(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108450
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】ペーパータオル包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 83/08 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
B65D83/08 B
B65D83/08 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012828
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】大岡 康伸
【テーマコード(参考)】
3E014
【Fターム(参考)】
3E014LB01
3E014MC07
(57)【要約】
【課題】高坪量かつ高剛度であるペーパータオルシートを含むペーパータオル包装体において、シートの取り出しやすさ、フィルムの破れにくさ、ドロップバックのしにくさ、及び取出し口のミシン目の開封のしやすさがいずれも良好であるペーパータオル包装体を提供する。
【解決手段】合成繊維とパルプ繊維を含む複合型不織布のペーパータオルシートをポップアップ式に積層し、フィルムで包装したペーパータオル包装体であって、フィルムの坪量が18g/m
2以上52g/m
2以下、厚さが20μm以上55μm以下であり、包装体は天面部に、開封することにより取り出し口のスリットを形成するためのミシン目部を有し、(包装体の天面部に形成されるスリットの長さ/包装体の長辺の長さ)×100で表される数値が50以上100以下であり、ペーパータオルシートの坪量が40g/m
2以上150g/m
2以下であるペーパータオル包装体を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成繊維とパルプ繊維を含む、複合型不織布のペーパータオルシートをポップアップ式に積層し、フィルムで包装したペーパータオル包装体であって、
前記フィルムの坪量が18g/m2以上52g/m2以下、厚さが20μm以上55μm以下であり、
包装体は天面部に、開封することにより取り出し口のスリットを形成するためのミシン目部を有し、
(包装体の天面部に形成される前記スリットの長さ/包装体の長辺の長さ)×100で表される数値が50以上100以下であり、
前記ペーパータオルシートの坪量が40g/m2以上150g/m2以下であることを特徴とする、ペーパータオル包装体。
【請求項2】
前記ペーパータオルシートの包装体からの引き出し抵抗が0.6N以上6.5N以下であることを特徴とする、請求項1に記載のペーパータオル包装体。
【請求項3】
前記フィルムのJIS K 7127に基づく乾燥時のMD方向の引張強度(DMDT)が7N/25mm以上20N/25mm以下であり、乾燥時のCD方向の引張強度(DCDT)が4.5N/25mm以上13.2N/25mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のペーパータオル包装体。
【請求項4】
前記ペーパータオルシートの厚さが150μm以上1200μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のペーパータオル包装体。
【請求項5】
前記ペーパータオルシートのMD方向の曲げこわさが10μN・m以上130μN・m以下であることを特徴とする、請求項1に記載のペーパータオル包装体。
【請求項6】
包装体の天面部に形成される前記スリットの長さが110mm以上300mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のペーパータオル包装体。
【請求項7】
前記ペーパータオルシートのJIS P 8113に基づく乾燥時のMD方向の引張強度(DMDT)が10N/25mm以上75N/25mm以下であり、乾燥時のCD方向の引張強度(DCDT)が3N/25mm以上29N/25mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のペーパータオル包装体。
【請求項8】
前記ペーパータオルシートの単位重量当たりの吸水量が210g/m2以上520g/m2以下であることを特徴とする、請求項1に記載のペーパータオル包装体。
【請求項9】
