(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108455
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】動吸振装置および天井構造
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20240805BHJP
E04B 9/00 20060101ALI20240805BHJP
E04B 9/18 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
F16F15/02 C
E04B9/00 A
E04B9/18 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012836
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】594192095
【氏名又は名称】株式会社昭和サイエンス
(71)【出願人】
【識別番号】000128038
【氏名又は名称】株式会社エヌ・エス・ピー
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】永松 英夫
(72)【発明者】
【氏名】内田 岳男
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 権也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 欣也
【テーマコード(参考)】
3J048
【Fターム(参考)】
3J048AA06
3J048AD06
3J048BF02
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】複数の弾性体を有する構成において施工時における弾性体の変形を抑制することが可能な動吸振装置を提供する。
【解決手段】動吸振装置10は、互いに間隔を空けて配列された2本の野縁2と野縁2の下面2aに固定された天井ボード5とを備えた天井1に設置され、少なくとも1つの質量部21と、質量部21の下面21aの一部の領域に設けられる複数の弾性部22と、質量部21および複数の弾性部22の荷重を2本の野縁2に預けた状態で2本の野縁2に取り付けられる支持部材30と、複数の弾性部22同士を連結する連結板40とを備える。支持部材30は、野縁2の下面に天井ボード5が取り付けられることにより少なくとも1つの質量部21、複数の弾性部22、および連結板40の荷重を天井ボード5に預けることができるように、連結板40の下面40bが2本の野縁2の下面2aよりも下に位置した状態で2本の野縁2に取付可能に構成されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに間隔を空けて配列された2本の野縁と前記2本の野縁の下面に固定された天井ボードとを備えた天井に設置される動吸振装置であって、
少なくとも1つの質量部と、
前記少なくとも1つの質量部の下面に設けられる複数の弾性部と、
前記少なくとも1つの質量部および前記複数の弾性部の荷重を前記2本の野縁に預けた状態で前記2本の野縁に取り付けられる取付手段と、
前記複数の弾性部のうち少なくとも隣接する2つの前記弾性部の下面に固定されて前記2つの弾性部同士を連結する連結板と、
を備え、
前記取付手段は、前記野縁の下面に前記天井ボードが取り付けられることにより前記少なくとも1つの質量部、前記複数の弾性部、および前記連結板の荷重を前記天井ボードに預けることができるように、前記連結板の下面が前記2本の野縁の下面よりも下に位置した状態で前記2本の野縁に取付可能に構成されている、
動吸振装置。
【請求項2】
前記取付手段は、前記2本の野縁のそれぞれに取り付け可能な一対の取付部と、前記一対の取付部の間で延びる延伸部とを有し、
前記延伸部は、前記複数の弾性部が前記延伸部の下面よりも下方に突出した状態で前記質量部の下面を受ける支持面を有する、
請求項1に記載の動吸振装置。
【請求項3】
前記連結板の前記天井ボードに対する摩擦抵抗は、前記弾性部の前記天井ボードに対する摩擦抵抗よりも小さい、請求項1または2に記載の動吸振装置。
【請求項4】
前記連結板と前記天井ボードとの間に介在し、前記連結板および前記天井ボードの少なくとも一方に対し、前記天井ボードと前記連結板との間の摩擦抵抗よりも小さな摩擦抵抗を有する低摩擦部材をさらに備える、請求項1または2に記載の動吸振装置。
【請求項5】
前記弾性部は、ゴムで形成されている、請求項1または2に記載の動吸振装置。
【請求項6】
前記連結板の重量は、前記複数の弾性部の総重量よりも大きい、請求項1または2に記載の動吸振装置。
【請求項7】
所定の配列方向に互いに間隔を空けて配列された2本の野縁と、
前記野縁の下面に固定される天井ボードと、
前記天井ボードの上面に設置される請求項1または2に記載の動吸振装置と、
