(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108412
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】半導体集積回路装置
(51)【国際特許分類】
G05F 1/56 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
G05F1/56 320C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012764
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】寺田 忠平
(72)【発明者】
【氏名】高野 陽一
【テーマコード(参考)】
5H430
【Fターム(参考)】
5H430BB01
5H430BB05
5H430BB09
5H430EE06
5H430FF02
5H430FF13
5H430HH03
5H430LA07
(57)【要約】
【課題】過電流保護回路を備えた半導体集積回路装置においてリトライ動作を繰り返している間は異常状態を示す信号を出力し続けるようにする。
【解決手段】電圧入力端子と電圧出力端子との間に接続された出力トランジスタと、出力トランジスタを制御する制御回路とを備えた半導体集積回路装置において、出力トランジスタに所定値以上の電流が流れたことを検出可能な過電流検出回路と、過電流状態を検出したことに応じて出力トランジスタを間欠的にオフ状態にさせるための信号を出力するリトライ回路と、エラーフラグ信号を出力するための外部端子とを備え、制御回路はリトライ回路から出力される信号に基づいて出力トランジスタを一時的にオフさせる制御を繰り返す機能を有し、リトライ回路は過電流状態が検出された後制御回路が出力トランジスタを一時的にオフさせる制御を繰り返している間は異常を示すエラーフラグを連続して異常を示すようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧が入力される電圧入力端子と電圧出力端子との間に接続された出力トランジスタと、前記出力トランジスタをオン状態またはオフ状態に制御する制御回路と、を備えた半導体集積回路装置であって、
前記出力トランジスタに所定値以上の電流が流れたことを検出可能な過電流検出回路と、
前記過電流検出回路が出力電流の過電流状態を検出したことに応じて前記出力トランジスタを間欠的にオフ状態にさせるための信号を生成し出力するリトライ回路と、
内部回路の異常を示すエラーフラグ信号を出力するための外部端子と、を備え、
前記制御回路は、前記リトライ回路から出力される信号に基づいて前記出力トランジスタを一時的にオフさせる制御を繰り返す機能を有し、
前記リトライ回路は、前記過電流検出回路が出力電流の過電流状態を検出した後、前記制御回路が前記出力トランジスタを一時的にオフさせる制御を繰り返している間は、前記エラーフラグ信号を、連続して異常を示すように構成されていることを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項2】
前記リトライ回路は、
コンデンサを充電する第1定電流源および前記コンデンサを放電する第2定電流源を備え所定時間を計時するタイマー回路と、
前記タイマー回路の充放電ノードの電圧と所定の第1低しきい値電圧または第1高しきい値電圧とを比較する第1電圧比較回路と、
前記タイマー回路の充放電ノードの電圧と所定の第2低しきい値電圧または第2高しきい値電圧とを比較する第2電圧比較回路と、を備え、
前記第1電圧比較回路と第2電圧比較回路は、比較対象の電圧が上昇するときは高い方のしきい値電圧と比較し、比較対象の電圧が下降するときは低い方のしきい値電圧と比較するようにされ、
前記リトライ回路は、
前記第1電圧比較回路または前記第2電圧比較回路から出力される信号に基づいて、前記充放電ノードの電圧が前記第1高しきい値電圧または前記第2高しきい値電圧よりも上がったことを検出した場合に前記エラーフラグ信号を異常を示す状態に変化させ、
前記第1電圧比較回路が前記充放電ノードの電圧が前記第1低しきい値電圧以下に下がったことを検出し、かつ前記第2電圧比較回路が前記充放電ノードの電圧が前記第2低しきい値電圧以下に下がったことを検出した場合に前記エラーフラグ信号を正常を示す状態に復帰させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体集積回路装置。
【請求項3】
前記タイマー回路は、前記過電流検出回路が過電流状態を検出したことに応じて充電動作を開始し、前記第1電圧比較回路が前記充放電ノードの電圧が前記第1高しきい値電圧に達したことを検出したことに応じて放電動作を開始するように構成され、
前記制御回路は、前記第1電圧比較回路から出力される信号に基づいて、前記充放電ノードの電圧が前記第1高しきい値電圧よりも上がったことを検出した場合に前記出力トランジスタを一時的にオフさせるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の半導体集積回路装置。
【請求項4】
前記第1高しきい値電圧は前記第2高しきい値電圧よりも低い値に設定されており、
前記リトライ回路は、
前記第1電圧比較回路から出力される信号に基づいて、前記タイマー回路の充放電ノードの電圧が前記第1高しきい値電圧よりも上がったことを検出した場合に前記エラーフラグ信号を異常を示す状態に変化させるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の半導体集積回路装置。
【請求項5】
前記外部端子と接地点との間に接続されたスイッチ・トランジスタを備え、
前記リトライ回路は、前記スイッチ・トランジスタをオン状態またはオフ状態にするための信号を出力し、
前記スイッチ・トランジスタをオン状態またはオフ状態に応じて、前記エラーフラグ信号が前記外部端子より出力されるように構成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の半導体集積回路装置。
