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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108426
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】3次元CAD装置の使用方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/10 20200101AFI20240805BHJP
   G06F 30/12 20200101ALI20240805BHJP
【FI】
G06F30/10
G06F30/12
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012782
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】514018238
【氏名又は名称】株式会社きんそく
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】田中 達
(72)【発明者】
【氏名】濱野 真緒
(72)【発明者】
【氏名】田邊 潔志
(72)【発明者】
【氏名】坂本 知之
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA04
5B146BA01
5B146DE03
5B146EA03
5B146EA07
5B146EA15
5B146EC02
5B146EC08
(57)【要約】
【課題】3次元モデルに対する任意の投影図に、煩雑な操作を行なうことなく寸法を把握できる3次元CAD装置の使用方法を提供する。
【解決手段】3次元CAD装置の使用方法であって、異なる視点で表現され、寸法線が描かれた複数の2次元図面を3次元CAD装置にインポートし、2次元図面の尺度と基点と視点を整合させた後に、2次元図面の何れかを第1基準面として画面表示し、当該2次元図面に示された寸法線に基づいて第1オブジェクトとなる平面図形を描画する第1描画ステップと、第1基準面と交差する他の2次元図面を第2基準面として画面表示し、2次元図面に示された寸法線に基づいて、第1オブジェクトに高さを持たせた第2オブジェクトとなる立体図形を描画する第2描画ステップと、第1描画ステップと第2描画ステップを、各2次元図面に対して繰返し実行することにより3次元モデルを生成する3次元モデル生成ステップと、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元描画空間に3次元構造物を生成する3次元CAD装置の使用方法であって、
異なる視点で表現され、前記3次元構造物に対応する寸法線が描かれた複数の2次元図面を前記3次元CAD装置にインポートする2次元図面入力ステップと、
前記3次元描画空間において、前記2次元図面の各尺度を所定の尺度に整合させる尺度整合ステップと、
前記所定の尺度に整合した前記2次元図面に含まれる任意の基点が前記3次元描画空間の対応する位置と整合するように、前記2次元図面を平行移動させる基点整合ステップと、
前記基点を整合した前記2次元図面を、前記3次元描画空間と前記視点が整合するように、必要に応じて所定の基線を軸に回転させる視点整合ステップと、
前記視点を整合した前記2次元図面の何れかを選択して、第1基準面として画面表示し、選択された前記2次元図面に示された前記寸法線に基づいて、第1オブジェクトとなる平面図形を描画する第1描画ステップと、
前記第1基準面と交差する他の2次元図面を選択して、第2基準面として画面表示し、前記2次元図面に示された前記寸法線に基づいて、前記第1オブジェクトに高さを持たせた第2オブジェクトとなる立体図形を描画する第2描画ステップと、
前記第1描画ステップと前記第2描画ステップを、各2次元図面に対して繰返し実行することにより3次元モデルを生成する3次元モデル生成ステップと、
を含む3次元CAD装置の使用方法。
【請求項2】
前記3次元モデル生成ステップにより生成され、前記視点の何れかから眺めた3次元モデルを表示するとともに、前記視点に対応する前記2次元図面を重畳して正対するように表示し、前記2次元図面に示された寸法と前記三次元モデルとの整合状態を確認する整合状態確認ステップを備え、
各視点から眺めた3次元モデルに対して、前記整合状態確認ステップを繰り返す三次元モデル検証ステップと、
を備えている請求項1記載の3次元CAD装置の使用方法。
【請求項3】
