(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010845
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】剃刀及び剃刀用の刃固定部材
(51)【国際特許分類】
B26B 21/06 20060101AFI20240118BHJP
B26B 21/52 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
B26B21/06 Z
B26B21/52 C
B26B21/52 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112384
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横田 善行
(57)【要約】
【課題】古紙としてリサイクル可能な剃刀を提供する。
【解決手段】
柄体に取り付けられる刃固定部材であって、1又は複数の剃刀用刃と、剃刀用の刃を固定するための刃支持部と刃の刃先が露出される刃先露出口とを有する枠体と、を有し、前記枠体が1又は複数のシート材を折り曲げることで組み立てられている、刃固定部材により解決される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃固定部材と柄体とを有する剃刀であって、
刃固定部材は、
刃と、シート材から組み立てられ、刃が固定される刃支持部及び刃支持部に固定された刃の刃先が露出される刃先露出口を有する枠体と、を有し、
柄体は、
シート材から組み立てられ、
利用者に把持されるハンドル部と、
刃固定部材が取り付けられるヘッド部と、を有し、
ヘッド部は、
刃固定部材を取り付けるための取付面と、第一折り線を介してハンドル部の先端側に連接され、その第一折り線を軸として揺動可能な取付部と、
第一折り線と平行に配された第二折り線を介して取付部に連接し、前記第二折り線で折り返されて取付部よりもハンドル部の後端側に位置している背板部と、を有し、
取付部側を先端としてハンドル部から切り起こされ、この切り起こしによって板バネ弾性を生ずる舌片部が形成され、第二折り線で折り返された背板部が、切り起こされた舌片部とハンドル部との間に差し込まれ、その舌片部が、背板部を押持するとともに、取付部の揺動にともなう背板部の舌片部の基端側への押し込みに対して弾性付勢を生ずるように構成され、
前記刃固定部材が柄体に対して、刃先が第一折り線に向く方向で取り付けられている、
ことを特徴とする剃刀。
【請求項2】
刃固定部材は、
刃先露出口を有する正面部と
正面部に対向する背面部と、を有し、
刃支持部は、シート材の一部が背面部側に切り起こされて正面部と背面部との間に形成され、
刃先露出口は、刃支持部の切り起こしによって正面部に開口されて形成され、
刃固定部材の背面部が柄体の取付面に対して取り付けられている、
請求項1記載の剃刀。
【請求項3】
刃固定部材は、
背面部に連接する第二の刃支持部を有し、
第二の刃支持部は、正面部側に折り曲げられて、切り起こしにより形成された刃支持部に対向するように位置され、
第二の刃支持部に対しても刃が固定されているとともに、
その刃先が刃先露出口に露出され、
刃支持部に固定された刃の刃先と、
第二の刃支持部に固定された刃先と、が、
刃先の位置をずらして重なるように設けられている、
請求項2記載の剃刀。
【請求項4】
背面部によって、刃支持部の動きが規制されている、請求項2又は3記載の剃刀。
【請求項5】
枠体は、
刃先露出口を有する正面部と、正面部に対向する背面部と、背面部に形成された背面側開口部と、刃先露出口の縁部に形成された1又は複数の正面側凹溝と、背面側開口部の縁部に形成された1又は複数の背面側凹溝と、を有し、
正面部と背面部とが折り線を介して連接され、その折り線での折り返しによって、正面部と背面部とが対向する位置とされ、刃先露出口と背面側開口部とによって正面部及び背面部を連通する刃先露出口が形成され、かつ、正面側凹溝と背面側凹溝とによって刃が支持される刃支持溝が形成され、
刃は、その刃支持溝に嵌まるようにして支持され、
かつ、刃固定部材の背面部が柄体の取付面に対して取り付けられている、
請求項1記載の剃刀。
【請求項6】
舌片部が、背板部をハンドル部とで挟持しており、
背板部の先端にハンドル部に接する摺動片が設けられ、取付部の動きに応じて、摺動片がハンドル部上を摺動する、請求項1記載の剃刀。
【請求項7】
背板部は、
第二折り線に向かって凸型のスリットと、このスリットの端に連接し、第二折り線に平行な一対の第三折り線とで囲まれる先端部分が、前記第三折り線で折り返されて、
前記凸型のスリットで囲まれる部分が反転されて形成される受け部を有し、この受け部に舌片部が乗って押持している、
請求項1記載の剃刀。
【請求項8】
剃刀用の柄体に取り付けられる刃固定部材であって、
刃固定部材は、刃と、シート材から組み立てられ、刃が固定される刃支持部及び刃支持部に固定された刃の刃先が露出される刃先露出口を有する枠体と、を有し、
枠体は、刃先露出口を有する正面部と、正面部に対向する背面部と、を有し、
刃支持部は、シート材の一部が背面部側に切り起こされて正面部と背面部との間に形成され、刃先露出口は、刃支持部の切り起こしによって正面部に開口されて形成され、
背面部を介して柄体に対して取り付けられる、
ことを特徴とする、刃固定部材。
【請求項9】
背面部に連接する第二の刃支持部を有し、
第二の刃支持部は、正面部側に折り曲げられて、切り起こしにより形成された刃支持部に対向するように位置され、
第二の刃支持部に対しても刃が固定されているとともに、
その刃先が刃先露出口に露出され、
刃支持部に固定された刃の刃先と、
第二の刃支持部に固定された刃先と、が、
刃先の位置をずらして重なるように設けられている、
請求項8記載の刃固定部材。
【請求項10】
背面部によって、刃支持部の動きが規制されている、請求項8又は9記載の刃固定部材。
【請求項11】
剃刀用の柄体に取り付けられる刃固定部材であって、
刃固定部材は、刃と、シート材から組み立てられ、刃が固定される刃支持部及び刃支持部に固定された刃の刃先が露出される刃先露出口を有する枠体と、を有し、
枠体は、
刃先露出口を有する正面部と、正面部に対向する背面部と、背面部に形成された背面側開口部と、刃先露出口の縁部に形成された1又は複数の正面側凹溝と、背面側開口部の縁部に形成された1又は複数の背面側凹溝と、を有し、
正面部と背面部とが折り線を介して連接され、その折り線での折り返しによって、正面部と背面部とが対向する位置とされ、刃先露出口と背面側開口部とによって正面部及び背面部を連通する開口部が形成され、かつ、正面側凹溝と背面側凹溝とによって刃の支持溝が形成され、
刃は、その支持溝に嵌まるようにして支持され、
かつ、背面部を介して柄体に対して取り付けられる、
ことを特徴とする、刃固定部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剃刀及び剃刀用の刃固定部材に関する。
【背景技術】
【0002】
剃刀は、樹脂製のケースに金属製の刃が収容された剃刀ヘッド(カートリッジ等とも称されることがある)と、剃刀ヘッドを取り付けるヘッド部及び使用者が把持や操作するためのハンドル部が一体となっている柄体とを有し、全体としてT字型をなすものがよく知られている。剃刀ヘッドは、通常、硬質プラスチックの枠体に金属製の刃が固定されており、柄体は、通常は、硬質プラスチックや金属などによって形成されている。このため、折り畳みや分解することが難しく、収容や保管のためのスペースを広く確保する必要があったり、持ち運びが不便であったりする問題がある。
【0003】
また、プラスチック枠体と金属製の刃を分別することは、極めて難しく実質不可能であり、柄体とともに可燃物あるいは不燃物として処理され、素材の有効なリサイクルがなされていなかった。また、素材を分別しようとすると金属製の刃で作業者が怪我をする危険性があった。
【0004】
他方で、旅館やホテル等の宿泊施設等では、アメニティとして剃刀ヘッド及び柄体がプラスチックで形成されている、使い捨ての剃刀が提供されていることがある。近年、マイクロプラスチックによる海洋汚染等の問題が注目され、環境保護の点等から脱プラスチック化が世界的に進んでおり、日本においても、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が成立し、例えば、ホテル業等の特定の事業者に対して、使い捨てプラスチック製品の削減が義務化されることとなった。そして、この「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」では、「特定プラスチック使用製品」として、プラスチック製の剃刀が指定されており、剃刀における脱プラスチック化が注目されている。
【0005】
柄体を紙製として、薄いシート形状から折り曲げ組み立てて形成される剃刀が、例えば、下記特許文献1に提案されている。この剃刀は、柄体が紙製となっており、全体としてプラスチック使用量が少なく、また、シート型のまま輸送や保管することができるため、収納性や運搬性も改善されている。例えば、店舗等や宿泊施設にシート状のまま納品したり、シート状のままバックヤードに保管したり、必要時に組み立てて使用する使用態様を採ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、引用文献1の剃刀は、柄体が紙製であるものの、剃刀ヘッド(カートリッジ)は、硬質プラスチック製の枠体に金属製の刃を固定したものであるため、廃棄やリサイクルの際に剃刀ヘッドと柄体との分別が求められることがあった。
