(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108449
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】バッテリ制御装置、バッテリ利用システム、バッテリ制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240805BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20240805BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20240805BHJP
B60L 58/10 20190101ALI20240805BHJP
B60L 53/80 20190101ALI20240805BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20240805BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
H02J7/00 S
H02J7/00 P
H02J7/00 302A
H02H7/18
B60L3/00 S
B60L58/10
B60L53/80
H01M10/44 P
H01M10/48 301
H01M10/48 P
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012827
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 直也
(72)【発明者】
【氏名】阿部 純一郎
(72)【発明者】
【氏名】西沼 卓也
【テーマコード(参考)】
5G053
5G503
5H030
5H125
【Fターム(参考)】
5G053BA01
5G053BA06
5G053CA04
5G053EB01
5G053FA05
5G503BA01
5G503BA02
5G503BB01
5G503CB11
5G503DA08
5G503FA06
5G503GB06
5H030AA01
5H030AS08
5H030BB21
5H030FF22
5H030FF44
5H125AA01
5H125AB03
5H125AC13
5H125BC06
5H125BC26
5H125CD04
5H125EE23
5H125EE25
(57)【要約】
【課題】電流の遮断制御を適切に抑制してバッテリの寿命を延長させることができるバッテリ制御装置、バッテリ利用システム、バッテリ制御方法、およびプログラムを提供すること。
【解決手段】実施形態のバッテリ制御装置において、バッテリから負荷に流れる電流を遮断する遮断部と、前記バッテリの状態に基づいて前記遮断部の作動を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記バッテリの状態が、前記遮断部を作動させるための第1条件よりも条件が緩い第2条件を満たす場合に、前記バッテリからの電力の使用可能容量を減少させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリから負荷に流れる電流を遮断する遮断部と、
前記バッテリの状態に基づいて前記遮断部の作動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記バッテリの状態が、前記遮断部を作動させるための第1条件よりも条件が緩い第2条件を満たす場合に、前記バッテリからの電力の使用可能容量を減少させる、
バッテリ制御装置。
【請求項2】
前記第2条件は、前記バッテリの状態に含まれる前記バッテリの温度が、前記第1条件を満たす温度よりも低い第1閾値以上であることを含む、
請求項1に記載のバッテリ制御装置。
【請求項3】
前記第2条件は、前記バッテリの状態に含まれる前記バッテリの電圧値が、前記第1条件を満たす電圧値よりも大きい第2閾値未満であることを含む、
請求項1に記載のバッテリ制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1条件を満たさず、且つ、前記第2条件を満たす回数をカウントし、カウントした回数を記憶部に記憶させる、
請求項1に記載のバッテリ制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記カウントした回数に応じて、前記使用可能容量の減少度合を調整する、
請求項4に記載のバッテリ制御装置。
【請求項6】
前記バッテリは移動体に搭載され、
前記制御部は、前記バッテリからの電力が移動中の前記移動体に供給されている状態で前記第2条件を満たす場合に、前記使用可能容量を減少させる制御を実行しない、
請求項1に記載のバッテリ制御装置。
【請求項7】
前記バッテリは移動体に搭載され、
前記制御部は、前記バッテリからの電力が前記移動体に供給されている場合に、前記移動体以外に電力が供給されている場合よりも、前記使用可能容量の減少度合を小さくする、
請求項1に記載のバッテリ制御装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のうち何れか1項に記載されたバッテリ制御装置と、
前記バッテリの交換サービスを行う一以上のバッテリ交換装置と、を備え、
前記バッテリは、前記バッテリからの電力を供給する対象機器と着脱可能であり、
前記バッテリ交換装置は、前記対象機器から取り外された前記バッテリを収容して予め収容された他のバッテリと交換する場合に、前記収容したバッテリの使用可能容量との差分が所定範囲内の前記他のバッテリと交換されるように制御する、
バッテリ利用システム。
【請求項9】
コンピュータが、
遮断部によりバッテリから負荷に流れる電流を遮断し、
前記バッテリの状態に基づいて前記遮断部の作動を制御し、
前記バッテリの状態が、前記遮断部を作動させるための第1条件よりも条件が緩い第2条件を満たす場合に、前記バッテリからの電力の使用可能容量を減少させる、
バッテリ制御方法。
【請求項10】
コンピュータに、
遮断部によりバッテリから負荷に流れる電流を遮断させ、
前記バッテリの状態に基づいて前記遮断部の作動を制御させ、