前記ペーパータオルシートの単位面積当たりの吸水量が3g/g以上7.5g/g以下であることを特徴とする、請求項1に記載のペーパータオル包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合型不織布のペーパータオルシートを含むペーパータオル包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
ペーパータオルは、キッチン周りの油汚れ掃除、水拭き、食品の水切り等、様々な用途が存在する。
【0003】
ペーパータオルには、水及び油に対する優れた吸収性、掃除用途に使用した際にも簡単に破れず継続使用に耐える強度が求められている。
【0004】
上記を満たすペーパータオルとして、合成繊維の不織布にパルプ繊維を水流交絡して複合型不織布を製造する技術が開発されている。
また、このような複合型不織布の積層体の包装として、従来からポリエチレン等のフィルムを用いたフィルム包装体が知られている。
【0005】
そのような水流交絡により製造した複合型不織布の先行技術文献として、例えば、特許文献1には、パルプ繊維ウエブと合成繊維ウエブとを水流交絡処理して得られる不織布ワイパーであって、パルプ繊維ウエブに含まれるパルプ繊維の平均繊維長が1.0~5.0mmであり、当該不織布ワイパーの坪量が20~42g/m2であり、構成比がパルプ繊維ウエブ70~50質量%、合成繊維ウエブ30~50質量%である、ことを特徴とする不織布ワイパーが開示されている。
【0006】
また、ティシュペーパーやペーパータオルの包装体の先行技術文献として、例えば、特許文献2には、可撓性フィルムにより形成されて内部に収容部が設けられた袋本体と、その袋本体の前記収容部に収容された、折り畳んで交互に重ね合わされた家庭用薄葉紙と、を含み、袋本体の表面の中央部に、表面の長辺方向に沿って、家庭用薄葉紙の幅100~185mmに対し30%~70%の長さのスリット予定部がミシン目によって形成され、
ミシン目を裂開することにより、スリット予定部が開口されてスリット部とされ、そのスリット部において家庭用薄葉紙の幅が縮められながらスリット部から引き出されることにより、次の層の家庭用薄葉紙が順に引き出される袋入り家庭用薄葉紙が開示されている。
【0007】
同様に、特許文献3には2プライのシートからなるティシュペーパーの積層体と、積層体を収納するフィルムパックを備えた略直方体のフェイシャルティシュ製品であって、フィルムパックは、頂面に、頂面の長辺に平行するミシン目を有しており、フィルムパックの長辺の寸法は150mm以上200mm以下であり、フィルムパックの短辺の寸法は100mm以上140mm以下であり、フィルムパックの高さは60mm以上120mm以下であり、ティシュペーパーの、乾燥時の縦方向引張り強さ及び横方向引張り強さの幾何平均DGMTは、110gf/25mm以上230gf/25mm以下であり、フィルムパックに収納されたティシュペーパーは、180組以上300組以下であり、フィルムパックの側面のうち、短辺と高さ方向の辺で構成される短側面の、高さ方向の曲げ抵抗値は40mN以上120mN以下である、フェイシャルティシュ製品が開示されている。
【0008】
さらに、特許文献4には2プライの非ローションティシュペーパーがフィルムパックにポップアップ式で収納されてなるティシュペーパー包装体であって、フィルムパックの上面にミシン目部が形成されており、ミシン目部が、開裂されることによってティッシュペーパーを取り出すスリット状の取出し口を構成し、パック密度が、0.11g/cm3以上0.22g/cm3以下であり、3枚目から15枚目までの非ローションティシュペーパーの取出し抵抗の平均値が、60gf以上340gf以下であり、非ローションティシュペーパーの取出し方向における引張強度が、250gf/25mm以上460gf/25mm以下であり、非ローションティシュペーパーの紙厚が、0.6mm/10ply以上1.3mm/10ply以下であり、非ローションティシュペーパーのシート幅に対するミシン目部の長さが、0.4以上0.8以下であり、非ローションティシュペーパーが、JIS P8113に基づく乾燥時の縦方向の引張強さDMDTと乾燥時の横方向の引張強さDCDTとの積の平方根GMTが、140gf/25mm以上280gf/25mm以下であり、非ローションティシュペーパーの組数が、140組以上310組以下であるティシュペーパー包装体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2018-193634号公報
【特許文献2】特開2008-183034号公報
【特許文献3】特開2019-119482号公報
