(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108477
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】輸液チューブ及び輸液セット
(51)【国際特許分類】
A61M 5/14 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
A61M5/14 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012869
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】幸 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】国重 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】藤井 亮至
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066FF01
(57)【要約】
【課題】輸液治療の安全性を担保しつつ、投与時の薬液の分解を抑制する。
【解決手段】紫外線領域、可視光線領域及び赤外領域のうち、少なくとも一の光線の照射によって分解が促進される薬液が流通する輸液チューブ1において、前記光線を遮断する、もしくは紫外線領域、可視光線領域及び赤外領域のうち、少なくとも一の領域における前記薬液の分解を促進する波長以外の波長のみ透過を許容する材料で構成された薬液分解抑制部10a、10b、21bと、少なくとも一部の可視光を透過する可視光透過部11a、21aを有している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線領域、可視光線領域及び赤外領域のうち、少なくとも一の光線の照射によって分解が促進される薬液が流通する輸液チューブであって、
前記光線を遮断する、もしくは紫外線領域、可視光線領域及び赤外領域のうち、少なくとも一の領域における前記薬液の分解を促進する波長以外の波長のみ透過を許容する材料で構成された薬液分解抑制部と、少なくとも一部の可視光を透過する可視光透過部とを有することを特徴とする輸液チューブ。
【請求項2】
請求項1に記載の輸液チューブにおいて、
柔軟性を有するチューブ部材と、
前記チューブ部材の上流端に接続される点滴筒とを備え、
前記点滴筒を構成する筒状部材の少なくとも一部は、前記可視光透過部であることを特徴とする輸液チューブ。
【請求項3】
請求項2に記載の輸液チューブにおいて、
前記点滴筒を構成する筒状部材は、周方向の全周が前記可視光透過部であることを特徴とする輸液チューブ。
【請求項4】
請求項3に記載の輸液チューブにおいて、
前記薬液分解抑制部は、前記点滴筒を構成する筒状部材における上下方向中央部よりも下側寄りの部分から前記チューブ部材に亘っていることを特徴とする輸液チューブ。
【請求項5】
請求項1に記載の輸液チューブにおいて、
柔軟性を有するチューブ部材と、
前記チューブ部材の中途部に設けられ、当該チューブ部材を潰すことによって流量調整を行う流量調整部材とを備え、
前記チューブ部材における前記流量調整部材よりも上流側の部分には、前記可視光透過部が設けられていることを特徴とする輸液チューブ。
【請求項6】
請求項5に記載の輸液チューブにおいて、
前記チューブ部材は、輸液ポンプにセットされる被セット部を有し、
前記可視光透過部は、前記被セット部に設けられていることを特徴とする輸液チューブ。
【請求項7】
請求項6に記載の輸液チューブにおいて、
前記チューブ部材の下流端には、穿刺針が接続されるコネクタが設けられ、
前記薬液分解抑制部は、前記チューブ部材における下流端から上流側へ向かって前記被セット部の手前までの部分に設けられていることを特徴とする輸液チューブ。
【請求項8】
請求項1に記載の輸液チューブにおいて、
前記可視光透過部の少なくとも一部を覆うカバー部を備え、
前記カバー部は、前記光線を遮断する、もしくは紫外線領域または可視光線領域における前記薬液の分解を促進する波長以外の波長のみ透過を許容する材料で構成されていることを特徴とする輸液チューブ。
【請求項9】
紫外線領域、可視光線領域及び赤外領域のうち、少なくとも一の光線の照射によって分解が促進される薬液が流通するチューブ部材と、点滴筒とを含む輸液セットであって、
前記チューブ部材は、前記光線を遮断する、もしくは紫外線領域、可視光線領域及び赤外領域のうち、少なくとも一の領域における前記薬液の分解を促進する波長以外の波長のみ透過を許容する材料で構成された部分を有し、