前記バッテリの状態が、前記遮断部を作動させるための第1条件よりも条件が緩い第2条件を満たす場合に、前記バッテリからの電力の使用可能容量を減少させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ制御装置、バッテリ利用システム、バッテリ制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する二次電池に関する研究開発が行われている。これに関連して、バッテリパックに含まれるバッテリセルの充電に際して、セルの内部圧力が増加した場合に遮断動作を行ってセルに電流が流れないようにする電流遮断装置(CID:Current Interruption Device)に関する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、二次電池に関する技術においては、電流遮断装置を作動させるための条件が固定に設定されている場合に、適切な状況で電流を遮断させることができない可能性があった。そのため、バッテリが使用可能な状態であるにもかかわらず使用不可となる場合があるということが課題であった。
【0005】
本願は、上記課題の解決のため、電流の遮断制御を適切に抑制してバッテリの寿命を延長させることができるバッテリ制御装置、バッテリ利用システム、バッテリ制御方法、およびプログラムを提供することを目的としたものである。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るバッテリ制御装置、バッテリ利用システム、バッテリ制御方法、およびプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係るバッテリ制御装置は、バッテリから負荷に流れる電流を遮断する遮断部と、前記バッテリの状態に基づいて前記遮断部の作動を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記バッテリの状態が、前記遮断部を作動させるための第1条件よりも条件が緩い第2条件を満たす場合に、前記バッテリからの電力の使用可能容量を減少させる、バッテリ制御装置である。
【0007】
(2):上記(1)の態様において、前記第2条件は、前記バッテリの状態に含まれる前記バッテリの温度が、前記第1条件を満たす温度よりも低い第1閾値以上であることを含むものである。
【0008】
(3):上記(1)の態様において、前記第2条件は、前記バッテリの状態に含まれる前記バッテリの電圧値が、前記第1条件を満たす電圧値よりも大きい第2閾値未満であることを含むものである。
【0009】
(4):上記(1)の態様において、前記制御部は、前記第1条件を満たさず、且つ、前記第2条件を満たす回数をカウントし、カウントした回数を記憶部に記憶させるものである。
【0010】
(5):上記(4)の態様において、前記制御部は、前記カウントした回数に応じて、前記使用可能容量の減少度合を調整するものである。
【0011】
(6):上記(1)の態様において、前記バッテリは移動体に搭載され、前記制御部は、前記バッテリからの電力が移動中の前記移動体に供給されている状態で前記第2条件を満たす場合に、前記使用可能容量を減少させる制御を実行しないものである。
【0012】
(7):上記(1)の態様において、前記バッテリは移動体に搭載され、前記制御部は、前記バッテリからの電力が前記移動体に供給されている場合に、前記移動体以外に電力が供給されている場合よりも、前記使用可能容量の減少度合を小さくするものである。
【0013】
(8):本発明の他の態様に係るバッテリ利用システムは、請求項1から請求項7のうち何れか1項に記載されたバッテリ制御装置と、前記バッテリの交換サービスを行う一以上のバッテリ交換装置と、を備え、前記バッテリは、前記バッテリからの電力を供給する対象機器と着脱可能であり、前記バッテリ交換装置は、前記対象機器から取り外された前記バッテリを収容して予め収容された他のバッテリと交換する場合に、前記収容したバッテリの使用可能容量との差分が所定範囲内の前記他のバッテリと交換されるように制御する、バッテリ利用システムである。
【0014】
(9):本発明の他の態様に係るバッテリ制御方法は、コンピュータが、遮断部によりバッテリから負荷に流れる電流を遮断し、前記バッテリの状態に基づいて前記遮断部の作動を制御し、前記バッテリの状態が、前記遮断部を作動させるための第1条件よりも条件が緩い第2条件を満たす場合に、前記バッテリからの電力の使用可能容量を減少させる、バッテリ制御方法である。
【0015】
(10):本発明の他の態様に係るプログラムは、コンピュータに、遮断部によりバッテリから負荷に流れる電流を遮断させ、前記バッテリの状態に基づいて前記遮断部の作動を制御させ、前記バッテリの状態が、前記遮断部を作動させるための第1条件よりも条件が緩い第2条件を満たす場合に、前記バッテリからの電力の使用可能容量を減少させる、プログラムである。
【発明の効果】
【0016】
上記(1)~(10)の態様によれば、電流の遮断制御を適切に抑制してバッテリの寿命を延長させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態に係るバッテリ制御装置が適用される車両10の構成の一例を示す図である。
【
図2】バッテリ150の構成の一例を示す図である。
【
図3】バッテリ状態に基づいてバッテリ150から供給される電力の使用可能容量を抑制することについて説明するための図である。
【
図4】生涯使用可能容量AR1と生涯使用可能容量AR2との比較結果を示す図である。
【
図5】バッテリ温度に基づく第1の抑制制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】バッテリ電圧値に基づく第2の抑制制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】バッテリ利用システム1について説明するための図である。
【
図8】バッテリ交換装置200の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明のバッテリ制御装置、バッテリ利用システム、バッテリ制御方法、およびプログラムの実施形態について説明する。なお、以下の例では、バッテリ制御装置が移動体に搭載されているものとして説明する。移動体とは、例えば、二輪車、三輪または四輪等の車両、マイクロモビリティ等を含み、人(運転者等の乗員)が搭乗し、且つ複数のバッテリ(二次電池)から供給される電力によって作動するあらゆる移動体を含んでもよい。以下では、移動体が車両であるものとして説明する。
【0019】
(第1実施形態)
[車両]
図1は、第1実施形態に係るバッテリ制御装置が適用される車両10の構成の一例を示す図である。車両10は、例えば、モータ(電動機)12と、駆動輪14と、ブレーキ装置16と、車両センサ20と、通信装置50と、制御装置60と、給電制御システム100とを備える。