を備えた天井構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井ボードに載置された動吸振装置および天井構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物における上下階間での床衝撃音の遮音対策として、下階の天井下地に制振材や動吸振器(ダイナミックダンパー)などの振動を低減させる装置を組み込む手法が取られることがある。
【0003】
例えば特許文献1~3では、弾性体と当該弾性体上に設けられた質量体とを有するダイナミックダンパーを、2本の野縁の下面に固定された天井ボード上に設置することができるように構成された動吸振装置が提案されている。ダイナミックダンパーを天井ボードに設置することにより、上層階から伝わった床衝撃音によって下層階の天井ボードが振動した時に、弾性体を介して質量体を所定の共振周波数で共振させることができ、この共振による反力によって天井の振動を低減することができる。
【0004】
具体的には、特許文献1に記載の動吸振装置は、ダイナックダンパーと、ダイナミックダンパーの荷重を野縁に預けるように2本の野縁に取り付けられる取付手段(取付部)と、を備えている。取付手段は、ダイナックダンパーの弾性体の下面が野縁の下面よりも下に位置し、かつ、野縁の下面に天井ボードが取り付けられることにより、ダイナックダンパーの荷重を天井ボードに預けることができるように野縁に取り付けられる。
【0005】
このダイナミックダンパーを天井に施工する場合、天井ボードを取り付ける前の野縁に取付手段を取り付けて弾性体の下面を野縁の下面よりも下方に配置し、その後、天井ボードを野縁の下面に取り付ける。このとき、ダイナミックダンパーは、弾性体の下面が天井ボードの上面に接して持ち上げられることにより、質量体が野縁から離れた状態で天井ボードに載置され、施工が完了する。そのため、ダイナミックダンパーを容易に施工することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-028177号公報
【特許文献2】特開2018-123669号公報
【特許文献3】特開2020-133905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1~3の構造では、振動を抑制したい天井ボードにダイナミックダンパーを直接設置できるため、振動抑制効果が高いという利点がある。しかし、取付手段によりダイナミックダンパーの荷重が野縁に預けられた状態で、位置調整のために天井ボードを野縁に対して水平方向に移動させると、質量体の位置が保持されたまま弾性体が天井ボードに追従することにより、弾性体が変形した状態でダイナミックダンパーが天井ボードに載置されてしまうという問題がある。
【0008】
弾性体が変形した状態でダイナミックダンパーが天井ボードに載置されると、ダイナミックダンパーの共振周波数が設計したものから変化してしまい、ダイナミックダンパーに期待する効果を得ることができない。したがって、弾性体の変形を防止する措置が必要になる。
【0009】
また、動吸振装置は、振動抑制効果を高めるために天井ボード上の水平位置によってそれぞれの位置に適した共振周波数を変えるためや弾性体の材料変更などの理由で、複数の弾性体を有している場合がある。動吸振装置が複数の弾性体を有する構成では、複数の弾性体のそれぞれについて変形防止の措置が必要になる。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、複数の弾性体を有する構成において施工時における弾性体の変形を抑制することが可能な動吸振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、種々検討した結果、上記目的は、以下の発明により達成されることを見出した。
【0012】
本発明の動吸振装置は、互いに間隔を空けて配列された2本の野縁と前記2本の野縁の下面に固定された天井ボードとを備えた天井に設置される動吸振装置であって、互いに間隔を空けて配列された2本の野縁と前記2本の野縁の下面に固定された天井ボードとを備えた天井に設置される動吸振装置であって、少なくとも1つの質量部と、前記少なくとも1つの質量部の下面に設けられる複数の弾性部と、前記少なくとも1つの質量部および前記複数の弾性部の荷重を前記2本の野縁に預けた状態で前記2本の野縁に取り付けられる取付手段と、前記複数の弾性部のうち少なくとも隣接する2つの前記弾性部の下面に固定されて前記2つの弾性部同士を連結する連結板とを備え、前記取付手段は、前記野縁の下面に前記天井ボードが取り付けられることにより前記少なくとも1つの質量部、前記複数の弾性部、および前記連結板の荷重を前記天井ボードに預けることができるように、前記連結板の下面が前記2本の野縁の下面よりも下に位置した状態で前記2本の野縁に取付可能に構成されていることを特徴とする。
【0013】
かかる構成では、複数の弾性部が少なくとも1つの質量部の下面に設けられている。連結板は、複数の弾性部のうち少なくとも隣接する2つの弾性部の下面に固定されて2つの弾性部同士を連結する。
【0014】
上記の構成の動吸振装置を天井に施工する場合、天井ボードを取り付ける前の2本の野縁に取付手段を取り付けて連結板の下面を2本の野縁の下面よりも下方に配置し、その後、天井ボードを2本の野縁の下面に取り付ける。このとき、少なくとも1つの質量部、複数の弾性部、および連結板は、連結板の下面が天井ボードの上面に接して持ち上げられることにより、質量部が2本の野縁から離れた状態で天井ボードに載置される。これにより、少なくとも1つの質量部および複数の弾性部が動吸振機能を発揮可能な状態になる。
