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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108394
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】振動デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20240805BHJP
   H03H 9/02 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
H03B5/32 H
H03H9/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012739
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100166523
【弁理士】
【氏名又は名称】西河 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】西澤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】竹内 淳一
【テーマコード(参考)】
5J079
5J108
【Fターム(参考)】
5J079AA04
5J079BA43
5J079BA47
5J079HA03
5J079HA07
5J079HA30
5J108BB02
5J108CC04
5J108DD02
5J108EE03
5J108EE07
5J108EE18
5J108GG03
5J108GG14
(57)【要約】
【課題】応力を原因とする特性の劣化を抑制できる振動デバイス等の提供。
【解決手段】振動デバイス1は、第1面21に集積回路10が配置される半導体基板を含むベース2と、集積回路10に接続される振動素子と、側壁部32の端面34が第1面21に対して接合部36において接合されるリッド3を含む。集積回路10の第1回路は、平面視において接合部36に重なる第1領域に配置される第1回路素子を含む。第1回路素子は、受動素子又はトランジスターであり、第1面21と側壁部32の内側側面38との間の角度をθとしたとき、θ<90°を満たす。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と前記第1面と表裏関係にある第2面とを有し、前記第1面に集積回路が配置される半導体基板を含むベースと、
前記集積回路に電気的に接続される振動素子と、
前記振動素子を収容する凹部が設けられ、前記凹部の周囲の側壁部を有し、前記側壁部の端面が前記第1面に対して接合部において接合されるリッドと、
を含み、
前記集積回路は、第1回路及び第2回路を含み、
前記第1回路は、
前記第1面の第1領域、第2領域のうち、前記第1面に直交する平面視において前記接合部に重なる前記第1領域に配置される第1回路素子を含み、
前記第1回路素子は、受動素子又はトランジスターであり、
前記第1面と前記側壁部の内側側面との間の角度をθとしたとき、θ<90°を満たすことを特徴とする振動デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の振動デバイスにおいて、
θ≦80°を満たすことを特徴とする振動デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載の振動デバイスにおいて、
前記リッドは、前記内側側面が、単結晶シリコンの結晶方位<111>に沿っていることを特徴とする振動デバイス。
【請求項4】
請求項1に記載の振動デバイスにおいて、
θ>45°を満たすことを特徴とする振動デバイス。
【請求項5】
請求項1に記載の振動デバイスにおいて、
前記リッドは、
前記ベースを形成する第1半導体ウェハーに対して、前記接合部を介して応力印加により接合される第2半導体ウェハーにより形成されていることを特徴とする振動デバイス。
【請求項6】
請求項1に記載の振動デバイスにおいて、
前記第2回路は、
前記第2領域に配置される第2回路素子を含み、
前記第1回路素子又は前記第1回路は、前記第2回路素子又は前記第2回路よりも、応力に対する回路特性の変化が小さい回路素子又は回路であることを特徴とする振動デバイス。
【請求項7】
請求項1に記載の振動デバイスにおいて、
前記第1回路は、
前記第1回路素子の回路定数の比により回路特性が設定される回路であることを特徴とする振動デバイス。
【請求項8】
請求項1に記載の振動デバイスにおいて、
前記第1回路は、
前記第1回路素子として複数の受動素子又は複数の能動素子が設けられ、前記複数の受動素子又は前記複数の能動素子の回路定数の比により回路特性が設定される回路であることを特徴とする振動デバイス。
【請求項9】
請求項1に記載の振動デバイスにおいて、
前記第1回路素子は、
抵抗分圧回路に設けられる抵抗素子、又はカレントミラー回路に設けられるトランジスターであることを特徴とする振動デバイス。
【請求項10】
請求項1に記載の振動デバイスにおいて、
前記第1回路は、
前記集積回路に用いられる基準電圧を生成する基準電圧生成回路であり、
前記第1回路素子は、
前記基準電圧生成回路の抵抗分割回路に含まれる抵抗素子であることを特徴とする振動デバイス。
【請求項11】
請求項1に記載の振動デバイスにおいて、
前記第1回路は、
前記集積回路に用いられるレギュレート電圧を生成するレギュレーター回路であり、
前記第1回路素子は、
前記レギュレーター回路の抵抗分割回路に含まれる抵抗素子であることを特徴とする振動デバイス。
【請求項12】
請求項1に記載の振動デバイスにおいて、
前記第1回路は、
温度を検出する温度センサー回路であり、
前記第1回路素子は、
前記温度センサー回路のカレントミラー回路に含まれるトランジスターであることを特徴とする振動デバイス。
【請求項13】
請求項1に記載の振動デバイスにおいて、
前記第1回路は、
制御回路又はメモリーであり、
前記第1回路素子は、
前記制御回路又は前記メモリーに含まれるトランジスターであることを特徴とする振動デバイス。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の振動デバイスにおいて、
前記第2回路は、
前記第2領域に配置される第2回路素子を含み、
前記第2回路素子は前記受動素子であり、
前記受動素子は、容量素子及び抵抗素子の少なくとも一方であることを特徴とする振動デバイス。
【請求項15】
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の振動デバイスにおいて、
前記第2回路は、
前記第2領域に配置される第2回路素子を含み、
前記第2回路は、
前記振動素子を発振させる発振回路であり、
前記第2回路素子は、
前記発振回路に含まれる容量素子及び抵抗素子の少なくとも一方であることを特徴とする振動デバイス。
【請求項16】
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の振動デバイスにおいて、
前記第2回路は、
前記第2領域に配置される第2回路素子を含み、
前記第2回路は、
前記振動素子の発振周波数の温度補償を行う温度補償回路であり、
前記第2回路素子は、
前記温度補償回路に含まれる抵抗素子であることを特徴とする振動デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動デバイス等に関する。
【背景技術】
【0002】
振動素子を用いたデバイスとして発振器等の振動デバイスが知られている。このような振動デバイスとしては、例えば断面がH型のパッケージの第1凹部に、振動素子を収容し、第2凹部に、発振回路等を有するIC(Integrated Circuit)チップを収容した発振器が知られている。一方、特許文献1には、上面側である一方面側に集積回路が配置されたベースと、ベースの一方面側に接合されたリッドと、ベースとリッドとの間に収容された振動素子とを含むWLP(Wafer Level Packaging)のタイプの振動デバイスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-57755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなWLPタイプの振動デバイスでは、ベースの上面側である一方面側に配置された集積回路に対して、応力が印可されることにより、集積回路の回路特性に影響が出てしまう課題があることが判明した。例えば、ベースとリッドとを接合するために、リッドとベースとを挟むようにして加圧する必要がある。このときベースに生じる応力により、ベースの一方面側に形成された集積回路の回路特性に影響し、振動デバイスの特性が劣化してしまうなどのおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、第1面と前記第1面と表裏関係にある第2面とを有し、前記第1面に集積回路が配置される半導体基板を含むベースと、前記集積回路に電気的に接続される振動素子と、前記振動素子を収容する凹部が設けられ、前記凹部の周囲の側壁部を有し、前記側壁部の端面が前記第1面に対して接合部において接合されるリッドと、を含み、前記集積回路は、第1回路及び第2回路を含み、前記第1回路は、前記第1面の第1領域、第2領域のうち、前記第1面に直交する平面視において前記接合部に重なる前記第1領域に配置される第1回路素子を含み、前記第1回路素子は、受動素子又はトランジスターであり、前記第1面と前記側壁部の内側側面との間の角度をθとしたとき、θ<90°を満たす振動デバイスに関係する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本実施形態の振動デバイスの構成例を示す断面図。
図2】振動デバイスの製造工程の一例を示すフロー図。
図3】振動デバイスの製造工程の一例を示すフロー図。
図4】振動デバイスの製造工程の一例を示すフロー図。
図5】振動デバイスの製造工程の一例を示すフロー図。
図6】振動デバイスの製造工程の一例を示すフロー図。
図7】振動デバイスの製造工程の一例を示すフロー図。
図8】振動デバイスの製造工程の一例を示すフロー図。
図9】本実施形態におけるリッドの側壁部の傾斜についての説明図。
図10】集積回路における回路素子や回路の配置についての説明図。
図11】第1回路素子、第1回路の配置についての説明図。
図12】第2回路素子、第2回路の配置についての説明図。
図13】傾斜角α、角度θと応力の関係についての説明図。
図14】傾斜角α、角度θと応力の関係についての説明図。
図15】ベースの各位置での応力についての説明図。
図16】ベースの各位置での応力比を示す図。
図17】ベースの各位置での応力比を示す図。
図18】本実施形態の回路素子の配置手法の説明図。
図19】集積回路の構成例を示す図。
図20】集積回路の他の構成例を示す図。
図21】第1回路、第2回路、第1回路素子、第2回路素子の配置手法の説明図。
図22】基準電圧生成回路の構成例。
図23】レギュレーター回路の構成例。
図24】温度センサー回路の構成例。
図25】温度センサー回路の構成例。
図26】発振回路の構成例。
図27】温度補償回路の構成例。
図28】温度補償回路の関数電流生成回路の構成例。
図29】集積回路のレイアウト配置例。
図30】集積回路のレイアウト配置例。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲の記載内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが必須構成要件であるとは限らない。また以下の各図面において、説明の便宜上、一部の構成要素を省略することがある。また各図面において、分かり易くするために各構成要素の寸法比率は実際とは異なっている。
【0008】
1.振動デバイス
図1は本実施形態の振動デバイス1の構成例を示す断面図である。図1に示すように本実施形態の振動デバイス1は、ベース2とリッド3と振動素子5を含む。また振動デバイス1は、外部接続端子91、92を含むことができる。なお本実施形態で説明する各図には、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、及びZ軸を図示している。X軸に沿った方向をX軸方向又は第1方向DR1と言い、Y軸に沿った方向をY軸方向又は第2方向DR2と言い、Z軸に沿った方向をZ軸方向又は第3方向DR3と言う。また各軸方向の矢印先端側を「プラス側」、基端側を「マイナス側」と言い、Z軸方向プラス側を「上」、Z軸方向マイナス側を「下」とも言う。例えばZ軸方向は鉛直方向に沿い、XY平面は水平面に沿っている。図1はY軸方向である第2方向DR2からの断面視での振動デバイス1の断面図である。
【0009】
振動デバイス1は例えば発振器である。具体的には振動デバイス1は、例えば温度補償水晶発振器(TCXO)、恒温槽付き水晶発振器(OCXO)、電圧制御水晶発振器(VCXO)、温度補償機能を有しない水晶発振器(SPXO)、SAW(Surface Acoustic Wave)発振器、電圧制御型SAW発振器、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)発振器等の発振器である。MEMS発振器は、シリコン基板等の基板に圧電膜及び電極を配置したMEMSの振動素子により実現できる。但し振動デバイス1は、加速度センサー、角速度センサーのような慣性センサーや、傾斜センサーのような力センサー等であってもよい。
【0010】
ベース2は、半導体基板20を含む。半導体基板20は、例えばシリコン基板である。半導体基板20は、第1面21と、第1面21と表裏関係にある第2面22を有する。第1面21は半導体基板20の例えば上面であり、第2面22は半導体基板20の例えば下面である。半導体基板20の第1面21、第2面22はベース2の第1面、第2面でもある。半導体基板20の第1面21及び第2面22は、XY平面に沿った面であり、Z軸に直交する面である。即ち第1面21及び第2面22は、第1方向DR1及び第2方向DR2に沿った面であり、第3方向DR3に直交する面である。なお「直交」は、90°で交わっているものの他、90°から若干傾いた角度で交わっている場合も含むものとする。
【0011】
またベース2は、集積回路10を含む。半導体回路である集積回路10は、半導体基板20の第1面21に形成されている。集積回路10は複数の回路素子により構成される。回路素子は、例えばトランジスター又はダイオードなどの能動素子や、或いは容量素子、抵抗素子又はインダクター素子などの受動素子である。トランジスターはCMOSトランジスター又はバイポーラートランジスターなどである。具体的には集積回路10は、各回路ブロックが複数の回路素子を含む複数の回路ブロックにより構成される。集積回路10の第1回路、第2回路はこれらの回路ブロックの1つである。また集積回路10は、半導体基板20に対して不純物をドーピングすることで形成される不純物領域である拡散領域と、金属層と絶縁層が積層された配線層とにより形成される。拡散領域により、集積回路10の回路素子であるトランジスターのソース領域及びドレイン領域が形成され、配線領域により、回路素子間を接続する配線が形成される。なお本実施形態における接続は電気的な接続である。電気的な接続は、電気信号が伝達可能に接続されていることであり、電気信号による情報の伝達が可能となる接続である。電気的な接続は受動素子等を介した接続であってもよい。
