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特開2024-108466骨用プレートの変形加工補助部材、骨用プレート、および骨治療用キット
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108466
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】骨用プレートの変形加工補助部材、骨用プレート、および骨治療用キット
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/88 20060101AFI20240805BHJP
   A61B 17/80 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
A61B17/88
A61B17/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012850
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】592118103
【氏名又は名称】メイラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003111
【氏名又は名称】あいそう弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】余語 和也
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 一希
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL27
4C160LL29
4C160LL33
4C160LL70
(57)【要約】
【課題】骨用プレートの変形加工量を規制し、骨用プレートの破損を防止できる骨用プレートの変形加工補助部材、骨用プレート、および骨治療用キットを提供する。
【解決手段】変形可能部と、変形可能部を貫通する開口を備える骨用プレート用の変形加工補助部材100の補助部材本体101は、プレート密接部111を骨用プレートに密接させた時、骨用プレートの変形可能部の開口から所定距離離隔した上方に位置するプレート対向部120と、補助部材本体101を上下方向に貫通し、骨用プレートの変形加工に用いられる変形加工用器具を挿通可能かつ硬質な内周面121を有する変形加工用器具挿通孔122とを備える。変形加工用器具挿通孔122と骨用プレートの変形可能部の開口とを変形加工用器具が、同時に挿通可能であり、変形加工用器具と変形加工用器具挿通孔122の硬質な内周面121とが当接することにより、骨用プレートの変形加工量を規制する。
【選択図】図24
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変形可能部と、前記変形可能部を貫通する開口を備える骨用プレート用の変形加工補助部材であって、
前記変形加工補助部材は、上下方向に厚みを有する補助部材本体を備え、前記補助部材本体は、下面に前記骨用プレートに密接するプレート密接部を有し、さらに、前記補助部材本体は、前記骨用プレートに重ね合わせ、前記プレート密接部を前記骨用プレートに密接させた時、前記骨用プレートの前記変形可能部の前記開口から所定距離離隔した上方に位置するプレート対向部と、前記補助部材本体を前記上下方向に貫通し、前記骨用プレートの変形加工に用いられる変形加工用器具を挿通可能かつ硬質な内周面を有する変形加工用器具挿通孔とを備え、さらに、
前記変形加工補助部材は、前記変形加工用器具挿通孔と前記骨用プレートの前記変形可能部の前記開口とを前記変形加工用器具が、同時に挿通可能であり、かつ、挿通された状態の前記変形加工用器具の変位が可能であり、さらに、前記変形加工用器具と前記変形加工用器具挿通孔の前記硬質な内周面とが当接することにより、前記骨用プレートの変形加工量を規制するものとなっていることを特徴とする骨用プレートの変形加工補助部材。
【請求項2】
前記骨用プレートは、複数の前記変形可能部と、前記変形可能部を貫通する開口を備え、前記補助部材本体は、複数の前記変形加工用器具挿通孔を備え、
前記複数の変形加工用器具挿通孔は、略長円孔状の曲げ加工用挿通孔と、略円孔状の捻り加工用挿通孔とを含む請求項1に記載の骨用プレートの変形加工補助部材。
【請求項3】
前記曲げ加工用挿通孔の硬質な内周面は、前記上下方向に幅を有し、
前記曲げ加工用挿通孔は、略長円孔状の曲げ加工用挿通孔であり、前記曲げ加工用挿通孔内における前記変形加工用器具の長径方向への変位を許容しつつ、短径方向への変位を不可とする請求項2に記載の骨用プレートの変形加工補助部材。
【請求項4】
前記変形加工補助部材は、前記補助部材本体を前記上下方向に貫通する固定用ねじ部材収容孔と、前記固定用ねじ部材収容孔に回動可能に収容され、前記変形加工補助部材を前記骨用プレートに固定可能な固定用ねじ部材とを備え、前記固定用ねじ部材は、先端部の外周面に、前記骨用プレートに形成されたねじ孔に螺合可能なねじ部を備えている請求項1に記載の骨用プレートの変形加工補助部材。
【請求項5】
前記変形加工補助部材は、前記補助部材本体の下面から下方に突出し、前記骨用プレートに形成された凹部または孔に進入可能な補助部材側突出部を備える請求項1に記載の骨用プレートの変形加工補助部材。
【請求項6】
長管骨の端部の骨折の治療に用いられものであり、かつ、変形加工補助部材が装着可能である骨用プレートであって、
前記変形加工補助部材は、変形加工用器具挿通孔と、固定用ねじ部材収容孔と、前記固定用ねじ部材収容孔に回動可能に収容され、先端部の外周面に雄ねじ部を備え、前記変形加工補助部材を前記骨用プレートに固定するための固定用ねじ部材と、前記変形加工補助部材から下方に突出する補助部材側突出部とを備え、
前記骨用プレートは、長手方向に延びるプレート本体部と、前記プレート本体部より前記長手方向の一方の側に位置し、前記プレート本体部の前記長手方向の一方の側の部分よりも幅が広いヘッド部と、前記ヘッド部の周縁部に設けられたタブとを備え、前記タブは、タブ本体部と、前記タブ本体部を貫通するタブ貫通孔と、曲げ変形または捻り変形可能な接続部とを備え、前記接続部により前記ヘッド部から外方に延びるように設けられており、さらに、
前記骨用プレートは、前記変形加工補助部材を前記プレート本体部に重ね合わせた時、前記変形加工補助部材の前記固定用ねじ部材と螺合可能な雌ねじ部を備えるねじ孔と、前記補助部材側突出部を収納可能な凹部または孔を備え、前記変形加工補助部材を回動不能に装着可能であり、
前記変形加工補助部材が装着された状態の前記骨用プレートは、前記骨用プレートの変形加工に用いられる変形加工用器具が、前記変形加工用器具挿通孔と前記タブ貫通孔とを同時に挿通可能であり、かつ、挿通された状態の前記変形加工用器具の変位が可能であることを特徴とする骨用プレート。
【請求項7】
変形可能部と、前記変形可能部を貫通する開口とを備える骨用プレートと、
請求項1ないし5のいずれかに記載の骨用プレートの変形加工補助部材と、
前記骨用プレートの変形加工に用いられる前記変形加工用器具とを備える骨治療用キット。
【請求項8】
前記骨用プレートは、長管骨の端部の骨折の治療に用いられる骨用プレートであって、
長手方向に延びるプレート本体部と、前記プレート本体部より前記長手方向の一方の側に位置し、前記プレート本体部の前記長手方向の一方の側の部分よりも幅が広いヘッド部と、前記ヘッド部の周縁部に設けられたタブとを備え、
前記タブは、タブ本体部と、前記タブ本体部を貫通するタブ貫通孔と、曲げ変形または捻り変形可能な接続部とを備え、前記接続部により前記ヘッド部から外方に延びるように設けられており、
前記変形加工補助部材の前記プレート対向部は、前記変形加工補助部材を前記骨用プレートに重ね合わせ、前記プレート密接部を前記骨用プレートの前記ヘッド部に密接させた時、前記骨用プレートの前記タブから所定距離離隔した上方に位置し、さらに、
前記変形加工用器具挿通孔と前記タブ貫通孔とを前記変形加工用器具が、同時に挿通可能であり、かつ、挿通された状態の前記変形加工用器具の変位が可能であり、さらに、前記変形加工用器具と前記変形加工用器具挿通孔の前記硬質な内周面とが当接することにより、前記骨用プレートの前記タブの変形加工量を規制するものとなっている請求項7に記載の骨治療用キット。
【請求項9】
前記タブ貫通孔は、内面にタブ側雌ねじ部を備え、
前記変形加工用器具の先端部は、前記タブ側雌ねじ部に螺合可能な器具側雄ねじ部を備える請求項8に記載の骨治療用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変形加工用器具を用いた骨用プレートの変形加工を補助するための骨用プレートの変形加工補助部材、骨用プレート、および骨治療用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
大腿骨、腓骨、脛骨、上腕骨、橈骨および尺骨等の骨の端部(遠位端部および近位端部)もしくはその近傍における骨折は、再接合を必要とする多くの骨折片を生じることがある。そのような骨折部の治療においては、骨折片の位置や姿勢を修復した後、骨折片と骨本体とを固定するため、骨折片と骨本体とに架橋的に取り付けられる骨用プレートが用いられる。
