成物の抽出時及び/又は抽出後の加熱や減圧によって揮発する香気成分である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-アセチルグルコサミンを有効成分とすることを特徴とする芳香低減抑制剤。
【請求項2】
前記芳香が、芳香組成物の抽出時及び/又は抽出後の加熱や減圧によって揮発する香気成分である請求項1記載の芳香低減抑制剤。
【請求項3】
N-アセチルグルコサミンを、芳香組成物の抽出水に添加する及び/又は芳香組成物抽出液に添加することを特徴とする芳香低減抑制方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の芳香低減抑制剤を配合する飲食品。
【請求項5】
前記飲食品が、コーヒー飲食品、紅茶飲食品、緑茶飲食品、又はハーブティー飲食品である請求項4記載の飲食品。
【請求項6】
芳香組成物由来の固形分100重量部に対し、芳香低減抑制剤を固形分比で5重量部以上の割合で配合する請求項4記載の飲食品。
【請求項7】
N-アセチルグルコサミンを、芳香組成物の抽出水に添加する及び/又は芳香組成物抽出液に添加することを特徴とする香気成分の低減が抑制される飲食品の製造方法。
【請求項8】
前記飲食品が、コーヒー飲食品、紅茶飲食品、緑茶飲食品、又はハーブティー飲食品である請求項7記載の飲食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香組成物の抽出、濃縮、乾燥、殺菌の際の加熱や減圧による香気成分の低減を抑制できる芳香低減抑制剤、芳香低減抑制方法、飲食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒー豆から製造されるコーヒー飲料等の加工品は、製造中に、加温した抽出水による抽出、コーヒー抽出液の加温、濃縮時の加温や減圧、乾燥時の加温や減圧、又は殺菌等、加熱や減圧を伴う工程を経ることから、製造中にコーヒー本来の豊かな香気成分が飛散や変質してコーヒーの芳香が低下する傾向にある。
【0003】
その対策として、桑の葉等の植物に含まれている1-デオキシノジリマイシンを添加することで、加熱殺菌などに伴うコーヒーの風味の低下を抑制する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。他には、焙煎コーヒー豆微粉やコーヒーオイル等を添加することで、低下した芳香を補完する方法などが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
一方、N-アセチルグルコサミンはヒトの体内に含まれヒアルロン酸に生合成されるアミノ糖であり、関節の保護、肌の潤い改善、胃壁保護などに有効であることが報告されている。しかしながら、N-アセチルグルコサミンによるコーヒー飲料等芳香する飲食品の芳香低減抑制に関する報告はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-141624号公報
【特許文献2】特開2017-93375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、芳香組成物の抽出、濃縮、乾燥、殺菌の際の加熱や減圧による香気成分の低減を抑制できる芳香低減抑制剤、又は芳香低減抑制方法、さらにはこの芳香低減抑制剤を配合した飲食品及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下により上記目的を達成する。
[1]
N-アセチルグルコサミンを有効成分とすることを特徴とする芳香低減抑制剤である。
[2]
前記芳香が、芳香組成物の抽出時及び/又は抽出後の加熱や減圧によって揮発する香気成分である芳香低減抑制剤である。
【0008】
[3]
N-アセチルグルコサミンを、芳香組成物の抽出水に添加する及び/又は芳香組成物抽出液に添加することを特徴とする芳香低減抑制方法である。
【0009】
[4]
前記芳香低減抑制剤を配合する飲食品である。
[5]
前記飲食品が、コーヒー飲食品、紅茶飲食品、緑茶飲食品、又はハーブティー飲食品である。
[6]
芳香組成物由来の固形分100重量部に対し、芳香低減抑制剤を固形分比で5重量部以上の割合で配合する飲食品である。
【0010】
[7]
N-アセチルグルコサミンを、芳香組成物の抽出水に添加する及び/又は芳香組成物抽出液に添加することを特徴とする香気成分の低減が抑制される飲食品の製造方法である。
[8]
前記飲食品が、コーヒー飲食品、紅茶飲食品、緑茶飲食品、又はハーブティー飲食品である飲食品の製造方法である。
【0011】
本発明者らは、N-アセチルグルコサミンを用いて、ひざや肌に良い機能性を有する飲食品について検討していたところ、N-アセチルグルコサミンをコーヒー抽出液に添加すると、コーヒー本来の味を全く損なわず、さらにコーヒー抽出後時間が経過してもコーヒーらしい香りが残っており、いつまでもおいしくコーヒーが飲めることを見出した。
【0012】
