(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108459
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】分散体組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/10 20140101AFI20240805BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20240805BHJP
C09D 151/06 20060101ALI20240805BHJP
C09J 151/06 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
C09D11/10
C09D5/00 D
C09D151/06
C09J151/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012840
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130812
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100164161
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 彩
(72)【発明者】
【氏名】加藤 久雄
(72)【発明者】
【氏名】木村 浩司
(72)【発明者】
【氏名】関口 俊司
【テーマコード(参考)】
4J038
4J039
4J040
【Fターム(参考)】
4J038CB071
4J038CB141
4J038CP041
4J038DB002
4J038DG262
4J038KA03
4J038KA06
4J038LA06
4J038MA10
4J038NA12
4J038PA01
4J038PC08
4J039AD01
4J039AD09
4J039AD14
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4J039BC13
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4J039BC15
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE22
4J039BE25
4J039CA06
4J039DA02
4J039EA36
4J039GA24
4J040DL071
4J040KA16
4J040MA11
(57)【要約】
【課題】高い耐擦過性、及び付着性に優れる変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】成分A:融点が80℃以上であり、α,β-不飽和カルボン酸誘導体を含む変性成分を導入した変性ポリオレフィン樹脂と、成分B:ノニオン界面活性剤と、成分C:水性分散媒と、を少なくとも含み成分Aを100重量%とした際の成分Bの含有量が10重量%以上である、分散体組成物。上記変性成分として、(メタ)アクリル酸エステルを含んでいてもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分A:融点が80℃以上であり、α,β-不飽和カルボン酸誘導体を含む変性成分を導入した変性ポリオレフィン樹脂と、
成分B:ノニオン界面活性剤と、
成分C:水性媒体と、
を少なくとも含み、
成分Aを100重量%とした際の成分Bの含有量が10重量%以上である、分散体組成物。
【請求項2】
前記変性成分が(メタ)アクリル酸エステルを含む、請求項1に記載の分散体組成物。
【請求項3】
前記成分Aがエチレン由来の構成単位を含む、請求項1又は2に記載の分散体組成物。
【請求項4】
前記成Bがポリオキシエチレンアルキルアミン系のノニオン界面活性剤である、請求項1又は2に記載の分散体組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の分散体組成物を含む、水系インキ。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の分散体組成物を含む、塗料、バインダー、接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散体組成物に関する。より詳細には、高い耐擦過性、及び難付着性基材への付着性に優れる分散体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
不飽和カルボン酸及び/またはその無水物で変性された変性ポリオレフィン樹脂は、難付着性基材であるポリオレフィン樹脂基材用の塗料、接着剤、又はインキ用添加剤として用いられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
