(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108475
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】塗膜形成方法
(51)【国際特許分類】
B05D 1/36 20060101AFI20240805BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20240805BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240805BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20240805BHJP
E04F 13/02 20060101ALN20240805BHJP
E04F 13/08 20060101ALN20240805BHJP
【FI】
B05D1/36 Z
B05D7/00 K
B05D7/00 L
B05D7/24 301N
B05D7/00 P
B05D3/12 E
E04F13/02 D
E04F13/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012867
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】599071496
【氏名又は名称】ベック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森 徹也
(72)【発明者】
【氏名】守本 浩直
【テーマコード(参考)】
2E110
4D075
【Fターム(参考)】
2E110AA27
2E110AB04
2E110DD12
2E110GA33Y
2E110GA44W
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2E110GB01Y
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2E110GB52W
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2E110GB55Z
4D075AA01
4D075AC06
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4D075AC57
4D075AE02
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4D075BB60Z
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4D075EB33
(57)【要約】
【課題】複数の板状壁材が併設され、かつ目地部を有する被塗面に対して有用な塗膜形成方法を提供する。
【解決手段】複数の板状壁材が併設され、当該複数の板状壁材間の目地部には目地材が充填されてなる被塗面に対する塗膜形成方法であって、(1)上記被塗面の全体に下塗材を塗付する工程、(2)上記目地部に塗着した下塗材を除する工程、(3)上記下塗材の乾燥後、上記目地部を含む領域に目地処理材を塗付する工程、(4)上記被塗面の全体に仕上材を塗付する工程、を行うことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の板状壁材が併設され、当該複数の板状壁材間の目地部には目地材が充填されてなる被塗面に対する塗膜形成方法であって、
(1)上記被塗面の全体に下塗材を塗付する工程、
(2)上記目地部に塗着した下塗材を除する工程、
(3)上記下塗材の乾燥後、上記目地部を含む領域に目地処理材を塗付する工程、
(4)上記被塗面の全体に仕上材を塗付する工程、
を行うことを特徴とする塗膜形成方法。
【請求項2】
複数の板状壁材が併設され、当該複数の板状壁材間の目地部には目地材が充填されてなる被塗面に対する塗膜形成方法であって、
(1)上記被塗面の全体に下塗材を塗付する工程、
(2)上記目地部に塗着した下塗材を除する工程、
(3’)上記下塗材の乾燥後、上記被塗面の全体に弾性仕上材を塗付する工程、
を行うことを特徴とする塗膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な塗膜形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の壁面等においては、種々の基材に対し、その基材の保護、色彩付与等の目的で、各種仕上材による塗装が行われている。また、太陽光、降雨等の影響によって経年劣化が生じた壁面等については、塗り替えを行い、美観性の向上化、基材の長寿命化等が図られている。
【0003】
建築物の壁面等に対する塗装方法として、例えば、特許文献1には、既存塗膜面(旧塗膜面)にシーラーを塗装し、次いで仕上材として水性弾性塗料を塗装する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、建築物の壁面では、各種の板状壁材が用いられている場合がある。このような板状壁材で構成された壁面では、複数の板状壁材が併設されており、板状壁材どうしの間には必然的に目地部が生じる。この目地部においては、通常、シーリング材等の目地材によって防水処理が施されている。