【0008】
他方で、柄体がプラスチックや金属製の剃刀においては、首振りヘッド、首振り機構等とも称される、柄体に取り付けた剃刀ヘッドが、肌の曲面に追従して動く機構を備えるものがあり、ユーザーに広く受け入れられているが、薄いシート形状から折り曲げ組み立てて形成される剃刀においては、このような首振り機構を有するものがない。
【0009】
引用文献1の剃刀においては、柄体の撓りによって、剃刀ヘッド(カートリッジ)がユーザーの肌に付勢されるようになっているが、剃刀ヘッド自体が動くわけではなく、剃刀ヘッドと肌との面圧が変化するに留まっている。
【0010】
さらに、特許文献1の剃刀は、柄体のうち、特に把手するためのハンドル部を形成するために、複数回の折り工程が必用となっており、さらなる組み立ての簡易さが求められる。
【0011】
そこで、本発明の主たる課題は、剃刀ヘッドを分解して分別することなく、また剃刀ヘッドと柄体とを分別することなく、廃棄やリサイクルすることが可能であるとともに、シート形状から簡易に組み立てることができる剃刀及び剃刀用の刃固定部材を提供することにあり、さらなる課題は、刃や刃固定部材が曲面に追従できる首振り機構を有する剃刀を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決した第一の手段は、
刃固定部材と柄体とを有する剃刀であって、
刃固定部材は、
刃と、シート材から組み立てられ、刃が固定される刃支持部及び刃支持部に固定された刃の刃先が露出される刃先露出口を有する枠体と、を有し、
柄体は、
シート材から組み立てられ、
利用者に把持されるハンドル部と、
刃固定部材が取り付けられるヘッド部と、を有し、
ヘッド部は、
刃固定部材を取り付けるための取付面と、第一折り線を介してハンドル部の先端側に連接され、その第一折り線を軸として揺動可能な取付部と、
第一折り線と平行に配された第二折り線を介して取付部に連接し、前記第二折り線で折り返されて取付部よりもハンドル部の後端側に位置している背板部と、を有し、
取付部側を先端としてハンドル部から切り起こされ、この切り起こしによって板バネ弾性を生ずる舌片部が形成され、第二折り線で折り返された背板部が、切り起こされた舌片部とハンドル部との間に差し込まれ、その舌片部が、背板部を押持するとともに、取付部の揺動にともなう背板部の舌片部の基端側への押し込みに対して弾性付勢を生ずるように構成され、
前記刃固定部材が柄体に対して、刃先が第一折り線に向く方向で取り付けられている、
ことを特徴とする剃刀である。
【0013】
第二の手段は、
刃固定部材は、
刃先露出口を有する正面部と
正面部に対向する背面部と、を有し、
刃支持部は、シート材の一部が背面部側に切り起こされて正面部と背面部との間に形成され、
刃先露出口は、刃支持部の切り起こしによって正面部に開口されて形成され、
刃固定部材の背面部が柄体の取付面に対して取り付けられている、
上記第一の手段に係る剃刀である。
【0014】
第三の手段は、
刃固定部材は、
背面部に連接する第二の刃支持部を有し、
第二の刃支持部は、正面部側に折り曲げられて、切り起こしにより形成された刃支持部に対向するように位置され、
第二の刃支持部に対しても刃が固定されているとともに、
その刃先が刃先露出口に露出され、
刃支持部に固定された刃の刃先と、
第二の刃支持部に固定された刃先と、が、
刃先の位置をずらして重なるように設けられている、
上記第二の手段に係る剃刀である。
【0015】
第四の手段は、
背面部によって、刃支持部の動きが規制されている、上記第二又は第三の手段の剃刀である。
【0016】
第五の手段は、
枠体は、
刃先露出口を有する正面部と、正面部に対向する背面部と、背面部に形成された背面側開口部と、刃先露出口の縁部に形成された1又は複数の正面側凹溝と、背面側開口部の縁部に形成された1又は複数の背面側凹溝と、を有し、
正面部と背面部とが折り線を介して連接され、その折り線での折り返しによって、正面部と背面部とが対向する位置とされ、刃先露出口と背面側開口部とによって正面部及び背面部を連通する刃先露出口が形成され、かつ、正面側凹溝と背面側凹溝とによって刃が支持される刃支持溝が形成され、
刃は、その刃支持溝に嵌まるようにして支持され、
かつ、刃固定部材の背面部が柄体の取付面に対して取り付けられている、
上記第一の手段に係る剃刀である。
【0017】
第六の手段は、
舌片部が、背板部をハンドル部とで挟持しており、
背板部の先端にハンドル部に接する摺動片が設けられ、取付部の動きに応じて、摺動片がハンドル部上を摺動する、上記第一の手段に係る剃刀である。
【0018】
第七の手段は、
背板部は、
第二折り線に向かって凸型のスリットと、このスリットの端に連接し、第二折り線に平行な一対の第三折り線とで囲まれる先端部分が、前記第三折り線で折り返されて、
前記凸型のスリットで囲まれる部分が反転されて形成される受け部を有し、この受け部に舌片部が乗って押持している、
上記第一の手段に係る剃刀である。
【0019】
第八の手段は、
剃刀用の柄体に取り付けられる刃固定部材であって、
刃固定部材は、刃と、シート材から組み立てられ、刃が固定される刃支持部及び刃支持部に固定された刃の刃先が露出される刃先露出口を有する枠体と、を有し、
枠体は、刃先露出口を有する正面部と、正面部に対向する背面部と、を有し、
刃支持部は、シート材の一部が背面部側に切り起こされて正面部と背面部との間に形成され、刃先露出口は、刃支持部の切り起こしによって正面部に開口されて形成され、
背面部を介して柄体に対して取り付けられる、
ことを特徴とする、刃固定部材である。
【0020】
第九の手段は、
背面部に連接する第二の刃支持部を有し、
第二の刃支持部は、正面部側に折り曲げられて、切り起こしにより形成された刃支持部に対向するように位置され、
第二の刃支持部に対しても刃が固定されているとともに、
その刃先が刃先露出口に露出され、
刃支持部に固定された刃の刃先と、
第二の刃支持部に固定された刃先と、が、
刃先の位置をずらして重なるように設けられている、
上記第八の手段に係る刃固定部材である。
【0021】
第十の手段は、
背面部によって、刃支持部の動きが規制されている、上記第八又は第九の手段に係る刃固定部材である。
【0022】
第十一の手段は、
剃刀用の柄体に取り付けられる刃固定部材であって、
刃固定部材は、刃と、シート材から組み立てられ、刃が固定される刃支持部及び刃支持部に固定された刃の刃先が露出される刃先露出口を有する枠体と、を有し、
枠体は、
刃先露出口を有する正面部と、正面部に対向する背面部と、背面部に形成された背面側開口部と、刃先露出口の縁部に形成された1又は複数の正面側凹溝と、背面側開口部の縁部に形成された1又は複数の背面側凹溝と、を有し、
正面部と背面部とが折り線を介して連接され、その折り線での折り返しによって、正面部と背面部とが対向する位置とされ、刃先露出口と背面側開口部とによって正面部及び背面部を連通する開口部が形成され、かつ、正面側凹溝と背面側凹溝とによって刃の支持溝が形成され、
刃は、その支持溝に嵌まるようにして支持され、
背面部を介して柄体に対して取り付けられる、
ことを特徴とする、刃固定部材である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、剃刀ヘッドを分解して分別することなく、また剃刀ヘッドと柄体とを分別することなく、廃棄やリサイクルすることが可能であるとともに、シート形状から簡易に組み立てることができる剃刀及び剃刀用の刃固定部材が提供され、さらに、刃や刃固定部材が曲面に追従できる首振り機構を有する剃刀が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図6】第一実施形態に係る刃固定部材の正面図である。
【
図8】第一実施形態に係る刃固定部材の枠体の展開状態を示す図である。
【
図9】第一実施形態に係る刃固定部材の組み立てを説明するための第一の図である。
【
図10】第一実施形態に係る刃固定部材の組み立てを説明するための第二の図である。
【
図11】第一実施形態に係る刃固定部材の背面図である。
【
図12】第一実施形態に係る刃支持部を説明するための図である。
【
図14】第一実施形態に係る刃固定部材の展開状態の背面側からの図である。
【
図16】第一実施形態の剃刀Rの刃固定部材の柄体への取り付け態様を説明するための図である。
【
図19】本実施形態の多層紙の断面を示す図である。
【
図20】第二実施形態に係る刃固定部材の正面図である。
【
図22】第二実施形態に係る刃固定部材の組み立てを説明するための第一の図である。
【
図24】第二実施形態に係る刃固定部材の枠体の展開状態を示す図である。
【
図25】第二実施形態に係る刃支持部を説明するための図である。
【
図26】第二実施形態に係る刃固定部材の展開状態の背面側からの図である。
【
図27】第三実施形態に係る刃固定部材の正面図である。
【
図28】第三実施形態に係る刃固定部材の枠体の展開状態を示す図である。
【
図31】第三実施形態の固定枠の展開状態を示す図である。
【
図32】第三実施形態に係る固定枠の取り付けを説明するための図である。
【
図33】第三実施形態に係る固定枠を取り付けた刃固定部材を示す正面図である。
【
図34】
図33のXXXIV-XXXIV断面を示す図である。
【