骨は患者によって形状が異なり、また骨折部の状態(骨折片の位置や姿勢等)も症例ごとに異なる。そのため、臨床現場等においては、医師が、予め所定の形状で製造された骨用プレートを、骨の形状や骨折部の状態に合わせて変形することがある。
【0003】
骨用プレートを変形させるための技術として、特許文献1(特表2018-512968号公報)には、曲げツールをプレート部材に結合し、当該曲げツールの回転によりプレート部材にモーメントを加える構成が開示されている。
また、本願出願人も、特許文献2(特開2021-112367号公報)において、骨用プレートの曲げ加工性を向上できる骨用プレートの曲げ加工方法並びに曲げ加工用具および曲げ加工用具セットを開示しており、そこには、所定の曲げ加工用具によって挟圧保持された骨用プレートを、手もしくは治具を用いて把持し、狭圧保持された部位以外の部位にて、湾曲変形させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2018-512968号公報
【特許文献2】特開2021-112367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのように変形加工される骨用プレートは、一般的に塑性変形可能な材料(主に金属材料)からなるものである。しかし、そのような骨用プレートであっても、過剰な変形加工を加えたり、変形加工を繰り返すことにより、破損する恐れがある。特に、近年、骨折の治療においては、骨折部位の機能障害や治癒後の違和感等を少しでも軽減するために、骨折をより適切に治療(骨折片の位置や姿勢を修復し、その状態を維持)できる骨用プレート(言い換えれば、骨の形状や骨折部の状態に合わせてより自由に変形することができる骨用プレート)が求められており、そのような骨用プレートは、変形加工し易い反面、破損し易くもなっている。また、骨用プレートは形状が部位によって異なるため、その変形加工し易さも部位により異なり、所望の変形加工を加えることは容易ではない。
そこで、本発明は、骨用プレートの変形加工量を規制し、骨用プレートの破損を防止することができる骨用プレートの変形加工補助部材、骨用プレート、および骨治療用キットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 変形可能部と、前記変形可能部を貫通する開口を備える骨用プレート用の変形加工補助部材であって、
前記変形加工補助部材は、上下方向に厚みを有する補助部材本体を備え、前記補助部材本体は、下面に前記骨用プレートに密接するプレート密接部を有し、さらに、前記補助部材本体は、前記骨用プレートに重ね合わせ、前記プレート密接部を前記骨用プレートに密接させた時、前記骨用プレートの前記変形可能部の前記開口から所定距離離隔した上方に位置するプレート対向部と、前記補助部材本体を前記上下方向に貫通し、前記骨用プレートの変形加工に用いられる変形加工用器具を挿通可能かつ硬質な内周面を有する変形加工用器具挿通孔とを備え、さらに、
前記変形加工補助部材は、前記変形加工用器具挿通孔と前記骨用プレートの前記変形可能部の前記開口とを前記変形加工用器具が、同時に挿通可能であり、かつ、挿通された状態の前記変形加工用器具の変位が可能であり、さらに、前記変形加工用器具と前記変形加工用器具挿通孔の前記硬質な内周面とが当接することにより、前記骨用プレートの変形加工量を規制するものとなっている骨用プレートの変形加工補助部材。
【0007】
(2) 前記骨用プレートは、複数の前記変形可能部と、前記変形可能部を貫通する開口を備え、前記補助部材本体は、複数の前記変形加工用器具挿通孔を備え、
前記複数の変形加工用器具挿通孔は、略長円孔状の曲げ加工用挿通孔と、略円孔状の捻り加工用挿通孔とを含む上記(1)に記載の骨用プレートの変形加工補助部材。
(3) 前記曲げ加工用挿通孔の硬質な内周面は、前記上下方向に幅を有し、
前記曲げ加工用挿通孔は、略長円孔状の曲げ加工用挿通孔であり、前記曲げ加工用挿通孔内における前記変形加工用器具の長径方向への変位を許容しつつ、短径方向への変位を不可とする上記(2)に記載の骨用プレートの変形加工補助部材。
(4) 前記変形加工補助部材は、前記補助部材本体を前記上下方向に貫通する固定用ねじ部材収容孔と、前記固定用ねじ部材収容孔に回動可能に収容され、前記変形加工補助部材を前記骨用プレートに固定可能な固定用ねじ部材とを備え、前記固定用ねじ部材は、先端部の外周面に、前記骨用プレートに形成されたねじ孔に螺合可能なねじ部を備えている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の骨用プレートの変形加工補助部材。
(5) 前記変形加工補助部材は、前記補助部材本体の下面から下方に突出し、前記骨用プレートに形成された凹部または孔に進入可能な補助部材側突出部を備える上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の骨用プレートの変形加工補助部材。
【0008】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(6) 長管骨の端部の骨折の治療に用いられものであり、かつ、変形加工補助部材が装着可能である骨用プレートであって、
前記変形加工補助部材は、変形加工用器具挿通孔と、固定用ねじ部材収容孔と、前記固定用ねじ部材収容孔に回動可能に収容され、先端部の外周面に雄ねじ部を備え、前記変形加工補助部材を前記骨用プレートに固定するための固定用ねじ部材と、前記変形加工補助部材から下方に突出する補助部材側突出部とを備え、
前記骨用プレートは、長手方向に延びるプレート本体部と、前記プレート本体部より前記長手方向の一方の側に位置し、前記プレート本体部の前記長手方向の一方の側の部分よりも幅が広いヘッド部と、前記ヘッド部の周縁部に設けられたタブとを備え、前記タブは、タブ本体部と、前記タブ本体部を貫通するタブ貫通孔と、曲げ変形または捻り変形可能な接続部とを備え、前記接続部により前記ヘッド部から外方に延びるように設けられており、さらに、
前記骨用プレートは、前記変形加工補助部材を前記プレート本体部に重ね合わせた時、前記変形加工補助部材の前記固定用ねじ部材と螺合可能な雌ねじ部を備えるねじ孔と、前記補助部材側突出部を収納可能な凹部または孔を備え、前記変形加工補助部材を回動不能に装着可能であり、
前記変形加工補助部材が装着された状態の前記骨用プレートは、前記骨用プレートの変形加工に用いられる変形加工用器具が、前記変形加工用器具挿通孔と前記タブ貫通孔とを同時に挿通可能であり、かつ、挿通された状態の前記変形加工用器具の変位が可能である骨用プレート。
【0009】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(7) 変形可能部と、前記変形可能部を貫通する開口とを備える骨用プレートと、
上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の骨用プレートの変形加工補助部材と、
前記骨用プレートの変形加工に用いられる前記変形加工用器具とを備える骨治療用キット。
【0010】
(8) 前記骨用プレートは、長管骨の端部の骨折の治療に用いられる骨用プレートであって、
長手方向に延びるプレート本体部と、前記プレート本体部より前記長手方向の一方の側に位置し、前記プレート本体部の前記長手方向の一方の側の部分よりも幅が広いヘッド部と、前記ヘッド部の周縁部に設けられたタブとを備え、
前記タブは、タブ本体部と、前記タブ本体部を貫通するタブ貫通孔と、曲げ変形または捻り変形可能な接続部とを備え、前記接続部により前記ヘッド部から外方に延びるように設けられており、
前記変形加工補助部材の前記プレート対向部は、前記変形加工補助部材を前記骨用プレートに重ね合わせ、前記プレート密接部を前記骨用プレートの前記ヘッド部に密接させた時、前記骨用プレートの前記タブから所定距離離隔した上方に位置し、さらに、
前記変形加工用器具挿通孔と前記タブ貫通孔とを前記変形加工用器具が、同時に挿通可能であり、かつ、挿通された状態の前記変形加工用器具の変位が可能であり、さらに、前記変形加工用器具と前記変形加工用器具挿通孔の前記硬質な内周面とが当接することにより、前記骨用プレートの前記タブの変形加工量を規制するものとなっている上記(7)に記載の骨治療用キット。
(9) 前記タブ貫通孔は、内面にタブ側雌ねじ部を備え、
前記変形加工用器具の先端部は、前記タブ側雌ねじ部に螺合可能な器具側雄ねじ部を備える上記(8)に記載の骨治療用キット。
【発明の効果】
【0011】
本発明の骨用プレートの変形加工補助部材は、上下方向に厚みを有する補助部材本体を備え、補助部材本体は、下面に骨用プレートに密接するプレート密接部を有し、さらに、補助部材本体は、変形加工補助部材を骨用プレートに重ね合わせ、プレート密接部を骨用プレートに密接させた時、骨用プレートの変形可能部の開口から所定距離離隔した上方に位置するプレート対向部と、補助部材本体を上下方向に貫通し、骨用プレートの変形加工に用いられる変形加工用器具を挿通可能かつ硬質な内周面を有する変形加工用器具挿通孔とを備え、さらに、変形加工補助部材は、変形加工用器具挿通孔と骨用プレートの変形可能部の開口とを変形加工用器具が、同時に挿通可能であり、かつ、挿通された状態の変形加工用器具の変位が可能であり、さらに、変形加工用器具と変形加工用器具挿通孔の硬質な内周面とが当接することにより、骨用プレートの変形加工量を規制するものとなっている。これにより、意図しない骨用プレートの変形による骨用プレートの破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の変形加工補助部材の実施例を示す正面図である。