【0012】
またベース2は貫通電極40を含む。貫通電極40は、半導体基板20を貫通する導電性材料により構成される。例えば半導体基板20に対して貫通孔を形成し、この貫通孔を導電性材料で埋めることにより貫通電極40が形成される。導電性材料は、銅などの金属であってもよいし、導電性のポリシリコンなどであってもよい。導電性のポリシリコンとは、例えばリン(P)、ボロン(B)、又は砒素(As)等の不純物をドープして導電性を付与したポリシリコンのことを言う。導電性材料としてポリシリコンを用いると、集積回路10の形成工程において加わる熱に対して十分な耐性を有する貫通電極40の実現が可能になる。
【0013】
貫通電極40は、一端が集積回路10に電気的に接続され、他端が外部接続端子91、92に電気的に接続される。具体的には貫通電極40の一端は、集積回路10に形成されるコンタクト用のパッドを介して集積回路10の回路素子に接続される。また外部接続端子91、92は、半導体基板20の第2面22側に絶縁層等を介して設けられる。このようにすることで、貫通電極40を介して集積回路10と外部接続端子91、92を電気的に接続できるようになる。そして、振動デバイス1の外部接続端子91、92を、振動デバイス1が実装される回路基板等の端子や配線に接続する実装を行うことで、振動デバイス1を電子機器に組み込むことが可能になる。
【0014】
リッド3は、接合部36、37においてベース2に接合される。ベース2は例えばシリコン基板等の半導体基板により構成される。具体的にはリッド3は、振動素子5を収容する凹部30が設けられ、凹部30の周囲の側壁部32、33を有する。側壁部32、33は、Z軸方向である第3方向DR3での平面視において、例えば凹部30の周囲に設けられた壁部である。そして側壁部32、33の端面34、35がベース2の第1面21に対して接合部36、37において接合される。接合部36、37は例えば金又は銅などの金属膜により構成される。そして金などの金属膜の接合部36、37の部分に後述する加重による加圧が加わることでベース2とリッド3が接合される。なお接合部36、37によるベース2とリッド3との接合手法はこれに限定されず、直接接合など種々の接合手法が考えられる。そしてベース2と、蓋体であるリッド3とにより、気密性を有する収容空間SPが形成され、振動素子5は、この収容空間SP内に収容される。この収容空間SPがリッド3の凹部30に対応する。収容空間SPは気密封止されており、収容空間SP内は、例えば減圧状態である。これにより、振動素子5を安定して駆動させることができる。なお、収容空間SP内の状態は減圧状態に限定されず、例えば収容空間SP内が不活性ガス雰囲気であってもよい。
【0015】
本実施形態では、ベース2とリッド3が共に例えばシリコン基板等の半導体基板により構成される。これによりベース2とリッド3の熱膨張係数を等しくすることが可能になり、熱膨張に起因する熱応力の発生を抑えることができ、優れた特性の振動デバイス1を実現できる。また振動デバイス1を半導体プロセスにより形成できるため、振動デバイス1を精度よく効率的に製造することが可能になると共に振動デバイス1の小型化を図れる。なおベース2とリッド3を構成する半導体基板は、シリコン基板には限定されず、Ge、GaP、GaAs又はInP等の半導体基板であってもよい。
【0016】
振動素子5は、電気的な信号により機械的な振動を発生する素子である。振動素子5は、集積回路10に電気的に接続されている。例えば振動素子5は、半導体基板20の第1面21側に配置されている。具体的には振動素子5は、半導体基板20の第1面21から所与の離間距離だけ離れた位置に配置されている。更に具体的には振動素子5は、半導体基板20の第1面21に対して、例えば導電性の接合部60などを介して固定される。
【0017】
例えば振動素子5は、振動基板と、振動基板の表面に配置された電極を有する。振動基板は、厚みすべり振動モードを有し、例えばATカット水晶基板などから形成されている。ATカット水晶基板は、3次の周波数温度特性を有しているため、優れた温度特性を有する振動素子5となる。また電極は、振動基板の上面に配置された励振電極と、励振電極と対向して下面に配置された励振電極と、を有する。
【0018】
なお、振動素子5の構成は、上述の構成に限定されない。例えば、振動素子5は、2つの励振電極に挟まれた振動領域がその周囲から突出したメサ型となっていてもよいし、逆に、振動領域がその周囲から凹没した逆メサ型となっていてもよい。また、振動基板の周囲を研削するベベル加工や、上面および下面を凸曲面とするコンベックス加工が施されていてもよい。また振動素子5は、厚みすべり振動モードで振動するものに限定されない。例えば振動素子5は、複数の振動腕が面内方向に屈曲振動する音叉型振動素子、複数の振動腕が面外方向に屈曲振動する音叉型振動素子、駆動振動する駆動腕及び検出振動する検出腕を備えて角速度を検出するジャイロセンサー素子、又は加速度を検出する検出部を備えた加速度センサー素子であってもよい。また振動基板は、ATカット水晶基板から形成されたものに限定されず、ATカット水晶基板以外の水晶基板、例えば、Xカット水晶基板、Yカット水晶基板、Zカット水晶基板、BTカット水晶基板、SCカット水晶基板、又はSTカット水晶基板等から形成されていてもよい。また、本実施形態では、振動基板が水晶で構成されているが、これに限定されず、例えば、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、四ホウ酸リチウム、ニオブ酸カリウム、又はリン酸ガリウム等の圧電単結晶体により構成されていてもよいし、これら以外の圧電単結晶体で構成されていてもよい。また振動素子5は、圧電駆動型の振動素子に限らず、静電気力を用いた静電駆動型の振動素子であってもよい。
【0019】
振動素子5は集積回路10に電気的に接続されている。例えば半導体基板20の第1面21側には、金属等で形成されたマウント電極62が設けられ、マウント電極62上には導電性の接合部60が設けられている。これにより振動素子5を、接合部60、マウント電極62を介して集積回路10に電気的に接続できるようになる。例えば半導体基板20の第1面21には絶縁層が形成され、その絶縁層上にマウント電極62が形成される。そしてマウント電極62は、絶縁層に設けられた配線64と集積回路10の不図示のコンタクト用パッドとを介して集積回路10の回路素子に接続される。導電性の接合部60はバンプなどにより実現される。バンプは導電性の接合部材であり、具体的には金バンプ、銀バンプ、銅バンプ、はんだバンプ又は樹脂コアバンプ等である。なお導電性の接合部60として、ポリイミド系、エポキシ系、シリコーン系、又はアクリル系の各種接着剤に銀フィラー等の導電性フィラーを分散させた導電性接着剤等を用いてもよい。
【0020】
以上に説明したように本実施形態の振動デバイス1は、第1面21と第2面22とを有し、例えば第1面21に集積回路10が配置される半導体基板20を含むベース2と、集積回路10に電気的に接続される振動素子5を含む。また振動デバイス1は、振動素子5を収容する凹部30の周囲の側壁部32、33を有し、側壁部32、33の端面34、35が第1面21に対して接合部36、37において接合されるリッド3を含む。そして図1では集積回路10が、リッド3側である半導体基板20の第1面21に形成されているため、集積回路10を収容空間SP内に配置することができ、集積回路10を外部環境から保護することが可能になる。
【0021】
次に振動デバイス1の製造フローの一例について図2図8を用いて説明する。まず図2に示すように第1半導体ウェハー120上に外部接続端子91、92を形成する。そして図3に示すように、第1半導体ウェハー120の第1面21側を研削研磨して、例えば60~80μm程度の厚さにする。次に図4に示すように、第1半導体ウェハー120に貫通孔41(Through Silicon Via)を形成し、貫通孔41の内面に、例えば酸化シリコン(SiO)等の絶縁膜42を形成する。そして図5に示すように貫通孔41に貫通電極40を形成し、半導体基板20の第1面21に集積回路10を形成する。
【0022】
次に図6に示すように振動素子5を接合部60に接続する。これにより振動素子5と集積回路10が電気的に接続されるようになる。またリッド3を形成するための第2半導体ウェハー130を用意し、第2半導体ウェハー130の凹部側の面に対して、金等の材料による接合膜である金属膜132を形成する。
【0023】
次に図7に示すように、ベース2を形成する第1半導体ウェハー120に対して、リッド3を形成する第2半導体ウェハー130を、接合部36、37を介して応力印加により接合する。この接合は例えば真空雰囲気下において行われる。接合部36、37は、図6に示す金等の金属膜132により形成される接合部である。第1半導体ウェハー120に第2半導体ウェハー130を接合する際に荷重により印加される力は例えば10トン以上であり、一例としては20トン程度である。
【0024】
次に図8に示すように研削の後、ダイシングソー等によって振動デバイス1を個片化するダイシングを行う。以上により第1半導体ウェハー120、第2半導体ウェハー130から多数の振動デバイス1を個片化することが可能になる。振動デバイス1の平面視での長辺の長さは一例としては1.2mm~1.0mm程度であり、短辺の長さは一例としては1.0mm~0.8mm程度である。ダイシングの刃の幅は例えば20μm程度であり、振動デバイス1の接合部36、37の幅は例えば30μm~100μm程度であり、一例としては60μm程度である。
【0025】
2.WLPの振動デバイス
従来の振動デバイスでは、ICのチップと水晶の振動素子をセラミックパッケージの中に内蔵する構成となっていた。これに対して図1図8で説明したWLPの振動デバイス1は、IC自体をパッケージ化しているため、ICである集積回路10の面積を最大化でき、小型で高機能な発振器等を実現できる。例えばセラミックパッケージのタイプの振動デバイスでは、平面視におけるICの面積は振動デバイスのパッケージの面積の例えば50~60%以下である。これに対してWLPの振動デバイス1によれば、集積回路10の面積をベース2の面積の例えば50~60%よりも大きくすることが可能になる。これにより、振動デバイス1をより高機能にするための回路を集積回路10に設けることも可能になる。
【0026】
しかしながら、WLPの振動デバイス1では、図7に示すように、ベース2を形成する第1半導体ウェハー120と、リッド3を形成する第2半導体ウェハー130とを加重により接合する際に、接合部36、37に大きな応力が発生し、この応力が集積回路10にも加わる。そして残留応力等により集積回路10の回路特性が変化してしまうおそれがあるという課題がある。
【0027】
例えば前述の特許文献1の振動デバイスでは、半導体基板の主面に対して90°の角度で垂直に側壁部が形成されている。これにより振動素子の収容空間を広く取ることができ、振動素子のサイズを最大化できるため、振動素子の振動特性等を向上できる。しかしながら、ベースを形成する第1半導体ウェハーとリッドを形成する第2半導体ウェハーとを接合する際に生じる垂直方向の加重は、垂直に接合部に伝わるため、リッドとベースの接合部付近に強い応力が発生し易くなる。そして振動デバイスの小型化と高機能化の両立のためには、集積回路の回路素子をなるべく広い範囲で高い集積度で配置することが要求される。このため平面視においてリッドとベースの接合部に重なる領域にも回路素子を配置することが望まれる。しかしながら、接合部に重なる領域に回路素子が配置されると、接合の際の加重によって生じた応力が原因で、回路素子や回路素子を含む回路の回路特性が劣化するおそれがあるため、回路素子が配置可能な領域に制約を受ける場合がある。
【0028】
そこで本実施形態では図9や前述の図1に示すように、リッド3の側壁部32、33の内側側面38、39を、ベース2の半導体基板20の第1面21に対して傾斜させている。即ち側壁部32、33の内側側面38、39を、第1面21に対して垂直になるように形成するのではなく、第1面21に対して傾斜するように形成する。このようにリッド3の側壁部32、33の内側側面38、39に傾斜を持たせることで、リッド3の剛性を高めることができ、垂直方向に押した際の加重による応力を低減できる。即ち、リッド3の側壁部32、33の内側側面38、39に傾斜を持たせることで、図7に示すようにリッド3側を垂直方向に押した際の加重及び応力の発生方向を傾斜させて、接合部36、37の内側領域も含めて応力を分散させる。これにより接合部36、37の付近に生じる応力の最大値を減らすことができ、集積回路10の能動面に生じる応力を低減することが可能になる。そして集積回路10に大きな応力が加わり難くなるため、回路素子の特性変動を小さくでき、高精度の特性の振動デバイス1を実現することが可能になる。また集積回路10において応力が大きくなる領域を縮小することができ、集積回路10の回路素子を搭載できる面積を拡大できるため、小型で高機能な振動デバイス1の実現が可能になる。
【0029】
図10は、集積回路における回路素子や回路の配置についての説明図である。図10に示すように、ベース2は、第1面21に直交する方向の平面視において、第1辺SD1と、第1辺SD1の対辺である第2辺SD2と、第3辺SD3と、第3辺SD3の対辺である第4辺SD4を有する。ベース2は平面視において例えば矩形である。矩形には、長方形以外にも、正方形や、長方形や正方形に準じた形状等も含まれる。長方形や正方形に準じた形状とは、内角が90°からずれた四角形や、角部が面取りされたり丸みをつけられた四角形等である。また第1辺SD1から第2辺SD2に向かう方向を第1方向DR1とし、第3辺SD3から第4辺SD4に向かう方向を第2方向DR2とする。第1方向DR1は例えばX軸方向であり、第2方向DR2は例えばY軸方向である。第1面21に直交する方向である平面視の方向は、第1方向DR1及び第2方向DR2に直交する方向であり、例えばZ軸方向である。
【0030】