そこで、N-アセチルグルコサミンのコーヒーの芳香保持能について鋭意検討した結果、コーヒー抽出後のコーヒー抽出液にN-アセチルグルコサミンを添加すると、コーヒー抽出液からコーヒー飲食品を製造する過程に伴う加熱や減圧処理の際揮発や飛散する傾向のあるコーヒーの香気成分の低減を抑制できることを見出した。加えて、コーヒー抽出前の抽出水(以下、「コーヒー抽出水」ともいう)に添加しても、同様にコーヒーの香気成分の低減を抑制できることを見出した。また、このコーヒー香気成分低減抑制作用は、従来から知られているN-アセチルグルコサミンの作用とは異なる新たな機能性であることから本発明に到達した。
【発明の効果】
【0013】
芳香組成物の抽出、濃縮、乾燥、殺菌の際の加熱や減圧による香気成分の低減を抑制できる。
【0014】
また、N-アセチルグルコサミンが添加されていても、本来の風味が損なわれることなく芳香豊かな飲食品を提供できるので、ストレスなく毎日継続して飲食することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において、「芳香」とは、芳香組成物の抽出時及び/又は抽出後の加熱や減圧によって揮発や飛散する傾向のある、芳香組成物の抽出によって抽出液に含まれる香気成分を指す。また「芳香低減」とは、当該香気成分が揮発や飛散などにより失われてしまうことを意味し、「芳香低減抑制」とは、当該香気成分の揮発や飛散が抑制され、加熱や減圧処理を経ても当該香気成分の残存性が高いことを意味する。
【0016】
前記「芳香組成物」とは、芳香する飲食品の主原料を意味し、例えば、飲食品がコーヒー飲食品の場合はコーヒー豆、紅茶飲食品や緑茶飲食品の場合はその茶葉、ハーブティー飲食品の場合は用いられるハーブの葉、茎、蕾、花、根、種、実などを指す。
【0017】
前記「芳香組成物の抽出時及び/又は抽出後の加熱や減圧」とは、例示するならば、芳香組成物の抽出時の抽出水の加温、芳香組成物抽出後の抽出液の加温、該抽出液の濃縮の際の加温(蒸発濃縮)や減圧(減圧濃縮、凍結濃縮)、濃縮された該抽出液の乾燥の際の
加温(噴霧乾燥)や減圧(凍結乾燥、真空凍結乾燥)、殺菌(加熱殺菌)などの、芳香組成物から飲食品を製造する過程で生じる加熱や減圧を挙げることができる。
【0018】
本発明を詳しく説明する。
<芳香低減抑制剤>
本発明の芳香低減抑制剤は、N-アセチルグルコサミン(以下、「NAG」ともいう)を有効成分とする。N-アセチルグルコサミンは、グルコースの2位のヒドロキシル基がアセチルアミノ基に置換された構造を有するアミノ糖の一種であり、以下の化学式で示される物質である。
【0019】
【0020】
N-アセチルグルコサミンは、自然界に幅広く存在し、例えば、カニ・エビなどの甲殻類の殻、キノコや菌類の細胞壁、昆虫の外皮、牛乳、哺乳動物の細胞表面などに存在する。また、無臭であり、甘味度が砂糖に対し40%程度の良好な味質を有する。本発明で用いられるN-アセチルグルコサミンは、公知の方法により製造してもよいし、または市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、商品名「マリンスウィート(登録商標)」、商品名「ビューティーシュガー(登録商標)」(共に、焼津水産化学工業株式会社製)、商品名「コーヨーN-アセチルグルコサミンPG」(甲陽ケミカル株式会社製)などを挙げることができる。
【0021】
本発明では、このN-アセチルグルコサミンが、コーヒー等の香気成分の低減抑制作用を有することを見出した。本作用は、N-アセチルグルコサミンがその構造内に1分子当たりヒドロキシル基3個やアセチルアミノ基1個を有することから、これらの官能基とコーヒーの香気成分の官能基が引き合うことにより、香気成分の飛散や変質が抑制されるのではないかと推察している。また、本作用は、コーヒーだけでなく、紅茶、緑茶、ハーブティーなどのように芳香する飲食品においてもコーヒーと同様の作用を有すると推察している。
【0022】
また、上述の通り本発明に係る芳香とは、芳香組成物の抽出時及び/又は抽出後の加熱や減圧によって揮発や飛散する傾向のある香気成分であるが、この香気成分を具体的に示
すと、2-フランメタノール(2-Furanmethanol)、4-ピリジノン(4-Pyridinone)、カテコール(Catechol)、5-ヒドロキシメチルフルフラール(5-Hydroxymethylfurfural)、ヒドロキノン(Hydroquinone)、2-メトキシ-4-ビニルフェノール(2-Methoxy-4-vinylphenol)、デスルホシニグリン(Desulphosinigrin)、2-ヒドロキシ-γ-ブチロラクトン(2-Hydroxy-γ-butyrolactone)、アセトアミドアセトアルデヒド(Acetamidoacetaldehyde)、3,4-ジメチル-3-ピロリン-2-オン(3,4-Dimethyl-3-pyrrolin-2-one)、3-アセトアミドフラン(3-Acetamidofuran)、2-アミノ-3-ピリドール(2-Amino-3-pyridol)、2,4-ジメチル-5-メチルチオペン-4-エン-2-オール (2,4-Dimethyl-5-methylthiopen-4-en-2-ol)、1,2,4-ベンゼントリオール(1,2,4-Benzenetriol)等を挙げることができる。