図35】第四実施形態に係る柄体の後方斜視図である。
【
図36】第四実施形態に係る柄体の展開状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次いで、本発明に係る剃刀の実施形態を
図1~
図40を参照しながら以下に詳述する。但し、本発明は、図示の形状やこの実施形態に限定されるわけではない。本発明の範囲において、各部の詳細な形状や位置については、本発明の効果を妨げない範囲で変更可能である。また、本発明及び本明細書における「正面」、「背面」、「天」、「底」、「左」及び「右」の語は、観者の位置によって変わるものであり絶対的な位置を示す語ではない。また、「第一」、「第二」等の語は、必ずしも操作の順を示す語ではない。さらに、本発明に係る剃刀用の刃固定部材の実施形態は、剃刀の実施形態を説明するなかで適宜に説明される。
【0026】
(第一実施形態)
第一実施形態の剃刀Rを
図1~
図19を参照しながら説明する。この本実施形態の剃刀Rは、特に
図1~
図5に示されるように、剃刀用の刃21が固定されている刃固定部材2と柄体1とを有している。
【0027】
本実施形態の刃固定部材2は、特に
図6~
図15に示される。その刃固定部材2は、特徴的に、特に
図8に示される、展開状態が一枚のシート形態であり、その一枚のシート材20を折り曲げることで組み立てられる枠体22に対して、特に
図15に示される一枚又は複数枚の剃刀用の刃21が固定されており、使用時に肌上をスライドされる正面23Fを構成する正面部23を有しており、柄体1の取付面31Aに取り付けられる。
【0028】
枠体22は、特に
図5及び
図7に示されるように、刃支持部26及び刃21の刃先21tが露出される刃先露出口27を有しており、刃21は、刃支持部26に固定されている。
【0029】
本実施形態の剃刀Rの刃固定部材2は、特に
図6及び
図7、
図12~
図15に示されるように、特徴的に、正面部23に対向する背面部24を有しており、刃支持部26が、シート材20の一部が背面部24側に切り起こされて正面部23と背面部24との間に形成される片状となっており、さらに、刃先露出口27が、その刃支持部26の切り起こしによって正面部23に開口される部分となっている。そして、この刃固定部材2が、
図16に示されるように、背面部24を介して、柄体1の取付面31Aに対して取り付けられ、使用時に肌上をスライドされる正面23Fに刃先21tが位置されるように構成されている。
【0030】
枠体22の形状は、特に
図6、
図7及び
図11に示されるように、対向する長手縁23L及び短手縁23Sを有する長方形状の正面部23と、正面部23に対面する背面部24と、正面部23及び背面部24に連接する、一対の長側面部22L及び一対の短側面部22Sとを有する、薄型の直六面体形状又はこれに類似する形状が好適な形状として例示される。但し、枠体22や正面部23等の各部の形状は図示の形状に限定されない。本発明の効果を妨げない範囲で、適宜の形状とすることができる。
【0031】
枠体22の展開状態のシート材20の形状も必ずしも限定されないが、
図8に示すように、対向する長手縁23L及び短手縁23Sを有する長方形状の正面部23と、正面部23の長手縁23L側に折り線F1,F1を介して連接する一対の長側面部22Lと、正面部23の短手縁23S側に折り線F2,F2を介して連接する一対の短側面部22Sと、短側面部22Sに折り線F3,F3を介して連接する背面フラップ部24F,24Fと、長側面部22Lに折り線F4,F4を介して連接する背面片24P,24Pと、を有する形状が好適な形状として例示できる。なお、図示の形態では、さらに、より好ましい形態として、一方の背面片24Pにさらに折り線F9を介して連接する補助短側面片22S´が設けられている。
【0032】
この展開状態のシート材20Sからは、枠体22は、
図8~
図11に示されるように、正面部23から長側面部22L,22Lが折り線F1,F1で折り曲げられ、短側面部22S、22Sが折り線F2,F2で折り曲げられて、正面部23からそれぞれ立設され、この正面部23から長側面部22L及び短側面部22Sが立設された形態で、背面フラップ部24F,24Fが折り線F3,F3で折り曲げられ、背面片24P,24Pが折り線F4,F4で折り曲げられて、正面部23に対向する背面部24を有し、全体として、薄型の直六面体形状に形成される。この実施形態における、枠体の好ましい大きさは、正面部23の長手縁23Lの長さ36~45mm、短手縁23Sの長さが12~17mm、正面部23と背面部24との間の距離が3~10mmである。但し、各面部の具体的な大きさや面積は限定されるものではなく、剃刀ヘッド(カートリッジ)の一般的な形状に準じた大きさや面積とすることができる。
【0033】
本実施形態の剃刀Rの刃固定部材2は、上記のとおり、正面部23から切り起こされた刃支持部26と、刃支持部26の切り起こしによって形成される刃先露出口27とを有している。そして、剃刀用の刃21の基端側が刃支持部26に対して固定されて、刃先21tが刃先露出口27から正面側に露出されている。図示の形態では、特に、
図8、
図12~
図13に示すように、枠体22を構成するシート材20に形成された、一方側から他方側に向かって凸となる略コ字形のスリット26Sの端部26e,26e同士、好ましくは端同士を繋ぐ線を折り線25として、この折り線25とスリット26Sで囲まれる範囲を、前記折り線25で背面部24側に折り返すように切り起こされて形成される刃支持部26と刃先露出口27とを有している。なお、図示の形態では、シート材に形成されたスリット26Sが略コ字形となっているため、刃先露出口27及び刃支持部26はともに細長の長方形状に形成されているが、刃支持部26及び刃先露出口27の形状は、必ずしもこの形状に限定されるわけではない。スリット26Sの形状や幅は限定されず、その他、細長台形状、細長半楕円形状等としてもよい。また、刃支持部26を切り起こし可能とする手段は、スリット26Sに限定されず、正面部23に適宜の形状の刳り貫き部分を設けるようにしてもよい。すなわち、刃支持部26と、刃先露出口27の縁の形状は、必ずしも一致していなくてもよい。但し、刃先露出口27は、刃21の刃先21tを露出させて剃刀刃によって髭等の体毛を剃ることが可能な程度の面積及び形状とされる。開口部の形状は必ずしも限定されないが、長手方向に30~40mm×短手方向に6~14mmが望ましい。
【0034】
この実施形態の刃固定部材2は、特に、
図6、
図7に示すように、刃21の基端側が、刃支持部26に固定されているとともに、刃先21tが刃先露出口に露出されている。刃支持部26に対する剃刀用の刃21の固定方法は必ずしも限定されない。接着剤や粘着テープの化学的な固定手段、カシメやハトメ等の機械的な固定手段等、適宜の固定手段によって固定することができる。図示の形態は、特に好ましい形態として、カシメ28によって刃21を固定する形態を示している。剃刀Rは、水に触れる態様で使用されることが多いことから、カシメ28のような機械的な固定手段であるのが望ましい。接着剤の具体的な種類は限定されないが、接着剤によって固定するのであれば、耐水性の接着剤を用いるのが望ましい。
【0035】
刃21は、特に
図15に示されるように、鉄、ステンレス等の既知の一般的な金属製の薄板状の剃刀刃を用いることができる。また、剃刀Rにおいては、二枚刃、三枚刃などと称される、複数の刃がその刃先の位置をずらして固定されている複数刃タイプのものがある。近年では六枚刃のものも知られる。本発明における剃刀Rにおいても、刃固定部材2において複数の刃を刃支持部26に固定することで、二枚刃、三枚刃等の複数刃タイプのものとすることができる。
【0036】
図示の形態は、二枚刃の形態を示している。具体的には、
図7及び
図15に示されるように、二枚の刃21が所定厚のスペーサー21Sを介して、その刃先21tの位置をずらして積層されている。そして、各刃21及びスペーサー21Sにはカシメ穴が形成されており、各刃21及びスペーサー21Sのカシメ穴を一致させて、刃支持部26に固定することで、スペーサー21Sの厚みとカシメ穴の位置とによって、予め設定した適切な刃先21tの間隔で固定されている。なお、この実施形態では、二枚刃であるが、本発明における剃刀の刃の枚数は限定されない。一枚刃であってもよく三枚刃以上であってもよい。複数枚刃とする場合、このように固定手段をカシメ28によるものとすると、複数枚刃の刃先21tを適切な位置で簡易に固定でき、かつ、使用時に分離するおそれも各段に少ない点で優れる。スペーサー21Sの素材は限定されないが、鉄、ステンレス等の適宜の金属等、セラミック、木材等の硬質素材が好適に使用される。また、図示の形態では、一枚のスペーサー21Sを用いているが、三枚、四枚のスペーサー21Sを用いてもよい。刃の間に複数のスペーサー21Sを配してもよい。さらに、例えば、
図7において背面側に位置するカシメの頭部28Hと最も背面側に位置する刃の間にスペーサー21Sを介在させてもよい。この場合、特に最も背面側に位置する刃がカシメ28以外の部分でも押持されるため、刃を固定する際に刃が破損しがたくなり、また、よりしっかりと刃支持部に刃を固定することができる。
【0037】
他方で、図示の本実施形態の剃刀Rでは、既述のとおり、背面フラップ部24Fが折り線F3で折り曲げられ、背面片24Pが折り線F4で折り曲げられて、正面部23に対向する背面部24が形成されている。この形態においては、一対ある背面フラップ部24F,24F、一対ある背面片24P,24Pのいずれを先に折り曲げるかは限定されず、背面部24は、背面フラップ部24F及び背面片24Pの重なりによって形成されていればよい。一形態としては、
