(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108432
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】柔軟剤自動投入用タンクを備えた洗濯機用濃縮液体柔軟剤組成物
(51)【国際特許分類】
D06M 13/463 20060101AFI20240805BHJP
D06M 13/00 20060101ALI20240805BHJP
D06M 15/53 20060101ALI20240805BHJP
D06M 23/12 20060101ALI20240805BHJP
D06F 35/00 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
D06M13/463
D06M13/00
D06M15/53
D06M23/12
D06F35/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012790
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(74)【代理人】
【識別番号】100203242
【弁理士】
【氏名又は名称】河戸 春樹
(72)【発明者】
【氏名】植松 潤平
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 智也
(72)【発明者】
【氏名】山元 将嗣
(72)【発明者】
【氏名】古川 昌和
(72)【発明者】
【氏名】園部 円香
(72)【発明者】
【氏名】高村 香
(72)【発明者】
【氏名】田代 雅也
【テーマコード(参考)】
3B168
4L031
4L033
【Fターム(参考)】
3B168BA99
3B168FA06
3B168FA12
4L031AB31
4L031BA35
4L031DA13
4L033AB04
4L033AC02
4L033BA00
4L033BA86
4L033CA48
(57)【要約】
【課題】濃縮状態でも、良好な流動性や加熱耐性を有する柔軟剤自動投入用タンクを備えた洗濯機用濃縮液体柔軟剤組成物を提供する。
【解決手段】
(a)R1-Y-R2基(R1は炭素数14以上22以下のアルキル基またはアルケニル基、Yは-COO-基、R2は炭素数1以上3以下のアルキレン基)を有し、R1の不飽和率が55質量%以上100質量%以下、の4級アンモニウム化合物、及び
(b)香料組成物中にClogPが1以上5以下の香料化合物が30質量%以上100質量%以下の割合で含有する香料組成物、
を含有する組成物を、柔軟剤自動投入用タンクを備えた洗濯機用濃縮液体柔軟剤組成物として用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記一般式(1)の1種または2種以上の4級アンモニウム化合物を10質量%以上20質量%以下、
(b)香料組成物中にClogPが1以上5以下の1種または2種以上の香料化合物が30質量%以上100質量%以下の割合で含有する1種または2種以上の香料組成物(A)を1.5質量%以上5質量%以下含有する、柔軟剤自動投入用タンクを備えた洗濯機用濃縮液体柔軟剤組成物。
(a)
【化1】
[式中R
1は炭素数14以上22以下の直鎖、分岐または環状のアルキル基またはアルケニル基である。Yは-COO-基または-OCO-基である。R
2は炭素数1以上3以下のアルキレン基である。R
3、R
4は各々独立に炭素数1以上3以下のアルキル基、-R
2-OH、またはR
1-Y-R
2-から選ばれる基である。ここで、R
3及び/またはR
4が、R
1-Y-R
2-のとき、R
1及び/またはR
2は同一または相異なっていてもよい。また、R
3及び/またはR
4が、-R
2-OHのとき、R
2は同一または相異なっていてもよい。R
5は炭素数1以上3以下のアルキル基である。X
-は陰イオン基である。4級アンモニウム化合物(1)が2種以上の場合、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びX
-は相異なっていてもよい。
ただし、4級アンモニウム化合物(1)が1種の場合、R
1の少なくとも1つが直鎖、分岐または環状の炭素数14以上22以下のアルケニル基である。また、4級アンモニウム化合物(1)が2種以上の場合、R
1の少なくとも1つが直鎖、分岐または環状の炭素数14以上22以下のアルケニル基である4級アンモニウム化合物を少なくとも1つ含む。
さらに、下式により定義される不飽和率
[R
1がアルケニル基であるR
1COOHの全質量]/[R
1COOHの全質量]×100(質量%)
が55質量%以上100質量%以下である。
【請求項2】
一般式(1)においてYは-COO-である請求項1記載の柔軟剤自動投入用タンクを備えた洗濯機用濃縮液体柔軟剤組成物。
【請求項3】
さらに(c)下記一般式(2)の1種または2種以上の非イオン性界面活性剤を0.5質量%以上10質量%以下含有する、請求項1又は2記載の柔軟剤自動投入用タンクを備えた洗濯機用濃縮液体柔軟剤組成物。
(c)R6-O-[(C2H4O)s(C3H6O)t]-H (2)
〔式中、R6は炭素数8以上18以下のアルキル基又はアルケニル基である。s及びtは平均付加モル数であって、sは8以上60以下の数であり、tは0以上5以下の数である。エチレンオキシ(C2H4O)基及びプロピレンオキシ(C3H6O)基は、ランダム型又はブロック型に結合している。〕
【請求項4】
(b)成分の質量に対する(a)成分及び(c)成分の合計質量の割合(b)成分/[(a)成分+(c)成分]が0.05以上0.25以下である請求項3に記載の柔軟剤自動投入用タンクを備えた洗濯機用濃縮液体柔軟剤組成物。
【請求項5】
さらに(d)成分として、香料組成物(B)を内包するマイクロカプセルを有する請求項1~4の何れかに記載の柔軟剤自動投入用タンクを備えた洗濯機用濃縮液体柔軟剤組成物。
【請求項6】
(d)成分のマイクロカプセルが、シリカを含むシェル(第二シェル)と該シェルの内部に香料化合物を含むコア及び該コアを内包するシリカを含むシェル(第一シェル)とを有するマイクロカプセルである、請求項5に記載の柔軟剤自動投入用タンクを備えた洗濯機用濃縮液体柔軟剤組成物。
【請求項7】
(d)成分のマイクロカプセルのメジアン径D50が、0.1μm以上50μm以下である、請求項5または6に記載の柔軟剤自動投入用タンクを備えた洗濯機用濃縮液体柔軟剤組成物。
【請求項8】
R2がエチレン基である請求項1~7の何れかに記載の柔軟剤自動投入用タンクを備えた洗濯機用濃縮液体柔軟剤組成物。
【請求項9】
R5がメチル基であり、X-がメチル硫酸イオンである請求項1~8の何れかに記載の柔軟剤自動投入用タンクを備えた洗濯機用濃縮液体柔軟剤組成物。
【請求項10】
請求項1~9の何れかに記載の柔軟剤自動投入用タンクを備えた洗濯機用濃縮液体柔軟剤組成物を衣類の洗濯時に衣類に接触させる洗濯方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は柔軟剤自動投入用タンクを備えた洗濯機用濃縮液体柔軟剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗濯機内に洗剤などの薬液を貯蔵し、洗濯時に洗濯物の重量に合わせ洗剤などを自動計量及び自動投入する機能を搭載した洗濯機が増加している(特許文献1、特許文献2)。そのような技術を柔軟剤に応用した場合洗濯機に設置されている庫内に柔軟剤を入れ、機器のボタン操作のみで前記庫内から自動で剤がポンプ排出され洗濯が完了するという簡便さにより消費者の快適性が高まるため、非常に簡便になる一方で、洗濯機の乾燥機能などにより庫内の温度変化が室内環境より顕著になり、そのため柔軟剤の増粘・分離などの変性が起きる課題がある。このような変性は柔軟剤組成物の必須成分である香料を多量に用いた場合に顕著に生じ、この変性は薬液の定量性を損なうばかりか洗濯機の故障を誘発させうるため、課題の解決が急務である。
また、消費者の快適性をさらに高めるため、タンクへの柔軟剤の補充頻度減少が望まれており、1回洗濯あたりの柔軟剤使用量を減らす必要があるが、そのためにはある程度の基剤量を必要とする。しかしその条件下ではさらに温度変化による柔軟剤の増粘・分離などの変性が起きやすくなるという課題がある。
一方、特許文献3~5には不飽和率が高いカチオン界面活性剤を用いた液体柔軟剤の技術が開示されている。しかしながらこれらの技術は柔軟剤自動投入用タンクを備えた洗濯機用に用いることは想定されておらず、このような使用方法における課題を開示するものではなく、そのような課題を解決できることを想起させるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-185088号公報
【特許文献2】特開2021-120128号公報
【特許文献3】特開2019-163559号公報
【特許文献4】特開2017-31532号公報
【特許文献5】特開2012-1862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動投入装置により、計量や投入の工程が省略されたものの、タンク内への補充頻度を減らしたいという要望も多い。そのため、柔軟剤の柔軟基剤や香料を濃縮化することが望まれるが、濃縮による増粘化が問題となる。また、最近の洗濯機には乾燥機能を具備しているものも多く、乾燥機能の使用により高温となると濃縮液体柔軟剤がさらに増粘しやすくなる欠点が指摘されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これらの課題を解決すべく、鋭意検討した結果、
(a)下記一般式(1)の1種または2種以上の4級アンモニウム化合物を10質量%以上20質量%以下、
【化1】
[式中R
1は炭素数14以上22以下の直鎖、分岐または環状のアルキル基またはアルケニル基である。Yは-COO-基または-OCO-基である。R
2は炭素数1以上3以下のアルキレン基である。R
3、R
4は各々独立に炭素数1以上3以下のアルキル基、-R
2-OH、またはR
1-Y-R
2-から選ばれる基である。ここで、R
3及び/またはR
4が、R
1-Y-R
2-のとき、R
1及び/またはR
2は同一または相異なっていてもよい。また、R
3及び/またはR
4が、-R
2-OHのとき、R
2は同一または相異なっていてもよい。R
5は炭素数1以上3以下のアルキル基である。X
-は陰イオン基である。4級アンモニウム化合物(1)が2種以上の場合、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びX
-は相異なっていてもよい。
ただし、4級アンモニウム化合物(1)が1種の場合、R
1の少なくとも1つが直鎖、分岐または環状の炭素数14以上22以下のアルケニル基である。また、4級アンモニウム化合物(1)が2種以上の場合、R