【0015】
連結板は、少なくとも隣接する2つの弾性部の下面に固定されて2つの弾性部同士を連結するため、動吸振装置を野縁に取り付けた後に(すなわち、取付手段により少なくとも1つの質量部、複数の弾性部、および連結板の荷重が野縁に預けられた状態で)天井ボードを下方から取り付ける際に、天井ボードを水平方向に移動させた場合でも、隣接する2つの弾性部が連結板によって連結され、かつ、複数の弾性部と天井ボードとの間に連結板が介在しているので、個々の弾性部が単独で天井ボードに追随しなくなる。その結果、複数の弾性部のそれぞれが施工時において変形することを防止することが可能である。
【0016】
上記の動吸振装置において、前記取付手段は、前記2本の野縁のそれぞれに取り付け可能な一対の取付部と、前記一対の取付部の間で延びる延伸部とを有し、前記延伸部は、前記複数の弾性部が前記延伸部の下面よりも下方に突出した状態で前記質量部の下面を受ける支持面を有するのが好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、上記の動吸振装置を天井に施工する場合、隣接する2本の野縁に取付手段の一対の取付部を取り付け、一対の取付部の間で延びる延伸部の支持面に質量部をあらかじめ載せた状態とする。そして、延伸部の下面よりも下方に突出した複数の弾性部が連結板を介して天井ボードの上面に接触した状態で天井ボードを野縁に下方から取り付けることにより、このとき、少なくとも1つの質量部、複数の弾性部、および連結板は、連結板の下面が天井ボードの上面に接して持ち上げられることにより、支持面から質量部が離れる。そのため、少なくとも1つの質量部および複数の弾性部が取付手段から分離された状態で動吸振機能を確実に発揮することが可能である。
【0018】
上記の動吸振装置において、前記連結板の前記天井ボードに対する摩擦抵抗は、前記弾性部の前記天井ボードに対する摩擦抵抗よりも小さいのが好ましい。
【0019】
かかる構成によれば、前記連結板の前記天井ボードに対する摩擦抵抗は、前記弾性部の前記天井ボードに対する摩擦抵抗よりも小さいので、動吸振装置を野縁に取り付けた後に天井ボードを水平方向に移動させても、連結板が天井ボードに対して相対的に滑ることにより連結板が天井ボードに追随しにくくなり、弾性部の変形を確実に防止することが可能である。
【0020】
上記の動吸振装置において、前記連結板と前記天井ボードとの間に介在し、前記連結板および前記天井ボードの少なくとも一方に対し、前記天井ボードと前記連結板との間の摩擦抵抗よりも小さな摩擦抵抗を有する低摩擦部材をさらに備えるのが好ましい。
【0021】
かかる構成によれば、連結板と天井ボードとの間に低摩擦部材が介在しているので、動吸振装置を野縁に取り付けた後に天井ボードを水平方向に移動させても、連結板が天井ボードに対して相対的に滑ることにより連結板が天井ボードに追随しにくくなり、弾性部の変形をより確実に防止することが可能である。
【0022】
上記の動吸振装置において、前記弾性部は、ゴムで形成されているのが好ましい。
【0023】
弾性部がゴムで形成されていることにより、ウレタンなどの発泡樹脂の弾性部材に比べて安価に弾性部を製造することが可能である。
【0024】
上記の動吸振装置において、前記連結板の重量は、前記複数の弾性部の総重量よりも大きいのが好ましい。
【0025】
上記のように連結板の重量を設定することにより、天井ボードの振動を受けたときに動吸振部材が天井ボードの上で飛び跳ねて当該天井ボードから離間するおそれが低減し、動吸振機能を安定して発揮することが可能である。
【0026】
上記の動吸振装置において、前記複数の弾性部は、1つの前記質量部の下面に設けられるのが好ましい。
【0027】
かかる構成によれば、1つの質量部の下面に設けられる個々の弾性部を小型化してばね定数を小さくすることが可能である。
【0028】
上記の動吸振装置において、前記弾性部は、前記複数の質量部のそれぞれの下面に設けられるのが好ましい。
【0029】
かかる構成によれば、1つの動吸振装置の中に質量部および弾性部の組からなる複数のユニットを備えることが可能になり、個々のユニットについて共振周波数を個々にチューニングすることが可能になる。
【0030】
本発明の天井構造は、所定の配列方向に互いに間隔を空けて配列された2本の野縁と、前記野縁の下面に固定される天井ボードと、前記天井ボードの上面に設置される上記の動吸振装置とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明の動吸振装置およびそれを備えた天井構造によれば、複数の弾性体を有する構成において施工時における弾性体の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の実施形態に係る天井に備え付けられる動吸振装置の施工例であって、動吸振装置を野縁に取り付けた直後であって天井ボードを野縁に固定する前の施工途中の状態を示す模式的に示す説明図である。
