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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108464
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】生体情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/536 20060101AFI20240805BHJP
   A61B 5/113 20060101ALI20240805BHJP
   A61B 5/08 20060101ALI20240805BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20240805BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
G01S13/536
A61B5/113
A61B5/08
A61B5/0245 100Z
A61B5/11 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012848
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷本 雄大
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
5J070
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AA14
4C017AC40
4C017BC16
4C038SS08
4C038SV00
4C038SV01
4C038SX07
4C038VA04
4C038VB01
4C038VB31
4C038VC20
5J070AB17
5J070AC02
5J070AC13
5J070AC20
5J070AD05
5J070AE09
5J070AF01
5J070AH31
5J070AH35
5J070AK07
(57)【要約】
【課題】マルチパス反射信号による影響を抑制して生体情報を生成する。
【解決手段】本生体情報処理方法は、生体情報の測定に用いる第1の信号を上記生体情報の測定対象とする人物に対して第1の位置から送信し、上記第1の信号の第1の反射信号を基に、上記第1の信号を反射した第1の反射点を検出し、上記生体情報の測定に用いる第2の信号を上記人物に対して上記第1の位置とは異なる第2の位置から送信し、上記第2の信号の第2の反射信号を基に、上記第2の信号を反射した第2の反射点を検出し、上記第1の反射信号で検出される一方で上記第2の反射信号では検出されない位置の反射点による成分を上記第1の信号の上記第1の反射信号から除去し、上記除去された上記第1の反射信号を基に、上記人物の上記生体情報を生成する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体情報の測定に用いる第1の信号を前記生体情報の測定対象とする人物に対して第1の位置から送信する第1の送信ステップと、
前記第1の信号の第1の反射信号を基に、前記第1の信号を反射した第1の反射点を検出する第1の検出ステップと、
前記生体情報の測定に用いる第2の信号を前記人物に対して前記第1の位置とは異なる第2の位置から送信する第2の送信ステップと、
前記第2の信号の第2の反射信号を基に、前記第2の信号を反射した第2の反射点を検出する第2の検出ステップと、
前記第1の反射信号で検出される一方で前記第2の反射信号では検出されない位置の反射点による成分を前記第1の信号の前記第1の反射信号から除去する除去ステップと、
前記除去された前記第1の反射信号を基に、前記人物の前記生体情報を生成する生成ステップと、を含む、
生体情報処理方法。
【請求項2】
前記第1の検出ステップは、前記第1の位置から前記第1の反射点までの距離を検出する処理を含み、
前記第2の検出ステップは、前記第2の位置から前記第2の反射点までの距離を検出する処理を含む、
請求項1に記載の生体情報処理方法。
【請求項3】
前記第1の検出ステップは、前記第1の位置から前記第1の反射点への方向を検出する処理を含み、
前記第2の検出ステップは、前記第2の位置から前記第2の反射点への方向を検出する処理を含む、
請求項1に記載の生体情報処理方法。
【請求項4】
前記第1の検出ステップは、前記第1の反射点の強度を検出する処理を含み、