1の少なくとも1つが直鎖、分岐または環状の炭素数14以上22以下のアルケニル基である4級アンモニウム化合物を少なくとも1つ含む。
さらに、下式により定義される不飽和率
[R
1がアルケニル基であるR
1COOHの全質量]/[R
1COOHの全質量]×100(質量%)
が55質量%以上100質量%以下である、及び、
(b)香料組成物中にClogPが1以上5以下の1種または2種以上の香料化合物が30質量%以上100質量%以下の割合で含有する1種または2種以上の香料組成物(A)を1.5質量%以上5質量%以下含有する、
を含む洗濯機用濃縮液体柔軟剤組成物を用いることにより、上記化課題が解決することを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0006】
<(a)成分>
本発明の柔軟剤自動投入用タンクを備えた洗濯機用濃縮液体柔軟剤組成物(以下、濃縮液体柔軟剤組成物と略す)は(a)成分として、一般式(1)の4級アンモニウム化合物(1)を1種または2種以上含有する。
【化2】
[式中、R
1は炭素数14以上22以下の直鎖、分岐または環状のアルキル基またはアルケニル基である。Yは-COO-である。R
2は炭素数1以上3以下のアルキレン基である。R
3及びR
4は、各々独立に炭素数1以上3以下のアルキル基、-R
2-OHまたはR
1-Y-R
2-から選ばれる基である。ここで、R
3及び/またはR
4が、R
1-Y-R
2-のとき、R
1及び/またはR
2は同一または相異なっていてもよい。また、R
3及び/またはR
4が、-R
2-OHのとき、R
2は同一または相異なっていてもよい。R
5は炭素数1以上3以下のアルキル基である。X
-は対陰イオンである。4級アンモニウム化合物(1)が2種以上の場合、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びX
-は相異なっていてもよい。
ただし、4級アンモニウム化合物(1)が1種の場合、R
1の少なくとも1つが直鎖、分岐または環状の炭素数14以上22以下のアルケニル基である。また、4級アンモニウム化合物(1)が2種以上の場合、R
1の少なくとも1つが直鎖、分岐または環状の炭素数14以上22以下のアルケニル基である4級アンモニウム化合物を少なくとも1つ含む。]
【0007】
一般式(1)のR1は、直鎖、分岐または環状の炭素数14以上22以下のアルキル基またはアルケニル基であり、増粘抑制の観点から、アルキル基としてはペンタデカニル基またはヘプタデカニル基、アルケニル基としては8-ヘプタデセニル基、8,11-ヘプタデカジエニル基、8,11,14-ヘプタデカトリエニル基、4,7,10,13-ノナデカテトラエニル基、4,7,10,13,16-ノナデカペンタエニル基、3,6,9,12,15,18-ヘンエイコサヘキサエニル基が好ましい。
【0008】
Yは、-COO-基または-OCO-基であり、増粘抑制及び原料入手が容易な点で、-COO-基が好ましい。
【0009】
R2は、具体的にはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基であり、原料入手が容易な点で、エチレン基が好ましい。
【0010】
R3で表される炭素数1以上3以下のアルキル基は、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基である。増粘抑制の観点から、メチル基が好ましい。
【0011】
R3で表される-R2-OH基は、具体的にはヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基である。原料入手が容易な点で、2-ヒドロキシエチル基が好ましい。
【0012】
R5は、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基である。増粘抑制の観点から、メチル基が好ましい。
【0013】
Z-は、は対陰イオンであり、ヨウ化物イオン、臭化物イオン、塩化物イオン、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸エステルイオン、炭素数12以上18以下の脂肪酸イオン、及び炭素数1以上3以下のアルキル基が1個以上3個以下置換していてもよいベンゼンスルホン酸イオンから選ばれる陰イオンが好ましく、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸エステルイオンから選ばれる陰イオンがより好ましく、モノメチル硫酸イオンまたはモノエチル硫酸イオンがさらに好ましい。
【0014】
Yは、-COO-基または-OCO-基であり、増粘抑制及び原料入手が容易な点で、-COO-基が好ましい。
【0015】
(a)成分である一般式(1)の4級アンモニウム化合物は、Yが-COO-の時は、アルカノールアミンと脂肪酸または脂肪酸クロライドとのエステル化反応、もしくは脂肪酸の低級アルコールエステルとのエステル交換反応、次いで4級化剤による4級化反応を行うことで得ることができる。また、Yが-OCO-の時は、アルコールとカルボキシアルキルアミンまたは(クロロカルボニル)アルキルアミンとアルコールのエステル化反応もしくはカルボキシアルキルアミン低級アルコールエステルとのエステル交換反応、次いで4級化剤による4級化反応を行うことで得ることができる。
【0016】
原料入手が容易な点から、アルカノールアミンと脂肪酸または脂肪酸クロライドとのエステル化反応もしくは脂肪酸の低級アルコールエステルとのエステル交換反応、次いで4級化剤による4級化反応により、Yが-COO-基である一般式(1)の4級アンモニウム化合物を製造することが好ましい。
【0017】
Yが-COO-基である一般式(1)の4級アンモニウム化合物は、以下の方法で製造することができる。
R
3及びR
4が、各々独立に炭素数1以上3以下のアルキル基または-R
2-OHから選ばれる基である場合、下式(i)に示す1種または2種以上のR
1COXと1種または2種以上のアルカノールアミン(1a)との反応で(1aa)を得、次いでR
5-Zを4級化剤として用いて4級化することにより、一般式(1)の4級アンモニウム化合物を(1A)として得ることができる。
【化3】
[式中、Xは水酸基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基または塩素原子である。 R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びZ
-は前記と同じ内容を示す。]
【0018】
4級アンモニウム化合物(1A)が1種の場合、R1は直鎖、分岐または環状の炭素数14以上22以下のアルケニル基である。また、4級アンモニウム化合物(1A)が2種以上の場合、R1の少なくとも1つが直鎖、分岐または環状の炭素数14以上22以下のアルケニル基である4級アンモニウム化合物を、少なくとも1つ含む。
【0019】
式(i)の第一段階のエステル化は汎用のエステル化の条件、すなわち温度、触媒、原料の濃度、溶媒、を用いて行うことができる。また、第二段階の4級化も汎用の4級化の条件、すなわち温度、触媒、原料の濃度、溶媒、を用いて行うことができる。
【0020】
得られた最終生成物である4級アンモニウム化合物(1A)は、単離してもよいが、利便性の観点から、エステル化、4級化後に単離せずに用いてもよい。エステル化後には、未反応の原料のR1COX及びアルカノールアミン(1a)が混入するが、その量は微量であり、本願の組成物の性能に影響することは無い。また4級化後には、未反応の(1aa)が混入するが、本願の組成物の性能に影響することは無い。また、エステル化及び4級化で用いる溶媒も本願の組成物の性能に影響することは無い。
【0021】
R
3がR
1-Y-R
2-であり、R
4が炭素数1以上3以下のアルキル基または-R
2-OHである場合、下式(ii)に示す1種または2種以上のR
1COXと1種または2種以上のアルカノールアミン(1b)との反応で(1bb)を得、次いでR
5-Zを4級化剤として用いて4級化することにより、一般式(1)の4級アンモニウム化合物を(1B)として得ることができる。
【化4】
[式中、X、R
1、R
2、R
4、R
5及びZ
-は前記と同じ内容を示す。]
【0022】
4級アンモニウム化合物(1B)が1種の場合、R1の少なくとも1つが直鎖、分岐または環状の炭素数14以上22以下のアルケニル基である。また、4級アンモニウム化合物(1B)が2種以上の場合、R1の少なくとも1つが直鎖、分岐または環状の炭素数14以上22以下のアルケニル基である4級アンモニウム化合物を少なくとも1つ含む。
【0023】
式(ii)の第一段階のエステル化は汎用のエステル化の条件、すなわち温度、触媒、原料の濃度、溶媒、を用いて行うことができる。また、第二段階の4級化も汎用の4級化の条件、すなわち温度、触媒、原料の濃度、溶媒、を用いて行うことができる。
【0024】
得られた最終生成物である4級アンモニウム化合物(1B)は、単離してもよいが、利便性の観点から、エステル化、4級化後に単離せずに用いてもよい。エステル化後には、未反応の原料のR1COX及びアルカノールアミン(1b)が混入するが、その量は微量であり、本願の組成物の性能に影響することは無い。また4級化後には、未反応の(1bb)が混入するが、本願の組成物の性能に影響することは無い。また、エステル化及び4級化で用いる溶媒も本願の組成物の性能に影響することは無い。
【0025】
R
3及びR
4が、R
1-Y-R
2-である場合、下式(iii)に示す1種または2種以上のR
1COXと1種または2種以上のアルカノールアミン(1c)との反応で(1cc)を得、次いでR
5-Zを4級化剤として用いて4級化することにより、一般式(1)の4級アンモニウム化合物を(1C)として得ることができる。
【化5】
[式中、X、R
1、R
2、R
5及びZ
-は前記と同じ内容を示す。]
【0026】
4級アンモニウム化合物(1C)が1種の場合、R1の少なくとも1つが直鎖、分岐または環状の炭素数14以上22以下のアルケニル基である。また、4級アンモニウム化合物(1C)が2種以上の場合、R1の少なくとも1つが直鎖、分岐または環状の炭素数14以上22以下のアルケニル基である4級アンモニウム化合物を少なくとも1つ含む。
【0027】
式(iii)の第一段階のエステル化は汎用のエステル化の条件、すなわち温度、触媒、原料の濃度、溶媒、を用いて行うことができる。また、第二段階の4級化も汎用の4級化の条件、すなわち温度、触媒、原料の濃度、溶媒、を用いて行うことができる。
【0028】