【請求項6】
前記半導体集積回路装置はハイサイドスイッチ用の半導体集積回路装置であり、
前記出力トランジスタと並列に接続され前記出力トランジスタの制御端子に印加される制御信号と同一の信号が制御端子に印加された第1トランジスタと、
前記電圧入力端子と接地点との間に、前記第1トランジスタと直列をなすように接続された第2トランジスタおよび電流-電圧変換手段と、
前記出力トランジスタの出力側の電圧と前記第1トランジスタおよび第2トランジスタの接続ノードの電圧とを入力とする差動増幅回路と、
を備え、前記差動増幅回路の出力が前記第2トランジスタの制御端子に印加され、前記電流-電圧変換手段により電流-電圧変換された電圧が前記過電流検出回路に供給されるように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の半導体集積回路装置。
【請求項7】
前記半導体集積回路装置はリニアレギュレータ用の半導体集積回路装置であり、
前記出力トランジスタと並列に接続され前記出力トランジスタの制御端子に印加される制御信号と同一の信号が制御端子に印加された第1トランジスタと、
前記電圧入力端子と接地点との間に、前記第1トランジスタと直列をなすように接続された電流-電圧変換手段と、
を備え、前記電流-電圧変換手段により電流-電圧変換された電圧が前記過電流検出回路に供給されるように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の半導体集積回路装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧入力端子と出力端子との間に接続されたスイッチ用または出力用のトランジスタおよび該トランジスタを過電流から保護する過電流保護回路を備えた半導体集積回路装置(IC)に関し、例えばハイサイドスイッチICやリニアレギュレータ用IC(電源用IC)に利用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電源と負荷との間に接続され負荷に電源電圧を供給したり遮断したりする機能を有するハイサイドスイッチICや、直流電圧入力端子と出力端子との間に設けられたトランジスタを制御して所望の電位の直流電圧を出力するICとしてリニアレギュレータを構成する電源用ICがある。
また、ハイサイドスイッチICや電源用ICにおいては、トランジスタを過電流から保護する過電流保護回路を設けることがある。
【0003】
従来の一般的な過熱保護機能による動作においては、ジャンクション(チップ接合面)の温度が150℃に達すると電流を遮断し、100℃で復帰する制御を実行した場合、ジャンクションの温度は100~150℃になる。そのため、瞬間的なショートが発生した場合は問題ないが、負荷の継続的なショートが発生した場合には100℃以上の温度を維持してしまう。その結果、デバイスの寿命が低下したり、素子破壊が生じたりすることがあるという課題がある。
【0004】
そこで、本発明者らは、電圧入力端子と出力端子との間に接続されたトランジスタおよび過電流保護回路を備えたハイサイドスイッチICや電源用ICのような半導体集積回路装置において、過熱保護機能によることなく許容損失を超える前に出力電流を遮断できるようにした発明をなし出願をした(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の発明は、直流電圧が入力される電圧入力端子と電圧出力端子との間に接続された出力トランジスタと、前記出力トランジスタをオン状態またはオフ状態に制御する制御回路と、を備えた半導体集積回路装置において、出力トランジスタに流れている電流を比例縮小した電流を生成可能な比例電流生成回路と、比例電流生成回路により生成された電流に基づいて出力トランジスタに所定値以上の電流が流れたことを検出可能な過電流検出回路と、過電流検出回路が出力電流の過電流状態を検出したことに応じて出力トランジスタを間欠的にオフ状態にさせるための信号を生成し出力するリトライ回路と、を備え、制御回路はリトライ回路から出力される信号に基づいて出力トランジスタを一時的にオフさせる制御を繰り返すように構成したものである。
【0007】
しかしながら、特許文献1の発明にあっては、出力電流の過電流状態が発生しリトライ動作をしていることを外部から知ることができないという課題がある。そこで、特許文献1の発明の半導体集積回路に、エラーフラグ端子を設け、リトライの判定を行うコンパレータの出力で上記エラーフラグ端子より回路の状態を示す信号を出力するようにした
図5に示すような回路を考えた。
しかし、
図5に示す回路にあっては、
図6に示すように、リトライの判定を行うコンパレータの出力のハイ/ロウに追従してエラーフラグErr_Flagも正常を示す状態(ハイ)と異常を示す状態(ロウ)を繰り返してしまう。そのため、そのエラーフラグを受け取る外部装置の側では、回路の異常状態を判断することが難しくなり、使用勝手が悪いという課題があることが分かった。
【0008】
この発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、電圧入力端子と出力端子との間に接続された出力トランジスタおよび過電流保護回路を備え、過熱保護機能によることなく許容損失を超える前に出力電流を遮断し、過電流状態が解消すると定常状態に自動復帰する動作を繰り返すリトライ機能を備えるように構成した半導体集積回路装置において、リトライ動作を繰り返している間は異常状態を示す信号を出力し続けることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、
直流電圧が入力される電圧入力端子と電圧出力端子との間に接続された出力トランジスタと、前記出力トランジスタをオン状態またはオフ状態に制御する制御回路と、を備えた半導体集積回路装置において、
前記出力トランジスタに所定値以上の電流が流れたことを検出可能な過電流検出回路と、