図8~
図11に示すように、正面部23側から一方の背面片24P、一対の背面フラップ部24F,24F、他方の背面片24Pの順で折り曲げられて、背面部24を構成している。図示の形態では、より好ましい形態として、補助短側面片22S´が連接する背面片24Pが最初に、すなわち最も正面部23側に位置するように折り曲げられており、この背面片24Pから折り線F9で折り曲げられて補助短側面片22S´が短側面部22Sを構成するように組み立てられている。このため、背面片24Pが自由片となって正面部側に落ちたり移動したりしないようになっている。背面フラップ部24F及び背面片24Pの固定方法は、限定されない。例えば、背面フラップ部24F及び背面片24Pの重なる部分を接着剤等の接着手段によって接着して固定することができる。図示の形態は、一方の背面片24Pにスリット等により形成した湾曲状の係止縁24eと、他方の背面片24Pにスリット等により形成した係止片24tを設け、これらの係合により背面片24P,24P同士が連結されることで固定されるように形成されている。このように係止片やスリットへの差し込み等の係合手段によれば、接着剤等を用いることのなく組み立てることができるため望ましい。
【0038】
ここで、本実施形態の刃固定部材2では、背面部24によって、刃支持部26の動きが規制されるように構成されているのが望ましい。また、この規制のよって刃固定部材2における刃支持部26の位置が定まり、刃先21tの位置が定まるように構成されているのが望ましい。すなわち、この枠体22の刃支持部26は、
図13に示されるように、折り線25で折り返されており、折り線25を軸とする自由片となっている。したがって、
図7に示すように、刃支持部26の折り返した長さと、正面部23と背面部24との間の離隔距離の調整によって、背面部24に刃支持部26が当接又は押持されて動きが規制される。そして、この動きの規制のよって、刃21の刃先21tが過度に刃先露出口27から突出することが防止される。さらに、その規制位置における刃先の位置が適切な位置となるように調整することができる。図示の形態では、刃21の基端縁が刃支持部26の縁を超えて固定されているため、刃21の基端側が背面部24に当接した際に、刃支持部26の動きが規制されるようになっており、その位置において刃先21tの位置が適切な位置となるように調整されている。刃21の基端縁が刃支持部26の縁をこえないように固定されている場合には、刃支持部26の縁が背面部24に当接又は押支持された際に、刃支持部26の動きが規制される。そして、刃先21tの位置が決定されるようにすることができる。なお、ここでの刃先21tの位置とは、剃刀用刃と刃先露出口27の開口面との間の角度、開口面から又は開口面までの距離を含む。また、決定される刃21の位置は、固定位置であるのが望ましいが、必ずしも固定された位置である必用はなく範囲があってもよい。刃の具体的な位置は限定されないが、角度の好ましい一形態としては、使用時の正面をスライドさせる方向に対する刃先の角度が20~25度、好ましくは、22~24度である。このように調整されるようにすればよい。
【0039】
さらに、図示の形態のように背面部24とともに長側面部22Lを有する場合には、背面部24及び長側面部22Lの少なくとも一つによって、刃支持部26の動きが規制されるようにするのが望ましい。長側面部22Lが刃21の基端側の縁又は刃支持部26の縁に当接又は押持することで、刃支持部26が過度に正面部側に移動することが規制されるようにすれば、刃先21tが過度に開口面から奥に移動することが防止される。
【0040】
他方で、この実施形態において剃刀Rにおいて、ハトメやカシメ28によって刃21を固定する形態であれば、
図7に示されるように、刃支持部26から突出するカシメ28等の頭部28Hも刃先21tの位置を決める要素とすることができる。すなわち、このカシメ28の頭部28Hは、刃支持部26と正面部23の裏面側との間に位置するため両者の離隔距離が過度に近くなることを規制する。したがって、規制される位置において、予め設定した所望の位置に刃先の位置が定まるようにすることで、カシメ28を刃先21tの位置を適切な位置に決定する要素とすることができる。
【0041】
他方で、本実施形態の柄体1は、特に
図1~5及び
図17~
図18に示されるように、利用者に把持されるハンドル部10と、刃固定部材2が取り付けられるヘッド部30と、を有しており、特に
図17に展開図を示すように、一枚のシート材1Sから組み立てられている。
【0042】
この柄体1のヘッド部30は、第一折り線41を介してハンドル部10の先端側に連接された取付部31と、第一折り線41と平行に配された第二折り線42を介して取付部31に連接する背板部32と、を有している。取付部31は、刃固定部材2を取り付けるための取付面31Aを有しており、この取付面31Aは、ハンドル部後端方向と反対側の面に形成されている。なお、第一折り線41及び第二折り線42は必ずしも一つである必用はなく、複数設けられていてもよい。
【0043】
ハンドル部10は、後端部が細長形状をなしており、先端側が漸次拡幅する扇状をなし、その縁部に第一折り線41が位置して、取付部31に連接している。
【0044】
この剃刀Rでは、特に、
図4及び
図16に示されるように、柄体1の取付部31の取付面31Aに対して、刃固定部材2の背面側が対面し、刃21の刃先21tが前記第一折り線41側に位置する向きで、取り付けられている。本実施形態の刃固定部材2は、既述のように折り線25とスリット26Sで囲まれる範囲を、前記折り線25で正面と反対方向に折り返されているため、刃支持部26が背面側に凸となっているが、この剃刀Rでは、取付部31の取付面31Aに対して、背面側に凸となる刃支持部26よりも、さらに背面側に位置する背面部24を介して固定され、正面23Fは、平らな状態で柄体1の取付部31に対して、取り付けられている。また、刃先21tが第一折り線41に向く方向となっているため、使用時にハンドル部10を引く操作によって、刃固定部材2の正面23Fが、肌上をスライドさせることができ、体毛等を刃先21tによって切断することができる。
【0045】
柄体1の取付部31と刃固定部材2との固定については限定されないが、肌に当接する面となる刃固定部材2の正面23Fに不要な凹凸が形成されないようにするが望ましく、図示の形態では、刃固定部材2の背面部24の背面側と、柄体1の取付面31Aとを粘着テープによって接着して固定するようにしている。なお、接着剤によって接着して固定するようにしてもよい。この場合、この接着剤の種類は限定されないが、剃刀Rが水に触れる態様で使用されることが多いことから、水性又は油性の耐水性を有する接着剤であるのが望ましい。適宜の位置においてカシメのような機械的な固定手段で固定するようにしてもよい。
【0046】
また、図示の形態の枠体22は、
図6~
図11に示されるように、長側面部22Lと背面片24Pとの間に位置する折り線F4の離隔した二点から背面片24P側に凸となるスリット24Sが形成されており、このスリットと折り線F4で囲まれる範囲を切り起こすことで、長側面部22Lと背面部24との稜線となる折り線F4の位置から突出する凸片24Cが形成される形態となっている。その一方で、特に
図17及び
図18に示されるように、柄体1のヘッド部30の第一折り線41及び第二折り線42に連接するように、この凸片24Cが差込可能なスリットや打ち抜きによる通孔31Cが設けられており、特に
図3及び
図16に示されるように、前記凸片24Cをその通孔31Cに挿通させることで、柄体1に対する刃固定部材2の位置決めや接続がされるようになっている。本実施形態では、この接続と背面部24の背面側と取付面との接着によって柄体1に対して刃固定部材2を固定している。但し、通孔31Cを第一折り線41及び第二折り線42の位置に限定されず、例えば、取付面31Aに形成してもよい。通孔31Cの位置は適宜に変更することができる。また、この形態においては、通孔31Cの長さや幅、凸片24Cの形状や厚みを調整し、接続を強固なものとして、接着剤による別途の固定を行わないようにしてもよい。
【0047】
他方で、本実施形態の柄体1は、特に好ましい形態として、
図1~
図5、
図17~
図18に示されるように、取付部31が、直線状の第一折り線41の折り曲げによりハンドル部10側から立ち上がるように形成されており、第一折り線41を軸として揺動可能に接続されている。つまり、取付部31とハンドル部10と間の角度が変化可能に接続されている。上記のとおり、取付部31は、刃固定部材2を取り付けるための取付面31Aを有しており、この取付面が、ハンドル部後端方向と反対側の面に形成されているため、本形態の剃刀では、取付面に取り付けられた刃固定部材2も、第一折り線41を軸として取付部31が揺動すると、それに応じて動くようになっている。すなわち、本実施形態の剃刀Rは、一枚のシート材から形成されるものでありながら、に刃や刃固定部材が曲面に追従できる首振り機構を有するものとなっている。
【0048】
また、本実施形態の剃刀Rの柄体1は、取付部31側を先端としてハンドル部10から切り起こされ、この切り起こしによって板バネ弾性を生ずる舌片部50を有している。舌片部50の板バネ弾性は、シート材の剛性、コシ等の弾性変形性を主として、舌片部50の幅及び長さ、さらにハンドル部10の全体形状によって調整される。