【
図2】
図1の動吸振装置を斜め上方から見た斜視図である。
【
図3】
図1の動吸振装置を斜め下方から見た斜視図である。
【
図5】
図2の動吸振部材および弾性部間を連結する連結板の斜視図である。
【
図6】
図5の動吸振部材の質量部を弾性部から分離した状態を示す分解斜視図である。
【
図7】
図2の動吸振装置を野縁が延びる方向から見た図であって視認容易化のために支持部材を断面にして示した図である。
【
図8】
図7の野縁の下面に天井ボードが固定されることにより、天井ボードによって連結板およびその上方の動吸振部材が押し上げられる工程を示す工程説明図である。
【
図9】本発明の変形例に係る動吸振装置として連結板の下面に低摩擦部材を追加した例を示す図である。
【
図10】中空の弾性部の一例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態に係る天井および動吸振装置について図面に基づいて説明する。
【0034】
(天井)
図1および
図8に示される天井1は、本実施形態の動吸振装置10が野縁2に複数台設置された構成を有する。具体的には、天井1は、複数本(
図1では3本)の床梁4と、複数本(2本またはそれ以上、
図1では8本)の野縁2と、複数本(
図1では3本)の野縁受3と、野縁2の下面2aに固定される天井ボード5(
図8参照)と、複数の動吸振装置10と、を備える。
【0035】
床梁4は、上層階の床材を支えるためのものであり、
図1に示すように一方向に延びる鋼からなる構造材である。床梁4は、平板形状に形成された上下一対のフランジ4A,4Bと、これらのフランジを接続するウェブ4Cと、を有するH形鋼である。
図1に示すように、床梁4は、所定の方向において間隔を空けて平行に配列されている。この床梁4の配列方向を以下「方向D1」という。
【0036】
野縁2は、中空部が設けられた四角柱状の細長い構造材である。
図1に示すように、野縁2は、床梁4の配列方向D1に延び、方向D1と直交する方向において互いに間隔を空けて平行に配列されている。この野縁2の配列方向を以下「方向D2」という。野縁2の方向D2両側の側面には、方向D1に延びる、方向D1に直交する断面の形状がV字状の溝(被係合部)2b、2cが設けられている。溝2b、2cは、上側の面が水平に、下側の面が方向D2に対して斜めに形成されていてもよい。
【0037】
図1に示すように、野縁受3は、方向D2に延びる細長い構造材であり、野縁2の上面に配置されている。野縁受3は、平板形状に形成された上下一対のフランジ3A,3Bと、これらの一端部同士を接続する平板状のウェブ3Cと、を有する溝形鋼である。野縁受3は、方向D1において互いに間隔を空けて平行に配置されている。野縁受3と野縁2とは、互いに格子状に組み付けられている。
【0038】
図1に示すように、野縁受3は、各床梁4に対して平行に配置されている。床梁4は、下側のフランジ4Bに設けられた取付具4D、および野縁受3のフランジ3Aを貫通するボルト4Eを有し、野縁受3はボルト4Eにより取付具4Dに固定されている。
【0039】
天井ボード5は、例えば石膏ボードにより構成されており、
図8に示すように野縁2の下面2aに跨って固定されている。天井ボード5は、隣り合う両野縁2の間隔よりも幅が大きく、野縁2の下面2aに固定されている。また、天井ボード5は、動吸振装置10の複数の動吸振部材20が載置される上面5aを有する。
【0040】
動吸振装置10は、上層階の床から下層階の天井1へ伝わる床衝撃音を低減するものであり、
図1に示すように隣り合う2本の野縁2に跨るように複数配置されている。動吸振装置10は、方向D1において互いに間隔を空けて配置され、方向D1に延びる列が方向D2に複数並んでいる。
図1では、方向D2に隣り合う列において、一方の列の動吸振装置10同士の間となる位置に、他方の列の動吸振装置10が配置されている。
【0041】
(動吸振装置)
動吸振装置10の詳細な構造について、
図2~
図6を主に参照して説明する。
【0042】
図2~
図7に示すように、動吸振装置10は、それぞれ少なくとも1つの質量部21および複数の弾性部22を有する3個の動吸振部材20と、各動吸振部材20内の後述の4個の弾性部22間の連結を行う3枚の連結板40と、3個の動吸振部材20を一括して支持する支持部材30と、を備える。支持部材30は、少なくとも1つの質量部21および複数の弾性部22の荷重を2本の野縁2に預けた状態で2本の野縁2に取り付けられるように構成されており、本発明の取付手段に対応する。
【0043】
各動吸振部材20は、1つの質量部21と、質量部21の下面21aに固定された4個の弾性部22とを有する。質量部21は、直方体形状の金属板、具体的には鋼板からなり、質量部21の下面21aは、角が丸みを帯びた正方形または長方形である。動吸振部材20それぞれの質量部21の厚さ、方向D1における長さ、および方向D2における長さが同一である。
【0044】
(弾性部の説明)
4個の弾性部22は、質量部21の下面21aから下方に延び、本実施形態では、正方形の下面21aの四隅付近の部分から下方に延びるように設けられている。さらに具体的には、弾性部22は、質量部21の下面21aの四隅よりも内側の部分の領域から下方に延びる。
