(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108474
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】容器詰果汁含有飲料、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/02 20060101AFI20240805BHJP
A23L 2/44 20060101ALI20240805BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
A23L2/02 A
A23L2/02 B
A23L2/00 P
A23L2/02 C
A23L2/52 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012862
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】391058381
【氏名又は名称】キリンビバレッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】佐野 涼子
(72)【発明者】
【氏名】福井 美帆
(72)【発明者】
【氏名】真下 温子
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC15
4B117LE10
4B117LG02
4B117LG03
4B117LG05
4B117LG11
4B117LK06
4B117LK08
4B117LK16
4B117LP14
4B117LP17
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、果汁の劣化感が抑制された容器詰果汁含有飲料、及びその製造方法等を提供することにある。
【解決手段】大豆イソフラボンの含有濃度が0.05重量%以上である、容器詰果汁含有飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆イソフラボンの含有濃度が0.05重量%以上である、容器詰果汁含有飲料。
【請求項2】
大豆イソフラボンの含有濃度が0.05~1.0重量%である、請求項1に記載の容器詰果汁含有飲料。
【請求項3】
ストレート換算で果汁を5重量%以上含有する、請求項1に記載の容器詰果汁含有飲料。
【請求項4】
果汁が、バラ科の果実、ミカン科の果実、及び、ブドウ科の果実からなる群から選択される1種又は2種以上の果実の果汁である、請求項1に記載の容器詰果汁含有飲料。
【請求項5】
容器詰果汁含有飲料の製造において、大豆イソフラボンの含有濃度が0.05重量%以上となるように調製することを特徴とする、前記容器詰果汁含有飲料の製造方法。
【請求項6】
容器詰果汁含有飲料の製造において、大豆イソフラボンの含有濃度が0.05重量%以上となるように調製することを特徴とする、前記容器詰果汁含有飲料において、果汁の劣化感を抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器詰果汁含有飲料、及びその製造方法等に関する。より詳細には、果汁の劣化感が抑制された容器詰果汁含有飲料、及びその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、果汁含有飲料は、果汁風味が得られる嗜好性飲料として広く親しまれている。
【0003】
ところで、果汁含有飲料は、長期保存などにより、果汁由来の成分が変化して加熱臭やイモ臭などと表現される異風味(オフフレーバー)が強く感じられるという問題があった。かかる問題に関連して、例えば特許文献1には、レモン果汁含有飲料中のリモネンとノナナールについて所定の関係を満足するように飲料を構成することで、オフフレーバーを抑制する方法が記載されている。
【0004】
しかしながら、容器詰果汁含有飲料の製造において、大豆イソフラボンの含有濃度が0.05重量%以上となるように調製することによって、果汁の劣化感を抑制できることはこれまでに知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、果汁の劣化感が抑制された容器詰果汁含有飲料、及びその製造方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意検討した結果、容器詰果汁含有飲料の製造において、大豆イソフラボンの含有濃度が0.05重量%以上となるように調製することによって、果汁の劣化感を抑制できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)大豆イソフラボンの含有濃度が0.05重量%以上である、容器詰果汁含有飲料;