【0049】
一方、背板部32は、第二折り線42で折り返されて取付部31よりもハンドル部10の後端側に位置されており、特に、背板部32が、切り起こされた舌片部50とハンドル部10との間に差し込まれ、舌片部50によって背板部32は押持されるように構成されている。この図示の形態では、舌片部50が背板部32を押すだけはなく、ハンドル部10とで背板部32を挟持するように構成されている。この時、舌片部50が、切り起こし前の位置に戻ろうとする力が強い場合には、背板部32に弾性付勢力が掛かり、より強く挟持されるようになる。
【0050】
この柄体1は、構造的に、第一折り線41を軸として取付部31が揺動可能となっているとともに、第二折り線42が第一折り線41と平行に位置しているため、取付部31が第一折り線41を軸としてハンドル部10の後端方向に向かうように動くと、第二折り線42がハンドル部10の後端側に近づくように移動する。その結果、背板部32がより舌片部50の基端部51側へと差し込まれるようになる。さらに、取付部31が第一折り線41を軸としてハンドル部10の後端方向に向かうと取付部31がハンドル部10に対してより起立した状態になっていく。その結果、背板部32が舌片部50の基端部51側へと差し込まれていくだけでなく、背板部32が舌片部50を押し上げようとする。すなわち、舌片部50が、より切り起こされるようになっていくため、背板部32を押し返す弾性付勢を発生し、高まっていく。このように、この実施形態では、取付部31の揺動にともなう背板部32の舌片部50の基端部51側への押し込みに対して弾性付勢が生ずるようになっている。
【0051】
ここで、この柄体1は、特に好ましい形態として、ハンドル部10の舌片部50の切り起こし方向と反対面の幅方向中央部に後端側から先端側に向かって、ハンドル部折り曲げ線11が設けられており、ハンドル部10が幅方向、つまり、舌片部50の切り起こし方向に直交する方向でかつ切り起こされている側が谷側となるようにして略V字型に折り曲げられて立体的なハンドル部10となっている。このようにハンドル部10がV字型となっていると、平面的なハンドル部に比較して意匠性に優れるとともに、各段に操作性が向上する。
【0052】
さらに、このハンドル部10の折り曲げは、舌片部50の機能と切り起こしを好適なものとする。すなわち、ハンドル部10がV字型に折り曲げられると、舌片部50の基端部51が狭められる。その結果、舌片部50の先端側がハンドル部10から持ち上げられるようになる。この際、谷側に持ち上げられるようになるため、上記のハンドル部10のように折り曲げられているのが望ましい。さらに、ハンドル部折り曲げ線11が、図示の形態のように、舌片部50の基端部51まで至っていると、舌片部50の基端部51もやや湾曲するように折り曲がるため基端部51で、バネとして機能しなくなる塑性変形の折れが生じ難くなるとともに、弾性付勢力が発生させやすくなる。
【0053】
さらに、この柄体1は、特に好ましい形態として、背板部32の先端にハンドル部10に接する摺動片33が設けられており、取付部31の動きに応じて、摺動片33がハンドル部10上を摺動するように構成されている。摺動片33は、舌片部50が切り起こされた際に残る両端位置、つまり、舌片部50を挟んだ位置に接するように一対で設けられており、これにより、背板部32の安定的な移動が行われるようになっているとともに、背板部32とハンドル部10との摩擦が調整され、舌片部50が背板部32に対して、所望の弾性付勢力に調整しやすくなる。
【0054】
さらに、この柄体1は、特に好ましい形態として、ハンドル部10の側縁に切欠き部12が設けられており、例えばハンドル部10をV字型に折り曲げた際に、この切欠き部12よりハンドル部10の先端側と後端側とにおいて側縁間の距離が若干の異なり、切欠き部12の位置において段差が形成されるようになっている。そして、取付部31の動きに応じてハンドル部10上を摺動する摺動片33がこの段差に接触することで、背板部32がハンドル部10の後端側に過度に移動することが規制され、ヘッド部の揺動が意図しない過度な範囲とならないようになっており、使用時の安全性が高められている。
【0055】
なお、本実施形態の柄体の大きさは、一般的な剃刀の大きさにでき限定されないが、展開状態における全長L1が120~138mm、組み立て後の全長が80~100mm、ヘッド部の幅L2が、35~49mm、柄体の幅L3は15~20mmとするのがよい。この大きさであれば、一般的な剃刀の大きさであり、また、シート材から強度の高い剃刀の柄体を構成できる。
【0056】
ここで、刃固定部材2の枠体22、柄体1における各折り線については、シート材の折り返しや折り曲げを容易に行えるようにするための線であり、位置決めのための単なる印刷による線であってもよいが、好ましくは、折筋とも称される罫線、ミシン目、ハーフスリットであり、特に、舌片部の弾性付勢力の調整、取付部の揺動のスムーズさ、背板部の動きのスムーズさ、折り返しのしやすさ等からハーフスリットとするのが望ましい。但し、すべてが同種の線である必要はない。第一折り線、第二折り線と重なる位置に通孔31Cを設けるのであれば、一部をハーフスリット、一部をカットスリットで形成するようにしてもよい。折り線は、必要な強度や折り曲げに必要な応力を考慮して適宜に配することができる。また、ミシン目とする場合のカットタイ比、ハーフスリットとする場合のスリット深さも同一にする必要はない。
【0057】
この本発明に係る剃刀Rは、上記のとおり刃固定部材2の枠体22及び柄体1をともに、紙等の一枚のシート材から簡易に組み立てられる構造をなしている。また、金属製の刃及びカシメ等以外を紙製の素材で構成することができるため、剃刀ヘッドを分解して分別することなく、また、剃刀ヘッドと柄体とを分別することなく、廃棄やリサイクルすることが可能となっている。すなわち、リサイクルに関し、例えば、特開2020-24485「機密古紙のリサイクル方法及び機密古紙のリサイクルシステム」に開示されるように、古紙パルプ製造工程では、金属等の重量異物を選別する工程が備わっているものがあり、金属製の刃は資源として回収してリサイクルすることが可能である。したがって、本発明に係る剃刀Rは、上記のとおり剃刀ヘッドを分解して分別することなく、また、剃刀ヘッドと柄体とを分別することなく、廃棄やリサイクルすることが可能であり、資源の有効活用の点で優れる。一般古紙と同様にリサイクルすることも可能である。
【0058】
また、特に、本実施形態の剃刀Rは、柄体1の取付部31が第一折り線41を軸として揺動可能に構成され、さらに、第二折り線42側がハンドル部10方向へ押し込まれた際に、背板部32が舌片部50によって弾性付勢されて反発力が生じるため、取付面31Aが対象物に対して弾性付勢を有して動くようになり、使用時に肌に追従する首振り機構を有するものとなっている。
【0059】
さらに本実施形態の刃固定部材2の枠体22及び柄体1に、特に好適なシート材1S,20について説明する。本実施形態に係るシート材1S,20は、輸送や保管が容易となる一枚のシート形状の素材であればよい。但し、上記のとおり脱プラスチックの観点から、パルプ繊維を抄紙した紙であるのが望ましい。具体的には、段ボール紙、コートボール紙、複数の紙層が積層されている多層紙が例示できる。もちろんプラスチックを含む合成繊維を含まない天然素材由来の繊維のみから構成される紙であるのがより望ましい。好適には、パルプ繊維のみからなる紙が望ましい。耐水性や耐油性を有するものであってもよい。また、特に好ましい紙は、三以上の紙層を有する多層紙である。
図19に示すように、多層紙90は、複数の紙層が積層されているため各層の特性を変えることができ、強度を有しつつ折り曲げやすくできる。例えば、耐水性や耐摩耗性に優れるものの硬いが折れ易い傾向の一対の表層91に柔軟な中層92を組み合わせることで、強靭性や耐久性に優れるようになり、強度を有しつつ折り曲げたり、組み立てやすくしたりすることができる。また、各折り線をハーフスリットとした際に表層を含む複数層が完全に切断されない部分を形成しやすく、各折り線における破断の恐れが格段に小さくなるとともに撓りを持たせることができる。なお、多層紙90は、多層抄きによって製造することができる。また、多層紙90は、市販されているものであってよく、例えば、大日製紙株式会社製のエリプラペーパー、エリプラプラス等が例示できる。この点から、本実施形態の枠体22及び柄体1においては、多層紙で組み立てられ、特に、通孔31Cのような部分以外は、折り線がハーフスリットとされているものが好ましい。
【0060】
この剃刀Rの刃固定部材2を構成する枠体22と柄体1とにおけるシート材1S,20は、同一でもよいが異なるものであってもよい。一実施形態として、柄体を構成するシート材を紙とする場合、その坪量は、好ましくは700g/m2以上、より好ましくは750g/m2以上、特に好ましくは800g/m2以上である。この坪量であれば、各部の折り曲げによる組み立てをしやすく、しかも十分な剛性及び強度としやすい。坪量の上限値は限定されないが、抄造時にカレンダーロール等で折れジワが発生しやすくなるおそれがあり、この点からは上限値については、1400g/m2が好ましく、1240g/m2がより好ましい。紙厚は、900μm以上1,400μm以下が好ましく、より好ましくは950μm以上1,350μm以下である。
【0061】