【0045】
弾性部22は、質量部21の下面21aに方向D1および方向D2に互いに離間して配置された4個設けられている。
【0046】
弾性部22は、弾性材料として機能する天然ゴムなどで製造され、
図6に示されるように、連結板40が固定可能な下面22aを有する角柱などのブロック状の形状を有している。
【0047】
上記のように弾性部22として利用されるウレタンなどの発泡樹脂材料に比べて安価な天然ゴムなど弾性材料を選定した場合、発泡樹脂材料よりもバネ定数が比較的大きくなるので、本実施形態では、個々の弾性部22のバネ定数を小さくするために、1つの質量部21当たり複数個の小型の弾性部22を設置している。この構成では、個々の弾性部22は天井ボード5の施工時にせん断変形しやすくなるので、本実施形態では隣接する少なくとも2個の弾性部22を以下のように連結板40によって連結することにより変形を抑制している。
【0048】
(連結板の説明)
3枚の連結板40は、各動吸振部材20内の弾性部22間の連結を行う。具体的には、連結板40は、4個の弾性部22を連結可能な面積を有する正方形形状の板材である。連結板40は、各動吸振部材20の4個の弾性部22の下面22aに接着などにより強固に固定して4個の弾性部22同士を連結し、D2およびD1方向の個々の動きを規制する。
【0049】
本実施形態では、連結板40は、各動吸振部材20の4個の弾性部22のすべてを連結する広さの正方形形状を有しているが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明では、連結板40は、複数の弾性部22のうち少なくとも隣接する2つの弾性部22の下面22aに固定されて2つの弾性部22同士を連結するように構成されていればよい。したがって、連結板40は、方向D2に並ぶ2個の弾性部22同士を連結する長方形形状であってもよい。
【0050】
なお、連結板40で天井ボード5の振動を受けるためには、連結板40の面積は小さい方が、天井ボード5との隙間ができにくい点で好ましい。
【0051】
連結板40の重量は、天井ボード5の振動を受けたときに動吸振部材20が当該天井ボード5から上方に(床梁4側)離間しない程度の重量に設定されている。
【0052】
連結板40は、例えば鋼板または塩化ビニルシートなどで製造されるが、鋼板の方が塩化ビニルシートよりも比重が大きく、同じ体積では重くなるので、動吸振部材20の飛び跳ね防止の点で好ましい。
【0053】
連結板40が鋼板の場合の鋼板の厚さは、天井ボード5の振動を受けたときに動吸振部材20が当該天井ボード5から上方に(床梁4側)離間しない程度の厚さに設定されている。
【0054】
(支持部材の説明)
本発明の取付手段に対応する本実施形態の支持部材30は、野縁2の下面2aに天井ボード5が取り付けられることにより少なくとも1つの質量部21、複数の弾性部22、および連結板40の荷重を天井ボード5に預けることができるように、連結板40の下面40bが2本の野縁2の下面2aよりも下に位置した状態で2本の野縁2に取付可能に構成されている。
【0055】
具体的には、
図4に示されるように、支持部材30は、隣り合う2本の野縁2のそれぞれに取り付け可能な一対の取付部31と、取付部31の間で方向D2に延びる延伸部32と、を有する。支持部材30は、一枚の金属板からなり、当該金属板を所定の形状に切り出し、折り曲げて形成されたものである。
【0056】
取付部31は、水平に方向D1に延びる天板31aと、天板31aの延伸部32側の端部から延伸部32に向かって下向きに延びる内側壁31bと、天板31aの延伸部32と反対側の端部から下方に延びる外側壁31cと、を有する。内側壁31bおよび外側壁31cは、野縁2から外れにくいように、野縁2の両側の側面に設けられた溝2b、2c(
図7参照)に係合可能な係合凸部31b1、31c1をそれぞれ有する。
【0057】
延伸部32は、方向D2に延びる長方形の2つの開口32aを有する。2つの開口32aは、方向D1に離れて配置されている。各開口32aは、3つの動吸振部材20の方向D2に並ぶ6個の弾性部22が挿入可能な大きさを有する。具体的には、開口32aは、天井ボード5の取付時に動吸振部材20が持ち上げられたときに動吸振部材20の各弾性部22が開口32aの縁に接触しない程度の大きさを有する。
【0058】
2つの開口32aの間には、方向D2に延びる中央延伸部32bが形成されている。中央延伸部32bは、弾性部22が開口32aに挿入され、かつ複数の弾性部22および連結板40が延伸部32の下面32dよりも下方に突出した状態(
図7参照)で、質量部21の下面21aを受けることが可能である。言い換えれば、延伸部32は、少なくとも中央延伸部32bの上面において質量部21を受けることが可能な支持面32eを有する。
【0059】
本実施形態では、中央延伸部32bの下側には、上記の弾性部22間を連結する正方形状の3枚の連結板40が配置されている。すなわち、中央延伸部32bと3枚の連結板40とは上下方向に重なり合う位置関係にある。
【0060】
内側壁31bの高さは、