得られた最終生成物である4級アンモニウム化合物(1C)は、単離してもよいが、利便性の観点から、エステル化、4級化後に単離せずに用いてもよい。エステル化後には、未反応の原料のR1COX及びアルカノールアミン(1c)が混入するが、その量は微量であり、本願の組成物の性能に影響することは無い。また4級化後には、未反応の(1cc)が混入するが、本願の組成物の性能に影響することは無い。また、エステル化及び4級化で用いる溶媒も本願の組成物の性能に影響することは無い。
【0029】
また、アルカノールアミン(1a)及び/または(1b)及び/または(1c)の混合物をR1COXと反応させて、(1aa)及び/または(1bb)及び/または(1cc)を経て、(1A)及び/または(1B)及び/または(1C)の混合物(1D)として、一般式(1)の4級アンモニウム化合物を得てもよい。
【0030】
一般式(1)の4級アンモニウム化合物を混合物(1D)として得る場合も、
R1の少なくとも1つが直鎖、分岐または環状の炭素数14以上22以下のアルケニル基である4級アンモニウム化合物を少なくとも1つ含む。
【0031】
原料として用いるアルカノールアミンとしては、トリエタノールアミンが増粘抑制及び原料入手が容易な点で好ましい。また、用いることが好ましい脂肪酸は、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸あるいはこれらの混合物から選ばれる脂肪酸である。また、これらの脂肪酸を主成分とするパーム油、大豆油またはオリーブ油由来の脂肪酸を含む混合物も用いることができる。
【0032】
本願の(a)成分である一般式(1)で表される4級アンモニウム化合物は、上記のように、1種の場合はR1の少なくとも1つが直鎖、分岐または環状の炭素数14以上22以下のアルケニル基であり、また、2種以上の場合は、R1の少なくとも1つが直鎖、分岐または環状の炭素数14以上22以下のアルケニル基である4級アンモニウム化合物を少なくとも1つ含むことが必須である。
【0033】
その際、アルケニル基の導入量は、下式で算出される不飽和率として定義する。
([R1がアルケニル基であるR1COOHの全質量]/[R1COOHの全質量])×100(質量%)
【0034】
一般式(1)の4級アンモニウム化合物を、アルカノールアミンと、脂肪酸または脂肪酸クロライドとのエステル化反応もしくは脂肪酸の低級アルコールエステルとのエステル交換反応、次いで4級化剤による4級化反応で製造する際に、第一段階において、R1COX(脂肪酸、脂肪酸クロライドまたは脂肪酸の低級アルコールエステル)をアルカノールアミンに対してモル比で1.5倍以上用いる等の条件を最適化することにより、概ね95%以上のR1COXがアルカノールアミンと反応して、上記(1aa)、(1bb)、(1cc)で表されるエステル化物を与える。従って、原料として用いる1種または2種以上のR1COXの不飽和率を、上記不飽和率として差し支えない。
【0035】
また、不飽和率をヨウ素価の測定で算出することも可能である。その場合も、R1COXをアルカノールアミンに対して過剰量用いる場合は、原料として用いる1種または2種以上のR1COXのヨウ素価を測定して算出して差し支えない。なお、R1COXのヨウ素価は「岩波理化学辞典第4版」岩波書店に記載された方法により測定することができる。
【0036】
該不飽和率は増粘抑制の観点から、55質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、そして、100質量%以下、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。
【0037】
本発明の濃縮液体柔軟剤組成物中の(a)成分の含有量は、洗濯1回当たりの使用量を少なくできる点、及び消臭効果の点から、10質量%以上、より好ましくは12質量%以上、そして、20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0038】
<(b)成分>
本発明の濃縮液体柔軟剤組成物は、(b)成分として香料化合物を含む香料組成物(A)を含む。
本願で用いる香料化合物は、logP値で特徴づけることができる。logP値とは、有機化合物の水と1-オクタノールに対する親和性を示す係数である。1-オクタノール/水分配係数Pは、1-オクタノールと水の2液相からなる溶媒に微量の化合物が溶質として溶け込んで分配平衡に到達した際の、それぞれの溶媒中における化合物の平衡濃度の比であり、底10に対するそれらの対数logPの形で示すのが一般的である。今日では、化合物分子を構成する原子の数及び化学結合のタイプによって決められる原子団のフラグメント値を用いた計算プログラムによって算出される、計算logP(ClogP)の値が広く用いられており、本発明においても、化合物の選択に際して、ClogPの値を用いるが、この値は実験的に得られるlogP値と同等とみなしてよい。本願で用いたlogP値は、ClogP値であり、以後ClogP値と表記する。
【0039】
香料化合物のClogP値は、繊維が発汗等の水分で湿潤した際の香り立ちの観点から、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.5以上、そして、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.5以下、さらに好ましくは4.0以下である。
【0040】
ClogP値が1.0以上5.0以下である香料化合物として、例えば、γ-ウンデカラクトン、2-シクロヘキシリデン-2-フェニルアセトニトリル、ダマセノン、δ-ダマスコン、α-メチル-β-(p-t-ブチルフェニル)-プロピオンアルデヒド、β-イオノン、ミルラアルデヒド、エチルトリシクロ[5.2.1.0-2,6]デカン-2-カルボキシレート(フルーテート)、シトロネロール、ゲラニオール、α-イオノン、パチョリアルコール、6,7-ジヒドロ-1,1,2,3,3-ペンタメチル-4(5H)-インダノン、メチルジヒドロジャスモネート、ヘキシルシンナミックアルデヒド、アミルシンナミックアルデヒド、プロピオン酸アリルシクロヘキシル、酪酸ジメチルベンジルカルビニル、プロピオン酸トリシクロデセニル、サリチル酸アミル、γ-メチルイオノン、α-ダマスコン、β-ダマスコン、ネロリンヤラヤラ、2,4,6-トリメチル-4-フェニル-1,3-ジオキサン、フェニルヘキサノール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン、γ-ノナラクトン、メチルβ-ナフチルケトン、オイゲノール、リラール、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、イソ-ダマスコン、2-シクロヘキシリデン-2-フェニルアセトニトリル、γ-デカラクトン、α-メチル-3,4-メチレンジオキシヒドロシンナミックアルデヒド、7-メチル-3,5-ジヒドロ-2H-ベンゾジオキセピノン、トリシクロデシニルアセテート(酢酸トリシクロデセニル)、トリシクロデシニルプロピオネート、2-ペンチルオキシグリコール酸アリル、1-(2-tert-ブチルシクロヘキシロキシ)-2-ブタノール、シトロネリロキシアセトアルデヒド、インドール、4-メチル-3-デセン-5-オール、パラ-メンタン-8-チオール-3-オン、3-(パラ-tert-ブチルフェニル)-プロパナール、エチルシンナメート、5-メチル-3-ヘプタノンオキシム、メチルアンスラニレート、ターピネオール、β-カリオフィレン、酢酸シトロネリル、酢酸ゲラニル、酢酸ネリル、酢酸[4-(t-ブチル)シクロヘキシル]、テトラヒドロゲラニオール、2-イソブチル-4ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラノール(フロローサ)、α-ダイナスコン、シスジャスモン、ビシクロ[3.2.1]オクタン-8-1,5-ジメチルオキシム、2,4-ジメチル-4,4α,5,9β-テトラヒドロインデノ[1,2-d]-m-ジオキシン、3-(パラ-エチルフェニル)-2,2-ジメチルプロパナール、エチル-2-tert-ブチルシクロヘキシル-カーボネート、安息香酸ヘキシル、4-アセトキシ-3-アミルテトラヒドロピラン、ドデシルアルデヒド、ジヒドロ-β-イオノン、メチルシクロオクチルカーボネート、メチルフェニルグリシド酸エチル、イソオイゲノール、メチルイソオイゲノール、ジフェニルオキサイド、2,2,5-トリメチル-5-ペンチルシクロペンタノン、チモール、ネロリンブロメリア、5,6-ジメチル-8-イソプロペニル、ビシクロ[4.4.0]-1-デセン-3-オン、3-(4-イソプロピルフェニル)-プロパナール、4-イソプロピルシクロヘキサンメタノール、メチルアンスラニル酸メチル、ドデカンニトリル、3-ドデセナール、クマリン、フェニルエチルアルコール、cis-3-ヘキセノール、ラズベリーケトン、ヘリオトロピン等が挙げられる。
【0041】
また、香料組成物(A)の香料化合物としては、ClogP値が5.0よりも高い香料化合物を用いることもできる。ClogP値が5.0よりも高い香料化合物として、例えば、2-[2-(4-メチル-3-シクロヘキセン-1-イル)プロピル]シクロペンタノン(5.1)、7-アセチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-1,1,6,7-テトラメチルナフタレン(5.2)、アセチルセドレン(5.2)、ネロリドール(5.7)、ベンジルアルコール(7.1)、カリオフィレン(6.3)、イソプロピルミリスチレート(7.2)などが挙げられる。なお( )内の数字はClogP値である。
【0042】
また、香料組成物(A)の香料化合物としては、ClogP値が1.0よりも小さい香料化合物を用いることもできる。ClogP値が1.0よりも高い香料化合物として、例えば、フルネオール(0.82)、ブタン酸(0.79)、γ-デカラクトン(0.60)、メチルメトキシブタノール(0.46)、メチルマルトール(0.30)などが挙げられる。なお( )内の数字はClogP値である。
【0043】
本発明の香料組成物(A)中のClogP値が1以上5以下である香料化合物の含有量は、30質量%以上、好ましくは35質量%以上、より好ましくは40質量%以上、そして、100質量%以下、より好ましくは95質量%以下含有する。
【0044】
洗濯機自動投入用の柔軟剤では、1回洗濯あたりの柔軟剤使用量を減らす必要がある。また柔軟剤使用者は香りを重視するため、香料の含有量を通常より多くする必要がある。しかしながら洗濯機自動投入用の柔軟剤は貯蔵条件が厳しくなるため、香料の含有量に制限がある。本発明では特定不飽和率を有する4級アンモニウム化合物とClogPが特定の範囲にある香料を特定割合含有する香料組成物を用いることで満足できる香りと貯蔵安定性を得ることができる。
【0045】