前記過電流検出回路が出力電流の過電流状態を検出したことに応じて前記出力トランジスタを間欠的にオフ状態にさせるための信号を生成し出力するリトライ回路と、
内部回路の異常を示すエラーフラグ信号を出力するための外部端子と、を備え、
前記制御回路は、前記リトライ回路から出力される信号に基づいて前記出力トランジスタを一時的にオフさせる制御を繰り返す機能を有し、
前記リトライ回路は、前記過電流検出回路が出力電流の過電流状態を検出した後、前記制御回路が前記出力トランジスタを一時的にオフさせる制御を繰り返している間は、前記エラーフラグ信号を、連続して異常を示すように構成したものである。
【0010】
上記手段によれば、電圧入力端子と出力端子との間に接続された出力トランジスタおよび過電流保護回路を備え、過電流状態が解消すると定常状態に自動復帰する動作を繰り返すリトライ機能を備えるように構成した半導体集積回路装置において、リトライ動作を繰り返している間は異常状態を示す信号を出力し続けることができる。これによって、異常状態を示す信号を受け取る外部装置の側では、回路の異常状態を容易かつ正確に判断することができるようになり、使用勝手が向上する。
また、本発明は、ハイサイドスイッチICや電源用ICのような異なる用途の半導体集積回路装置に適用することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電圧入力端子と出力端子との間に接続された出力トランジスタおよび過電流保護回路を備え、過熱保護機能によることなく許容損失を超える前に出力電流を遮断し、過電流状態が解消すると定常状態に自動復帰する動作を繰り返すリトライ機能を備えるように構成した導体集積回路装置において、リトライ動作を繰り返している間は異常状態を示す信号を出力し続けることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明を適用したハイサイドスイッチICの一実施形態を示す回路構成図である。
【
図2】実施形態のハイサイドスイッチICの内部回路の動作タイミングを示すタイミングチャートである。
【
図3】実施形態のハイサイドスイッチICの過電流検出回路を構成する比例電流生成回路の具体例を示す回路図である。
【
図4】本発明を適用したリニアレギュレータ用ICの一実施形態を示す回路構成図である。
【
図5】ハイサイドスイッチICの内部回路の構成例を示す回路構成図である。
【
図6】
図5に示すハイサイドスイッチICにおける内部回路の動作タイミングを示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施例)
図1は、本発明を適用したハイサイドスイッチICの一実施形態を示す。なお、
図1において、一点鎖線で囲まれた部分は、単結晶シリコンのような半導体チップ上に半導体集積回路(IC)10として形成され、該IC10の出力端子OUTに出力安定化用のコンデンサCoが接続されている。
【0014】
本実施形態のハイサイドスイッチIC10においては、
図1に示すように、直流電圧VDDが印加される電圧入力端子INと出力端子OUTとの間に、PチャンネルMOSトランジスタからなるスイッチ用のトランジスタM1が接続されている。また、IC10には、外部のマイコン(CPU)などからの信号が入力されるチップ制御用の端子CEと、端子CEの電位を入力とするロジック回路11およびロジック回路11の出力によってトランジスタM1のゲート制御信号を生成する制御回路12が設けられており、制御回路12は端子CEの電位に応じてトランジスタM1をオン状態またはオフ状態にするゲート制御信号を生成する。
【0015】
制御回路12は、NチャンネルMOSトランジスタM11~M14からなりロジック回路11からの出力信号によってオン、オフされるオン/オフ機能付きのカレントミラー回路CM1と、該カレントミラー回路CM1の1次側トランジスタM11と直列に接続されたPチャンネルMOSトランジスタM2および定電流源CC3と、カレントミラー回路CM1の2次側トランジスタM12と直列に接続された電流-電圧変換用の抵抗R1とにより構成されている。M13,M14はオン/オフ用のトランジスタである。ロジック回路11は、チップ制御用の端子CEの論理電位を反転するインバータINV1と、インバータINV1の出力をさらに反転するインバータINV2と、インバータINV1の出力と後述のリトライ回路16からの信号とを入力とするNANDゲートG1とにより構成されている。
【0016】
制御回路12においては、ロジック回路11の出力によってトランジスタM14がオンされると、定電流源CC3の電流I3がM14に流れることでM11、M12がオフして抵抗R1に電流が流れなくなる。すると、抵抗R1を介してトランジスタM1のゲート端子に直流電圧VDDが印加されてM1がオフ状態にされる。一方、ロジック回路11の出力によってトランジスタM14がオフされると、定電流源CC3の電流I3がM11に流れることでM12および抵抗R1に電流が流れるようになって、トランジスタM1のゲート端子に抵抗R1で降下した電圧が印加されてM1がオン状態にされる。
【0017】
また、本実施形態のハイサイドスイッチIC10には、基準電圧Vrefを発生するための基準電圧回路13と、トランジスタM2と直列に接続され基準電圧回路13に動作電流を流す定電流源CC1とが設けられている。基準電圧回路13は、バンドギャップ、直列の抵抗およびツェナーダイオードなどで構成することができる。
さらに、本実施形態のハイサイドスイッチIC10には、過電流保護回路14と、出力電流Ioutを制限するカレントリミット回路15を構成するコンパレータ(電圧比較回路)CMP2と、リトライ回路16と、過電流保護回路14の出力によってリトライ回路16の電流回路をオン、オフ制御するスイッチ・トランジスタM10が設けられている。
【0018】
過電流保護回路14は、トランジスタM1によって出力端子OUTへ向かって流される出力電流Ioutに比例した電流Iout’を生成する比例電流生成回路14Aと、生成された電流Iout’を電圧に変換する電流-電圧変換回路14Bと、変換された電圧に基づいて過電流状態を検出する過電流検出回路14Cとを備えており、過電流検出回路14Cの出力OCP_OUTが上記スイッチ・トランジスタM10のゲート端子に入力されるように構成されている。