【特許文献4】特開2020-069155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のような従来のティシュペーパーやペーパータオルの場合、包装資材として使用するフィルムの坪量、厚み、取り出し口スリットの長さ等を自由に調整することが可能だが、合成繊維を含有する高坪量かつ高剛度のペーパータオルでは、シートの剛性が高くなって取り出し時の抵抗が大きくなるため、取り出し性に劣る。
【0011】
しかし、取り出し性を改善するためにスリットを長くすると、枚数が少なくなった際にドロップバックが起こりやすくなる他、開口部からゴミや水が入りやすくなる。逆にスリットを短くしすぎると、取り出し時の抵抗が強くなって取出し性が劣ったり、スリットが裂けるおそれがあったりする。
【0012】
また、フィルムの厚みも薄くすると、取り出し時にスリット部からフィルムが破れるリスクが高くなる。逆にフィルムが厚すぎると、取り出し口ミシン目の開封性に劣る。
【0013】
以上のことから、従来の高坪量かつ高剛度のペーパータオルでは、シートの取り出しやすさ、フィルムの破れにくさ、ドロップバックのしにくさ、及び取り出し口のミシン目の開封のしやすさを両立させることが困難であった。
【0014】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、高坪量かつ高剛度であるペーパータオルシートを含むペーパータオル包装体において、シートの取り出しやすさ、フィルムの破れにくさ、ドロップバックのしにくさ、及び取出し口のミシン目の開封のしやすさがいずれも良好であるペーパータオル包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明者は鋭意検討を行い、合成繊維とパルプ繊維を含む、複合型不織布のペーパータオルシートをポップアップ式に積層し、フィルムで包装したペーパータオル包装体において、フィルムの坪量及び厚さをそれぞれ所定の数値範囲内に調整し、天面部に、開封することにより取り出し口のスリットを形成するためのミシン目部を形成し、かつ、包装体の長辺の長さに対する包装体の天面部に形成されるスリットの長さの比率、及びペーパータオルシートの坪量をそれぞれ所定の数値範囲内に調整することで、シートの取り出しやすさ、フィルムの破れにくさ、ドロップバックのしにくさ、及び取出し口のミシン目の開封のしやすさがいずれも良好であるペーパータオル包装体とすることができ、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
【0016】
(1)本発明の第1の態様は、合成繊維とパルプ繊維を含む、複合型不織布のペーパータオルシートをポップアップ式に積層し、フィルムで包装したペーパータオル包装体であって、前記フィルムの坪量が18g/m2以上52g/m2以下、厚さが20μm以上55μm以下であり、包装体は天面部に、開封することにより取り出し口のスリットを形成するためのミシン目部を有し、(包装体の天面部に形成される前記スリットの長さ/包装体の長辺の長さ)×100で表される数値が50以上100以下であり、前記ペーパータオルシートの坪量が40g/m2以上150g/m2以下であることを特徴とする、ペーパータオル包装体である。
【0017】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載のペーパータオル包装体であって、前記ペーパータオルシートの包装体からの引き出し抵抗が0.6N以上6.5N以下であることを特徴とするものである。
【0018】
(3)本発明の第3の態様は、(1)に記載のペーパータオル包装体であって前記フィルムのJIS K 7127に基づく乾燥時のMD方向の引張強度(DMDT)が7N/25mm以上20N/25mm以下であり、乾燥時のCD方向の引張強度(DCDT)が4.5N/25mm以上13.2N/25mm以下であることを特徴とするものである。
【0019】
(4)本発明の第4の態様は、(1)に記載のペーパータオル包装体であって、前記ペーパータオルシートの厚さが150μm以上1200μm以下であることを特徴とするものである。
【0020】
(5)本発明の第5の態様は、(1)に記載のペーパータオル包装体であって、前記ペーパータオルシートのMD方向の曲げこわさが10μN・m以上130μN・m以下であることを特徴とするものである。
【0021】
(6)本発明の第6の態様は、(1)に記載のペーパータオル包装体であって、包装体の天面部に形成される前記スリットの長さが110mm以上300mm以下であることを特徴とするものである。
【0022】