【0023】
<芳香低減抑制方法>
本発明の芳香低減抑制方法は、上述のN-アセチルグルコサミンを、芳香組成物の抽出水に添加する及び/又は芳香組成物抽出液に添加することにより、芳香組成物の抽出時及び/又は抽出後の加熱や減圧による香気成分の揮発や飛散を抑制する方法である。なお、芳香組成物抽出液とは、芳香組成物の抽出後の抽出液を指し、具体的には、抽出工程後や濃縮工程後の抽出液を意味する。
【0024】
<飲食品>
本発明の飲食品は、芳香低減抑制剤としてN-アセチルグルコサミンを配合する飲食品である。当該飲食品は、N-アセチルグルコサミンを配合することから、芳香組成物の抽出時及び/又は抽出後の加熱や減圧によって揮発や飛散する傾向のある、芳香組成物の抽出によって抽出液に含まれる香気成分の低減を抑制できる。
【0025】
本発明の飲食品としては、芳香する飲食品が挙げられるが、好ましくは、芳香組成物の抽出によって製造されるコーヒー飲食品、紅茶飲食品、緑茶飲食品、又はハーブティー飲食品が、本願効果を有効に発揮できる点で好適である。
【0026】
また、飲食品の形態として、好ましくは、粉末食品(粉末飲料、インスタント食品など)、リキッド濃縮飲料、又は容器詰め飲料(缶飲料、PETボトル飲料など)等が挙げられる。
【0027】
さらに、本発明の飲食品は、芳香組成物由来の固形分100重量部に対し、N-アセチルグルコサミンを固形分比で5重量部以上の割合で配合することが、香気成分の揮発や飛散を抑える点で好適であり、より好ましくは、NAGを6.5重量部以上の割合で配合すると、香気成分の低減抑制を効果的に発揮できる点で好適である。ここで、「芳香組成物由来の固形分」とは、芳香組成物の抽出によって得られる抽出液やその後の処理後の飲食品中の、芳香組成物由来の固形分のみを指す。すなわち、飲食品製造の際に添加するNAG(芳香抑制低減剤)や飲食品の副原料などを除くことを意味する。
【0028】
<飲食品の製造方法>
本発明の飲食品の製造方法は、上述のN-アセチルグルコサミンを、芳香組成物の抽出水に添加する及び/又は芳香組成物抽出液に添加することにより、芳香組成物の抽出時及び/又は抽出後の加熱や減圧による香気成分の揮発や飛散を抑制できる。なお、芳香組成物抽出液とは、芳香組成物の抽出後の抽出液を指し、具体的には、抽出工程後や濃縮工程後の抽出液を意味する。
【0029】
飲食品としては、芳香する飲食品が挙げられるが、好ましくは、芳香組成物の抽出によって製造されるコーヒー飲食品、紅茶飲食品、緑茶飲食品、又はハーブティー飲食品が、本願効果を有効に発揮できる点で好適である。
【0030】
飲食品の製造方法として、コーヒー飲食品、紅茶飲食品、緑茶飲食品及びハーブ飲食品について説明する。なお、コーヒー飲食品の形態として、粉末食品(インスタントコーヒー)、リキッド濃縮コーヒー、容器詰めコーヒー飲料(缶コーヒー、PETボトルコーヒー)の製造例について、紅茶飲食品の形態として、粉末食品(インスタントティー)、リキッド濃縮紅茶の製造例について例示する。
【0031】
1.コーヒー飲食品
コーヒー飲食品製造の常法は次の通りである。まず、焙煎したコーヒー豆を適宜粉砕し、加温した抽出水等でコーヒー抽出(ドリップ抽出など)を行い、コーヒー抽出液を得る。得られたコーヒー抽出液に、必要に応じて副原料(糖質、乳化剤、pH調整剤、香料、着色料など)を添加する。このコーヒー抽出液に対し、飲食品の形態に応じた公知の方法(濃縮、乾燥、殺菌等)を適宜採用する。
【0032】
本発明では、前記常法に、次のような第一から第三の方法を組み合わせた製造方法が採用される。第一は、コーヒー抽出液にNAGを添加する。第二は、NAGを添加した抽出水でコーヒー抽出を行う。第三は、第一と第二の製法を併用する、すなわち、NAGを添加した抽出水でコーヒー抽出を行い、かつ、コーヒー抽出液にNAGを添加する。なお、コーヒー抽出液とは、抽出後の抽出液を指し、具体的には、抽出工程後や濃縮工程後の抽出液を意味する。
【0033】
1-1.インスタントコーヒー(フリーズドライ(FD)製法)
焙煎したコーヒー豆を粉砕し、90℃以上の抽出水でコーヒー抽出を行い、コーヒー抽出液を得た後濃縮する。NAGを抽出後のコーヒー抽出液又は濃縮後のコーヒー抽出液に添加する。濃縮方法としては、減圧濃縮、凍結濃縮、蒸発濃縮や、カラムに充填した焙煎コーヒー豆にコーヒー抽出液を何度も通過させる方法などが挙げられるが、好ましくは、低温操作が可能な減圧濃縮が好適に用いられる。次に濃縮されたコーヒー抽出液を-30℃前後で凍結し、真空乾燥することでインスタントコーヒーが得られる。なお、NAGは、抽出水に添加してもよく、或いは、抽出水とコーヒー抽出液の両方に添加してもよい。
【0034】
1-2.インスタントコーヒー(スプレードライ(SD)製法)
焙煎したコーヒー豆を粉砕し、90℃以上の抽出水でコーヒー抽出を行い、コーヒー抽出液を得た後濃縮する。NAGを抽出後のコーヒー抽出液又は濃縮後のコーヒー抽出液に添加する。濃縮は、FDインスタントコーヒーと同様の方法にて実施する。次に濃縮されたコーヒー抽出液を噴霧乾燥(210~310℃)することでインスタントコーヒーが得られる。なお、NAGは、抽出水に添加してもよく、或いは、抽出水とコーヒー抽出液の両方に添加してもよい。