本発明の濃縮液体柔軟剤組成物中の(b)成分の含有量は、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは1.2質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上、そして、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.5質量%以下、さらに好ましくは4.0質量%以下含有する。
【0046】
<(c)成分>
本発明の濃縮液体柔軟剤組成物は、(c)成分として下記一般式(2)の非イオン性界面活性剤を含有していてもよい。
R6-O-[(C2H4O)s(C3H6O)t]-H (2)
[式中、R6は炭素数8以上18以下の直鎖、分岐または環状のアルキル基またはアルケニル基である。s及びtは平均付加モル数であって、sは8以上60以下の数であり、tは0以上5以下の数である。エチレンオキシ(C2H4O)基及びプロピレンオキシ(C3H6O)基は、ランダム型またはブロック型に結合している。]
【0047】
増粘抑制の観点から、R6は好ましくは炭素数10以上であり、そして、炭素数16以下、より好ましくは14以下である。sは好ましくは10以上、より好ましくは15以上であり、そして、好ましくは50以下、より好ましくは40以下である。tは好ましくは0以上、そして、好ましくは3以下である。
【0048】
成分(c)の含有量は、増粘抑制の観点から好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0049】
(b)成分の質量に対する(a)成分及び(c)成分の合計質量の割合(b)成分/[(a)成分+(c)成分]は、増粘抑制の観点から、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.07以上、そして、好ましくは0.25以下、より好ましくは0.2以下である。
【0050】
<(d)成分>
本発明の濃縮液体柔軟剤組成物は、(d)成分として、香料組成物(B)を内包するマイクロカプセルを含有していてもよい。
【0051】
マイクロカプセルのシェルの構成成分としては、具体的には、シリカ、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ゼラチン、アルギン酸、メラミン、尿素膜、ウレタン膜、CMC(細胞膜複合体)膜、等が例示できる。強度や含有する香料の放出能の観点から、構成成分としてはシリカが好ましい。以下、(d)成分のシリカを構成成分として含むシェルを有するマイクロカプセルを、シリカカプセルともいう。香料組成物としては、1種または2種以上の香料化合物を含有する香料組成物(B)としてシリカカプセルに内包することができる。
【0052】
<コア>
本発明に係るシリカカプセルのコアは香料組成物(B)を含む。
香料組成物(B)に含まれる香料化合物としては、一般に使用される天然香料或いは合成香料が挙げられ、例えば、印藤元一著「合成香料 化学と商品知識」,1969年,化学工業日報社刊、STEFFEN ARCTANDER著「Perfume and Flavor Chemicals」,1969年,MONTCLAIR,N.J.刊等に記載の香料化合物を用いることができる。また、「香料と調香の実際知識」(中島基貴著、産業図書株式会社、1995年6月21日発行)に記載の香料を適宜、香調、用途にしたがって組み合わせて用いることができる。
さらに、香料化合物としては、香りの持続性、残香性を向上させることを目的として、特開2009-256818号公報に記載されるヒドロキシ基を有する香料化合物をケイ酸エステル体として併用することもできる。また、洗濯用仕上げ剤として知られている、柔軟剤、糊剤、スタイリング剤またはその他仕上げ剤の特許文献に記載された香料化合物を用いることができる。
【0053】
本発明において香料組成物(B)として好適に使用することができる香料化合物として、脂肪酸エーテル、芳香族エーテル(ヒドロキシフェニルエーテルを除く)等のエーテル、脂肪酸オキサイド、テルペン類のオキサイド等のオキサイド、アセタール、ケタール、フェノール、ヒドロキシフェニルエーテル、脂肪酸、テルペン系カルボン酸、水素化芳香族カルボン酸、芳香族カルボン酸等の酸、酸アマイド、ニトロムスク、ニトリル、アミン、ピリジン、キノリン、ピロール、インドール等の含窒素化合物を例示することができる。また、前記の香料組成物(A)に含まれる香料化合物を例示することができ、香料組成物(B)は、これらの1種または2種以上の香料化合物を含む香料組成物(B)として用いることができる。
【0054】
<シェル>
本発明のシリカカプセルのシェルは、シリカを構成成分として含む。本発明のシリカカプセルのシェルは、シェルを構成している構造の一部または実質的全部がシリカを構成成分としてできていることを特徴とする。
本発明のシリカカプセルのシェルは、アルコキシシランを前駆体としたゾル-ゲル反応により形成されてなるものが好ましい。
【0055】
また、本発明のシリカカプセルのシェルは、本発明の効果を阻害しない範囲で、シリカ以外の無機重合体を構成成分として含んでもよい。本発明において無機重合体とは、無機元素を含む重合体をいう。該無機重合体としては、無機元素のみからなる重合体、主鎖が無機元素のみから構成され側鎖または置換基として有機基を有する重合体等が挙げられる。
前記無機重合体は、好ましくは金属元素を含む金属酸化物であり、さらに好ましくは金属アルコキシド[M(OR)x]を前駆体として、前述のシリカのゾル-ゲル反応と同様の反応により形成されてなる重合体である。ここで、Mは金属元素であり、Rは炭化水素基である。
金属アルコキシドを構成する金属元素としては、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、亜鉛等が挙げられる。
【0056】
前記アルコキシシランは、香料成分(1)の内包率を高める観点並びにデリバリー性能を良好に発現させる観点から、好ましくはテトラアルコキシシランである。
前記テトラアルコキシシランとしては、ゾル-ゲル反応を促進する観点から、好ましくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基を有するものであり、より好ましくはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、及びテトライソプロポキシシランから選ばれる1種以上であり、さらに好ましくはテトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランから選ばれる1種以上であり、よりさらに好ましくはテトラエトキシシランである。
【0057】
(シリカカプセルの製造)
本発明のシリカカプセルのシェルは、香料化合物の内包率を高める観点、及び長期保持性を向上させる観点、並びに香料成分(1)のデリバリー性能を良好に発現させる観点から、ゾル-ゲル反応を2段階で行うことにより形成されてなるシリカを構成成分として含むことが好ましい。すなわち、本発明のシリカカプセルは、下記の工程1及び工程2を含む方法により製造することが好ましい。
工程1:カチオン性界面活性剤を含む水相成分と、香料成分(2)及びテトラアルコキシシランを含む油相成分とを乳化して得られる乳化液を、酸性条件下でゾル-ゲル反応に供し、コアと、シリカを構成成分とする第一シェルと、を有するシリカカプセル(1)を形成し、該シリカカプセル(1)を含有する水分散体を得る工程。
工程2:工程1で得られたシリカカプセル(1)を含有する水分散体に、さらにテトラアルコキシシランを添加してゾル-ゲル反応を行い、第一シェルを包接する第二シェルを有するシリカカプセル(2)を形成する工程。
【0058】
〔工程1〕
工程1は、カチオン性界面活性剤を含む水相成分と、香料成分(2)及びテトラアルコキシシランを含む油相成分とを乳化して得られる乳化液を、酸性条件下でゾル-ゲル反応に供し、コアと、シリカを構成成分とする第一シェルとを有するシリカカプセル(1)を形成し、該シリカカプセル(1)を含有する水分散体を得る工程である。
【0059】
工程1におけるカチオン性界面活性剤として、アルキルアミン塩、アルキル第4級アンモニウム塩等が挙げられる。アルキルアミン塩は、好ましくは第2級アミンまたは第3級アミンの塩であり、より好ましくは第3級アミンの塩である。アルキルアミン塩及びアルキル第4級アンモニウム塩は、少なくとも1つの長鎖アルキル基を有し、任意に、好ましくは少なくとも1つの長鎖アルキル基、短鎖アルキル基及びベンジル基から選ばれる基を有する化合物が好ましい。長鎖アルキル基の炭素数は、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、さらに好ましくは14以上であり、そして、好ましくは22以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは18以下である。短鎖アルキル基の炭素数は、好ましくは1以上、そして、好ましくは4以下であり、より好ましくは1または2であり、さらに好ましくは1、すなわちメチル基である。
アルキルアミン塩としては、長鎖アルキル基が前記炭素数の範囲である、長鎖モノアルキルモノメチル2級アミン塩、長鎖モノアルキルジメチル3級アミン塩等のアルキルアミン塩が挙げられる。
第4級アンモニウム塩としては、長鎖アルキル基及び短鎖アルキル基がそれぞれ前記炭素数の範囲である、長鎖アルキルトリ短鎖アルキル4級アンモニウム塩、ジ長鎖アルキルジ短鎖アルキル4級アンモニウム塩、長鎖アルキルベンジルジ短鎖アルキル4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0060】
アルキルアミン塩としては、ラウリルジメチルアンモニウムアセテート、ステアリルジメチルアンモニウムアセテート等のアルキルアミン酢酸塩が挙げられる。
アルキルトリメチルアンモニウム塩としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド等のアルキルトリメチルアンモニウムクロライド;ラウリルトリメチルアンモニウムブロマイド、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロマイド等のアルキルトリメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
ジアルキルジメチルアンモニウム塩としては、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等のジアルキルジメチルアンモニウムクロライド;ジステアリルジメチルアンモニウムブロマイド等のジアルキルジメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩としては、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤は、これらの中でも、好ましくは第4級アンモニウム塩であり、より好ましくは炭素数10以上22以下のアルキル基を有するアルキルトリメチルアンモニウム塩であり、さらに好ましくは炭素数10以上22以下のアルキル基を有するアルキルトリメチルアンモニウムクロライドであり、よりさらに好ましくはラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、及びセチルトリメチルアンモニウムクロライドから選ばれる1種以上であり、よりさらに好ましくはセチルトリメチルアンモニウムクロライドである。