図2図2は、本発明の変形加工補助部材の実施例を示す平面図である。
図3図3は、本発明の変形加工補助部材の実施例を示す左側面図である。
図4図4は、本発明の変形加工補助部材の実施例を示す右側面図である。
図5図5は、本発明の変形加工補助部材の実施例を示す背面図である。
図6図6は、本発明の変形加工補助部材の実施例を示す底面図である。
図7図7は、図2のX-X断面拡大説明図である。
図8図8は、図1に示す変形加工補助部材が好適に用いられる骨用プレートの実施例を示す正面図である。
図9図9は、図1に示す変形加工補助部材が好適に用いられる骨用プレートの実施例を示す左側面図である。
図10図10は、図1に示す変形加工補助部材が好適に用いられる骨用プレートの実施例を示す右側面図である。
図11図11は、図1に示す変形加工補助部材が好適に用いられる骨用プレートの実施例を示す平面図である。
図12図12は、図1に示す変形加工補助部材が好適に用いられる骨用プレートの実施例を示す底面図である。
図13図13は、図1に示す変形加工補助部材が好適に用いられる骨用プレートの実施例を示す背面図である。
図14図14は、図8のA-A断面拡大説明図である。
図15図15は、図8のB-B断面拡大説明図である。
図16図16は、図8のC-C断面拡大説明図である。
図17図17は、図8に示す骨用プレートを脛骨遠位部に用いた場合の一例を示す説明図である。
図18図18は、図8に示す骨用プレートとともに用いられる骨用ねじの一例を示す正面図である。
図19図19は、図1に示す変形加工補助部材が好適に用いられる骨用プレートの他の実施例を示す正面図である。
図20図20は、図1に示す変形加工補助部材が好適に用いられる変形加工用器具の実施例を示す正面図である。
図21図21は、図20に示す変形加工用器具の器具本体部を示す正面図である。
図22図22は、図1に示す変形加工補助部材を用いて骨用プレートを変形加工する際の一工程を示す説明図である。
図23図23は、図22の右側面図である。
図24図24は、図1に示す変形加工補助部材を用いて骨用プレートを変形加工する際の一工程を示す説明図である。
図25図25は、図24の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の骨用プレートを図面に示した実施例を用いて説明する。
本発明の骨用プレートの変形加工補助部材100は、図1ないし図7に示すように、変形可能部と、変形可能部を貫通する開口を備える骨用プレート用の変形加工補助部材100である。変形加工補助部材100は、上下方向に厚みを有する補助部材本体101を備え、補助部材本体101は、下面に骨用プレートに密接するプレート密接部111を有する。さらに、変形加工補助部材100の補助部材本体101は、変形加工補助部材100を骨用プレートに重ね合わせ、プレート密接部111を骨用プレートに密接させた時、骨用プレートの変形可能部の開口から所定距離離隔した上方に位置するプレート対向部120と、補助部材本体101を上下方向に貫通し、骨用プレートの変形加工に用いられる変形加工用器具を挿通可能かつ硬質な内周面121を有する変形加工用器具挿通孔122とを備える。さらに、変形加工補助部材100は、変形加工用器具挿通孔122と骨用プレートの変形可能部の開口とを変形加工用器具が、同時に挿通可能であり、かつ、挿通された状態の変形加工用器具の変位が可能であり、さらに、変形加工用器具と変形加工用器具挿通孔122の硬質な内周面121とが当接することにより、骨用プレートの変形加工量を規制するものとなっている。
【0014】
また、本発明の骨治療用キット200は、図24および図25に示すように、変形可能部と、変形可能部を貫通する開口とを備える骨用プレート(例えば、後述する骨用プレート1)と、上述の骨用プレートの変形加工補助部材100と、骨用プレートの変形加工に用いられる変形加工用器具(例えば、後述する変形加工用器具300)とを備える骨治療用キットである。
【0015】
具体的には、変形加工補助部材100は、上下方向(図1における上下方向)に厚みを有する補助部材本体101を備え、補助部材本体101は、補助部材本体101(本体部110)の下面側に設けられた骨用プレートに密接するプレート密接部111と、使用時に骨プレートより所定長離隔するプレート対向部120を有している。本実施例では、プレート密接部111は、骨用プレート(後述する骨用プレート1のヘッド部20の上面)を被包する曲面を備えている。より具体的には、変形加工補助部材100は、補助部材本体101のプレート対向部120を除く部分(本体部110)の下面略全体が、骨用プレート(後述する骨用プレート1のヘッド部20の上面)を被包する曲面となっている。言い換えれば、補助部材本体101のプレート対向部120を除く部分(本体部110)の下面略全体がプレート密接部111となっている。
【0016】
なお、プレート密接部は上述の形態に限られない、例えば、変形加工補助部材において本体部(補助部材本体のプレート対向部を除く部分)の下面略全体が骨用プレートに密接するプレート密接部となっている必要はなく、言い換えれば、本体部の一部(本体部の下面の一部)はプレート密接部が骨用プレートに密接した状態において、骨用プレートから離隔するものであってもよい。例えば、プレート密接部は、本体部の下部に設けられた環状のリブや複数の突起等によって構成されるものであってもよい。なお、プレート密接部は、面、または複数の線や点において骨用プレートと密接することが好ましく、プレート密接部を骨用プレートに密接させた状態(骨用プレート上に変形加工補助部材を重ね合わせた状態)で、骨用プレートに対して変形加工補助部材を所定の位置および\または姿勢で維持ないし固定できるようになっていることが好ましい。
【0017】
変形加工補助部材100(補助部材本体101)は、骨用プレートに重ね合わせ、プレート密接部111を骨用プレートに密接させた時、骨用プレートの変形可能部の開口から所定距離離隔した上方に位置するプレート対向部120を備える。本実施例では、図3および図4に示すように、プレート対向部120は、変形加工補助部材100の本体部110の上部から側方に延出する板状部となっている。言い換えれば、変形加工補助部材100(補助部材本体101)においては、プレート対向部120の下方に、プレート対向部120を骨用プレートの変形可能部の開口から所定距離離隔させる(言い換えれば、非接触状態とする)ための欠肉部(欠損部、空隙形成部)が形成されている。さらに言い換えれば、本実施例では、補助部材本体101において、プレート密接部111を備える本体部110の下側部分がプレート対向部120よりも下方に延びており、これにより、プレート密接部111を骨用プレートに密接させた状態において、プレート対向部120が骨用プレートの変形可能部の開口から所定距離離隔した上方に位置することとなる。すなわち、変形加工補助部材100(補助部材本体101)においては、プレート密接部111を備えプレート対向部120よりも下方に延びる本体部110が、プレート対向部120を骨用プレートの変形可能部の開口から所定距離離隔した上方に位置させるための離隔形成部としても構成されている。
【0018】
本実施例では、図1および図2に示すように、補助部材本体101において、本体部110の上面とプレート対向部120の上面とは連続する平面となっており、補助部材本体101の上面は、後述する変形加工用器具挿通孔を除き、一連の平面となっている。このため、補助部材本体101において、プレート対向部120は、上下方向寸法(厚さ)が、下面にプレート密接部111を備える部分(本体部110)の上下方向寸法(厚さ)よりも小さい(薄い)、肉薄部となっている。
【0019】
補助部材本体101には、上下方向に貫通し、骨用プレートの変形加工に用いられる変形加工用器具を挿通可能かつ硬質な内周面(帯環状内壁面)121を有する変形加工用器具挿通孔122が形成されている。本実施例の変形加工補助部材100(補助部材本体101)は、図2に示すように、複数(4つ)の変形加工用器具挿通孔122(122a,122b,122c,122d)を備える。
【0020】
変形加工用器具挿通孔122は、補助部材本体101のプレート対向部120のみに形成されていて(その内面の上下端がプレート対向部120に存する)もよく、プレート対向部120以外の部分(本体部110)にその内面が連続するように延びていてもよい。言い換えれば、変形加工用器具挿通孔122は、その大部分が、プレート対向部120に位置し、かつ、その一部が補助部材本体101のプレート対向部120ではない部分(本体部110)に位置するものであってもよい。本実施例でも、変形加工用器具挿通孔122aおよび122b(後述する曲げ加工用挿通孔122aおよび122b)はプレート対向部120のみに形成されている一方、変形加工用器具挿通孔122cおよび122d(後述する曲げ加工用挿通孔122cおよび捻り加工用挿通孔122d)はその内面が本体部110にも延びており、本体部110の外面に変形加工用器具挿通孔122cおよび122dの内面に対応(連続)する凹状面が形成されている(図6参照)。
【0021】