(2)大豆イソフラボンの含有濃度が0.05~1.0重量%である、上記(1)に記載の容器詰果汁含有飲料。
(3)ストレート換算で果汁を5重量%以上含有する、上記(1)又は(2)に記載の容器詰果汁含有飲料;
(4)果汁が、バラ科の果実、ミカン科の果実、及び、ブドウ科の果実からなる群から選択される1種又は2種以上の果実の果汁である、上記(1)~(3)のいずれかに記載の容器詰果汁含有飲料;
(5)容器詰果汁含有飲料の製造において、大豆イソフラボンの含有濃度が0.05重量%以上となるように調製することを特徴とする、前記容器詰果汁含有飲料の製造方法;
(6)容器詰果汁含有飲料の製造において、大豆イソフラボンの含有濃度が0.05重量%以上となるように調製することを特徴とする、前記容器詰果汁含有飲料において、果汁の劣化感を抑制する方法;
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、果汁の劣化感が抑制された容器詰果汁含有飲料、及びその製造方法等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、
[1]大豆イソフラボンの含有濃度が0.05重量%以上である、容器詰果汁含有飲料;(以下、「本発明の飲料」とも表示する。);
[2]容器詰果汁含有飲料の製造において、大豆イソフラボンの含有濃度が0.05重量%以上となるように調製することを特徴とする、前記容器詰果汁含有飲料の製造方法(以下、「本発明の製造方法」とも表示する。);
[3]容器詰果汁含有飲料の製造において、大豆イソフラボンの含有濃度が0.05重量%以上となるように調製することを特徴とする、前記容器詰果汁含有飲料において、果汁の劣化感を抑制する方法(以下、「本発明の抑制方法」とも表示する。);
等の実施態様を含む。
【0011】
(大豆イソフラボン)
本明細書における「大豆イソフラボン」としては、グリコシド型イソフラボン(すなわち、イソフラボン配糖体)、アグリコン型イソフラボン(すなわち、イソフラボン非配糖体)、グリコシド型イソフラボンのアセチル化体(すなわち、イソフラボン配糖体のアセチル化体)、グリコシド型イソフラボンのマロニル化体(すなわち、イソフラボン配糖体のマロニル化体)などが挙げられる。また、本明細書における「大豆イソフラボン」には、便宜上、アグリコン型イソフラボンの還元体や、エクオールも包含される。「エクオール」とは、主に糖と結合した配糖体の形で存在するイソフラボンが、体内の消化酵素又は腸内細菌の産生する酵素等で変換された代謝物としても知られており、高いエストロゲン活性を有する。
【0012】
上記のイソフラボン配糖体としては、ダイジン、ゲニスチン、グリシチンが挙げられ、上記のイソフラボン非配糖体としては、ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテインが挙げられ、上記のイソフラボン配糖体のアセチル化体としては、アセチルダイジン、アセチルゲニスチン、アセチルグリシチンが挙げられ、上記のイソフラボン配糖体のマロニル化体としては、マロニルダイジン、マロニルゲニスチン、マロニルグリシチンが挙げられ、上記のアグリコン型イソフラボンの還元体としては、ジヒドロダイゼイン、ジヒドロゲニステイン、ジヒドログリシテインが挙げられる。大豆イソフラボンは、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。上記のエクオールとしては、ダイジン、ダイゼイン、及びジヒドロダイゼインからなる群から選択される少なくとも1つの代謝物であるエクオールが挙げられる。
【0013】
本明細書における「大豆イソフラボン」としては、ダイジン、ゲニスチン、グリシチン、ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテイン、アセチルダイジン、アセチルゲニスチン、アセチルグリシチン、マロニルダイジン、マロニルゲニスチン、マロニルグリシチン、ジヒドロダイゼイン、ジヒドロゲニステイン、ジヒドログリシテイン、及び、エクオールからなる群から選択される1種又は2種以上が挙げられる。