また、IC10には、比例電流生成回路14Aにより生成された電流Iout’をチップ外部へ流すための外部端子SCが設けられており、電流-電圧変換回路14Bはこの外部端子SCと接地点との間に接続された外付けの抵抗素子Rscによって構成されている。過電流検出回路14Cは、この抵抗素子Rscによって変換された電圧Vscと予め設定された参照電圧Vref_OCPとを比較するコンパレータCMP1によって構成されている。コンパレータCMP1とCMP2には、ヒステリシス特性を有する使用される。抵抗Rscはオンチップの素子であっても良い。
【0019】
カレントリミット回路15を構成するコンパレータCMP2には、抵抗素子Rscによって変換された電圧と予め設定された参照電圧Vref_CLとが入力されており、電流Iout’すなわち出力電流Ioutが所定の電流値を超えるとコンパレータCMP2の出力CL_OUTがハイレベルに変化する。コンパレータCMP2の出力CL_OUTは、制御回路12のカレントミラー回路CM1の1次側トランジスタM11と並列に接続されたトランジスタM13のゲート端子に入力されており、コンパレータCMP2の出力CL_OUTがハイレベルに変化するとM13がオンされることで、M11,M12および抵抗R1の電流が減少され、それによって出力用のトランジスタM1のゲート・ソース間電圧が小さくされ、所定値以上の出力電流Ioutが流れないように制限されることとなる。つまり、コンパレータCMP2とトランジスタM13とによってカレントリミット回路15が構成される。
【0020】
なお、カレントリミット回路15の参照電圧Vref_CLは過電流検出回路14Cの参照電圧Vref_OCPよりも大きな値に設定され、過電流保護が働く電流よりも大きな出力電流が流れた際にカレントリミット回路が機能するように構成されている。この場合、例えばトランジスタM13の素子サイズ(ゲート幅)を、M11,M12のサイズよりも小さくすることで、M13がオンされM13に電流IM13が流れた際にM11,M12にも定電流源CC3の電流I3との差分の電流(I3-IM13)が流れることで、出力トランジスタM1のゲート電圧がVDDよりも低くなり、M1にクランプされた電流が流れるようにすることができる。または、抵抗R1の値を調整しても良い。
【0021】
リトライ回路16は、NチャンネルMOSトランジスタM4,M5からなるカレントミラー回路CM2と、トランジスタM2と直列に接続された定電流源CC2と、定電流源CC2の電流が1次側に流されるカレントミラー回路CM2と、PチャンネルMOSトランジスタM7,M8からなりカレントミラー回路CM2の2次側の電流を折り返すカレントミラー回路CM3と、カレントミラー回路CM3のトランジスタM8と直列に接続されたトランジスタM6およびM6と並列に接続されたトランジスタM3と、トランジスタM3,M6のドレイン電圧(ノードN1の電位)と所定の参照電圧Vth3とを比較するコンパレータCMP3と、コンパレータCMP3の出力を反転するインバータINV3を備える。
【0022】
そして、インバータINV3の出力Retry_OUTは、カレントミラー回路CM3のトランジスタM7と並列に接続されたスイッチ・トランジスタM9のゲート端子とロジック回路11のNANDゲートG1に入力されている。また、IC10には、カレントミラー回路CM3のトランジスタM8とトランジスタM3,M6のドレイン端子との接続ノードN1に接続された外部端子PCTが設けられ、この外部端子PCTにはタイマー回路を構成する外付けのコンデンサCTが接続されている。
【0023】
なお、上記参照電圧Vth3は、基準電圧回路13からの基準電圧Vrefを直列抵抗R21,R22,R23からなる抵抗分圧回路で分圧することで生成される。また、この抵抗分圧回路の抵抗R22とR23との接続ノードN2と接地点との間にはMOSトランジスタM16が接続されており、このトランジスタM16のゲート端子にコンパレータCMP3の出力電圧が印加されており、M16のオン、オフで接続ノードN2の電位がVth3HまたはVth3Lに切り替えられる。これにより、コンパレータCMP3はヒステリシス・コンパレータとして動作する。
【0024】
また、本実施形態のリトライ回路16には、外部端子PCTに接続されたノードN1の電位と所定の参照電圧Vth4とを比較するコンパレータCMP4と、コンパレータCMP4の出力を反転するインバータINV4およびインバータINV4の出力および上記インバータINV3の出力を入力とするNANDゲートG2が設けられている。
ここで、上記参照電圧Vth4は、基準電圧回路13からの基準電圧Vrefを直列抵抗R31,R32,R33からなる抵抗分圧回路で分圧することで生成される。また、この抵抗分圧回路の抵抗R32とR33との接続ノードN3と接地点との間にはMOSトランジスタM17が接続されている。そして、このトランジスタM17のゲート端子にはNANDゲートG2の出力電圧が印加されており、M17のオン、オフで接続ノードN4の電位がVth4HまたはVth4Lに切り替えられる。これにより、コンパレータCMP4はヒステリシス・コンパレータとして動作する。
【0025】
さらに、本実施形態のハイサイドスイッチICには、過電流状態(異常)が発生していることを外部へ知らせるエラーフラグ信号Err_Flagを出力するための外部端子P1と、該外部端子P1と接地点との間に接続されたMOSトランジスタM15とが設けらている。そして、このトランジスタM15のゲート端子には上記リトライ回路16のNANDゲートG2の出力信号Retry_RSTが入力され、正常状態ではロウレベルである信号Retry_RSTがハイレベルに変化されることで、トランジスタM15がオンされる。これにより、外部端子P1に接続された外付けのプルアップ抵抗Rpuに電流が流され、外部端子P1からシステムを制御するCPU等へロウレベルのエラーフラグ信号Err_Flagを出力することができるようになっている。