前記点滴筒は、少なくとも一部の可視光を透過することを特徴とする輸液セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光の遮断が必要な薬液が流通する輸液チューブ及び輸液セットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばビタミン剤や抗癌剤などの薬剤の中には、可視光や紫外線等の光が照射されることによって分解が促進される薬剤がある。このような薬剤を収容する薬液用バッグとして、特許文献1には、プラスチックフィルムにより構成された1次容器と、遮光性を有する遮光材料からなる2次容器とからなる薬液用バッグが開示されている。遮光材料は、紫外線及び可視光線領域の波長の光を遮光するように構成されている。遮光材料による遮光領域以外の部分は透明性を有する透光領域とされており、この透光領域を介して薬液用バッグ内の薬液の残量を確認できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、光によって分解される薬液を患者の体内に投与する際には、上記特許文献1の薬液用バッグを使用することで投与時における薬液用バッグ内での薬液の分解を抑制することが可能になる。
【0005】
投与時には、薬液用バッグに接続された輸液チューブを介して薬液用バッグ内の薬液が患者に投与されることになるのであるが、輸液チューブは薬液用バッグに接続される上流端から穿刺針に接続される下流端まで全体が透光性を有しているので、光によって分解される薬液が輸液チューブを流通する間に環境光の照射を受けることになり、分解が促進されてしまうおそれがある。
【0006】
そこで、輸液チューブを例えば黒色に着色することが考えられる。しかし、黒色に着色すると、輸液チューブ内を流通する薬液の様子を目視することができなくなり、輸液治療の安全性の観点から好ましくない場合がある。
【0007】
本開示は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、輸液治療の安全性を担保しつつ、投与時の薬液の分解を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、紫外線領域、可視光線領域及び赤外領域のうち、少なくとも一の光線の照射によって分解が促進される薬液が流通する輸液チューブを前提とすることができる。輸液チューブは、前記光線を遮断する、もしくは紫外線領域、可視光線領域及び赤外領域のうち、少なくとも一の領域における前記薬液の分解を促進する波長以外の波長のみ透過を許容する材料で構成された薬液分解抑制部と、少なくとも一部の可視光を透過する可視光透過部とを有している。
【0009】
この構成によれば、紫外線領域、可視光線領域及び赤外領域のうち、少なくとも一の光線の照射によって分解が促進される薬液を投与する際に、当該薬液が輸液チューブ内を流通する間、薬液分解抑制部によって当該薬液の分解が抑制される。輸液チューブ内を流通する薬液の様子は、可視光透過部を介して目視することができ、輸液治療の安全性を担保できる。
【0010】
また、輸液チューブは、柔軟性を有するチューブ部材と、チューブ部材の上流端に接続される点滴筒とを備えていてもよい。この場合、点滴筒を構成する筒状部材の少なくとも一部は、可視光を透過する可視光透過部とすることができる。これにより、点滴筒内を滴下する薬液の様子を外部から目視で観察することができるので、輸液治療の安全性を高めることができる。
【0011】
また、前記点滴筒を構成する筒状部材は、周方向の全周が前記可視光透過部であってもよい。これにより、点滴筒内を滴下する薬液の様子がより一層見えやすくなる。
【0012】
また、前記薬液分解抑制部は、前記点滴筒を構成する筒状部材における上下方向中央部よりも下側寄りの部分から前記チューブ部材に亘っていてもよい。これにより、薬液分解抑制部を広範囲に設けることができ、薬液の分解抑制効果が高まる。
【0013】
また、輸液チューブは、チューブ部材の中途部に設けられ、当該チューブ部材を潰すことによって流量調整を行う流量調整部材を備えていてもよい。この場合、チューブ部材における流量調整部材よりも上流側の部分に、可視光を透過する可視光透過部を設けることができる。
【0014】
また、可視光透過部は、輸液ポンプにセットされる被セット部に設けられていてもよい。すなわち、輸液ポンプは、光学式の気泡検出センサを有している場合があるが、可視光透過部が輸液ポンプにセットされる被セット部に設けられていることで、気泡検出センサによる気泡検出を高精度に行うことができる。
【0015】