近年、VOC(volatile organic compounds)削減などの環境問題の観点から、塗料の分野では溶剤系塗料から水系塗料への移行が進み、また、インキの分野では溶剤型インキから水性インキへの移行が進んでいる。このような情勢の中、上記変性ポリオレフィン樹脂の水性化(分散体組成物)の要望が高まっている。
【0004】
変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物は、特にインキ用途で使用される場合、高い耐擦過性が求められるものの、従来の変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物では、満足な性能が得られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2020/138117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、高い耐擦過性、及び難付着基材への付着性に優れる分散体組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、下記の〔1〕~〔6〕を提供する。
〔1〕成分A:融点が80℃以上であり、α,β-不飽和カルボン酸誘導体を含む変性成分を導入した変性ポリオレフィン樹脂と、
成分B:ノニオン界面活性剤と、
成分C:水性媒体と、
を少なくとも含み、成分Aを100重量%とした際の成分Bの含有量が10重量%以上である、分散体組成物。
〔2〕前記変性成分が(メタ)アクリル酸エステルを含む、〔1〕に記載の分散体組成物。
〔3〕前記成分Aがエチレン由来の構成単位を含む、〔1〕又は〔2〕に記載の分散体組成物。
〔4〕前記成Bがポリオキシエチレンアルキルアミン系のノニオン界面活性剤である、〔1〕又は〔2〕に記載の分散体組成物。
〔5〕〔1〕又は〔2〕に記載の分散体組成物を含む、水系インキ。
〔6〕〔1〕又は〔2〕に記載の分散体組成物を含む、塗料、バインダー、接着剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明の分散体組成物は、高い耐擦過性、及び難付着基材への付着性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
なお、本明細書中、「AA~BB」という表記は、AA以上BB以下を意味する。
【0010】
[1.成分A:変性ポリオレフィン樹脂]
本発明の変性ポリオレフィン樹脂は、融点が80℃以上であり、α,β-不飽和カルボン酸誘導体を含む変性成分を導入した変性ポリオレフィン樹脂を含有する。
【0011】
本発明の変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、50,000~200,000であり、50,000~150,000未満が好ましく、60,000~100,000未満がより好ましい。重量平均分子量が50,000以上であると、乾燥後の塗膜が凝集力を発揮し、塗膜強度や付着性を付与し得る。一方、200,000未満であると、十分な溶剤溶解性を確保し得る。また、水分散体を調製した際、良好な安定性を確保し得る。
なお、本明細書中、重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、標準物質:ポリスチレン)によって測定し、算出された値である。
【0012】
本発明の変性ポリオレフィン樹脂の融点は、80℃以上が好ましい。融点が80℃以上であると、高い耐擦過性が発現する。融点の上限値は特に限定されないが、通常、120℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましい。融点が120℃未満であると、変性ポリオレフィン樹脂をインキ、塗料等の用途に用いる際、十分な塗膜強度を発現し得る。
本明細書中、DSCによる融点(Tm)は、以下の条件で測定した値である。JIS K7121-1987に準拠し、DSC測定装置(TA Instruments製)を用い、約5mgの試料を150℃で10分間加熱融解状態を保持する。次いで、10℃/分の速度で降温して、-50℃で安定保持する。その後、10℃/分で150℃まで昇温し、融解した時の融解ピーク温度を融点(Tm)として評価する。
【0013】
<ポリオレフィン樹脂>
成分Aに使用されるポリオレフィン樹脂は、特に限定されるものではなく、1種のオレフィンの単独重合体であってもよく、2種以上のオレフィンの共重合体であってもよい。また、共重合体である場合、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。オレフィンとしては、α-オレフィンが好適に用いられる。α-オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテンが挙げられる。
ポリオレフィン樹脂としては、ポリプロピレン基材等の非極性樹脂基材に対して十分な付着性を発現させるという観点から、ポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体がより好適に用いられる。
【0014】