図7に示されるように、取付部31が野縁2に上方から取り付けられ、かつ質量部21の下面21aが支持面32eで支持された状態で、延伸部32の下面32dが野縁2の下面2aよりも上方に位置し、かつ、連結板40の下面40bが野縁2の下面2aよりも下方に位置するように設定されている。
【0061】
具体的には、本実施形態の支持部材30では、取付部31が野縁2に取り付けられ、かつ質量部21の下面21aが支持面32eで支持された状態で、野縁2の下面2aに天井ボード5を固定すると、
図8に示すように、動吸振部材20は、連結板40を介在した状態で天井ボード5によって持ち上げられ、天井ボード5の上面5aに載置される。このとき、支持部材30と動吸振部材20とは互いに非接触の状態となる。
【0062】
また、延伸部32は、方向D1における両端から上向きに立ち上がり、方向D2に延びる一対の側壁32cを有する。
【0063】
なお、
図7~8では、質量部21の下面21aおよび支持面32eを視認容易にするために、側壁32cは省略されている。
【0064】
(動吸振装置の施工方法)
本実施形態に係る動吸振装置10を天井1に施工する方法について説明する。
【0065】
まず、支持部材30の開口32aに対して、質量部21が固定された各動吸振部材20の弾性部22を挿入する。これにより、質量部21は、延伸部32の支持面32eに支持された状態となる。
【0066】
ついで、各動吸振部材20の4個の弾性部22の下面22aに連結板40を接着などにより固定して4個の弾性部22同士を連結する。
【0067】
次に、隣り合う野縁2に支持部材30の一対の取付部31を上方から覆い被さるように取り付け、支持部材30をこれらの野縁2の間に架け渡す。
【0068】
このとき、支持面32eに支持された動吸振部材20の弾性部22の下面21aに固定された連結板40の下面40bが野縁2の下面2aより下方に配置される。それとともに、延伸部32の下面32dが野縁2の下面2aよりも上方に位置する状態となる。この状態で野縁2に天井ボード5を取り付けることにより、連結板40の下面40bが天井ボード5の上面5aに接触し、天井ボード5により動吸振部材20および連結板40が持ち上げられ、支持面32eから質量部21が離れる。これにより、動吸振部材20は、動吸振機能を発揮可能な状態となる。
【0069】
このように、動吸振部材20が支持部材30に支持された状態の動吸振装置10を隣り合う野縁2に架け渡し、これらの野縁2に天井ボード5を取り付けるという簡素な手順で、天井1に動吸振装置10を容易に施工することができる。
【0070】
(床衝撃音の低減作用)
天井ボード5の上面5aにそれぞれ独立して載置された動吸振部材20は、以下のようにして上層階の床から下層階の天井1へ伝わる床衝撃音を低減させるように作用する。すなわち、上層階の床から伝わる床衝撃音により天井ボード5が振動し、その振動が天井ボード5の上面にある連結板40を介して動吸振部材20に伝達されるが、その一方で質量部21は慣性力により元の位置に留まろうとする。これにより、弾性部22は弾性変形し、質量部21は天井ボード5に対して相対的に振動する。そして、質量部21の振動による反力が弾性部22を介して天井ボード5に伝えられ、天井ボード5の振動が抑制され、床衝撃音が低減される。
【0071】
動吸振部材20は、それぞれ質量部21の大きさが異なるようにすれば、それぞれ異なる共振周波数を有するようになる。そのため、天井1に伝わる床衝撃音が複数の異なる周波数成分を有する場合、動吸振部材20の共振周波数を各床衝撃音に対応する共振周波数に設定しておくことにより、いずれの床衝撃音とも低減することができる。
【0072】
(本実施形態の特徴)
(1)
上記の動吸振装置10では、複数の弾性部22が少なくとも1つの質量部21の下面2aに設けられている。連結板40は、複数の弾性部22のうち少なくとも隣接する2つの弾性部22(本実施形態では4個の弾性部22)の下面22aに固定されて2つの弾性部22同士(本実施形態では4個の弾性部22)を連結する。
【0073】
上記の動吸振装置10を天井に施工する場合、天井ボード5を取り付ける前の2本の野縁2に取付手段である支持部材30を取り付けて連結板40の下面40bを2本の野縁2の下面2aよりも下方に配置し、その後、天井ボード5を2本の野縁2の下面2aに取り付ける。このとき、少なくとも1つの質量部21、複数の弾性部22、および連結板40は、連結板40の下面40bが天井ボード5の上面5aに接して持ち上げられることにより、質量部21が支持部材30から離れた状態、すなわち2本の野縁2から離れた状態で天井ボード5に載置される。これにより、少なくとも1つの質量部21および複数の弾性部22が動吸振機能を発揮可能な状態になる。
【0074】
連結板40は、少なくとも隣接する2つの弾性部22の下面22aに固定されて2つの弾性部22同士を連結するため、動吸振装置10を野縁2に取り付けた後に(すなわち、取付手段である支持部材30により少なくとも1つの質量部21、複数の弾性部22、および連結板40の荷重が野縁2に預けられた状態で)天井ボード5を下方から取り付ける際に、天井ボード5を水平方向に移動させた場合でも、隣接する2つの弾性部22が連結板40によって連結され、かつ、複数の弾性部22と天井ボード5との間に連結板40が介在しているので、個々の弾性部22が単独で天井ボード5に追随しなくなる。その結果、複数の弾性部22のそれぞれが施工時において変形することを防止することが可能である。