【0014】
本発明の飲料における大豆イソフラボンの含有濃度としては、本発明の効果が得られる限り特に制限されないが、飲料全量に対して、例えば、0.05重量%以上、0.08重量%以上又は0.1重量%以上が挙げられ、果汁の劣化感の抑制効果をより多く得る観点から、好ましくは0.25重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上が挙げられる。また、本発明の飲料における大豆イソフラボンの含有濃度の上限としては、特に制限されないが、香味調和の観点から、飲料全量に対して、例えば、1.0重量%以下が好ましく挙げられ、0.7重量%以下、又は、0.5重量%以下がより好ましく挙げられる。
【0015】
本発明の飲料中の大豆イソフラボン濃度は、本発明の飲料を調製する際の、大豆イソフラボン又は大豆イソフラボン含有組成物の使用量を調整すること等により調整することができる。大豆イソフラボンや、大豆イソフラボン含有組成物は、市販されているものを用いることができる。大豆イソフラボン含有組成物として、例えば、大豆胚芽抽出物が好ましく挙げられる。
【0016】
本発明の飲料中の大豆イソフラボン濃度は、例えばHPLCを用いるなどして測定することができる。
【0017】
(果汁)
本発明の飲料は、果汁含有飲料である。本明細書において「果汁含有飲料」とは、任意の果実からの搾汁(果汁)を含む飲料を意味する。本明細書における「果汁」とは、果実を破砕して搾汁又は裏ごし等をし、皮、種子等を除去したピューレ等を意味する。果汁を処理する方法としては、酵素処理法、精密濾過法、限外濾過法等が挙げられる。
【0018】
果汁は、インライン搾汁機等を用いて、全果(皮等も含めた果実全体)を果汁分と果皮を含む残渣とに圧搾分離し、この圧搾分離した果汁を殺菌及び冷却する方法、あるいは全果を果皮部と果肉部とに分離し、または半切した後、果肉部だけを搾汁し、殺菌及び冷却を行う方法等、果実飲料の原料用果汁として一般的に製造されている方法によって製造することができる。
【0019】
果汁には、果実の搾汁を濃縮した濃縮果汁、濃縮果汁を希釈した還元果汁も含まれる。また、果汁は清澄処理した透明果汁でもよく、混濁果汁でもよい。
【0020】
果汁としては市販のジュースや濃縮ジュース、ペーストなどを用いることができる。具体的には、JAS規格(果実飲料の日本農林規格)で指定されたジュースや濃縮ジュースを挙げることができ、例えばこれらのうち1種又は2種以上を果汁含有飲料調製のために用いることができる。
【0021】
本発明の容器詰果汁含有飲料に含まれる果汁の調製に用いることのできる果物としては、特に限定されないが、
モモ、リンゴ、ネクタリン、スモモ、ナシ(日本ナシ、西洋ナシ、中国ナシ)、イチゴ、サクランボ、アンズ、ビワ、プルーン、ウメ、カリン、マルメロ等の、バラ科の果実;
グレープフルーツ、レモン、オレンジ、ライム、ミカン、ユズ、カボス、イヨカン、シークワーサー等の、ミカン科の果実;
白ブドウ(ナイアガラ、ロザリオビアンコ、マスカット、シャルドネ等)、赤ブドウ(コンコード、巨峰、ナガノパープル、ピオーネ、スチューベン、デラウェア、ロザリオ・ロッソ、甲斐路、ゴルビー)などのブドウ等の、ブドウ科の果実;及び、
パイナップル、マンゴー、パパイア、バナナ、アセロラ、グアバ、スターフルーツ、パッションフルーツ、ライチ、マンゴスチン等の熱帯果実;
からなる群から選択される1種又は2種以上の果実が挙げられ、バラ科の果実、ミカン科の果実、及び、ブドウ科の果実からなる群から選択される1種又は2種以上が好ましく挙げられ、モモ、リンゴ、グレープフルーツ、及び、ブドウからなる群から選択される1種又は2種以上がより好ましく挙げられる。
【0022】
本発明の容器詰果汁含有飲料に含まれる果汁の調製に用いることのできる果物について、その品種、産地、熟度、大きさなどは特に限定されず、適宜設定することができる。
【0023】
本発明の飲料中の果汁濃度としては、特に制限されず、例えば、飲料全量に対して、ストレート換算で0.1重量%以上、0.5重量%以上などが挙げられるが、果汁の劣化感の影響がより大きく、本発明の意義をより多く享受する観点から、飲料全量に対して、ストレート換算で1重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、35重量%以上、50重量%以上、又は、75重量%以上が好ましく挙げられる。また、本発明の飲料中の果汁濃度の上限として、例えば100重量%以下、75重量%以下、50重量%以下、35重量%以下が挙げられる。