そして集積回路10は、第1回路及び第2回路を含む。第1回路、第2回路は、能動素子及び受動素子の少なくとも1つにより構成される回路であり、例えば特定の機能を実現するために複数の回路素子により構成される回路ブロック又はマクロブロックと呼ばれるものである。ここで第1回路は例えば第1回路素子を含み、第2回路は例えば第2回路素子を含む。そして図10に示すように、集積回路10の第1回路の第1回路素子は、ベース2の第1面21の第1領域ARA、第2領域ARBのうち、第1領域ARAに配置される。ベース2の第1面21は半導体基板20の第1面でもある。具体的には、第1領域ARAは、第1面21に直交する平面視において接合部36、37に重なる領域である。一方、第2領域ARBは、第1領域ARAの内側の領域である。例えば第2領域ARBは、ベース2の中央点CPを含む領域であり、第1領域ARAは、第2領域ARBを囲む領域である。例えば第1領域ARAの内側の領域のうち、第2領域ARBを除いた領域が、第1領域ARAになる。そして集積回路10の第1回路の第1回路素子は、第1領域ARAに配置され、集積回路10の第2回路の第2回路素子は、第1領域ARAよりも内側の第2領域ARBに配置される。なお第1領域ARA、第2領域ARBは、応力分布に応じた回路素子の配置領域を設定するために規定した領域であり、実際にこのような領域が集積回路10に実存するということではない。また本実施形態における集積回路10の配置領域は例えばガードリングの内側の領域であり、ガードリングの外側のスクライブエリアを含まないものとする。
【0031】
このように第1領域ARAは、例えば平面視において接合部36、37と重なる領域になっている。平面視は第1方向DR1及び第2方向DR2に直交する方向での平面視であり、第3方向DR3での平面視である。図10のE1に示す点線と、ベース2の端部との間の領域が、平面視における接合部36、37の領域に対応する。そして第1領域ARAは、平面視において接合部36、37と、領域AOVにおいて重なっている。このようにすれば、平面視において接合部36、37に対応する領域にも、例えば第1領域ARAの第1回路素子を配置することが可能になる。これにより、接合部36、37に対応する領域を有効活用して、第1回路素子を配置できるようになり、集積回路10の配置面積を拡大できるようになる。
【0032】
ここで図11に示すように、第1回路の第1回路素子が第1領域ARAに配置されていればよく、例えば第1回路の他の部分が第2領域ARBに配置されてもよい。即ち第1回路のうち少なくとも第1回路素子が第1領域ARAに配置されていればよい。また図12に示すように、第2回路の第2回路素子が第2領域ARBに配置されていればよく、例えば第2回路の他の部分が第1領域ARAに配置されてもよい。即ち第2回路のうち少なくとも第2回路素子が第2領域ARBに配置されていればよい。
【0033】
そして第1領域ARAに配置される第1回路素子は、受動素子又はトランジスターである。受動素子は例えば容量素子、抵抗素子又はインダクター素子などであり、トランジスターは例えばCMOSのトランジスター又はバイポーラートランジスターなどである。そして本実施形態では、図9に示すように、半導体基板20の第1面であるベース2の第1面21と、リッド3の側壁部32の内側側面38との間の角度をθとしたとき、θ<90°の関係を満たす。
【0034】
なお、第1面21とリッド3の側壁部33の内側側面39との間の角度についてもθ<90°の関係を満たしているが、以下では、説明の簡素化のために、リッド3の側壁部32、内側側面38を主に例にとり説明し、側壁部33、内側側面39については詳細な説明を省略する。例えば以下において側壁部32の記載は、側壁部32及び側壁部33を代表して表すものとし、内側側面38の記載は、内側側面38及び内側側面39を代表して表すものとする。
【0035】
例えば図9において接合部36の接合境界をBLとする。接合境界BLは、接合部36の内側の境界であり、第1面21に直交する方向に沿った境界である。即ち接合境界BLは第1方向DR1及び第2方向DR2に直交する第3方向DR3に沿った境界であり、例えばZ軸方向に沿った境界である。また接合部36よりも内側とは接合部36からベース2の中央部に向かう方向である。この場合に側壁部32の傾斜角αは、側壁部32の内側側面38に沿った方向と接合境界BLとのなす角度に対応する。そして第1面21と側壁部32の内側側面38との間の角度θは、θ=90°-αと表すことができる。例えばθ<90°は傾斜角がα>0になることに対応し、側壁部32の内側側面38が第1面21に直交する方向から正の方向に傾いていることを意味する。例えば内側側面38が、接合境界BLからベース2の中央部側である内側方向に傾いている場合は、内側側面38の傾斜は正の方向の傾斜であり、傾斜角αは正であるプラスの値になる。内側側面38が、接合境界BLからベース2の外側方向に傾いている場合は、内側側面38の傾斜は負の方向の傾斜であり、傾斜角αは負であるマイナスの値になる。正の方向の傾斜は例えば順方向のテーパーである順テーパーであり、負の方向の傾斜は例えば逆方向のテーパーである逆テーパーである。
【0036】
このように本実施形態では、θ<90°となるようにリッド3の側壁部32の内側側面38に傾斜を持たせている。このように側壁部32の内側側面38に傾斜を持たせることで、図7で説明した第1半導体ウェハー120と第2半導体ウェハー130の接合時の荷重による応力を、接合部36の内側領域を含む全体の領域に分散させることができる。これにより、応力が最大値となる領域での応力を低減することが可能になる。例えば荷重による応力を、接合部36の接合境界BLから内側の方向などに分散させることで、応力が最大値となる接合部36の付近の領域での応力が低減されるようになる。
【0037】
そして図10に示すように、第1回路素子が配置される第1領域ARAは、平面視において接合部36に重なる領域であり、接合部36の付近の領域である。このため第1領域ARAでは他の領域に比べて応力が大きく、応力が最大値となる領域が存在する。従って、θ<90°となるようにリッド3の側壁部32の内側側面38に傾斜を持たせることで、第1領域ARAに発生する応力を、接合部36よりも内側の領域などに分散できるため、第1領域ARAに配置される第1回路素子に印加される応力を低減できるようになる。このようにすれば、半導体ウェハーの接合時の荷重による応力を原因として、第1回路素子の回路特性が劣化したり、第1回路素子を含む第1回路の回路特性が劣化するのを抑制できるようになる。これにより、小型で高機能な振動デバイス1を実現できると共に、応力を原因とする振動デバイス1の特性の劣化を効果的に抑制することが可能になる。
【0038】
次に側壁部32の内側側面38の傾斜角α、角度θと応力との関係について詳細に説明する。図13は、図9の位置M20での傾斜角α、角度θと応力の関係を示す図である。縦軸の応力は正規化した応力の値である。位置M20は、接合境界BLから20μmの距離だけ外側の位置である。例えば図10の第1領域ARAを広げて、第1領域ARAの外側の境界をベース2の端部に近づけた場合に、位置M20は第1領域ARA内の位置になる。なお図9では接合境界BLから内側の位置への距離については「+」を付加し、接合境界BLから外側の位置への距離については「-」を付加している。
【0039】
図13に示すように本実施形態では、側壁部32の内側側面38に傾斜を持たせ、傾斜角をα>0°としている。即ち内側側面38と第1面21との間の角度θ=90°-αを、θ<90°とすることで、接合部36の付近の位置M20における応力を低減する。例えば角度がθ<90°となる図13の範囲RN1、RN2、RN3では、θ=90°である場合に比べて、位置M20での応力が低減される。これにより接合部36の付近の領域である第1領域ARAに配置される第1回路素子や第1回路素子を含む第1回路についての応力を原因とする回路特性の劣化を効果的に抑制できるようになる。
【0040】
即ち、第1面21に対してθ=90°の角度となるように側壁部32を垂直に形成すると、図7のようにリッド3側を垂直方向に押す加重がかかった場合に、垂直方向の加重による応力が分散されないため、接合部36の付近の領域の位置M20での応力も大きくなってしまう。これに対してθ<90°として側壁部32の内側側面38に傾斜を持たせることで、垂直方向の加重による応力が分散されるようになる。従って、接合部36の付近の領域の位置M20での応力の最大値を低減でき、第1領域ARAの第1回路素子に印加される応力を低減できるようになる。
【0041】
また図14では、図9の位置P30、位置P110、位置P180での傾斜角α、角度θと応力の関係が示されている。位置P30、位置P110、位置P180は、各々、接合境界BLから30μm、110μm、180μmの距離だけ内側の位置である。なお図14の縦軸の応力は、応力が最大となる位置での応力の値が1.0となるように正規化されている。
【0042】
図14に示すように接合境界BLから内側の位置P30、位置P110、位置P180では、θ<90°となるように傾斜を持たせると、応力が増加する。即ちθ<90°とすると、垂直方向の加重による応力が分散することで、接合部36よりも内側の位置P30、位置P110、位置P180での応力が増加する。この場合に、接合境界BLから遠い位置ほどθ<90°としたときの応力の増加量が大きい。そして、このようにθ<90°とすることにより、垂直方向の加重による応力が分散して、接合境界BLよりも内側の位置P30、位置P110、位置P180での応力が増加すると、その応力の増加の分だけ、接合境界BLよりも外側の位置M20での応力が減少する。例えば位置M20は、他の位置P30、P110、P180に対して、応力が最大値となる位置であり、この位置M20での応力が、θ<90°とすることで減少する。これにより第1領域ARAに配置される第1回路素子に印加される応力が低減されるようになる。
【0043】
以上のように本実施形態では、集積回路10が第1面21に配置されるベース2と、集積回路10に接続される振動素子5と、ベース2に接合されるリッド3とを含む振動デバイス1において、集積回路10の第1回路の第1回路素子を、図10に示すように平面視において接合部36に重なる第1領域ARAに配置している。そしてベース2の第1面21と、側壁部32の内側側面38との間の角度をθとした場合に、θ<90°となるようリッド3の側壁部32の内側側面38を傾斜させている。
【0044】
このように側壁部32の内側側面38を傾斜させることで、リッド3側を垂直方向に押した際の荷重及び応力の発生方向を分散させる。これにより、接合部36の付近の領域に生じる応力の最大値を減らすことができ、集積回路10の能動面に生じる応力の最大値を低減でき、特性変動が小さい高精度な振動デバイス1を実現できる。また集積回路10の応力が大きい領域を小さくすることができ、集積回路10の回路素子を搭載できる面積を広くとることができるため、小型で高機能な振動デバイス1を実現できる。また接合時の荷重に対する耐性を高めることで、振動デバイス1の製品をマウントする際に、製品を保持する荷重に対しても強度を高めることができる。このことから、小型で高機能且つ堅牢な振動デバイス1を提供できるようになる。
【0045】
また本実施形態では、第1面21と内側側面38との間の角度θが、θ≦80°の関係式を満たしてもよい。このようにすれば、接合部36の付近の位置M20での応力が図13の範囲RN2、RN3での応力になり、範囲RN1での応力に比べて応力値を更に低減できる。これにより接合部36の付近の第1領域ARAに配置される第1回路素子に印加される応力を更に低減できるようになり、応力印加を原因とする第1回路素子や第1回路の回路特性の劣化を更に抑制できるようになる。
【0046】
また本実施形態では、第1面21と内側側面38との間の角度θが、θ>45°の関係式を満たすことが望ましい。このようにすれば、角度θを無用に小さくすることで、振動素子5の配置スペースに制限が生じてしまう事態を防止できるようになる。例えば角度θをθ≦45°として、側壁部32の内側側面38を更に傾かせると、図1の収容空間SPの左側のスペースが減少してしまい、振動素子5の配置スペースが減少してしまう。即ちθ≦45°とすると、側壁部32の内側側面38が振動素子5に接触してしまう事態が発生するため、振動素子5のサイズを小さくしなければならなくなり、振動素子5の振動特性等の劣化を招いてしまう。この点、90°>θ>45°の関係を満たすようにすれば、接合部36の付近の領域での応力である応力の最大値を減少させて第1回路素子や第1回路の回路特性の劣化を抑制しながら、配置スペースが減少することによる振動素子5の振動特性等の劣化についても抑制できるようになる。
【0047】
また本実施形態では、リッド3は、側壁部32の内側側面38が、単結晶シリコンの結晶方位<111>に沿っていてもよい。具体的には図13図14において、α=35.3°、θ=54.7°となっていてもよい。このようにすれば、接合部36の付近の位置M20での応力である応力の最大値を十分に小さくできると共に、ウェットエッチングを有効活用して側壁部32の内側側面38の傾きを形成することが可能になる。例えば図1図9の凹部30であるキャビティーを、図6の単結晶シリコンの第2半導体ウェハー130に対するウェットエッチングにより形成できるようになる。例えば単結晶シリコンでは、<111>の面の方が、他の<100>などの面に比べてウェットエッチングの速度が遅く、エッチングされにくいという性質がある。従って、この性質を利用した結晶異方性エッチングにより単結晶シリコンの第2半導体ウェハー130のウェットエッチングを行うことで、ウェットエッチングの速度が遅い<111>の面が側壁部32の内側側面38として現れるようになる。これにより結晶方位<111>に沿った側壁部32の内側側面38を容易に形成できる。そして側壁部32の内側側面38が結晶方位<111>に沿うことで、傾斜角がα=35.3°となり、第1面21と内側側面38との間の角度がθ=54.7°となるような傾きを持つ側壁部32を形成できるようになる。これにより図13図14に示すように接合部36の付近の位置M20での応力が低減され、第1回路素子や第1回路の回路特性の劣化を抑制できるようになる。
【0048】
なお側壁部32の内側側面38は、このようなウェットエッチングにより傾斜を形成することが望ましいが、本実施形態はこれには限定されず、ドライエッチングで傾斜を形成したり、ウェットエッチングにドライエッチングを組み合わせて傾斜を形成するなどの種々の変形実施が可能である。
【0049】
例えばドライエッチングでは、反応性ガスであるエッチングガスをプラズマ化し、レジストによるマスクが形成されたシリコン基板等の半導体基板に対して、高周波電源等によりプラズマの活性種を接触・反応させて半導体基板の表面をエッチングする。プラズマ源としては容量結合型プラズマ(CCP)、電子サイクロトロン共鳴プラズマ(ECR)、又は誘導結合型プラズマ(ICP)などを用いることができる。
【0050】
例えばドライエッチングである反応性イオンエッチング(RIE)では、処理室に発生したプラズマ中には、陽イオンや電子以外にも、ラジカルと呼ばれる中性活性種が存在する。例えば陽イオンは、高周波電源等の電圧により加速されて、半導体基板に衝突することで、半導体基板に対して加速方向へのエッチングが行われる。これによりリッド3の凹部30の底面についてのエッチングが実現される。一方、中性活性種は、半導体基板やマスクのレジスト等と反応して、反応生成物を発生させる。この反応生成物が、エッチングされた部分の側壁に付着すると、付着した反応生成物がマスクとなって、例えば側壁に順テーパーを形成できる。これによりリッド3の内側側面39に正の傾斜を形成できる。