前記第2の検出ステップは、前記第2の反射点の強度を検出する処理を含む、
請求項1に記載の生体情報処理方法。
【請求項5】
前記第1の位置及び前記第2の位置は、前記第1の位置と前記人物までの距離と、前記第2の位置と前記人物までの距離と、が等しくなるように決定される、
請求項1から3のいずれか一項に記載の生体情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種々のセンサやレーダなどの非接触センサを用いて測定対象の人物の生体情報を取得する技術が実用に供されている。例えば、特許文献1では、異なる時間に取得した反射信号を処理して得られた距離推定結果出力の時間差分をとることで、受信した信号から静的マルチパス反射成分の影響を除外することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2017-513656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マルチパス反射成分には、人物によって反射されて受信される信号(以下、直接反射信号とも称する)の他に、人物によって反射された後に壁等によってさらに反射されて受信される信号(以下、マルチパス反射信号とも称する)も含まれ得る。このような場合、距離推定結果出力の時間差分をとってもマルチパス反射信号による成分を除去することはできず、同一人物を二人以上の異なる人物として誤認識したり、人物の位置を誤認識することが生じ得る。
【0005】
開示の技術の1つの側面は、マルチパス反射信号による影響を抑制して生体情報を生成し得る生体情報取得方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の技術の1つの側面は、次のような生体情報処理方法によって例示される。本生体情報処理方法は、生体情報の測定に用いる第1の信号を上記生体情報の測定対象とする人物に対して第1の位置から送信する第1の送信ステップと、上記第1の信号の第1の反射信号を基に、上記第1の信号を反射した第1の反射点を検出する第1の検出ステップと、上記生体情報の測定に用いる第2の信号を上記人物に対して上記第1の位置とは異なる第2の位置から送信する第2の送信ステップと、上記第2の信号の第2の反射信号を基に、上記第2の信号を反射した第2の反射点を検出する第2の検出ステップと、上記第1の反射信号で検出される一方で上記第2の反射信号では検出されない位置の反射点による成分を上記第1の信号の上記第1の反射信号から除去する除去ステップと、上記除去された上記第1の反射信号を基に、上記人物の上記生体情報を生成する生成ステップと、を含む。
【0007】
反射信号には、直接反射信号の成分とマルチパス反射信号の成分が含まれ得る。ここで、直接反射信号では、第1の信号の反射信号及び第2の信号の反射信号のいずれにおいても反射点の位置ずれは生じない。一方で、マルチパス反射信号では、信号を送信する位置が僅かにずれただけでも、反射点の位置は大きく変化する。そのため、上記生体情報処理方法によれば、上記第1の信号の反射信号で検出される一方で上記第2の反射信号では検出されない位置の上記反射点による成分を上記第1の信号の上記反射信号から除去することで、マルチパス反射信号による影響を抑制して生体情報を生成し得る。
【0008】
ここで、上記第1の検出ステップは、上記第1の位置から上記第1の反射点までの距離を検出する処理を含み、上記第2の検出ステップは、上記第2の位置から上記第2の反射
点までの距離を検出する処理を含んでもよい。また、上記第1の検出ステップは、上記第1の位置から上記第1の反射点への方向を検出する処理を含み、上記第2の検出ステップは、上記第2の位置から上記第2の反射点への方向を検出する処理を含んでもよい。さらに、上記第1の検出ステップは、上記第1の反射点の強度を検出する処理を含み、上記第2の検出ステップは、上記第2の反射点の強度を検出する処理を含んでもよい。
【0009】
上記生体情報処理方法は、次の特徴をさらに備えてもよい。上記第1の位置及び上記第2の位置は、上記第1の位置と上記人物までの距離と、上記第2の位置と上記人物までの距離と、が等しくなるように決定される。このような特徴を備えることで、上記第1の反射信号における直接反射信号による反射点の位置と上記第2の反射信号における直接反射信号による反射点の位置のずれが可及的に抑制される。そのため、本生体情報処理方法は、直接反射信号による反射点より高い精度で特定できる。
