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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108439
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】蒸気供給システム及び蒸気供給方法
(51)【国際特許分類】
   F22B 1/18 20060101AFI20240805BHJP
   F01D 19/00 20060101ALI20240805BHJP
   F01K 13/02 20060101ALI20240805BHJP
   F01K 17/04 20060101ALI20240805BHJP
   F02C 6/00 20060101ALI20240805BHJP
   F02C 6/18 20060101ALI20240805BHJP
   F01K 23/10 20060101ALI20240805BHJP
   F22B 33/18 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
F22B1/18 C
F01D19/00 P
F01K13/02 B
F01K17/04 Z
F02C6/00 E
F02C6/18 B
F01K23/10 X
F01K23/10 G
F22B33/18
F22B1/18 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012809
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】高木 一茂
(72)【発明者】
【氏名】岸 真人
(72)【発明者】
【氏名】園田 隆
(72)【発明者】
【氏名】中川 陽介
【テーマコード(参考)】
3G071
3G081
3L021
【Fターム(参考)】
3G071CA01
3G071DA12
3G081BA02
3G081BA11
3G081BC07
3G081DA06
3L021AA05
3L021BA03
3L021DA04
3L021FA02
3L021FA04
(57)【要約】
【課題】GTCCとCO回収装置を組み合わせたプラントにおいて、GTCCの起動時にも十分な蒸気をCO回収装置へ供給することができる制御方法を提供する。
【解決手段】ガスタービンと、排熱回収ボイラと、蒸気タービンとを含む発電プラントが排出する排ガスからCOを回収するCO回収装置へ、前記排熱回収ボイラにて発生させた蒸気を供給する蒸気供給システムであって、発電プラントの起動中は、排熱回収ボイラにて発生させた中圧蒸気を前記CO回収装置に供給する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンと、排熱回収ボイラと、蒸気タービンとを含む発電プラントが排出する排ガスからCOを回収するCO回収装置へ、前記排熱回収ボイラにて発生させた蒸気を供給する蒸気供給システムであって、
前記排熱回収ボイラにて発生させた中圧蒸気を前記CO回収装置に供給する第1系統と、
前記排熱回収ボイラから前記蒸気タービンへ低圧蒸気を供給する低圧系統から前記低圧蒸気の一部を抽気して前記CO回収装置に供給する第2系統と、
前記発電プラントの起動中は、前記第1系統を通じて前記CO回収装置へ蒸気を供給するよう制御する制御装置と、
を備える蒸気供給システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記発電プラントの起動が完了すると、前記第2系統を通じて前記CO回収装置へ供給するよう制御する、
請求項1に記載の蒸気供給システム。
【請求項3】
前記第2系統には前記発電プラントの起動開始時には全閉とされる抽気弁が設けられ、
前記制御装置は、前記低圧系統と前記第2系統の接続位置の圧力が、前記第2系統における前記抽気弁よりも蒸気流れ方向の下流側の圧力を上回ると、前記抽気弁を所定の時間をかけて全開となるまで開く、
請求項2に記載の蒸気供給システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記抽気弁が全開となると、前記第1系統に設けられた減圧弁を全閉とする、
請求項3に記載の蒸気供給システム。
【請求項5】
前記低圧系統における前記第2系統との接続位置よりも蒸気流れ方向の下流側には、前記第2系統によって抽気された低圧蒸気の圧力を制御するための圧力調節弁が設けられ、
前記制御装置は、前記抽気弁の前記下流側の圧力が所定の目標値となるよう前記圧力調節弁の開度を制御する、
請求項3に記載の蒸気供給システム。
【請求項6】
前記第1系統には減圧弁が設けられ、
前記制御装置は、前記中圧蒸気の圧力が所定の目標値まで減圧されるように前記減圧弁の開度を制御する、
請求項1又は請求項2に記載の蒸気供給システム。
【請求項7】
前記低圧系統には、前記低圧蒸気を、前記蒸気タービンをバイパスして排出するバイパス系統が接続され、前記バイパス系統にはバイパス弁が設けられ、
前記制御装置は、前記蒸気タービンを併入した後の前記バイパス弁の位置の圧力の目標値に、前記所定の目標値よりも高い値を設定し、前記バイパス弁の位置の圧力が、当該値となるように前記バイパス弁の開度を制御する、
請求項6に記載の蒸気供給システム。
【請求項8】
前記発電プラントの起動開始時には前記減圧弁は全閉とされ、
前記制御装置は、前記減圧弁の蒸気流れ方向における上流側の圧力が下流側の圧力を上回ると、前記減圧弁を開き、前記所定の目標値に基づく前記減圧弁の開度の制御を開始する、