【0024】
本発明の飲料中の果汁濃度は、用いる果汁の量や、用いる果汁のストレート換算の濃度を調整することによって、調整することができる。
【0025】
(任意成分)
本発明の容器詰果汁含有飲料は、本発明の効果を妨げない範囲で、任意成分を含有していてもよい。かかる任意成分としては、酸味料、香料、色素、甘味料、保存料、増粘安定剤、乳化剤、食物繊維、苦味料、酸化防止剤、pH調整剤、ビタミン類、うま味成分、食物繊維、エキス、水溶性の機能性成分、及び、脂溶性の機能性成分からなる群から選択される1種又は2種以上が挙げられる。
【0026】
(本発明の飲料)
本発明の飲料としては、大豆イソフラボンの含有濃度が0.05重量%以上である、容器詰果汁含有飲料である限り特に制限されない。
【0027】
本発明の飲料は、大豆イソフラボンの含有濃度が0.05重量%以上であること以外は、用いる製造原料、製造方法並びに製造条件において、通常の容器詰果汁含有飲料と特に相違する点はない。
【0028】
本発明の飲料は、「容器詰果汁含有飲料」の一般的な製造方法において、いずれかの段階で、大豆イソフラボンの含有濃度が0.05重量%以上となるようにする(好ましくは、そのように調製する)ことによって製造することができる。
【0029】
本発明の飲料は、容器詰飲料である。かかる容器としては、ペットボトル、ポリプロピレンボトル、ポリ塩化ビニルボトル等の樹脂ボトル容器;ビン容器;缶容器;等の容器が挙げられる。
【0030】
本発明の飲料は、加熱殺菌処理がなされていなくてもよいが、保存性向上の観点から、加熱殺菌処理がなされていてもよい。加熱殺菌処理の方法や条件としては、容器詰飲料などの飲料に使用される通常の方法や条件を用いることができる。
【0031】
(本発明の製造方法)
本発明の製造方法としては、容器詰果汁含有飲料の製造において、大豆イソフラボンの含有濃度が0.05重量%以上となるように調製することを特徴とする、前記容器詰果汁含有飲料の製造方法である限り特に制限されない。
【0032】
本発明の飲料は、大豆イソフラボンの含有濃度が0.05重量%以上となるように調製すること以外は、容器詰果汁含有飲料の一般的な製造方法により製造することができる。容器詰果汁含有飲料の一般的な製造方法は公知であり、例えば、調合工程、充填工程、加熱殺菌工程を経て容器詰果汁含有飲料を製造することができる。本発明の飲料の製造においては、前述の任意成分を添加してもよく、これら任意成分の添加時期は特に制限されない。
【0033】
本発明における「大豆イソフラボンの含有濃度が0.05重量%以上となるように調製する」方法としては、本発明の飲料において、大豆イソフラボンの含有濃度が0.05重量%以上となるように、容器詰果汁含有飲料の製造工程のいずれかで、「大豆イソフラボン」を果汁含有飲料に含有させる方法が挙げられ、例えば、水に、「大豆イソフラボン」、及び、「果汁」を含有させる方法が挙げられる。
【0034】
本発明の製造方法においては、任意成分として、酸味料、香料、色素、甘味料、保存料、増粘安定剤、乳化剤、食物繊維、苦味料酸化防止剤、pH調整剤、ビタミン類、うま味成分、食物繊維、エキス、水溶性の機能性成分、及び、脂溶性の機能性成分からなる群から選択される1種又は2種以上をさらに含有させてもよい。
【0035】
本発明の製造方法においては、本発明の飲料を製造し得る限り、製造原料を含有させる順序等は特に制限されない。製造原料が混合されている液を調製した後、容器に充填して密封し、本発明の飲料を得ることができる。
【0036】
(加熱殺菌)
本発明の製造方法は、果汁含有飲料を加熱殺菌する工程を含んでいてもよい。かかる加熱殺菌する方法としては、容器詰飲料における通常の加熱殺菌方法を特に制限なく用いることができる。例えば、金属缶のように充填後に加熱殺菌できる場合にあっては、食品衛生法に定められた殺菌条件等で殺菌処理を行うことができる。また、PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、充填前に該飲料を、あらかじめ上記と同等の殺菌条件で、例えばプレート式熱交換器等を用いて高温短時間殺菌(UHT殺菌)した後、一定の温度まで冷却し、殺菌済み容器に充填する等の方法を採用することができる。
【0037】
(本発明の抑制方法)