【発明の効果】
【0010】
開示の技術によれば、マルチパス反射信号による影響を抑制して生体情報を生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態に係る生体情報処理装置の一例を示す図である。
図2図2は、生体情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3図3は、実施形態に係る生体情報処理装置の処理ブロックの一例を示す図である。
図4図4は、信号加算部及び成分除去部による時間差分処理の一例を示す図である。
図5図5は、マルチパス反射信号の成分の特定を例示する図である。
図6図6は、実施形態に係る生体情報処理装置の処理フローの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<適用例>
本発明の適用例について説明する。本適用例に係る生体情報処理装置1は、図1に例示するように、部屋50内に配置される。図1では、部屋50内に配置されたベッド52上において、人物31が横になっている。
【0013】
生体情報処理装置1は、人物31を測定対象として生体情報を取得する。生体情報処理装置1は、生体情報の取得に用いる信号を送信する。そして、生体情報処理装置1は、人物32によって反射された信号を受信して人物31の生体情報を取得する。生体情報処理装置1は、ベッド52で横になる人物31と高さを略一致させるため、台51上に配置される。
【0014】
本適用例において、生体情報処理装置1によって、矢印A11によって例示されるように、生体情報処理装置1によって送信された信号は人物31に照射される。人物31に照射された信号は、矢印A12によって例示されるように、生体情報処理装置1へと反射される。ここで、人物31に照射された信号は、矢印A13によって例示されるように、部屋50の壁53に向けても反射され得る。そして、人物31から壁53に向けて反射された信号は、矢印A14によって例示されるように、壁53によって生体情報処理装置1に向けて反射され得る。
【0015】
例えば、後述する時間差分処理によって周期的に変化する情報が含まれない信号は除去することができる。そのため、時間差分処理を用いることで、壁53等の動きの無い静的な物体によって反射された信号を受信した信号から除去することはできる。しかしながら
、矢印A14によって例示される壁53によって反射された信号は、一度人物31によって反射されることで周期的に変化する情報を含むため、時間差分処理を用いても除去することはできない。
【0016】
このような場合、生体情報処理装置1は、矢印A12によって例示される信号と矢印A14によって例示される信号とを受信するため、測定対象の人物は人物31の1名であるにもかかわらず、2人の人物が測定対象であると誤認識し、2人の人物の生体情報を生成する虞がある。
【0017】
そこで、本適用例では、生体情報処理装置1による測定を開始する際に、生体情報処理装置1を第1の位置に設置した状態で信号を送受信し、受信した信号に対して時間差分処理及び信号を反射した反射点までの距離推定が行われる。また、生体情報処理装置1を第2の位置に設置した状態で信号を送受信し、受信した信号に対して時間差分処理及び信号を反射した反射点までの距離推定が行われる。
【0018】
矢印A12に例示されるような人物31から直接生体情報処理装置1へと反射される直接反射信号は、生体情報処理装置1の位置を多少移動させても推定される距離は大きく変動しない。一方で、矢印A14に例示されるような人物31によって反射された後に壁53によって生体情報処理装置1へと反射されるマルチパス反射信号は、生体情報処理装置1の位置が僅かに変更されただけでも、推定される距離は大きく変動する。
【0019】
そこで、本適用例では、第1の位置P1で送受信された信号を基に反射点の距離を推定し、第2の位置P2で送受信された信号を基に反射点の距離を推定する。そして、生体情報処理装置1は、第1の位置P1で送受信された信号を基に推定した距離の推定結果と、第2の位置P2で送受信された信号を基に推定された距離の推定結果の一方にのみ検出された反射点がマルチパス反射信号の成分と判定する。そして、生体情報処理装置1は、マルチパス反射信号による成分を信号から除去する。そのため、本適用例によれば、直接反射信号とマルチパス反射信号の双方が生体情報処理装置1に入射しても、マルチパス反射信号による成分を選択的に除去することができ、ひいては、マルチパス反射信号による影響を抑制して生体情報を生成できる。