【0006】
しかしながら、このような板状壁材で構成された壁面に対し、上記特許文献の方法で塗装を行って塗膜を形成した場合、板状壁材間の目地部付近において、仕上塗膜に割れ等の不具合が生じるおそれがある。
【0007】
本発明は、上述のような課題に鑑みなされたものであり、複数の板状壁材が併設され、かつ目地部を有する被塗面に対して有用な塗膜形成方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、複数の板状壁材が併設され、かつ目地部を有する被塗面に対して、下塗材を塗付した後に特定の処理を施し、次いで仕上材等を塗付する塗膜形成方法に想到し、本発明を完成させるに到った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.複数の板状壁材が併設され、当該複数の板状壁材間の目地部には目地材が充填されてなる被塗面に対する塗膜形成方法であって、
(1)上記被塗面の全体に下塗材を塗付する工程、
(2)上記目地部に塗着した下塗材を除する工程、
(3)上記下塗材の乾燥後、上記目地部を含む領域に目地処理材を塗付する工程、
(4)上記被塗面の全体に仕上材を塗付する工程、
を行うことを特徴とする塗膜形成方法。
2.複数の板状壁材が併設され、当該複数の板状壁材間の目地部には目地材が充填されてなる被塗面に対する塗膜形成方法であって、
(1)上記被塗面の全体に下塗材を塗付する工程、
(2)上記目地部に塗着した下塗材を除する工程、
(3’)上記下塗材の乾燥後、上記被塗面の全体に弾性仕上材を塗付する工程、
を行うことを特徴とする塗膜形成方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、複数の板状壁材が併設され、かつ目地部を有する被塗面に対して有用な塗膜形成方法であり、目地部付近における仕上塗膜の耐割れ性等の性能を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明塗膜形成方法の一例を示す断面模式図である。
【
図2】本発明塗膜形成方法の一例を示す断面模式図である。
【
図3】従来の塗膜形成方法の一例を示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0012】
1:板状壁材
2:目地材
3:下塗材
4:目地処理材
5:仕上材
6:弾性仕上材
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0014】
本発明の塗膜形成方法は、複数の板状壁材が併設され、当該複数の板状壁材間の目地部には目地材が充填されてなる被塗面を対象とするものである(
図1(a)、
図2(a))。本発明の塗膜形成方法は、新築物件、改修物件等に適用することができる。
【0015】
本発明における被塗面は、複数の板状壁材で構成される。板状壁材としては、例えば、セメントボード、押出成形板、スレート板、PC板、ALC板、繊維強化セメント板、金属系サイディングボード、窯業系サイディングボード、セラミック板、珪酸カルシウム板、石膏ボード、プラスチックボード、硬質木片セメント板、塩ビ押出サイディングボード、合板等が挙げられる。板状壁材は、その表面に既存塗膜(旧塗膜)等を有するものであってもよい。
【0016】
板状壁材の表面形状としては、例えば、平坦状、凹凸状等が挙げられる。このうち、凹凸状の表面形状としては、例えば、タイル調模様、レンガ調模様、幾何学的模様、縞模様、格子模様、水玉模様、砂壁模様、ゆず肌模様、さざ波模様等の他、動植物等をデザイン化した図形模様等が挙げられる。
図1、
図2では、表面形状が平坦状である板状壁材を図示しているが、本発明は、表面形状が凹凸状である板状建材を有する被塗面に対しても有利な効果を発揮することができる。
【0017】
本発明において、複数の板状壁材は、目地部を介して併設される。すなわち、板状壁材どうしの間には、目地部が設けられる。目地部の幅は、好ましくは3~20mm(より好ましくは5~15mm)程度である。上記目地部には、シーリング材、乾式目地材等の目地材が充填される。目地部の表面形状は、例えば、凹状、平坦状、凸状等のいずれであってもよい。
図1(a)、
図2(a)では、一例として、目地部の表面形状が凹状であるものを示している。
【0018】
シーリング材としては一般的なものが使用可能であり、例えば、シリコーン系シーリング材、変性シリコーン系シーリング材、ポリサルファイド系シーリング材、変性ポリサルファイド系シーリング材、アクリルウレタン系シーリング材、ポリウレタン系シーリング材、SBR系シーリング材、ブチルゴム系シーリング材等が挙げられる。これらシーリング材は、1液形、2液形等のいずれであってもよい。
シーリング材の充填方法としては、特に限定されず、例えば、ガンやへら等による公知の方法を採用することができる。
【0019】