刃固定部材2を構成する枠体22を構成するシート材20を紙とする場合、その坪量としては、好ましくは200g/m2以上、より好ましくは230g/m2以上、特に好ましくは250g/m2以上である。この坪量の紙であれば、各部の折り曲げによる組み立てをしやすい。坪量の上限値は限定されないが、400g/m2である。坪量が高すぎると、剛性が強くなりすぎて、折り曲げによって刃支持部26を形成し難くなることがある。紙厚は、200μm以上400μm以下が好ましく、より好ましくは250μm以上350μm以下である。本実施形態の枠体22は、折り線25とスリット26Sで囲まれる範囲を、前記折り線25で折り返して刃支持部26と刃先露出口27とが形成されている構造であるため、厚みが過度であると折り線での直線的な折りが難しく、また、コシが過度になりやすく、精度よく刃支持部26を形成しがたくなるおそれがある。また、刃支持部26に固定された刃を刃先露出口27から露出させるように取り付ける際に、厚みが過度であると、肌と刃先の隙間が広くなりやすく調整が難しくなる。上記範囲であれば十分に調整しやすい。また、枠体22を構成するシート材20では、柄体1を構成するシート材1Sより、やや高密度なものとしてコシを発現しやすいものとするのが望ましい。肌に触れる正面を構成するためスムーズな面としやすく、また、表面強度を向上させやすい。
【0062】
なお、坪量は、JIS P 8124(2011)に記載の「紙及び板紙-坪量測定方法」に準拠して測定した値であり、紙厚は、JIS-P8118(2014)に記載の「紙及び板紙-厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した値である。
【0063】
枠体22と柄体1とにおけるシート材1S,20を紙とする場合、その紙の構成パルプ繊維は、必ずしも限定されないが、好ましい構成パルプ繊維は、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等の針葉樹クラフトパルプ及び、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等広葉樹クラフトパルプである。その他のパルプとして、古紙パルプ、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプ、あるいは、ケナフ、麻、葦等の非木材繊維から化学的に又は機械的に製造されたパルプ等の公知の種々のパルプを適宜組合せて使用されていれもよい。強度を発現させやすいことから、針葉樹クラフトパルプ及び広葉樹クラフトパルプが90~100質量%であるのが望ましい。この場合、針葉樹クラフトパルプ及び広葉樹クラフトパルプの配合割合は、5:95~30:70であるのが望ましい。漂清潔感及び硬質感のある意匠性を有する剃刀とするならば、白パルプであり白色度が高い、針葉樹晒クラフトパルプ及び広葉樹晒クラフトパルプを用いることが特に好ましい。なお、枠体22を構成するシート材20と柄体1を構成するシート材1Sの構成パルプは同一であっても同一でなくてもよい。
【0064】
さらに、枠体22と柄体1とにおけるシート材1S,20を特に好ましい多層紙90とする場合、その層数は、限定されないものの、五~九層とし、中層92の層数を三層以上、特に五層とするのがよい。特に
図19に示す形態は、三層の中層92を有するものとなっている。中層92の総数が三層以上であると、多層紙90の強靭性や耐久性がより発現しやすいとされている。中層92の総数の上限としては、層間強度を維持する観点から、七層以下であることが好ましい。また、三層~七層は、円網多筒式抄き合わせ抄紙機を使用する場合における層間強度を維持しながら操業を行いやすい。なお、枠体22を構成するシート材20と柄体1を構成するシート材1Sの層数を同一にする必用はない。
【0065】
また、枠体22及び柄体1を構成するシート材1S,20を多層紙90とする場合、表層91及び中層92の坪量は、上記のシート材を紙とする場合の全体の坪量の範囲で調整することができ、特に限定されないが、柄体1を構成するシート材1Sでは、好ましくは、表層91の坪量としては、1層あたり60.0g/m2以上150.0g/m2以下、特には100~145g/m2が好ましい。また、中層92全体の坪量としては、490g/m2以上750g/m2以下、特には600g/m2以上740g/m2以下が好ましい。枠体22を構成するシート材20では、好ましくは、表層91の坪量としては、1層あたり10.0g/m2以上70.0g/m2以下、特には25~55g/m2が好ましい。また、中層92全体の坪量としては、140g/m2以上340g/m2以下、特には200g/m2以上300g/m2以下が好ましい。
【0066】
さらに、枠体22及び柄体1を構成するシート材1S,20を多層紙90とする場合、多層紙90全体の坪量に対する一対の表層91,91の合計の坪量の割合が、15.0%以上33.0%以下のものであるのが好ましい。一対の表層91の剛直性が高く、中層92の柔軟性が優れるようになる。よって、折り線位置で折り曲げやすく、折り線以外の位置で折れ曲がり難くなり、強度と組み立て易さに優れる柄体としやすい。なお、枠体22を構成するシート材20と柄体1を構成するシート材1Sの前記割合を同一にする必用はない。
【0067】
枠体22及び柄体1を構成するシート材1S,20を多層紙90とする場合、その多層紙90における各層のパルプ繊維の配合は、表層91は針葉樹クラフトパルプと前記広葉樹クラフトパルプの質量比(%)が0/100以上15/85以下であるのが好ましい。また、この配合の表層91ととともに、中層92は、針葉樹クラフトパルプと前記広葉樹クラフトパルプの質量比(%)を15/85以上35/65以下であるのが好ましい。剛直で高密度化しやすい広葉樹クラフトパルプが多く含有され、表層が高密度で剛直な特性となるとともに、中層が表層よりも柔軟性に富む針葉樹クラフトパルプを多く含有するため、組み立て時の各折り線での折り曲げや繰り返しの折り曲げがあっても強度が低下しがたい柄体となりやすい。なお、この範囲で枠体22を構成するシート材20と柄体1を構成するシート材1Sは、前記質量比が同一であっても異なるものであってもよい。
【0068】
また、枠体22及び柄体1を構成するシート材1S,20を多層紙90とする場合、その多層紙90は、特に、製紙用添加剤としてサイズ剤及び紙力増強剤の少なくとも一方を添加されているのが望ましい。所望の強度に調整しやすい。なお、多層紙90には、本発明の目的とする効果を損ねない範囲でその他の各種添加剤を含有させることができる。例えば、ポリビニルアルコールやワックス等を塗布することができる。特に、枠体を構成するシート材20については、ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール系樹脂と、スチレン-アクリル共重合樹脂エマルジョンとが外添塗布されているのが望ましい。さらに、パラフィンワックスを外添塗布されているのが望ましい。これらの外添塗布によって、特に、耐油性が向上する。剃刀の特に肌に触れる正面を構成する正面部、さらに枠体は、使用時に水に加えて、せっけん水、洗浄剤、シェービングフォーム等の油性成分と接触する可能性が高いため、上記添加剤によって耐油性が向上されているのが望ましい。
【0069】
多層紙90に添加される前記サイズ剤としては、スチレン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水琥珀酸(ASA)、中性ロジンサイズ剤、ロジンサイズ剤、変性ロジンエマルジョンサイズ剤などが挙げられる。これらの中でもロジンサイズ剤及び変性ロジンエマルジョンサイズ剤が好ましい。ロジンサイズ剤は、特に限定されない。ロジン系の物質は、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等のロジン類をフマル酸、マレイン酸、アクリル酸等のα,β-不飽和カルボン酸あるいはその無水物で変性した強化ロジンや、ロジン類をグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン等の多価アルコールを反応させて得られるロジンエステルを挙げることができる。また、ロジンサイズ剤には、これらの単独又はその混合物をエマルジョン化したもの、単独でエマルジョン化した後に混合したものも含まれる。さらに、エマルジョン化したものに、サイズ発現性をより向上させるために各種ポリマーを添加したものも含まれる。枠体22を構成するシート材20と柄体1を構成するシート材1Sに添加されるサイズ剤の種類は、同一であっても異なるものであってもよい。
【0070】
多層紙90に添加される前記紙力増強剤としては、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミン系樹脂、アクリル樹脂系、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂など公知の種々のものを使用できる。これらの中でも、両性紙力増強剤を使用することが好ましい。両性ポリアクリルアミドとしては、アクリルアミドとアニオン性モノマー及びカチオン性モノマーの共重合物、アクリルアミドとアニオン性モノマーとの共重合物のマンニッヒ変性物、ホフマン分解物等が挙げられる。特に両性ポリアクリルアミドは、自己定着機能を有しているため、紙間強度を向上させるべく増添したとしても、カチオン過多になることがなく、変性ロジンエマルジョンサイズ剤とともに含むことでこれを安定的に定着させることができる。枠体22を構成するシート材20と柄体1を構成するシート材1Sに添加される紙力増強剤の種類は、同一であっても異なるものであってもよい。