なお、本明細書中、ポリプロピレンとは、基本単位がプロピレン由来の構成単位である重合体を表す。エチレン-プロピレン共重合体とは、基本単位がエチレン由来の構成単位及びプロピレン由来の構成単位である共重合体を表す。プロピレン-1-ブテン共重合体とは、基本単位がプロピレン由来の構成単位及び1-ブテン由来の構成単位である共重合体を表す。これらの重合体は、上記基本単位以外の他のオレフィン由来の構成単位を少量含有していてもよい。この含有量は、樹脂本来の性能を著しく損なわない量であればよい。このような他のオレフィン由来の構成単位は、例えば、変性ポリオレフィン樹脂の製造までの工程で混入することがある。
【0015】
成分Aに使用されるポリオレフィン樹脂は、構成単位100モル%中、プロピレン由来の構成単位を50モル%以上含むことが好ましい。プロピレン由来の構成単位を上記範囲で含むと、プロピレン樹脂等の非極性樹脂基剤等の非極性樹脂成型品に対する付着性を確保し得る。
【0016】
また、成分Aに使用されるポリオレフィン樹脂は、構成単位100モル%中、エチレン由来の構成単位を1モル%以上含むことが好ましい。エチレン由来の構成単位を上記範囲で含むと、分散体組成物を調製した際の起泡性が低下し、作業性が向上する。
【0017】
上記の通り、成分Aに使用されるポリオレフィン樹脂はポリオレフィン由来の構成単位とエチレン由来の構成単位を含むことが好ましいため、エチレン-プロピレン共重合体が特に好適に用いられる。エチレン-プロピレン共重合体を用いる場合、構成単位100モル%中、エチレン由来の構成単位を1~50モル%の割合で含み、プロピレン由来の構成単位を50~99モル%の割合で含むことが好ましい。
【0018】
成分Aに用いられるポリオレフィン樹脂の融点は、80℃~120℃が好ましく、80℃~100℃がより好ましい。これにより融点が上記範囲である変性ポリオレフィン樹脂を容易に得ることができる。成分Aに用いられるポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、50,000~500,000であり、50,000~400,000が好ましい。
【0019】
成分Aは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を組み合わせて用いる場合、その割合は特に限定されない。
【0020】
<α,β-不飽和カルボン酸誘導体>
成分Aにグラフトされる変性成分として、α,β-不飽和カルボン酸誘導体を使用する。α,β-不飽和カルボン酸誘導体としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、無水ハイミック酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。中でも、無水マレイン酸が好ましい。α,β-不飽和カルボン酸誘導体は上記からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含めばよく、2種以上のα,β-不飽和カルボン酸誘導体の組み合わせであってもよい。
【0021】
成分Aのα,β-不飽和カルボン酸誘導体のグラフト重量は、グラフト変性物を100重量%とした場合に、0.1~10重量%が好ましく、0.5~5重量%がより好ましい。グラフト重量が0.1重量%以上であると、得られる変性ポリオレフィン樹脂の上塗り塗料に対する付着性を確保し得る。また、水分散体を調製した際の良好な安定性を確保し得る。グラフト重量が10重量%以下であると、グラフト未反応物の発生を防止することができ、樹脂基材に対する十分な付着性を確保し得る。
α,β-不飽和カルボン酸誘導体のグラフト重量は、アルカリ滴定法によって求めた値である。
【0022】
<その他の変性成分>
成分Aは、α,β-不飽和カルボン酸誘導体以外の化合物によりさらに変性されてもよい。α,β-不飽和カルボン酸誘導体以外の化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルでポリオレフィン樹脂をさらに変性することにより、例えば塗料、インキ、バインダー等の用途に用いた際、極性の高い他成分との相溶性に優れ得る。
【0023】
(メタ)アクリル酸エステルとは、分子中に(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個含む化合物である。本明細書中「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及び/またはメタクリロイル基を意味する。(メタ)アクリル酸エステルは、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
CH2=CR1COOR2 ・・・(1)
【0024】
一般式(1)中、R1は、水素原子又はメチル基を表し、メチル基が好ましい。R2はCnH2n+1を表す。ここで、nは、1~18の整数を表し、1~15の整数が好ましく、1~13の整数がより好ましい。