前記3次元モデルが土木構造物である請求項1または2記載の3次元CAD装置の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元CAD装置の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば大型の構造躯体などの構造物を構築する土木建築現場などでは、施工業者が、設計者により作成された視点が異なる複数枚の二次元図面を用いて、構造物の形状や寸法などを確認しながら施工を進めていた。
【0003】
しかし、複数の二次元図面の間で不整合がある場合に、事前にその不整合を把握できなければ、施工の中断を招くなどの不都合な状況が発生する虞があった。
【0004】
そこで、業務の効率化を企図して、CIM(Construction Information Modeling)が導入されつつある。CIMを導入する場合でも、設計者により作成された視点が異なる複数枚の二次元図面に基づいて、CADオペレータが3次元CAD装置を操作することにより構造物の三次元モデルが作成される。その際に、複数の二次元図面の間で不整合があることが判明すると、設計者により不整合な図面の修正作業を経て、最終的な三次元モデルが完成する。
【0005】
土木建築現場では、現場責任者が、表示装置に表示された三次元モデルと紙に印刷された複数の二次元図面に基づいて構造物の検証を行ない、問題が無いと確認された後に施工作業が進められる。
【0006】
現場責任者による検証作業において、表示装置に表示された三次元モデルの各部位の寸法などを確認する際に、紙に印刷された複数の二次元図面から対応する図面を選択して二次元図面に記載された寸法を確認する必要があるが、この作業が非常に煩雑であるという問題があった。二次元図面が表示装置に表示される場合でも、三次元モデルと二次元図面を其々対比しながら確認する煩雑な作業が必要であることに変わりはない。
【0007】
特許文献1には、設計物の立体形状を示す3次元モデルから生成され、複数の投影図から構成される2次元図面と、当該2次元図面を生成した3次元モデルを構成する要素ごとの座標値とを記憶する記憶手段を備える情報処理装置が開示されている。
【0008】
当該情報処理装置は、記憶手段に記憶された2次元図面を構成する任意の投影図において、奥行き方向の寸法を算出するための基準となる要素の指定を受け付ける第1の指定受付手段と、記憶手段に記憶された2次元図面を構成する任意の投影図において、奥行き方向の寸法を算出する要素の指定を受け付ける第2の指定受付手段と、第1の指定受付手段で指定を受け付けた要素と、第2の指定受付手段で指定を受け付けた要素とに基づいて、2次元図面を生成した3次元モデルにおいて、当該要素間の距離を算出するための処理を行う算出手段と、算出手段における処理に応じて算出された距離を、第2の指定受付手段で指定を受け付けた要素の奥行き方向の寸法として表示するための処理を行う表示手段とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014-44074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1に開示された情報処理装置は、3次元モデルに対する任意の投影図に寸法を表示するために、基準となる要素と奥行き方向の寸法を算出する要素の其々を指定する操作が必要となり、各要素を指定するための操作が煩雑であるという問題があった。また任意の投影図における寸法を表示するために、基準となる要素と基準からの寸法を算出する要素の其々を指定する操作が必要となり、同様に各要素を指定するための操作が煩雑になる。
【0011】
本発明の目的は、上述した従来の課題に鑑み、3次元モデルに対する任意の投影図に、煩雑な操作を行なうことなく寸法を把握できる3次元CAD装置の使用方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するため、本発明による3次元CAD装置の使用方法の第一の特徴構成は、3次元描画空間に3次元構造物を生成する3次元CAD装置の使用方法であって、異なる視点で表現され、前記3次元構造物に対応する寸法線が描かれた複数の2次元図面を前記3次元CAD装置にインポートする2次元図面入力ステップと、前記3次元描画空間において、前記2次元図面の各尺度を所定の尺度に整合させる尺度整合ステップと、前記所定の尺度に整合した前記2次元図面に含まれる任意の基点が前記3次元描画空間の対応する位置と整合するように、前記2次元図面を平行移動させる基点整合ステップと、前記基点を整合した前記2次元図面を、前記3次元描画空間と前記視点が整合するように、必要に応じて所定の基線を軸に回転させる視点整合ステップと、前記視点を整合した前記2次元図面の何れかを選択して、第1基準面として画面表示し、選択された前記2次元図面に示された前記寸法線に基づいて、第1オブジェクトとなる平面図形を描画する第1描画ステップと、前記第1基準面と交差する他の2次元図面を選択して、第2基準面として画面表示し、前記2次元図面に示された前記寸法線に基づいて、前記第1オブジェクトに高さを持たせた第2オブジェクトとなる立体図形を描画する第2描画ステップと、前記第1描画ステップと前記第2描画ステップを、各2次元図面に対して繰返し実行することにより3次元モデルを生成する3次元モデル生成ステップと、を含む点にある。