請求項6に記載の蒸気供給システム。
【請求項9】
前記第1系統に前記中圧蒸気を減温するためのスプレイが設けられた
請求項1又は請求項2に記載の蒸気供給システム。
【請求項10】
前記第1系統と前記第2系統とを所定の位置で接続して、前記第1系統および/又は前記第2系統を通じて供給された蒸気を前記CO回収装置へ供給する第3系統を設け、前記第3系統に前記蒸気を減温するためのスプレイが設けられた
請求項1又は請求項2に記載の蒸気供給システム。
【請求項11】
ガスタービンと、排熱回収ボイラと、蒸気タービンとを含む発電プラントと、前記発電プラントが排出する排ガスからCOを回収するCO回収装置を含むプラントにおいて、前記発電プラントの起動中には、前記排熱回収ボイラにて発生させた中圧蒸気を前記CO回収装置に供給する、蒸気供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、CO回収装置へ蒸気を供給する蒸気供給システム及び蒸気供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンコンバインドサイクル(GTCC:Gas Turbine Combined Cycle)にCO回収装置を組み合わせたプラントが提供されている。特許文献1には、GTCCとCO回収装置を組み合わせたプラントにおいて、蒸気タービン用の熱交換器とは別に、CO回収装置用の補助熱交換器を用意し、CO回収装置へ必要な蒸気を供給する構成が開示されている。この構成の場合、HRSG内の熱交換設計を見直す必要がある。特許文献2には、蒸気タービンとCO回収装置を組み合わせたプラントにおいて、高圧タービンを駆動した蒸気を低圧タービンに導く配管と、この配管から分岐して高圧タービンを駆動した蒸気の一部をCO回収装置へ導く抽気管を備えた構成が開示されている。この構成をGTCCとCO回収装置を組み合わせたプラントに適用すれば、既存のGTCCの構成を大きく変えずにCO回収装置との結合が可能となると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/208416号
【特許文献2】特許第5968176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
GTCCが、定格負荷で運転しているような場合、蒸気タービンを駆動する蒸気の一部をCO回収装置へ供給することによって、CO回収装置では、COの目標回収率を達成する運転が可能である。しかし、GTCCの起動時には、十分な量の蒸気が発生していないため、CO回収装置へ蒸気を供給できず、CO回収率が低下する可能性がある。プラント起動時のように蒸気が不足する場合のために、別途、臨時で蒸気を発生させるための補助ボイラ等を設けることも考えられるが、例えば、コスト面で課題が残る。
【0005】
本開示は、上記課題を解決することができる蒸気供給システム及び蒸気供給方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の蒸気供給システムは、ガスタービンと、排熱回収ボイラと、蒸気タービンとを含む発電プラントが排出する排ガスからCOを回収するCO回収装置へ、前記排熱回収ボイラにて発生させた蒸気を供給する蒸気供給システムであって、前記排熱回収ボイラにて発生させた中圧蒸気を前記CO回収装置に供給する第1系統と、前記排熱回収ボイラから前記蒸気タービンへ低圧蒸気を供給する低圧系統から前記低圧蒸気の一部を抽気して前記CO回収装置に供給する第2系統と、前記発電プラントの起動中は、前記第1系統を通じて前記CO回収装置へ蒸気を供給するよう制御する制御装置と、を備える。
【0007】
本開示の蒸気供給方法は、ガスタービンと、排熱回収ボイラと、蒸気タービンとを含む発電プラントと、前記発電プラントが排出する排ガスからCOを回収するCO回収装置を含むプラントにおいて、前記発電プラントの起動中には、前記排熱回収ボイラにて発生させた中圧蒸気を前記CO回収装置に供給する。
【発明の効果】
【0008】
上述の蒸気供給システム及び蒸気供給方法によれば、GTCCとCO回収装置を組み合わせたプラントにおいて、GTCCの起動時にも十分な蒸気をCO回収装置へ供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】各実施形態に係るプラントの概略図である。
図2】第一実施形態に係るプラント構成の要部の一例を示す第1図である。
図3】第一実施形態に係るプラント構成の要部の一例を示す第2図である。
図4】第一実施形態に係るプラント起動時のGTCC及びCO回収装置の状態量の推移の一例を示す図である。
図5】第二実施形態に係る蒸気供給系統の切り替え制御の一例を示すタイムチャートである。
図6】第二実施形態に係る蒸気供給系統の切り替え制御の一例を示すフローチャートである。
図7】第三実施形態に係る蒸気供給系統の切り替え制御の一例を示すフローチャートである。
図8】第四実施形態に係る蒸気供給系統の切り替え制御の一例を示すフローチャートである。
図9】第五実施形態に係るプラント構成の要部の一例を示す図である。
図10】各実施形態に係る制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(概要)
以下、本開示に係るCO回収装置への蒸気供給制御について、図1図10を参照して説明する。