【0020】
<実施形態>
以下、図面を参照して実施形態についてさらに説明する。図1は、実施形態に係る生体情報処理装置1の一例を示す図である。生体情報処理装置1は、適用例でも説明した通り、部屋50内に設置される。
【0021】
生体情報処理装置1は、人物31に向けて信号を送信し、人物31によって反射された信号を基に人物31の生体情報を取得する装置である。生体情報としては、例えば、呼吸を示す情報、心拍を示す情報、及び、体動を示す情報を挙げることができる。
【0022】
続いて、生体情報処理装置1のハードウェア構成について説明する。図2は、生体情報処理装置1のハードウェア構成の一例を示す図である。生体情報処理装置1は、送受信部101と、制御部102と、記憶部103と、出力部104とを有する。送受信部101、制御部102、記憶部103及び出力部104は、接続バスB1によって接続される。
【0023】
送受信部101は、送信部111と受信部112とを含む。送信部111は、人物の生体情報の測定に用いる信号を送信する。受信部112は、人物32から反射された信号を受信する。
【0024】
送信部111は、例えば、電波、光波、音波、超音波等を用いた信号を送信する。送信
部111は、例えば、周波数60から64GHz、帯域4GHzの電波を100マイクロ秒で掃引するFrequency Modulated Continuous Wave radar(FMCW)方式の信号を送信してもよい。送信部111は、電波を送信する場合、無変調、または周波数/位相/振幅変調された信号を生成する信号生成部と、信号生成部によって生成された信号を空間に放射する送信アンテナを有してもよい。ここで信号生成部は、Voltage Controlled Oscillator(VCO、電圧制御発振器)による発振器単独での構成でもよいし、VCOとPhase Locked Loop(PLL)回路を組み合わせた構成でもよいし、制御部102から送出されるベースバンド信号を変調器に入力する構成でもよい。また、信号生成部は、デジタル信号をアナログ信号に変換するD/A変換器を備えてもよいし、Direct Digital Synthesizer(DDS)であってもよい。
【0025】
また、受信部112は、例えば、人物31からの反射信号を受信する受信アンテナと、反射信号を復調してアナログベースバンド信号またはIntermediate Frequency(IF、中間周波数)信号を出力する乗算回路としてのミキサと、アナログベースバンド信号またはIF信号をデジタル信号に変換するA/D変換部を有する。
【0026】
制御部102は、例えば、Central Processing Unit(CPU)である。制御部102は、記憶部103に記憶されたプログラムを実行することで、生体情報処理装置1内の各部の制御や、各種情報処理等を行う。制御部102は、例えば、人物31から受信した信号を用いて、人物31の生体情報を生成する。制御部102が実行する生体情報の生成処理の詳細については後述する。
【0027】
記憶部103は、制御部102で実行されるプログラムや、制御部102において実行される処理で使用される各種データなどを記憶する。例えば、記憶部103は、例えば、Random Access Memory(RAM)、Read Only Memory(ROM)、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等である。
【0028】
出力部104は、制御部102が実行した処理の結果に応じてユーザに通知したり、外部の装置に結果に関するデータを出力したりする。なお、出力部104は、各種無線通信や有線通信等の種々の通信方法によって外部の装置に測定対象の人物の生体情報に関するデータを出力することができるよう構成されてよい。出力部104としては、例えば、ディスプレイ、スピーカ及びプリンタ等が挙げられる。
【0029】
図3は、実施形態に係る生体情報処理装置1の処理ブロックの一例を示す図である。生体情報処理装置1は、信号加算部11、成分除去部12、情報生成部13及び通知部14を備える。生体情報処理装置1は、記憶部103に実行可能に展開されたコンピュータープログラムを制御部102が実行することで、上記生体情報処理装置1の、信号加算部11、成分除去部12、情報生成部13及び通知部14等の各部としての処理を実行する。