本発明の抑制方法としては、容器詰果汁含有飲料の製造において、大豆イソフラボンの含有濃度が0.05重量%以上となるように調製することを特徴とする、前記容器詰果汁含有飲料において、果汁の劣化感を抑制する方法である限り特に制限されない。
【0038】
「大豆イソフラボンの含有濃度が0.05重量%以上となるように調製する」方法は、上記の(本発明の製造方法)に記載した方法と同様の方法を用いることができる。
【0039】
(果汁の劣化感が抑制された容器詰果汁含有飲料)
本発明の飲料は、果汁の劣化感が抑制された容器詰果汁含有飲料である。本明細書において、「果汁の劣化感」とは、容器詰果汁含有飲料が保存等されることによって生じる、蒸れ臭及び/又は加熱臭を意味する。
【0040】
本明細書において、「果汁の劣化感が抑制された」容器詰果汁含有飲料としては、大豆イソフラボンを含有していない又は添加していないこと以外は、同種の原料を同じ最終濃度となるように用いて同じ製法で製造した飲料(以下、「コントロール飲料」とも表示する。)と比較して、果汁の劣化感が抑制された飲料などが挙げられる。
【0041】
ある果汁含有飲料における、果汁の劣化感の程度や、かかる果汁の劣化感の程度が本発明におけるコントロール飲料と比較してどのようであるか(例えば、果汁の劣化感が抑制されているかどうか、どの程度抑制されているか)は、訓練されたパネルであれば、容易かつ明確に決定することができる。
【0042】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【実施例0043】
試験1.[大豆イソフラボンの、果汁の劣化感への影響]
容器詰果汁含有飲料において、大豆イソフラボンの含有濃度が、果汁の劣化感の程度にどのような影響を与えるかを、以下の実験により調べた。
【0044】
(1.容器詰果汁含有飲料の調製)
酸味料(無水クエン酸、クエン酸三ナトリウム、DL-リンゴ酸、及び、L-アスコルビン酸)を水に添加した溶液に、表3記載の濃度となるように、モモ果汁と大豆イソフラボン(大豆胚芽抽出物;フジフラボン(登録商標)P10;フジッコ株式会社製)を含有させて混合した後、容器に充填し、加熱殺菌処理して、試験例2~8の各サンプル飲料を調製した。また、大豆イソフラボンを含まない飲料(コントロール飲料)として、前述の酸味料を水に添加した溶液に、表3記載の濃度となるように、モモ果汁を含有させて混合した後、容器に充填し、加熱殺菌処理して、試験例1のサンプル飲料を調製した。なお、試験例1~8のサンプル飲料において、無水クエン酸は0.2重量%、クエン酸三ナトリウムは0.01重量%、DL-リンゴ酸は0.02重量%、L-アスコルビン酸は0.002重量%であった。
【0045】
試験例1~8の各サンプル飲料を、50℃の条件下に14日間静置した。
【0046】
(2.官能評価試験)
得られた試験例1~8のサンプル飲料の果汁の劣化感(すなわち、果汁の劣化感(蒸れ臭・加熱臭))の程度について、訓練した専門パネル5名によって、以下の表1に記載されるような5段階の評価基準で官能評価試験を行った。すなわち、加速試験前の各サンプル飲料と比較して、加速試験後の各サンプル飲料における果汁の劣化感(蒸れ臭・加熱臭)がどのようであるかを評価した。なお、1点と2点の劣化感の程度の差、2点と3点の劣化感の程度の差、3点と4点の劣化感の程度の差、4点と5点の劣化感の程度の差は、それぞれ同程度とした。
なお、各試験例のサンプル飲料における劣化感の程度の評価としては、各パネルの評価点の平均値の小数第2位を四捨五入した値を採用した。
【0047】
【0048】
なお、表1の評価基準において、例えば3.5点以下である場合に、果汁の劣化感についての課題があると判断することができる。
【0049】
また、得られた試験例1~8のサンプル飲料における、香味調和の程度について、訓練した専門パネル5名によって、以下の表2に記載されるような3段階の評価基準で官能評価試験を行った。なお、〇と△の香味調和の程度の差、△と×の香味調和の程度の差は、それぞれ同程度とした。
【0050】
【0051】
なお、専門パネル5名による、表2の評価基準での評価において、〇と△の合計が3名以上であったサンプル飲料を、香味調和の点で許容されるサンプル飲料を「適」であると評価し、〇と△の合計が3名以上ではなかったサンプル飲料を「不適」であると評価した。
【0052】
試験例1~8のサンプル飲料における、果汁の劣化感の程度と、香味調和についての官能評価試験の結果を表3に示す。