図1に、GTCC(コンバインドサイクル発電プラント)とCO回収装置を組み合わせたプラントの概略構成を示す。プラント100は、ガスタービン10と、HRSG(Heat Recovery Steam Generator:排熱回収ボイラ)20と、蒸気タービン30と、CO回収装置40と、発電機G1,G2と、制御装置50と、を備える。ガスタービン10には発電機G1が接続され、発電機G1を駆動する。蒸気タービン30には発電機G2が接続され、発電機G2を駆動する。ガスタービン10から排出される排ガスはHRSG20へ送られ、HRSG20にて使用された後にCO回収装置40へ送られる。HRSG20は、排ガスから熱を回収し、高圧蒸気、中圧蒸気、低圧蒸気を生成し、それらを蒸気タービン30へ供給するとともに、低圧蒸気をCO回収装置40の再生塔42へと供給する。また、HRSG20は、熱回収後の排ガスをCO回収装置40へ送出する。CO回収装置40は、吸収塔41と再生塔42を備え、吸収塔41と再生塔42の間で吸収液を循環させることによって、HRSG20から送出された排ガスからCOを抽出する。COの抽出には、熱源として蒸気が必要となるが、プラント100では、熱源として、HRSG20から供給された低圧蒸気が用いられる。CO抽出の過程で使用された低圧蒸気は復水されて低圧温水となり、生成された低圧温水はCO回収装置40からHRSG20へ供給される。このような構成の場合、GTCCが起動してから、HRSG20にて十分な量の低圧蒸気が発生するまでは、CO回収装置40への蒸気の供給ができなくなる。そこで、本実施形態では、HRSG20から中圧蒸気の一部を抽気して、CO回収装置40へ供給する起動用中圧抽気系統L10と、CO回収装置40への蒸気の供給に関し、低圧蒸気をCO回収装置40へ供給する系統と起動用中圧抽気系統L10とを切り替える制御を行う制御装置50と、を設け、GTCC起動時に、低圧蒸気に比べて早期に十分な量の蒸気が発生する中圧蒸気の一部を、起動用中圧抽気系統L10を通じてCO回収装置40へ蒸気を供給するよう制御する。これにより、GTCC起動時にもCO回収装置40へ蒸気を供給することを可能とする。
【0011】
<第一実施形態>
(構成)
図2は、第一実施形態に係るプラント構成の要部の一例を示す第1図である。ガスタービン10の後段に設けられたHRSG20は、低圧節炭器21Lと、中圧節炭器21Iと、高圧節炭器21Hと、低圧蒸発器22Lと、中圧蒸発器22Iと、高圧蒸発器22Hと、低圧過熱器23Lと、中圧過熱器23Iと、高圧過熱器23Hと、再熱器24と、低圧ドラム25Lと、中圧ドラム25Iと、高圧ドラム25Hと、を備える。蒸気タービン30は、高圧タービン31と、中圧タービン32と、低圧タービン33と、を備える。低圧過熱器23Lからは系統L1を通じて低圧タービン33へ低圧蒸気が供給される。系統L1には、CO回収装置40へ通じる系統L2が接続されており、低圧過熱器23Lから供給される低圧蒸気の一部が分岐して、系統L2を通じてCO回収装置40(再生塔42)へ供給される。さらに系統L1と系統L2の分岐点の上流側(蒸気の流れ方向の上流側、以下、単に上流側、下流側のように記載する。)では、系統L1から分岐する系統L3が設けられ、系統L3には低圧タービンバイパス弁V1が設けられている。プラント起動時の低圧蒸気発生量が少ない時間帯には、低圧タービンバイパス弁V1が開とされ、低圧蒸気は、低圧タービン33をバイパスし、系統L3を通じて不図示の復水器へと送られる。系統L1と系統L2の分岐点には圧力計P3が設けられ、系統L1における圧力計P3が設けられた分岐点の上流側には、低圧蒸気加減弁V2が設けられ、下流側にはCCP入口圧力調節弁V4が設けられている(CCPはCO回収装置を示す。)。また、系統L2の下流側には、CO回収装置40へ供給される低圧蒸気の圧力を計測する圧力計P2が設けられ、系統L2における圧力計P2と圧力計P3の間には低圧蒸気抽気弁V3が設けられる。また、例えば、圧力計P2が設けられた位置付近には、低圧蒸気温度を適切な温度に調節する(冷やす)ための減温スプレイSP1が設けられている。
【0012】
高圧過熱器23Hからは系統L4を通じて高圧タービン31へ高圧蒸気が供給される。系統L4には、高圧蒸気の流量を調節する高圧主蒸気加減弁V6が設けられている。系統L4には系統L5が接続され、系統L5には高圧タービンバイパス弁V7が設けられている。高圧タービンバイパス弁V7を開とすると、高圧蒸気は高圧タービン31をバイパスし、系統L5を通じて中圧過熱器23Iの出口側へと流れる。高圧タービン31へ供給された高圧蒸気は、系統L6を通じて再熱器24へ戻される。系統L6には、系統L5と中圧過熱器23Iの出口側の系統L11が合流する。
【0013】
再熱器24からは系統L7を通じて中圧タービン32へ中圧蒸気が供給される。管L7には、中圧蒸気の流量を調節する中圧蒸気加減弁V8が設けられている。系統L7には系統L8が接続され、系統L8には中圧タービンバイパス弁V9が設けられている。中圧タービンバイパス弁V9を開とすると、中圧蒸気は中圧タービン32をバイパスし、系統L8を通じて不図示の復水器へと流れる。中圧タービン32へ供給された中圧蒸気は、系統L9(クロスオーバー管)を通じて系統L1の圧力計P3が設けられた位置に導かれ、低圧タービン33やCO回収装置40へ供給される低圧蒸気と合流する。系統L7の系統L8との分岐点より上流側には、圧力計P4が設けられている。また、圧力計P4が設けられた位置において、CO回収装置40への蒸気の供給系統である系統L2へ通じる起動用中圧抽気系統L10が接続される。起動用中圧抽気系統L10には、起動用中圧蒸気減圧弁V5が設けられている、起動用中圧抽気系統L10は、GTCCの起動時にCO回収装置40に蒸気を供給するために設けられた系統である。起動用中圧抽気系統L10における起動用中圧蒸気減圧弁V5の下流側には、圧力計P1が設けられる。圧力計P1が設けられる位置付近には、中圧蒸気の温度を適切な温度に調節する(冷やす)ための減温スプレイSP2が設けられている。起動用中圧抽気系統L10は、供給部C1にて系統L2と接続する。HRSG20が発生させた蒸気は、供給部C1を通じて、CO回収装置40へ供給される。