【0013】
2次元図面入力ステップで、3次元構造物に対応する寸法線が描かれた複数の2次元図面ファイルが3次元CAD装置にインポートされて3次元描画空間に2次元図面が定義される。尺度整合ステップで、複数の2次元図面の尺度が統一され、基点整合ステップで、複数の2次元図面に含まれる任意の基点が前記3次元描画空間の対応する位置と整合するように、2次元図面が3次元描画空間内で平行移動され、視点整合ステップで、3次元描画空間と前記視点が整合するように、所定の基線を軸に対応する2次元図面を回転させることで、基点を基準に複数の2次元図面の相対的な位置関係が3次元描画空間で整合される。
【0014】
その後、3次元モデル生成ステップで、第1描画ステップと第2描画ステップが繰り返されることで、3次元モデルが生成される。第1描画ステップでは、視点が整合された2次元図面の何れかが選択され、選択された2次元図面が第1基準面として画面表示され、2次元図面に示された寸法線に基づいて、第1オブジェクトとなる平面図形が描画される。第2描画ステップでは、第1基準面と交差する他の2次元図面が選択され、選択された2次元図面が第2基準面として画面表示され、2次元図面に示された寸法線に基づいて、第1オブジェクトに高さを持たせた第2オブジェクトとなる立体図形が描画される。第1描画ステップと第2描画ステップが、各2次元図面に対して繰返し実行されることにより、表示装置に表示された2次元図面に基づいて正確な3次元モデルが極めて簡単に生成される。
【0015】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記3次元モデル生成ステップにより生成され、前記視点の何れかから眺めた3次元モデルを表示するとともに、前記視点に対応する前記2次元図面を重畳して正対するように表示し、前記2次元図面に示された寸法と前記三次元モデルとの整合状態を確認する整合状態確認ステップを備え、各視点から眺めた3次元モデルに対して、前記整合状態確認ステップを繰り返す三次元モデル検証ステップと、を備えている点にある。
【0016】
整合状態確認ステップでは、3次元モデル生成ステップで生成された3次元モデルの基となった複数の2次元図面ファイルの何れかの視点から眺めた3次元モデルが表示され、視点に対応する2次元図面が3次元モデルに重畳して正対するように表示される結果、2次元図面に示された寸法を参照することで、三次元モデルの対応する要素の寸法が容易に把握できるようになる。三次元モデル検証ステップでは、各視点から眺めた3次元モデルに対して、整合状態確認ステップが繰り返される。
【0017】
同第三の特徴構成は、上述した第一または第二の特徴構成に加えて、前記3次元モデルが土木構造物である点にある。
【0018】
土木建築現場などで、三次元モデル検証ステップが実行されることにより、例えば現場責任者が施工対象となる土木構造物を極めて容易に且つ正確に把握することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明した通り、本発明によれば、3次元モデルに対する任意の投影図に、煩雑な操作を行なうことなく寸法を把握できる3次元CAD装置の使用方法を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】(a)は3次元CAD装置のハードウェアの説明図、(b)は3次元CAD装置のソフトウェアの説明図である。
図2】3次元CAD装置の使用方法を示すフローチャートである。
図3】(a)は3次元CAD装置にインポートされた平面図の説明図、(b)は同正面図と左側面図に対する視点整合処理の説明図、(c)は3次元描画処理の説明図である。
図4】(a)は3次元描画処理で得られた平面視の3次元モデルと平面図とを重畳した状態の説明図、(b)は左側面視の3次元モデルと左側面図とを重畳した状態の説明図である。
図5】(a)は3次元CAD装置に入力された正面図の説明図、(b)は同側面図の説明図である。
図6】(a)は3次元CAD装置に入力された平面図の説明図、(b)は3次元CAD装置で描画された3次元モデルの説明図である。