【0025】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、1-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリンが挙げられる。この中でも、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレートが好ましく、オクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルは、1種であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。後者の場合、それぞれの化合物の配合比は特に限定されない。
【0026】
変性ポリオレフィン樹脂における、(メタ)アクリル酸エステルのグラフト量は、0.1~20.0重量%が好ましく、0.5~10.0重量%がより好ましく、0.5~5.0重量%がさらに好ましい。
変性ポリオレフィン樹脂の(メタ)アクリル酸エステルのグラフト量は、1H-NMRにより求め得る。
【0027】
<変性ポリオレフィン樹脂の製造方法>
反応装置としては、例えば、温水や蒸気で加温可能なジャケットを有する反応タンクや、二軸押出機などを用いることができる。
【0028】
反応は、回分式で行ってもよく、連続式で行ってもよい。
【0029】
変性ポリオレフィン樹脂の製造方法は、特に限定されるものではない。一例を以下に示す。
まず、ポリオレフィン樹脂を用意する。ポリオレフィン樹脂は、エチレンと、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等のα-オレフィンとを、チーグラー・ナッタ触媒又はメタロセン触媒等の触媒の存在下、重合することにより調製し得る。ポリオレフィン樹脂は、市販品を用いてもよい。
【0030】
つぎに、α,β-不飽和カルボン酸誘導体を含む変性成分を、ポリオレフィン樹脂に導入する。変性方法は、公知の方法、例えば、グラフト重合方法で行うことができる。グラフト重合反応の際には、ラジカル発生剤を用いてもよい。変性ポリオレフィン樹脂を得る方法としては、トルエン等の溶剤に、ポリオレフィン樹脂と環状構造を有するα,β-不飽和カルボン酸誘導体を含む変性成分を加熱溶解し、ラジカル発生剤を添加する溶液法;バンバリーミキサー、ニーダー、押出機等の機器に、ポリオレフィン樹脂、α,β-不飽和カルボン酸誘導体を含む変性成分、及びラジカル発生剤を添加し混練する溶融混練法が挙げられる。ここで、α,β-不飽和カルボン酸誘導体を含む変性成分は、一括添加してもよく、逐次添加してもよい。
【0031】
ポリオレフィン樹脂にグラフト重合しない未反応物は、例えば貧溶媒で抽出して除去してもよい。このようにして、グラフト重合体が得られる。
【0032】
[2.成分B:ノニオン界面活性剤]
ノニオン界面活性剤は、変性ポリオレフィン樹脂を、水系分散媒に分散させる際、分散体の安定化を図る目的で添加する従来公知のものを使用し得る。
【0033】
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレンポリオール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中でも、ポリオキシエチレンアルキルアミンが好ましい。
【0034】
本発明の分散体組成物において、ノニオン界面活性剤の含有量は、10重量%以上が好ましく、15重量%以上がより好ましい。ノニオン界面活性剤の含有量が少ないと、塗膜化した後の耐擦過性が劣る。上限は特に限定されないが、ノニオン界面活性剤の含有量が30重量%未満であることが好ましく、25重量%未満であることがより好ましい。
【0035】
[3.成分C:水性分散媒]
水性分散媒は、通常は水であるが、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤を併用してもよい。また、非水系分散媒として、キシレン、トルエン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン等の有機溶媒を含んでいてもよい。
【0036】
[4.分散体組成物]
分散体組成物は、通常、分散体の形態、例えば、成分A等の樹脂成分が成分Cに分散した形態をとることができる。分散した樹脂成分は、その平均粒子径が通常50nm以上であり、特に限定されない。上限は通常は500nm以下であり、特に限定されない。平均粒子径は、組成、製造条件(例えば、撹拌条件)等により適宜調整できる。
【0037】
<任意成分>
本発明の分散体組成物は、変性ポリオレフィン樹脂、ノニオン界面活性剤、水性分散媒以外の他の成分を含んでもよい。他の成分としては、変性されていないポリオレフィン樹脂、成分A以外の変性ポリオレフィン樹脂、アルキッド樹脂、水性アクリル樹脂、水性ウレタン樹脂等の樹脂成分、塩基性物質、架橋剤、溶液、安定化剤、低級アルコール類、低級ケトン類、低級エステル類、防腐剤、レベリング剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、金属塩、酸類が挙げられる。
【0038】
<塩基性物質>