【0014】
制御装置50は、圧力計P1~P4によって計測された値を取得し、低圧タービンバイパス弁V1、低圧蒸気加減弁V2、低圧蒸気抽気弁V3、CCP入口圧力調節弁V4、起動用中圧蒸気減圧弁V5、高圧主蒸気加減弁V6、高圧タービンバイパス弁V7、中圧蒸気加減弁V8、中圧タービンバイパス弁V9の開度を制御する。
【0015】
図2に示す構成例では、再熱器24の出口と、CO回収装置40への蒸気の供給系統である系統L2とを接続するように起動用中圧抽気系統L10を設ける例を示した。起動用中圧抽気系統L10は、図3に示すように、中圧過熱器23Iの出口側と系統L2を接続するように設けることもできる。
【0016】
図3は、第一実施形態に係るプラント構成の要部の一例を示す第2図である。図3に示す構成例では、圧力計P4が中圧タービン32へ中圧蒸気を供給する系統L7ではなく、中圧過熱器23I出口側の系統L11(中圧ドラム25Iで発生した中圧蒸気の出力系統)と系統L5と系統L6の合流点に設けられる。そしてこの合流点と系統L2とを供給部C1にて接続するように起動用中圧抽気系統L10が設けられる。
【0017】
上述の通り、GTCC起動時にはCO回収装置40に供給できるだけの蒸気が発生しておらず、CO回収率が低下する可能性がある。また、図4のグラフ404に示すように、低圧蒸気については、GTCCが起動した後、十分な蒸気流量を確保するまでに時間がかかる。そこで、従来はGTCCの起動時にタービンバイパスによって不図示の復水器経由で系外に放出していた中圧蒸気を、起動用中圧抽気系統L10を通じて、CO回収装置40に供給する。これにより、GTCC起動中にCO回収装置40へ供給する蒸気流量を確保する。図4のグラフ403に示すように、中圧蒸気については、低圧蒸気と比較すればより早期に十分な蒸気量がHRSG20にて発生する。これをCO回収装置40へ供給することにより、GTCC起動時のCO回収率の向上が期待できる。また、図2図3に示した起動用中圧抽気系統L10は、HRSG20の熱交換器外部に配管系統を追加する改造であるため、HRSG20そのものの設計変更は不要となり、HRSG20の設計コストや製造コストの増加を防ぐことができる。
【0018】
図4にプラント起動時のGTCC及びCO回収装置の状態量の推移の一例を示す。図4の各グラフの縦軸は各状態量の大きさを表し、横軸は時間を表す。横軸の同じ位置は同じ時刻を表す。グラフ401はガスタービン10の回転数の推移を示す。ガスタービン10へ着火し、GTCCを起動すると、ガスタービン10の回転数が上昇してゆく。グラフ402はガスタービン10の出力の推移を示す。ガスタービン10の回転数が所定値に達すると発電機G1と接続される(併入)。ガスタービン10の併入により発電機G1が駆動し、出力が増加する。その後、HRSG20での蒸気の発生に伴い、蒸気タービン30の回転数が上昇し、発電機G2と接続(併入)されるとガスタービン10と蒸気タービン30の出力をさらに増加させる。グラフ403は低圧蒸気流量の推移を示し、グラフ404は中圧蒸気流量の推移を示す。図示するようにガスタービン10への着火後、しばらくして低圧蒸気流量と中圧蒸気流量の増加が開始するが、中圧蒸気流量は、低圧蒸気流量に比べて蒸気流量の増加速度が速い。この性質を利用して、起動用中圧抽気系統L10を通じて中圧蒸気をCO回収装置40へ供給することで、CO回収装置40ではGTCC起動後、早期に必要流量を確保することができる。グラフ405はガスタービン10が排出する排ガス流量の推移を示す。グラフ406はCO回収装置40における吸収液の流量の推移を示し、グラフ407はCO回収装置40における必要蒸気流量の推移を示す。ガスタービン10の出力増加に伴って排ガス流量も増加する。吸収液の流量と必要蒸気量は、ガスタービン10からの排ガス流量の増加に伴って増加する。
【0019】
(制御方法の概要)
GTCCの起動時には起動用中圧抽気系統L10に設けられた起動用中圧蒸気減圧弁V5を開くことで再熱器24(図2の構成)または中圧過熱器23Iの出口側(図3の構成)から中圧蒸気を抽気し、CO回収装置40へ供給する。一方で、GTCCの起動が完了した後には、起動用中圧蒸気減圧弁V5を閉とし、起動用中圧抽気系統L10は使用せず、起動用中圧抽気系統L10に代えて、系統L1通じて低圧蒸気を系統L2へ供給し、CO回収装置40へ低圧蒸気を供給する。また、CO回収装置40へは、低圧蒸気を供給する必要があるため、GTCC起動時には、起動用中圧蒸気減圧弁V5の開度を調節することによって、起動用中圧抽気系統L10の中圧蒸気の圧力を低圧まで減圧する。例えば、CO回収装置40へ供給する蒸気の圧力の目標値(例として一定の圧力)を設定し、圧力計P1が計測する圧力が目標値となるように、起動用中圧蒸気減圧弁V5の開度をフィードバック制御する。また、中圧蒸気は比較的高温であるため、減温スプレイSP2から水を噴射して、CO回収装置40への供給部C1の手前で減温し、供給部C1に合流させる。GTCCの起動が完了し、低圧蒸気抽気系統(低圧蒸気抽気系統とは、系統L1から低圧蒸気を抽気して系統L2を通じてCO回収装置40へ蒸気を供給する系統のこと。)に切り替えた後は、低圧タービン33の入口側に設けられたCCP入口圧力調節弁V4の開度を調節することにより、系統L2に供給する蒸気の圧力を目標値に保ち、CO回収装置40が安定してCOを回収することができるようにする。起動用中圧抽気系統L10と低圧蒸気抽気系統を切り替える制御の詳細については第二実施形態~第四実施形態で説明する。