【0035】
1-3.リキッド濃縮コーヒー
焙煎したコーヒー豆を粉砕し、90℃以上の抽出水でコーヒー抽出を行い、コーヒー抽出液を得た後濃縮する。NAGを抽出後のコーヒー抽出液又は濃縮後のコーヒー抽出液に添加する。濃縮は、FDインスタントコーヒーと同様の方法にて実施する。次に得られた濃縮コーヒー抽出液に必要に応じて副原料を加え、90~120℃にて加熱殺菌し、容器(ポーションカップ等)にホットパック充填することでリキッド濃縮コーヒーが得られる。なお、NAGは、抽出水に添加してもよく、或いは、抽出水とコーヒー抽出液の両方に添加してもよい。
【0036】
1-4.缶コーヒー
焙煎したコーヒー豆を粉砕し、90℃以上の抽出水でコーヒー抽出を行い、コーヒー抽出液を得る。得られたコーヒー抽出液にNAGを添加し、必要に応じて副原料を加えた後、80~100℃に加温し容器(缶等)に充填包装する。その後、加熱殺菌(110~125℃)することで缶コーヒーが得られる。なお、NAGは、抽出水に添加してもよく、或いは、抽出水とコーヒー抽出液の両方に添加してもよい。
【0037】
1-5.PETボトルコーヒー
焙煎したコーヒー豆を粉砕し、90℃以上の抽出水でコーヒー抽出を行い、コーヒー抽出液を得る。得られたコーヒー抽出液にNAGを添加し、必要に応じて副原料を加えた後、120~140℃にて加熱殺菌し容器(PETボトル等)にホットパック充填することでPETボトルコーヒーが得られる。なお、NAGは、抽出水に添加してもよく、或いは、抽出水とコーヒー抽出液の両方に添加してもよい。
【0038】
2.紅茶飲食品
紅茶飲食品製造の常法は次の通りである。まず、紅茶の茶葉と加温した抽出水を抽出機に入れ紅茶抽出を行い、茶殻を取り除いて紅茶抽出液を得る。他には、加温した抽出水によるドリップ抽出によって紅茶抽出液を得る方法も挙げられる。得られた紅茶抽出液に、必要に応じて副原料(糖質、香料など)を添加する。この紅茶抽出液に対し、飲食品の形態に応じた公知の方法(濃縮、乾燥、殺菌等)を適宜採用する。
【0039】
本発明では、コーヒー飲食品と同様に、前記常法に、次のような第一から第三の方法を組み合わせた製造方法が採用される。第一は、紅茶抽出液(抽出後又は濃縮後)にNAGを添加する。第二は、NAGを添加した抽出水で紅茶抽出を行う。第三は、第一と第二の製法を併用する、すなわち、NAGを添加した抽出水で紅茶抽出を行い、かつ、紅茶抽出液にNAGを添加する。
【0040】
2-1.インスタントティー(FD製法またはSD製法)
紅茶の茶葉と90℃以上の抽出水を抽出機に入れ紅茶抽出を行い、茶殻を取り除いて紅茶抽出液を得た後濃縮する。NAGを抽出後の紅茶抽出液又は濃縮後の紅茶抽出液に添加する。濃縮方法としては、減圧濃縮、凍結濃縮、蒸発濃縮や、紅茶抽出液を抽出器に入れた茶葉(茶殻)に何度も通過させる方法などが挙げられるが、好ましくは、低温操作が可能な減圧濃縮が好適に用いられる。次に濃縮された紅茶抽出液を真空凍結乾燥(-30℃前後で凍結し真空乾燥)、または噴霧乾燥(210~310℃)することでインスタントティーが得られる。なお、NAGは、抽出水に添加してもよく、或いは、抽出水と紅茶抽出液の両方に添加してもよい。
【0041】
2-2.リキッド濃縮紅茶
紅茶の茶葉と90℃以上の抽出水を抽出機に入れ紅茶抽出を行い、茶殻を取り除いて紅茶抽出液を得た後濃縮する。NAGを抽出後の紅茶抽出液又は濃縮後の紅茶抽出液に添加する。濃縮は、インスタントティーと同様の方法にて実施する。次に得られた濃縮紅茶抽出液に必要に応じて副原料を加え、90~120℃にて加熱殺菌し、容器(ポーションカップ等)にホットパック充填することでリキッド濃縮紅茶が得られる。なお、NAGは、抽出水に添加してもよく、或いは、抽出水と紅茶抽出液の両方に添加してもよい。
【0042】
3.緑茶飲食品
上述の紅茶飲食品の製造方法において、紅茶の茶葉の代わりに、緑茶の茶葉を用いて同様に製造することができる。
【0043】
4.ハーブ飲食品
上述の紅茶飲食品の製造方法において、紅茶の茶葉の代わりに、ハーブの葉、茎、蕾、花、根、種、実などを用いて同様に製造することができる。
【0044】
本発明は、上述の飲食品だけでなく、芳香する飲食品に対し有効であることから、上述のように、NAGを、芳香組成物の抽出水に添加する及び/又は芳香組成物抽出液に添加して飲食品を製造することで、芳香組成物の抽出時及び/又は抽出後の加熱や減圧によって揮発や飛散する香気成分の低減を抑制することができる。
【実施例0045】
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
【0046】
≪芳香低減抑制剤≫
<実施例1>
芳香低減抑制剤として、N-アセチルグルコサミン(NAG)粉末100%を準備した。なお、NAGは市販品の「ビューティーシュガー(登録商標)」(焼津水産化学工業株式会社製)を使用した。
【0047】
≪FDインスタントコーヒー≫
<比較例1>
(コントロール(芳香低減抑制剤未添加品))