【0053】
【0054】
表3の結果から分かるように、大豆イソフラボンを含有させた場合(試験例2~8)は、それぞれ、大豆イソフラボンを含有させなかった場合(試験例1)と比較して、果汁の劣化感が抑制されることが示された。さらに、果汁の劣化感を抑制するための大豆イソフラボン濃度として、例えば0.08重量%以上が挙げられ、好ましくは0.25重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上であることが示された。なお、大豆イソフラボン濃度が0.08重量%の場合に、果汁の劣化感について十分な抑制効果が得られたことから、大豆イソフラボン濃度が例えば0.05重量%以上である場合に、果汁の劣化感への抑制効果が得られる蓋然性が高いと考えられた。また、大豆イソフラボン濃度が1.5重量%である場合は、大豆イソフラボン由来の香味不調和(金属感、苦味)が強く感じられて、飲料製品として不適と評価された。表3の結果から、果汁の劣化感の抑制効果と、香味調和のバランスの観点から、大豆イソフラボン濃度は例えば0.05~1.0重量%又は0.08~1.0重量%、好ましくは0.25~1.0重量%、より好ましくは0.3~1.0重量%であることが示された。
【0055】
試験2.[果汁含有濃度による影響]
果汁含有濃度が、大豆イソフラボンによる果汁の劣化感の抑制効果にどのような影響を与えるかを、以下の実験により調べた。
【0056】
(1.容器詰果汁含有飲料の調製)
酸味料(無水クエン酸、クエン酸三ナトリウム、DL-リンゴ酸、及び、L-アスコルビン酸)を水に添加した溶液に、表4~6記載の濃度となるように、モモ果汁と大豆イソフラボン(大豆胚芽抽出物;フジフラボン(登録商標)P10;フジッコ株式会社製)を水に含有させて混合した後、容器に充填し、加熱殺菌処理して、試験例10~12、14~16及び18の各サンプル飲料を調製した。また、大豆イソフラボンを含まない飲料(コントロール飲料)として、前述の酸味料を水に添加した溶液に、表4~6記載の濃度となるように、モモ果汁を含有させて混合した後、容器に充填し、加熱殺菌処理して、試験例9、13及び17の各サンプル飲料を調製した。なお、試験例9~18のサンプル飲料において、無水クエン酸は0.2重量%、クエン酸三ナトリウムは0.01重量%、DL-リンゴ酸は0.02重量%、L-アスコルビン酸は0.002重量%であった。
【0057】
各サンプル飲料を、50℃の条件下に14日間静置した。
【0058】
(2.官能評価試験)
得られた試験例9~18の各サンプル飲料における、果汁の劣化感の程度と香味調和について、訓練した専門パネル5名によって、上記の試験1と同じ方法で官能評価試験を行った。
【0059】
試験例9~18の各サンプル飲料についての官能評価試験の結果を表4~6に示す。
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
表4~6の結果から分かるように、果汁含有濃度が20重量%(表4)、50重量%(表5)、100重量%(表6)のいずれであっても、大豆イソフラボンを含有させた場合(試験例10~12、14~16及び18)は、それぞれ、大豆イソフラボンを含有させなかった場合(試験例9、13及び17)と比較して、果汁の劣化感が抑制されることが示された。
また、表4~6の結果から分かるように、試験例10~12、14~16及び18のいずれのサンプル飲料においても、香味調和は「適」の評価であった。
【0064】
試験3.[果汁の種類による影響]
果汁の種類が、大豆イソフラボンによる果汁の劣化感の抑制効果にどのような影響を与えるかを、以下の実験により調べた。
【0065】
(1.容器詰リンゴ果汁含有飲料の調製)
酸味料(無水クエン酸、クエン酸三ナトリウム、DL-リンゴ酸、及び、L-アスコルビン酸)を水に添加した溶液に、表7記載の濃度となるように、リンゴ果汁と大豆イソフラボン(大豆胚芽抽出物;フジフラボン(登録商標)P10;フジッコ株式会社製)を含有させて混合した後、容器に充填し、加熱殺菌処理して、試験例20のサンプル飲料を調製した。また、大豆イソフラボンを含まない飲料(コントロール飲料)として、前述の酸味料を水に添加した溶液に、表7記載の濃度となるように、リンゴ果汁を含有させて混合した後、容器に充填し、加熱殺菌処理して、試験例19のサンプル飲料を調製した。なお、試験例19及び20のサンプル飲料において、無水クエン酸は0.2重量%、クエン酸三ナトリウムは0.01重量%、DL-リンゴ酸は0.02重量%、L-アスコルビン酸は0.002重量%であった。