本実施例の変形加工補助部材100は、複数(ここでは、4つ)の変形加工用器具挿通孔122(122a,122b,122c,122d)を備え、複数の変形加工用器具挿通孔122は、略長円孔状の曲げ加工用挿通孔(122a,122b,122c)と、略円孔状の捻り加工用挿通孔(122d)とを含む。変形加工補助部材100は、複数(ここでは、3つ)の曲げ加工用挿通孔122a,122b,122cと、1つの捻り加工用挿通孔122dとを備える。これにより、各変形加工用器具挿通孔に対応する骨用プレートの変形可能部に対して、適切な変形加工を行なうことができる。
【0022】
曲げ加工用挿通孔122a,122b,122cは、それぞれ、平面視(図2に示す)にて略長円形状となっている。各曲げ加工用挿通孔122a,122b,122cの硬質な内周面(帯環状内壁面)121は、上下方向(図1における上下方向)に幅を有し、曲げ加工用挿通孔122a,122b,122cは、曲げ加工用挿通孔122a,122b,122c内における変形加工用器具の長径方向への変位を許容しつつ、短径方向への変位を不可とするものであることが好ましい。具体的には、曲げ加工用挿通孔122a,122b,122cの短径方向の寸法は、後述する変形加工用器具300(器具本体部310)の外形(外径)と略同一または僅かに大きいものとなっており、挿通された変形加工用器具300の短径方向への変位を実質的に不可とする。また、曲げ加工用挿通孔122a,122b,122cの長径方向の寸法は、後述する変形加工用器具300(器具本体部310)の外形(外径)よりも大きいものとなっており、挿通された変形加工用器具300の長径方向への変位を可能とする。これにより、各曲げ加工用挿通孔に対応する骨用プレートの変形可能部に対して、適切な曲げ加工(予め設定した方向への曲げ加工)を行なうことができる。また、本実施例の変形加工補助部材100では、曲げ加工することを予定して形成された骨用プレートの変形可能部に対応して曲げ加工用挿通孔を設けることで、当該変形可能部に対して捻り加工が行われることを防止する。
【0023】
捻り加工用挿通孔122dは、平面視(図2に示す状態)にて略円形状となっている。捻り加工用挿通孔122dの径(内径)は、後述する変形加工用器具300(器具本体部310)の外形(外径)よりも大きいものとなっており、挿通された変形加工用器具300の任意の方向への変位を許容する。これにより、各捻り加工用挿通孔に対応する骨用プレートの変形可能部に対して、適切な捻り加工を行なうことができる。なお、捻り加工用挿通孔は、骨用プレートの変形前の状態において、硬質な内周面が変形加工用器具と接触ないし近傍に位置しており、変形加工用器具の所定方向への変位を規制する(不可とする)ようになっていてもよい。
【0024】
本実施例の変形加工補助部材100は、補助部材本体101(本体部110)を上下方向に貫通する固定用ねじ部材収容孔112と、固定用ねじ部材収容孔112に回動可能に収容され、変形加工補助部材100を骨用プレートに固定可能な固定用ねじ部材130とを備える。固定用ねじ部材130は、先端部の外周面には、骨用プレートに形成されたねじ孔(後述する補助部材取付孔27)に螺合可能なねじ部(雄ねじ部131)を備えている。
【0025】
本実施例では、図7に示すように、固定用ねじ部材収容孔112の内面の上側部分には、固定用ねじ部材130の雄ねじ部131と螺合可能な雌ねじ部113が形成されている。固定用ねじ部材収容孔112の雌ねじ部113よりも下側の部分は、雌ねじ部非形成部114となっている。また、固定用ねじ部材130の雄ねじ部131よりも上側(基端側)の部分は雄ねじ部非形成部132となっている。また、固定用ねじ部材130の雄ねじ部非形成部132の基端には固定用ねじ部材収容孔112の内径よりも大きな外形のフランジ部133が連設されている。固定用ねじ部材130を固定用ねじ部材収容孔112に収容する際、固定用ねじ部材130の雄ねじ部131と固定用ねじ部材収容孔112の雌ねじ部113との螺合を進めると、所定の位置で当該螺合が解除され、固定用ねじ部材130の雄ねじ部131が固定用ねじ部材収容孔112の雌ねじ部非形成部114に位置した状態で、固定用ねじ部材130が固定用ねじ部材収容孔112に収容される。これにより、固定用ねじ部材130を固定用ねじ部材収容孔112に回動可能に収容しつつ、固定用ねじ部材130(雄ねじ部131およびフランジ部133)と固定用ねじ部材収容孔112(雌ねじ部113および上縁部)とが干渉することにより、固定用ねじ部材130の固定用ねじ部材収容孔112からの脱落を防止できる。
【0026】
また、固定用ねじ部材収容孔112の雌ねじ部非形成部114の上下方向寸法は、固定用ねじ部材130の雄ねじ部131の上下方向寸法よりも大きくなっている。これにより、例えば、図7に示す状態から、固定用ねじ部材130を上方へ(固定用ねじ部材収容孔112内に)押し込むことにより、固定用ねじ部材収容孔112から固定用ねじ部材130の先端(雄ねじ部131)が突出しない状態で、固定用ねじ部材130を固定用ねじ部材収容孔112に収容することができる。これにより、固定用ねじ部材130を備える変形加工補助部材100を、骨用プレートに重ね合わせる(プレート密接部111を骨用プレートに密接させる)時に、固定用ねじ部材130が邪魔になることがない。
【0027】
変形加工補助部材100は、補助部材本体101の下面から下方に突出し、骨用プレートに形成された凹部または孔に進入可能な補助部材側突出部115を備える。図5および図6に示すように、補助部材側突出部115は、補助部材本体101の本体部110の下面(プレート密接部111)から下方に突出するように形成されている。補助部材側突出部115は、略円柱形状であり、補助部材側突出部115の外形(外径)は、補助部材側突出部115が進入する骨用プレートの凹部または孔(例えば、後述する骨用プレート1のヘッド部貫通孔22)の内径よりも僅かに小さいものとなっている。変形加工補助部材100を使用する際、補助部材側突出部115を骨用プレートに形成された凹部または孔に進入させることで、骨用プレートに対して変形加工補助部材100を所定の位置および\または姿勢で維持ないし固定することに寄与する。なお、補助部材側突出部は複数設けられていてもよい。
【0028】
本実施例の変形加工補助部材100においては、上述した、固定用ねじ部材130によって変形加工補助部材100を骨用プレートに固定すること(固定用ねじ部材130の雄ねじ部131を骨用プレートに形成されたねじ孔に螺合すること)と、補助部材側突出部115を骨用プレートに形成された凹部または孔に進入させることとを組み合わせることにより、骨用プレートに対して変形加工補助部材を所定の位置および\または姿勢で、回転が規制された状態にて、維持ないし固定することができる。
【0029】
なお、変形加工補助部材は、上述したような固定用ねじ部材を備えていないものであってもよい。例えば、骨用プレートのプレート密接部が密接する部分が三次元的な形状を備えている場合、プレート密接部が面、または複数の線や点において骨用プレートと密接した状態では、指等により、変形加工補助部材を骨用プレートに押し付けることで、固定用ねじ部材による固定がなくても、ある程度、骨用プレートに対して変形加工補助部材を所定の位置および\または姿勢で維持ないし固定することができる。
【0030】
また、変形加工補助部材を骨用プレートに固定するための構成としては、上述の固定用ねじ部材によるものに限られず、例えば、変形加工補助部材のプレート密接部に剥離可能固着部(例えば、剥離可能な粘着部、骨用プレートが強磁性体であれば磁石)を設ける等してもよい。
【0031】
なお、変形加工補助部材は、上述したような補助部材側突出部を備えていないものであってもよい。プレート密接部が面、または複数の線や点において骨用プレートと密接した状態では、指等により、変形加工補助部材を骨用プレートに押し付けることで、補助部材側突出部がなくても、ある程度、骨用プレートに対して変形加工補助部材を所定の位置および\または姿勢で維持ないし固定することができる。
【0032】
変形加工補助部材100の形成材料としては、チタン合金(具体的には、JIST7401-2のTi-6Al-4V、ASTM F-136のTi-6Al-4V ELI等)、純チタン(具体的には、JIST7401-1等)、ステンレス鋼(具体的には、JISG4304のSUS304、SUS316、SUS630等)などが好ましい。また、変形加工補助部材100の形成材料としては、樹脂を用いることもでき、具体的には、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)やPPSU(ポリフェニルスルホン)等の所謂スーパーエンプラや、その他のエンプラ(エンジニア・プラスチック)などが好ましい。
【0033】
ここで、本発明の変形加工補助部材が好適に用いられる骨用プレート、および変形加工補助部材を備える骨治療用キットに好適に含まれる骨用プレートについて、図8ないし図19に示した実施例を用いて説明する。
【0034】