【0061】
工程1において、本発明の効果を阻害しない範囲で、カチオン性界面活性剤に加えて、さらに他の乳化剤を含んでもよい。他の乳化剤としては、高分子分散剤、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
【0062】
工程1において水相成分中のカチオン性界面活性剤の含有量は、乳化滴の分散安定性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.4質量%以上であり、そして、乳化液の分散安定性に寄与しない余剰の乳化剤による乳化剤ミセルの形成を抑制し、カプセル化効率を向上させる観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。
【0063】
工程1で得られる乳化液の総量に対する油相成分の量は、製造効率の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15%以上であり、そして、安定な乳化液を得る観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
【0064】
工程1におけるテトラアルコキシシランの添加量は、ゾル-ゲル反応を促進させ、十分に緻密なシェルを形成する観点から、工程1の香料化合物の総量に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは12質量%以上、さらに好ましくは14質量%以上であり、そして、過剰のテトラアルコキシシランが香料化合物中に残存することを抑制する観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下、よりさらに好ましくは35質量%以下である。
【0065】
工程1は、好ましくは下記の工程1-1~1-4を含む。
工程1-1:カチオン活性剤を含む水相成分を調製する工程
工程1-2:香料とテトラアルコキシシランを混合し、油相成分を調製する工程
工程1-3:工程1-1で得られた水相成分と工程1-2で得られた油相成分とを混合及び乳化し、乳化液を得る工程
工程1-4:工程1-3で得られた乳化液を、1段階目のゾル-ゲル反応に供し、コアと、シリカを構成成分とする第一シェルとを有するシリカカプセル(1)を形成する工程
【0066】
工程1の乳化液における乳化滴のメジアン径D50は、シリカカプセル外環境に対する比表面積を少なくし、長期保持性を高める観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、さらに好ましくは0.3μm以上であり、そして、シリカカプセル(1)の物理的強度の観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは10μm以下、よりさらに好ましくは5μm以下、よりさらに好ましくは3μm以下である。
乳化滴のメジアン径D50は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0067】
工程1におけるゾル-ゲル反応の初期pHは、テトラアルコキシシランの加水分解反応と縮合反応のバランスを保つ観点、及び親水性の高いゾルの生成を抑制し、カプセル化の進行を促進する観点から、好ましくは3.0以上、より好ましくは3.3以上であり、さらに好ましくは3.5以上であり、そして、シリカシェル(1)の形成と乳化滴の凝集の併発を抑制し、緻密なシェルを有するシリカカプセル(1)を得る観点から、好ましくは4.5以下、より好ましくは4.3以下、さらに好ましくは4.1以下である。
【0068】
香料組成物を含む油相成分の酸性、アルカリ性の強さに応じて、所望の初期pHに調整する観点から、任意の酸性またはアルカリ性のpH調整剤を用いてもよい。
前記乳化液のpHが所望の値以下となることもある。その場合には、後述するアルカリ性のpH調整剤を用いて調整することが好ましい。
すなわち、工程1-4は、好ましくは、下記の工程1-4’であってもよい。
工程1-4’:工程1-3で得られた乳化液のpHを、pH調整剤を用いて調整し、1段階目のゾル-ゲル反応を行い、コアと第一シェルとを有するシリカカプセル(1)を形成し、該シリカカプセル(1)を含有する水分散体を得る工程
【0069】
酸性のpH調整剤として、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸、酢酸、クエン酸等の有機酸、陽イオン交換樹脂等を水やエタノール等に加えた液などが挙げられ、好ましくは塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸である。
アルカリ性のpH調整剤として、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタンなどが挙げられ、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウムである。
【0070】
工程1におけるゾル-ゲル反応の反応温度は、水相として含まれる水の融点以上、沸点以下であれば任意の値を選択することができるが、ゾル-ゲル反応における加水分解反応と縮合反応のバランスを制御し、緻密なシェルを形成する観点から、温度を一定範囲にするのが好ましい。該範囲としては、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、さらに好ましくは15℃以上、そして、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは40℃以下である。
【0071】
〔工程2〕
工程2は、工程1で得られたシリカカプセル(1)を含有する水分散体に、さらにテトラアルコキシシランを添加してゾル-ゲル反応を行い、第一シェルを包接する第二シェルを有するシリカカプセル(2)を形成する工程である。
【0072】
工程2におけるテトラアルコキシシランの添加量は、第一シェルを包接した第二シェルを形成する観点から、工程1の香料化合物に対して、好ましくは7質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、そして、水相に分散するシリカゾルの生成を抑制し、シリカカプセルの分散安定性を向上させる観点から、好ましくは200質量%以下、より好ましくは170質量%以下、さらに好ましくは150質量%以下である。
【0073】
工程2において、工程1で得られるシリカカプセル(1)を含有する水分散体に添加するテトラアルコキシシランは、全量を一括で添加してもよく、間欠的に分割して添加してもよく、連続的に添加してもよいが、緻密性の高い第二シェルを形成する観点から、連続的に滴下して添加することが好ましい。
テトラアルコキシシランを連続的に滴下して添加する場合、その滴下時間は製造の規模に応じて適宜設定することができるが、添加するテトラアルコキシシランと水分散体との分離を抑制する観点から、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、さらに好ましくは30分以上であり、そして、好ましくは1200分以下、より好ましくは1000分以下、さらに好ましくは500分以下である。
【0074】
本発明において、テトラアルコキシシランの添加総量、すなわち工程1及び工程2で用いられるテトラアルコキシシランの合計添加量は、工程1の香料化合物に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上であり、そして、好ましくは250質量%以下、より好ましくは200質量%以下、さらに好ましくは150質量%以下である。テトラアルコキシシランの添加総量を上記範囲にすることにより、内包する香料化合物を長期間保持することができる。
【0075】
本発明において、工程2におけるテトラアルコキシシランの添加前の水分散体の総量に対して、工程1の香料化合物及びテトラアルコキシシランの合計量は、香料化合物の長期保持性を向上させる観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、よりさらに好ましくは10質量%以下であり、そして、生産効率の観点から、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。
工程2におけるテトラアルコキシシランの添加前の水分散体の総量に対する、工程1の香料化合物及びテトラアルコキシシランの合計量の調整は、工程1の香料化合物及びテトラアルコキシシランの量と工程1で得られる水分散体の総量とが上記範囲となるように工程1を行ってもよく、工程1で得られた水分散体にさらに水を添加して希釈することにより行ってもよい。
【0076】
本発明は、生産効率の観点から、工程2において、テトラアルコキシシランの添加前に、工程1で得られた水分散体を水で希釈してもよい。工程1で得られた水分散体の希釈前の総量に対する、工程1の香料化合物及びテトラアルコキシシランの合計量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、よりさらに好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
希釈倍率は、好ましくは2倍以上、より好ましくは2.5倍以上であり、そして、好ましくは20倍以下、より好ましくは10倍以下、より好ましくは7倍以下である。
【0077】
工程2におけるゾル-ゲル反応の反応温度は、分散媒として含まれる水の融点以上、沸点以下であれば任意に選択することができるが、ゾル-ゲル反応における加水分解反応と縮合反応のバランスを制御し、緻密なシェルを形成する観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、さらに好ましくは15℃以上であり、そして、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは40℃である。工程1のゾル-ゲル反応と工程2のゾル-ゲル反応とで異なる反応温度で実施しても良い。
【0078】
本発明は、工程2において、工程1で得られた水分散体に、さらに有機高分子化合物を水分散体を安定させ凝集を抑制する目的で添加してもよい。ここで、有機高分子化合物とは重量平均分子量5,000以上の化合物を意味する。