図1に示した車両10は、走行用のバッテリ(二次電池)から供給される電力によって駆動される電動機(電動モータ)によって走行するBEV(Battery Electric Vehicle:電気自動車)である。代替的に、車両10は、ハイブリッド車両に外部充電機能を持たせたPHV(Plug-in Hybrid Vehicle)又はPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)であってもよい。なお、車両10は、例えば、鞍乗り型の二輪の車両であるが、これに限らず四輪の車両や、三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)の車両、アシスト式の自転車、さらには、電動船等、バッテリから供給される電力によって駆動される電動モータによって走行する移動体の全般が含まれる。
【0020】
モータ12は、例えば、三相交流電動機である。モータ12の回転子(ロータ)は、駆動輪14に連結される。モータ12は、バッテリ150が備える蓄電部から供給される電力によって駆動され、回転の動力を駆動輪14に伝達させる。また、モータ12は、車両10の減速時に車両10の運動エネルギーを用いて発電する。
【0021】
ブレーキ装置16は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、を備える。ブレーキ装置16は、ブレーキペダル(不図示)に対する車両10の利用者(運転者)による操作によって発生した油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてもよい。なお、ブレーキ装置16は、上記説明した構成に限らず、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
【0022】
車両センサ20は、例えば、アクセル開度センサと、車速センサと、ブレーキ踏量センサと、を備える。アクセル開度センサは、アクセルペダルに取り付けられ、運転者によるアクセルペダルの操作量を検出し、検出した操作量をアクセル開度として後述する制御装置60に出力する。車速センサは、例えば、車両10の各車輪に取り付けられた車輪速センサと速度計算機とを備え、車輪速センサにより検出された車輪速を統合して車両10の速度(車速)を導出し、制御装置60に出力する。ブレーキ踏量センサは、ブレーキペダルに取り付けられ、運転者によるブレーキペダルの操作量を検出し、検出した操作量をブレーキ踏量として制御装置60に出力する。
【0023】
通信装置50は、セルラー網やWi-Fi網を接続するための無線モジュールを含む。通信装置50は、Bluetooth(登録商標)等利用するための無線モジュールを含んでもよい。通信装置50は、無線モジュールにおける通信によって、車両10に係る種々の情報を、外部装置(例えば、情報管理装置やバッテリ交換装置)との間で送受信する。通信装置50は、例えば、車両10を識別する車両識別番号(vehicle identification number;VIN)又はバッテリ150を識別するバッテリID(バッテリ識別情報)に紐づけて、バッテリセンサ160によって計測されたバッテリ150の電流値、電圧値、温度や制御装置60によって算出されたSOC(State Of Charge;バッテリ充電率)等の計測データを外部装置に送信する。
【0024】
制御装置60は、車両センサ20や通信装置50、給電制御システム100等から得られる情報に基づいて、車両10の各構成全体を制御する。例えば、制御装置60は、車両センサ20が備えるアクセル開度センサからの出力に基づいて、モータ12の駆動を制御する。また、制御装置60は、車両センサ20が備えるブレーキ踏量センサからの出力に基づいて、ブレーキ装置16を制御する。また、制御装置60は、PCU120に給電に関する制御情報を出力したり、車両10に係る種々の情報を通信装置50に送信させる等の制御を行う。制御装置60は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。この構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0025】
給電制御システム100は、例えば、PCU(Power Control Unit)120と、バッテリ150と、バッテリセンサ160と、電圧センサ170とを備える。なお、
図1においては、これらの構成要素を給電制御システム100として一まとまりの構成としたのは、あくまで一例であり、給電制御システム100におけるこれらの構成要素は分散的に配置されてもよい。また、給電制御システム100には、他の構成要素が含まれてもよい。PCU120は、「電力制御部」の一例である。
【0026】
PCU120は、バッテリ150から負荷への電力の供給(放電)を制御する。負荷は、例えば、モータ12であるが、車両10に搭載され、電力の供給によって作動する他の車載機器(例えば、車両センサ20、通信装置50、制御装置60等)が含まれてよい。上述した負荷は、「車両負荷」の一例である。また、実施形態における負荷は、車両10に複数のバッテリ150が接続されている場合に、直列に接続されたバッテリ150の合計電圧値によって作動する機器であってもよい。また、PCU120は、バッテリ150の充電制御や、給電制御システム100内の電流の流れや電圧の制御、システム内の導通状態(オン状態)と遮断状態(オフ状態)の切替制御等を行ってもよい。PCU120は、例えば、CPU等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。この構成要素のうち一部または全部は、LSIやASIC、FPGA、GPU等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0027】
図1の例において、PCU120は、例えば、変換器130と、VCU(Voltage Control Unit)34とを備えるが、他の構成(回路等)が含まれてよい。変換器130は、例えば、AC-DC変換器である。変換器130の直流側端子は、直流リンクDLに接続されている。直流リンクDLには、VCU140を介してバッテリ150が接続されている。変換器130は、モータ12により発電された交流を直流に変換して直流リンクDLに出力する。VCU140は、例えば、DC-DCコンバータである。VCU140は、バッテリ150から供給される電力を昇圧して直流リンクDLに出力する。
【0028】
例えば、制御装置60は、バッテリ150に接続されたバッテリセンサ160からの出力に基づいて、例えば、バッテリ150のSOCを算出し、VCU140に出力する。VCU140は、制御装置60からの指示に応じて、直流リンクDLの電圧を上昇させる。