骨用プレート1は、長管骨の端部の骨折の治療に用いられる骨用プレートであって、長手方向に延びるプレート本体部10と、プレート本体部10より長手方向(図8における上下方向)の一方の側(図8における上側)に位置し、プレート本体部10の長手方向の一方の側の部分よりも幅が広いヘッド部20と、ヘッド部20の周縁部に設けられたタブ(30,40,50(変形可能部))とを備える。タブ(30,40,50)は、タブ本体部(31,41,51)と、タブ本体部(31,41,51)を貫通するタブ貫通孔(33,43,53(開口))と、曲げ変形または捻り変形可能な接続部(32,42,52)とを備え、接続部(32,42,52)によりヘッド部20から外方に延びるように設けられている。変形加工補助部材100のプレート対向部120は、変形加工補助部材100を骨用プレート1に重ね合わせ、プレート密接部111を骨用プレート1のヘッド部20に密接させた時、骨用プレート1のタブ(30,40,50)から所定距離離隔した上方に位置し、さらに、変形加工用器具挿通孔122とタブ貫通孔(33,43,53)とを変形加工用器具が、同時に挿通可能であり、かつ、挿通された状態の変形加工用器具の変位が可能であり、さらに、変形加工用器具と変形加工用器具挿通孔122の硬質な内周面121とが当接することにより、骨用プレート1のタブ(30,40,50)の変形加工量を規制するものとなっている。
【0035】
また、本実施例では、骨用プレート1のタブ貫通孔(33,43,53)は、内面にタブ側雌ねじ部を備える。タブ側雌ねじ部は、後述する変形加工用器具300の先端部に形成された器具側雄ねじ部311と螺合可能である。
【0036】
本実施例の骨用プレートについて、より詳細には、骨用プレート1のプレート本体部10は、長手方向に延び、骨用プレート1の近位側部分を構成する。プレート本体部10は、主に、長管骨の中央部分を構成する骨幹部分に対して配置されるものである。プレート本体部10は、長手方向の軸を中心にねじれており、上面11および下面12を有する。骨用プレート1の使用時には、下面12が骨側(骨と接触する側)となる。骨用プレート1のプレート本体部10には、平面視において角丸長方形状(長円状)の固定用孔13が設けられている。固定用孔13は、内面に雌ねじ部を持たないものとなっている。通常の手技では、この固定用孔13と骨ねじ(頭部にねじ部(雄ねじ部)を持たないもの)を用いて、骨用プレート1の対象部位(長管骨の骨幹部分)に対する初期固定が行われる。
【0037】
プレート本体部10の固定用孔13の周辺には、骨用ねじを固定するための複数(ここでは、固定用孔13の近位側に2つ)のねじ孔14が設けられている。ねじ孔14の内面には、雌ねじ部が設けられている。雌ねじ部は、ねじ孔14の軸方向に沿って平行に形成されている。雌ねじ部は、図示しない骨用ねじの頭部に設けられた雄ねじ部と螺合可能である。骨用ねじは雌ねじ部に螺合されることにより、骨用プレート1(プレート本体部10)へ取付固定される。また、プレート本体部10の固定用孔13の遠位側には、後述する骨用ねじ7の軸部71を挿入可能な(言い換えれば、軸部71よりも径が大きい)プレート本体部貫通孔15が設けられている。本実施例では、プレート本体部貫通孔15は後述するヘッド部貫通孔22と同じ径(雌ねじ部を形成する前の下孔径が同じ)となっている。また、本実施例では、プレート本体部貫通孔15の内面には、雌ねじ部が設けられており、後述する骨用ねじ7の頭部72に設けられた雄ねじ部と係合または螺合可能となっている。これにより、プレート本体部貫通孔15に対してヘッド部貫通孔22に適用されるものと同一の骨用ねじ7が適用可能となっている。また、プレート本体部10には、図8に示すように、固定用孔13およびねじ孔14以外にも、ガイドピン(細く先の尖った金属製のピン。Kワイヤやキルシュナー鋼線とも呼ばれる。)を挿通可能な小孔が複数形成されている。これにより、ガイドピンを用いた骨用プレート1の仮固定が可能となる。
【0038】
プレート本体部10の遠位側には、プレート本体部10の遠位部よりも幅が広いヘッド部20が設けられている。ヘッド部20は、主に、長管骨の端部を構成する骨端部分(骨幹端部分の一部を含むことがある)に対して配置されるものである。本実施例では、ヘッド部20は、遠位方向および幅方向の一方側(図8における右側)に向かって、段階的に幅が広くなっている。これにより、図8に示すように、骨用プレート1の外形において2箇所の凹部23、23が形成されることとなり、骨用プレート1と皮膚等とが接触する部分が少なくなるようになっている。ヘッド部20は、上面24および下面25を有し、それぞれ、プレート本体部10の上面11および下面12と連続している。骨用プレート1の使用時には、下面25が骨側(骨と接触する側)となる。ヘッド部20は、図11に示すように、全体として上面側(図11における下側)に向かって凸となるように湾曲している。
【0039】
骨用プレート1においては、プレート本体部10とヘッド部20とが、骨用プレート1の基板部を構成する。本実施例では、骨用プレート1の基板部の上面(上面11および上面24)と下面(下面12および下面25)は、全体として連続する自由曲面(幾何学的な形状の部分が存在しない)となっている。
【0040】
ヘッド部20は、後述する骨用ねじ7の軸部71を挿入可能な(言い換えれば、軸部71よりも径が大きい)複数(ここでは、5つ)のヘッド部貫通孔22を有する。本実施例では、複数のヘッド部貫通孔22は全て同じ径(雌ねじ部を形成する前の下孔径が同じ)となっている。また、本実施例では、ヘッド部貫通孔22の内面には、雌ねじ部が設けられており、後述する骨用ねじ7の頭部72に設けられた雄ねじ部と係合または螺合可能となっている。これにより、複数のヘッド部貫通孔22に対して同一の骨用ねじ7が適用可能となっている。また、ヘッド部20には、図8に示すように、ヘッド部貫通孔22以外にも、ガイドピン(細く先の尖った金属製のピン。Kワイヤやキルシュナー鋼線とも呼ばれる。)を挿通可能な小孔が複数形成されている。これにより、ガイドピンを用いてヘッド部貫通孔22に挿入される骨用ねじ7の挿入態様(位置や方向、挿入量等)を確認したり、骨折片を仮固定することが可能となる。
【0041】
また、本実施例では、図8に示すように、ヘッド部20は、補助部材取付孔27を有する。補助部材取付孔27の内面には、雌ねじ部が設けられており、上述した変形加工補助部材100の固定用ねじ部材130の先端部に設けられたねじ部(雄ねじ部)131と螺合可能となっている。補助部材取付孔27は、ヘッド部貫通孔22よりも小径となっていることが好ましい。これにより、変形加工補助部材100の固定用ねじ部材130を誤ってヘッド部貫通孔22に取り付けてしまうことを防止できる。
【0042】
ヘッド部20の周縁部には複数のタブ(30,40,50)が設けられている。本実施例では、複数のタブ(30,40,50)は、複数(ここでは、2つ)の第1タイプタブ30(以下、本実施例では、図8において左側に設けられた第1タイプタブ30に関する構成について符号の末尾にaを付し、右側に設けられた第1タイプタブ30に関する構成について符号の末尾にbを付して説明することがある。)と、第2タイプタブ40と、第3タイプタブ50とを含む。なお、骨用プレート1においては、これらのタブ(30,40,50)が、骨用プレート1の変形可能部を構成する。
【0043】
第1タイプタブ30a,30bは、幅方向に並列的に、ヘッド部20の遠位端部から遠位方向に延びるように設けられている。第1タイプタブ30a,30bは、曲げ変形可能な第1接続部32a,32bを備え、第1接続部32a,32bによりヘッド部20の遠位端部から遠位方向に延びるように設けられている。第1タイプタブ30a,30bの第1接続部32a,32bよりも遠位側の部分(第1接続部32a,32b以外の部分)は、第1タブ本体部31a,31bとなっている。
【0044】
第1接続部32a,32bの断面積は、第1タブ本体部31a,31bの断面積よりも小さくなっている。より具体的には、図8および図14に示すように、第1接続部32a,32bは、第1タブ本体部31a,31bよりも幅(w1)が狭くなっている。言い換えれば、第1タイプタブ30a,30bにおいて、第1接続部32a,32bの剛性が、第1タブ本体部31a,31bよりも小さくなっている。これにより、第1接続部32a,32bにおいて、第1タイプタブ30a,30bは、プレート本体部10およびヘッド部20の上面または下面方向に曲げ変形可能となっている。なお、第1接続部32a,32bの厚さ(t1)を、第1タブ本体部31a,31bの厚さよりも薄くしてもよい。
【0045】
なお、第1接続部32a,32bは曲げ変形可能であるが、捻り変形不能(医師が手術を行う場合に、実質的に、第1タイプタブ30a,30bの延出方向の軸を中心に捻ることができない)であることが望ましい。例えば、第1接続部32a,32bの幅w1(本実施例では2.4~2.6mm程度)は、第1接続部32a,32bの厚さt1(本実施例では1.59~1.69mm程度)よりも大きいことが好ましく、幅w1と厚さt1との比(w1/t1)が、1.5~2.0の範囲であることが好ましい。これにより、後述する第2接続部42との関係において、第1接続部32a,32bを曲げ変形可能としつつ、実質的な捻り変形は不能となる。
【0046】
第1タブ本体部31(31a,31b)は、第1タイプタブ30の遠位側(第1タイプタブ30の延出方向側)に位置している。本実施例では、図8に示すように、第1タイプタブ30a,30bの第1タブ本体部31a,31bは、遠位方向(長手方向の一方、言い換えれば長管骨の骨端側方向)に向かって幅が広くなる略台形形状となっている。これにより、第1タブ本体部31a,31b(特に、第1タブ本体部31a,31bの幅が広くなっている遠位側部分)によって骨折部(特に、骨端部分の骨や骨折片)を適切に支持することができる。
【0047】