前記有機高分子化合物としては、ノニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマーが挙げられる。
前記ノニオン性ポリマーは、水中で電荷を有しない水溶性ポリマーを意味する。ノニオン性ポリマーを用いることにより、シリカカプセルの用途に応じた機能を該シリカカプセル(2)に付与させることができる。
前記有機高分子化合物としてノニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー、またはアニオン性ポリマーを用いる場合、例えば本発明に係るシリカカプセルを柔軟剤組成物等の濃縮液体柔軟剤組成物に用いる際には、シリカカプセルの繊維への吸着性の向上が期待できる。
本明細書において「水溶性ポリマー」とは、105℃で2時間乾燥させ、恒量に達したポリマーを25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が1mg以上であるポリマーをいう。
【0079】
ノニオン性ポリマーとしては、ノニオン性モノマー由来の構成単位を有するポリマー、水溶性多糖類(セルロース系、ガム系、スターチ系等)及びその誘導体等が挙げられる。
ノニオン性モノマーとしては、炭素数1以上22以下の脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート;スチレン等のスチレン系モノマー;ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族基含有(メタ)アクリレート;酢酸ビニル;ビニルピロリドン;ビニルアルコール;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。なお、(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタクリレートの意味である。同様に、(メタ)アクリルは、アクリルまたはメタクリルの意味である。
【0080】
カチオン性ポリマーとしては、四級アンモニウム塩基を含有するポリマーの他、窒素系のカチオン基を有するポリマー、pH調整によりカチオン性を帯びることがあるポリマー等が挙げられる。カチオン性ポリマーを用いることにより、工程1で得られるシリカカプセル(1)が水分散体中で凝集しやすい状況を緩和することができ、続く工程2において粗大粒子等の生成を抑制できる。
カチオン性ポリマーとしては、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(アクリル酸-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(アクリルアミド-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(アクリルアミド-co-アクリル酸-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)等のポリジアリルジメチルアンモニウム塩及びその共重合体、ポリ(2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド)、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム、カチオン化タラガム、カチオン化フェヌグリークガム、カチオン化ローカストビンガム等が挙げられる。これらの中でも、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩及びその共重合体が好ましく、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(アクリル酸-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、及びポリ(アクリルアミド-co-アクリル酸-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)から選ばれる1種以上がより好ましく、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)がさらに好ましい。
【0081】
カチオン性ポリマーのカチオン基当量は、シリカカプセル(1)の分散性の観点及び粗大粒子の生成を抑制する観点、並びに長期保持性を向上させる観点から、好ましくは1meq/g以上、より好ましくは3meq/g以上、さらに好ましくは4.5meq/g以上であり、そして、好ましくは10meq/g以下、より好ましくは8meq/g以下である。カチオン性ポリマーにアニオン基が含まれてもよいが、その場合、カチオン性ポリマーに含まれるアニオン基当量は、好ましくは3.5meq/g以下、より好ましくは2meq/g以下、さらに好ましくは1meq/g以下である。なお、本発明において、カチオン性ポリマーのカチオン基当量は、モノマー組成に基づいた計算により算出したものを用いる。
【0082】
アニオン性ポリマーとしては、カルボキシル基を有するモノマー単位を含有するポリマーの他、スルホン酸基を有するモノマー単位を含有するポリマー、pH調整によりアニオン性を帯びるポリマー等が挙げられる。
アニオン性ポリマーとしては、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリマレイン酸、ポリ((メタ)アクリル酸-co-マレイン酸)、ポリ((メタ)アクリル酸-co-無水マレイン酸)、ポリ((メタ)アクリル酸-co-イソブチレン)、ポリ((メタ)アクリル酸-co-スチレン)、ポリ(イソブチレン-co-マレイン酸)、ポリ(スチレン-co-マレイン酸)、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸またはメタクリル酸の意味である。
【0083】
有機高分子化合物の添加量は、工程1で得られた水分散体に対して、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。
【0084】
工程2により得られるシリカカプセル(2)は、水中に分散した状態で得られる。上記の工程で製造することにより、香料組成物(B)のほとんどをシリカカプセルに内包させることができるので、用途によってはこれをそのまま使用することができる。場合によっては、シリカカプセルを分離して使用することもできる。分離方法としては、ろ過法、遠心分離法等を採用することができる。
【0085】
<コア>
本発明に係るシリカカプセルのコアは香料組成物(B)を含む。
本発明では、繊維が発汗等の水分で湿潤した際の香り立ちの観点から、香料組成物(B)に含まれる香料化合物の全量中、logPが2.0以上5.0以下、且つ25℃の蒸気圧が0.01Pa以上8.00Pa以下である香料化合物の割合が25質量%以上であることが好ましい。
【0086】
さらに、(d)成分のマイクロカプセルは香料成分(B)の他に希釈剤、溶剤、及び固化剤から選ばれる1種以上を内包してもよい。希釈剤ないし溶剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、及びグリセリンを挙げることができ、脂肪酸アルコール、脂肪酸の低級アルコールエステル、及び脂肪酸のグリセリンエステルを挙げることもできる。
【0087】
本発明の濃縮液体柔軟剤組成物中の(d)成分の含有量は、マイクロカプセル中の香料組成物(B)として、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.07質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、そして、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.7質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下含有する。
【0088】
本発明の濃縮液体柔軟剤組成物は、保存安定性を向上させる観点から(e)成分として、無機塩を含有することができる。無機塩としては、保存安定性を向上させる観点から、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、及び塩化マグネシウムから選ばれる1種以上が好ましい。
本発明の濃縮液体柔軟剤組成物が(e)成分を含有する場合、その含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上であり、そして、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。
【0089】
本発明の濃縮液体柔軟剤組成物は、(a)成分である第4級アンモニウム塩の加水分解を抑制することを目的として、濃縮液体柔軟剤組成物の原液のpHを2.5以上4.0以下に調整する観点から、(f)成分として、酸性化合物をさらに配合することが好ましい。
酸性化合物としては、無機酸または有機酸が挙げられる。無機酸の具体例としては、塩酸、硫酸が使用できる。有機酸の具体例としては、炭素数1以上10以下の1価または多価のカルボン酸、または炭素数1以上20以下の1価または多価のスルホン酸が挙げられる。より具体的にはメチル硫酸、エチル硫酸、p-トルエンスルホン酸、(o-、m-、p-)キシレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、グリコール酸、メチルグリシン二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、クエン酸、安息香酸、及びサリチル酸から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中でも、メチルグリシン二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、及びクエン酸から選ばれる1種以上が好ましい。
酸性化合物の配合量に特に制限はなく、pHが前記範囲になるように適宜使用することができる。
【0090】
本発明の濃縮液体柔軟剤組成物においては、基材の劣化を抑制する観点から、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)等の酸化防止剤を用いることができ、また、審美や長期保存時の着色を防ぐ観点から、濃縮液体柔軟剤組成物において一般的に用いられる染料及び顔料を用いることもできる。さらに、プロキセルBDNの商品名で市販されている防腐剤を(g)成分として用いることもできる。また、安息香酸及びその塩も防腐、防菌、防黴剤として用いることもできる。
【0091】
本発明の濃縮液体柔軟剤組成物中の(g)成分の含有量は、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、そして、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下である。