【0075】
また、各動吸振部材20では4個の弾性部22を連結板40によって連結することにより各弾性部22の鉛直方向のバネ定数は変えずに水平方向のバネ定数を大きくすることが可能になる。これにより、施工時においてせん断変形を生じさせにくい動吸振部材20を構成することができる。
【0076】
また、上記の構成では、複数の弾性部22の施工時における変形を防いで個々の弾性部22が目標値に近い弾性を発揮することにより、動吸振部材20による天井ボード5の振動低減効率が向上する。これにより、動吸振部材20の設置個数の削減が図られ、施工省力化およびコストダウンが可能となる。
【0077】
(2)
本実施形態の動吸振装置10では、取付手段である支持部材30は、2本の野縁2のそれぞれに取り付け可能な一対の取付部31と、一対の取付部31の間で延びる延伸部32とを有する。延伸部32は、複数の弾性部22および連結板40が延伸部32の下面32dよりも下方に突出した状態で質量部21の下面40bを受ける支持面32eを有する。
【0078】
上記の動吸振装置10を天井1に施工する場合、隣接する野縁2に支持部材30の一対の取付部31を取り付け、支持部材30をこれらの野縁2の間に架け渡す。このとき、あらかじめ支持部材30の支持面32eに質量部21を載せた状態とする。そして、延伸部32の下面32dよりも下方に突出した複数の弾性部22の下面22aが連結板40を介して天井ボード5の上面に接触した状態で天井ボード5を野縁2に下方から取り付ける。このとき、少なくとも1つの質量部21、複数の弾性部22、および連結板40は、連結板40の下面40bが天井ボード5の上面5aに接して持ち上げられることにより、支持面32eから質量部21が離れる。そのため、少なくとも1つの質量部21および複数の弾性部22が取付手段である支持部材30から分離された状態で動吸振機能を確実に発揮することが可能になる。
【0079】
(3)
本実施形態の動吸振装置10では、連結板40は、天井ボード5とゴムである弾性部22との間の摩擦抵抗よりも小さな摩擦抵抗となる材料である鋼板で形成されている。つまり、連結板40の天井ボード5に対する摩擦抵抗は、弾性部22の天井ボード5に対する摩擦抵抗よりも小さい。そのため、動吸振装置10を野縁2に取り付けた後に天井ボード5を水平方向に移動させても、連結板40が天井ボード5に対して相対的に滑ることにより連結板40が天井ボード5に追随しにくくなり、弾性部22の変形を確実に防止することが可能である。
【0080】
(4)
本実施形態の動吸振装置10では、弾性部22が天然ゴムで形成することにより、ウレタンなどの発泡樹脂などの弾性部22に比べて安価に弾性部22を製造することが可能である。
【0081】
なお、本実施形態のように弾性部22が天然ゴムで形成されている場合においても、弾性部22を中空樽型の形状にすれば、弾性部22のバネ定数を小さく抑えることが可能になる。そのため、弾性部22を天井ボード5の制振に適した弾性になるように形成することが可能になる。
【0082】
中空樽型の弾性部22は、例えば、
図10に示されるように、連結板40が固定可能な下面22aを有する中空筒状の形状を有している。さらに具体的には、弾性部22は、上部22bと、中央部22cと、下部22dとを有し、これらが一体形成されたものである。上部22bは、質量部21に形成された貫通孔(図示せず)に嵌合可能なくびれ部22b1と、当該貫通孔から上部22bが脱落防止することを防ぐために幅広のフランジ部22b2とを有する。上部22bは、上下方向に貫通する上部貫通孔22e1が形成されている。中央部22cは、略球形に膨らんだ膨出部22c1を有しており、この膨出部22c1によって弾性部22の座屈を防止する。中央部22cは、膨出部22c1内部に中央空間部22e2が形成されている。下部22dは、上記の下面22aを有する板状または台座状の形状を有する。下部22dは、上下方向に貫通する下部貫通孔22e3が形成されている。上部貫通孔22e1、中央空間部22e2、および下部貫通孔22e3は互いに連通することにより、1つの大きな空間部22eを弾性部22内部に形成している。
【0083】
(5)
本発明の動吸振装置は、上記のように、弾性部22の間を連結する連結板40を有することにより、連結板を有しない従来の動吸振装置と比較すれば、動吸振部材20に連結板40の重量が付加されるので、動吸振部材20が天井ボード5の上で飛び跳ねることを抑制することが構造上可能である。
【0084】
さらに、本実施形態の動吸振装置10では、連結板40の重量は、天井ボード5の振動を受けたときに動吸振部材20が当該天井ボード5から離間しない程度の重量に設定されている。具体的には、連結板40の重量は、複数の弾性部22の総重量よりも大きい。このように連結板40の重量を設定することにより、天井ボード5の振動を受けたときに動吸振部材20が天井ボード5の上で飛び跳ねて当該天井ボード5から離間するおそれが低減し、動吸振機能を安定して発揮することが可能である。
【0085】
(6)