なお、本実施例では、第1タイプタブ30a,30bの第1タブ本体部31a,31bは、幅方向両側部において略等角度で広がっているが、幅方向両側部において広がる角度が異なっていてもよい。また、隣り合う第1タイプタブ30a,30bの第1タブ本体部31a,31bにおいては、互いに向かい合う側(第1タブ本体部31aの右側、第1タブ本体部31bの左側)の側部が、隣り合う第1タイプタブ30b,30aの第1タブ本体部31b,31aの方に向かって広がっていることが好ましい。なお、略台形形状となっている第1タイプタブ30a,30bにおいては、最大幅寸法が最小幅寸法(ここでは、第1タイプタブ30a,30bの基端部(第1接続部32a,32b側の端部)の幅寸法)の1.5倍以上となっていることが好ましい。
【0048】
第1タイプタブ30a,30bの第1タブ本体部31a,31bは、それぞれ、第1タブ貫通孔33a,33bを有している。なお、骨用プレート1において、第1タブ貫通孔33a,33bは、骨用プレート1の変形可能部(第1タイプタブ30a,30b)を貫通する開口を構成する。本実施例では、第1タブ貫通孔33a,33bは、ヘッド部貫通孔22と同じ径(雌ねじ部を形成する前の下孔径が同じ)である。また、第1タイプタブ30a、30bの第1タブ貫通孔33a,33bの内面には、雌ねじ部(タブ側雌ねじ部)が設けられており、後述する骨用ねじ7の頭部72に設けられた雄ねじ部と係合または螺合可能となっている。これにより、第1タブ貫通孔33a,33bに対して、ヘッド部貫通孔22に対して用いる骨用ねじ7と同一のものが適用可能となっている。
【0049】
上述したように、第1タイプタブ30a、30bの第1タブ本体部31a,31bは、第1タブ貫通孔33a,33bを有している。ここで、第1タブ貫通孔33a,33bの軸線方向から見た投影面積において、第1タブ本体部31a,31bの外形の投影面積が、第1タブ貫通孔33a,33bの投影面積(下孔の面積)の4倍以上となっていることが好ましい。これにより、第1タブ本体部31a,31bに第1タブ貫通孔33a,33bが形成されている場合であっても、第1タブ本体部31a,31bによって骨折部(特に、骨端部分の骨や骨折片)を適切に支持することができる。
【0050】
具体的には、本実施例では、第1タブ本体部31a,31bの外形の投影面積は55.6mmであり、第1タブ貫通孔33a,33bの投影面積は12.1mm(雌ねじ部を形成する前の下孔径(直径)が3.93mm)であり、第1タブ本体部31a,31bの外形の投影面積は、第1タブ貫通孔33a,33bの投影面積の4.6倍となっている。なお、第1タブ本体部31a,31bの外形の投影面積は、第1タブ貫通孔33a,33bの投影面積(下孔の面積)の4~5倍の範囲であることが好ましい。
【0051】
本実施例の骨用プレート1では、第1タイプタブ30(30a、30b)は2つ設けられており、2つの第1タイプタブ30a、30bの第1タブ本体部31a,31bはそれぞれ第1タブ貫通孔33a,33bを有しており、ヘッド部20において遠位側(長手方向の一方の側)に形成された2つのヘッド部貫通孔22,22の中心が、2つの第1タブ貫通孔33a,33bの中心間かつ近位側(長手方向の他方の側)に位置するものとなっている。具体的には、図8に示すように、ヘッド部20において遠位側に形成された2つのヘッド部貫通孔22,22の中心が、幅方向において、2つの第1タブ貫通孔33a,33bの中心間に位置するとともに、長手方向において、2つの第1タブ貫通孔33a,33bよりも近位側に位置するものとなっている。これにより、2つの第1タイプタブ30a,30bの間隔を大きくすることができ、第1タブ本体部31a,31bの形状自由度が高くなる。また、第1タイプタブ30a,30b(第1接続部32a.32b)を曲げ変形する際の作業性が向上する。
【0052】
本実施例の骨用プレート1は、第1接続部32a,32bの変形前の状態(図8に示す状態)において、2つの第1タイプタブ30a、30bのうちの1つ(ここでは、図8において右側に設けられた第1タイプタブ30b)の第1タブ貫通孔33bの骨側に延びる軸線が、ヘッド部20において遠位側(長手方向の一方の側)に形成された2つのヘッド部貫通孔22,22の骨側に延びる軸線の間を通過するようになっている。具体的には、長手方向においては、図10に示すように、第1タブ貫通孔33bの骨側に延びる軸線P1が近位側(図10における下側)に傾いており、ヘッド部20において遠位側に形成された2つのヘッド部貫通孔22,22の骨側に延びる軸線Ph,Ph(図10においては軸線Ph,Phは略重なっているため、図10における手前側の軸線Phのみを示す)が遠位側(図10における上側)に傾いている。さらに、幅方向においては、図11に示すように、第1タブ貫通孔33bの骨側に延びる軸線P1が左側に傾いており、ヘッド部20において遠位側に形成された2つのヘッド部貫通孔22,22の骨側に延びる軸線Ph,Phが右側に傾いている。そのため、第1タブ貫通孔33bの骨側に延びる軸線P1が、ヘッド部20において遠位側に形成された2つのヘッド部貫通孔22,22の骨側に延びる軸線Ph,Phの間を通過するようになっている。これにより、骨折部の状態に応じて第1タイプタブ30bの第1タブ貫通孔32bに骨用ねじ7を挿入する場合(脛骨遠位部の骨折の治療においては、ヘッド部20のヘッド部貫通孔22に骨用ねじ7を入れることが優先される)であっても、ヘッド部貫通孔22に挿入する骨用ねじ7との干渉を回避できる可能性が高くなる。また、第1タイプタブ30b(第1タブ貫通孔32b)に対してより長い骨用ねじ7を適用することが可能になり、より適切な骨折部の治療のための選択肢を広げることができる。
【0053】
複数の第1タイプタブ30(30a,30b)の側方(図8における左側の部分)には、第2タイプタブ40が設けられている。より具体的には、本実施例では、ヘッド部20の遠位部の側部(図8における左側の部分)に切欠部26が形成されており、第2タイプタブ40は、切欠部26の遠位側に露出する端面より延出するように設けられている。これにより、第2タイプタブ40は、第1タイプタブ30(30a,30b)よりも遠位方向に突出しないように設けられている。第2タイプタブ40は、曲げ変形可能かつ捻り変形可能な第2接続部42を備え、第2接続部42によりヘッド部20から外方(ここでは、遠位かつ側方)に延びるように設けられている。第2タイプタブ40は、変形前の状態において、ヘッド部20の側端部(図8における左側の端部)よりも外方(側方)に突出していることが好ましい。第2タイプタブ40の第2接続部42よりも外方側の部分(ヘッド部20と逆側の部分)は、第2タブ本体部41となっている。
【0054】
第2接続部42の断面積は、第2タブ本体部41の断面積よりも小さくなっている。より具体的には、図8および図15に示すように、第2接続部42は、第2タブ本体部41よりも幅(w2)が狭く、かつ厚さ(t2)が薄くなっている。言い換えれば、第2タイプタブ40において、第2接続部42の剛性が、第2タブ本体部41よりも小さくなっている。さらに、第2接続部42は、第1接続部32(32a,32b)よりも断面積が小さくなっている。本実施例では、第2接続部42の幅(w2)は第1接続部32(32a,32b)の幅(w1)よりも狭く、第2接続部42の厚さ(t2)は第1接続部32(32a,32b)の厚さ(t1)よりも薄くなっている。これにより、第2接続部42において、第2タイプタブ40は、プレート本体部10およびヘッド部20の上面または下面方向に曲げ変形可能となっているとともに、延出方向の軸を中心に捻り変形可能となっている。なお、第2接続部42の幅w2(本実施例では2.1~2.3mm程度)は、第2接続部42の厚さt2(本実施例では1.55~1.65mm程度)よりも大きいことが好ましく、幅w2と厚さt2との比(w2/t2)が、1.2~1.5の範囲であることが好ましい。そのような範囲とすることにより、第2接続部42を変形(特に、捻り変形)する場合の作業性が向上するとともに、第2接続部42の破損を防止することができる。また、第2接続部42の幅w2と厚さt2との比(w2/t2)の値は、上述した第1接続部32a,32bの幅w1と厚さt1との比(w1/t1)の値よりも小さくなっていることが好ましい。これにより、曲げ変形可能な第1接続部32a,32bと、曲げ変形可能かつ捻り変形可能な第2接続部42との差異が明確になり、医師が手術を行い易くなる。なお、第2接続部42の断面積は、第1接続部の断面積よりも小さくなる範囲で適切に設定することが好ましい。第2接続部42の断面積が大き過ぎると、第2接続部42の変形(特に、捻り変形)よりも先に第2タイプタブ40全体が変形してしまう恐れがあり、小さ過ぎると第2接続部42を変形させ過ぎてしまったり、第2接続部42を破断させてしまう恐れがある。
【0055】
第2タブ本体部41は、第2タイプタブ40の遠位側(第2タイプタブ40の延出方向側)に位置している。本実施例では、図8に示すように、第2タイプタブ40の第2タブ本体部41は、略円形形状となっている。これにより、第2接続部42を変形した場合でも、第2タイプタブ40の外形が突出し難く、第2タイプタブ40を含む骨用プレート1と皮膚等との接触が少なくなるようになっている。
【0056】