【0092】
本発明の濃縮液体柔軟剤組成物は、(h)成分として消泡剤を添加剤として含んでいてもよい。(h)成分は、濃縮液体柔軟剤組成物中に0.01質量%以上2質量%以下含むことができる。消泡剤としては、シリコーン系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、エーテル系消泡剤、ポリアルキレンオキシド系消泡剤、アルキルリン酸エステル系消泡剤、及びアセチレングリコール系消泡剤から選ばれる1種以上の消泡剤が挙げられる。
消泡剤としては、シリコーン系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、及びエーテル系消泡剤から選ばれる1種以上の消泡剤が好ましい。
【0093】
本発明の濃縮液体柔軟剤組成物中の(h)成分の含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.015質量%以上、そして、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下である。
【0094】
本発明の濃縮液体柔軟剤組成物は、長期保存時の色相変化や染料の褪色及び香りの変質を抑制する観点から、(i)成分としてキレート剤を含有することができる。キレート剤としては、エタン-1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホン酸、エチレンジアミン四酢酸、メチルグリシン二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、エチレンジアミン二コハク酸、L-グルタミン酸-N,N-二酢酸、N-2-ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、クエン酸、コハク酸、及びそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩が例示できる。
【0095】
本発明の濃縮液体柔軟剤組成物が、キレート剤を含有する場合、その含有量は、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上であり、そして、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下である。
【0096】
本発明の濃縮液体柔軟剤組成物は、その他に起泡剤、増粘剤、発泡剤を添加剤として含んでいてもよい。これらの添加剤は、濃縮液体柔軟剤組成物中に0.01質量%以上2質量%以下含むことができる。
【0097】
本発明の濃縮液体柔軟剤組成物は、例えば、衣料、寝具などの繊維製品用として好適である。衣料は、衣類、タオル、寝具、寝具用の繊維製品(シーツ、枕カバーなど)などの衣料の洗浄に用いられる。これら以外の洗濯が可能な繊維製品も本発明では衣料として洗浄の対象とすることができる。本発明において繊維製品とは、これら各種繊維を用いた織物、編物、不織布等の布帛及びそれを用いて得られた繊維製品、例えば、アンダーシャツ、Tシャツ、ワイシャツ、帽子、ハンカチ、タオル、マスク等の製品を意味する。好ましい繊維製品は織物、編み物等の織布及び織った繊維製品である。
【0098】
本発明の濃縮液体柔軟剤組成物は、流動性に優れているため、温度変化などで生じる粘性の増加を抑制できることから、乾燥機能を具備した自動投入装置を備えた洗濯機で用いるのに適している。本発明における自動投入用容器とは、例えば、自動投入用柔軟剤タンクが挙げられる。
【0099】
<実施例及び比較例>
(a)成分
<合成例1:(a-1)成分の合成>
トリエタノールアミンと表1に示した組成のRa1COOHを原料の脂肪酸として用いた。用いたRa1COOHの不飽和率は、78%+10%+2%=90%である。
【0100】
【0101】
トリエタノールアミンとRa1COOHを、反応モル比(Ra1COOH/トリエタノールアミン)=1.87/1で混合した溶液500gを1Lフラスコに仕込み攪拌下窒素を導入し、生成する水を脱水管で系外に除去しながら約3時間かけて180℃まで加熱した。180~230℃の温度にさらに5時間保持し、反応物の一部を採取し、AV(酸価)を測定し、AV=2.5mgKOH/g以下であることを確認した後、室温まで冷却した。
HPLC分析の結果、エステル化生成物中には、未反応のRa1COOHが1質量%含まれていた。未反応のトリエタノールアミンは検出されなかった。
得られたエステル化合物の全アミノ基窒素含有量(JIS K7245-2000の全アミノ基窒素含有量の測定方法に従うものとする。)を求め、計算から得られるアミノ基の当量数に対して0.96当量倍のジメチル硫酸で4級化反応を行う。具体的にはエステル化反応終了物300gを1Lフラスコに仕込み、窒素を導入しながら攪拌下50℃まで加熱昇温する。滴下ロートより全アミノ基窒素含有量から求めたアミノ基の当量数に対して0.96当量倍のジメチル硫酸を1時間かけて滴下し、50℃でさらに2時間攪拌した。反応終了後、エタノールで希釈した。
【0102】
得られた生成物をHPLC法で各成分の組成比を分析し、臭化テトラオクチルアンモニウムを内部標準物質として使用し定量した結果、得られた生成物は、(a)成分である(a-1)成分を66質量%、エタノール15質量%、4級化されていないエステル化反応物(メチル硫酸塩として)17質量%、未反応Ra1COOH1質量%、微量のトリエタノールアミン4級化物及びその他微量成分を含み、このうち一般式(1)において、R3及びR4が-C2H4OHであり、R5がメチル基であって、X-がメチル硫酸イオンである化合物が(a-1)成分中22質量%、一般式(1)において、R3がRa1-COO-C2H4-であり、R4が-C2H4OHであり、R5がメチル基であって、X-がメチル硫酸イオンである化合物が(a-1)成分中58質量%、一般式(1)において、R3及びR4がRa1-COO-C2H4-であり、R5がメチル基であって、X-がメチル硫酸イオンである化合物が(a-1)成分中20質量%であった(表2)。また(a-1)成分と4級化されていないエステル化反応物から算出(66÷(66+17))した4級化率は80質量%であった。
【0103】
【0104】
<合成例2:(a-2)成分の合成>
トリエタノールアミンと表2に示した組成のRa2COOHを原料の脂肪酸として用いた。用いたRa2COOHの不飽和率は、27%+3%=30%である。
【0105】
【0106】
トリエタノールアミンとRa2COOHを、反応モル比(Ra2COOH/トリエタノールアミン)=1.65/1で混合した溶液500gを1Lフラスコに仕込み、攪拌下窒素を導入し、生成する水を脱水管で系外に除去しながら約3時間かけて180℃まで加熱した。180~230℃の温度にさらに5時間保持し、反応物の一部を採取し、AV(酸価)を測定し、AV=2.5mgKOH/g以下であることを確認した後、室温まで冷却した。
HPLC分析の結果、エステル化生成物中には、未反応のRa2COOHが5質量%含まれていた。未反応のトリエタノールアミンは検出されなかった。
得られたエステル化合物の全アミノ基窒素含有量(JIS K7245-2000の全アミノ基窒素含有量の測定方法に従うものとする。)を求め、計算から得られるアミノ基の当量数に対して0.96当量倍のジメチル硫酸で4級化反応を行う。具体的にはエステル化反応終了物300gを1Lフラスコに仕込み、窒素を導入しながら攪拌下50℃まで加熱昇温する。滴下ロートより全アミノ基窒素含有量から求めたアミノ基の当量数に対して0.96当量倍のジメチル硫酸を1時間かけて滴下し、50℃でさらに2時間攪拌した。反応終了後、エタノールで希釈した。
【0107】
得られた生成物をHPLC法で各成分の組成比を分析し、臭化テトラオクチルアンモニウムを内部標準物質として使用し定量した結果、得られた生成物は、(a)成分である(a-2)成分を75質量%、エタノール10質量%、4級化されていないエステル化反応物(メチル硫酸塩として)12質量%、未反応Ra2COOHを2質量%、微量のトリエタノールアミン4級化物及びその他微量成分を含み、(a-2)成分のうち一般式(1)において、R3及びR4が-C2H4OHであり、R5がメチル基であって、X-がメチル硫酸イオンである化合物が(a-2)成分中28質量%、一般式(1)において、R3がRa2-COO-C2H4-であり、R4が-C2H4OHであり、R5がメチル基であって、X-がメチル硫酸イオンである化合物が(a-2)成分中56質量%、一般式(1)において、R3及びR4がRa2-COO-C2H4-であり、R5がメチル基であって、X-がメチル硫酸イオンである化合物が(a-2)成分中16質量%であった(表4)。また(a-2)成分と4級化されていないエステル化反応物から算出(75÷(75+12))した4級化率は86質量%であった。
【0108】
【0109】
(b)成分
表5に記載の香料化合物を記載の配合量で含む香料組成物(A)、を(b)成分として用いた。
【0110】
【0111】
(c)成分
(c)成分の非イオン性界面活性剤としては、オキシエチレン基の平均付加モル数が30モルであるポリオキシエチレンラウリルエーテルを用いた。
【0112】
(d)成分
(d)成分のシリカカプセルに内包する香料組成物(B)として、表6に示す香料化合物を記載の含有量で含む香料組成物を用いた。香料組成物(B)中の ClogP2.0以上5.0以下、且つ、蒸気圧0.01Pa以上8.00Pa以下の香料化合物の割合は、31.5質量%である。
【0113】
【0114】
<合成例3:(d)成分の合成>
(工程1)
1.49gのコータミン60W(商品名、花王株式会社製、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、有効分30質量%)を88.52gのイオン交換水で希釈して水相成分を得た。この水相成分に、24.13gの前記表1に示す配合割合の香料成分(1)と6.01gのテトラエトキシシラン(以下、「TEOS」ともいう)を混合して調製した油相成分を加え、ホモミキサー(HsiangTai製、モデル:HM-310、以下同様)を用いて回転数6,500rpmを5分、更に回転数8,000rpmを5分の条件にて混合液を乳化し、乳化液を得た。この時の乳化滴のメジアン径D50は1.09μmであった。
得られた乳化液のpHを0.2N塩酸を用いて3.7に調整した後、撹拌翼と冷却器を備えたセパラブルフラスコに移し、液温を30℃に保ちつつ、24時間撹拌し、香料組成物(A)からなるコアとシリカからなる第一シェルとを有するシリカカプセル(1)を含有する水分散体を得た。
(工程2)