【0020】
(効果)
以上説明したように、起動用中圧抽気系統L10を設け、GTCC起動時には、起動用中圧抽気系統L10を通じて蒸気をCO回収装置40へ供給するように構成することで、CO回収に必要な蒸気量を確保することができる。これにより、CO回収装置40では、GTCCの起動時であってもCOの回収率を高く維持することができる。また、従来のGTCCにおいても補助ボイラ自体が設けられている場合があるが、CO回収装置40向けに、補助ボイラの容量を増大する必要が無い。起動用中圧抽気系統L10を設けることについて、HRSG20はGTCC単独プラントの場合と同等の設計でよく、設計コストや製造コストの増大を抑制することができる。
【0021】
<第二実施形態>
第二実施形態では、図5図6を参照して、起動時に使用する起動用中圧抽気系統L10と、常用運転時に使用する低圧蒸気抽気系統の切り替えの制御の一例について説明する。図5に蒸気供給系統の切り替え制御に関する状態量や弁開度のタイムチャートの一例を示す。図5の各グラフの縦軸は各状態量や弁開度の大きさを表し、横軸は時間を表す。横軸の同じ位置は同じ時刻を表す。GTCC起動時には、ST通気、ST併入、常用蒸気系統使用開始、系統切替の各イベントが発生する。ST通気は、低圧タービンバイパス弁V1、中圧タービンバイパス弁V9、高圧タービンバイパス弁V7を閉として、HRSG20で発生させた低圧蒸気、中圧蒸気、高圧蒸気の蒸気タービン30への供給を開始することである。ST併入は、蒸気タービンを発電機G2に接続することである。常用蒸気系統使用開始は、低圧蒸気抽気系統からCO回収装置40への低圧蒸気の供給を開始することである。以下に説明するように、起動用中圧抽気系統L10から低圧蒸気抽気系統へ完全に切り替えるまでの間、両系統を併用する期間が存在する。系統切替は、低圧蒸気抽気弁V3を全開して、起動用中圧抽気系統L10から低圧蒸気抽気系統へ完全に切り替えることである。
【0022】
グラフ501はガスタービン10の回転数(GT回転数)の推移を示し、グラフ502は蒸気タービン30の回転数(ST回転数)の推移を示す。図示するようにガスタービン10に遅れて蒸気タービン30が起動し、ST通気により徐々に蒸気タービン30の回転数が上昇する。蒸気タービン30の回転数が所定値に達すると、ST併入が行われる。グラフ503は、低圧蒸気抽気弁V3の開度の推移を示す。低圧蒸気抽気弁V3は、常用蒸気系統使用開始前は全閉とされ、常用蒸気系統使用開始のタイミングで開度を増加させてゆき、系統切替時には全開となるように制御される。グラフ504は、中圧蒸気加減弁V8の開度の推移を示す。中圧蒸気加減弁V8は、ST通気のタイミングで開とされ、その後、徐々に開き、やがて全開とされる。グラフ505は、CCP入口圧力調節弁V4の開度の推移を示す。CCP入口圧力調節弁V4は、系統切替が行われるまでの間、一定の開度で固定する。例えば、低圧タービン33に蒸気を流すことができるよう、CCP入口圧力調節弁V4の開度を全開、または、部分開度に設定する。また、系統切替後には、制御装置50は、圧力計P2が計測する圧力が一定(目標値)となるようにCCP入口圧力調節弁V4の開度を制御する。グラフ506は、起動用中圧蒸気加減弁V5の開度の推移を示す。GTCC起動直後からST併入までは、低圧タービンバイパス弁V1を開として低圧蒸気をバイパスし、蒸気加減弁V2が十分開いていないことから低圧系統V1の蒸気は使用できない。その為、低圧蒸気抽気弁V3は全閉状態とし(グラフ503)、起動用中圧蒸気加減弁V5を開として、CO回収装置40へ供給する全ての蒸気を、起動用中圧抽気系統L10を通じて供給する。起動用中圧蒸気加減弁V5は、系統切替が行われるまでの間、圧力計P1が計測する圧力が一定となるように開度制御され、系統切替後は全閉とされる。制御装置50は、圧力計P1の値を目標圧力に保つよう、例えば、PID制御等のフィードバック制御により起動用中圧蒸気加減弁V5の開度を調整する。グラフ507は、圧力計P2が計測する圧力の推移を示し、グラフ508は、圧力計P3が計測する圧力の推移を示す。ST併入前は、圧力計P2の圧力は高く、圧力計P3の圧力は低い、ST併入により、系統L1と系統L9(クロスオーバー管)を通じて蒸気が流れるようになると圧力計P3の圧力は徐々に上昇し、圧力計P2の圧力は低下してゆく、圧力計P3の圧力が圧力計P2の圧力を超えると、低圧蒸気抽気弁V3を開き、低圧蒸気のCO回収装置への供給を開始する(常用蒸気系統使用開始)。低圧蒸気抽気弁V3を開いた後も起動用中圧蒸気減圧弁V5の圧力制御は継続するが、流入する低圧蒸気の増加に従って弁が閉まる方向に制御され、低圧蒸気抽気弁V3が全開になったら、起動用中圧蒸気減圧弁V5は全閉させる(グラフ506)。低圧蒸気抽気弁V3が全開になったら、制御装置50は、圧力計P2の圧力が目標値となるように、CCP入口圧調弁V4の開度を調整する(グラフ505)。
【0023】
(動作)
図6を参照して、第二実施形態に係る蒸気供給系統の切り替え制御の流れを説明する。