本実施形態の動吸振装置10では、連結板40は、鋼板で形成されている。鋼板の厚さは、天井ボード5の振動を受けたときに動吸振部材20が当該天井ボード5から離間しない程度の厚さに設定されている。
【0086】
鋼板で形成された連結板40の厚さT(
図5参照)を上記のように設定することにより、動吸振部材20の飛び跳ねを防いで動吸振機能を安定して発揮することが可能な動吸振装置10を容易に設計および製造することが可能である。
【0087】
また、鋼板の厚みを増やすことで、衝撃力が大きくなっても動吸振部材20の飛び跳ねを防止することができる。
【0088】
(7)
本実施形態の動吸振装置10では、複数の弾性部22は、1つの質量部21の下面に設けられている。この構成では、1つの質量部21の下面に設けられた個々の弾性部22を小型化してばね定数を小さくすることが可能である。
【0089】
(変形例)
(A)
本発明の変形例として、
図9に示されるように、連結板40と天井ボード5(
図8参照)との間に介在し、連結板40および天井ボード5の少なくとも一方に対し、天井ボード5と連結板40との間の摩擦抵抗よりも小さな摩擦抵抗を有する低摩擦部材50をさらに備えるようにしてもよい。
図9には、連結板40の下面に低摩擦部材50が接着などにより固定されている例が示されている。
【0090】
かかる構成によれば、連結板40と天井ボード5との間に低摩擦部材50が介在しているので、動吸振装置10を野縁2に取り付けた後に天井ボード5を水平方向に移動させても、連結板40が天井ボード5に対して相対的に滑ることにより連結板40が天井ボード5に追随しにくくなり、弾性部22の変形をより確実に防止することが可能である。
【0091】
たとえば、 連結板40を鋼板で製造する際、滑りやすくするために鋼板の下面にテフロン(登録商標)加工等(すなわちフッ素樹脂加工)を施して低摩擦部材50を形成することで連結板40は天井ボード5に対してさらに滑りやすくなる。
【0092】
なお、低摩擦部材50は、弾性部22と天井ボード5との間に介在し、天井ボード5と弾性部22との間の摩擦抵抗よりも小さな摩擦抵抗となるように天井ボード5または連結板40の少なくとも一方に設けるものであればよいので、
図9に示されるように連結板40の下面40bに設けられる形態だけでなく、天井ボード5の上面に設けられる形態、または連結板40の下面40bおよび天井ボード5の上面の両方に設けられる形態でもよい。
【0093】
(B)
なお、本実施形態では、連結板40は、各動吸振部材20の4個の弾性部22を連結する正方形形状を有しているが、1つの支持部材30に対して複数の動吸振部材20が並んで配置されている構成では、複数の動吸振部材20のすべての弾性部22を1枚の連結板40で連結してもよい。その場合も、複数の弾性部22のそれぞれが施工時において変形することを防止することが可能である。
【0094】
(C)
上記実施形態では、質量部21と取付手段である支持部材30とが個別に分離した構成要素であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、質量部21自体が取付手段(本実施形態では支持部材30)を含む形態も本発明に含まれる。例えば、本発明の変形例として、
図7の3つの質量部21が支持部材30と一体に構成され、かつ、支持部材30の取付部31の係合凸部31b1、31c1が無い構成(すなわち、取付部31が野縁2から上方に離脱可能な構成)なども本発明に含まれる。このような変形例の構成では、
図8のように天井ボード5が2本の野縁2の下面2aにて取り付けられたときに、質量部21を含む3つの動吸振部材20および3つの連結板40とともに支持部材30が押し上げられて、3つの質量部21、複数の弾性部22、3つの連結板40の重量を支持部材30を介して2本の野縁2に預けた状態から質量部21が野縁2との連結が解除されたフリーな状態にすることが可能になる。したがって、この構成の動吸振装置も動吸振機能を発揮することが可能になる。
【0095】
(D)
上記実施形態では、複数の弾性部が1つの質量部の下面から下方に延びている構成が示されているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0096】
本発明の変形例として、複数の質量部21を備える構成であって、弾性部22は、複数の質量部21のそれぞれの下面に設けられた構成であってもよい。この構成としては、例えば、
図5の1個の大きい質量部21の代わりに4個の小さい質量部21が4個の弾性部22の上にそれぞれ配置されている構成が考えられる。
【0097】
かかる構成によれば、1つの動吸振装置の中に質量部21および弾性部22の組からなる複数のユニットを備えることが可能になり、個々のユニットについて共振周波数を個々にチューニングすることが可能になる。
【0098】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0099】
1 天井
2 野縁
2a 下面
4 床梁
5 天井ボード
5a 上面
10 動吸振装置
20 動吸振部材
21 質量部
22 弾性部
22a 下面
30 支持部材
31 取付部
32 延伸部
32d 下面
32e 支持面
40 連結板
40a 上面
40b 下面
50 低摩擦部材