【0051】
具体的にはドライエッチングを用いる場合には、リッド3のシリコン基板の基板温度や処理室の圧力を制御することで、角度θを制御できる。例えばドライエッチングである反応性イオンエッチングを行う際の基板温度を高くすると、角度θは90°に近づく。圧力を低下させた場合にも角度θは90°に近づく。一方、基板温度を低くすると、角度θは90°よりも小さくなる。また圧力を高くした場合にも角度θは90°よりも小さくなる。これは、基板温度の冷却や圧力の上昇によって、イオン衝撃が少ない側壁部32の内側側面38での反応生成物の吸着量が多くなり、マスクとなる厚い重合膜が内側側面38に形成されるからである。このように反応性イオンエッチングにおける基板温度や圧力を制御することで、角度θを制御して、側壁部32の内側側面38に所望の角度の傾斜を持たせることが可能になる。なお反応性イオンエッチングにおいて反応性ガスの組成比を変えることで、角度θを制御して、側壁部32の内側側面38に所望の角度の傾斜を持たせるようにしてもよい。
【0052】
また本実施形態では、図7等で説明したように、リッド3は、ベース2を形成する第1半導体ウェハー120に対して、接合部36、37を介して応力印加により接合される第2半導体ウェハー130により形成されている。このようにすれば、第1半導体ウェハー120と第2半導体ウェハー130を接合して、ダイシング等を行うことで、多数の振動デバイス1を個別化することが可能になる。そして、第1半導体ウェハー120と第2半導体ウェハー130の接合により応力が印加された場合にも、本実施形態によれば、第1面21と内側側面38との間の角度がθ<90°の関係を満たすため、第1領域ARAでの応力印加に起因する第1回路素子や第1回路の回路特性の劣化を抑制することが可能になる。
【0053】
3.回路素子の配置
次に本実施形態における集積回路10での回路素子の詳細な配置手法について説明する。図15図16図17は、ベース2の各位置での応力について説明するための図である。
【0054】
例えば図15において、ベース2の中央点CPと第1辺SD1、第2辺SD2との第1方向DR1での距離をWXとし、ベース2の中央点CPと第3辺SD3、第4辺SD4との第2方向DR2での距離をWYとする。例えばベース2の第1方向DR1での長さは2×WXであり、一例としては1.0mm~1.2mm程度であるが、これよりも短かったり、長くてもよい。ベース2の第1方向DR1での長さである2×WXは、ベース2の例えば横方向の長さであり、例えば長辺方向の長さである。またベース2の第2方向DR2での長さは2×WYであり、一例としては0.8mm~1.0mm程度であるが、これよりも短かったり、長くてもよい。ベース2の第2方向DR2での長さである2×WYは、ベース2の例えば縦方向の長さであり、例えば短辺方向の長さである。
【0055】
図16図17はベース2の各位置での応力比を示す図である。図16はベース2の長辺方向である第1方向DR1での各位置での応力比を示す図であり、図17はベース2の短辺方向である第2方向DR2での各位置での応力比を示す図である。応力比は、応力が最大となる位置での応力に対する各位置での応力の比であり、応力が最大となる位置での応力比が1.0になるように設定されている。応力が最大となる位置は例えばベース2の端部の位置である。
【0056】
ここで図15において、点PSX1と中央点CPとの第1方向DR1での距離をLXとする。点PSX2と中央点CPとの第1方向DR1での距離もLXとなっている。また点PSY1と中央点CPとの第2方向DR2での距離をLYとする。点PSY2と中央点CPとの第2方向DR2での距離もLYとなっている。
【0057】
この場合に図16では、縦軸が応力比であり、横軸がLX/WXとなっている。即ち図16の横軸は、第1方向DR1での、ベース2のWXに対する中央点CPから点PSX1、PSX2までの距離LXの距離割合になっている。また図17では、縦軸が応力比であり、横軸がLY/WYとなっている。即ち図17の横軸は、第2方向DR2での、ベース2のWYに対する中央点CPから点PSY1、PSY2までの距離LYの距離割合になっている。
【0058】
そして図16図17において、第1範囲である範囲RG1では、応力比を例えば0.4以下程度にすることができ、ベース2の端部に比べて応力比を小さくできる。範囲RG1は、LX/WX、LY/WYが、例えば0.8~0.95程度となる範囲である。
【0059】
また第2範囲である範囲RG2では、応力比を、範囲RG1での応力比よりも小さくでき、例えば0.1以下程度にすることができる。例えば範囲RG2では、範囲内での応力比の変化量についても範囲RG1に比べて小さくなる。
【0060】
また第3範囲である範囲RG3では、応力比を、範囲RG2での応力比よりも小さくでき、例えば0.05以下程度にすることができる。例えば範囲RG3では、範囲内での応力比の変化量についても範囲RG2に比べて小さくなる。なお以下では、簡素化のために、応力比を、適宜、応力とも記載することとする。
【0061】
このようにベース2の各位置での応力には、応力の値や変化量などの応力についての傾向、特性が異なる複数の範囲RG1、RG2、RG3が存在する。一方、集積回路10に設けられる回路又は回路素子には、応力に対する回路特性の変化が大きい回路又は回路素子と、応力に対する回路特性の変化が小さい回路又は回路素子と、が存在する。そこで本実施形態では、応力の傾向、特性が異なる複数の範囲を考慮して、応力に対する回路特性の変化が異なる回路又は回路素子を配置する手法を採用する。
【0062】
例えば応力が大きい範囲に対応する領域には、応力に対する回路特性の変化が小さい回路又は回路素子を配置する。このようにすれば、図7で説明した原因等で発生する応力が回路又は回路素子に加わっても、これらの回路又は回路素子の回路特性の変化は小さいため、応力を原因とする回路特性の劣化による悪影響を抑えることができる。そして、ベース2の端部に近い領域に回路又は回路素子を配置できるようになるため、振動デバイス1における集積回路10の配置面積を拡大できる。これにより、WLPのようなサイズの小さな振動デバイス1であっても、種々の回路機能を組み込むことが可能になる。
【0063】
一方、応力が小さい範囲に対応する領域には、応力に対する回路特性の変化が大きい回路又は回路素子を配置する。このようにすれば、応力に対する回路特性の変化が大きい回路又は回路素子に対して、大きな応力が印加されないようになるため、応力を原因とする回路特性の劣化を抑えることが可能になる。このように本実施形態によれば、集積回路10の配置面積を拡大できる共に、応力を原因とする回路特性の劣化を抑えることが可能になり、小さなサイズで高機能な振動デバイス1を実現できるようになる。
【0064】
次に本実施形態における回路素子の配置手法について図18を用いて具体的に説明する。例えば本実施形態の集積回路10は、第1回路及び第2回路を含む。第1回路は、第1領域ARAに配置される第1回路素子を含み、第2回路は、第2領域ARBに配置される第2回路素子を含む。
【0065】
そして第1回路素子又は第1回路は、第2回路素子又は第2回路よりも、応力に対する回路特性の変化が小さい回路素子又は回路となっている。例えば第1回路素子は、第2回路素子よりも、応力に対する回路特性の変化が小さい回路素子である。或いは第1回路素子を含む第1回路は、第2回路素子を含む第2回路よりも、応力に対する回路特性の変化が小さい回路である。例えば第1回路素子に第1応力が加わったときの第1回路素子の回路特性の変化量が第1変化量であり、第2回路素子に第1応力が加わったときの第2回路素子の回路特性の変化量が第2変化量であった場合に、第1変化量の方が第2変化量よりも小さい。また第1回路の第1回路素子に第1応力が加わったときの第1回路の回路特性の変化量が第3変化量であり、第2回路の第2回路素子に第1応力が加わったときの第2回路の回路特性の変化量が第4変化量であった場合に、第3変化量の方が第4変化量よりも小さい。
【0066】
回路素子は、回路を構成する基本的な素子であり、例えば受動素子又は能動素子などである。受動素子は、例えば容量素子、抵抗素子又はインダクター素子などである。例えば受動素子は、供給された電力を消費、蓄積又は放出する素子である。例えば受動素子は、電力の増幅又は整流などの能動動作を行わない回路素子である。能動素子は、例えばトランジスター又はダイオードなどである。能動素子は、電力の増幅又は整流などの能動動作を行う回路素子である。例えば能動素子は、入力信号又はエネルギーを増幅、制御又は変調して出力するなどの機能を有する回路素子である。回路素子の回路特性は、例えば抵抗、容量、抵抗比、容量比、増幅率、閾値、トランジスターサイズ、トランジスターのサイズ比又は順方向電圧などである。回路の回路特性は、回路が実現する機能の特性である。例えば信号生成回路であれば、回路特性は、生成される信号についての精度、温度特性、周波数特性、変換特性又は増幅特性などの各種の特性である。例えば電圧生成回路であれば、回路特性は、生成される電圧の精度又は温度特性等であり、センサー回路であれば、検出されるセンサー信号の精度、温度特性又は周波数特性等である。信号変換回路であれば、回路特性は、信号の変換特性であり、例えばA/D変換回路やD/A変換回路であれば、回路特性は、A/D変換特性やD/A変換特性である。信号増幅回路であれば、回路特性は信号の増幅特性などである。
【0067】
そして本実施形態では、応力に対する回路特性の変化が小さい第1回路素子が、第1領域ARAに配置され、応力に対する回路特性の変化が大きい第2回路素子が、第2領域ARBに配置される。或いは応力に対する回路特性の変化が小さい第1回路に含まれる第1回路素子が、第1領域ARAに配置され、応力に対する回路特性の変化が大きい第2回路に含まれる第2回路素子が、第2領域ARBに配置される。応力に対する回路特性の変化は、応力感度と言うこともでき、第1回路素子又は第1回路は、第2回路素子又は第2回路に比べて、応力感度が低い。そして応力感度が低い第1回路素子、又は応力感度が低い第1回路に含まれる第1回路素子が、第1領域ARAに配置され、応力感度が高い第2回路素子、又は応力感度が高い第2回路に含まれる第2回路素子が、第2領域ARBに配置される。
【0068】
そして図18において、ベース2の中央点CPと第1辺SD1、第2辺SD2との第1方向DR1での距離はWXとし、中央点CPと第3辺SD3、第4辺SD4との第2方向DR2での距離をWYとする。また第1辺SD1と第1領域ARAの対応する辺SA1との第1方向DR1での距離をL1Aとし、第2辺SD2と第1領域ARAの対応する辺SA2との第1方向DR1での距離をL2Aとする。また第3辺SD3と第1領域ARAの対応する辺SA3との第2方向DR2での距離をL3Aとし、第4辺SD4と第1領域ARAの対応する辺SA4との第2方向DR2での距離をL4Aとする。
【0069】
また第1辺SD1と第2領域ARBの対応する辺SB1との第1方向DR1での距離をL1Bとし、第2辺SD2と第2領域ARBの対応する辺SB2との第1方向DR1での距離をL2Bとする。また第3辺SD3と第2領域ARBの対応する辺SB3との第2方向DR2での距離をL3Bとし、第4辺SD4と第2領域ARBの対応する辺SB4との第2方向DR2での距離をL4Bとする。ここで対応する辺とは例えば対向する辺である。
【0070】
この場合に本実施形態では下式(1)、(2)が成り立つ。
【0071】
{1-L1A/WX}≦0.95、{1-L2A/WX}≦0.95、
{1-L3A/WY}≦0.95、{1-L4A/WY}≦0.95、 …(1)
【0072】
{1-L1B/WX}≦0.8、{1-L2B/WX}≦0.8、
{1-L3B/WY}≦0.8、{1-L4B/WY}≦0.8 …(2)
【0073】
上式(1)は図16図17の範囲RG1に対応し、上式(2)は範囲RG2、RG3に対応する。即ち式(1)が満たされることで、第1領域ARAの第1回路素子に対して印加される応力が、範囲RG1に対応する応力になる。これにより、第1領域ARAの第1回路素子に印加される応力が、図16図17の範囲RG1のように例えば最大応力の40%以下程度になることを保証できるようになる。そして、前述のように第1領域ARAに配置される第1回路素子は、応力に対する回路特性の変化が小さく、応力感度が低い回路素子である。従って、最大応力の40%以下の応力であれば、第1回路素子は応力感度が低いため、第1回路素子又は第1回路素子を含む第1回路の回路特性の劣化はあまり問題にならなくなる。そしてベース2の端部に対してなるべく近い距離まで、回路配置領域である第1領域ARAの境界を近づけることが可能になるため、集積回路10の配置面積を拡大でき、集積回路10の高機能化等を実現できるようになる。
【0074】
一方、上式(2)は図16図17の範囲RG2、RG3に対応する。即ち式(2)が満たされることで、第2領域ARBの第2回路素子に対して印加される応力が、範囲RG2、RG3に対応する応力になる。これにより第2領域ARBの第2回路素子に印加される応力が、図16図17の範囲RG2、RG3のように例えば最大応力の10%以下程度になることを保証できるようになる。また範囲RG2、RG3では範囲RG1に比べて、範囲内での応力の変化量も小さくなる。そして第2領域ARBに配置される第2回路素子は、第1領域ARAの第1回路素子に比べて、応力に対する回路特性の変化が大きく、応力感度が高い回路素子である。しかしながら、最大応力の例えば10%以下の応力であれば、第2回路素子の回路特性又は第2回路素子を含む第2回路の回路特性の変化は小さいため、応力を原因とする回路特性の劣化を抑えることが可能になる。
【0075】
このように本実施形態によれば、応力に対する回路特性の変化が小さい第1回路素子が配置される第1領域ARAについては、{1-L1A/WX}≦0.95、{1-L2A/WX}≦0.95、{1-L3A/WY}≦0.95、{1-L4A/WY}≦0.95の関係式が成り立つ。このようにすれば、第1領域ARAの境界をベース2の端部に近づけることができ、集積回路10の配置面積を拡大できる。また応力に対する回路特性の変化が大きい第2回路素子が配置される第2領域ARBについては、{1-L1B/WX}≦0.8、{1-L2B/WX}≦0.8、{1-L3B/WY}≦0.8、{1-L4B/WY}≦0.8の関係式が成り立つ。このようにすれば、応力を原因とする第2回路素子又は第2回路素子を含む第2回路の回路特性の劣化を抑えることが可能になる。このように、本実施形態によれば、応力感度が低い回路素子と応力感度が高い回路素子とで、配置領域を区分けし、集積回路10の配置領域を最大化できる。これにより、従来構造と比較して、より多くの機能を同じ面積の領域に搭載することができ、小型で高機能な振動デバイス1の実現が可能になる。
【0076】
なお本実施形態では、下式(3)が成り立つようにしてもよい。
【0077】
{1-L1B/WX}≦0.6、{1-L2B/WX}≦0.6、
{1-L3B/WY}≦0.6、{1-L4B/WY}≦0.6 …(3)