(7)本発明の第7の態様は、(1)に記載のペーパータオル包装体であって、前記ペーパータオルシートのJIS P 8113に基づく乾燥時のMD方向の引張強度(DMDT)が10N/25mm以上75N/25mm以下であり、乾燥時のCD方向の引張強度(DCDT)が3N/25mm以上29N/25mm以下であることを特徴とするものである。
【0023】
(8)本発明の第8の態様は、(1)に記載のペーパータオル包装体であって、前記ペーパータオルシートの単位重量当たりの吸水量が210g/m2以上520g/m2以下であることを特徴とするものである。
【0024】
(9)本発明の第9の態様は、(1)に記載のペーパータオル包装体であって、前記ペーパータオルシートの単位面積当たりの吸水量が3g/g以上7.5g/g以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、高坪量かつ高剛度であるペーパータオルシートを含むペーパータオル包装体において、シートの取り出しやすさ、フィルムの破れにくさ、ドロップバックのしにくさ、及び取出し口のミシン目の開封のしやすさがいずれも良好であるペーパータオル包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本実施形態に係るペーパータオル包装体の斜視図である。
【
図2】
図1の包装体の取り出し口を開封する前の状態の斜視図である。
【
図3】本発明のペーパータオルシートの吸水量の測定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0028】
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0029】
<ペーパータオル包装体>
図1は、本実施形態に係るペーパータオル包装体1(以下、単に包装体1とも称する)の斜視図である。
本実施形態に係るペーパータオル包装体1は、合成繊維とパルプ繊維を含む、複合型不織布のペーパータオルシート10をポップアップ式に積層し、フィルム2で包装したものである。
【0030】
なお、
図2に示すように、ペーパータオル包装体1は天面部に、開封することにより取り出し口のスリット3を形成するためのミシン目部4を有する。このミシン目部4を開封することにより、
図1に示すようなスリット3が形成される。
このとき、包装体1の天面部に形成されるスリット3の長さSLは110mm以上300mm以下であることが好ましく、160mm以上270mm以下であることがより好ましく、180mm以上230mm以下であることが更に好ましい。長さSLが110mm未満であると、取り出し口の開口部が小さくなりすぎてしまい、ペーパータオルシート10の取り出し性に劣る。長さSLが300mmを超えると、取り出し口の開口部が大きくなりすぎてしまい、ドロップバックが起こりやすくなる。
なお、このとき形成されるスリット3については、包装体1の天面部のみに形成されてもよく、連続して包装体1の側面に形成されてもよい。このとき、包装体1の天面部に形成されるスリット3の長さSLは、包装体1の天面部に形成されたスリット部分についてのみを測定する。
【0031】
また、包装体1の長辺の長さPLに対する、包装体1の天面部に形成されるスリット3の長さSLの比率である、(包装体1の天面部に形成されるスリット3の長さSL/包装体1の長辺の長さPL)×100で表される数値が50以上100以下であり、75以上100以下であることが好ましく、90以上100以下であることがより好ましい。数値が50未満であると、取り出し口の開口部が小さくなりすぎてしまい、ペーパータオルシート10の取り出し性に劣る。数値が100を超えると、取り出し口の開口部が大きくなりすぎてしまい、ドロップバックが起こりやすくなる。
なお、包装体1の各辺の長さは特に限定されないが、長辺の長さPLは110mm以上300mm以下であることが好ましく、短辺の長さPWは160mm以上270mm以下であることが好ましく、高さの長さPHは180mm以上230mm以下であることが好ましい。
【0032】
さらに、ペーパータオルシート10の包装体1からの引き出し抵抗は0.6N以上6.5N以下であることが好ましい。引き出し抵抗が0.6N未満であると、ペーパータオルシート10がドロップバックしやすくなる。引き出し抵抗が6.5Nを超えると、ペーパータオルシート10が取り出しにくくなり、取り出し性に劣る。
【0033】