【0071】
サイズ剤の添加量としては、固形分で0.5kg/t以上5.0kg/t以下が好ましい。紙力増強剤の添加量としては、固形分で12kg/t以上30kg/t以下が好ましい。なお、「kg/t」はパルプ1tあたりの質量(kg)を示す。サイズ剤の添加量をこの範囲とすると、剃刀Rの特に肌に触れる正面を構成する正面部23、さらに枠体22は、使用時に水と接触する可能性が高いため、耐水性が高まり、十分な強度を保持しやすい。枠体22を構成するシート材20と柄体1を構成するシート材1Sに添加されるサイズ剤の添加量は、同一であっても異なるものであってもよい。
【0072】
また、枠体22及び柄体1を構成するシート材1S,20を多層紙90とする場合、その多層紙90は、表層91及び中層92の各層に製紙用添加剤として上記のサイズ剤及び紙力増強剤の少なくとも一方を添加することが好ましい。この場合、表層91のサイズ剤の添加量としては、固形分で0.5kg/t以上5.0kg/t以下が好ましい。また、中層92のサイズ剤の添加量としては、固形分で2.0kg/t以上5.0kg/t以下が好ましい。また、各層の紙力増強剤の添加量としては、固形分で12kg/t以上30kg/t以下が好ましい。
【0073】
さらに、枠体22及び柄体1を紙製のシート材1S,20で構成する場合、枠体22及び柄体1は、シロキサン化合物が含有されているのが望ましい。シロキサン化合物が含有されていると、シロキサン結合によって剛度、強度、耐水性が高まる。シロキサン化合物は、シロキサン結合を有するものであれば、必ずしも限定されないが、枠体22及び柄体1は、人体に接する剃刀を構成するため、生体に対して毒性が無いか、低いものが望ましい。また、シロキサン化合物は、組み立て後の枠体22、柄体1、又は剃刀にシロキサン化合物を塗工する態様のほか、組み立て前のシート材20,1Sや、素材としてのシートに対して、適宜のアルコキシシラン溶液やアルコキシシラン溶液加工品を含侵させた後、加温や加熱して含有させてもよい。このようにすると、シロキサン化合物が、パルプ繊維自体に結合したり、パルプ繊維をコーティングしたりする態様で含有されるようになるため望ましい。
【0074】
さらに、本実施形態に係る柄体は、摩擦係数や表面粗さや折り畳み適性を過度に変化させず、枠体22及び柄体1の機能及び本発明の効果を妨げない範囲で、表面保護剤や抗菌剤、抗ウィルス剤を塗布したり、含浸させたりしても良い。
【0075】
さらに、枠体22及び柄体1を構成するシート材1S,20を紙とする場合、その紙は、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.18-1:2000に準拠して測定されるZ軸強度が400kN/m2以上、好ましくは450kN/m2以上であるのが望ましい。トムソン加工等の打ち抜き、カッティングプロッター等のカッティングによって展開状態の枠体22及び柄体1を製造しやすい。
【0076】
枠体22及び柄体1を構成するシート材1S,20を紙とする場合、その紙は、特に柄体1を構成するシート材では、JIS P 8147 ISO水平法による静摩擦係数が、0.15~0.65であるのが望ましい。使用時に正面と肌との擦れがスムーズとなり、また、柄体における特に舌片部と背板部の擦れがスムーズとなる。なお、本測定法は、シート材の裏面同士、表面同士で各3回の測定を行い、裏面同士、表面同士の3回目の測定値がいずれも上記範囲であるのが望ましい。ISO水平法は,最初の滑りの静摩擦係数、3回目の滑りの静摩擦係数又は3回目の滑りの動摩擦係数の少なくとも一つを測定すればよく、最初の静摩擦係数よりも3回目の静摩擦係数が小さくなる傾向にあり、また、3回目の静摩擦係数の方がばらつきは小さくなる。なお、枠体22を構成するシート材20と柄体1を構成するシート材1Sは、静摩擦係数が、同一のものであっても異なるものであってもよいが、肌に直接に触れる枠体22を構成するシート材は、より静摩擦係数が小さいものであるほうがよい。
【0077】
さらに、枠体22及び柄体1を構成するシート材1S,20を紙とする場合、その紙は、JIS P 8151に準拠するPPS(パーカープリントサーフラフネス)が、表面及び裏面ともに好ましくは1~8μm、より好ましくは4~7μmであるのがよい。使用時に正面と肌との擦れがスムーズとなり、柄体においては、舌片部と背板部の擦れがスムーズとなる。なお、枠体22を構成するシート材20と柄体1を構成するシート材1Sは、PPSが、同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0078】
枠体及び柄体を構成するシート材を紙とする場合、その紙は、MMDの値が、表面及び裏面ともに好ましくは5~25である。使用時に正面と肌との擦れがスムーズとなり、柄体における舌片部と背板部の擦れがスムーズとなる。MMDの測定は、摩擦感テスター(KES-SE、カトーテック社製)及びその相当機を用いて測定する。なお、摩擦子は、標準付属の直径0.5mmのピアノ線を20本隣接させて構成された、長さ及び幅がともに10mmの接触面を有するものを用いる。なお、枠体22を構成するシート材20と柄体1を構成するシート材1Sは、MMDが、同一のものであっても異なるものであってもよいが、肌に直接に触れる枠体22を構成するシート材は、よりMMDが小さいものであるほうがよい。
【0079】
さらに、柄体1を構成するシート材1Sを紙とする場合については、その紙のJIS K 7171に基づく「曲げ強さ」は、39~45MPaであるのが望ましい。特に望ましくは、40~42.5MPaである。この範囲であれば、舌片部及び背板部による弾性付勢力を好適に発揮でき、取付面が肌の曲面に追従しやすく、しかも、過度の面圧とならないものとすることができる。さらに、JIS K 7171に基づく「曲げ弾性率」は、6500MPa~7500Paであるのが望ましい。この範囲であれば、舌片部及び背板部による弾性付勢力を好適に発揮でき、取付面が肌の曲面に追従しやすく、しかも、過度の面圧とならないものとすることができる。なお、「曲げ強さ」及び「曲げ弾性率」は、試験速度2mm/min、支点間距離64mで測定し、測定値は5回の平均値とする。
【0080】
さらに、柄体1を構成するシート材1Sを紙とする場合については、その紙は、JIS P 8113(2006)に準拠して測定された縦方向の引張強度が、70kN/m以上、横方向の引張強度が40kN/m以上であるのが望ましい。この引張強度を有していれば、折り畳みや組み立てに適する。
【0081】
また、柄体1を構成するシート材1Sを紙とする場合については、その紙は、JIS P 8125(2000)に準拠して測定されたテーバー剛度が縦方向で150mN・m以上であり、横方向で70mN・m以上であるのが望ましい。この範囲であれば、折り畳みや組み立てやすい。
【0082】
(第二実施形態)
次いで、
図20~
図26を参照しながら、第二実施形態の剃刀Rを説明する。なお、第一実施形態と同様の構成については、上記のとおりである。第二実施形態の剃刀Rは、刃固定部材2の構造が、第一実施形態の剃刀Rと異なっている。この第二実施形態の刃固定部材は、一方の背面片24Pに折り線F6を介して連接する第二の刃支持部26Xを有している。
【0083】
第二実施形態の枠体22は、特に
図20~26に示されるように、正面部23から立設する長側面部22Lから折り線F4で折り返されて正面部23と対向する位置とされた背面片24Pから、さらに折り線F6で折り曲げられて第二の刃支持部26Xが切り起こしによる刃支持部26(以下、本形態において第一の刃支持部とも言う)と対向して重なる位置となっている。つまり、正面部23と背面部24との間で、第一の刃支持部26が正面部23側から、第二の刃支持部26Xが背面部24側からそれぞれ延出され、所定の距離を空けて並設された形態となっている。
【0084】
そして、この刃固定部材2では、図示されるように、第二の刃支持部26Xに対しても、刃21が、その刃先21tが刃先露出口27に露出するようにして固定されている。第一の刃支持部26に固定された刃21の刃先21tと、第二の刃支持部26Xに固定された刃21の刃先21tとは、刃先の位置をずらして重なるように位置されている。図示の形態では、第一実施形態と同様に第一の刃支持部26に対して二枚の刃21が固定されており、第二の刃支持部26Xに対して一枚の刃21が固定されており、刃固定部材2には、合わせて、三枚の刃21が固定されており、三枚刃タイプの剃刀Rとなっている。このように、第二の刃支持部26Xを設けることで、固定する刃21の枚数を増加させやすくなる。
【0085】
他方で、第二実施形態の剃刀Rの刃固定部材2は、第二の刃支持部26Xが連接する背面片24Pに折り線F7を介して側面片22Pが連接されている。そして、この側面片22Pは、折り線F6の端から折り線F4側に向かって拡幅するように縁部が形成されており、背面片24Pとの間の折り線F7で折り返して側面片22Pを立ち上げた位置で、この側面片22Pの縁部上に第二の刃支持部26Xが載ってガイドされるようになっており、この第二の刃支持部26Xが側面片22Pの縁部でガイドされた位置で、第二の刃支持部26Xに固定された刃21の刃先21tの位置が所定の位置となるようになっており、第一の刃支持部26に固定された刃21の刃先21tと適切な離隔距離に位置決めされるようになっている。
【0086】