【0078】
上式(3)は、図16図17の範囲RG3に対応する。即ち上式(3)が満たされることで、第2領域ARBの第2回路素子に対して印加される応力が、範囲RG3に対応する応力になる。これにより第2領域ARBの第2回路素子に印加される応力が、図16図17の範囲RG3のように例えば最大応力の5%以下程度になることを保証できるようになる。これにより、応力を原因とする第2回路素子又は第2回路素子を含む第2回路の回路特性の劣化を更に抑えることが可能になる。
【0079】
また本実施形態では、下式(4)が成り立つようにしてもよい。
【0080】
{1-L1A/WX}≦0.8、{1-L2A/WX}≦0.8、
{1-L3A/WY}≦0.8、{1-L4A/WY}≦0.8 …(4)
【0081】
上式(4)は、図16図17の範囲RG2に対応する。即ち上式(4)が満たされることで、第1領域ARAの第1回路素子に対して印加される応力が、範囲RG2に対応する応力になる。これにより第1領域ARAの第1回路素子に印加される応力が、図10図11の範囲RG2のように例えば最大応力の40%以下程度になることを保証できるようになり、応力を原因とする第1回路素子又は第1回路素子を含む第1回路の回路特性の劣化を抑えることが可能になる。
【0082】
また本実施形態では、下式(5)が成り立つようにしてもよい。
【0083】
0.8<{1-L1A/WX}≦0.95、
0.8<{1-L2A/WX}≦0.95、
0.8<{1-L3A/WY}≦0.95、
0.8<{1-L4A/WY}≦0.95 (5)
【0084】
例えば、1-L1A/WX、1-L2A/WX、1-L3A/WY、1-L4A/WYは、ベース2の各辺から第1領域ARAの各辺までの距離であるL1A、L2A、L3A、L4AについてのWX、WYに対する距離割合に対応する。上式(5)が成り立つことで、第1領域ARAについての距離割合の上限が0.95に設定されると共に、距離割合の下限が0.8に設定されるようになる。このようにすれば、ベース2の各辺から第1領域ARAの各辺までの距離についてのWX、WYに対する距離割合が0.95以下であり、0.8よりも大きい範囲の第1領域ARAに、第1回路素子を配置できるようになる。
【0085】
4.集積回路
図19に本実施形態の集積回路10の構成例を示す。集積回路10は発振回路11、出力回路12を含む。また集積回路10は制御回路13、電源回路14、温度補償回路15、温度センサー回路16、メモリー17を含むことができる。また本実施形態の振動デバイス1は、振動素子5と集積回路10を含み、振動素子5と集積回路10は電気的に接続されている。なお集積回路10、振動デバイス1の構成は、図19や後述の図20の構成には限定されず、これらの一部の構成要素を省略したり、他の構成要素を追加したり、一部の構成要素を他の構成要素に置き換えるなどの種々の変形実施が可能である。
【0086】
振動デバイス1は端子TCK、TOE、TVDD、TGNDを含む。端子TCKは、クロック信号CKを出力するための端子であり、端子TOEは、出力イネーブル信号OEを入力するための端子である。TVDDは、電源電圧であるVDDが供給される端子であり、TGNDは、グランド電圧であるGNDが供給される端子である。GNDはVSSと呼ぶこともできる。例えばVDDは高電位側電源電圧に対応し、GNDは低電位側電源電圧に対応する。これらの端子TCK、TOE、TVDD、TGNDは、図1の外部接続端子91、92に対応する。例えば4端子の振動デバイス1であれば、外部接続端子91、92として4つの端子が設けられる。なお振動デバイス1の端子数はこれに限定されず、これ以上であってもよいし、これ以下であってもよい。また集積回路10はパッドPCK、POE、PVDD、PGND、PX1、PX2を含む。パッドは集積回路10の端子である。これらのパッドPCK、POE、PVDD、PGNDは、振動デバイス1の端子TCK、TOE、TVDD、TGNDと電気的に接続されている。
【0087】
発振回路11は振動素子5を発振させる回路である。例えば発振回路11は、パッドPX1、PX2を介して振動素子5に電気的に接続され、振動素子5を発振させることで発振信号を生成する。例えば発振回路11は、パッドPX1とパッドPX2との間に設けられた発振用の駆動回路と、キャパシターや抵抗などの受動素子により実現できる。駆動回路は、例えばCMOSのインバーター回路やバイポーラートランジスターにより実現できる。駆動回路は、発振回路11のコア回路であり、駆動回路が、振動素子5を電圧駆動又は電流駆動することで、振動素子5を発振させる。発振回路11としては、例えばインバーター型、ピアース型、コルピッツ型、又はハートレー型などの種々のタイプの発振回路を用いることができる。また発振回路11には、例えば可変容量回路86が設けられ、この可変容量回路86の容量の調整により、発振周波数を調整できるようになっている。可変容量回路86は、例えばバラクターなどの可変容量素子により実現できる。或いは可変容量回路86を、キャパシターアレイと、キャパシターアレイに接続されるスイッチアレイとにより実現してもよい。例えば可変容量回路86を、容量値がバイナリーに重み付けされた複数のキャパシターを有するキャパシターアレイと、各スイッチが、キャパシターアレイの各キャパシターとパッドPX1又はパッドPX2との間の接続のオン、オフを行う複数のスイッチを有するスイッチアレイとにより構成してもよい。
【0088】
出力回路12は、発振信号に基づくクロック信号CKを出力する。例えば出力回路12は、発振信号に基づく発振クロック信号をバッファリングして、クロック信号CKとしてパッドPCKに出力する。そして、このクロック信号CKが振動デバイス1の端子TCKを介して外部に出力される。例えば出力回路12は、シングルエンドのCMOSの信号形式でクロック信号CKを出力する。例えば端子TOEからパッドPOEを介して入力される出力イネーブル信号OEがアクティブである場合に、制御回路13の制御により、出力回路12がクロック信号CKを出力する。一方、出力イネーブル信号OEが非アクティブである場合には、出力回路12は、クロック信号CKを例えばローレベルなどの固定電圧レベルに設定する。なお出力回路12が、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)、PECL(Positive Emitter Coupled Logic)、HCSL(High Speed Current Steering Logic)、又は差動のCMOS(Complementary MOS)等の信号形式で、差動のクロック信号を出力してよい。この場合には差動のクロック信号の正極性用、負極性用の2つのクロック端子やパッドを設ければよく、振動デバイス1は例えば6端子の発振器になる。
【0089】
制御回路13はロジック回路であり、種々の制御処理を行う。例えば制御回路13は、集積回路10の全体の制御を行ったり、集積回路10の動作シーケンスの制御を行う。また制御回路13は、発振回路11、電源回路14、温度補償回路15、又はメモリー17等の制御を行ってもよい。制御回路13は、例えばゲートアレイ等の自動配置配線によるASIC(Application Specific Integrated Circuit)の回路により実現できる。
【0090】
電源回路14は、端子TVDDからパッドPVDDを介して電源電圧VDDが供給され、端子TGNDからパッドPGNDを介してグランド電圧であるGNDが供給される。そして電源回路14は、集積回路10の各内部回路用の電源電圧を各内部回路に供給する。
【0091】
電源回路14は、基準電圧生成回路80を含み、基準電圧生成回路80は、集積回路10に用いられる基準電圧を生成する。そして基準電圧生成回路80は抵抗分割回路82を含む。また電源回路14は、レギュレーター回路81を含み、レギュレーター回路81は、集積回路10に用いられるレギュレート電圧を生成する。このレギュレート電圧が、発振回路11や出力回路12や制御回路13などの集積回路10の各回路に供給される。そしてレギュレーター回路81は抵抗分割回路83を含む。基準電圧生成回路80、レギュレーター回路81の詳細については後述する。
【0092】
温度補償回路15は、発振回路11の発振周波数の温度補償を行う。そして出力回路12は、温度補償された発振信号に基づくクロック信号CKを出力する。具体的には温度補償回路15は、温度センサー回路16からの温度検出信号に基づいて温度補償を行う。例えば温度補償回路15は、温度センサー回路16からの温度検出電圧に基づいて温度補償電圧を生成し、生成された温度補償電圧を発振回路11に出力することで、発振回路11の発振周波数の温度補償を行う。例えば温度補償回路15は、発振回路11が有する可変容量回路86に対して、当該可変容量回路86の容量制御電圧となる温度補償電圧を出力することで、温度補償を行う。この場合には発振回路11の可変容量回路86は、バラクター等の可変容量素子により実現される。温度補償は、温度変動による発振周波数の変動を抑制して補償する処理である。例えば温度補償回路15は、多項式近似によるアナログ方式の温度補償を行う。例えば振動素子5の周波数温度特性を補償する温度補償電圧が多項式により近似される場合に、温度補償回路15は、当該多項式の係数情報に基づいてアナログ方式の温度補償を行う。アナログ方式の温度補償は、例えばアナログ信号である電流信号や電圧信号の加算処理等により実現される温度補償である。具体的にはメモリー17には、温度補償用の多項式の係数情報が記憶されており、制御回路13が、この係数情報をメモリー17から読み出して、例えば温度補償回路15のレジスターに設定する。そして温度補償回路15は、レジスターに設定された係数情報に基づいてアナログ方式の温度補償を行う。
【0093】
また温度補償回路15がデジタル方式の温度補償を行うようにしてもよい。この場合には温度補償回路15は例えばロジック回路により実現される。具体的には温度補償回路15は、温度センサー回路16の温度検出信号である温度検出データに基づいてデジタルの温度補償処理を行う。例えば温度補償回路15は、温度検出データに基づいて周波数調整データを求める。そして、求められた周波数調整データに基づいて、発振回路11の可変容量回路86の容量値が調整されることで、発振回路11の発振周波数の温度補償処理が実現される。この場合には発振回路11の可変容量回路86は、バイナリーに重み付けされた複数のキャパシターを有するキャパシターアレイと、スイッチアレイとにより実現される。またメモリー17は、温度検出データと周波数調整データの対応を表すルックアップテーブルを記憶しており、温度補償回路15は、制御回路13によりメモリー17から読み出されたルックアップテーブルを用いて、温度データから周波数調整データを求める温度補償処理を行う。
【0094】
温度センサー回路16は、温度を検出するセンサー回路である。温度センサー回路16はカレントミラー回路84を含む。具体的には温度センサー回路16は、環境の温度に応じて変化する温度依存電圧を、温度検出電圧として出力する。例えば温度センサー回路16は、温度依存性を有する回路素子を利用して温度検出電圧を生成する。具体的には温度センサー回路16は、PN接合の順方向電圧が有する温度依存性を用いることで、温度に依存して電圧値が変化する温度検出電圧を出力する。PN接合の順方向電圧としては、例えばバイポーラートランジスターのベース・エミッター間電圧などを用いることができる。
【0095】
またデジタル方式の温度補償処理を行う場合には、温度センサー回路16は、環境温度などの温度を測定し、その結果を温度検出データとして出力する。温度検出データは、温度に対して例えば単調増加又は単調減少するデータである。この場合の温度センサー回路16としては、リングオシレーターの発振周波数が温度依存性を有することを利用した温度センサー回路を用いることができる。具体的には温度センサー回路16は、リングオシレーターとカウンター回路を含む。カウンター回路は、発振回路11からの発振信号に基づくクロック信号により規定されるカウント期間において、リングオシレーターの発振信号である出力パルス信号をカウントし、そのカウント値を温度検出データとして出力する。
【0096】
メモリー17は集積回路10で用いられる各種の情報を記憶する。メモリー17は、例えば不揮発メモリーなどである。不揮発性メモリーはFAMOS(Floating gate Avalanche injection MOS)メモリー又はMONOS(Metal-Oxide-Nitride-Oxide-Silicon)メモリー等のEEPROMであるが、これに限らず、OTP(One Time Programmable)メモリー又はヒューズ型ROM等であってもよい。或いはメモリー17はRAM等の揮発性のメモリーにより実現してもよい。
【0097】
図20に集積回路10の他の構成例を示す。図20では図19の構成に加えてPLL回路18が更に設けられている。PLL回路18は、発振回路11からの発振信号に基づく発振クロック信号の周波数を逓倍したクロック信号を出力回路12に出力する。これにより発振回路11の発振信号の周波数を逓倍したクロック信号CKが端子TCKから出力されるようになる。PLL回路18は、例えば不図示の位相比較回路、チャージポンプ回路、電圧制御発振回路、分周回路などを含む。PLL回路18としては例えばフラクショナル-N型のPLL回路を用いることができる。例えば制御回路13にデルタシグマ変調回路を設け、このデルタシグマ変調回路によりデルタシグマ変調を行うことで、PLL回路18がフラクショナル-N型のPLL回路として動作するようになる。このようにすることで、PLL回路18の分周比として整数のみならず分数の設定も可能になり、任意の周波数のクロック信号CKを出力することが可能になる。この場合に、温度補償回路15がアナログ方式の温度補償を行って、温度補償電圧を発振回路11の可変容量回路86に出力することで温度補償を実現してもよい。或いは、温度補償回路15がデジタル方式の温度補償を行い、温度補償データと周波数調整データとに基づくデルタシグマ変調により、PLL回路18の分周比を設定することで、温度補償を実現してもよい。
【0098】
5.第1回路、第2回路、第1回路素子、第2回路素子
次に図21等を用いて本実施形態における第1回路、第2回路、第1回路素子、第2回路素子の配置手法について説明する。図18等で説明したように、本実施形態の集積回路10は、第1回路及び第2回路を含み、第1回路は、第1領域ARAに配置される第1回路素子を含み、第2回路は、第2領域ARBに配置される第2回路素子を含む。そして第1回路素子又は第1回路は、第2回路素子又は第2回路よりも、応力に対する回路特性の変化が小さい回路素子又は回路となっている。以下では、これらの第1回路、第2回路、第1回路素子、第2回路素子の具体例や配置手法について説明する。
【0099】