まず、制御装置50は、低圧蒸気抽気弁V3を全閉とし、CCP入口圧力調整弁V4の開度を所定の固定開度とし、起動用中圧蒸気減圧弁V5の開度については、圧力計P1が計測する圧力が所定の目標値となるよう制御する(ステップS1)。この状態でGTCCが起動される。制御装置50は、圧力計P1~P4によって計測された値を監視しながら、圧力計P3が計測した圧力が、圧力計P2が計測した圧力を上回るかどうかを判定する(ステップS4)。圧力計P3が計測した圧力が、圧力計P2が計測した圧力以下の場合(ステップS4;No)、制御装置50は、ステップS1の制御を継続する。圧力計P3が計測した圧力が、圧力計P2が計測した圧力を上回ると(ステップS4;Yes)、制御装置50は低圧蒸気抽気弁V3の開度が全開となるように制御する(ステップS5)。制御装置50は、全閉状態の低圧蒸気抽気弁V3を例えば一定の速度で開いてゆく。制御装置50は、低圧蒸気抽気弁V3が全開となったかどうか判定する(ステップS6)。低圧蒸気抽気弁V3が全開となると(ステップS6;Yes)、制御装置50は、起動用中圧蒸気減圧弁V5が全閉となるように制御する(ステップS7)。制御装置50は、起動用中圧蒸気減圧弁V5を徐々に閉じて全閉とする。ステップS7と並行して、制御装置50は、圧力計P2が計測する圧力が所定の目標値となるよう、CCP入口圧力調整弁V4の開度を制御する(ステップS8)。
【0024】
(効果)
第二実施形態によれば、CO回収装置40へ蒸気を供給する系統を、起動用中圧抽気系統L10から低圧蒸気抽気系統へ切り替えることができる。また、切り替え中も蒸気供給圧力を維持し、過渡的な蒸気供給流量の低下を防ぐことができる。
【0025】
<第三実施形態>
第二実施形態で説明した制御では、低圧蒸気抽気弁V3の前後の圧力が、圧力計P3で計測した圧力>圧力計P2で計測した圧力の条件を満たした場合に低圧蒸気抽気弁V3を開くこととしていた。従来のGTCC制御では、低圧タービン33の入口側圧力を調節するために、ST併入後も低圧タービンバイパス弁V1を開ける場合がある。すると、タービンバイパスによって蒸気が逃げてしまい、圧力計P3が計測する圧力が上昇せず、上記の条件が満たされないことによって系統切替が完了しない可能性がある。そこで、第三実施形態では、ST併入後の低圧タービンバイパス弁V1の圧力制御設定値を少なくともCCP入口圧力設定値、即ち、起動用中圧蒸気加減弁V5の圧力制御の目標値(圧力計P1が計測する圧力に対する目標値)よりも高い値に設定する。つまり、低圧タービンバイパス弁V1付近の圧力が高い状態を維持するために、低圧タービンバイパス弁V1があまり開かない状態となる。これにより、ST併入後も一定以上の低圧蒸気が加減弁V2を通過し、圧力計P3が計測する圧力が上昇し、圧力計P3の圧力>圧力計P2の圧力の条件を満たすようになる。
【0026】
(動作)
図7を参照して、第三実施形態に係る蒸気供給系統の切り替え制御の流れを説明する。まず、制御装置50は、低圧蒸気抽気弁V3を全閉とし、CCP入口圧力調整弁V4の開度を所定の固定開度とし、起動用中圧蒸気減圧弁V5の開度については、圧力計P1が計測する圧力が所定の目標値となるよう制御する(ステップS1)。この状態でGTCCが起動される。次に制御装置50は、ST併入が完了した稼働かを判定する(ステップS2)。ST併入が完了するまでは、制御装置50は、ステップS1の制御を継続する。ST併入が完了すると(ステップS2;Yes)、制御装置50は、低圧タービンバイパス弁V1の圧力制御目標値をCCP入口圧力設定値よりも高い値に切り替える(ステップS3)。制御装置50は、低圧タービンバイパス弁V1を流れる低圧蒸気の圧力が、圧力計P1が計測する圧力について設定されている目標値よりも高く設定された所定の目標値となるよう低圧タービンバイパス弁V1の開度を制御する。
【0027】
次に制御装置50は、圧力計P1~P4によって計測された値を監視しながら、圧力計P3が計測した圧力が、圧力計P2が計測した圧力を上回るかどうかを判定する(ステップS4)。圧力計P3が計測した圧力が、圧力計P2が計測した圧力以下の場合(ステップS4;No)、制御装置50は、ステップS3の制御を継続する。圧力計P3が計測した圧力が、圧力計P2が計測した圧力を上回ると(ステップS4;Yes)、制御装置50は低圧蒸気抽気弁V3の開度が全開となるように制御し(ステップS5)、低圧蒸気抽気弁V3が全開となると(ステップS6;Yes)、起動用中圧蒸気減圧弁V5が全閉となるように制御するとともに(ステップS7)、圧力計P2が計測する圧力が所定の目標値となるよう、CCP入口圧力調整弁V4の開度を制御する(ステップS8)。
【0028】
第三実施形態の制御は、図7に例示したものに限定されない。例えば、ST併入といったイベントに関係なく、もともと低圧タービンバイパス弁V1の圧力制御設定値をCCP入口圧力設定値(P1に関する目標値)よりも高い値として設定しておいてもよい。あるいは、低圧タービンバイパス弁V1の圧力制御目標値を切り替える代わりに、低圧タービンバイパス弁V1を全閉とすることも考えられる。低圧タービン33入口側の圧力に制限が無い場合(圧力が高くなってもよい)、ST併入の完了後に低圧タービンバイパス弁V1を全閉とすることによって、圧力計P3の圧力>圧力計P2の圧力の条件が成立しないために切り替えが完了しないという課題を解決することができる。
【0029】
(効果)
第三実施形態によれば、第二実施形態の効果に加え、圧力計P3が計測する圧力の上昇を促すことで、確実に蒸気供給系統の切り替えを完了させることが可能となる。
【0030】
<第四実施形態>
第四実施形態では、起動用中圧蒸気減圧弁V5の抽気開始条件を設定し、この条件が成立すると、起動用中圧蒸気減圧弁V5を開き、圧力計P1が計測する圧力に基づく開度制御を開始する。