粉砕した焙煎コーヒー豆(モカブレンド)100gを100℃の抽出水でドリップ抽出してコーヒー抽出液700gを得、この抽出液をさらに別の粉砕した焙煎コーヒー豆(モカブレンド)100gに通過させて、濃縮したコーヒー抽出液700gを得た(固形分6.91%)。この濃縮したコーヒー抽出液を-35℃に凍結後、真空凍結乾燥(「VF350S」アドバンテック東洋株式会社製)し、FDインスタントコーヒーを製造した。なお、得られたFDインスタントコーヒーの固形分組成はコーヒー100%であった。
【0048】
<実施例2>
比較例1において、濃縮したコーヒー抽出液100gに実施例1の芳香低減抑制剤
2.29gを添加する以外は、比較例1と同様にしてFDインスタントコーヒーを製造した。なお、得られたFDインスタントコーヒーの固形分組成はコーヒー75.1%、NAG24.9%であった。
【0049】
<実施例3>
比較例1において、実施例1の芳香低減抑制剤を添加した抽出水でドリップ抽出する以外は、比較例1と同様にしてFDインスタントコーヒーを製造した。なお、濃縮後のコーヒー抽出液の固形分は8.13%(コーヒー及びNAG)、得られたFDインスタントコーヒーの固形分組成はコーヒー71.8%、NAG28.2%であった。
【0050】
<比較例2>
実施例2において、実施例1の芳香低減抑制剤の代わりにデキストリン2.29gを添加する以外は、実施例2と同様にしてFDインスタントコーヒーを製造した。なお、得られたFDインスタントコーヒーの固形分組成はコーヒー75.1%、デキストリン24.9%であった。
【0051】
≪香気成分測定≫
上記実施例2、3及び比較例1、2について、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)にて香気成分を測定した。さらに、官能にて風味を評価した。
【0052】
GC/MS測定液の調整は次のように行った。試料(実施例又は比較例)0.1gを超純水1mlに溶解後、メタノールで10mlに定容した。この溶液をメンブランフィルター・C18カートリッジに通液後、メタノールで1/10に希釈しGC/MS測定液とした。
【0053】
測定に使用したGC/MSについて以下に示す。
装置:Thermo Scientific ISQ7000 TRACE GC1310(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)
使用カラム:DB5-MSUI(30m×0.25mmφ×0.25μm)
注入法:スプリットレス法
注入量:1μl
キャリアガス:ヘリウム
注入口温度:250℃
カラム温度:40℃(1分保持)→30℃/分→80℃→5℃/分→150℃→10℃/分→260℃(5分保持)
インターフェイス温度:280℃
質量範囲:45-450m/z
【0054】
また、GC/MS測定後の香気成分の解析は、同装置に搭載されているThermo Xcalibur 4.1.31.9解析ソフトウェア中のライブラリーを用いて、コーヒーの芳香の特徴を示す次の7つの香気成分について行った。
(1)2-Furanmethanol
(2)4-Pyridinone
(3)Catechol
(4)5-Hydroxymethylfurfural
(5)Hydroquinone
(6)2-Methoxy-4-vinylphenol
(7)Desulphosinigrin
【0055】
官能による風味評価について以下に示す。
実施例又は比較例をコーヒー固形分が1.5gとなるようにマグカップに入れ、95℃の湯を100ml注ぎ撹拌したものを飲用し、以下の評価基準を用いて、コントロール(芳香低減抑制剤未添加品)に対する相対評価(芳香の強さと質、雑味の有無)にて評価した。なお、評価は3名の専門パネラーにて実施した。
【0056】
<評価基準>
+2:コントロールに対し、雑味がなく、芳香の強さと質が良好である
+1:コントロールに対し、雑味がなく、芳香の強さと質がやや良好である
0:コントロール
-1:コントロールに対し、芳香の強さと質、雑味の何れかがやや不良である
-2:コントロールに対し、芳香の強さと質、雑味の何れかが不良である
【0057】
上記GC/MS測定及び風味評価の結果を表1に示す。
【0058】
【0059】
評価の結果、コントロール(比較例1)に対し、本発明の芳香低減抑制剤を添加したもの(実施例2、3)の方が、GC/MS測定した香気成分の残存性が高かった。また、雑味がなくコーヒー本来の豊かな芳香を感じ風味評価も良好であった。一方、デキストリンを添加した比較例2は、GC/MS測定による香気成分の残存性は良好であったが、風味評価においてコントロールにはない雑味(独特のにおいと味)を感じ、コーヒーの風味が損なわれていた。
【0060】
≪SDインスタントコーヒー≫
<比較例3>
(コントロール(芳香低減抑制剤未添加品))
粉砕した焙煎コーヒー豆(モカブレンド)100gを100℃の抽出水でドリップ抽出してコーヒー抽出液700gを得、この抽出液をさらに別の粉砕した焙煎コーヒー豆(モカブレンド)100gに通過させて、濃縮したコーヒー抽出液700gを得た(固形分5.8%)。この濃縮したコーヒー抽出液をノズル入口温度150℃~出口温度70℃で噴霧乾燥(「スプレードライヤーADL311S-A」ヤマト科学株式会社製)し、SDインスタントコーヒーを製造した。なお、得られたSDインスタントコーヒーの固形分組成はコーヒー100%であった。