【0029】
バッテリ150は、例えば、車両10の動力の他、例えば家庭での電源としても活用できるバッテリである。バッテリ150は、例えば、車両10に対して着脱自在に装着されるカセット式等の着脱式バッテリであり、MPP(Mobile Power Pack;モバイルパワーパック)と称される場合がある。車両10には、複数のバッテリ150が搭載され、各バッテリ150からの電力が供給可能な構成になっている。また、複数のバッテリ150は、バッテリパックとして一体に構成されていてもよい。バッテリ150は、車両10の外部の充電設備(不図示)から供給される電力を蓄え、車両10の走行のための放電を行う。また、バッテリ150は、車両10が生成する回生エネルギーによって電力を蓄えてもよい。また、車両10に搭載されたバッテリ150は、他のバッテリ150との交換が可能である。
【0030】
バッテリセンサ160は、バッテリ150の電流や、電圧、温度等の物理量を計測する。バッテリセンサ160は、例えば、電流センサ、電圧センサ、温度センサを備える。バッテリセンサ160は、電流センサによってバッテリ150の電流を計測し、電圧センサによってバッテリ150の電圧を計測し、温度センサによってバッテリ150の温度を計測する。バッテリセンサ160は、計測したバッテリ150の電流値、電圧値、温度等の物理量のデータ(計測データ)を制御装置60や通信装置50に出力する。バッテリセンサ160は、バッテリ150内に設けられてもよい。
【0031】
なお、給電制御システム100には、外部装置と接続するためのコネクタCNが設けられていてもよい。外部装置には、例えば、給電設備や端末装置(例えば、スマートフォンやタブレット端末、ノート型PC(Personal Computer))等が含まれる。端末装置は、「車外負荷」の一例である。外部装置が給電設備である場合、給電制御システム100は、給電設備から供給される電力を、コネクタCNを介してバッテリ150に供給してバッテリ150を充電させる。また、外部装置が端末装置等の場合、給電制御システム100は、バッテリ150からの電力を端末装置に供給する。
【0032】
次に、バッテリ150の構成について説明する、
図2は、バッテリ150の構成の一例を示す図である。
図2に示すバッテリ150は、着脱式バッテリである。バッテリ150は、例えば、蓄電部152と、BMU(Battery Management Unit)154と、接続部156とを備える。BMU154は、「バッテリ制御装置」の一例である。
【0033】
蓄電部152は、充電した電力の蓄電および蓄電した電力の放電をする蓄電池を含んで構成される。蓄電部152に含まれる蓄電池としては、例えば、鉛蓄電池やリチウムイオン電池、全固体電池等の二次電池や、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ、または二次電池とキャパシタとを組み合わせた複合電池等である。
【0034】
BMU154は、蓄電部152の充電や放電を制御したり、電流の流れる方向や電圧値を制御したり、バッテリ150の異常判定を行ったり、バッテリ回路の導通状態と遮断状態とを切り替えるオンオフ制御を実行する。また、BMU154は、バッテリ150の使用可能容量を調整してもよい。BMU154は、例えばPCU120の制御によって、上述の各種制御を実行してもよい。
【0035】
BMU154は、例えば、異常判定部154Aと、遮断部154Bと、制御部154Cと、記憶部154Dとを備える。異常判定部154Aと、遮断部154Bと、制御部154Cとは、例えば、CPU等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSIやASIC、FPGA、GPU等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0036】
記憶部154Dは、上記の各種記憶装置、或いはSSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)等により実現されてもよい。また、記憶部154Dには、例えば、異常判定部154Aによる判定結果や、制御部154Cによる制御内容、バッテリセンサ160による検出結果、プログラム、その他各種情報が格納される。
【0037】
異常判定部154Aは、例えば、バッテリセンサ160によって計測された蓄電部152の電圧、蓄電部152が流す電流、蓄電部152を充電または蓄電部152が放電する際の温度等の蓄電部152の状態を表す計測値に基づいて、蓄電部152に異常があるか否かを判定する。例えば、異常判定部154Aは、計測した電流値、電圧値、または温度のうち少なくとも一つの値が異常値である場合(予め決められた使用可能範囲に含まれない値である場合)に、バッテリ150に異常があると判定する。また、異常判定部154Aは、バッテリセンサ160からの計測値が所定時間以上取得できない場合(センサ異常)にバッテリ150に異常があると判定してもよい。また、異常判定部154Aは、異常値の大きさ(使用可能範囲からの乖離度合)や異常値である値の種類や数に応じた異常の度合を検知してもよい。異常判定部154Aは、異常が検知された場合に、異常が検知されたことを示す情報(異常検知情報)を制御部154Cに出力する。異常検知情報には、バッテリ150の識別情報や、異常の種類、異常の度合等の情報が含まれてよい。なお、異常判定部154Aは、制御部154Cに代えて(または加えて)、記憶部154Dに異常検知情報を記憶させてもよく、PCU120や車両10に搭載された他のバッテリ150に異常検知情報を出力してもよい。異常判定部154Aは、制御部154Cに含まれていてもよい。
【0038】
遮断部154Bは、制御部154Cによる制御に基づいて、蓄電部152から接続部156に流れる電流を遮断し、車両10の負荷への電力供給を遮断する。遮断部154Bは、例えば、CID(Current Interruption Device)である。CIDは、例えば、蓄電部152から接続部156までの電流路を遮断することによって、バッテリ150内の任意の過剰な内圧の増加等に対する保護を目的として使用される。CIDは、不可逆的な機構等によって、遮断後は元の状態(導通状態)に戻らない機構を有する。なお、遮断部154Bは、CIDに限定されるものではなく、抵抗を増加させて電流の流れを抑制したり、切替スイッチ等により電流を遮断してもよい。
【0039】