工程1で得られた水分散体100.22gに対し、水305.58gを添加して得られる混合液を液温30℃で撹拌しながら、24gのTEOSを添加した。24時間撹拌を続けた後に冷却することにより、第一シェルを包接する第二シェルを形成し、香料成分(1)が非晶質シリカで内包されたシリカカプセル(2)を含有する水分散体を得た。シリカカプセル(2)のメジアン径D50は3.0μmであった。乳化滴及びシリカカプセル(2)のメジアン径D50は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置「LA-960」(商品名、株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。測定はフローセルを使用し、媒体は水、屈折率は1.40-0iに設定した。乳化液又はシリカカプセルを含む水分散体をフローセルに添加し、透過率が90%付近を示した濃度で測定を実施し、体積基準でメジアン径D50を求めた。
なお、第一シェルの厚さは約5nmであり、第二シェルの厚さは5~30nmであった。
【0115】
用いた(e)成分、(f)成分、(g)成分及び(i)成分は、以下の通りである。
(e)成分:塩化カルシウム。
(f)成分:クエン酸。
(g)成分:プロキセルBDN(アーチ・ケミカル・ジャパン社製)。
(i)成分:メチルグリシン二酢酸三ナトリウム。
【0116】
(h)成分
(h)成分は下記合成例4で製造した、ジメチルポリシロキサンの水性エマルジョンを用いた。
<合成例4:(h)の合成>
平均付加モル数5モルのポリオキシエチレンラウリルエーテル5gを、ジメチルポリシロキサン(25℃における粘度500,000mm2/s)300gに高せん断力をかけながら添加し、さらに10分間、高せん断力で攪拌し続けた。その後、イオン交換水を30g添加し、次に平均付加モル数2モルのポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム2g、平均付加モル数40モルのポリオキシエチレンミリスチルエーテル15gを加え、さらに高せん断力下、攪拌を30分間続け、その後、水を248g加えて攪拌し、ジメチルポリシロキサンの水性エマルジョンを得た。該水性エマルジョン中の乳化粒子の体積平均粒径は500nmであった。また、該水性エマルジョン中のジメチルポリシロキサンの含有量は50質量%であった。体積平均粒径は水性エマルジョンをエタノール中に分散させ、電気泳動光散乱光度計(大塚電子(株)製、型式ELS-8000)を用いて、20℃で測定した。
【0117】
<液体柔軟剤組成物の調製>
300mLのガラスビーカー(内径7cm、高さ11cm)に、繊維製品処理剤組成物のできあがり質量が200gになるのに必要な量の90%に相当する量のイオン交換水と、(c)成分、(f)成分、(g)成分、(h)成分、(i)成分を入れ、ウォーターバスを用いてイオン交換水の温度を60±2℃に調温した。
次いで、スリーワンモーター(新東科学株式会社製、「TYPE HEIDON 1200G」)に装着した撹拌羽根(タービン型撹拌羽根、3枚翼、翼長2cm)を前記ビーカーの底面から1cmの高さに設置し、回転数300rpmで撹拌しながら、あらかじめ65℃で溶融、混合した(a)成分である4級アンモニウム化合物を投入した後、60±2℃加熱下、10分間、300rpmにて撹拌した。
次に、5℃のウォーターバスを用いて、混合液の温度が30±2℃になるまで冷却した。これに、(b)成分、(d)成分、及び(e)成分を順次投入し、5分間撹拌した。更に、できあがり質量(200g)となるようにイオン交換水を加え、5分間撹拌して、濃縮液体柔軟剤組成物を得た。なお、pHは3.5に調整した。
以上の方法で各成分比を変えて、実施例1~4及び比較例1~5の組成物を調製した。
なお配合表の数値は(a-1)成分濃度に換算している。
【0118】
【0119】
得られた実施例1~4及び比較例1~5の濃縮液体柔軟剤組成物について、以下の2つの試験を行った。
〔品質確認試験〕
各サンプルをガラス容器に40g充填し、50℃6時間後に30℃18時間となるよう温度プログラムされた恒温槽内に静置した。これを1サイクルとし、30サイクル繰り返し行った後、恒温槽内から取り出した。
ガラス容器ごと液面を動かしながら評価パネラー10名で観察し、以下のように採点した。
+2:保存前と比べてあまり流動性が変わらない。
+1:保存前と比べて増粘するが、流動性はある程度保っている。
0:保存前と比べて大きく増粘し、流動性が低下する。
パネラー10名の採点の平均点を用いて以下のように評価した。
◎:1.6点以上
〇:1.2~1.6点以上
×:1.2点以下
【0120】
〔香り評価〕
あらかじめ、市販の弱アルカリ性洗剤(花王株式会社、アタック)を用いて、肌着(グンゼ株式会社、紳士用丸首半袖シャツ、Lサイズ)17枚を株式会社日立製作所製全自動洗濯機NW-6CYで5回洗浄を繰り返し、室内乾燥することによって過分の薬剤を除去した。1回ごとの洗浄条件は、洗剤濃度0.0667質量%、水道水47L、水温20℃、洗浄10分、ためすすぎ2回、脱水6分とした。
パナソニック株式会社製電気バケツN-BK2-Aに、4Lの水道水に上記保存条件を経た濃縮液体柔軟剤組成物を0.433g(5g/肌着1.5kg)投入し、さらに上述の方法で洗濯した肌着1枚を入れて、5分間撹拌した。
その後、濃縮液体柔軟剤組成物で仕上げた肌着を株式会社日立製作所製二槽式洗濯機の脱水槽で3分脱水を行ってから、20℃、40%RHの部屋にハンガーで吊るして24時間乾燥した後、20℃/60%RHの部屋に1日間保管した。
用意した肌着から20cm×20cmの大きさの布を裁断し、香り評価パネラー10名による香り評価に用いた。乾燥後の布の香り評価を以下の評価基準で行った。
<評価基準>
3:香りをしっかり感じる。
2:香りをやや感じる。
1:香りをほとんど感じない。
パネラーごとに点数を算出し、10名分の平均点を用いて以下のように評価した。
◎:1.6点以上
〇:1.2~1.6点
△:1.2点以下
【0121】
(a)成分の不飽和率が65~90%の実施例1~4では、品質確認試験、香り評価ともに極めて良好な結果が得らえた。一方、(a)成分の不飽和率が38%以下の比較例1~5はいずれも品質確認試験、香り評価のいずれかで良好な結果が得られなかった。比較例3及び5は不飽和率が低いだけでなく、(b)/[(a)+(c)]が0.044及び0.028と低いことも、品質確認試験、香り評価のいずれかで良好な結果が得られなかった要因と考えられる。
【0122】
また、表8に示した香料化合物を配合して製造した(b1)~(b3)を(b)成分とした組成物を用いた配合例(配合例1~3)、並びに、表5の(b)成分を表7とは異なる量用いた配合例(配合例4~6)を表9に示す。
【0123】
【0124】
【手続補正書】
【提出日】2024-06-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記一般式(1)の1種または2種以上の4級アンモニウム化合物を10質量%以上20質量%以下、
(b)香料組成物中にClogPが1以上5以下の1種または2種以上の香料化合物が30質量%以上100質量%以下の割合で含有する1種または2種以上の香料組成物(A)を1.5質量%以上5質量%以下含有する、柔軟剤自動投入用タンクを備えた洗濯機用濃縮液体柔軟剤組成物。
(a)
【化1】
[式中R
1は炭素数14以上22以下の直鎖、分岐または環状のアルキル基またはアルケニル基である。Yは-COO-基または-OCO-基である。R
2は炭素数1以上3以下のアルキレン基である。R
3、R
4は各々独立に炭素数1以上3以下のアルキル基、-R
2-OH、またはR
1-Y-R
2-から選ばれる基である。ここで、R
3及び/またはR
4が、R
1-Y-R
2-のとき、R
1及び/またはR
2は同一または相異なっていてもよい。また、R
3及び/またはR
4が、-R
2-OHのとき、R
2は同一または相異なっていてもよい。R
5は炭素数1以上3以下のアルキル基である。X
-は陰イオン基である。4級アンモニウム化合物(1)が2種以上の場合、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びX
-は相異なっていてもよい。
ただし、4級アンモニウム化合物(1)が1種の場合、R
1の少なくとも1つが直鎖、分岐または環状の炭素数14以上22以下のアルケニル基である。また、4級アンモニウム化合物(1)が2種以上の場合、R
1の少なくとも1つが直鎖、分岐または環状の炭素数14以上22以下のアルケニル基である4級アンモニウム化合物を少なくとも1つ含む。
さらに、下式により定義される不飽和率
[R
1がアルケニル基であるR
1COOHの全質量]/[R
1COOHの全質量]×100(質量%)
が55質量%以上100質量%以下である。
【請求項2】
一般式(1)においてYは-COO-である請求項1記載の柔軟剤自動投入用タンクを備えた洗濯機用濃縮液体柔軟剤組成物。
【請求項3】
さらに(c)下記一般式(2)の1種または2種以上の非イオン性界面活性剤を0.5質量%以上10質量%以下含有する、請求項1に記載の柔軟剤自動投入用タンクを備えた洗濯機用濃縮液体柔軟剤組成物。
(c)R6-O-[(C2H4O)s(C3H6O)t]-H (2)
〔式中、R6は炭素数8以上18以下のアルキル基又はアルケニル基である。s及びtは平均付加モル数であって、sは8以上60以下の数であり、tは0以上5以下の数である。エチレンオキシ(C2H4O)基及びプロピレンオキシ(C3H6O)基は、ランダム型又はブロック型に結合している。〕
【請求項4】
(b)成分の質量に対する(a)成分及び(c)成分の合計質量の割合(b)成分/[(a)成分+(c)成分]が0.05以上0.25以下である請求項3に記載の柔軟剤自動投入用タンクを備えた洗濯機用濃縮液体柔軟剤組成物。
【請求項5】
さらに(d)成分として、香料組成物(B)を内包するマイクロカプセルを有する請求項1に記載の柔軟剤自動投入用タンクを備えた洗濯機用濃縮液体柔軟剤組成物。
【請求項6】
(d)成分のマイクロカプセルが、シリカを含むシェル(第二シェル)と該シェルの内部に香料化合物を含むコア及び該コアを内包するシリカを含むシェル(第一シェル)とを有するマイクロカプセルである、請求項5に記載の柔軟剤自動投入用タンクを備えた洗濯機用濃縮液体柔軟剤組成物。
【請求項7】
(d)成分のマイクロカプセルのメジアン径D50が、0.1μm以上50μm以下である、請求項5または6に記載の柔軟剤自動投入用タンクを備えた洗濯機用濃縮液体柔軟剤組成物。
【請求項8】
R2がエチレン基である請求項1に記載の柔軟剤自動投入用タンクを備えた洗濯機用濃縮液体柔軟剤組成物。
【請求項9】
R5がメチル基であり、X-がメチル硫酸イオンである請求項1に記載の柔軟剤自動投入用タンクを備えた洗濯機用濃縮液体柔軟剤組成物。
【請求項10】
請求項1、3又は5の何れかに記載の柔軟剤自動投入用タンクを備えた洗濯機用濃縮液体柔軟剤組成物を衣類の洗濯時に衣類に接触させる洗濯方法。