第2タイプタブ40の第2タブ本体部41は、第2タブ貫通孔43を有している。なお、骨用プレート1において、第2タブ貫通孔43は、骨用プレート1の変形可能部(第2タイプタブ40)を貫通する開口を構成する。本実施例では、第2タブ貫通孔43は、ヘッド部貫通孔22(および第1タブ貫通孔33a,33b)と同じ径(雌ねじ部を形成する前の下孔径が同じ)である。また、第2タイプタブ40の第2タブ貫通孔43の内面には、雌ねじ部(タブ側雌ねじ部)が設けられており、後述する骨用ねじ7の頭部72に設けられた雄ねじ部と係合または螺合可能となっている。これにより、第2タブ貫通孔43に対して、ヘッド部貫通孔22(および第1タブ貫通孔33a,33b)に対して用いる骨用ねじ7と同一のものが適用可能となっている。
【0057】
骨用プレート1は、第2タイプタブ40の第2接続部42を適切に曲げ変形および/または捻り変形したりすることで、骨用プレート1を骨(特に、長管骨の骨端部分)の形状や骨折部の状態に合わせてより自由に変形することができ、長管骨の端部の骨折をより適切に治療することができる。
また、図17に示すように、骨用プレート1を脛骨8(図17において破線で示す)の遠位部(脛骨遠位部の前外側面。なお、図17においては、下側が遠位側となっている。)に対して用いる場合、比較的外形の湾曲がきつい(曲率半径が小さい)脛骨8の前方外側端部(図17における右下部分)に第2タイプタブ40が位置することとなる。ここで、第2タイプタブ40の第2接続部42が曲げ変形可能であるとともに、捻り変形可能であることにより、当該部分の骨片を骨用ねじ7によってより適切に捉えることができるようになる。
【0058】
本実施例の骨用プレート1の複数のタブは、第2タイプタブ40が設けられている複数の第1タイプタブ30(30a,30b)の側方と逆側の側方(図8における右側の部分)に設けられた第3タイプタブ50を備え、第3タイプタブ50は、第3タブ貫通孔53を有する第3タブ本体部51と、第2タイプタブ40の第2接続部42よりも断面積が大きく、曲げ変形可能な第3接続部52とを備え、第3接続部52によりヘッド部20から外方かつ第1タイプタブ30(30a,30b)とは異なる方向に延びるように設けられており、第3タブ貫通孔53は、ヘッド部貫通孔22と同じ径である。なお、骨用プレート1において、第3タブ貫通孔53は、骨用プレート1の変形可能部(第3タイプタブ50)を貫通する開口を構成する。
【0059】
より具体的には、第3タイプタブ50は、複数の第1タイプタブ30(30a,30b)の側方であって、第2タイプタブ40が設けられている複数の第1タイプタブ30(30a,30b)の側方と逆側の側方(図8における右側の部分)に設けられている。本実施例では、第3タイプタブ50は、ヘッド部20の遠位部の側面(図8における右側の面)より外方に延びるように設けられている。第3タイプタブ50は、幅方向の一方(図8における右方向)に延びるように設けられており、遠位方向に延びる複数の第1タイプタブ30(30a,30b)とは異なる方向に延びている。第3タイプタブ50は、曲げ変形可能な第3接続部52を備え、第3接続部52によりヘッド部20から外方に延びるように設けられている。第3タイプタブ50の第3接続部52よりも外方側の部分(ヘッド部20と逆側の部分)は、第3タブ本体部51となっている。
【0060】
第3接続部52の断面積は、第3タブ本体部51の断面積よりも小さくなっている。より具体的には、図8および図16に示すように、第3接続部52は、第3タブ本体部51よりも幅(w3)が狭くなっている。言い換えれば、第3タイプタブ50において、第3接続部52の剛性が、第3タブ本体部51よりも小さくなっている。これにより、第3接続部52において、第3タイプタブ50は、プレート本体部10およびヘッド部20の上面または下面方向に曲げ変形可能となっている。なお、第3接続部52の厚さ(t3)を、第3タブ本体部51の厚さよりも薄くしてもよい。
【0061】
なお、第3接続部52は曲げ変形可能であるが、捻り変形不能(医師が手術を行う場合に、実質的に、第3タイプタブ50の延出方向の軸を中心に捻ることができない)であることが望ましい。例えば、第3接続部52の幅w3(本実施例では2.4~2.6mm程度)は、第3接続部52の厚さt3(本実施例では1.42~1.52mm程度)よりも大きいことが好ましく、幅w3と厚さt3との比(w3/t3)が、1.5~2.0の範囲であることが好ましい。また、第3接続部52の幅w3と厚さt3との比(w3/t3)の値は、上述した第2接続部42の幅w2と厚さt2との比(w2/t2)の値よりも大きくなっていることが好ましい。これにより、上述した第2接続部42との関係において、第3接続部52を曲げ変形可能としつつ、実質的な捻り変形は不能となる。
【0062】
本実施例では、第3タイプタブ50は、ヘッド部20の遠位部の側面(図8における右側の面)より幅方向の一方(図8における右方向)に延びるように設けられており、曲げ変形可能な第3接続部52を備えている。これにより、ヘッド部20の形状を比較的自由に設定することができるようになっている。具体的には、第3タイプタブ50を上面側または下面側に曲げ変形することで、骨用プレート1の側端部と骨との干渉を回避することができる。
【0063】
第3タブ本体部51は、第3タイプタブ50の外方側(第3タイプタブ50の延出方向側)に位置している。本実施例では、図8に示すように、第3タイプタブ50の第3タブ本体部51は、略円形形状となっている。これにより、第3接続部52の外形が突出し難く、第3タイプタブ50を含む骨用プレート1と皮膚等との接触が少なくなるようになっている。
【0064】
第3タイプタブ50の第3タブ本体部51は、第3タブ貫通孔53を有している。本実施例では、第3タブ貫通孔53は、ヘッド部貫通孔22(ならびに第1タブ貫通孔33a,33bおよび第2タブ貫通孔42)と同じ径(雌ねじ部を形成する前の下孔径が同じ)である。また、第3タイプタブ50の第3タブ貫通孔53の内面には、雌ねじ部(タブ側雌ねじ部)が設けられており、後述する骨用ねじ7の頭部72に設けられた雄ねじ部と係合または螺合可能となっている。これにより、第3タブ貫通孔53に対して、ヘッド部貫通孔22(ならびに第1タブ貫通孔33a,33bおよび第2タブ貫通孔42)に対して用いる骨用ねじ7と同一のものが適用可能となっている。
【0065】
骨用プレート1の形成材料としては、チタン合金(具体的には、JIST7401-2のTi-6Al-4V、ASTM F-136のTi-6Al-4V ELI)、純チタン(具体的には、JIST7401-1)、ステンレス鋼(具体的には、JISG4303のSUS304、SUS316)などが好ましい。
【0066】
長管骨の端部の骨折の治療において、骨用プレート1とともに用いられる骨用ねじ7の一例を、図18に示す。骨用ねじ7は、図18に示すように、軸部71と頭部72を有している。軸部71は、外面に雄ねじ部を備えており、骨用プレート1の貫通孔(ヘッド部貫通孔22、第1タブ貫通孔33a,33b、第2タブ貫通孔42、および第3タブ貫通孔52)を貫通可能とされている。また、軸部71は、骨内(対象となる骨に形成された下孔)に進入可能とされている。
【0067】
骨用ねじ7の頭部72は、上面に回動治具(例えば、ドライバ)接続用の凹部(図示せず)を備えている。当該凹部は、回動治具の先端形状に対応した形状に形成されている。
【0068】
骨用ねじ7の頭部72は、軸部71よりも大径とされており、外面に雄ねじ部を備える。当該雄ねじ部は、平面視(骨用ねじ7の軸方向において頭部72の側から見た場合)において右回転で軸方向に進行する、所謂右ねじを構成する螺旋状の山部(ねじ山)からなる。雄ねじ部は、骨用プレート1の貫通孔(ヘッド部貫通孔22、第1タブ貫通孔33a,33b、第2タブ貫通孔42、および第3タブ貫通孔52)の内面に形成された雌ねじ部と係合ないし螺合可能である。
【0069】
骨用ねじ7の形成材料としては、骨用プレート1と同じく、チタン合金(具体的には、JIST7401-2のTi-6Al-4V、ASTM F-136のTi-6Al-4V ELI)、純チタン(具体的には、JIST7401-1)、ステンレス鋼(具体的には、JISG4303のSUS304、SUS316)などが好ましい。
【0070】
本発明の変形加工補助部材が好適に用いられる骨用プレート、および変形加工補助部材を備える骨治療用キットに好適に含まれる骨用プレートは上述した実施例の態様に限られるものではない。
例えば、第1タイプタブは第1タブ貫通孔を有さないものであってもよい。その場合、第1タイプタブ(第1タブ本体部)は、骨折部(骨や骨折片)を適切に支持する機能を発揮する。また、第3タイプタブは設けられていなくてもよく、その場合、上述した実施例において第2タイプタブが設けられている複数の第1タイプタブの側方と逆側の側方に他の第2タイプタブが設けられていてもよい。
【0071】
また、骨用プレートにおける、第1タイプタブ、第2タイプタブ、第3タイプタブの形態(例えば、ヘッド部に対する形成箇所、第1タブ本体部、第2タブ本体部および第3タブ本体部の外形形状、第1接続部、第2接続部および第3接続部の断面形状等)や、プレート本体部およびヘッド部の形態も上述した実施例の態様に限られるものではない。例えば、図19に示す骨用プレート1aのように、骨用プレートの治療対象となる長管骨の形状や当該長管骨に対する骨用プレートの固定態様に合わせて、プレート本体部10の長手方向寸法を大きくしてもよい。
【0072】