【0026】
次に、上記のような構成を有するハイサイドスイッチIC(または後述のリニアレギュレータIC)におけるリトライ回路16の動作について説明する。
制御端子CEのレベルがハイレベルとなると、インバータINV1を介してトランジスタM2は常時オン、M3は常時オフする。過電流状態で無い場合、コンパレータCMP1の出力はロウレベルとなりトランジスタM10はオン、カレントミラー回路CM3はオフする。カレントミラー回路CM2はオンのためトランジスタM6はオンでノードN1はロウレベルとなり、リトライ回路16は動作していない状態となる。また、ノードN1がロウレベルのため、コンパレータCMP3の出力はロウレベル、Retry_OUTはハイレベルでトランジスタM9はオフとなる。
【0027】
過電流状態となった場合、外付け抵抗Rscに流れる電流が増加してコンパレータCMP1の入力である端子SCの電圧VscがVref_OCPを超え、CMP1の出力がハイレベルとなり、M10がオフしてリトライ回路16が動作する。そして、トランジスタM9がオフのため、カレントミラー回路CM3のトランジスタM7がオンされ、M8に電流Isourceが流れる。すると、トランジスタM6の電流Isink(<Isource)との差電流(Isource-Isink)によってコンデンサCTが充電され、ノードN1の電位(=端子PCTの電位VCT)が徐々に上昇する。そして、ノードN1の電位(VCT)が参照電圧Vref_Retryを超えると、コンパレータCMP3の出力がハイレベルに変化し、トランジスタM9がオンされることによって、カレントミラー回路CM3のトランジスタM7,M8に流れる電流が遮断される。
【0028】
すると、トランジスタM6の電流IsinkによってコンデンサCTの電荷が放電され、ノードN1の電位すなわち端子PCTの電位VCTが徐々に降下する。そして、端子PCTの電位VCTが参照電圧Vref_Retryよりも低くなると、コンパレータCMP3の出力がロウレベルに変化し、トランジスタM9がオフされることによって、カレントミラー回路CM3のトランジスタM7,M8に電流が流れる。上記動作を繰り返すことで、
図2に示すように、端子PCTの電位VCTは三角波状に変化する。
一方、コンパレータCMP3の出力の変化によって、端子CEがハイレベルであることを条件に、ロジック回路11のNANDゲートG1の出力がハイ/ロウに変化し、制御回路12のトランジスタM14がオン/オフされ、出力用のトランジスタM1がオン/オフされる。つまり、過電流検出回路14Cが過電流を検出した場合は、リトライ回路16によって間欠的に過電流保護動作を行い、過電流が流れ続けることでチップ温度が上昇するのが抑制される。また、過電流状態が解除された後は、定常動作に自動復帰することができる。
【0029】
次に、出力端子OUTまたは負荷で短絡(ショート)が発生し過電流状態が生じた場合におけるハイサイドスイッチIC10の内部回路の動作を、
図2のタイミングチャートを用いて説明する。なお、コンパレータCMP3、CMP4はそれぞれヒステリシス特性を有するので、以下の説明では、コンパレータCMP3の高い方のしきい値電圧をVth3H、低い方のしきい値電圧をVth3L、コンパレータCMP4の高い方のしきい値電圧をVth4H、低い方のしきい値電圧をVth4Lと記す。
本実施形態においては、Vth3H<Vth4H,Vth3L>Vth4Lとなるように、基準電圧Vrefを分圧してしきい値電圧を生成する分圧回路を構成する前記抵抗R21,R22,R23と抵抗R31,R32,R33の抵抗値が設定されている。なお、Vth3H<Vth4Hに設定されているのは、素子の製造バラツキでVth3H>Vth4Hとなり、端子PCTの電位VCTが上昇している際に、コンパレータCMP4の出力がCMP3よりも先に変化するのを回避するためである。一方、Vth3L>Vth4Lに設定されているのは、後述するように、トリライ動作中は連続してエラーフラグ信号を、異常を示す状態に維持させるためである。Vth3HとVth3Lは同一レベルであっても良い。
【0030】
IC10の動作に関しては、先ず、
図2のタイミングt1で制御端子CEの電位がハイレベルに立ち上がると、インバータINV1の出力がロウレベルに変化してトランジスタM2がオンされて定電流源CC3に電流が流される。このときリトライ回路16のコンパレータCMP3の出力はロウレベルで、インバータINV3の出力Retry_OUTはハイレベルであるため、NANDゲートG1の出力がロウレベルとなり、トランジスタM14がオフされている。そのため、制御回路12のカレントミラー回路CM1に電流が流れて抵抗R1に電流が流され、出力トランジスタM1のゲート電圧が下がることでM1はオン状態にされて出力電流Ioutが流れ、出力電圧Voutが立ち上がった定常状態T1となる。
【0031】
上記定常状態T1において、出力側でショートが発生したとすると、出力電流Ioutと比例電流生成回路14Aにより生成される比例電流Iout’が増加して、過電流保護回路14およびカレントリミット回路15によって過電流状態が検出され、コンパレータCMP1の出力OCP_OUTとCMP2の出力CL_OUTがハイレベルに変化する(タイミングt2)。すると、リトライ回路16のコンパレータCMP1の出力OCP_OUTによってトランジスタM10がオフされて、カレントミラー回路CM3のトランジスタM7がオンされ、M8に電流Isourceが流れ、M6の電流Isink(<Isource)との差電流(Isource-Isink)によってコンデンサCTが充電され、ノードN1の電位すなわち端子PCTの電位VCTが徐々に上昇する(期間T2)。なお、VCTがコンパレータCMP3のしきい値電圧Vth3Hまで上昇する時間が検出遅延となり、検出遅延中に過電流状態が解除されるとT1期間の状態に戻る。
【0032】