引き出し抵抗は、デジタルフォースゲージDS2-50N(イマダ社製)を用いて測定する。まず、デジタルフォースゲージにペーパータオルシート10を固定可能な治具を取り付けた後、包装体1のミシン目部4を開封し、天面のペーパータオルシート10(1枚目のシート)の端部を、デジタルフォースゲージの治具で挟んで固定する。包装体1も動かないように固定した後、1m/秒以上の速度で引き出した時の抵抗の絶対値のピークを記録する。同様の操作を1シート目~10シート目まで計10回行い、その平均値を最終的な引き出し抵抗とする。
【0034】
(フィルム)
ペーパータオルシート10を包装するフィルム2としては、通常のティシュペーパーやペーパータオルを包装するプラスチック製のフィルムを特に制限なく使用することができ、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられるが、中でもポリエチレンが好ましい。
フィルム2の坪量は18g/m2以上52g/m2以下であり、23g/m2以上42g/m2以下であることが好ましく、25g/m2以上33g/m2以下であることがより好ましい。フィルム2の坪量が18g/m2未満であると、フィルム2が薄くなりすぎるため、ペーパータオルシート10の取り出し時にスリット3の端部から裂けやすくなる。また、枚数が少なくなったときに包装体1が潰れて美粧性に劣る。フィルム2の坪量が52g/m2を超えると、フィルム2が硬くなってしまい、取り出し口のミシン目部4が開けにくくなり、開封性に劣る。
なお、フィルム2の坪量は、JIS P 8124に準拠して測定される。
【0035】
フィルム2の厚さは20μm以上55μm以下であり、25μm以上45μm以下であることが好ましく、27μm以上35μm以下であることがより好ましい。フィルム2の厚さが20μm未満であると、フィルム2が薄くなりすぎるため、ペーパータオルシート10の取り出し時にスリット3の端部から裂けやすくなる。また、枚数が少なくなったときに包装体1が潰れて美粧性に劣る。厚さが55μmを超えると、フィルム2が硬くなってしまい、取り出し口のミシン目部4が開けにくくなり、開封性に劣る。
なお、フィルム2の厚さはJIS K 7130に準拠して測定する。
【0036】
フィルム2のJIS K 7127に基づく乾燥時のMD方向の引張強度(DMDT)が7N/25mm以上20N/25mm以下であることが好ましく、9N/25mm以上16.5N/25mm以下であることがより好ましく、9.6N/25mm以上12.7N/25mm以下であることが更に好ましい。
また、フィルム2のJIS K 7127に基づく乾燥時のCD方向の引張強度(DCDT)が4.5N/25mm以上13.2N/25mm以下であることが好ましく、5.9N/25mm以上11.0N/25mm以下であることがより好ましく、6.2N/25mm以上8.5N/25mm以下であることが更に好ましい。
【0037】
フィルム2のDMDTが7N/25mm未満であるか、又はフィルム2のDCDTが4.5N/25mm未満であると、フィルム2が破れやすくなる。フィルム2のDMDTが20N/25mmを超えるか、又はフィルム2のDCDTが13.2N/25mmを超えると、取り出し口のミシン目部4の開封のしやすさに劣る。
フィルム2の各方向の乾燥時の引張強度は、上述したようにJIS K 7127に基づいて測定する
【0038】
(ペーパータオルシート)
ペーパータオルシート10に用いる複合型不織布に含まれる合成繊維としては、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリスチレンから選択される一種類以上の合成繊維を含むことが好ましいが、中でもポリプロピレンを含むことがより好ましい。
また、複合型不織布に含まれるパルプ繊維としては、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等、一般的なパルプ繊維(木材パルプ)を用いることができるが、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)及び広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)を含むことが好ましい。また、パルプ繊維におけるNBKPとLBKPの含有割合は50:50以上100:0以下が好ましく、70:30以上100:0以下がより好ましく、90:10以上100:0以下が更に好ましく、100:0が最も好ましい。
NBKPとしては、例えばラジアータパイン、スラッシュパイン、サザンパイン、ロッジポールパイン、スプルース及びダグラスファーからなる繊維が好ましい。なお、NBKPの代わりにNUKP、LBKPの代わりにLUKPを用いることもできる。なお、合成繊維とパルプ繊維を含む複合型不織布の製造方法に関しては後述する。
【0039】