【0061】
<実施例4>
比較例3において、濃縮したコーヒー抽出液100gに実施例1の芳香低減抑制剤1.93gを添加する以外は、比較例3と同様にしてSDインスタントコーヒーを製造した。なお、得られたSDインスタントコーヒーの固形分組成はコーヒー75.0%、NAG25.0%であった。
【0062】
<実施例5>
比較例3において、実施例1の芳香低減抑制剤を添加した抽出水でドリップ抽出する以
外は、比較例3と同様にしてSDインスタントコーヒーを製造した。なお、濃縮後のコーヒー抽出液の固形分は7.7%(コーヒー及びNAG)、得られたSDインスタントコーヒーの固形分組成はコーヒー74.9%、NAG25.1%であった。
【0063】
<比較例4>
実施例4において、実施例1の芳香低減抑制剤の代わりにデキストリン1.93gを添加する以外は、実施例4と同様にしてSDインスタントコーヒーを製造した。なお、得られたSDインスタントコーヒーの固形分組成はコーヒー75.0%、デキストリン25.0%であった。
【0064】
上記実施例4、5及び比較例3、4について、GC/MSにて香気成分を実施例2と同様にして測定した。さらに、官能にて風味を実施例2と同様にして評価した。その結果を表2に示す。
【0065】
【0066】
評価の結果、コントロール(比較例3)に対し、本発明の芳香低減抑制剤を添加したもの(実施例4、5)の方が、GC/MS測定した香気成分の残存性が高かった。また、雑味がなくコーヒー本来の豊かな芳香を感じ風味評価も良好であった。一方、デキストリンを添加した比較例4は、GC/MS測定による香気成分の残存性は良好であったが、風味評価においてコントロールにはない雑味(独特のにおいと味)を感じ、コーヒーの風味が損なわれていた。
【0067】
≪リキッド濃縮コーヒー≫
<比較例5>
(コントロール(芳香低減抑制剤未添加品))
粉砕した焙煎コーヒー豆(モカブレンド)100gを100℃の抽出水でドリップ抽出してコーヒー抽出液700gを得、この抽出液をさらに別の粉砕した焙煎コーヒー豆(モ
カブレンド)100gに通過させて、濃縮したコーヒー抽出液700gを得た(固形分6.91%)。この濃縮したコーヒー抽出液100gをビーカー内に入れラップをし、90℃迄加熱した後、密封容器にホットパックし、冷却してリキッド濃縮コーヒーを製造した。なお、得られたリキッド濃縮コーヒー組成は濃縮コーヒー抽出液100%であり、固形分組成もまたコーヒー100%であった(一般的な飲用コーヒーの約5倍濃縮品)。
【0068】
<実施例6>
比較例5において、濃縮したコーヒー抽出液100gに実施例1の芳香低減抑制剤2.29gを添加する以外は、比較例5と同様にしてリキッド濃縮コーヒーを製造した。なお、得られたリキッド濃縮コーヒー組成は濃縮コーヒー抽出液97.8%、NAG2.2%であり、固形分組成はコーヒー75.1%、NAG24.9%であった。
【0069】
<実施例7>
比較例5において、実施例1の芳香低減抑制剤を添加した抽出水でドリップ抽出する以外は、比較例5と同様にしてリキッド濃縮コーヒーを製造した。なお、濃縮後のコーヒー液の固形分は8.13%(コーヒー及びNAG)、得られたリキッド濃縮コーヒー組成は濃縮コーヒー抽出液97.7%、NAG2.3%であり、固形分組成は、コーヒー71.8%、NAG28.2%であった。
【0070】
上記実施例6、7及び比較例5について、GC/MSにて香気成分を測定した。さらに、官能にて風味を評価した。
【0071】
GC/MS測定液の調整は次のように行った。試料(実施例又は比較例)をメタノールで1/100に希釈した。この希釈液をメンブランフィルター・C18カートリッジに通液後、GC/MS測定液とした。また、GC/MS測定は実施例2と同様にして行った。
【0072】
風味評価について以下に示す。
実施例又は比較例をコーヒー固形分が1.5gとなるようにマグカップに入れ、95℃の湯を100ml注ぎ撹拌したものを飲用し、官能にて実施例2と同様にして評価した。
【0073】
上記GC/MS測定及び風味評価の結果を表3に示す。
【0074】
【0075】
評価の結果、コントロール(比較例5)に対し、本発明の芳香低減抑制剤を添加したもの(実施例6、7)の方が、GC/MS測定した香気成分の残存性が高かった。また、風味評価においても、実施例6、7の方が芳香を感じた。さらに、雑味を感じないため、コーヒー本来の風味が全く損なわれていなかった。
【0076】
≪缶コーヒー≫
<比較例6>
(コントロール(芳香低減抑制剤未添加品))
粉砕した焙煎コーヒー豆(モカブレンド)100gを95℃の抽出水でドリップ抽出後冷却し、コーヒー抽出液828gを得た(固形分3.06%)。このコーヒー抽出液に、飲用濃度になるよう、水とpH調整剤(炭酸水素ナトリウム)を加えて表4の組成のコーヒー調合液とした。このコーヒー調合液を90℃に加温し缶に充填包装した後、加熱殺菌(115℃20分)して缶コーヒーを製造した。なお、得られた缶コーヒー組成はコーヒー抽出液37.5%であり、固形分組成はコーヒー95.8%であった。