シーリング材の充填前には、予めバックアップ材充填やプライマー塗付等の処理を行っておいてもよい。バックアップ材としては、例えば、発泡ポリエチレン系バックアップ材等を使用することができる。プライマーとしては、例えば、合成ゴム系プライマー、アクリル系プライマー、ウレタン系プライマー、エポキシ系プライマー、シリコーンレジン系プライマー、シラン系プライマー等を使用することができる。
【0020】
乾式目地材としては、板状壁材間の目地部に充填でき、その弾性力によって目地材自体が固定化されるとともに、防水効果を発現するものが使用できる。乾式目地材としては、例えば、塩素化ポリエチレン、EPDM(エチレン-プロピレン-ジエン-ターポリマー)等の合成ゴム等を有する材料等が使用できる。
【0021】
本発明では、上記被塗面に対して、以下の工程を順に行うことにより塗膜を形成する(
図1)。
(1)被塗面の全体に下塗材を塗付する工程、
(2)目地部に塗着した下塗材を除する工程、
(3)上記下塗材の乾燥後、目地部を含む領域に目地処理材を塗付する工程、
(4)被塗面の全体に仕上材を塗付する工程。
【0022】
まず、上記(1)工程では、
図1(b)に示すように、被塗面の全体に下塗材を塗付する。
【0023】
下塗材としては、例えば、密着性、耐透水性、基材補強性、隠蔽性、下地調整性、下地追従性等から選ばれる少なくとも1以上の機能を有するものが使用できる。このような下塗材としては、例えば、シーラー、プライマー、サーフェーサー等が挙げられる。
【0024】
下塗材は、結合材を必須成分として含み、必要に応じ、着色顔料その他の添加剤を含むものである。このうち、結合材としては、例えば、水溶性樹脂、水分散性樹脂(樹脂エマルション)、溶剤可溶形樹脂、無溶剤形樹脂、非水分散形樹脂、粉末樹脂等の各種結合材、あるいはこれらを複合化した結合材等を使用することができる。これらは架橋反応性を有するものであってもよい。また、結合材の形態は特に限定されず、1液型、2液型のいずれであってもよい。使用可能な樹脂の種類としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂等、あるいはこれらの複合樹脂等を挙げることができる。このうち、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、あるいはこれらの複合樹脂から選ばれる1種以上が好適である。
【0025】
下塗材の塗装方法としては、公知の方法を採用することができ、例えば、スプレー塗り、ローラー塗り、刷毛塗り等が可能である。本発明は、特に下塗材をローラー塗り(例えば、ウールローラー等を用いてローラー塗装)した場合に有利な効果が得られる。下塗材を塗装する際の塗付け量は適宜選択すればよいが、好ましくは0.05~1kg/m2である。塗付時には、水や溶剤等で希釈することによって、粘性を適宜調整することもできる。希釈割合は、好ましくは0~20重量%である。下塗材の塗装時の粘度(BH型粘度計による20rpmにおける粘度(4回転目の指針値)、測定温度23℃。下塗材を希釈した場合は希釈後の粘度。)は、好ましくは4Pa・s以下、より好ましくは0.01~3Pa・s、さらに好ましくは0.1~2Pa・sである。
【0026】
上記(2)工程では、
図1(c)に示すように、目地部に塗着した下塗材を除する。本発明では、この(2)工程を行うことにより、目地部付近における耐割れ性等の性能を確保することができる。
【0027】
上記(2)工程は、下塗材の乾燥前に行うことが好ましい。具体的に上記(2)工程は、下塗材の塗付後、1時間以内に行うことが好ましく、30分以内に行うことがより好ましい。
【0028】
図3は、従来の塗膜形成方法の一例を示すもの(仕上材塗装前の断面模式図)である。板状壁材間の目地部に目地材が充填されてなる被塗面に下塗材を塗装すると、
図3に示すように、目地部付近に下塗材が溜まりやすくなる傾向がある。下塗材をローラー塗装した場合は、特に目地部付近に下塗材が溜まりやすくなる。このような不具合は、板状壁材の表面形状等にも起因し、横目地、縦目地のいずれにおいても生じるおそれがある。塗装時の下塗材が低粘度である場合は、このような傾向が表れやすい。このような場合、目地部付近において、目地部に隣接する下塗材塗膜が局所的に厚膜となり、このような下塗材塗膜に仕上材を塗付すると、仕上塗膜に割れ等の不具合が発生しやすくなる。その詳細な作用機構は以下に限定されるものではないが、下塗材塗膜が局所的に厚膜となった近傍では、目地部上の塗膜の強度等に不均衡が生じること等が一因として考えられる。
【0029】
これに対し、本発明では、上記(2)工程により、目地部付近において、下塗材塗膜が局所的に厚膜となることを抑制することができ、その結果、目地部付近における耐割れ性等の性能を確保することができる。
【0030】
上記(2)工程では、例えば、刷毛、筆、布、スポンジ、へら等を用いて、目地部に塗着した下塗材を除することができる。この際、目地部上の下塗材は、完全に除去してもよいが、完全に除去する必要はなく、目地部に塗着した下塗材を減じて、下塗材塗膜の局所的な厚膜化を抑えるようにすればよい。
【0031】
下塗材塗付後の乾燥時間は、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上である。下塗材の塗装ないし乾燥は、常温(好ましくは0~50℃、より好ましくは5~45℃)の環境下で行うことができる。