【0030】
信号加算部11は、受信部112から出力された信号を足し合わせることで信号加算を行う。信号加算部11は、例えば、送信部111によって送信された信号に対して、受信部112から出力されるIF信号をフーリエ変換する。信号加算部11は、複数のIF信号が得られた場合、それぞれをフーリエ変換した信号を加算してもよい。なお、信号加算部11は、信号毎のIF信号を距離軸及び方位軸の少なくとも一方の軸の信号に変換し、信号を加算してもよい。
【0031】
成分除去部12は、信号加算部11によって得られた信号から壁53等の静的な(動作しない)物体によって反射された成分とマルチパス反射信号による成分を除去する。静的な物体によって反射された成分の除去は、例えば、時間差分処理によって行われる。
【0032】
図4は、信号加算部11及び成分除去部12による時間差分処理の一例を示す図である。図4Aは、送信部111によって送信される信号を例示する図である。図4Aの縦軸は周波数を例示し、横軸は時間を例示する。送信部111は、徐々に周波数を高めるアップチャープのチャープ信号を複数回(図4Aでは波形W1、W2、W3、W4で例示される4回)送信する。
【0033】
図4Bは、受信部112によって受信される信号から得られたIF信号に対して、フーリエ変換が行われた結果を周波数スペクトル表示した一例を示す図である。図4Bの縦軸は強度を例示し、横軸は周波数を例示する。フーリエ変換は、例えば、信号加算部11によって行われる。フーリエ変換は、送信部111によって送信された信号の夫々に対して得られたIF信号に対して行われる。そのため、図4Bでは、4つの周波数スペクトルが例示される。図4Bにおいて、波形W11は波形W1で示される信号に対して得られたIF信号の周波数スペクトルである。波形W21は波形W2で示される信号に対して得られたIF信号の周波数スペクトルである。波形W31は波形W3で示される信号に対して得られたIF信号の周波数スペクトルである。波形W41は波形W4で示される信号に対して得られたIF信号の周波数スペクトルである。信号加算部11は、送信部111によって送信された信号の夫々に対して得られたIF信号をフーリエ変換した信号を加算する。図4Aから図4Bの処理は、予め決定された周期(タイムフレーム)で繰り返し実行される。すなわち、加算された信号はタイムフレーム毎にひとつずつ得られる。
【0034】
図4Cは、連続する2つのタイムフレームにおいて信号加算部11からそれぞれ出力される信号の差分をとった信号の周波数スペクトルから得た距離プロファイルである。図4Cの縦軸は強度を例示し、横軸は周波数から変換した距離を例示する。距離プロファイルの算出は、例えば、成分除去部12によって行われる。ピークT1は、波形W12のなかで最も強い強度を示す。
【0035】
図4Dは、タイムフレーム毎に得られた図4Cの波形に対して位相抽出を行うことで生成した人物の生体情報の一例を示す図である。図4Dの縦軸は位相を例示し、横軸は時間を例示する。成分除去部12は、タイムフレーム毎に得られた距離推定結果のピークに対応する周波数成分の信号位相を時系列順にプロットすることで、生体情報を例示する波形W3を生成する。
【0036】
このような時間差分処理によって、周期的な変動を含まない信号(例えば、送信部111によって送信された信号が壁53によって反射されて受信部112によって受信された信号)は除去される。しかしながら、図1の矢印A14によって例示されるように、一度人物31によって反射された後に壁53によって反射されて受信部112に受信されたマルチパス反射信号は、人物31によって反射されたことによって周期的な変動を含む。そのため、時間差分処理のみでは、このようなマルチパス反射信号の成分を除去することはできない。
【0037】
そこで、成分除去部12は、時間差分処理に加えて、マルチパス反射信号の成分の除去を行う。成分除去部12は、生体情報処理装置1が第1の位置P1に設置された状態で、送信部111によって送信され、受信部112によって受信された第1の信号に対して時間差分処理を行い、時間差分処理を行った第1の信号を基に反射点の第1の距離を推定する。また、成分除去部12は、生体情報処理装置1が第2の位置P2に設置された状態で、送信部111によって送信され、受信部112によって受信された第2の信号に対して時間差分処理を行い、時間差分処理を行った第2の信号を基に反射点の第2の距離を推定する。ここで、反射点は、信号の強度分布のピークとして検出される。また、第1の位置P1及び第2の位置P2としては、人物31からの距離が略等しい位置が選定される。第