本実施形態では、第1回路は、例えば第1回路素子の回路定数の比により回路特性が設定される回路である。回路定数は、例えば抵抗、容量又はトラジスターサイズなどであり、第1回路は、抵抗比、容量比又はトランジスターサイズ比などにより回路特性が設定される回路である。なお回路定数は、抵抗、容量、トラジスターサイズには限定されず、例えばインダクタンス、トランジスターの閾値又は増幅率等であってもよい。このように第1回路素子の回路定数の比により回路特性が設定される第1回路であれば、応力が印加されて例えば第1回路素子の回路定数が変化したとしても、回路定数の比により設定される回路特性については、殆ど変化しないようになる。即ち、応力印加による第1回路素子の回路定数自体の変化量に比べて、応力印加による第1回路素子の回路定数の比の変化量は、十分に小さくなる。このため、例えば図7のように応力が印加された場合にも、第1回路素子の回路定数の比により設定される第1回路の回路特性は殆ど変化しないようになる。従って、このような第1回路の第1回路素子であれば、ベース2の端部に近い第1領域ARAに配置しても、応力印加を原因とする回路特性の劣化を十分に抑えることが可能になる。そしてこのような第1回路の第1回路素子を第1領域ARAに配置することで、集積回路10の配置領域をベース2の端部に近づけることが可能になり、集積回路10の配置面積を拡大できるようになる。
【0100】
例えば第1回路は、第1回路素子として複数の受動素子又は複数の能動素子が設けられ、複数の受動素子又は複数の能動素子の回路定数の比により回路特性が設定される回路である。受動素子は、例えば抵抗素子、容量素子又はインダクター素子などであり、複数の受動素子の回路定数の比は、例えば抵抗比、容量比又はインダクター比などである。また能動素子は、例えばトランジスター又はダイオードなどであり、複数の能動素子の回路定数の比は、例えばトランジスターサイズの比、閾値の比、順方向電圧の比又は増幅率の比などである。このように複数の受動素子又は複数の能動素子の回路定数の比により回路特性が設定される第1回路であれば、応力が印加されて受動素子又は能動素子の回路定数が変化したとしても、回路定数の比により設定される回路特性については、殆ど変化しないようになる。従って、このような第1回路の受動素子又は能動素子であれば、ベース2の端部に近い第1領域ARAに配置しても、応力印加を原因とする回路特性の劣化を十分に抑えることが可能になる。そしてこのような第1回路の受動素子又は能動素子を第1領域ARAに配置することで、集積回路10の配置面積を拡大できるようになる。
【0101】
また第1領域ARAに配置される第1回路素子は、抵抗分圧回路に設けられる抵抗素子、又はカレントミラー回路に設けられるトランジスターである。例えば図21は集積回路10における第1回路、第2回路、第1回路素子、第2回路素子の配置を概略的に説明する図である。図21では、抵抗分割回路82、83やカレントミラー回路84が第1領域ARAに配置されている。図19図20で説明したように、例えば抵抗分割回路82は基準電圧生成回路80に設けられており、抵抗分割回路83はレギュレーター回路81に設けられている。またカレントミラー回路84は、例えば温度センサー回路16に設けられている。抵抗分割回路82、83は、複数の抵抗素子の抵抗比により回路特性が設定される回路であり、例えば抵抗比により、抵抗分割回路82、83が生成する分割電圧などの回路特性が設定される。この抵抗分割回路82、83は、複数の受動素子の回路定数の比により回路特性が設定される回路であり、第1回路素子の回路定数の比により回路特性が設定される回路である。カレントミラー回路84は、複数のトランジスターのサイズ比により回路特性が設定される回路であり、例えばトランジスターサイズ比により、カレントミラーにおけるミラー比などの回路特性が設定される。このカレントミラー回路84は、複数の能動素子の回路定数の比により回路特性が設定される回路であり、第1回路素子の回路定数の比により回路特性が設定される回路である。このような抵抗分割回路82、83、カレントミラー回路84であれば、応力が印加されて抵抗素子の抵抗又はトランジスター特性が変化しても、抵抗比又はトランジスター比により設定される回路特性については、殆ど変化しないようになる。従って、このような抵抗分割回路82、83の抵抗素子、カレントミラー回路84のトランジスターであれば、図21に示すように、ベース2の端部に近い第1領域ARAに配置しても、応力印加を原因とする回路特性の劣化の悪影響を抑えることが可能になる。そしてこのような抵抗素子、トランジスターを第1領域ARAに配置することで、集積回路10の配置面積を拡大できるようになる。
【0102】
なお回路素子の回路定数の比により回路特性が設定される回路は、このような抵抗分割回路82、83、カレントミラー回路84には限定されず、例えば容量比又は抵抗比により増幅率が設定されるアンプ回路や、トランジスターサイズ比により電圧又は電流を生成する回路などの種々の回路がある。
【0103】
このように第1回路は、集積回路10に用いられる基準電圧を生成する基準電圧生成回路80であり、第1回路素子は、基準電圧生成回路80の抵抗分割回路82に含まれる抵抗素子である。即ち図21では、基準電圧生成回路80の抵抗分割回路82を構成する抵抗素子が第1領域ARAに配置されている。このようにすれば、基準電圧生成回路80のうち、少なくとも抵抗分割回路82の抵抗素子が、第1領域ARAに配置されるようになる。そして、このように基準電圧生成回路80の抵抗分割回路82の抵抗素子を第1領域ARAに配置することで、抵抗分割回路82の抵抗素子をベース2の端部に近い領域に配置できるため、集積回路10の配置面積を拡大できるようになる。また抵抗分割回路82は抵抗比により回路特性が設定されるため、印加応力が大きい第1領域ARAに、抵抗分割回路82の抵抗素子が配置されても、応力を原因とする回路特性の劣化の悪影響は最小限になる。
【0104】
また第1回路は、集積回路10に用いられるレギュレート電圧を生成するレギュレーター回路81であり、第1回路素子は、レギュレーター回路81の抵抗分割回路83に含まれる抵抗素子である。即ち図21では、レギュレーター回路81の抵抗分割回路83を構成する抵抗素子が第1領域ARAに配置されている。このようにすれば、レギュレーター回路81のうち、少なくとも抵抗分割回路83の抵抗素子が、第1領域ARAに配置されるようになる。そして、このようにレギュレーター回路81の抵抗分割回路83の抵抗素子を第1領域ARAに配置することで、抵抗分割回路83の抵抗素子をベース2の端部に近い領域に配置できるため、集積回路10の配置面積を拡大できるようになる。また抵抗分割回路83は抵抗比により回路特性が設定されるため、印加応力が大きい第1領域ARAに、抵抗分割回路83の抵抗素子が配置されても、応力を原因とする回路特性の劣化の悪影響は最小限になる。
【0105】
また第1回路は、温度を検出する温度センサー回路16であり、第1回路素子は、温度センサー回路16のカレントミラー回路84に含まれるトランジスターである。即ち図21では、温度センサー回路16のカレントミラー回路84を構成するトランジスターが第1領域ARAに配置されている。このようにすれば、温度センサー回路16のうち、少なくともカレントミラー回路84のトランジスターが、第1領域ARAに配置されるようになる。そして、このように温度センサー回路16のカレントミラー回路84のトランジスターを第1領域ARAに配置することで、カレントミラー回路84のトランジスターをベース2の端部に近い領域に配置できるため、集積回路10の配置面積を拡大できるようになる。またカレントミラー回路84はトランジスターのサイズ比により回路特性が設定されるため、印加応力が大きい第1領域ARAに、カレントミラー回路84のトランジスターが配置されても、応力を原因とする回路特性の劣化の悪影響は最小限になる。
【0106】
また第1回路は、制御回路13又はメモリー17であり、第1回路素子は、制御回路13又はメモリー17が含むトランジスターである。このようにすれば図21に示すように、制御回路13又はメモリー17を構成する少なくとも一部のトランジスターが、第1領域ARAに配置されるようになる。そして、このように制御回路13又はメモリー17のトランジスターを第1領域ARAに配置することで、制御回路13又はメモリー17のトランジスターをベース2の端部に近い領域に配置できるため、集積回路10の配置面積を拡大できるようになる。また制御回路13やメモリー17のトランジスターに応力が印加されて、トランジスターの回路特性が変化したとしても、制御回路13やメモリー17の回路特性には殆ど影響を及ぼさない。例えば制御回路13はロジック動作等を行う回路であるため、応力印加によりトランジスターの閾値等の回路特性が変化しても、ロジック動作には殆ど影響は無く、制御回路13が誤動作することはないと考えられる。またメモリー17の読み出し回路や書き込み回路などのトランジスターの閾値等の回路特性が変化しても、メモリーの読み出し動作や書き込み動作には殆ど影響は無く、メモリー17が誤動作することはないと考えられる。
【0107】
また第2回路素子は受動素子であり、受動素子は、容量素子及び抵抗素子の少なくとも一方である。このようにすれば、第2回路素子である容量素子や抵抗素子が、第2領域ARBに配置されるようになる。例えば容量素子や抵抗素子は、図7で説明したような応力が印加されると、容量や抵抗が変化してしまうおそれがあるが、第2領域ARBは、第1領域ARAに比べて、印加される応力が小さい。従って、容量素子や抵抗素子を、印加される応力が小さい第2領域ARBに配置すれば、応力による容量や抵抗の変化を最小限にすることが可能になり、例えば容量素子や抵抗素子を第2回路素子として含む第2回路の回路特性の変化も最小限に抑えることが可能になる。なお容量素子は、例えばMIM(Metal-Insulator-Metal)のキャパシター、PIP(Polysilicon-Insulator-polysilicon)キャパシター、又はMOS(Metal-Oxide-Semiconductor)キャパシターなどである。また抵抗素子は、例えばポリシリコン抵抗、拡散抵抗又はウェル抵抗の素子などである。
【0108】
また図21に示すように、第2回路は、振動素子5を発振させる発振回路11であり、第2回路素子は、発振回路11に含まれる容量素子及び抵抗素子の少なくとも一方である。このようにすれば、第2回路素子である発振回路11の容量素子や抵抗素子が、第2領域ARBに配置されるようになる。例えば容量素子や抵抗素子は、応力が印加されると、容量や抵抗が変化してしまうおそれがあるが、第2領域ARBは、第1領域ARAに比べて、印加される応力が小さい。従って、発振回路11の容量素子又は抵抗素子を、印加される応力が小さい第2領域ARBに配置すれば、応力による容量又は抵抗の変化を最小限にすることが可能になり、容量素子又は抵抗素子を含む発振回路11の回路特性の変化も最小限に抑えることが可能になる。例えば容量素子が、発振回路11の可変容量回路86を構成する容量素子である場合に、応力印加により容量素子の容量が変化してしまうと、発振周波数も変動してしまう。この点、発振回路11の可変容量回路86の容量素子を、印加される応力が小さい第2領域ARBに配置すれば、応力印加を原因とする発振周波数の変動を最小限に抑えることが可能になる。
【0109】
また図21に示すように、第2回路は、振動素子5の発振周波数の温度補償を行う温度補償回路15であり、第2回路素子は、温度補償回路15に含まれる抵抗素子である。このようにすれば、第2回路素子である温度補償回路15の抵抗素子が、第2領域ARBに配置されるようになる。そして、温度補償回路15の抵抗素子を、印加される応力が小さい第2領域ARBに配置すれば、応力による抵抗の変化を最小限にすることが可能になり、温度補償回路15の回路特性の変化も最小限に抑えることが可能になる。例えば温度補償回路15では、応力印加により抵抗素子の抵抗値が変化してしまうと、温度補償の特性も変動してしまう。この点、温度補償回路15の抵抗素子を、印加される応力が小さい第2領域ARBに配置すれば、応力印加を原因とする温度補償の特性の変動を最小限に抑えることが可能になる。
【0110】
6.集積回路の各回路の構成例
次に集積回路10の各回路の具体的な構成例について説明する。図22に基準電圧生成回路80の構成例を示す。基準電圧生成回路80は、VDDノードとGNDノードの間に設けられるN型のトランジスターTD1、抵抗RD1、RD2、RD3、バイポーラートランジスターBP1、BP2を含む。また基準電圧生成回路80は、バイアス電圧VBがゲートに入力されるP型のトランジスターTD1、TD2と、トランジスターTD2のドレインノードとGNDノードとの間に設けられるバイポーラートランジスターBP3を含む。基準電圧生成回路80は、バンドギャップリファレンス回路であり、バンドギャップ電圧による基準電圧VREFを生成して出力する。例えばPNP型のバイポーラートランジスターBP1、BP2のベース・エミッター間電圧をVBE1、VBE2とし、ΔVBE=VBE1-VBE2とする。基準電圧生成回路80は、例えばVREF=K×ΔVBE+VBE2となる基準電圧VREFを出力する。Kは抵抗RD1、RD2の抵抗値により設定される。例えばVBE2は負の温度特性を有し、ΔVBEは正の温度特性を有するため、抵抗RD1、RD2の抵抗値を調整することで、温度依存性のない定電圧の基準電圧VREFを生成できるようになる。そして生成される基準電圧VREFはグランド電圧を基準とした定電圧になる。なお基準電圧生成回路80は図22の構成に限定されず、例えばトランジスターの仕事関数差電圧を用いて基準電圧VREFを生成する回路などの種々の構成の回路を用いることができる。
【0111】
図22の基準電圧生成回路80では、抵抗素子である抵抗RD1、RD2などにより抵抗分割回路82が構成される。そして基準電圧VREF=K×ΔVBE+VBE2は、抵抗分割回路82でのRD1、RD2の抵抗比に対応するKにより設定される。従って、応力印加により抵抗素子であるRD1、RD2の抵抗値が変動したとしても、抵抗比に対応するKの変動は最小限であるため、基準電圧VREFの変動も最小限に抑えられる。従って、基準電圧生成回路80の抵抗分割回路82を、印加応力が大きい第1領域ARAに配置しても、基準電圧生成回路80の回路特性である基準電圧VREFの変動を抑えることができる。そして基準電圧生成回路80を、ベース2の端部に近い第1領域ARAに配置することで、集積回路10の配置面積を拡大できるようになる。
【0112】
図23にレギュレーター回路81の構成例を示す。レギュレーター回路81は、VDDノードとGNDノードの間に直列に設けられた駆動用のN型のトランジスターTA1及び抵抗RA1、RA2と、演算増幅器OPAを含む。またレギュレーター回路81は、演算増幅器OPAの出力端子側に設けられた抵抗RA3及びキャパシターCAを含むことができる。演算増幅器OPAの非反転入力端子には、基準電圧VREFが入力され、反転入力端子には、レギュレート電圧VREG1を抵抗RA1、RA2により電圧分割した電圧VDAが入力される。そして演算増幅器OPAの出力端子が、抵抗RA3を介してトランジスターTA1のゲートに入力され、トランジスターTA1のドレインノードからレギュレート電圧VREG1が出力される。そして抵抗RA1、RA2の抵抗値をR1、R2とすると、レギュレーター回路81は、レギュレート電圧VREG1={(R1+R2)/R2}×VREFを出力するようになる。