制御部154Cは、バッテリセンサ160等から得られるバッテリの状態に基づいて、前記遮断部154Bの作動を制御する。また、制御部154Cは、バッテリ150による電流の使用可能容量(蓄電部152から負荷に流れる電流量)を調整してもよい。制御部154Cは、制御内容やバッテリセンサ160による検出結果等を記憶部154Dに記憶させる。
【0040】
次に、第1実施形態の制御部154Cによるバッテリ制御の具体例について説明する。
図3は、バッテリ状態に基づいてバッテリ150から供給される電力の使用可能容量を抑制することについて説明するための図である。
図3において、横軸はバッテリ150(蓄電部152)からの総放電容量[Ah]を示し、縦軸はバッテリ150の使用可能容量[Ah]を示している。また、
図3の例では、制御部154Cによる電力抑制制御(バッテリ150から供給される電力の使用可能容量の抑制制御)を行わない場合の生涯使用可能容量AR1と、電力抑制制御を行った場合の生涯使用可能容量AR2とを示している。
【0041】
例えば、制御部154Cは、バッテリセンサ160の計測データから得られるバッテリ150の状態が、遮断部154Bを作動させるための第1条件を満たす場合に、蓄電部152から接続部156に流れる電流を遮断させるための制御信号を遮断部154Bに出力する。第1条件には、例えば、バッテリ150の温度(以下、「バッテリ温度」と称する)が上限値以上となる場合や、バッテリ150の電圧値(以下、「バッテリ電圧値」と称する)が下限値未満となる場合等が含まれる。なお、上限値や下限値は、例えば、遮断部154Bの作動が必要となるバッテリ温度やバッテリ電圧値に基づいて設定される。上限値や下限値は、固定値でもよく、バッテリ150の種類や特性(性能)に基づいて可変に設定されてもよい。
【0042】
図3の例では、電力抑制制御を行わない場合において、最初(放電開始時)は使用可能容量の最大値Cmaxから放電が開始され、放電するごとに劣化等の影響により使用可能容量は減少する。また、
図3の例では、総放電容量T11となった時点(使用可能容量C11となった時点)で第1条件を満たしたため、遮断部154Bによる電流の遮断が実行されている。この場合、バッテリ150が使用不可になるまでのバッテリ150の生涯の使用可能な電力容量は、生涯使用可能容量AR1となる。
【0043】
また、制御部154Cは、第1条件と異なる第2条件を満たす場合に、バッテリ150の使用可能容量を減少させる抑制制御を実行する。第2条件とは、第1条件よりも条件が緩い条件(言い換えると「第1条件となる前に必ず第2条件を満たすことになる条件」、または「第1条件よりも条件を満たし易い条件」)である。第2条件には、例えば、バッテリ温度が上限温度よりも低い第1閾値以上となるや、バッテリ150の電圧が下限値よりも大きい第2閾値未満となる場合が含まれる。
【0044】
また、第2条件には、バッテリ150の温度が第1閾値以上となる回数をカウントし、カウントした回数(バッテリ温度用回数)が第1所定回数以上である場合や、バッテリ150の電圧が下限値よりも大きい第2閾値未満となる回数をカウントし、カウントした回数(バッテリ電圧用回数)が第2所定回数以上である場合であってもよい。第1所定回数や第2所定回数は、固定回数でもよく、バッテリ150の種類や特性によって可変に設定されてもよく、バッテリ150から電力を供給している負荷の種類(車両負荷、車外負荷)に応じて設定されてよい。制御部154Cは、回数カウンタを用いて過放電をカウントすることで、より適切な抑制制御を行うことができる。
【0045】
制御部154Cは、第1条件を満たさず、且つ、第2条件を満たす場合に、使用可用容量を抑制する。
図3の例において、総放電容量T21となった時点(使用可能容量C21となった時点)で第2条件を満たした場合、制御部154Cは、使用可能容量C21を所定量△C1だけ下げた使用可能容量C22に変更する制御を行う。所定量△C1(=C21-C22)は、例えば固定量でもよく、バッテリ150の種類や特性によって可変に設定されてもよく、バッテリ150から電力を供給している負荷の種類(車両負荷、車外負荷)および/または負荷数に応じて可変に設定されてよい。例えば、負荷の種類によって変更させる場合、使用可能容量の減少によって車載機器の使用が制限されると走行に影響が出る可能性があるため、負荷の種類が車両負荷である場合には、車外負荷と比較して減少量を小さくする。これにより、車両10に対してより安定した電力供給を実現できる。
【0046】
また、使用可能容量を所定量△C1だけ下げた後、制御部154Cは、第1所定回数や第2所定回数をリセットして、バッテリ150の温度が第2閾値以上となる回数や、バッテリ150の電圧が下限値よりも大きい第2閾値未満となる回数を改めてカウントし、回数が第1所定回数や第2所定回数以上となる場合に、更に使用可能容量を所定量△C2だけ下げる制御を行ってもよい。所定量△C2は、所定量△C1と同一量でもよく異なる量でもよい。異なる量の場合、所定量△C2は、所定量△C1よりも小さくする。このように減少量を小さくすることで、ある程度の使用可能容量を確保し、多くの負荷に電力が供給できなくなることを抑制することができる。
【0047】
図3の例では、総放電容量T22となった時点(使用可能容量C23となった時点)で第2条件を満たしたため、使用可能容量C24に下げる抑制制御が実行されている。また、
図3の例では、総放電容量T23となった時点(使用可能容量C25となった時点)で第1条件を満たしたため、遮断部154Bによる電流の遮断が実行されている。この場合、バッテリ150が使用不可になるまでのバッテリ150の生涯の使用可能な電力容量は、生涯使用可能容量AR2となる。
【0048】
図4は、生涯使用可能容量AR1と生涯使用可能容量AR2との比較結果を示す図である。
図4に示すように、実施形態の抑制制御を行った方が、抑制制御を行わない場合よりも生涯使用可能容量が多くなるため、バッテリ150の寿命を延長させることができ、バッテリ150の電力をより継続的且つ効率的に利用することができる。
【0049】
なお、
図3の例において、制御部154Cは、第2条件に基づき2回の抑制制御を行ったが、その後も継続して3回以降の抑制制御を行ってもよい。この場合、抑制制御回数(使用可能容量を下げた回数)に応じて、減少度合(減少量)を調整してもよい。例えば、制御部154Cは、上記回数が多くなるほど、減少度合を小さくする。これにより、使用可能容量を下げ過ぎることによって、使用できない負荷の数や種類が増えることを抑制することができる。また、制御部154Cは、抑制制御回数が所定回数となった場合には、それ以降の抑制制御を行わないようにしてもよい。
【0050】