【0031】
(動作)
図8を参照して、第四実施形態に係る蒸気供給系統の切り替え制御の流れを説明する。まず、制御装置50は、低圧蒸気抽気弁V3を全閉とし、CCP入口圧力調整弁V4の開度を所定の固定開度とし、起動用中圧蒸気減圧弁V5を全閉とする(ステップS1a)。この状態でGTCCが起動される。制御装置50は、圧力計P1~P4によって計測された値を監視しながら、圧力計P4が計測した圧力が、圧力計P1が計測した圧力を上回るかどうかを判定する(ステップS2a)。GTCCの起動時にはこの条件は成立せず、中圧ドラム25I等で蒸気の生成が盛んになると、この条件が成立するようになる。圧力計P4が計測した圧力が、圧力計P1が計測した圧力以下の場合(ステップS2a;No)、制御装置50は、ステップS1aの制御を継続する。圧力計P4が計測した圧力が、圧力計P1が計測した圧力を上回ると(ステップS2a;Yes)、制御装置50は、起動用中圧蒸気減圧弁V5を開き、圧力計P1が計測する圧力が所定の目標値となるように起動用中圧蒸気減圧弁V5の開度を制御する(ステップS3a)。起動用中圧蒸気減圧弁V5の上流側の圧力が下流側の圧力よりも高くなってから起動用中圧蒸気減圧弁V5を開くことで逆流などを防ぐことができる。
【0032】
次に制御装置50は、圧力計P3が計測した圧力が、圧力計P2が計測した圧力を上回るかどうかを判定する(ステップS4)。圧力計P3が計測した圧力が、圧力計P2が計測した圧力以下の場合(ステップS4;No)、制御装置50は、ステップS3の制御を継続する。圧力計P3が計測した圧力が、圧力計P2が計測した圧力を上回ると(ステップS4;Yes)、制御装置50は、低圧蒸気抽気弁V3の開度が全開となるように制御し(ステップS5)、低圧蒸気抽気弁V3が全開となると(ステップS6;Yes)、起動用中圧蒸気減圧弁V5が全閉となるように制御するとともに(ステップS7)、圧力計P2が計測する圧力が所定の目標値となるよう、CCP入口圧力調整弁V4の開度を制御する(ステップS8)。
【0033】
(効果)
第四実施形態によれば、中圧蒸気の供給元の圧力が十分高くなってから抽気を開始することで、逆流事象を防止することができる。上記説明では、第二実施形態の制御と組み合わせる場合を例に説明を行ったが、第四実施形態は、第三実施形態と組み合わせることが可能である。
【0034】
<第五実施形態>
第五実施形態では、起動用中圧抽気系統L10と、系統L2が合流する位置を図2図3の供給部C1よりも上流側に設ける。図9に、起動用中圧抽気系統L10と系統L2が合流する部分の系統図を示す。図示するように、起動用中圧抽気系統L10を、圧力計P2を設けた位置に接続する。図2図3の構成の場合、系統L2、系統L3のそれぞれに減温スプレイSP1、SP2を設ける必要があるが、図9に示す構成の場合、例えば、供給部C1に減温スプレイSP3を設けることで、CO回収装置40へ供給する蒸気の減温が可能になる。
【0035】
(効果)
第五実施形態によれば、スプレイ系統の個数を2系統から1系統に削減することができ、配管や弁のコスト削減が可能になる。第五実施形態に係る構成は、第二実施形態~第四実施形態の何れの制御とも組み合わせることが可能である。
【0036】
以上説明したように、第一実施形態~第五実施形態によれば、GTCCとCO回収装置を組み合わせたプラントにおいて、GTCCの起動時にも十分な蒸気をCO回収装置へ供給することができる。
【0037】
図10は、各実施形態に係る制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、入出力インタフェース904、通信インタフェース905を備える。上述の制御装置50は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。
【0038】
制御装置50の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各機能部による処理を行ってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、CD、DVD、USB等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0039】
以上のとおり、本開示に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0040】
<付記>
各実施形態に記載の蒸気供給システム及び蒸気供給方法は、例えば以下のように把握される。
【0041】
(1)第1の態様に係る蒸気供給システムは、ガスタービン10と、排熱回収ボイラ(HRSG20)と、蒸気タービン30とを含む発電プラント(GTCC)が排出する排ガスからCOを回収するCO回収装置40へ前記排熱回収ボイラにて発生させた蒸気を供給する蒸気供給システムであって、前記排熱回収ボイラにて発生させた中圧蒸気を前記CO回収装置に供給する第1系統(L10)と、前記排熱回収ボイラから前記蒸気タービンへ低圧蒸気を供給する低圧系統(L1)から前記低圧蒸気の一部を抽気して前記CO回収装置に供給する第2系統(L2)と、前記発電プラントの起動中は、前記第1系統を通じて前記CO回収装置へ蒸気を供給するよう制御する制御装置50と、を備える。
これにより、GTCCとCO回収装置を組み合わせたプラントにおいて、GTCCの起動時にも十分な蒸気をCO回収装置へ供給することができる。
【0042】
(2)第2の態様に係る蒸気供給システムは、(1)の蒸気供給システムであって、前記制御装置50は、前記発電プラントの起動が完了すると、前記第2系統を通じて前記CO回収装置へ供給するよう制御する。