1の位置P1及び第2の位置P2は、例えば、人物31を中心とした円軌道上の点である。
【0038】
成分除去部12は、第1の信号と第2の信号のいずれか一方でのみ検出された反射点をマルチパス反射信号による成分と判定する。そして、成分除去部12は、マルチパス反射信号による成分を第1の信号から除去する。なお、第1の位置は生体情報処理装置1の設置を所望する位置であり、第2の位置は部屋50内において第1の位置とは異なる位置である。
【0039】
図5は、マルチパス反射信号の成分の特定を例示する図である。図5では、縦軸は強度を例示し、横軸は距離を例示する。すなわち、図5は、反射点の距離の推定結果を例示する波形であり、図5の例では、ピークR1とピークR2が検出されている。図5Aは、生体情報処理装置1が第1の位置P1に設置された状態で、送信部111によって送信され、受信部112によって受信された第1の信号に対して時間差分処理を行い、時間差分処理を行った第1の信号を基に反射点の第1の距離を推定した結果である。図5Bは、生体情報処理装置1が第2の位置P2に設置された状態で、送信部111によって送信され、受信部112によって受信された第2の信号に対して時間差分処理を行い、時間差分処理を行った第2の信号を基に反射点の第2の距離を推定した結果である。
【0040】
図5A図5Bとを比較すると、図5Aでは、距離D1のピークR1及び距離D2のピークR2が生じている。また、図5Bでは、距離D1のピークR3及び距離D3のピークR4が生じている。ここで、人物31から直接生体情報処理装置1へと反射される直接反射信号は、生体情報処理装置1の位置を多少移動させても推定される距離は大きく変動しない(例えば、変動幅は10センチ以内)。一方で人物31によって反射された後に壁53によって生体情報処理装置1へと反射されるマルチパス反射信号は、生体情報処理装置1の位置が僅かに変更されただけでも、推定される距離は大きく変動する。
【0041】
そのため、図5A及び図5Bの何れにおいても距離D1で検出されたピークR1、R3は、人物31から直接生体情報処理装置1へと反射される直接反射信号の成分であると考えられる。また、生体情報処理装置1が第1の位置P1に設置されたときのみにおいて距離D2で生じたピークR2、生体情報処理装置1が第2の位置P2に設置されたときのみにおいて距離D3で生じたピークR4は、人物31によって反射された後に壁53によって生体情報処理装置1へと反射されるマルチパス反射信号の成分であると考えられる。
【0042】
そこで、成分除去部12は、ピークR2及びピークR4はマルチパス反射信号の成分であると判定し、図5Aの波形からピークR2を除去する。成分除去部12は、このような処理によって、受信部112が受信した信号からマルチパス反射信号の成分を選択的に除去し、ひいては、測定対象の人数を誤認識することを抑制できる。
【0043】
情報生成部13は、成分除去部12によってマルチパス反射信号による成分が除去された信号を用いて、生体情報を生成する。情報生成部13は、例えば、成分除去部12によってマルチパス反射信号による成分が除去された信号の振幅または位相の経時変化から呼吸波形を示す生体情報を生成する。
【0044】
通知部14は、情報生成部13によって生成された生体情報を出力する。通知部14は、例えば、人物31の呼吸波形を出力する。通知部14は、例えば、生体情報をディスプレイとしての出力部104に表示させてもよい。
【0045】
<処理フロー>
図6は、実施形態に係る生体情報処理装置1の処理フローの一例である。以下、図6
参照して実施形態に係る生体情報処理装置1の処理フローについて説明する。
【0046】
ステップS1では、生体情報処理装置1は、第1の位置P1に設置される。そして、生体情報処理装置1が第1の位置P1に設置された状態で、送受信部101によってチャープ信号の送受信が行われる。ステップS2では、ステップS1で受信された信号に対して、時間差分処理が行われる。
【0047】
ステップS3では、成分除去部12は、ステップS2で時間差分処理が行われた信号を基に、信号を反射した反射点までの距離を推定する。
【0048】
ステップS4では、生体情報処理装置1は、第2の位置P2に設置される。そして、生体情報処理装置1が第2の位置P2に設置された状態で、送受信部101によってチャープ信号の送受信が行われる。ステップS5では、ステップS4で受信された信号に対して、時間差分処理が行われる。