このとき、複合型不織布における合成繊維の割合(含有割合)が5%以上50%以下であることが好ましく、9%以上41%以下であることがより好ましく、12%以上28%以下であることが更に好ましい。合成繊維の割合が上記の数値範囲内であることにより、高坪量かつ高剛度であるペーパータオルシート10とすることができる。
また、複合型不織布におけるパルプ繊維の割合(含有割合)が50%以上95%以下であることが好ましく、59%以上91%以下であることがより好ましく、72%以上88%以下であることが更に好ましい。パルプ繊維の割合が上記の数値範囲内であることにより、高坪量かつ高剛度であるペーパータオルシート10とすることができる。
【0040】
さらに、複合型不織布は、一般的な湿潤紙力剤を含有することが好ましい。湿潤紙力剤(固形分(有効成分)換算)の含有率は、パルプ繊維(絶乾)に対して、0.05%以上2.0%以下が好ましく、0.10%以上1.5%以下がより好ましく、0.20%以上1.2%以下が更に好ましい。湿潤紙力剤の含有率を上記の数値範囲内にすることで、本願のような、高坪量かつ高剛度であるペーパータオルシート10とすることができる。
また、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、複合型不織布に耐熱安定剤、滑剤等を配合することができる。耐熱安定剤としては、例えば、BHT(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール)等のフェノール系安定剤等が挙げられる。
【0041】
ペーパータオルシート10の坪量は、40g/m2以上150g/m2以下であり、60g/m2以上100g/m2以下であることが好ましく、75g/m2以上90g/m2以下であることがより好ましい。坪量が40g/m2未満であると、ペーパータオルシート10がドロップバックしやすくなる。坪量が150g/m2を超えると、ペーパータオルシート10が硬くなってしまい、取り出し時の抵抗が強くなって取り出し性に劣る。また、取り出し時にフィルム2が裂けやすくなる。
なお、ペーパータオルシート10の坪量は、JIS P 8124に準拠して測定される。
【0042】
ペーパータオルシート10の厚さは150μm以上1200μm以下であることが好ましく、300μm以上1000μm以下であることがより好ましく、450μm以上850μm以下であることが更に好ましい。厚さが150μm未満であると、ペーパータオルシート10がドロップバックしやすくなり、厚さが1200μmを超えると、ペーパータオルシート10の取り出し抵抗が大きくなり、取り出し性に劣る。
なお、ペーパータオルシート10の厚さはシックネスゲージ(株式会社尾崎製作所製のダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK」)を用いて測定する。測定条件は、測定荷重3.7kPa、測定子直径30mmで、測定子と測定台の間に試料を置き、測定子を1秒間に1mm以下の速度で下ろしたときのゲージを読み取る。また、測定を10回繰り返して測定結果を平均する。なお、測定は3枚のペーパータオルシート10を重ねて測定し、値を1/3にして、厚さの値とする。
【0043】
ペーパータオルシート10のJIS P 8113に基づく乾燥時のMD方向の引張強度(DMDT)は10N/25mm以上75N/25mm以下であることが好ましく、18N/25mm以上63N/25mm以下であることがより好ましく、25N/25mm以上55N/25mm以下であることが更に好ましい。
また、ペーパータオルシート10のJIS P 8113に基づく乾燥時のCD方向の引張強度(DCDT)は3N/25mm以上29N/25mm以下であることが好ましく、5.5N/25mm以上24N/25mm以下であることがより好ましく、7N/25mm以上20N/25mm以下であることが更に好ましい。
DMDTが10N/25mm未満であるか、又はDCDTが3N/25mm未満であるとシートが柔らかくなりすぎてドロップバックしやすくなる。DMDTが75N/25mmを超えるか、又はDCDTが29N/25mmを超えるとシートが硬くなりすぎて取り出し性に劣る。
【0044】
さらに、ペーパータオルシート10のJIS P 8113に基づく乾燥時のMD方向の引張強度DMDTと乾燥時のCD方向の引張強度DCDTとの積の平方根GMTは5N/25mm以上48N/25mm以下であることが好ましく、9.5N/25mm以上39N/25mm以下であることがより好ましく、13N/25mm以上33N/25mm以下であることが更に好ましい。