【0113】
図23のレギュレーター回路81では、抵抗素子である抵抗RA1、RA2により抵抗分割回路83が構成される。そしてレギュレート電圧VREG1={(R1+R2)/R2}×VREFは、RA1、RA2に基づく抵抗比により設定される。従って、応力印加により抵抗素子であるRA1、RA2の抵抗値が変動したとしても、抵抗比の変動は最小限であるため、レギュレート電圧VREG1の変動も最小限に抑えられる。従って、レギュレーター回路81の抵抗分割回路83を、印加応力が大きい第1領域ARAに配置しても、レギュレーター回路81の回路特性であるレギュレート電圧VREG1の変動を抑えることができる。そしてレギュレーター回路81を、ベース2の端部に近い第1領域ARAに配置することで、集積回路10の配置面積を拡大できるようになる。
【0114】
図24に温度センサー回路16の第1構成例を示す。温度センサー回路16は、定電流源IS1とバイポーラートランジスターBPE1と抵抗RE1、RE2を含む。定電流源IS1、抵抗RE1、バイポーラートランジスターBPE1、抵抗RE2は、VDDノードとGNDノードの間に直列に設けられる。具体的には、定電流源IS1と抵抗RE1の一端との接続ノードが、バイポーラートランジスターBPE1のベースに接続され、抵抗RE1の他端がバイポーラートランジスターBPE1のコレクターに接続される。またバイポーラートランジスターBPE1のエミッターは、抵抗RE2の一端に接続され、抵抗RE2の他端はGNDノードに接続される。抵抗RE2は可変抵抗であり、抵抗RE2の抵抗値はメモリー17からの0次補正データに基づいて設定される。
【0115】
図24において定電流源IS1から流れる電流をIEとし、抵抗RE1、RE2の抵抗値を、各々、R1、R2とし、バイポーラートランジスターBPE1のベース・エミッター間電圧をVBE1とすると、温度検出電圧はVTS=VBE1+IE×(R2-R1)になる。このように温度検出電圧VTSは、オフセット成分としてIE×(R2-R1)を含んでおり、抵抗RE2の抵抗値R2を変化させることで、温度検出電圧VTSのオフセットを調整できる。
【0116】
図25に温度センサー回路16の第2構成例を示す。図25の温度センサー回路16は、定電流源IS1、IS2と、バイポーラートランジスターBPE1、BPE2と、抵抗RE1、RE2、RE3、RE4、バッファー回路78を含む。
【0117】
定電流源IS1、バイポーラートランジスターBPE1、抵抗RE1、RE2の接続構成は図24の第1構成例と同様である。そして定電流源IS2、抵抗RE3、バイポーラートランジスターBPE2、抵抗RE4は、VDDノードとバイポーラートランジスターBPE1のコレクターのノードとの間に直列に設けられる。具体的には、定電流源IS2と抵抗RE3の一端との接続ノードが、バイポーラートランジスターBPE2のベースに接続され、抵抗RE3の他端がバイポーラートランジスターBPE2のコレクターに接続される。またバイポーラートランジスターBPE2のエミッターは、抵抗RE4の一端に接続され、抵抗RE4の他端はバイポーラートランジスターBPE1のコレクターに接続される。抵抗RE4は可変抵抗であり、抵抗RE4の抵抗値は、例えばメモリー17からの0次補正データに基づいて設定される。
【0118】
バッファー回路78は演算増幅器OPEと抵抗RE5、RE6を含む。演算増幅器OPEの非反転入力端子には、バイポーラートランジスターBPE2のコレクター電圧である電圧VGBが入力される。演算増幅器OPEの反転入力端子は、抵抗RE5の一端に接続され、抵抗RE5の他端は抵抗RE6の一端に接続され、抵抗RE6の他端はGNDノードに接続される。これにより抵抗RE5と抵抗RE6の接続ノードから、演算増幅器OPEの出力電圧を抵抗RE5と抵抗RE6により電圧分割した電圧が、温度検出電圧VTSとして出力される。演算増幅器OPEの出力電圧は、電圧VGBに演算増幅器OPEのオフセット電圧を加算した電圧になる。
【0119】
図25において、バイポーラートランジスターBPE1、BPE2のコレクターの電圧をVGA、VGBとし、定電流源IS1、IS2に流れる電流をIEとし、抵抗RE1、RE2、RE3、RE4、RE5、RE6の抵抗値を、各々、R1、R2、R3、R4、R5、R6とする。またバイポーラートランジスターBPE1、BPE2のベース・エミッター間電圧をVBE1、VBE2とする。すると、VGA=VBE1+IE×(2R2-R1)、VGB=VBE2+IE×(R4-R3)+VGA=VBE1+VBE2+IE×(2R2+R4-R1-R3)になる。これにより温度検出電圧はVTS=(R5/R6)×VGBになる。VGBは、オフセット成分としてIE×(2R2+R4-R1-R3)を含んでおり、温度検出電圧VTSも、オフセット成分として(R5/R6)×IE×(2R2+R4-R1-R3)を含んでいる。即ち、抵抗RE2の抵抗値R2と抵抗RE4の抵抗値R4を変化させることで、温度検出電圧VTSのオフセットを調整できるようになる。
【0120】
図24図25の温度センサー回路16では、定電流源IS1、IS2がカレントミラー回路84により構成される。即ち、カレントミラー回路84により基準電流をカレントミラーした電流IEが、定電流源IS1、IS2から流れる。カレントミラー回路84は、ドレインとゲートが接続され、ソースからドレインに基準電流が流れる第1トランジスターと、そのゲートが第1トランジスターのゲートに接続され、電流IEが流れる第2トランジスターとにより構成される。そしてカレントミラー回路84のミラー比は、第1トランジスターと第2トランジスターのトランジスターサイズ比により設定される。従って、応力印加により第1トランジスター、第2トランジスターの回路特性が変動したとしても、トランジスターサイズ比の変動は最小限であるため、電流IEの変動も最小限に抑えられる。従って、温度センサー回路16のカレントミラー回路84を、印加応力が大きい第1領域ARAに配置しても、温度センサー回路16の回路特性である温度検出情報の変動を抑えることができる。そして温度センサー回路16を、ベース2の端部に近い第1領域ARAに配置することで、集積回路10の配置面積を拡大できるようになる。
【0121】
図26に、発振回路11の構成例を示す。発振回路11は、駆動回路94と、DCカット用のキャパシターC1、C2、C4と、基準電圧供給回路95と、第1可変容量回路96と、第2可変容量回路97を含む。なお、キャパシターC4と第2可変容量回路97を設けない構成としてもよい。また第1可変容量回路96及び第2可変容量回路97とGNDノードとの間にはキャパシターC31~C3nが設けられている。
【0122】
駆動回路94は、振動素子5を駆動して発振させる回路である。駆動回路94は、電流源ISAと、バイポーラートランジスターBP0と、抵抗RBを含む。電流源ISAは、レギュレート電圧VREGの電源ノードとバイポーラートランジスターBP0との間に設けられ、バイポーラートランジスターBP0に定電流を供給する。
【0123】
バイポーラートランジスターBP0は、振動素子5を駆動するトランジスターであり、ベースノードが、駆動回路94の入力ノードNIとなり、コレクターノードが、駆動回路94の出力ノードNQとなっている。抵抗RBはバイポーラートランジスターBP0のコレクターノードとベースノードの間に設けられる。
【0124】
DCカット用のキャパシターC1は、駆動回路94の入力ノードNIと配線LAとの間に設けられる。このようなキャパシターC1を設けることで、発振信号のDC成分がカットされ、AC成分だけが駆動回路94の入力ノードNIに伝達されるようになり、バイポーラートランジスターBP0を適正に動作させることが可能になる。
【0125】
基準電圧供給回路95は、第1可変容量回路96及び第2可変容量回路97に基準電圧VR1~VRnを供給する。基準電圧供給回路95は、例えばレギュレート電圧VREGのノードとGNDのノードの間に直列に設けられた複数の抵抗素子を含み、VREGの電圧を分割した電圧を基準電圧VR1~VRnとして出力する。また基準電圧供給回路95は、配線LAにバイアス電圧設定用の基準電圧VRBを供給する。これにより配線LAでの発振信号の振幅中心電圧を基準電圧VRBに設定できるようになる。
【0126】
DCカット用のキャパシターC2は、一端が配線LAに接続され、他端が温度補償電圧VCPの供給ノードNS1に接続される。温度補償電圧VCPは抵抗RC1を介して供給ノードNS1に供給される。第1可変容量回路96は、一端が供給ノードNS1に接続されて、温度補償電圧VCPが供給される。また基準電圧供給回路95は、第1可変容量回路96の他端の供給ノードNR1~NRnに、基準電圧VR1~VRnを供給する。そして基準電圧VR1~VRnの供給ノードNR1~NRnと、GNDノードとの間にキャパシターC31~C3nが設けられる。
【0127】
第1可変容量回路96はn個の可変容量素子を含む。nは2以上の整数である。n個の可変容量素子は、例えばMOS型の可変容量素子であり、n個のトランジスターにより構成される。そしてn個のトランジスターのゲートには基準電圧VR1~VRnが供給される。またn個のトランジスターの各トランジスターのソース及びドレインが短絡され、短絡されたソース及びドレインが接続される供給ノードNS1に対して、温度補償電圧VCPが供給される。そしてDCカット用のキャパシターC2の容量は、第1可変容量回路96の容量に比べて十分に大きな容量になっている。このような構成の第1可変容量回路96を用いることで、広い温度補償電圧VCPの電圧範囲において、第1可変容量回路96のトータルの容量の容量変化の直線性を確保できるようになる。なお第2可変容量回路97、キャパシターC4の接続構成は、第1可変容量回路96、キャパシターC2の接続構成と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0128】
そして本実施形態では、発振回路11の第1可変容量回路96、第2可変容量回路97の容量素子や、基準電圧供給回路95の抵抗素子が、印加応力が小さい第2領域ARBに配置される。例えば第1可変容量回路96、第2可変容量回路97のバラクター等の容量素子の容量が、応力印加により変動すると、負荷容量が変動するため、発振周波数も変動してしまう。また基準電圧供給回路95の抵抗素子の抵抗が、応力印加により変動して、基準電圧VR1~VRnが変動すると、第1可変容量回路96、第2可変容量回路97の容量素子に印加される電圧が変動する。これにより負荷容量が変動して、発振周波数も変動してしまう。この点、本実施形態では、発振回路11の容量素子や抵抗素子が、印加応力が小さい第2領域ARBに配置されるため、応力印加に起因する発振周波数の変動等の回路特性の変動を抑えることが可能になる。
【0129】
図27に温度補償回路15の構成例を示す。図27はアナログ方式で温度補償を行う回路であり、温度を変数とする多項式近似によって温度補償電圧VCPを出力する回路である。この温度補償回路15は電流生成回路70と電流電圧変換回路73を含む。電流生成回路70は、温度センサー回路16からの温度検出電圧VTSに基づいて、振動素子5の周波数温度特性を温度補償するための関数電流を生成する。そして電流電圧変換回路73は、電流生成回路70からの関数電流を電圧に変換して温度補償電圧VCPを出力する。
【0130】
電流生成回路70は、1次補正回路71と高次補正回路72を含む。1次補正回路71は、温度検出電圧VTSに基づいて、1次関数を近似する1次電流を出力する。例えば1次補正回路71は、多項式近似における多項式の1次係数に対応する1次補正データに基づいて1次関数電流を出力する。高次補正回路72は、温度検出電圧VTSに基づいて、高次関数を近似する高次電流を、電流電圧変換回路73に出力する。例えば高次補正回路72は、多項式近似における多項式の高次係数に対応する高次補正データに基づいて高次電流を出力する。一例としては、高次補正回路72は、3次関数を近似する3次電流を出力する。なお高次補正回路72は、4次以上の補正を行う補正回路を更に含んでもよい。
【0131】
電流電圧変換回路73は、増幅回路AMと抵抗RCとキャパシターCCとを含む。そして電流電圧変換回路73は、1次電流と高次電流を加算すると共に、その加算電流を電流電圧変換することで温度補償電圧VCPを出力する。これにより、多項式関数を近似する温度補償電圧VCPが生成される。
【0132】
図28は温度補償回路15に含まれる関数電流生成回路74の構成例である。この関数電流生成回路74は、例えば図27の高次補正回路72に設けられて、2次、3次等の高次の関数電流を生成する。
【0133】
図28に示すように関数電流生成回路74は、基準電流生成回路75と第1補償回路76と第2補償回路77を含む。基準電流生成回路75は基準電流IRを生成する。第1補償回路76は、低温側の温度範囲での温度補償を行い、第2補償回路77は、高温側の温度範囲での温度補償を行う。第1補償回路76、第2補償回路77は、複数の差動対回路を含む。第1補償回路76の各差動対回路には、基準電流IRをミラーした基準電流IRF1、IRF2が流れる。第2補償回路77の各差動対回路にも、基準電流IRをミラーした基準電流IRG1、IRG2が流れる。そして第1補償回路76により、低温側の温度範囲での温度補償用の電流IF=IF1+IF2が生成され、第2補償回路77により、高温側の温度範囲での温度補償用の電流IG=IG1+IG2が生成される。また基準電流IRが定電流であるため、第1補償回路76の各差動対回路に流れる基準電流IRF1=IF1+IL1、基準電流IRF2=IF2+IL2も電流値が一定の定電流になる。また第2補償回路77の各差動対回路に流れる基準電流IRG1=IG1+IH1、基準電流IRG2=IG2+IH2も電流値が一定の定電流になる。
【0134】
そして低温側の温度範囲では、電流IF=IF1+IF2が大きくなる一方で、電流IG=IG1+IG2が小さくなる。一方、高温側の温度範囲では、電流IG=IG1+IG2が大きくなる一方で、電流IF=IF1+IF2が小さくなる。このような関数電流生成回路74を用いることで、2次、3次、4次、5次などの高次の関数電流を生成できる。
【0135】
そして本実施形態では温度補償回路15の関数電流生成回路74において、電流IF1、IL1、IF2、IL2、IH1、IG1、IH2、IG2を流す抵抗素子が、印加応力が小さい第2領域ARBに配置される。例えばこれらの抵抗素子の抵抗値が変動すると、温度補償用の電流IF、IGも変動してしまい、温度補償電圧VCPも変動してしまう。これにより発振周波数の温度補償が適正に行われなくなり、温度補償後の発振周波数も変動してしまう。この点、本実施形態では、温度補償回路15の抵抗素子が、印加応力が小さい第2領域ARBに配置されるため、応力印加に起因する温度補償の変動や発振周波数の変動等の回路特性の変動を抑えることが可能になる。
【0136】
7.集積回路のレイアウト配置