図7】(a)は別実施形態を示し、3次元CAD装置に入力された正面図の説明図、(b)は同側面図の説明図である。
図8】(a)は別実施形態を示し、3次元CAD装置に入力された平面図の説明図、(b)は3次元CAD装置で描画された3次元モデルの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明による3次元CAD装置、及び、その使用方法を図面に基づいて説明する。
図1(a)には、本発明が適用される3次元CAD装置のハードウェア構成が示され、図1(b)には、当該3次元CAD装置のソフトウェア構成が示されている。
【0022】
本実施形態では、3次元CAD装置としてタブレット型のコンピュータが用いられる。なお、本発明は、タブレット型のコンピュータの使用に限定されるものではなく、デスクプトップ型のコンピュータやラップトップ型のコンピュータを用いることもできる。
【0023】
図1(a)に示すように、3次元CAD装置1は、3次元描画空間に、土木構造物(鉄道や道路の橋梁、高架橋、塔状構造物など)のような3次元構造物である3次元モデル(以下、「3Dモデル」とも表記する。)を生成する装置1であり、システムバス2を介して通信可能に接続されたCPU3、OSプログラムやアプリケーションプログラムなどが格納されるメモリ4、タッチパネル式液晶表示部5、タッチパネル式液晶表示部5に対する入力制御を実行する入力制御部6、タッチパネル式液晶表示部5に対する出力制御を実行する表示制御部7、外部デバイスとの接続のためのI/F制御部8などを備えている。
【0024】
入力制御部6ではスタイラスペンを用いたポイント指定操作の各種の操作態様(タップ、長押し、ダブルタップ、ドラッグなど)に対応して、画面に表示された描画オブジェクトやアイコンなどを選択して所要の描画処理(直線描画、曲線描画、回転、移動など)が実行可能になる。
【0025】
I/F制御部8には、メモリI/F制御部や無線通信I/F制御部などが含まれ、例えばメモリI/F制御部を介して可搬性のメモリ媒体9との間で情報の入出力が可能となり、無線通信I/F制御部を介してクラウドサーバ10などとの間で情報の入出力が可能となる。
【0026】
3次元CAD装置1は、メモリ4に格納された3次元CADプログラムが、OSプログラムの管理下でCPU3によって実行されることにより、以下の各機能ブロックが実現される。3次元CADプログラムとして「Shapr3D」が好適に使用できる。なお、「Shapr3D」以外の3次元CADプログラムを用いることも可能である。
【0027】
図1(b)に示すように、3次元CADプログラムが実行されることにより、3次元CAD装置1は、2次元図面入力処理部21、尺度整合処理部22、基点整合処理部23、視点整合処理部24、描画処理部25、3Dモデル生成処理部26、3D図面管理部27、表示処理部28などの機能ブロックが具現化される。
【0028】
以下に各機能ブロックの動作を説明する。
2次元図面入力処理部21では、異なる視点で表現され、3次元の土木構造物(に対応する2次元形状と各部の寸法線が描かれた複数の2次元図面を入力して、其々のレイヤに貼りつけるインポート処理を実行する。2次元図面は設計者により事前に設計された、例えばPDFファイルやJPEGファイルなどの任意の図面ファイルで、正面図、背面図、右側面図、左側面図、平面図、底面図、任意の断面図などが含まれる。予めメモリスティックやUSBメモリに格納された図面ファイルがI/F制御部8を介して読み込まれ、或いは予めクラウドサーバに格納された図面ファイルがI/F制御部8を介して読み込まれる。
【0029】
尺度整合処理部22は、2次元図面入力処理部21で読み込まれた複数の2次元図面の尺度を互いに整合させる処理を実行する。複数の2次元図面の縮尺が区々である場合に、3次元描画空間上で尺度が整合するように各2次元図面の縮尺を変更する。
【0030】
基点整合処理部23は、尺度整合処理部22で尺度が整合された複数の2次元図面に含まれる任意の基点が前記3次元描画空間の対応する位置と整合するように、前記2次元図面を3次元描画空間上で平行移動させる処理を実行する。これにより、各2次元図面に含まれる任意の基点同士の3次元描画空間内での相対位置関係が整合される。
【0031】
視点整合処理部24は、視方向が異なる複数の2次元図面を3次元描画空間上で整合するように、所定の基線を軸に2次元図面を回転させる。所定の基線として、基点整合処理部23で選択された基点を含み、3次元描画空間のX,Y,Zの何れかの軸に平行な直線が選択される。これらの処理によって、複数の2次元図面の相対位置が3次元描画空間上で互いに整合される。
【0032】