GMTが5N/25mm未満であるとシートが柔らかくなりすぎてドロップバックしやすくなる。GMTが48N/25mmを超えるとシートが硬くなりすぎて取り出し性に劣る。
【0045】
なお、ペーパータオルシート10のDMDT及びDCDTは、上述したようにJIS P 8113に基づいて測定するが、測定条件として、速度は300m/min、試験片幅は25mm、つかみ具間の距離は100mmとする。なお、シート幅の関係でつかみ具間の距離を100mm確保できない場合は、適宜短くしてよい。また、それぞれの方向の強度であるDMDT及びDCDTの積の平方根からGMTを算出する。
この場合におけるMD方向とは、ペーパータオルシート10(複合型不織布)の製造時における製造方向(流れ方向)を意味し、CD方向とは、MD方向に直交する方向(幅方向)を意味する。
【0046】
また、ペーパータオルシート10のMD方向の曲げこわさは、10μN・m以上130μN・m以下であることが好ましく、17μN・m以上100μN・m以下であることがより好ましく、20μN・m以上50μN・m以下であることが更に好ましい。MD方向の曲げこわさが10μN・m未満であるとシートが柔らかくなりすぎてドロップバックしやすくなり、130μN・mを超えるとシートが硬くなりすぎて取り出し性に劣る。
【0047】
なお、ペーパータオルシート10のMD方向の曲げこわさはISO 2493に記載された方法に準拠し、L&W ベンディングテスター(Lorentzen&Wettre社製)を用いて測定する。ペーパータオルシート10から採取した、幅38mm、長さ100mmの試験片について、曲げ角度を15度、曲げ長(試料台のスパン)を10mmとしたときの測定値をMD方向の曲げ抵抗(荷重)とし、次の算出式によってMD方向の曲げこわさ(μN・m)を求める。
MD方向の曲げこわさ(μN・m)=60×MD方向の曲げ抵抗(mN)×曲げ長10(mm)2÷(π×曲げ角度15(°)×サンプル幅38(mm))
なお、長さ100mmの試験片を採取できない場合は、試験片の長さを短くすることができる。また、試験片はミシン目を含まないようにするが、試験片のサイズを確保する上でミシン目を含まなければならないときは、ミシン目を含んでもよい。
【0048】
ペーパータオルシート10の単位面積当たりの吸水量は210g/m
2以上520g/m
2以下であることが好ましく、260g/m
2以上430g/m
2以下であることがより好ましく、310g/m
2以上400g/m
2以下であることが更に好ましい。単位面積当たりの吸水量が210g/m
2未満であるとシートが柔らかくなりすぎてドロップバックしやすくなり、520g/m
2を超えるとシートが硬くなりすぎて取り出し性に劣る。
また、ペーパータオルシート10の単位重量当たりの吸水量は3g/g以上7.5g/g以下であることが好ましく、3.4g/g以上7g/g以下であることがより好ましく、3.7g/g以上6.5g/g以下であることが更に好ましい。単位重量当たりの吸水量が上記の数値範囲内であることにより、吸水性に優れるペーパータオルシート10とすることができる。
なお、ペーパータオルシート10の各吸水量の測定方法に関しては、
図3を参照しつつ、以下に説明する。
【0049】
まず、ペーパータオルシート10を採取し、一片が7.6cm(3インチ)の正方形の型版を用いてカットし、一辺7.6cmの矩形の試験片200を作製する。その後、吸水前の試験片200の質量を電子天秤で測定しておく。そして、試験片200をホルダー220(試験片200の3点を固定するジグで、ジグは水分を吸収しない金属からなる)にセットする。
次に、市販のバットに、蒸留水を深さ2cm入れ、ホルダー220にセットした試験片200を蒸留水中に2分間浸漬する。2分間浸漬後に試験片200をホルダー220と共に蒸留水から取り出し、
図3に示すように、試験片200の1つの隅部200dに帯210を貼り付ける。帯210は、測定するサンプルと同じペーパータオルシート10を幅2mm×長さ15mmの大きさに切り、試験片200の隅部200dから中心に向かって6mmの部分に貼り付ける。次に、ホルダー220と試験片200を、隅部200dに対向する隅部200aが上になるようにして空の水槽内に設置した棒にぶら下げ、水槽の蓋を閉めて10分間、放置する。その後、ホルダー220と試験片200を水槽から取り出し、帯210とホルダー220を外し、電子天秤で試験片200の質量を測定する。蒸留水に浸す前後での試験片200の質量変化から、試験片200の単位面積当たりの蒸留水の吸水量(g(水)/m
2(シート)を計算する。さらに、単位面積当たりの吸水量(g(水)/m
2(シート))を試験片200の坪量で割ることにより、単位面積当たりの吸水量(g(水)/m