なお、制御部154Cは、異常判定部154Aにより蓄電部152に異常があると判定された場合(例えば、電力供給ができないほどの異常)がある場合には、遮断部154Bによる遮断制御を実行させる。制御部154Cは、バッテリセンサ160の検出結果や、異常判定部154Aによる判定結果、制御部154Cによる制御内容を記憶部154Dに記憶させる。この場合、制御部154Cは、現時点での使用可能容量、バッテリ150の温度が第2閾値以上となる回数、バッテリ150の電圧が下限値よりも大きい第2閾値未満となる回数を記憶部154Dに記憶させてもよく、更に加えて上述の抑制制御回数を記憶部154Dに記憶させてもよい。上述したそれぞれの回数を記憶部154Dに記憶しておくことで、バッテリ150が他の車両10に搭載された場合に、記憶された回数を読み出して上述した抑制制御を継続して実行することができる。したがって、より適切なバッテリ制御が実現できる。
【0051】
[処理フロー]
次に、第1実施形態のバッテリ制御装置(BMU154)により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、以下の説明では、BMU154により実行される処理のうち、主にバッテリ150から供給される電力の使用範囲の抑制制御処理を中心として説明する。また以下では、バッテリ温度に基づく抑制制御処理と、バッテリ電圧値による使用制御処理とに大別して説明する。また、以下に示す処理は、例えば、所定周期またはタイミングで繰り返し実行されてよい。
【0052】
図5は、バッテリ温度に基づく第1の抑制制御処理の一例を示すフローチャートである。
図5の例において、制御部154Cは、バッテリセンサ160からの計測データに基づくバッテリ150の状態を取得し(ステップS100)、バッテリ温度が上限値以上であるか否かを判定する(ステップS110)。バッテリ温度が上限値以上であると判定した場合、制御部154Cは、遮断部154Bによる電流の遮断制御を実行する(ステップS120)。
【0053】
また、ステップS110の処理において、バッテリ温度が上限値以上ではないと判定した場合、制御部154Cは、バッテリ温度が上限値より低い第1閾値以上であるか否かを判定する(ステップS130)。第1閾値以上であると判定した場合、制御部154Cは、回数カウンタ(バッテリ温度用の回数カウンタ)を1増加させる(ステップS140)。次に、制御部154Cは、回数カウンタが第1所定回数以上か否かを判定する(ステップS150)。第1所定回数以上であると判定した場合、制御部154Cは、使用可能容量を現在の使用可能容量から抑制する制御(抑制制御)を実行する(ステップS160)。なお、抑制制御が実行された場合、回数カウントをリセット(初期化)してもよい。これにより、本フローチャートの処理は、終了する。また、ステップS130の処理において、バッテリ温度が第1閾値以上ではないと判定した場合、またはステップS150の処理において、回数カウンタが第1所定回数以上でないと判定した場合に、本フローチャートの処理は、終了する。
【0054】
図6は、バッテリ電圧値に基づく第2の抑制制御処理の一例を示すフローチャートである。
図6に示す処理は、
図5に示すステップS100~S160の処理と比較して、ステップS110、S130、およびS150の処理に代えて、ステップS210、S230~S250の処理を有する点で相違する。したがって、以下では相違点を中心として説明し、その他の処理の具体的な説明は省略する。
【0055】
図6の例において、制御部154Cは、バッテリ電圧値が下限値未満であるか否かを判定する(ステップS210)。下限値未満であると判定した場合、制御部154Cは、遮断部154Bによる電流の遮断制御を実行する(ステップS120)。
【0056】
また、ステップS110の処理において、バッテリ電圧値が下限値未満ではないと判定した場合、制御部154Cは、バッテリ電圧値が下限値より大きい第2閾値未満であるか否かを判定する(ステップS230)。第2閾値未満であると判定した場合、制御部154Cは、回数カウンタ(バッテリ電圧値用の回数カウンタ)を1増加させる(ステップS240)。次に、制御部154Cは、回数カウンタが第2所定回数以上か否かを判定する(ステップS250)。第2所定回数以上であると判定した場合、制御部154Cは、使用可能容量を現在の使用可能容量から抑制する制御を行う(ステップS160)。これにより、本フローチャートの処理は、終了する。また、ステップS230の処理において、バッテリ電圧値が第2閾値未満ではないと判定した場合、またはステップS250の処理において、回数カウンタが第2所定回数以上でないと判定した場合に、本フローチャートの処理は、終了する。
【0057】
なお、上述した
図5および
図6の処理は、並行して実行されてよい。この場合、制御部154Cは、例えば、バッテリ温度用の回数カウンタとバッテリ電圧値用の回数カウンタとを同一のカウンタとし、そのカウンタが所定回数となった場合に使用可能容量を抑制(制限)する。また、制御部154Cは、バッテリ温度用の回数カウンタが第1所定回数以上となった場合の使用可能容量の減少量と、バッテリ電圧値用の回数カウンタが第2所定回数以上となった場合の使用可能容量の減少量とを異ならせてもよい。これにより、バッテリ150の状態に応じて、より適切に使用可能容量を抑制(制限)することができる。
【0058】
なお、上述した抑制制御は、バッテリ150が所定の状態である場合に実行したり、または実行しないようにしてよい。例えば、制御部154Cは、バッテリ150が充電中または車外負荷に電力を供給している状態で第2条件を満たした場合に、上述の抑制制御を実行する。また、制御部154Cは、走行中の車両10(移動中の移動体)に電力を供給している状態で第2条件を満たした場合に抑制制御を実行しないようにする。これにより、車両負荷に電力が供給されている場合に、上述の抑制制御の実行によって電力の使用可能容量が減少し、電力不足が生じて車両10の走行に影響を与えることを抑制することができ、車両10の走行を継続させることができる。
【0059】
また、制御部154Cは、バッテリ150からの電力が車両10(車両負荷)に供給されている場合に、車両(移動体)以外(例えば車外負荷)に供給されている場合よりも使用可能容量の減少度合を小さくしてもよい。これにより、抑制制御の実行により、電力不足が生じて車両10の走行に影響を与えることを抑制することができ、車両10の走行を継続させることができる。なお、減少度合は、例えば、車両負荷の種類や数によって調整される。
【0060】