描画処理部25は、2次元図面の何れかを選択して、第1基準面として2次元で画面表示し、選択された2次元図面に示された形状と寸法線に基づいて、第1オブジェクトとなる平面図形を描画する第1描画処理と、第1基準面と交差する他の2次元図面を選択して、第2基準面として3次元空間に表示し、当該2次元図面に示された形状と寸法線に基づいて、第1描画処理で描画した第1オブジェクトに高さ(奥行き)を持たせた第2オブジェクトとなる立体図形を描画する第2描画処理を実行する。
【0033】
例えば、第1描画処理では、画面に表示された描画アイコンを操作して、画面に指定された点を直線や曲線で接続する描画処理が実行される。第2描画処理では、第1描画処理で描画された2Dオブジェクトを選択して高さ(奥行)方向に引き延ばす描画処理が実行される。
【0034】
3Dモデル生成処理部26は、描画処理部25で実行される第1描画処理と第2描画処理とを、各2次元図面に対して繰返し実行することにより3次元描画空間に3次元モデルを生成する。
【0035】
3D図面管理処理部27は、3Dモデル生成処理部26で生成された3次元モデルを表す情報と、その基となる複数の2次元図面とを関連付けてメモリ4に記憶し、必要に応じてI/F制御部8を介して外部のメモリやサーバに出力する。
【0036】
表示処理部28は、上述した複数の処理に関する情報を画面上に表示するとともに、操作に必要なコマンドであるアイコンを画面に表示する。
【0037】
以下に、図2に示すフローチャートに基づいて、3次元CAD装置の使用方法を説明する。
3DCAD装置に電源が投入されてアプリケーションが立ち上がると(S1)、オペレータは、複数のPDFファイルで構成された図面ファイルが格納されたUSBメモリをI/F制御部8に挿入し、画面に表示されるデータ読込アイコンをスタイラスペンでタッチ操作することで当該PDFファイルをインポートする。各PDFファイルは、3次元CAD装置で認識及び操作可能な2次元図面(以下、「2D図面)とも表記する。」となるようにファイル形式が変換されて、各レイヤに貼りつけられる。(S2,S3)。
【0038】
オペレータは、インポートされた各2D図面の尺度が整合するように、スタイラスペンで対応する2D図面を選択して、画面に表示された倍率調整アイコンを操作する。これにより、各2D図面が3次元描画空間を規定するX,Y,Z座標系の尺度に整合される(S4)。なお、画面操作に際してスタイラスペンを用いることは、以下の説明も同様である。
【0039】
オペレータは、画面に表示された移動操作用のアイコンを操作することで、各2D図面の任意の基点が3次元描画空間の適正な位置になるように、2D図面をドラッグ操作して平行移動させる。詳述すると、各2D図面に表された形状のうち、対応する点同士が基点となり、各基点が3次元描画空間の座標系の対応する座標点と重畳するように各2D図面を平行移動させる(S5)。
【0040】
オペレータは、各基点を整合させた後に、画面に表示されたアイコンを操作することで、3次元描画空間と各2D図面の視点を整合させる。具体的には、上述した基点を含む所定の基線を軸に2D図面を所定角度回転させることにより、3次元描画空間における視点を整合させる(S6)。
【0041】
図3(a),(b)に基づいて視点整合処理を説明する。図3(a)は、3層のレイヤL1.L2.L3の其々に貼りつけた2D図面F1,F2,F3が3次元描画空間におけるXY平面上に配置されており、各レイヤL1に平面図F1、レイヤL2に正面図F2、レイヤL3に左側面図F3が配されている。
【0042】
そして、例えば、平面図F1、正面図F2、左側面図F3に描かれた形状(オブジェクト)の共通点を基点BPとして、上述の基点整合処理が実行された状態が示されている。なお、基点は各図面の共通点に限るものではなく、各図面の任意の点であればよく、当該任意の点が3次元描画空間に形成される3次元モデルの対応する点となるように平行移動(この例ではXY平面に対して平行移動)すればよい。
【0043】
図3(b)に示すように、視点整合処理では、正面図F2がXZ平面と平行になるように基点BPを含む基線BL1(X軸に平行な線)の周りに-90°回転されて正面図F2´となり、左側面図F3がYZ平面と平行になるように基点BPを含む基線BL2(Y軸に平行な線)の周りに90°回転されて左側面図F3´となる。
【0044】
このような尺度整合、基点整合、視点整合の各処理により、各2D図面が3D描画空間に正しく配置されるようになる。
【0045】