【0032】
上記(3)工程では、
図1(d)に示すように、上記下塗材の乾燥後、目地部を含む領域に目地処理材を塗付する。これにより、目地部を含む領域に目地処理膜が形成され、耐割れ性等の性能を高めることができる。
【0033】
目地処理材としては、目地部の変位に追従可能な弾性等の性能を有するものが好ましい。さらに、このような性能を有しつつ、目地部の変位を緩和する強度を有するものがより好ましい。目地材が可塑剤を含む場合は、目地処理材として可塑剤移行防止性を有するものを使用することにより、仕上塗膜の変色(例えば汚染による変色等)の抑制に有利に作用する。目地処理材としては、このような性能を有する1種または2種以上が使用できる。
【0034】
目地処理材は、樹脂成分を含むことが望ましい。このような樹脂成分の形態としては、例えば、水溶性樹脂、水分散性樹脂、溶剤可溶形樹脂、無溶剤形樹脂、非水分散形樹脂等、あるいはこれらを複合したもの等が挙げられる。このうち水分散性樹脂は、1段ないし多段(2段、または3段以上)の乳化重合法等によって製造することができる。これらは架橋反応性を有するものであってもよく、また1液型、2液型等のいずれであってもよい。樹脂成分の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン、塩素化ポリオレフィン等、あるいはこれらの複合物(例えば、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂等)が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0035】
目地処理材は、上記樹脂成分以外の各種成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、着色顔料、体質顔料、増粘剤、造膜助剤、シランカップリング剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、吸着剤、繊維、架橋剤、硬化剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、触媒等が挙げられる。目地処理材の色調は、例えば、着色顔料の種類、組合せ、混合量等により適宜設定することができる。
【0036】
目地部を含む領域に、目地処理材を塗付する際には、例えば、刷毛、ローラー、スプレー等の公知の塗付具を用いることができる。目地処理材は、必要に応じ適宜希釈することもできる。
【0037】
目地処理材は、少なくとも目地部を覆うように塗付することが望ましく、目地部の近傍にわたって塗付することもできる。目地処理材の塗付け幅は、目地部の幅の1~5倍であることが望ましいが、必要に応じ板状壁材の表面にわたって広く塗付してもよい。目地処理材の塗付け量は、好ましくは0.01~0.4kg/m2、より好ましくは0.05~0.3kg/m2である。目地材として新たなシーリング材を打設した場合は、シーリング材の充填後2日以上経過後に目地処理材を塗付することが望ましい。
【0038】
目地処理材の塗装、乾燥は、常温(好ましくは0~50℃、より好ましくは5~45℃)の環境下で行うことができる。目地処理材によって形成された処理被膜が乾燥した後、次工程を行うことができる。
【0039】
上記(4)工程では、
図1(e)に示すように、被塗面の全体に仕上材を塗付する。仕上材の塗装によって、美観性を備えた化粧仕上げが得られる。仕上材は、1種または2種以上使用できる。仕上材を2種以上用いる仕様としては、例えば、シーラー、中塗材、主材等と呼ばれる材料の1種または2種以上を塗装後、塗膜最表面となる仕上材を塗装する仕様等が挙げられる。
【0040】
仕上材としては、一般的に建築物等の塗装に使用されるものであれば特に限定されるものではなく、その結合材としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂等の有機質結合材、あるいはシリコン樹脂、アルコキシシラン、コロイダルシリカ、ケイ酸塩等の無機質結合材、アクリルシリコン樹脂等の有機無機複合結合材等が挙げられる。
【0041】
仕上材の構成成分としては、上記結合材の他に、例えば、着色顔料、体質顔料、骨材、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、吸着剤、カップリング剤、繊維、架橋剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、触媒、溶剤、水等が挙げられる。仕上材は、その種類に応じ、上記成分を常法により均一に混合することによって製造することができる。
【0042】
具体的に、仕上材としては、例えば、建築用耐候性上塗り塗料(JIS K5658:2010)、鋼構造物用耐候性塗料(JIS K5659:2021)、つや有合成樹脂エマルションペイント(JIS K5660:2021)、合成樹脂エマルションペイント(JIS K5663:2021)、合成樹脂エマルション模様塗料(JIS K5668:2021)、アクリル樹脂系非水分散形塗料(JIS K5670:2021)、屋根用高日射反射率塗料(JIS K5675:2011)、建築用塗膜防水材(JIS A6021:2022)、建築用仕上塗材(JIS A6909:2021)、その他多彩模様塗料、石材調仕上塗材、砂岩調仕上塗材、クリヤー塗料等が使用できる。