以上説明した第1実施形態によれば、バッテリ制御装置(BMU154)において、バッテリ150から負荷に流れる電流を遮断する遮断部154Bと、バッテリ150の状態に基づいて遮断部154Bの作動を制御する制御部154Cと、を備え、制御部154Cは、バッテリ150の状態が、遮断部154Bを作動させるための第1条件よりも条件が緩い第2条件を満たす場合に、バッテリ150の使用可能容量を減少させることにより、電流の遮断制御を適切に抑制してバッテリの寿命を延長させることができる。例えば、第1実施形態によれば、例えば、遮断部154BがCIDである場合に、バッテリ150が使用可能であってもCID作動によってバッテリ150が使用不可になることを抑制することができる。
【0061】
なお、第1実施形態において、バッテリ制御装置の機能(例えば、BMU154の制御部154Cの機能のうち少なくとも一部は、車両側(例えば、PCU120、給電制御システム100、または制御装置60)に設けられてもよい。これにより、バッテリ150の負荷を軽減することができる。
【0062】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、上述した車両10等の対象機器に搭載された第1実施形態のバッテリ制御装置と、バッテリ150の交換サービスを行う一以上のバッテリ交換装置とを含むバッテリ利用システムについて説明する。第2実施形態において、バッテリ交換装置は、例えば、車両10等の対象機器から取り外されたバッテリ150を収容して予め収容された他のバッテリと交換する場合に、収容したバッテリ150の使用可能容量との差分が所定範囲内の他のバッテリが排出されるように制御する。
【0063】
図7は、バッテリ利用システム1について説明するための図である。
図7に示すバッテリ利用システム1は、バッテリ制御装置を含むバッテリ150が搭載された一以上の車両10と、一以上のバッテリ交換装置200とを含む。
図7の例では、説明の便宜上、一つの車両10とバッテリ交換装置200を示している。
図7の例では、車両10に搭載されるバッテリ150が示され、バッテリ交換装置200に表示部210と、スロット220とが示されている。
【0064】
バッテリ交換装置200は、例えば複数の箇所に設置されている充電交換ステーション(不図示)に設置される。バッテリ交換装置200は、充電済みバッテリの中から貸し出すバッテリを選択して利用者に貸し出す。表示部210は、車両10の利用者に通知する情報を表示する表示装置である。
【0065】
第2実施形態において、バッテリ150は、車両10に対して少なくとも1つ装着される。また、バッテリ150は、複数の車両で共同利用される。バッテリ150は、例えば、排他的に割り当てられバッテリIDによって、バッテリ交換装置200で個別に管理される。車両10から取り外されたバッテリ150は、バッテリ交換装置200に設けられた複数のスロット(
図7の例では、スロット220-1~220-8)の何れかに返却され保管される。なお、以下の説明において、スロット220-1~220-8のうち1つを特定しない場合は、「スロット220」と称する。スロット220には、例えば、バッテリ収容部220Hと開閉蓋220Lとを備えていてもよい。また、以下の説明においては、電力が消耗したことにより車両10の利用者によってスロット220に返却されるバッテリ150を、「使用済みバッテリ」と称し、バッテリ交換装置200による充電が完了し、車両10の利用者によってスロット220から取り出されるバッテリ150を、「充電済みバッテリ」と称する。なお、本実施形態において充電済みとは、充電率が100%に限らず、充電率が所定値(例えば80%)以上であってもよい。
【0066】
スロット220のバッテリ収容部220Hの奥側には、収容されたバッテリ150と接続することによって充電や、バッテリ150から装着情報等を取得するための接続部が設けられている。
【0067】
図8は、バッテリ交換装置200の構成の一例を示す図である。バッテリ交換装置200は、表示部210と、接続部222と、充電部224と、交換装置記憶部230と、交換装置制御部240と、交換装置通信部250とを備える。交換装置制御部240は、例えば、CPU等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSIやASIC、FPGA、GPU等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDDやフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0068】
交換装置記憶部230は、上記の各種記憶装置、或いはSSD、EEPROM、ROM、またはRAM等により実現されてもよい。交換装置記憶部230は、交換装置通信部250により」ネットワークNWを介して接続されるサーバ装置(不図示)から得られる情報や接続部222によりバッテリ150から得られる情報、交換装置制御部240による制御内容、プログラム、その他各種情報を格納する。
【0069】
表示部210は、車両10の利用者に通知する情報を表示する表示装置である。表示部210は、例えば、TFT(薄膜トランジスター:Thin Film Transistor)液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等を含んで構成される。表示部210は、バッテリ交換装置200においてバッテリ150が現在交換可能な状態であるか等、バッテリ利用システム1のサービスに関する各種情報を表示する。
【0070】
接続部222は、スロット220において、収容されたバッテリ150に備えた接続部156と電気的に接続する構造の接続部である。接続部222は、それぞれのスロット220ごとに、バッテリ収容部220Hの奥側に設けられバッテリID、充電回数、劣化状態、および蓄電部152の状態を表す測定値等の情報を取得すると共に、充電するための電力を蓄電部152に供給する。
【0071】
充電部224は、スロット220にバッテリ150が収容され、収容されたバッテリ150の接続部156と接続部222とが接続された状態のときに、交換装置制御部240からの制御に応じてバッテリ150を充電する。
【0072】
交換装置制御部240は、バッテリ交換装置200の全体を制御する。例えば、交換装置制御部240は、予め定めた時間間隔ごと(例えば、5分間隔ごと)に、それぞれのスロット220に収容されたバッテリ150のバッテリID、充電回数、劣化状態、および蓄電部152の状態を表す測定値等の情報(バッテリ状態情報)を取得する。そして、交換装置制御部240は、取得したバッテリ150の状態を表す測定値に基づいて、蓄電部152の充電率、つまり、バッテリ150の充電率を導出してもよい。そして、交換装置制御部240は、それぞれのバッテリ150のバッテリ状態情報や充電率の情報を交換装置通信部250に出力する。これにより、交換装置通信部250は、ネットワークNWを介してサーバ装置との間で通信を行って、交換装置制御部240が出力したバッテリ状態情報等をサーバ装置に送信して、サーバ装置側で管理させることができる。