骨用プレートは、上述の実施例において示した骨用プレート(脛骨遠位部の前外側面に対して用いる脛骨前外側プレート)の他、例えば、下肢を構成する長管骨(腓骨、大腿骨、中足骨、趾骨等)や上肢を構成する長管骨(上腕骨、橈骨、尺骨、中手骨、趾骨、鎖骨等)に対して用いる骨用プレートであってもよく、長管骨以外の骨に対して用いる骨用プレートであってもよい。なお、骨用プレートが対象とする長管骨には、人間の骨のうち長大な形状を持つ(幅よりも長さが長い)ものが広く含まれる。なお、上述のような骨用プレートは、長管骨の端部の骨折の治療に好適に用いられるものであり、そのような骨用プレートの治療対象となる長管骨の端部は、主として長管骨の骨端部分を指すものであるが、当該骨端部分に加え骨幹端の一部や骨幹の一部を含むものであってもよい。
【0073】
次いで、本発明の変形加工補助部材が好適に用いられる変形加工用器具、および変形加工補助部材を備える骨治療用キットに好適に含まれる変形加工用器具について、図20および図21に示した実施例を用いて説明する。
【0074】
本実施例の変形加工用器具300は、図20に示すように、器具本体部310と、器具本体部310の基端部に着脱可能に取り付けられるグリップ部320とを備え、全体として略直線棒状(全長に亘って屈曲部を備えないもの)である。
【0075】
グリップ部320は、先端側部分に器具本体部310の基端側部分(後述する係合部312)を収容(と係合)可能な断面六角形状の凹部である収容部(図示せず)を備える。グリップ部320は、器具本体部310の基端部に取り付けることができる。グリップ部320は、その外形(外径)が器具本体部310よりも大きくなっており、器具本体部310への取付状態において、器具本体部310に対して相対回動不可となっていることが好ましい。これにより、グリップ部320を介しての器具本体部310の回動操作(変形加工用器具300を骨用プレートの変形可能部の開口へ挿通ないし螺合する操作)がし易くなる。
【0076】
また、グリップ部320を器具本体部310に取り付けることで、変形加工用器具300が器具本体部310のみで構成される場合に比べて、変形加工用器具300の長さを長くすることができ、骨用プレートの変形可能部に対してより大きな力を作用させることができる。グリップ部320は、骨用プレートの変形可能部を変形加工するために必要な力に応じて等、作業者の任意に着脱することができることが好ましい。
【0077】
図21に示すように、器具本体部310は、全長に亘って略同一の外形(外径)を備える、略直線棒状部材である。器具本体部310の基端部は、断面六角形状の係合部312となっており、グリップ部320の先端部に設けられた収容部と係合可能になっている。また、器具本体部310は、変形加工補助部材100の変形加工用器具挿通孔122(122a,122b,122c,122d)を挿通可能となっている。本実施例では、変形加工用器具300の器具本体部310の外形(外径)が、変形加工補助部材100の変形加工用器具挿通孔(曲げ加工用挿通孔)122a,122b,122cの短径方向の寸法と略同一または僅かに小さくなっている。
【0078】
また、変形加工用器具300(器具本体部310)の先端部は、上述した骨用プレート1のタブ側雌ねじ部(タブ貫通孔33,43,53の内面に形成された雌ねじ部)に螺合可能な器具側雄ねじ部311を備えている。
【0079】
なお、変形加工用器具は、上述のように全体が略直線棒状であるものに限られず、屈曲部を有するものであってもよい。ここで、変形加工用器具は、変形加工用器具挿通孔(122)および開口(タブ貫通孔33,43,53)に挿通(ないし螺合)された状態において、変形加工用器具挿通孔(122)の硬質な内周面(121)と、変形加工用器具の外面との位置関係が変わらないものであることが好ましい。これにより、変位を可能とするとともに、予め意図した変形加工用器具の変位量を超える変位を規制する効果(骨用プレートの変形加工量の規制効果)を得ることができる。この点において、変形加工用器具は、変形加工用器具挿通孔および開口に挿通(ないし螺合)された状態において、開口(タブ貫通孔)の軸方向に延びる略直線棒状であることが好ましい。
【0080】
上述のような変形加工補助部材100、および変形加工補助部材100を備える骨治療用キット200を用いて、骨用プレート1を変形加工する際の工程について、図22ないし図25に示した実施例を用いて説明する。
【0081】
まず、図22および図23に示すように、変形加工補助部材100を骨用プレート1に取り付ける工程を行う。ここでは、変形加工補助部材100のプレート密接部111を骨用プレート1(ヘッド部20)に、重ね合わせるとともに密接させる。このとき、変形加工補助部材100の補助部材側突出部115を、骨用プレート1に形成された凹部または孔(ここでは、ヘッド部貫通孔20の1つ)に進入させる。そして、固定用ねじ部材130のねじ部(雄ねじ部131)を骨用プレート1に形成されたねじ孔(ここでは、補助部材取付孔27)に螺合させる。これにより、変形加工補助部材100を骨用プレート1に対して、回動不能に強固に固定できる。
【0082】
次いで、変形加工用器具300を、任意の変形加工用器具挿通孔122(ここでは、曲げ加工用挿通孔122b)とそれに対応する骨用プレート1の変形可能部(ここでは、第1タイプタブ30b)の開口(ここでは、第1タブ貫通孔33b)とに挿通する。ここで、変形加工用器具300(器具本体部310)の先端部に設けられた器具側雄ねじ部311をタブ貫通孔(第1タブ貫通孔33b)の内面に設けられたタブ側雌ねじ部に螺合する。このように、器具側雄ねじ部311とタブ側雌ねじ部とを螺合させることで、変形加工用器具300と骨用プレート1(変形可能部(ここでは、第1タイプタブ30b)の開口(ここでは、第1タブ貫通孔33b)との位置関係が固定されるため、骨用プレート1の変形加工時において、変形加工補助部材100による骨用プレート1の変形量の規制効果が適切に発揮されることとなる。
【0083】
また、本実施例では、図22ないし図25に示すように、変形加工用器具300の変形加工用器具挿通孔(曲げ加工用挿通孔122b)および開口(第1タブ貫通孔33b)への挿通状態において、変形加工用器具300が、曲げ加工用挿通孔122bの長径方向の一方側(図22ないし図25における下側)の硬質な内周面121に接触ないし近傍に位置するようになっている。言い換えれば、骨用プレート1の変形前の状態において、変形加工用器具挿通孔(曲げ加工用挿通孔122b)の長径方向の一方側の硬質な内周面121が、挿通される変形加工用器具300の外面に接触ないし近傍に位置するように形成されている。これにより、変形加工用器具300の長径方向の一方側への変位を規制し、骨用プレート1の変形可能部(第1タイプタブ30b)を所望の方向(長径方向の他方側(図24および図25において白抜き矢印で示す方向))へ曲げ変形するようにガイドすることができる。
【0084】
次いで、変形加工用器具300のグリップ部320を操作(具体的には、図24および図25において白抜き矢印で示す方向に力を加える)して、変形加工用器具挿通孔122(曲げ加工用挿通孔122b)および開口(第1タブ貫通孔33b)に挿通(ないし螺合)された状態の変形加工用器具300を変位させる。これにより、骨用プレート1の変形可能部(第1タイプタブ30b)が変形する。なお、本実施例の変形加工補助部材100は、図23に示すように、プレート対向部120が、プレート密接部111を骨用プレート1(ヘッド部20)に密接させた時、骨用プレート1の変形可能部(タブ30,40,50)から所定距離離隔した上方に位置している。言い換えれば、骨用プレート1への取付状態において、変形加工補助部材100(補助部材本体101)は、骨用プレート1の変形可能部(タブ30,40,50)に接触していない。これにより、変形加工補助部材100が骨用プレート1の変形可能部の変形を妨げることがないものとなっている。
【0085】
そして、変形加工用器具300の変位(骨用プレート1の変形可能部の変形)を進めると、ある時点で、変形加工用器具300と変形加工用器具挿通孔122の硬質な内周面121とが当接することにより、変形加工用器具300のそれ以上の変位が規制される。これにより、骨用プレート1の変形加工量を所望の量に規制し、骨用プレート1の破損を防止することができる。
【0086】
骨用プレート(変形可能部)は、過剰な変形や変形を繰り返すと破損する恐れがある。特に、一旦大きく変形させた部分(例えば、一方に大きく曲げ変形させた部分)を、再度元に戻す方向に変形させる(他方に曲げ変形させる)場合には、一旦圧縮力が作用した部分に引張り力が作用することとなり、破損(ひび割れ等)する恐れが大きくなる。本発明の変形加工補助部材を用いることにより、骨用プレートの意図しない変形や、過剰な変形を防止することができ、過剰な変形を修正するための再変形の必要もなくなるという利点がある。
【符号の説明】
【0087】
100 変形加工補助部材
101 補助部材本体
110 本体部
111 プレート密接部
112 固定用ねじ部材収容孔
115 補助部材側突出部
120 プレート対向部
121 硬質な内周面
122(122a,122b,122c,122d) 変形加工用器具挿通孔
130 固定用ねじ部材
200 骨治療用キット
300 変形加工用器具
310 器具本体部
320 グリップ部
1,1a 骨用プレート
10 プレート本体部
20 ヘッド部
22 ヘッド部貫通孔
30,30a,30b 第1タイプタブ
33,33a,33b 第1タブ貫通孔
40 第2タイプタブ
43 第2タブ貫通孔
50 第3タイプタブ
53 第3タブ貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25