また、チューブ部材の下流端には、穿刺針が接続されるコネクタが設けられていてもよい。この場合、薬液分解抑制部は、チューブ部材における下流端から上流側へ向かって被セット部の手前までの部分に広範囲に設けることができる。
【0016】
また、輸液チューブは、前記可視光透過部の少なくとも一部を覆うカバー部を備えていてもよい。前記カバー部は、前記光線を遮断する、もしくは紫外線領域、可視光線領域及び赤外領域のうち、少なくとも一の領域における前記薬液の分解を促進する波長以外の波長のみ透過を許容する材料で構成することができる。
【0017】
また、紫外線領域、可視光線領域及び赤外領域のうち、少なくとも一の光線の照射によって分解が促進される薬液が流通するチューブ部材と、点滴筒とを含む輸液セットを前提とすることもできる。輸液セットの前記チューブ部材は、前記光線を遮断する、もしくは紫外線領域、可視光線領域及び赤外領域のうち、少なくとも一の領域における前記薬液の分解を促進する波長以外の波長のみ透過を許容する材料で構成された部分を有していてもよい。前記点滴筒は、少なくとも一部の可視光を透過することができるものであるので、薬液の様子を外部から確認できる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、光線を遮断する、もしくは紫外線領域、可視光線領域及び赤外領域のうち、少なくとも一の領域における薬液の分解を促進する波長以外の波長のみ透過を許容する材料で構成された薬液分解抑制部と、可視光透過部とを有しているので、輸液治療の安全性を担保しつつ、投与時の薬液の分解を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る輸液チューブの使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る輸液チューブ1の使用状態を示す図である。輸液チューブ1は、薬液用バッグ100に収容された薬液を患者に投与する際に使用される医療器具である。薬液用バッグ100には、紫外線領域、可視光線領域及び赤外領域のうち、少なくとも一の光線の照射によって分解が促進される薬剤が収容されている。このような薬剤としては、例えばビタミン剤や抗癌剤等を挙げることができるが、これらに限られるものではなく、紫外線領域、可視光線領域及び赤外領域のうち、少なくとも一の光線の照射によって分解が促進される各種薬剤であってもよい。また、例えば、複数種の薬液を混合したものが薬液用バッグ100に収容されていてもよい。
【0022】
図1では、輸液ポンプ101を使用することにより、薬液の単位時間あたりの投与量が所定量となるようにしている。輸液ポンプ101は、従来から周知の構造のものであり、図示しないがポンプ機構の他、気泡を検出する光学式の気泡検出センサ等も備えている。光学式の気泡検出センサは、発光素子と受光素子とを備えており、発光素子から照射された可視光をチューブに照射して当該チューブを透過させて受光素子で受光し、受光量に基づいて気泡の有無を検出するように構成されている。
【0023】
輸液チューブ1は、チューブ部材10と、チューブ部材10の上流端に接続される点滴筒20と、チューブ部材10の中途部に設けられ、当該チューブ部材10を潰すことによって流量調整を行う流量調整部材30と、コネクタ40とを備えている。チューブ部材10は、柔軟性を有する樹脂材で構成されている。チューブ部材10及び点滴筒20を含む輸液セットが構成されている。
【0024】
図2に示すように、点滴筒20は、上下方向に延びる有底の筒状部材21と、筒状部材21の上端部を閉塞する閉塞部材22と、筒状部材21内に連通する管部材23とを備えている。管部材23は閉塞部材22を上下方向に貫通しており、下端部が筒状部材21内における上下方向中央部よりも上側寄りに位置付けられている。管部材23の上側部分は、先鋭形状とされており、
図1に示すように薬液用バッグ100の下部に差し込まれて当該薬液用バッグ100内と連通するようになっている。
【0025】
チューブ部材10における点滴筒20よりも下流側の部分には、流量調整部材30が設けられている。流量調整部材30は、ローラクランプ、クレンメ等と呼ばれるものであり、従来から周知の構造のものであることから詳細な説明は省略するが、クランプ本体31と、ローラー32とを備えている。クランプ本体31は、チューブ部材10の長手方向に長い形状の2枚の側板部33を有しており、これら側板部33の間にローラー32が配置されて該側板部33の長手方向に転動するように該側板部33に支持されている。
図2において仮想線で示す位置にあるローラー32は、チューブ部材10を開放状態にしており、一方、実線で示す位置にあるローラー23は、チューブ部材10を閉塞状態にしている。閉塞状態では、ローラー23の外周面がチューブ部材10を強く押し潰している。ローラー23によるチューブ部材10の押し潰し量を変更することで、薬液の流量をほぼ無段階に調整できる。尚、流量調整部材30は省略してもよい。