【0043】
仕上材の塗装方法としては、特に限定されず、各材料に応じた塗装方法を採用することができる。塗装器具としては、例えば、スプレー、ローラー、コテ、刷毛等を用いることができる。仕上材の塗付け量は、その種類にもよるが、好ましくは0.2~5kg/m2、より好ましくは0.3~4kg/m2である。塗装時には、必要に応じ適宜希釈することもできる。仕上材の塗装、乾燥は、常温(好ましくは0~50℃、より好ましくは5~45℃)の環境下で行うことができる。
【0044】
図1の塗膜形成方法の具体的な一例としては、複数の窯業系サイディングボードが併設され、当該複数の窯業系サイディングボード間の目地部(縦目地及び横目地。いずれも目地幅10mm)に目地材(1液形変性シリコーン系シーリング材)が充填されてなる被塗面に対し、標準状態(気温23℃、相対湿度50%)下にて、
(1)被塗面の全体に下塗材(水性エポキシ樹脂下塗材、塗装時粘度1Pa・s)を、塗付け量0.12kg/m
2でローラー塗装(ウールローラーを使用)する工程、
(2)下塗材の塗装後、10~25分の間に、目地部に塗着した下塗材を、刷毛を用いて均しながら、目地部上の塗着量が約0.05kg/m
2となるまで除する工程、
(3)下塗材を3時間乾燥させた後、目地部を含む領域(目地部の幅の1.5倍)に目地処理材(アクリル樹脂目地処理材)を塗付け量0.12kg/m
2で刷毛塗りする工程、
(4)目地処理材を3時間乾燥させた後、被塗面の全体に仕上材(JIS K5660「つや有り合成樹脂エマルションペイント」に該当する水性アクリル樹脂塗料)を塗付け量0.3kg/m
2でスプレー塗装し、24時間乾燥させる工程、
を行う方法等が挙げられる。
【0045】
本発明では、上記被塗面に対して、以下の工程を順に行うことにより塗膜を形成することもできる(
図2)。
(1)被塗面の全体に下塗材を塗付する工程、
(2)目地部に塗着した下塗材を除する工程、
(3’)被塗面の全体に弾性仕上材を塗付する工程。
【0046】
この方法は、上述の(3)工程、及び(4)工程に替えて、(3’)被塗面の全体に弾性仕上材を塗付する工程を行うものであり、目地処理材を塗付する工程を省くことができる。上記(1)工程(
図2(b))、及び(2)工程(
図2(c))については、上述と同様の方法で行うことができる。
【0047】
上記(3’)工程では、
図2(d)に示すように、仕上材として弾性仕上材を用いる。弾性仕上材は、目地部の変位に追従可能な弾性等の性能を有するものが好ましい。弾性仕上材としては、その形成塗膜の、JIS A6909の「標準時の伸び試験」の方法によって測定した値(23℃時の伸び率)が、好ましくは50%以上(より好ましくは120%~800%)の値を示すものが使用できる。弾性仕上材が1種の仕上材からなる場合は、当該1種の仕上材の塗膜が上記伸び率を満たすことが好ましく、弾性仕上材が2種以上の仕上材からなる場合は、当該2種以上の仕上材の積層塗膜が上記伸び率を満たすことが好ましい。弾性仕上材としては、上述の仕上材のうち、上記伸び率を満たすものが好ましく使用できる。
【0048】
弾性仕上材の塗装方法としては、特に限定されず、各材料に応じた塗装方法を採用することができる。塗装器具としては、例えば、スプレー、ローラー、コテ、刷毛等を用いることができる。弾性仕上材の塗付け量は、その種類にもよるが、好ましくは0.2~5kg/m2、より好ましくは0.3~4kg/m2である。塗装時には、必要に応じ適宜希釈することもできる。弾性仕上材の塗装、乾燥は、常温(好ましくは0~50℃、より好ましくは5~45℃)の環境下で行うことができる。
【0049】
図2の塗膜形成方法の具体的な一例としては、複数の窯業系サイディングボードが併設され、当該複数の窯業系サイディングボード間の目地部(縦目地及び横目地。いずれも目地幅10mm)に目地材(1液形変性シリコーン系シーリング材)が充填されてなる被塗面に対し、標準状態(気温23℃、相対湿度50%)下にて、
(1)被塗面の全体に下塗材(水性エポキシ樹脂下塗材、塗装時粘度1Pa・s)を、塗付け量0.12kg/m
2でローラー塗装(ウールローラーを使用)する工程、
(2)下塗材の塗装後、10~25分の間に、目地部に塗着した下塗材を、布(ウエス)を用いて均しながら、目地部上の塗着量が約0.05kg/m
2となるまで除する工程、
(3’)下塗材を3時間乾燥させた後、被塗面の全体に仕上材(JIS K5660「つや有り合成樹脂エマルションペイント」に該当する水性アクリルシリコン樹脂塗料、23℃時の伸び率230%)を塗付け量0.3kg/m
2でスプレー塗装し、24時間乾燥させる工程、
を行う方法等が挙げられる。
【0050】
本発明の塗膜形成方法によって形成された塗膜は、被塗面に美観性等を付与することができ、目地部付近における仕上塗膜の耐割れ性等の性能を十分に確保することができる。