分散体組成物が塩基性物質を含むことにより、溶剤への樹脂の分散性をより高めることができる。塩基性物質としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸基を有するもの;アンモニア、メチルアミン、プロピルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミノ基を有するもの;エタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、2-ジメチルアミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、モルホリン、ジメチルエタノールアミン等の窒素原子及び酸素原子を有するものが挙げられ、好ましくは、アンモニア、トリエチルアミン、窒素原子及び酸素原子を有するものであり、より好ましくは窒素原子及び酸素原子を有するもの(例えば、トリエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、モルホリン、ジメチルエタノールアミン)である。塩基性物質は1種類でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。塩基性物質の含有量は、添加後の組成物のpHが、通常は5以上、好ましくは6以上となる量である。これにより、十分に中和がされ、安定な分散性が保たれ得る。上限は通常、pH10以下となる量である。これにより、他成分との相溶性、作業上の安全性を良好に保持できる。
【0039】
<架橋剤>
架橋剤は、組成物中に存在する、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の基と反応し、架橋構造を形成し得る化合物であればよく、水溶性の架橋剤、及び、架橋剤の水分散体(何らかの方法で水に分散されている状態の架橋剤)のいずれでもよい。架橋剤としては、例えば、ブロックイソシアネート化合物、脂肪族又は芳香族のエポキシ化合物、アミン系化合物、アミノ樹脂などが挙げられる。架橋剤は、1種単独でも、2種以上の組み合わせでもよい。架橋剤の添加方法は特に限定されず、添加時は、水性化工程途中、或いは水性化後のいずれでもよい。
【0040】
<溶液>
溶液としては、有機溶剤が挙げられる。有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶剤;メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、エチルシクロヘキサノン等のケトン溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ノナン、デカン等の脂肪族又は脂環式炭化水素溶剤が挙げられる。環境問題の観点から、芳香族溶剤以外の有機溶剤が好ましく、脂環式炭化水素溶剤とエステル溶剤又はケトン溶剤との混合溶剤がより好ましい。
有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
【0041】
また、分散体組成物の保存安定性を高めるために、アルコール(例、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール)、プロピレン系グリコールエーテル(例、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコール-t-ブチルエーテル)を、1種単独で、又は2種以上混合して用いてもよい。この場合、上記有機溶剤に対して、1~20重量%添加することが好ましい。
【0042】
また、溶液としては、例えば、下記一般式(2)で表され、且つその分子量が200未満である化合物が好ましい。
【0043】
R-O-(ClH2Ol)mH・・・・・・式(2)
一般式(2)中、Rは、CnH2n+1であり、nは、10以下の整数である。nは、8以下の整数であることが好ましく、7以下の整数であることがより好ましく、6以下の整数であることがさらに好ましく、5以下の整数であることがさらにより好ましく、4以下の整数であることがとりわけ好ましい。
一般式(2)中、lは、5以下の整数であり、4以下の整数であることが好ましく、3以下の整数であることがより好ましい。
一般式(2)中、mは、5以下の整数であり、4以下の整数であることが好ましく、3以下の整数であることがより好ましく、2以下の整数であることがさらに好ましく、1であることがさらにより好ましい。
【0044】
一般式(2)で表され、且つその分子量が200未満である化合物は、グリコールエーテル系の化合物であることが好ましい。グリコールエーテル系の化合物は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のグリコール類の水素原子が、アルキル基に置換された構造である。
【0045】
一般式(2)で表される化合物は、一分子中に疎水基と親水基を有する。これにより、一般式(2)で表される化合物を添加することにより、変性ポリオレフィン樹脂を容易に水中に分散、乳化させることができる。そのため、本発明の分散樹脂組成物が良好な保存安定性を保つことができるようになる。
【0046】