図29図30に集積回路10のレイアウト配置例を示す。図29図19の構成例の集積回路10のレイアウト配置例であり、図30図20の構成例の集積回路10のレイアウト配置例である。図29図30においてE2は、図1で説明した接合部36、37の平面視での内側の境界を示している。図18等で説明した第1領域ARAは、平面視において接合部36、37と重なる領域になっている。また図29図30において、発振回路11に接続されるパッドPX1、PX2は振動素子5に接続されており、これにより振動素子5と集積回路10の電気的な接続が可能になる。
【0137】
図29では発振回路11は、ベース2の第1辺SD1に沿って配置される。温度補償回路15はベース2の中央部に配置され、発振回路11と温度補償回路15の間に、振動素子5の接続用のパッドPX1、PX2が配置される。そしてベース2の第4辺SD4に沿って、温度センサー回路16、メモリー17、制御回路13、基準電圧生成回路80が配置される。また第2辺SD2に沿って、基準電圧生成回路80、出力回路12、レギュレーター回路81、出力回路12が配置される。具体的には、温度センサー回路16は、第1辺SD1と第4辺SD4が交差するコーナー部に配置され、基準電圧生成回路80は、第4辺SD4と第2辺SD2が交差するコーナー部に配置される。また出力回路12は、第2辺SD2と第3辺SD3が交差するコーナー部に配置される。
【0138】
図29において、基準電圧生成回路80、レギュレーター回路81は、図18等で説明した第1領域ARAに対して少なくとも一部が重なるように配置される。具体的には、基準電圧生成回路80の抵抗分割回路82に含まれる抵抗素子やレギュレーター回路81の抵抗分割回路83に含まれる抵抗素子などが、第1領域ARAに配置される。これらの抵抗素子である第1回路素子が第1領域ARAに配置されることで、応力印加による基準電圧生成回路80、レギュレーター回路81の回路特性の変動を抑えながら、集積回路10の配置面積を拡大できるようになる。
【0139】
また温度センサー回路16は、第1領域ARAに対して少なくとも一部が重なるように配置される。具体的には、温度センサー回路16に含まれるカレントミラー回路84のトランジスターが、第1領域ARAに配置される。これらのトランジスターである第1回路素子が第1領域ARAに配置されることで、応力印加による温度センサー回路16の回路特性の変動を抑えながら、集積回路10の配置面積を拡大できるようになる。
【0140】
また制御回路13、メモリー17は、第1領域ARAに対して少なくとも一部が重なるように配置される。具体的には、制御回路13、メモリー17を構成する少なくとも一部のトランジスターが、第1領域ARAに配置される。これらのトランジスターである第1回路素子が第1領域ARAに配置されることで、応力印加による制御回路13、メモリー17の回路特性の変動を抑えながら、集積回路10の配置面積を拡大できるようになる。
【0141】
また温度補償回路15は、中央付近に配置されており、第2領域ARBに対して少なくとも一部が重なるように配置される。具体的には温度補償回路15に含まれる抵抗素子が第2領域ARBに配置される。これらの抵抗素子である第2回路素子が第2領域ARBに配置されることで、応力印加により抵抗素子の抵抗値が変動して、温度補償回路15の温度補償についての回路特性が劣化するのを防止できるようになる。なお発振回路11の容量素子又は抵抗素子についても第2領域ARBに配置することが望ましい。
【0142】
図30ではPLL回路18が更に設けられている。また発振回路11は、中央部付近に配置されてパッドPX1、PX2に接続される。そしてベース2の第4辺SD4に沿って、温度センサー回路16、基準電圧生成回路80、PLL回路18が配置される。また第2辺SD2に沿って、PLL回路18、レギュレーター回路81、出力回路12が配置され、第3辺SD3に沿って、メモリー17、制御回路13、出力回路12が配置される。具体的には、温度センサー回路16は、第1辺SD1と第4辺SD4が交差するコーナー部に配置され、PLL回路18は、第4辺SD4と第2辺SD2が交差するコーナー部に配置される。また出力回路12は、第2辺SD2と第3辺SD3が交差するコーナー部に配置される。
【0143】
図30においても、基準電圧生成回路80、レギュレーター回路81の抵抗分割回路82、83の抵抗素子や、温度センサー回路16のカレントミラー回路84のトランジスターや、制御回路13、メモリー17のトランジスターが、第1領域ARAに配置される。これにより、回路特性の変動を抑えながら、集積回路10の配置面積を拡大できるようになる。
【0144】
また発振回路11の容量素子又は抵抗素子が第2領域ARBに配置されることで、応力印加により容量素子の容量値又は抵抗素子の抵抗値が変動して、発振回路11の発振周波数などの回路特性が劣化するのを防止できるようになる。なお温度補償回路15の抵抗素子についても第2領域ARBに配置することが望ましい。
【0145】
以上のように本実施形態の振動デバイスは、第1面と第1面と表裏関係にある第2面とを有し、第1面に集積回路が配置される半導体基板を含むベースと、集積回路に電気的に接続される振動素子と、振動素子を収容する凹部が設けられ、凹部の周囲の側壁部を有し、側壁部の端面が第1面に対して接合部において接合されるリッドを含む。また集積回路は、第1回路及び第2回路を含み、第1回路は、第1面の第1領域、第2領域のうち、第1面に直交する平面視において接合部に重なる第1領域に配置される第1回路素子を含む。そして第1回路素子は、受動素子又はトランジスターであり、第1面と側壁部の内側側面との間の角度をθとしたとき、θ<90°を満たす。
【0146】
本実施形態の振動デバイスは、第1面に集積回路が配置される半導体基板を含むベースと、集積回路に電気的に接続される振動素子と、側壁部の端面が第1面に対して接合部において接合されるリッドを含む。これにより小型の振動デバイスを実現できる。また集積回路の第1回路は、平面視において接合部に重なる第1領域に配置される第1回路素子を含む。そして第1面と側壁部の内側側面との間の角度をθとした場合に、θ<90°となるようリッドの側壁部の内側側面を傾斜させている。このように側壁部の内側側面を傾斜させることで、加重による応力を分散させることができる。これにより接合部の付近の領域での応力が低減され、第1領域の第1回路素子に印加される応力を低減できるため、応力を原因とする振動デバイスの性能の劣化を抑制できるようになる。
【0147】
また本実施形態では、θ≦80°を満たしてもよい。
【0148】
このようにすれば、接合部の付近の領域での応力を、θ<90°を満たす場合に比べて更に低減することが可能になり、第1領域の第1回路素子に印加される応力を更に低減できるようになる。
【0149】
また本実施形態では、リッドは、内側側面が、単結晶シリコンの結晶方位<111>に沿っていてもよい。
【0150】
このようにすれば、接合部の付近の領域での応力を小さくできると共に、単結晶シリコンの結晶方位<111>を利用して側壁部の内側側面の傾きを形成することが可能になる。
【0151】
また本実施形態では、θ>45°を満たしてもよい。
【0152】
このようにすれば、角度θを無用に小さくすることで、振動素子の配置スペースに制限が生じてしまう事態を抑制できるようになる。
【0153】
また本実施形態では、リッドは、ベースを形成する第1半導体ウェハーに対して、接合部を介して応力印加により接合される第2半導体ウェハーにより形成されてもよい。
【0154】
このようにすれば、第1半導体ウェハーと第2半導体ウェハーを接合して、ダイシング等を行うことで、多数の振動デバイスを個別化することが可能になる。
【0155】
また本実施形態では、第2回路は、第2領域に配置される第2回路素子を含み、第1回路素子又は第1回路は、第2回路素子又は第2回路よりも、応力に対する回路特性の変化が小さい回路素子又は回路であってもよい。
【0156】
このようにすれば、印加応力が大きい第1領域に第1回路素子を配置して、集積回路の配置面積を拡大できると共に、印加応力が小さい第2領域に第2回路素子を配置して、応力を原因とする回路特性の劣化を抑えることが可能になる。
【0157】
また本実施形態では、第1回路は、第1回路素子の回路定数の比により回路特性が設定される回路であってもよい。
【0158】
このように第1回路素子の回路定数の比により回路特性が設定される第1回路であれば、第1回路素子を第1領域に配置しても、応力印加を原因とする回路特性の劣化を抑えることが可能になる。
【0159】
また本実施形態では、第1回路は、第1回路素子として複数の受動素子又は複数の能動素子が設けられ、複数の受動素子又は複数の能動素子の回路定数の比により回路特性が設定される回路であってもよい。
【0160】
このように複数の受動素子又は複数の能動素子の回路定数の比により回路特性が設定される第1回路であれば、受動素子又は能動素子を第1領域に配置しても、応力印加を原因とする回路特性の劣化を抑えることが可能になる。
【0161】
また本実施形態では、第1回路素子は、抵抗分圧回路に設けられる抵抗素子、又はカレントミラー回路に設けられるトランジスターであってもよい。
【0162】
このような抵抗分割回路の抵抗素子、カレントミラー回路のトランジスターであれば、第1領域に配置しても、応力印加を原因とする回路特性の劣化を抑えることが可能になる。
【0163】
また本実施形態では、第1回路は、集積回路に用いられる基準電圧を生成する基準電圧生成回路であり、第1回路素子は、基準電圧生成回路の抵抗分割回路に含まれる抵抗素子であってもよい。
【0164】
このように基準電圧生成回路の抵抗分割回路の抵抗素子を第1領域に配置することで、集積回路の配置面積を拡大できるようになる。また抵抗分割回路は抵抗比により回路特性が設定されるため、第1領域に抵抗素子が配置されても、応力を原因とする回路特性の劣化を抑えることが可能になる。
【0165】
また本実施形態では、第1回路は、集積回路に用いられるレギュレート電圧を生成するレギュレーター回路であり、第1回路素子は、レギュレーター回路の抵抗分割回路に含まれる抵抗素子であってもよい。
【0166】
このようにレギュレーター回路の抵抗分割回路の抵抗素子を第1領域に配置することで、集積回路の配置面積を拡大できるようになる。また抵抗分割回路は抵抗比により回路特性が設定されるため、第1領域に抵抗素子が配置されても、応力を原因とする回路特性の劣化を抑えることが可能になる。
【0167】
また本実施形態では、第1回路は、温度を検出する温度センサー回路であり、第1回路素子は、温度センサー回路のカレントミラー回路に含まれるトランジスターであってもよい。
【0168】
このように温度センサー回路のカレントミラー回路のトランジスターを第1領域に配置することで、集積回路の配置面積を拡大できるようになる。またカレントミラー回路はトランジスターのサイズ比により回路特性が設定されるため、第1領域に、カレントミラー回路のトランジスターが配置されても、応力を原因とする回路特性の劣化を抑えることができる。
【0169】
また本実施形態では、第1回路は、制御回路又はメモリーであり、第1回路素子は、制御回路又はメモリーに含まれるトランジスターでああってもよい。
【0170】
このように制御回路又はメモリーのトランジスターを第1領域に配置することで、集積回路の配置面積を拡大できるようになる。また制御回路やメモリーのトランジスターに応力が印加されて、トランジスターの回路特性が変化したとしても、制御回路やメモリーの回路特性については維持できる。
【0171】
また本実施形態では、第2回路は、第2領域に配置される第2回路素子を含み、第2回路素子は受動素子であり、受動素子は、容量素子及び抵抗素子の少なくとも一方であってもよい。
【0172】
このように、印加される応力が小さい第2領域に容量素子や抵抗素子を配置すれば、応力による容量や抵抗の変動を抑えることができる。
【0173】
また本実施形態では、第2回路は、第2領域に配置される第2回路素子を含み、第2回路は、振動素子を発振させる発振回路であり、第2回路素子は、発振回路に含まれる容量素子及び抵抗素子の少なくとも一方であってもよい。
【0174】
このように発振回路の容量素子又は抵抗素子を、印加される応力が小さい第2領域に配置すれば、応力による容量又は抵抗の変動を抑えることが可能になり、発振回路の回路特性の変動も抑えることが可能になる。
【0175】
また本実施形態では、第2回路は、第2領域に配置される第2回路素子を含み、第2回路は、振動素子の発振周波数の温度補償を行う温度補償回路であり、第2回路素子は、温度補償回路に含まれる抵抗素子であってもよい。
【0176】
このように温度補償回路の抵抗素子を、印加される応力が小さい第2領域に配置すれば、応力による抵抗の変動を抑えることが可能になり、温度補償回路の回路特性の変動も抑えることが可能になる。
【0177】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本開示の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。また振動デバイスの構成・動作等も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0178】
1…振動デバイス、2…ベース、3…リッド、5…振動素子、10…集積回路、11…発振回路、12…出力回路、13…制御回路、14…電源回路、15…温度補償回路、16…温度センサー回路、17…メモリー、18…PLL回路、20…半導体基板、21…第1面、22…第2面、30…凹部、32…側壁部、33…側壁部、34…端面、35…端面、36…接合部、37…接合部、40…貫通電極、41…貫通孔、42…絶縁膜、60…接合部、62…マウント電極、64…配線、70…電流生成回路、71…1次補正回路、72…高次補正回路、73…電流電圧変換回路、74…関数電流生成回路、75…基準電流生成回路、76…第1補償回路、77…第2補償回路、78…バッファー回路、80…基準電圧生成回路、81…レギュレーター回路、82、83…抵抗分割回路、84…カレントミラー回路、86…可変容量回路、91…外部接続端子、92…外部接続端子、94…駆動回路、95…基準電圧供給回路、96…第1可変容量回路、97…第2可変容量回路、120…第1半導体ウェハー、130…第2半導体ウェハー、132…金属膜、ARA…第1領域、ARB…第2領域、BL…接合境界、α…傾斜角、θ…角度、CK…クロック信号、CP…中央点、DR1…第1方向、DR2…第2方向、DR3…第3方向、OE…出力イネーブル信号、PCK…パッド、PGND…パッド、POE…パッド、PVDD…、PX1、PX2…パッド、SD1…第1辺、SD2…第2辺、SD3…第3辺、SD4…第4辺、SP…収容空間、TCK、TGND、TOE、TVDD…端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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