【0077】
【0078】
<実施例8~11>
比較例6において、実施例1の芳香低減抑制剤を使用し、表4の組成のコーヒー調合液とする以外は、比較例6と同様にして缶コーヒーを製造した。なお、得られた缶コーヒーの固形分組成(コーヒー及びNAG)を表4に併せて示す。
【0079】
上記実施例8~11及び比較例6について、GC/MSにて香気成分を測定した。さらに、官能にて風味を評価した。
【0080】
GC/MS測定液の調整は次のように行った。試料(実施例又は比較例)をメタノールで1/10に希釈した。この希釈液をメンブランフィルター・C18カートリッジに通液後、GC/MS測定液とした。また、GC/MS測定は実施例2と同様にして行った。
【0081】
風味評価は、缶飲料を開封後そのまま飲用し、官能にて風味を実施例2と同様にして評価した。
【0082】
上記GC/MS測定及び風味評価の結果を表4に示す。
【0083】
評価の結果、コントロール(比較例6)に対し、本発明の芳香低減抑制剤を添加したもの(実施例8~11)の方が、GC/MS測定した香気成分の残存性が高く、NAGの配合量が多くなるにつれて香気成分の残存性は向上した。また、風味評価においても、NAGの配合量が多くなるにつれて、芳香を強く感じた。
【0084】
≪FDインスタントティー(紅茶)≫
<比較例7>
(コントロール(芳香低減抑制剤未添加品))
紅茶の茶葉(セイロン)100gを100℃の抽出水でドリップ抽出して紅茶抽出液680gを得た(固形分2.0%)。この紅茶抽出液を-35℃に凍結後、真空凍結乾燥(「VF350S」アドバンテック東洋株式会社製)し、FDインスタントティーを製造した。なお、得られたFDインスタントティーの固形分組成は紅茶100%であった。
【0085】
<実施例12>
比較例7において、紅茶抽出液100gに実施例1の芳香低減抑制剤1.15gを添加
する以外は、比較例7と同様にしてFDインスタントティーを製造した。なお、得られたFDインスタントティーの固形分組成は紅茶63.5%、NAG36.5%であった。
【0086】
<実施例13>
比較例7において、紅茶抽出液100gに実施例1の芳香低減抑制剤2.3gを添加する以外は、比較例7と同様にしてFDインスタントティーを製造した。なお、得られたFDインスタントティーの固形分組成は紅茶46.5%、NAG53.5%であった。
【0087】
上記実施例12、13及び比較例7について、GC/MSにて香気成分を測定した。さらに、官能にて風味を評価した。
【0088】
GC/MS測定液の調整は次のように行った。試料(実施例又は比較例)20mgを超純水1mlに溶解後、メタノールで10mlに定容した。この溶液をメタノールで1/5に希釈し、メンブランフィルター・C18カートリッジに通液後、GC/MS測定液とした。
【0089】
また、GC/MS測定後、それぞれ紅茶の芳香の特徴を示す次の6つの香気成分について解析する以外は、実施例2と同様にして行った。
(1)2-Hydroxy-γ-butyrolactone
(2)Acetamidoacetaldehyde
(3)3,4-Dimethyl-3-pyrrolin-2-one
(4)Catechol
(5)3-Acetamidofuran
(6)2-Amino-3-pyridol
【0090】
風味評価は、紅茶固形分1.5g相当の試料(実施例又は比較例)をマグカップに入れ、95℃の湯を100ml注ぎ撹拌したものを飲用し、官能にて実施例2と同様にして評価した。
【0091】
上記GC/MS測定及び風味評価の結果を表5に示す。
【0092】
【0093】
評価の結果、コントロール(比較例7)に対し、本発明の芳香低減抑制剤を添加したもの(実施例12、13)の方が、GC/MS測定した香気成分の残存性が高い傾向を示した。他に、コントロール(比較例7)では検出されなかったが実施例12、13では検出された香気成分もあった。
【0094】
≪リキッド濃縮紅茶≫
<比較例8>
(コントロール(芳香低減抑制剤未添加品))
紅茶の茶葉(セイロン)100gを100℃の抽出水でドリップ抽出して紅茶抽出液680gを得た(固形分2.0%)。この紅茶抽出液100gをビーカー内に入れラップをし、90℃迄加熱した後、密封容器にホットパックし、冷却してリキッド濃縮紅茶を製造した。なお、得られたリキッド濃縮紅茶組成は紅茶抽出液100%であり、固形分組成もまた紅茶100%であった。
【0095】
<実施例14>
比較例8において、紅茶抽出液100gに実施例1の芳香低減抑制剤1.15gを添加する以外は、比較例8と同様にしてリキッド濃縮紅茶を製造した。なお、得られたリキッド濃縮紅茶組成は紅茶抽出液98.9%、NAG1.1%であり、固形分組成は紅茶63.5%、NAG36.5%であった。
【0096】
<実施例15>
比較例8において、紅茶抽出液100gに実施例1の芳香低減抑制剤2.3gを添加する以外は、比較例8と同様にしてリキッド濃縮紅茶を製造した。なお、得られたリキッド濃縮紅茶組成は紅茶抽出液97.7%、NAG2.3%であり、固形分組成は紅茶46.5%、NAG53.5%であった。