次に、図3(c)に示すように、視点を整合した2次元図面の何れか、この例では左側面図F3´が貼りつけられたレイヤL3を選択して、第1基準面RP1として画面表示し(S7)、選択された2次元図面に示された寸法線d1~d5に基づいて、第1オブジェクトとなる平面図形O1(図中、ハッチングした図形)を描画する第1描画処理を実行する(S8)。さらに、第1基準面RP1と交差する他の2次元図面、この例では平面図F1が貼りつけられたレイヤL1を選択して第2基準面RP2として画面表示し、2次元図面に示された寸法線d6に基づいて、第1オブジェクトに高さ(奥行)d6を持たせた第2オブジェクトとなる立体図形O2(図中、一点鎖線で示す図形)を描画する第2描画処理を実行する(S7,S8)。
【0046】
オペレータは、上述した第1描画処理と第2描画処理と同様の処理を、各2次元図面に対して繰返し実行する3次元モデル生成処理により(S9)、最終の3次元モデルを生成して表示する(S10)。
【0047】
最終の3次元モデルを生成した後に、視点の何れかから眺めた3次元モデルを表示するとともに、任意の視点に対応する元の2次元図面を重畳して正対するように表示させることで、2次元図面に示された寸法と3Dモデルとの整合状態を確認する整合状態確認処理の実行が可能になる。
【0048】
この過程で得られる3次元モデル同士が3次元モデル空間の一部で重畳するような場合に、その基準となる各2D図面に整合性がないことが容易に判別できる。この場合には、元の2次元図面を修正するように設計者に指示することで、正しい2次元図面を得た後に同様の処理を繰り返すことになる。このような整合状態確認処理を繰り返す三次元モデル検証処理により、最終の三次元モデルが確定する。
【0049】
三次元モデル検証処理では、確定した三次元モデルを予めインポートされた2D図面に対応する視方向から表示させるように視方向を設定し、その視方向に対応する2D図面を重畳表示させることで、2D図面に記載された寸法を参照することが可能となり、3Dモデルの各部の寸法を容易に確認することができるようになる。このとき、3Dモデルまたは2D図面の何れか一方を半透明表示させることにより、視認性を向上させることができる。
【0050】
図4(a)には、図3(c)に示す3Dモデルの平面視での形状とそれに重畳された2D図面に描画された寸法が重畳示された三次元モデル検証画面が例示されている。また、図4(b)には、図3(c)に示す3Dモデルの左側面視での形状とそれに重畳された2D図面に描画された寸法が重畳示された三次元モデル検証画面が例示されている。
【0051】
以上の説明で用いた3次元モデルは、理解を容易にするために単純な形状で構成されているが、現実の土木構造物は複雑な形状をしており、平面図間の対比では最終構造物の寸法や形状を把握するのが極めて困難な状況である。しかし、本発明の3次元CAD装置の使用方法を採用することで、複雑な立体形状であっても確実に認識でき、かつ各部の寸法も容易に把握できるようになる。
【0052】
図5(a)には、正面図がインポートされた3次元CAD装置1の操作画面が例示され、図5(b)には、側面図がインポートされた3次元CAD装置1の操作画面が例示され、図6(a)には、平面図がインポートされた3次元CAD装置1の操作画面が例示されている。そして、図6(b)には、3Dモデル空間に描画された3Dモデルと、対応する2D図面が半透明で表示されている。
【0053】
操作画面のアイコンを操作して回転表示させることで、例えば正面図に正対した3Dモデルと、対応する2D図面を重畳表示することができ、各部の寸法を容易に認識できる。
【0054】
図7(a)には、正面図がインポートされた3次元CAD装置1の操作画面が例示され、図7(b)には、側面図がインポートされた3次元CAD装置1の操作画面が例示され、図8(a)には、平面図がインポートされた3次元CAD装置1の操作画面が例示されている。各2D図面に示されたオブジェクトと対応する寸法表示に誤りが認められる。そして、図6(b)には、3Dモデル空間に描画された3Dモデルと、対応する2D図面が半透明で表示されている。
【0055】
3Dモデルと対応する2D図面の寸法が対応しておらず、2D図面に齟齬があることが容易に判別できる。この例では2D図面を目視するだけで寸法表記に誤りがあることが理解できるが、実際の複雑な形状では齟齬の有無を容易に判別できない場合が多くあり、本発明の3次元CAD装置の使用方法は、そのような場合に特に有用となる。特に、各2D図面では容易に理解できない3D形状であっても、各2D図面に基づいて3Dモデルを生成すると3Dモデルの一部が互いに干渉することが極めて容易に判断できる点で有用である。
【0056】