2(シート))/坪量(g(シート)/m
2(シート))=単位重量当たりの吸水量(g(水)/g(シート))を算出する。測定は各サンプル5回ずつ行い、平均値を採用する。
なお、本測定は、JIS P 8111法に従い、温度23±1℃、湿度50±2%の状態で行う。また、蒸留水は23±1℃に保持する。
【0050】
<ペーパータオル包装体の製造方法>
本実施形態に係るペーパータオル包装体1の製造方法としては、特に制限はなく、公知の積層薄葉紙製品の製造方法により製造することができる。
そのような製造方法としては、例えば、(1)複合型不織布の製造、(2)裁断及び折り畳み、(3)積層、(4)フィルム包装、といった手順が挙げられるが、一部の手順が前後してもかまわない。
なお、(1)複合型不織布の製造において、複合型不織布は合成繊維とパルプ繊維を含むが、それらを一体化する方式は、特に限定されないが、水流交絡が好ましい。水流交絡による一体化の工程に関しては、例えば、特許第6758116号公報に詳細に記載されている。
【実施例0051】
以下の実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0052】
表1及び表2に示す各条件において、実施例1~13及び比較例1~5のそれぞれのペーパータオル包装体を作製した後、以下の評価を行った。なお、シートの折り畳み方は、各実施例及び各比較例のいずれも、変形Z字状折に折り畳み、ポップアップ形式とした。また、包装体の長辺及び短辺のそれぞれの長さはいずれも定規を用いて実測した。
【0053】
(フィルムの破れにくさ)
モニター30名がペーパータオル包装体のミシン目を開封し、取り出し口のスリットからペーパータオルシートを10枚引き出したとき、一連の作業におけるフィルムの破れにくさを評価し、フィルムが破れにくいと感じた人数によって4段階で評価した。
◎:フィルムが破れにくいと感じた人数が28人以上
〇:フィルムが破れにくいと感じた人数が25人以上27人以下
△:フィルムが破れにくいと感じた人数が21人以上24人以下
×:フィルムが破れにくいと感じた人数が20人以下
【0054】
(シートの取り出しやすさ)
モニター30名がペーパータオル包装体の製品を1パック(1包装体)使い切り、ペーパータオルシート取り出しやすさを評価した。取り出しやすいと感じた人数によって4段階で評価した。
◎:取り出しやすいと感じた人数が28人以上
〇:取り出しやすいと感じた人数が25人以上27人以下
△:取り出しやすいと感じた人数が21人以上24人以下
×:取り出しやすいと感じた人数が20人以下
【0055】
(ドロップバックのしにくさ)
モニター30名がペーパータオル包装体を1パック(1包装体)使い切ったときのドロップバック回数を記録し、1パック当たりのドロップバックの平均回数によって4段階で評価した。
◎:1パック当たりのドロップバック回数が0回
〇:1パック当たりのドロップバック回数が1回
△:1パック当たりのドロップバック回数が2~3回
×:1パック当たりのドロップバック回数が4回以上
【0056】
(取り出し口のミシン目の開封のしやすさ)
モニター30名がペーパータオル包装体における取り出し口のミシン目を開封したときのミシン目の開封のしやすさについて評価し、ミシン目が開封しやすいと感じた人数によって4段階で評価した。
◎:ミシン目が開封しやすいと感じた人数が28人以上
〇:ミシン目が開封しやすいと感じた人数が25人以上27人以下
△:ミシン目が開封しやすいと感じた人数が21人以上24人以下
×:ミシン目が開封しやすいと感じた人数が20人以下
【0057】
(包装体の美粧性)
モニター30名がペーパータオル包装体を1パック(1包装体)使い切り、使い切るまでの包装体の美粧性を評価し、美粧性に優れると評価した人数によって4段階で評価した。
◎:美粧性に優れると感じた人数が28人以上
〇:美粧性に優れると感じた人数が25人以上27人以下
△:美粧性に優れると感じた人数が21人以上24人以下
×:美粧性に優れると感じた人数が20人以下
【0058】
表1に実施例1~9の条件及び評価結果を示し、表2に実施例10~13及び比較例1~5の条件及び評価結果を示す。各評価が○以上である場合は、製品として可である。
【表1】
【0059】
【0060】
以上より、本実施例によれば高坪量かつ高剛度であるペーパータオルシートを含むペーパータオル包装体において、シートの取り出しやすさ、フィルムの破れにくさ、ドロップバックのしにくさ、及び取出し口のミシン目の開封のしやすさがいずれも良好であるペーパータオル包装体が得られることが少なくとも確認された。