【0049】
ステップS6では、成分除去部12は、ステップS5で時間差分処理が行われた信号を基に、信号を反射した反射点までの距離を推定する。
【0050】
ステップS7では、成分除去部12は、ステップS3で距離が推定された反射点と、ステップS6で距離が推定された反射点とを比較し、ステップS3及びステップS6の一方でのみ検出された反射点をマルチパス反射信号の成分と判定する。成分除去部12は、マルチパス反射信号の成分を、例えば、ステップS3の距離推定結果から除去する。
【0051】
<実施形態の作用効果>
本実施形態では、第1の位置P1で送受信された信号を基に反射点の距離を推定し、第2の位置P2で送受信された信号を基に反射点の距離を推定する。そして、成分除去部12は、第1の位置P1で送受信された信号を基に推定した距離の推定結果と、第2の位置P2で送受信された信号を基に推定された距離の推定結果の一方にのみ検出された反射点がマルチパス反射信号の成分と判定する。そして、成分除去部12は、判定したマルチパス反射信号の成分を、第1の位置で送受信した信号から除去する。そして、マルチパス反射信号の成分を除去した信号を基に、生体情報を生成する。そのため、本実施形態によれば、直接反射信号とマルチパス反射信号の双方が生体情報処理装置1に入射しても、マルチパス反射信号による成分を選択的に除去することができ、ひいては、測定対象の人数を誤認識することを抑制できる。
【0052】
本実施形態において、第1の位置P1及び第2の位置P2は、人物31からの距離が略等しい箇所が選定される。そのため、第1の位置P1に生体情報処理装置1を配置した場合も、第2の位置P2に生体情報処理装置1を配置した場合も、人物31を示す反射点の位置は略変動しない。一方で、壁53によって反射された信号の反射点の距離は、生体情報処理装置1の位置が僅かに変動しただけでも大きく変動する。そのため、本実施形態によれば、第1の位置P1に生体情報処理装置1を配置して検出した反射点の距離と、第2の位置P2に生体情報処理装置1を配置して検出した反射点の距離とを基に、人物31以外の反射点を特定することが容易である。
【0053】
<変形例>
実施形態では、生体情報処理装置1と人物31との距離が略一定となるように、第1の位置P1と第2の位置P2とが決定される。しかしながら、第1の位置P1と第2の位置P2の決定は、このような決定方法に限定されない。例えば、第1の位置P1と人物31との距離と、第2の位置P2と人物31との距離は、異なっていてもよい。この場合、第1の位置P1と人物31との距離と、第2の位置P2と人物31との距離との差Δdが予
めわかっていればよい。この場合、第1の位置P1に生体情報処理装置1を配置した場合に検出される人物31による反射点の位置と、第2の位置P2に生体情報処理装置1を配置した場合に検出される人物31による反射点の位置とでは、Δdに対応する距離だけずれることになる。そのため、第2の位置P2に生体情報処理装置1を配置した場合に検出される反射点に対してΔdの補正(例えば、検出される反射点の距離からΔdを減算)した上で、実施形態と同一の処理により、マルチパス反射信号による成分を選択的に除去することができる。
【0054】
実施形態では、生体情報処理装置1の位置が変更されたが、生体情報処理装置1とは独立に送受信部101の位置を変更可能であれば、送受信部101のみ位置を変更してもよい。また、第1の位置P1と第2の位置P2の夫々に送受信部101を配置してもよい。
【0055】
実施形態では、送信部111から反射点までの距離推定が行われたが、距離推定に代えて、送信部111から反射点への方向(角度)が推定されてもよい。成分除去部12は、方向が推定された場合も距離推定の場合と同様に、第1の信号と第2の信号のいずれか一方でのみ検出された反射点をマルチパス反射信号による成分と判定し、当該マルチパス反射信号による成分を第1の信号から除去すればよい。成分除去部12は、例えば、第1の信号及び第2の信号における角度変化が5度以上ある反射点について、マルチパス反射信号の成分と判定してもよい。
【0056】
実施形態では、送信部111から反射点までの距離推定が行われたが、距離推定に代えて、反射点の強度(電力)が推定されてもよい。成分除去部12は、第1の信号と第2の信号のいずれか一方でのみ検出された強度の反射点をマルチパス反射信号による成分と判定し、当該マルチパス反射信号による成分を第1の信号から除去すればよい。ここで、成分除去部12は、例えば、第1の信号及び第2の信号における強度の変化が6dB以上である反射点について、マルチパス反射信号の成分と判定してもよい。