【0066】
試験例19及び20のサンプル飲料を、50℃の条件下に14日間静置した。
【0067】
(2.官能評価試験)
得られた試験例19及び20の各サンプル飲料における、果汁の劣化感の程度と香味調和について、訓練した専門パネル5名によって、上記の試験1と同じ方法で官能評価試験を行った。
【0068】
試験例19及び20の各サンプル飲料についての官能評価試験の結果を表7に示す。
【0069】
【0070】
表7の結果から分かるように、大豆イソフラボンによる、果汁の劣化感の抑制効果は、リンゴ果汁を用いた場合であっても、得られることが示された。
また、表7の結果から分かるように、試験例20のサンプル飲料の香味調和は「適」の評価であった。
【0071】
(1.容器詰グレープフルーツ果汁含有飲料の調製)
酸味料(無水クエン酸、クエン酸三ナトリウム、DL-リンゴ酸、及び、L-アスコルビン酸)を水に添加した溶液に、表8記載の濃度となるように、グレープフルーツ果汁と大豆イソフラボン(大豆胚芽抽出物;フジフラボン(登録商標)P10;フジッコ株式会社製)を含有させて混合した後、容器に充填し、加熱殺菌処理して、試験例22のサンプル飲料を調製した。また、大豆イソフラボンを含まない飲料(コントロール飲料)として、前述の酸味料を水に添加した溶液に、表8記載の濃度となるように、グレープフルーツ果汁を水に含有させて混合した後、容器に充填し、加熱殺菌処理して、試験例21のサンプル飲料を調製した。なお、試験例21及び22のサンプル飲料において、無水クエン酸は0.2重量%、クエン酸三ナトリウムは0.01重量%、DL-リンゴ酸は0.02重量%、L-アスコルビン酸は0.002重量%であった。
【0072】
試験例21及び22のサンプル飲料を、50℃の条件下に14日間静置した。
【0073】
(2.官能評価試験)
得られた試験例21及び22の各サンプル飲料における、果汁の劣化感の程度と香味調和について、訓練した専門パネル5名によって、上記の試験1と同じ方法で官能評価試験を行った。
【0074】
試験例21及び22の各サンプル飲料についての官能評価試験の結果を表8に示す。
【0075】
【0076】
表8の結果から分かるように、大豆イソフラボンによる、果汁の劣化感の抑制効果は、グレープフルーツ果汁を用いた場合であっても、得られることが示された。
また、表8の結果から分かるように、試験例22のサンプル飲料の香味調和は「適」の評価であった。
【0077】
(1.容器詰白ブドウ果汁含有飲料の調製)
酸味料(無水クエン酸、クエン酸三ナトリウム、DL-リンゴ酸、及び、L-アスコルビン酸)を水に添加した溶液に、表9記載の濃度となるように、白ブドウ果汁と大豆イソフラボン(大豆胚芽抽出物;フジフラボン(登録商標)P10;フジッコ株式会社製)を含有させて混合した後、容器に充填し、加熱殺菌処理して、試験例24のサンプル飲料を調製した。また、大豆イソフラボンを含まない飲料(コントロール飲料)として、前述の酸味料を水に添加した溶液に、表9記載の濃度となるように、白ブドウ果汁を含有させて混合した後、容器に充填し、加熱殺菌処理して、試験例23のサンプル飲料を調製した。なお、試験例23及び24のサンプル飲料において、無水クエン酸は0.2重量%、クエン酸三ナトリウムは0.01重量%、DL-リンゴ酸は0.02重量%、L-アスコルビン酸は0.002重量%であった。
【0078】
試験例23及び24の各サンプル飲料を、50℃の条件下に14日間静置した。
【0079】
(2.官能評価試験)
得られた試験例23及び24の各サンプル飲料における、果汁の劣化感の程度と香味調和について、訓練した専門パネル5名によって、上記の試験1と同じ方法で官能評価試験を行った。
【0080】
試験例23及び24の各サンプル飲料についての官能評価試験の結果を表9に示す。
【0081】
【0082】
表9の結果から分かるように、大豆イソフラボンによる、果汁の劣化感の抑制効果は、白ブドウ果汁を用いた場合であっても、得られることが示された。
また、表9の結果から分かるように、試験例24のサンプル飲料の香味調和は「適」の評価であった。
【0083】
表7~9の結果から、大豆イソフラボンによる、果汁の劣化感の抑制効果は、モモ果汁以外の様々な果汁を用いた場合であっても、得られることが示された。