この第二の実施形態における柄体1及び柄体1に対する固定や接続の方法は、第一の実施の形態と同様である。また、柄体1と刃固定部材2におけるシート材の構成についても上記の第一の実施形態と同様とすることができる。
【0087】
(第三実施形態)
次いで、
図27~
図34を参照しながら、第三実施形態の剃刀Rを説明する。なお、第一実施形態及び第二の実施形態と同様の構成については、上記のとおりである。第三実施形態の剃刀Rは、刃固定部材2の構造が、第一実施形態及び第二実施形態の剃刀Rと異なっている。
【0088】
この第三実施形態の刃固定部材2の枠体22は、特に、
図27~
図29に示されるように、シート材20が、対向する長手縁23L,23L及び短手縁23S,23Sを有する略長方形の正面部23と、正面部23と折り線F8を介して連接し、この折り線F8で折り返すことで正面部23に重なる背面部24と、を有する形状となっている。図示の形態では、一方の短手縁23Sの位置に折り線F8が位置している形態であるが、長手縁23Lの位置に折り線F8があってもよい。また、正面部23及び背面部24の外縁形状は必ずしも一致している必要はないが、図示の形態のようにともに長方形又はこれに類似する形状であるのが望ましい。
【0089】
また、第三実施形態の枠体22の正面部23には、刃21の刃先21tを露出させるための正面側開口部27Aが設けられているとともに、正面側開口部27Aの両短手縁側に、それぞれ1又は複数の正面側凹溝26Aが形成されている。各短手縁23S側に設けられた正面側凹溝26A,26Aは対をなしており、その対をなす凹溝間を結ぶ線は、正面部23の長手方向に平行となるように配されている。図示の形態は、各短手縁に三つずつ正面側凹溝26Aが形成されており、対をなす凹溝間を結ぶ各線の間の離隔距離がほぼ均等となるように配置されている。
【0090】
他方で、この第三実施形態の枠体は、背面部24に背面側開口部27Bが設けられており、背面側開口部27Bの両短手縁側にも、それぞれ1又は複数の背面側凹溝26Bが形成されている。各短手縁側に設けられた背面側凹溝26B,26Bも対をなしており、その対をなす凹溝間を結ぶ線も、正面部23の長手方向に平行となるように配されている。図示の形態は、各短手縁側に三つずつ背面側凹溝26Bが形成されており、対となる各線の離隔距離がほぼ均等となるように配置されている。
【0091】
第三実施形態の枠体22は、正面側凹溝26Aと背面側凹溝26Bとが対応して、正面側凹溝26Aと背面側凹溝26Bとで、正面側から背面側に向かって刃を支持するための刃支持溝26Vを構成している。第三実施形態の刃固定部材2では、刃の基端側が、この刃支持溝26Vに嵌められて支持されている。図示の形態では、背面側凹溝26B及び正面側凹溝26Aが、各短手縁側に三つずつ設けられているため、枠体22は、三対の刃支持溝26Vを有しており、三枚の刃21が支持されている形態となっている。
【0092】
さらに、本実施形態の枠体22は、背面側凹溝26B間の距離が、対となる正面側凹溝26A間の距離より短いため、背面側凹溝26Bが、対応する正面側凹溝26Aよりも若干、正面部23の長手方向中心側に位置しており、刃21の基端縁が、背面側凹溝26Bの位置よりも背面側に移動することが規制され、支持されている刃21の刃先21tが正面側開口部27Aから適切な位置で露出されるように構成されている。
【0093】
他方で、第三実施形態における刃21は、
図30に示すように、使用時の正面部23の移動方向、すなわち剃刀Rを使用する際に肌に当ててスライドする方向に対する刃の角度が過度に大きくならないように、すなわち、過度に刃が立った状態とならず、適切な角度で肌に接するようにすべく、刃21の刃先側先端部分が屈曲するようにするのが望ましい。この屈曲の角度は、限定されないが、正面側凹溝26Aと背面側凹溝26Bとで構成される刃支持溝26Vの深さ、幅等によって、適宜に定めるようにすればよい。好ましくは、スライド方向に対する刃先の角度が20~25度、好ましくは、22~24度となるように調整するのが望ましい。
【0094】
枠体22と刃21の固定方法は、限定されない。例えば、紙と金属とを接着可能な耐水性を有する接着剤等によって、刃21の基端側を刃支持溝26Vに接着して固定することができる。好ましい一形態としては、
図31に示す、固定枠28Fによって、刃21を固定する形態である。
【0095】
この固定枠28Fは、
図31に示すように、一枚のシート材で構成されており、中央部が刳り貫かれた略ロ字形形状をなし、正面部23の長手方向の距離よりもやや幅狭であり、刳り貫き部分28Mの幅L10が正面側開口部27Aの幅L11よりやや幅狭となっている。固定枠28Fは、
図32~34に示されるように、刳り貫き部分28Mに正面部23の正面側開口部27Aが位置するようにして、正面部23及び背面部24を短手縁及び正面部と背面部との積層方向でもある厚み方向に沿って巻き込み、背面側の適宜の位置で縁部同士を接着して、刃支持溝26Vを正面側から被覆するようにして刃21の両端縁を押えるようにして固定している。このとき、正面部23と背面部24も分離不能に積層一体化した状態で固定することができる。なお、正面部23と背面部24との積層一体化は、固定枠28Fだけではなく、積層内面を接着剤や両面粘着テープによって貼着するようにしてもよい。
【0096】
他方で、第三実施形態の剃刀Rの枠体22は、正面部23と背面部24とが積層一体化されて形成され、短側面部や長側面部を有さないため、第一実施形態及び第二実施形態よりも厚みのあるシート材で構成されるのが望ましい。第三実施形態における正面部23及び背面部24を構成するシート材20については、第一実施形態の枠体に好適なシート材ではなく、より剛性と厚みのある柄体1に好適なシート材を用いるのが望ましい。その好適なシート材は、第一実施形態において説明した柄体1に適するシート材と同様である。なお、固定枠28Fを構成するシート材として適するものは、第一実施形態の枠体を構成するシート材と同様である。
【0097】
(第四実施形態)
次いで、
図35~
図40を参照しながら、第四実施形態の剃刀Rを説明する。なお、第一実施形態と同様の構成については、上記のとおりであり、異なる点のみを説明する。第四実施形態の剃刀Rは、柄体1の構造が、第一実施形態の剃刀Rと異なっている。具体的には、背板部構造とそれによる舌片部50の背板部32への弾性付勢力の発生に異なるところがある。
【0098】
この第四実施形態の剃刀Rの柄体1は、特に、
図35、
図36及び
図38に示されているように、背板部32が、第二折り線42に向かって凸型のスリット32Sと、このスリット32Sの端に連接し、第二折り線42に平行な一対の第三折り線43と先端縁で囲まれる先端部分32Eを有している。そして、この第三折り線43でその先端部分がハンドル部側に向かう方向で折り返されており、第二折り線42と第三折り線43との間の部分に折り重ねられている。この折り返しによって、凸型のスリット32Sで囲まれる部分が反転されて、背板部32の折り返し縁に皿板状の窪地が形成されている。なお、図示の形状では、スリットの形状は、湾曲する半楕円状となっているが、スリットの具体的な形状は限定されない。
【0099】
凸型のスリット32Sの形成位置は、舌片部50の先端の延長線方向にあり、前記窪地は、舌片部50が乗る位置に形成される。この第四実施形態では、舌片部50とハンドル部10との間に、この背板部32の皿状の窪地が差し込まれるようになっている。換言すれば、この窪地が舌片部50を受ける受け部34となっている。第四実施形態では、舌片部50が受け部34に乗る態様で、背板部32を押持している。さらに、この受け部34は、第二折り線42側に背板部32の厚み分の壁が形成されるため、背板部32は、受け部34に乗っている舌片部50の先端が、その壁部35に当接する位置で動きが規制されるようなっている。したがって、過度に取付部31が、ハンドル部10の後端側に倒れ込むことが防止されている。このため、第四実施形態では、切欠き部12は設けなくてもよい。
【0100】
この第四実施形態における剃刀Rの柄体1における第一折り線41、第二折り線42、取付部31及び取付面31Aの構成は、第一実施形態と同様であり、この第四実施形態の柄体1に対して、第二実施形態及び第三実施形態の刃固定部材2を取り付けた剃刀Rも本発明に係る剃刀Rである。また、本実施形態の柄体1に好適なシート材は、第一実施形態と同様である。
【符号の説明】
【0101】
R…剃刀、1…柄体、2…刃固定部材、20…刃固定部材の枠体に係るシート材(展開状態の枠体)、21…刃、21S…スペーサー、21t…刃先、22…枠体、22S…短側面部、22L…長側面部、22P…側面片、22F…フラップ、23…正面部、23F…正面、23L…長手縁、23S…短手縁、24…背面部、24F…背面フラップ部、24P…背面片、24e…係止縁、24t…係止片、24S…スリット、24C…凸片、26A…正面側凹溝、26B…背面側凹溝、25…折り線、26,26X…刃支持部、26S…スリット、26e…スリット端部、26V…刃支持溝、27…刃先露出口、27A…正面側開口部、27B…背面側開口部、28…カシメ、28H…カシメの頭部、28…固定枠、28M…刳り貫き部分、1S…柄体に係るシート材(展開状態の柄体)、10…ハンドル部、11…ハンドル部折り線、12…切欠き部、30…ヘッド部、31…取付部、31A…取付面、31e…取付部の縁部、32…背板部、32S…スリット、33…摺動片、41…第一折り線、42…第二折り線、43…第三折り線、50…舌片部、51…舌片部の基端部、31C…通孔、F1~F8…折り線。