これにより、十分な量の低圧蒸気が生成されるようになった後には、CO回収装置が必要とする低圧蒸気を供給することができる。
【0043】
(3)第3の態様に係る蒸気供給システムは、(1)~(2)の蒸気供給システムであって、前記第2系統には前記発電プラントの起動開始時には全閉とされる抽気弁(V3)が設けられ、前記制御装置は、前記低圧系統(L1)と前記第2系統(L2)の接続位置の圧力(P3)が、前記第2系統における全閉とされた前記抽気弁(V3)よりも蒸気流れ方向の下流側の圧力(P2)を上回ると、前記抽気弁を所定の時間をかけて全開となるまで開く。
これにより、低圧蒸気が逆流すること無くCO回収装置へ供給される。
【0044】
(4)第4の態様に係る蒸気供給システムは、(1)~(3)の蒸気供給システムであって、前記制御装置は、前記抽気弁が全開となると、前記第1系統に設けられた減圧弁を全閉とする。
これにより、起動用中圧抽気系統から低圧蒸気抽気系統への系統切り替えが完了する。
【0045】
(5)第5の態様に係る蒸気供給システムは、(3)の蒸気供給システムであって、前記低圧系統における前記第2系統との接続位置よりも蒸気流れ方向の下流側には、前記第2系統によって抽気された低圧蒸気の圧力を制御するための圧力調節弁が設けられ、前記制御装置は、前記抽気弁の前記下流側の圧力が所定の目標値となるよう前記圧力調節弁の開度を制御する。
これにより、CO回収装置へ供給するために必要な蒸気の圧力を維持することができ(常用運転時)。
【0046】
(6)第6の態様に係る蒸気供給システムは、(1)~(5)の蒸気供給システムであって、前記第1系統には減圧弁が設けられ、前記制御装置は、前記中圧蒸気の圧力が所定の目標値まで減圧されるように前記減圧弁の開度を制御する。
これにより、CO回収装置へ供給するために必要な蒸気の圧力を維持することができ(GTCC起動時)。
【0047】
(7)第7の態様に係る蒸気供給システムは、(6)の蒸気供給システムであって、前記低圧系統には、前記低圧蒸気を、前記蒸気タービンをバイパスして排出するバイパス系統が接続され、前記バイパス系統にはバイパス弁が設けられ、前記制御装置は、前記蒸気タービンを併入した後の前記バイパス弁の位置の圧力の目標値に、前記所定の目標値よりも高い値を設定し、前記バイパス弁の位置の圧力が、当該値となるように前記バイパス弁の開度を制御する。
これにより、ST併入後も低圧タービンバイパス弁を開とする運用が取られた場合であっても、起動用中圧抽気系統から低圧蒸気抽気系統への系統切り替えを完了させることができる。
【0048】
(8)第8の態様に係る蒸気供給システムは、(5)~(6)の蒸気供給システムであって、前記発電プラントの起動開始時には前記減圧弁は全閉とされ、前記制御装置は、前記減圧弁の蒸気流れ方向における上流側の圧力が下流側の圧力を上回ると、前記減圧弁を開き、前記所定の目標値に基づく前記減圧弁の開度の制御を開始する。
中圧蒸気の供給元圧が十分高くなってから抽気を開始することで、逆流事象を防止することができる。
【0049】
(9)第9の態様に係る蒸気供給システムは、(1)~(8)の蒸気供給システムであって、前記第1系統に前記中圧蒸気を減温するためのスプレイが設けられている。
これにより比較的高温の中圧蒸気を減温することができる。
【0050】
(10)第10の態様に係る蒸気供給システムは、(1)~(8)の蒸気供給システムであって、前記第1系統と前記第2系統とを所定の位置で接続して、前記第1系統および/又は前記第2系統を通じて供給された蒸気を前記CO回収装置へ供給する第3系統を設け、前記第3系統に前記蒸気を減温するためのスプレイが設けられている。
これにより低圧蒸気用の減温スプレイと中圧蒸気用の減温スプレイとを1つにまとめることができ、コスト削減につながる。
【0051】
(11)第11の態様に係る蒸気供給方法は、ガスタービンと、排熱回収ボイラと、蒸気タービンとを含む発電プラントと、前記発電プラントが排出する排ガスからCO2を回収するCO回収装置を含むプラントにおいて、前記発電プラントの起動中には、前記排熱回収ボイラにて発生させた中圧蒸気を前記CO回収装置に供給する。
【符号の説明】
【0052】
100・・・プラント、10・・・ガスタービン、20・・・HRSG、
21L・・・低圧節炭器、21I・・・中圧節炭器、21H・・・高圧節炭器、
22L・・・低圧蒸発器、22I・・・中圧蒸発器、22H・・・高圧蒸発器、
23L・・・低圧過熱器、23I・・・中圧過熱器、23H・・・高圧過熱器、
24・・・再熱器、25L・・・低圧ドラム、25I・・・中圧ドラム、
25H・・・高圧ドラム、30・・・蒸気タービン、31・・・高圧タービン、
32・・・中圧タービン、33・・・低圧タービン、40・・・CO回収装置、
50・・・制御装置、G1,G2・・・発電機、P1~P4・・・圧力計、
V1・・・低圧タービンバイパス弁、V2・・・低圧蒸気加減弁、
V3・・・低圧蒸気抽気弁、V4・・・CCP入口圧力調節弁、
V5・・・起動用中圧蒸気減圧弁、V6・・・高圧主蒸気加減弁
V7・・・高圧タービンバイパス弁、V8・・・中圧蒸気加減弁
V9・・・中圧タービンバイパス弁、L1~L11・・・系統
900・・・コンピュータ、901・・・CPU、902・・・主記憶装置
903・・・補助記憶装置、904・・・入出力インタフェース、
905・・・通信インタフェース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10