【0097】
上記実施例14、15及び比較例8について、GC/MSにて香気成分を測定した。さらに、官能にて風味を評価した。
【0098】
GC/MS測定液の調整は次のように行った。試料(実施例又は比較例)をメタノールで1/50に希釈した。この希釈液をメンブランフィルター・C18カートリッジに通液後、GC/MS測定液とした。また、GC/MS測定は実施例12と同様にして行った。
【0099】
風味評価は、紅茶固形分1.5g相当の試料(実施例又は比較例)をマグカップに入れ、95℃の湯を100ml注ぎ撹拌したものを飲用し、官能にて実施例12と同様にして評価した。
【0100】
上記GC/MS測定及び風味評価の結果を表6に示す。
【0101】
【0102】
評価の結果、コントロール(比較例8)に対し、本発明の芳香低減抑制剤を添加したもの(実施例14、15)の方が、GC/MS測定した香気成分の残存性が高い傾向を示した。
【0103】
また、表5のFDインスタントティー(紅茶)のコントロールではGC/MS測定にて検出されなかった香気成分(2)、(5)、(6)が、表6のリキッド濃縮紅茶のコントロールでは検出されており、表6の香気成分(2)、(5)、(6)はコントロールに対し芳香低減抑制剤を添加したものの方が高い残存性を示した。これは、FDインスタントティー製造の真空凍結乾燥による減圧では揮発や飛散された香気成分が、リキッド濃縮紅茶製造における加熱では揮発や飛散されなかったためと推察している。
【0104】
≪FDインスタントティー(緑茶)≫
<比較例9>
(コントロール(芳香低減抑制剤未添加品))
紅茶の茶葉の代わりに緑茶の茶葉を用いる以外は、比較例7と同様に行い、FDインスタントティーを製造した。なお、ドリップ抽出後の緑茶抽出液の固形分は2.1%、得られたFDインスタントティーの固形分組成は緑茶100%であった。
【0105】
<実施例16>
比較例9において、緑茶抽出液100gに実施例1の芳香低減抑制剤1.5gを添加する以外は、比較例9と同様にしてFDインスタントティーを製造した。なお、得られたFDインスタントティーの固形分組成は緑茶58.3%、NAG41.7%であった。
【0106】
<実施例17>
比較例9において、緑茶抽出液100gに実施例1の芳香低減抑制剤3.0gを添加する以外は、比較例9と同様にしてFDインスタントティーを製造した。なお、得られたFDインスタントティーの固形分組成は緑茶41.2%、NAG58.8%であった。
【0107】
上記実施例16、17及び比較例9について、実施例2と同様にして、GC/MSによる香気成分測定を実施した。その結果を表7に示す。なお、GC/MS測定後、それぞれ緑茶の芳香の特徴を示す次の6つの香気成分について解析した。
(1)2,4-Dimethyl-5-methylthiopen-4-en-2-ol
(2)Acetamidoacetaldehyde
(3)3,4-Dimethyl-3-pyrrolin-2-one
(4)Catechol
(5)3-Acetamidofuran
(6)1,2,4-Benzenetriol
【0108】
【0109】
≪リキッド濃縮緑茶≫
<比較例10>
(コントロール(芳香低減抑制剤未添加品))
紅茶の茶葉の代わりに緑茶の茶葉を用いる以外は、比較例8と同様に行い、リキッド濃縮緑茶を製造した。なお、ドリップ抽出後の緑茶抽出液の固形分は2.1%、得られたリキッド濃縮緑茶組成は緑茶抽出液100%であり、固形分組成もまた緑茶100%であった。
【0110】
<実施例18>
比較例10において、緑茶抽出液100gに実施例1の芳香低減抑制剤1.5gを添加する以外は、比較例10と同様にしてリキッド濃縮緑茶を製造した。なお、得られたリキッド濃縮緑茶組成は緑茶抽出液98.5%、NAG1.5%であり、固形分組成は緑茶58.3%、NAG41.7%であった。
【0111】
<実施例19>
比較例10において、緑茶抽出液100gに実施例1の芳香低減抑制剤3.0gを添加する以外は、比較例10と同様にしてリキッド濃縮緑茶を製造した。なお、得られたリキッド濃縮緑茶組成は緑茶抽出液97.1%、NAG2.9%であり、固形分組成は緑茶41.2%、NAG58.8%であった。
【0112】
上記実施例18、19及び比較例10について、実施例16と同様にして、GC/MSによる香気成分測定を実施した。その結果を表8に示す。
【0113】
【0114】
表7及び表8の評価の結果、コントロール(比較例)に対し、本発明の芳香低減抑制剤を添加したもの(実施例)の方が、GC/MS測定した香気成分の残存性が高かった。リキッド濃縮緑茶(表8)ではNAGの配合量が多くなるにつれて香気成分の残存性は向上する傾向を示したが、FDインスタントティー(緑茶)(表7)ではその傾向を示さない香気成分があった。これは、リキッド濃縮緑茶とFDインスタントティー(緑茶)間の加熱や減圧の製造負荷の違いに依るものと推察される。
【0115】
以上の結果から、本発明の芳香低減抑制剤は、芳香組成物の抽出水に添加する及び/又は芳香組成物抽出液に添加することで、抽出、濃縮、乾燥、殺菌の際の加熱や減圧によって揮発や飛散する香気成分の低減を抑制すると理解できる。