一般式(2)で表される化合物として、より詳細には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノ-ノルマル-ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノデシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-ノルマル-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテルが好ましい。
【0047】
一般式(2)で表される化合物の分子量は、200未満である。これにより、変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物(本発明の分散樹脂組成物)の沸点の上昇を抑えることができる。その結果、該水分散体組成物、又は該水分散体組成物を含むプライマー等を塗工した後、塗膜の高温又は長時間乾燥を省略することができる。
【0048】
一般式(2)で表される化合物の分子量とは、IUPAC原子量委員会で承認された(12C=12とする)相対原子質量から求める分子量である。
【0049】
一般式(2)で表され、且つその分子量が200未満である化合物は、一般式(2)で表される化合物単独であってもよいし、2種以上の一般式(2)で表される化合物の組み合わせであってもよい。後者の場合、それぞれの化合物の配合比は特に限定されない。
【0050】
<硬化剤>
硬化剤としては、ポリイソシアネート化合物、ポリエポキシ化合物、ポリアミン化合物、ポリオール化合物、或いはそれらの官能基が保護基でブロックされた架橋剤が例示される。
硬化剤は1種単独であってもよく、複数種の組み合わせであってもよい。
【0051】
硬化剤の配合量は、変性ポリオレフィン樹脂中におけるα,β-不飽和カルボン酸誘導体のグラフト量により適宜選択できる。また、硬化剤を配合する場合は、目的に応じて有機スズ化合物、第三級アミン化合物等の触媒を併用することができる。
【0052】
<接着成分>
接着成分としては、所望の効果を阻害しない範囲でポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤等の公知の接着成分を用いることができる。
【0053】
[5.分散体組成物の製造方法]
分散体組成物の製造方法としては、例えば、成分A~C及び必要に応じて用いる他の成分を反応系内に一括添加又は順次添加する方法が挙げられる。順次添加する方法としては、例えば、成分A、B及び必要に応じて用いる他の成分に溶剤を添加し混練した後、必要に応じて用いる塩基性物質を添加し、続いて成分Cを添加し、先に添加した溶剤を除去(例えば、減圧処理)する方法が挙げられる。一連の反応は高温(例えば、70℃以上、好ましくは80℃以上)で行うことが好ましい。溶剤としては、例えば、脂肪族系溶剤(例えば、n-ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、ノナン、デカン)、グリコール系溶剤(例えば、エチレングリコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ)が挙げられる。溶剤の除去後、撹拌羽根、ディスパー、ホモジナイザー、サンドミル、多軸押出機等の撹拌機器を用いる撹拌処理を行ってもよい。これにより、分散体中の樹脂成分の粒子径を調整できる。
【0054】
[6.分散体組成物の用途]
<インク>
本発明の分散体組成物は、水性インクジェット用のインクに利用し得る。本発明の分散体組成物は耐擦過性に優れているため、水性インクジェット用インクに添加すると、印刷後のインクの耐久性が向上する。
【0055】
<プライマー、バインダー>
本発明の分散体組成物は、プライマー、塗料用バインダー又はインキ用バインダーとして利用し得る。本発明の分散樹脂組成物は、溶液安定性に優れており、自動車のバンパー等ポリオレフィン基材への上塗り塗装時のプライマー、上塗り塗料やクリアーとの付着性に優れる塗料用バインダーとして好適に利用し得る。
【0056】
<接着剤>
本発明の分散体組成物は、付着性(接着性)が低く、塗料等の塗工が困難な基材のための中間媒体として有用であり、例えば、付着性(接着性)の乏しいポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系基材同士の接着剤として使用し得る。この際、基材がプラズマ、コロナ等により表面処理されているか否かを問わず用いることができる。
【0057】
また、本発明の分散樹脂組成物は、金属と樹脂との優れた接着性をも発揮し得る。金属としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスが挙げられる。樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂等の非極性樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂が挙げられる。従って、本発明の分散樹脂組成物は、接着剤、プライマー、及び塗料用バインダー及びインキ用バインダーとして、又はこれらの成分として、用いることができる。