以上説明した通り、本発明による3次元描画空間に3次元構造物を生成する3次元CAD装置の使用方法は、異なる視点で表現され、前記3次元構造物に対応する寸法線が描かれた複数の2次元図面を前記3次元CAD装置にインポートする2次元図面入力ステップと、前記3次元描画空間において、前記2次元図面の各尺度を所定の尺度に整合させる尺度整合ステップと、前記所定の尺度に整合した前記2次元図面に含まれる任意の基点が前記3次元描画空間の対応する位置と整合するように、前記2次元図面を平行移動させる基点整合ステップと、前記基点を整合した前記2次元図面を、前記3次元描画空間と前記視点が整合するように、必要に応じて所定の基線を軸に回転させる視点整合ステップと、前記視点を整合した前記2次元図面の何れかを選択して、第1基準面として画面表示し、選択された前記2次元図面に示された前記寸法線に基づいて、第1オブジェクトとなる平面図形を描画する第1描画ステップと、前記第1基準面と交差する他の2次元図面を選択して、第2基準面として画面表示し、前記2次元図面に示された前記寸法線に基づいて、前記第1オブジェクトに高さを持たせた第2オブジェクトとなる立体図形を描画する第2描画ステップと、前記第1描画ステップと前記第2描画ステップを、各2次元図面に対して繰返し実行することにより3次元モデルを生成する3次元モデル生成ステップと、を含む。
【0057】
2次元図面入力ステップで、3次元構造物に対応する寸法線が描かれた複数の2次元図面ファイルが3次元CAD装置にインポートされて3次元描画空間に2次元図面が定義される。尺度整合ステップで、複数の2次元図面の尺度が統一され、基点整合ステップで、複数の2次元図面が3次元描画空間の所定の基点を基準に移動され、視点整合ステップで、3次元描画空間と前記視点が整合するように、所定の基線を軸に対応する2次元図面を回転させることで、基点を基準に複数の2次元図面の位置関係が3次元描画空間で整合される。
【0058】
その後、3次元モデル生成ステップで、第1描画ステップと第2描画ステップが繰り返されることで、3次元モデルが生成される。第1描画ステップでは、視点が整合された2次元図面の何れかが選択され、選択された2次元図面が第1基準面として画面表示され、2次元図面に示された寸法線に基づいて、第1オブジェクトとなる平面図形が描画される。第2描画ステップでは、第1基準面と交差する他の2次元図面が選択され、選択された2次元図面が第2基準面として画面表示され、2次元図面に示された寸法線に基づいて、第1オブジェクトに高さを持たせた第2オブジェクトとなる立体図形が描画される。第1描画ステップと第2描画ステップが、各2次元図面に対して繰返し実行されることにより、表示装置に表示された2次元図面に基づいて正確な3次元モデルが極めて簡単に生成される。
【0059】
また、前記3次元モデル生成ステップにより生成され、前記視点の何れかから眺めた3次元モデルを表示するとともに、前記視点に対応する前記2次元図面を重畳して正対するように表示し、前記2次元図面に示された寸法と前記三次元モデルとの整合状態を確認する整合状態確認ステップを備え、各視点から眺めた3次元モデルに対して、前記整合状態確認ステップを繰り返す三次元モデル検証ステップと、を備えていることが好ましい。
【0060】
整合状態確認ステップでは、3次元モデル生成ステップで生成された3次元モデルの基となった複数の2次元図面ファイルの何れかの視点から眺めた3次元モデルが表示され、視点に対応する2次元図面が3次元モデルに重畳して正対するように表示される結果、2次元図面に示された寸法を参照することで、三次元モデルの対応する要素の寸法が容易に把握できるようになる。三次元モデル検証ステップでは、各視点から眺めた3次元モデルに対して、整合状態確認ステップが繰り返される。
【0061】
対象となる3次元モデルは土木構造物であることが好ましく、土木建築現場などで、三次元モデル検証ステップが実行されることにより、例えば現場責任者が施工対象となる土木構造物を極めて容易に且つ正確に把握することができる。
【0062】
上述した実施形態では、対象となる3次元モデルが土木構造物である例を説明したが、本発明が適用される対象は、土木構造物に限定されることなく、任意の3次元構造物に適用できることはいうまでもない。
【0063】
上述した実施形態は何れも本発明の一態様に過ぎず、該記載により本発明の技術的範囲が限定されるものではなく、本発明の作用効果を奏する範囲で各部の具体的な構成は適宜変更設計することができることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0064】
1:3次元CAD装置
21:2D図面入力処理部
22:尺度整合処理部
23:基点整合処理部
24:視点整合処理部
25:描画処理部
26:3Dモデル生成処理部
27:3D図面管理部
28:表示処理部
図1
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