そして、端子PCTの電位VCTがコンパレータCMP3のしきい値電圧Vth3Hに達すると(タイミングt3)、コンパレータCMP3の出力がハイレベル、インバータINV3の出力Retry_OUTがロウレベルに変化し、トランジスタM9がオンされることによって、カレントミラー回路CM3のトランジスタM7,M8に流れる電流が遮断される。すると、トランジスタM6の電流IsinkによってコンデンサCTの電荷が放電され、端子PCTの電位VCTが徐々に降下する(期間T3)。
なお、このとき、トランジスタM16がオンされて、しきい値電圧がVth3HからVth3Lに切り替わる。また、コンパレータCMP3の出力がハイレベルに変化するとNANDゲートG2の出力がハイレベルに変化してM17がオンされ、コンパレータCMP4のしきい値電圧がVth4HからVth4Lに切り替わる。これにより、コンパレータCMP4の出力がロウレベルからハイレベルに変化する。
【0033】
その後、端子PCTの電位VCTの電位が参照電圧Vth3Lに達すると(タイミングt4)、コンパレータCMP3の出力がロウレベル、インバータINV3の出力Retry_OUTがハイレベルに変化し、トランジスタM9がオフされることによって、カレントミラー回路CM3のトランジスタM7,M8に電流が流れコンデンサCTが充電される。上記動作を繰り返すことで、端子PCTの電位VCTは三角波状に変化する(リトライ動作期間)。なお、端子PCTの電位VCTが上昇してショート(過電流)を検出している期間(T2)においては、一時的に出力トランジスタM1に電流が流れて、出力電圧Voutが僅かに高くなる。
【0034】
その後、タイミングt5でショート状態が解除されたとすると、端子PCTの電位VCTが参照電圧VTH3Lに達した時点(タイミングt6)で、インバータINV3の出力Retry_OUTがハイレベルに変化し、トランジスタM9がオフされることによって、カレントミラー回路CM3のトランジスタM7,M8に電流が流れ、出力トランジスタM1がオンされて、出力電圧Voutが上昇して定常状態となり、電源電圧VDDまたは制御端子CEの電位が下がるタイミングt8までその状態を維持する。なお、タイミングt6でトランジスタM16がオフされ、コンパレータCMP3のしきい値電圧はVth3LからVth3Hに切り替わる。また、タイミングt6の後、端子PCTの電位VCTはしばらく上昇するが、すぐに下降に転じ、接地電位まで下がる。コンパレータCMP4の出力は、VCTがVth4Lに達した時点(タイミングt7)でロウレベルに変化し、NANDゲートG2の出力がロウレベルに変化してトランジスタM17がオフされ、しきい値電圧はVth4LからVth4Hに切り替わる。
【0035】
次に、外部端子P1から出力されるエラーフラグ信号Err_Flagの状態変化について説明する。
先ず、過電流が発生する前の初期状態では、外部端子PCTの外付け容量CTは、トランジスタM6の電流Isinkで放電され、PCT端子の電圧VCTは接地電位となる。この時、コンパレータCMP3とCMP4の出力はどちらもロウレベルとなり、インバータINV3,INV4の出力はどちらもハイレベルとなる。そのため、NANDゲートG2の出力がロウレベルとなり、トランジスタM15がオフ状態にされ、外部端子P1より出力されるエラーフラグErr_Flagはハイレベルを維持する(
図2のT1期間)。
【0036】
次に、タイミングt2で過電流が発生したとすると、コンパレータCMP1がそれを検出して、その出力がハイレベルとなり、トランジスタM10がオフされ、M8に電流Isourceが流れ、M6の電流Isinkとの差電流(Isource-Isink)によってコンデンサCTが充電され、端子PCTの電位VCTが徐々に上昇する(期間T2)。また、この時コンパレータCMP3とCMP4は、高い方のしきい値電圧Vth3H,Vth4Hであるため、NANDゲートG2の出力がロウレベルであり、エラーフラグErr_Flagはハイレベルを維持する。
【0037】
その後、過電流の状態が続きVCTが上昇を続けると、Vth3HとVth4Hの関係(Vth3H<Vth4H)からコンパレータCMP3の出力がハイレベルになり(タイミングt3)、インバータINV3の出力信号Retry_OUTがロウレベルとなる。また、コンパレータCMP3の出力が先にハイレベルになることで、コンパレータCMP3のしきい値電圧は、低い方の電圧Vth3Lに切り替わる。
一方、信号Retry_OUTがロウレベルになると、NANDゲートG2の出力がハイレベルになって、トランジスタM15がオンされエラーフラグErr_Flagがロウレベルに変化する。そして、この時、トランジスタM17がオンして、コンパレータCMP4のしきい値電圧は、低い方の電圧Vth4Lに切り替わる。
【0038】
また、タイミングt3でコンパレータCMP3の出力がハイレベルになると、トランジスタM9がオフされてコンデンサCTの放電が開始されることによって、端子PCTの電位VCTが徐々に降下する(期間T3)。そして、VCTがコンパレータCMP3の低い方のしきい値電圧Vth3Lよりも低くなると(タイミングt4)、コンパレータCMP3の出力がロウレベルに変化し、出力用のトランジスタM1がオンして再起動する。
この時に過電流の状態が続いていると、M1の再起動と同時にVCTは低下から上昇に切り替わるが、この時Vth3LとVth4LはVth3L>Vth4Lに設定されているため、コンパレータCMP4の出力はハイレベルを維持している。そのため、エラーフラグErr_Flagも異常を示すロウレベルの状態を維持する(期間T3)。
【0039】
本実施形態のハイサイドスイッチICにおいては、過電流状態が継続することによって、T2,T3のオートリトライ動作が繰り返されているリトライ動作期間中は、異常状態を示すロウレベルのエラーフラグErr_Flagを、外部端子P1より出力し続けることができる。つまり、リトライ回路16による間欠保護動作による出力用トランジスタM1のオン、オフ動作が行われたとしても、異常状態を示す信号を出し続けることができる。そのため、間欠保護動作期間中にエラーフラグErr_Flagが正常を示す状態(ハイ)と異常を示す状態(ロウ)を繰り返してしまうのを回避することができ、エラーフラグを受け取る外部装置の側では、回路の異常状態を容易に判断することができる。
【0040】