【0057】
以上で開示した実施形態や変形例はそれぞれ組み合わせることができる。
【0058】
<コンピューターが読み取り可能な記録媒体>
コンピューターその他の機械、装置(以下、コンピューター等)に上記いずれかの機能を実現させる情報処理プログラムをコンピューター等が読み取り可能な記録媒体に記録することができる。そして、コンピューター等に、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、その機能を提供させることができる。
【0059】
ここで、コンピューター等が読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピューター等から読み取ることができる記録媒体をいう。このような記録媒体のうちコンピューター等から取り外し可能なものとしては、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、Compact Disc Read Only Memory(CD-ROM)、Compact Disc-Recordable(CD-R)、Compact Disc-ReWriterable(CD-RW)、Digital Versatile Disc(DVD)、ブルーレイディスク(BD)、Digital Audio Tape(DAT)、8mmテープ、フラッシュメモリー、外付け型のハードディスクドライブやSolid State Drive(SSD)等がある。また、コンピューター等に固定された記録媒体として内蔵型のハードディスクドライブ、SSDやROM等がある。
【0060】
<付記1>
生体情報の測定に用いる第1の信号を前記生体情報の測定対象とする人物(31)に対して第1の位置(P1)から送信する第1の送信ステップと(ステップS1)、
前記第1の信号の第1の反射信号を基に、前記第1の信号を反射した第1の反射点を検出する第1の検出ステップと(ステップS2-S3)、
前記生体情報の測定に用いる第2の信号を前記人物(31)に対して前記第1の位置(P1)とは異なる第2の位置(P2)から送信する第2の送信ステップと(ステップS4)、
前記第2の信号の第2の反射信号を基に、前記第2の信号を反射した第2の反射点を検出する第2の検出ステップと(ステップS5-S6)、
前記第1の反射信号で検出される一方で前記第2の反射信号では検出されない位置の反射点による成分を前記第1の信号の前記第1の反射信号から除去する除去ステップと(ステップS7)、
前記除去された前記第1の反射信号を基に、前記人物の前記生体情報を生成する生成ステップと(ステップS8)、を含む、
生体情報処理方法(図6)。
<付記2>
前記第1の検出ステップは、前記第1の位置から前記第1の反射点までの距離を検出する処理を含み、
前記第2の検出ステップは、前記第2の位置から前記第2の反射点までの距離を検出する処理を含む、
付記1に記載の生体情報処理方法。
<付記3>
前記第1の検出ステップは、前記第1の位置から前記第1の反射点への方向を検出する処理を含み、
前記第2の検出ステップは、前記第2の位置から前記第2の反射点への方向を検出する処理を含む、
付記1または2に記載の生体情報処理方法。
<付記4>
前記第1の検出ステップは、前記第1の反射点の強度を検出する処理を含み、
前記第2の検出ステップは、前記第2の反射点の強度を検出する処理を含む、
付記1から3のいずれかひとつに記載の生体情報処理方法。
<付記5>
前記第1の位置(P1)及び前記第2の位置(P2)は、前記第1の位置(P1)と前記人物(31)までの距離と、前記第2の位置(P2)と前記人物(31)までの距離と、が等しくなるように決定される、
付記1から3のいずれか一項に記載の生体情報処理方法。
【符号の説明】
【0061】
1・・生体情報処理装置
11・・信号加算部
12・・成分除去部
13・・情報生成部
14・・通知部
31・・人物
50・・部屋
51・・台
52・・ベッド
53・・壁
101・・送受信部
102・・制御部
103・・記憶部
104・・出力部
111・・送信部
112・・受信部
B1・・接続バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6