【実施例0058】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を好適に説明するためのものであって、本発明を限定するものではない。なお、物性値等の測定方法は、別途記載がない限り、上記に記載した測定方法である。また、「部」とは、特に断りがない限り、重量部である。
【0059】
[物性の測定方法]:
分子量、融点、無水マレイン酸のグラフト重量は、変性ポリオレフィン樹脂を用いて測定した。平均粒子径、粘度は、分散体組成物を用いて測定した。測定方法の詳細を下記に示す。
【0060】
[重量平均分子量]:
製造例で製造した樹脂について、GPCにより下記条件に従い測定した。
装置:HLC-8320GPC(東ソー(株)製)
カラム:TSKgel G6000HXL,G5000HXL,G4000HXL,G3000HXL,G2000HXL(東ソー(株)製)
溶離液:THF
流速:1mL/min
温度:ポンプオーブン、カラムオーブン40℃
注入量:100μL
標準物質:ポリスチレン EasiCal PS-1(Agilent Technology(株)製)
【0061】
[グラフト重量(重量%)]:
アルカリ滴定法にて求めた。
【0062】
[Tm(融点、℃)]:
JIS K7121-1987に準拠し、DSC測定装置(TA Instruments製)を用い、約5mgの試料を150℃で10分間加熱融解状態を保持した。次いで、10℃/分の速度で降温して、-50℃で安定保持した。その後、10℃/分で150℃まで昇温し、融解した時の融解ピーク温度をTmとした。
【0063】
[平均粒子径(nm)]:
粒度分布測定装置(Malvern Instruments製)にて測定した。
【0064】
[粘度(mPa・s)] :
BII形粘度(東機産業社製)を用いて、B型粘度(mPa・s)を測定した。
【0065】
[乾燥被膜の調製] :
先ず、水系ウレタン樹脂(ユリアーノW-321、荒川化学工業(株)製)26部、酸化チタン26部、脱イオン水27部、エタノール7部をサンドグラインダーで混合、分散した。次いで、実施例1及び比較例1~4で得た分散体組成物をそれぞれ14部加え、再度、サンドグラインダーで混合した。得られた混合物を、IPAで脱脂したOPPフィルム上に塗布し、100℃に加温した送風乾燥機で10分間乾燥し、膜厚5μmの乾燥被膜を得た。
【0066】
[付着性]:
上記乾燥被膜の塗工面に幅15mmのセロハン粘着テープを貼り付け、180°の角度で勢いよく剥がしたときの、塗工面の外観の状態を目視判定した。評価基準は以下の通りとした。
〇:剥離なし
△:1~49%剥離
×:50%以上剥離
【0067】
[耐擦過性]:
晒しを被せた1,000gの重りを上記乾燥被膜の塗工面に乗せ、重りを水平方向にスライドさせたときの、塗膜の状態を目視判定した。評価基準は以下の通りとした。
〇:変化なし
△:一部に傷あり
×:全面に傷あり
【0068】
[製造例1]
攪拌機、冷却管、及び滴下漏斗を取り付けた四つ口フラスコ中で、エチレン-プロピレン共重合体(エチレン成分:9モル%、プロピレン成分:91モル%、重量平均分子量:6万、融点:85℃)をトルエン400g中に加熱溶解した。系内の温度を110℃に保持して撹拌しながら、無水マレイン酸2.5部、ラウリル(メタ)アクリレート2.0部、ジ-t-ブチルパーオキサイド0.95部をそれぞれ3時間かけて滴下した。滴下終了から1時間さらに反応を行った後、室温まで冷却した。反応物を大過剰のアセトン中に投入して精製し、重量平均分子量が70,000、融点が85℃、無水マレイン酸のグラフト重量が2.0重量%の変性ポリオレフィン樹脂(a)を得た。
【0069】
[製造例2]
攪拌機、冷却管、及び滴下漏斗を取り付けた四つ口フラスコ中で、エチレン-プロピレン共重合体(エチレン成分:12モル%、プロピレン成分:88モル%、重量平均分子量:6万、融点:65℃)をトルエン400g中に加熱溶解した。系内の温度を110℃に保持して撹拌しながら、無水マレイン酸4部、ラウリル(メタ)アクリレート3部、ジ-t-ブチルパーオキサイド1.5部をそれぞれ3時間かけて滴下した。滴下終了から1時間さらに反応を行った後、室温まで冷却した。反応物を大過剰のアセトン中に投入して精製し、重量平均分子量が70,000、融点が85℃、無水マレイン酸のグラフト重量が2.4重量%の変性ポリオレフィン樹脂(b)を得た。
【0070】
[製造例3]
攪拌機、冷却管、及び滴下漏斗を取り付けた四つ口フラスコ中で、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体(融点:75℃)をトルエン400g中に加熱溶解した。系内の温度を110℃に保持して撹拌しながら、無水マレイン酸6部、ラウリル(メタ)アクリレート6部、ジ-t-ブチルパーオキサイド5部をそれぞれ3時間かけて滴下した。滴下終了から1時間さらに反応を行った後、室温まで冷却した。反応物を大過剰のアセトン中に投入して精製し、重量平均分子量が80,000、融点が75℃、無水マレイン酸のグラフト重量が4.3重量%の変性ポリオレフィン樹脂(c)を得た。