また、出力用トランジスタM1がオン、オフを繰り返すオートリトライ動作中に過電流状態が解除された場合には、期間T4のように、端子PCTの電位VCTが低下し続けて、VCT<Vth4Lになると、コンパレータCMP4の出力がロウレベルに変化し、NANDゲートG2の出力がハイレベルとなる(タイミングt7)。これにより、トランジスタM15がオン状態にされ、外部端子P1より出力されるエラーフラグErr_Flagは正常を示すハイレベルの状態に戻る。
なお、上記繰り返し動作の周波数は、本実施形態のICが、例えばチューナやアンテナ、マイクなどの周波数信号を扱うデバイスに電源を供給するシステムに使用される場合には、扱う受信信号や送信信号の周波数帯と重ないような低い周波数とするのが望ましい。また、端子PCTの電位VCTが徐々に降下する期間T3は、端子PCTの電位VCTが徐々に上昇する期間T2よりも長くするのが望ましい。
【0041】
図3には、過電流保護回路14を構成する比例電流生成回路14Aの具体的な回路例を記載したハイサイドスイッチIC10の構成図が示されている。なお、
図3においては、基準電圧回路13およびカレントリミット回路15の図示を省略している。
図3に示すように、比例電流生成回路14Aは、出力用のトランジスタM1の素子サイズの1/nのサイズを有しソース端子がM1のソース端子に結合されるとともにゲート端子にM1のゲート電圧と同一の電圧が印加されたPチャンネルMOSトランジスタM41と、トランジスタM1のドレイン電圧VaとM41のドレイン電圧Vbとを入力とする差動アンプAMP1と、トランジスタM41のドレイン端子と外部端子SCとの間に接続されたPチャンネルMOSトランジスタM42を備え、M42のゲート端子に差動アンプAMP1の出力電圧が印加されている。
【0042】
差動アンプAMP1は、トランジスタM41のドレイン電圧VbがM1のドレイン電圧Vaと同一になるようにトランジスタM42を動作させる。具体的には、差動アンプAMP1がM1のドレイン電圧VaとM41のドレイン電圧Vbとの電位差に応じてトランジスタM42のゲート電圧を制御し、M42のドレイン電流がVaとVbの電位差に応じて増減し、それによってM41のドレイン電流が変化するという帰還がかかることによってVbがVaと同一になる。
【0043】
そして、VbがVaと同一であれば、M41とM1のソース電圧、ドレイン電圧およびゲート電圧が同一になる。その結果、M41のドレイン電流すなわち外部端子SCから外付けの抵抗素子Rscへ流される電流Iout’は、M1とM41のサイズ比に応じて出力電流Ioutを比例縮小した大きさになる。そして、電流Iout’が抵抗素子Rscへ流されることで抵抗Rscに生じた電圧Vscが過電流検出用のコンパレータCMP1に入力され、出力電流Ioutの過電流状態を検出できるようになる。
【0044】
(第2実施例)
図4は、本発明を適用した電源用ICとしてのリニアレギュレータ用ICの一実施形態を示す。なお、
図4においては、
図1に示されているICを構成する素子や回路と同一の機能を有する素子や回路には同一の符号を付して重複した説明は省略する。
本実施形態のリニアレギュレータ用IC10’においては、
図4に示すように、直流電圧VDDが印加される電圧入力端子INと出力端子OUTとの間に、PチャンネルMOSトランジスタからなる電圧制御用の出力トランジスタM1が接続され、出力端子OUTと接地電位が印加されるグランド端子GNDとの間には、出力電圧Voutを分圧するブリーダ抵抗R11,R12が直列に接続されている。
【0045】
この出力分圧用の抵抗R11,R12により分圧された電圧VFBが、上記出力トランジスタM1のゲート端子を制御する制御回路12としての誤差アンプAMP2の非反転入力端子にフィードバックされている。そして、誤差アンプAMP2は、出力のフィードバック電圧VFBと所定の参照電圧Vrefとの電位差に応じて出力用のトランジスタM1を制御して、出力電圧Voutが所望の電位になるように制御する。
【0046】
また、本実施形態のリニアレギュレータ用IC10’には、上記誤差アンプAMP2の反転入力端子に印加される基準電圧Vrefを発生する基準電圧回路13に動作電流を流すバイアス回路17と、チップの温度が所定温度以上に上昇した場合に誤差アンプAMP2の動作を停止させてトランジスタM1をオフさせるサーマルシャットダウン回路18と、過電流検出用のコンパレータCMP1を含むIC内の各種コンパレータの参照電圧を生成する内部電圧生成回路19とが設けられている。バイアス回路17は、カレントミラー回路などで構成することができる。なお、内部電圧生成回路19は基準電圧Vrefに基づいて参照電圧を生成しているが、入力電圧VDDに基づいて参照電圧を生成しても良い。
【0047】
さらに、本実施形態のリニアレギュレータ用IC10’には、上記出力用のトランジスタM1とカレントミラー接続されたMOSトランジスタM21,M22と、カレントリミット回路15からの信号と上記サーマルシャットダウン回路18からの信号と過電流検出用のコンパレータCMP1の出力信号を入力とするANDゲートG3が設けられている。 トランジスタM21,M22のゲート端子には、出力用のトランジスタM1のゲート端子に印加される電圧と同じ誤差アンプAMP3の出力電圧が印加されている。トランジスタM21,M22は、出力用のトランジスタM1のサイズ(ゲート幅)の1/nのサイズを有するものが使用され、これによりM21,M22にはM1のドレイン電流の1/nのドレイン電流が流れるようにされる。
【0048】
また、上記トランジスタM21のソース端子は、チップの外部にて電流-電圧変換するための抵抗Rscを接続するための外部端子SCに接続されており、抵抗Rscに流れる電流は出力電流Ioutに比例した電流であるため、外部端子SCの電圧は出力電流Ioutに比例した電圧となる。この電圧が過電流検出用のコンパレータCMP1に入力されている。
一方、上記トランジスタM22は、そのソース端子がカレントリミット回路15に接続され、カレントリミット回路15によってゲート電圧が制御されることで、電流制限を行うように構成されている。