【0073】
また、交換装置制御部240は、例えば、交換装置通信部250からサーバ装置から送信された貸し出し可能バッテリリストを取得し、取得したリストを交換装置記憶部230に記憶させる。その後、交換装置制御部240は、交換装置記憶部230に記憶した貸し出し可能バッテリリストに含まれるバッテリIDの順番に基づいて、車両10の利用者が持ち込んできた使用済みバッテリと充電済みバッテリとの交換の手続きを実施する。
【0074】
また、交換装置制御部240は、車両10から取り外されたバッテリ150を収容して予め収容された他の一以上のバッテリと交換する場合に、他の一以上のバッテリのうち、収容したバッテリ150から取得したバッテリ150に対する現在の使用可能容量との差分値が所定範囲内の他のバッテリが排出される(貸し出される)ように制御する。現在の使用可能容量は、例えば、バッテリ150の記憶部154Dから取得される。これにより、バッテリが交換された場合であっても、第1実施形態で示した使用可能容量に基づく抑制制御処理を継続して実施することができる。
【0075】
なお、交換装置制御部240は、差分値が所定範囲内の他のバッテリがない場合には、差分値最も小さい他のバッテリと交換されるように制御してもよい。この場合、交換装置制御部240は、差分値に関する情報をバッテリ150の記憶部154Dに記憶してもよい。これにより、バッテリ150の制御部154Cは、記憶部154Dに記憶された差分値に関する情報を取得し、取得した差分値に基づいて、現在の使用可能範囲を調整することができる。したがって、より適切なバッテリ150使用可能容量に基づく抑制制御を行うことができる。
【0076】
交換装置制御部240は、使用済みバッテリを収容するスロット220(例えば、スロット220-1)を、表示部210によって車両10の乗員に通知する。これにより、車両10の乗員は、持ち込んできた使用済みバッテリを、バッテリ150が収容されていない状態のスロット220-1のバッテリ収容部220Hに収容することができる。また、交換装置制御部240は、例えば、貸し出し可能バッテリリストに含まれるバッテリIDの順番および使用可能容量の差分値に基づいて、充電済みバッテリが収容されているスロット220(例えば、スロット220-2)を、表示部210によって利用者に通知する。これにより、利用者は、充電済みバッテリを、スロット220-2のバッテリ収容部220Hから取り出して、車両Mに搭載することができる。また、交換装置制御部240は、バッテリ収容部220Hに収容された使用済みバッテリを充電する。
【0077】
なお、交換装置制御部240は、スロット220に収容されたバッテリの状態(充電状態)を各種センサにより測定したり、バッテリ150の現在の充電率(充電完了も含む)を管理する。
【0078】
交換装置通信部250は、交換装置制御部240からの指示に応じて、サーバ装置との間でネットワークNWを介した無線通信を行い、バッテリ状態リストをサーバ装置に送信する。また、交換装置通信部250は、サーバ装置から貸し出し可能バッテリリストを取得する。そして、交換装置通信部250は、サーバ装置から取得した貸し出し可能バッテリリストを交換装置記憶部230に出力して記憶させる。
【0079】
以上説明した第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する他、車両10から取り外され、バッテリ交換装置200に収容されるバッテリの使用可能容量との差分値が所定範囲内となる他のバッテリを交換される(貸し出される)バッテリとして決定することで、現在までの使用可能容量の抑制制御の状態を大きく変えることなく、抑制制御を継続させることができる。したがって、制御処理の負荷を軽減させることができる。
【0080】
なお、第2実施形態において、交換装置制御部240は、使用可能容量に代えて(または加えて)、バッテリ150の記憶部154Dに記憶されたバッテリ150の温度が第2閾値以上となる回数、バッテリ150の電圧が下限値よりも大きい第2閾値未満となる回数、または抑制制御回数に基づいて、交換可能な充電済みバッテリの中から回数が近いバッテリが交換されるように制御してもよい。これにより、今まで車両10が使用していたバッテリ150の状態に近いバッテリを車両に提供することができる。
【0081】
上述した実施形態によれば、バッテリ温度やバッテリ電圧値が閾値を超えた回数をカウントし、その回数が規定数以上に到達した場合に、バッテリ150の使用範囲(制限値)を狭める抑制制御を行うことで、遮断部154BによるCID作動等を抑制することができ、バッテリ150を延命させることができる。したがって、エネルギーの効率化に寄与することができる。
【0082】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
コンピュータによって読み込み可能な命令(computer-readable instructions)を格納する記憶媒体(storage medium)と、
前記記憶媒体に接続されたプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、前記コンピュータによって読み込み可能な命令を実行することにより(the processor executing the computer-readable instructions to:)
遮断部によりバッテリから負荷に流れる電流を遮断し、
前記バッテリの状態に基づいて前記遮断部の作動を制御し、
前記バッテリの状態が、前記遮断部を作動させるための第1条件よりも条件が緩い第2条件を満たす場合に、前記バッテリからの電力の使用可能容量を減少させる、
バッテリ制御装置。
【0083】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0084】
10 車両
12 モータ
14 駆動輪
16 ブレーキ装置
20 車両センサ
50 通信装置
60 制御装置
100 給電制御システム
120 PCU
130 変換器
140 VCU
150 バッテリ
152 蓄電部
154 BMU
154A 異常判定部
154B 遮断部
154C 制御部
154D 記憶部
156 接続部
200 バッテリ交換装置
210 表示部
220 スロット
222 接続部
224 充電部
230 交換装置記憶部
240 交換装置制御部
250 交換装置通信部