【0071】
[製造例4]
攪拌機、冷却管、及び滴下漏斗を取り付けた四つ口フラスコ中で、プロピレン-ブテン共重合体(プロピレン成分:70モル%、ブテン成分:30モル%、重量平均分子量:29万、融点:75℃)をトルエン400g中に加熱溶解した。系内の温度を110℃に保持して撹拌しながら、無水マレイン酸2部、ラウリル(メタ)アクリレート1.5部、ジ-t-ブチルパーオキサイド1.5部をそれぞれ3時間かけて滴下した。滴下終了から1時間さらに反応を行った後、室温まで冷却した。反応物を大過剰のアセトン中に投入して精製し、重量平均分子量が140,000、融点が75℃、無水マレイン酸のグラフト重量が1.8重量%の変性ポリオレフィン樹脂(d)を得た。
【0072】
[実施例1]
撹拌機、冷却管、温度計、ロートを取り付けた4つ口フラスコ中に、得られた変性ポリオレフィン樹脂(a)を100g、メチルシクロヘキサン18g、ノニオン界面活性剤(リポノールC-15、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)20gを添加し、フラスコ内温95℃で30分攪拌した。次に、モルホリン6gを添加し、フラスコ内温95℃で60分攪拌した。その後、90℃の脱イオン水400gを120分かけて添加し、フラスコ内温が30℃になるまで攪拌しながら冷却した。フラスコ内温が95℃になるまで攪拌しながら再度加熱し、メチルシクロヘキサンの一部を減圧下にて留去した。その後、室温まで攪拌しながら冷却し、脱イオン水にて固形分を30重量%となるよう調整した。これにより、変性ポリオレフィン樹脂(a)を含む分散体組成物(1)を得た。なお、分散体組成物(1)の平均粒子径は130nm、粘度は10mPa・sであった。
【0073】
[比較例1]
変性ポリオレフィン樹脂(a)の代わりに、変性ポリオレフィン樹脂(b)を用いたこと以外、実施例1と同様の操作を行い、分散体組成物(2)を得た。なお、分散体組成物(2)の平均粒子径は65nm、粘度は23mPa・sであった。
【0074】
[比較例2]
撹拌機、冷却管、温度計、ロートを取り付けた4つ口フラスコ中に、得られた変性ポリオレフィン樹脂(b)を100g、ヘプタン20g、エチレングリコールモノ-ノルマル-ブチルエーテル20g、ノニオン界面活性剤(ピュアミールCCS-80、三洋化成工業(株)製)3gを添加し、フラスコ内温95℃で30分攪拌した。次に、N,N-ジメチルエタノールアミン〔DMEA〕5.5gを添加し、フラスコ内温95℃で60分攪拌した。その後、90℃の脱イオン水400gを120分かけて添加し、フラスコ内温が30℃になるまで攪拌しながら冷却した。フラスコ内温が95℃になるまで攪拌しながら再度加熱し、ヘプタンとエチレングリコールモノ-ノルマル-ブチルエーテルの一部を減圧下にて留去した。その後、室温まで攪拌しながら冷却し、脱イオン水にて固形分を30重量%となるよう調整した。これにより、変性ポリオレフィン樹脂(b)を含む分散体組成物(3)を得た。なお、分散体組成物(3)の平均粒子径は110nm、粘度は13mPa・sであった。
【0075】
[比較例3]
撹拌機、冷却管、温度計、ロートを取り付けた4つ口フラスコ中に、得られた変性ポリオレフィン樹脂(c)を100g、トルエン40g、ノニオン界面活性剤(ピュアミールCCS-80、三洋化成工業(株)製)15gを添加し、フラスコ内温95℃で30分攪拌した。次に、モルホリン6.5gを添加し、フラスコ内温95℃で60分攪拌した。その後、90℃の脱イオン水400gを120分かけて添加し、フラスコ内温が30℃になるまで攪拌しながら冷却した。フラスコ内温が95℃になるまで攪拌しながら再度加熱し、トルエンの一部を減圧下にて留去した。その後、室温まで攪拌しながら冷却し、脱イオン水にて固形分を30重量%となるよう調整した。これにより、変性ポリオレフィン樹脂(c)を含む分散体組成物(4)を得た。なお、分散体組成物(4)の平均粒子径は110nm、粘度は25mPa・sであった。
【0076】
[比較例4]
撹拌機、冷却管、温度計、ロートを取り付けた4つ口フラスコ中に、得られた変性ポリオレフィン樹脂(d)を100g、トルエン40g、ノニオン界面活性剤(ピュアミールCCS-80、三洋化成工業(株)製)20gを添加し、フラスコ内温95℃で30分攪拌した。次に、モルホリン3gを添加し、フラスコ内温95℃で60分攪拌した。その後、90℃の脱イオン水400gを120分かけて添加し、フラスコ内温が30℃になるまで攪拌しながら冷却した。フラスコ内温が95℃になるまで攪拌しながら再度加熱し、トルエンの一部を減圧下にて留去した。その後、室温まで攪拌しながら冷却し、脱イオン水にて固形分を30重量%となるよう調整した。これにより、変性ポリオレフィン樹脂(d)を含む分散体組成物(5)を得た。なお、分散体組成物(5)の平均粒子径は140nm、粘度は13mPa・sであった。
【0077】
【0078】
表1より、実施例1は耐擦過性と付着性に優れた分散体組成物であることがわかる。比較例1~4では、いずれも耐擦過性が劣る結果となった。