【0049】
本実施形態におけるリトライ回路16は、外部端子PCTに接続されているコンデンサCTの充電電流Isourceを流す定電流源CC1と、コンデンサCTの放電電流Isinkを流す定電流源CC2を備えている。定電流源CC1と定電流源CC2は電源電圧VDDが印加されている端子と接地点との間に直列に接続され、定電流源CC1とCC2との間にはスイッチ用のトランジスタM23,M24が直列に接続されている。そして、トランジスタM24と定電流源CC2の接続ノードが外部端子PCTに接続されている。
【0050】
また、トランジスタM23のゲート端子には上記ANDゲートG3の出力信号が入力され、トランジスタM24のゲート端子には上記コンパレータCMP3’の出力をインバータINV3で反転した信号が入力されている。外部端子PCTの電圧VCTはコンパレータCMP3’とCMP4’の反転入力端子に入力され、内部電圧生成回路19からの参照電圧Vth3,Vth4とそれぞれ比較される。そして、コンパレータCMP3’の出力をインバータINV3で反転した信号が誤差アンプAMP2に供給され、過電流が検された場合に、誤差アンプAMP2の出力をロウレベルに固定して出力用トランジスタM1をオフさせるように構成されている。
【0051】
さらに、本実施形態におけるリトライ回路16においては、コンパレータCMP3’の出力信号とコンパレータCMP4’の出力信号がNANDゲートG4に入力され、このNANDゲートG4の出力をインバータINV4で反転した信号が、エラーフラグ出力用の外部端子P1に接続されているトランジスタM15のゲート端子に入力されている。
なお、
図4におけるコンパレータCMP3’,CMP4’は、ヒステリシス・コンパレータであり、
図1の回路におけるコンパレータCMP3,CMP4と抵抗分圧回路R21,R22,R23やR31,R32,R33およびトランジスタM16,M17とを組み合わせた回路に相当している。つまり、コンパレータCMP3’,CMP4’の内部で、内部電圧生成回路19からの参照電圧Vth3,Vth4に基づいて、高い方のしきい値電圧をVth3H、Vth4Hおよび低い方のしきい値電圧をVth3L、Vth4Lをそれぞれ生成する。そして、上記しきい値は、Vth3H<Vth4H,Vth3L>Vth4Lの関係となるように設定される。
【0052】
上記のような構成を有する本実施形態のリニアレギュレータ用IC10’においては、
図1に示す第1実施例のハイサイドスイッチICと同様に、リトライ回路16が動作して、過電流状態が発生した場合に、間欠的に過電流の検出動作と出力用のトランジスタM1をオフする過電流保護動作を行なってICチップを保護するとともに、過電流状態が解消されるとそれを検知して定常状態に自動復帰することができる。
また、本実施形態のリニアレギュレータ用IC10’においては、コンパレータCMP3’,CMP4’のしきい値電圧Vth3H、Vth3LとVth4H、Vth4Lは、Vth3H<Vth4H,Vth3L>Vth4Lの関係となるように設定されているため、
図2に示すタイミングチャートと同様に、過電流状態が継続することによって、オートリトライ動作が繰り返されているリトライ動作期間中は、異常状態を示すロウレベルのエラーフラグErr_Flagを、外部端子P1より出力し続けることができる。
【0053】
さらに、本実施形態では、サーマルシャットダウン回路18を設け、その出力信号を過電流検出用のコンパレータCMP1の出力信号と共にANDゲートG3に入力し、ANDゲートG3の出力信号で、定電流源CC1と直列に接続されたトランジスタM23をオン、オフ制御するように構成している。そのため、チップ温度が上昇してサーマルシャットダウン回路18が動作した場合にも出力用のトランジスタM1をオフし、再起動するリトライ動作を実行し、このオートリトライ動作が繰り返されているリトライ動作期間中は、異常状態を示すロウレベルのエラーフラグErr_Flagを、外部端子P1より出力し続けることができる。
【0054】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、
図1に示すハイサイドスイッチIC10の実施形態には、サーマルシャットダウン回路18が設けられていないが、
図4のリニアレギュレータ用IC10’と同様にサーマルシャットダウン回路18を設けるようにしても良い。また、逆に、
図4のリニアレギュレータ用ICにおいて、サーマルシャットダウン回路18を省略した構成とすることも可能である。
【0055】
さらに、前記実施形態においては、ハイサイドスイッチIC10やリニアレギュレータ用IC10’の内部回路を構成するトランジスタとしてMOSトランジスタを使用したものを示したが、MOSトランジスタの代わりにバイポーラ・トランジスタを使用するようにしてもよい。また、コンデンサCTは、外付け素子でなくICチップ上に形成されたものであっても良い。また、出力用のMOSトランジスタM1は、Pチャンネル形またはNチャンネル形のどちらでも良い。
【0056】
さらに、前記実施形態においては、本発明をハイサイドスイッチIC10とリニアレギュレータ用IC10’に適用した場合について説明したが、本発明はそれらのICに限定されず、例えば2次電池の充電用ICなど、電圧入力端子と電圧出力端子との間に接続されたトランジスタを備えた半導体集積回路装置に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
10…ハイサイドスイッチIC、10’…リニアレギュレータ用IC、11…ロジック回路、12…制御回路、13…基準電圧回路、14…過電流保護回路、14A…比例電流生成回路、14B…電流-電圧変換回路、14C…過電流検出回路、15…カレントリミット回路、16…リトライ回路、17…バイアス回路、18…サーマルシャットダウン回路、19…内部電圧生成回路、M1…出力トランジスタ、CMP1…過電流検出用コンパレータ、CMP2…カレントリミット回路用コンパレータ、CT…タイマー回路用コンデンサ、Rsc…電流-電圧変換用抵抗、P1…エラーフラグ信号出力用の外部端子