【0026】
コネクタ40は、チューブ部材10の下流端部に設けられている。コネクタ40には、患者に穿刺される穿刺針50の基端側が脱着可能に接続される。穿刺針50と、輸液チューブ1と、薬液用バッグ100とを合わせて輸液セットと呼ぶこともできる。
【0027】
薬液用バッグ100内の薬液は、点滴筒20の管部材23に流入して当該管部材23の下端部から筒状部材21内に滴下する。筒状部材21内に滴下した薬液は、チューブ部材10を流通して穿刺針50まで流れた後、穿刺針50を介して患者に投与される。投与量は、輸液ポンプ101によって調整されるので、投与時には、流量調整部材30による流量の調整は不要であるが、輸液ポンプ101からチューブ部材10が取り外される前には、流量調整部材30によってチューブ部材10を閉塞しておく。また、輸液ポンプ101を用いることなく、薬液を患者に投与してもよく、この場合、輸液ポンプ101を省略し、流量調整部材30によって薬液の流量を調整する。
【0028】
輸液チューブ1は、前記光線を遮断する、もしくは紫外線領域、可視光線領域及び赤外領域のうち、少なくとも一の領域における前記薬液の分解を促進する波長以外の波長のみ透過を許容する材料で構成された薬液分解抑制部10a、10b、21bと、可視光を透過する可視光透過部11a、21aとを有している。本実施形態では、点滴筒20を構成する筒状部材21の少なくとも一部が可視光透過部21aとされ、残りの部分が薬液分解抑制部21bとされている。具体的には、筒状部材21における上下方向中央部よりも下側寄りの部分は薬液分解抑制部21bとされ、筒状部材21における薬液分解抑制部21bよりも上側の部分が可視光透過部21aとされている。可視光透過部は、チューブ部材10の長手方向の一部にのみ設けられていてもよいし、チューブ部材10の周方向の一部にのみ設けられていてもよい。
【0029】
図2では、可視光透過部21aと薬液分解抑制部21bとの境界線を符号L1で示しており、境界線L1よりも上側部分は、周方向の全周が可視光透過部21aとされ、一方、境界線L1よりも下側部分は、周方向の全周が薬液分解抑制部21bとされている。境界線L1は、管部材23の下端部よりも下に位置しており、管部材23の下端部に生成される液滴が可視光透過部21aを介して外部から目視できるようになっている。尚、可視光透過部21aは、筒状部材21の周方向の一部にのみ設けられていてもよい。
【0030】
チューブ部材10は、輸液ポンプ101にセットされる被セット部11を有している。被セット部11は、輸液ポンプ101が有する気泡検出センサ内に配置される部分を含んでいる。被セット部11は、ポンプ機構によって押圧される部分を含んでいてもよい。
図2に示す境界線L2と境界線L3は、チューブ部材10の被セット部11の範囲を示すものである。境界線L2は、点滴筒20から下流側に離れた所に位置付けられている。境界線L3は、境界線L2から更に下流側に離れた所に位置付けられている。この実施形態では、境界線L2と境界線L3との間の部分が被セット部11とされている。境界線L3よりも下流側に流量調整部材30が配置されている。
【0031】
被セット部11には、可視光透過部11aが設けられている。つまり、チューブ部材10における流量調整部材30よりも上流側の部分に可視光透過部11aが設けられることになる。可視光透過部11aは、被セット部11の長手方向の一部にのみ設けられていてもよいし、被セット部11の長手方向の全体に設けられていてもよい。可視光透過部11aが輸液ポンプ101の気泡検出センサ内に配置されるように、チューブ部材10が輸液ポンプ101にセットされる。
【0032】
チューブ部材10における被セット部11よりも上流側の部分は、薬液分解抑制部10aとされている。すなわち、境界線L2からチューブ部材10の上流端までが薬液分解抑制部10aとされている。チューブ部材10の上流端は点滴筒20の筒状部材21の下端部に接続されているので、薬液分解抑制部21b、10aは、点滴筒20を構成する筒状部材21における上下方向中央部よりも下側寄りの部分からチューブ部材10における上流側の部分に亘って設けられることになる。
【0033】
チューブ部材10における境界線L3からコネクタ40が接続される部分までは、薬液分解抑制部10bとされている。すなわち、流量調整部材30が設けられる部分は、薬液分解抑制部10bとされており、また、薬液分解抑制部10bは、チューブ部材10における下流端から上流側へ向かって被セット部11の手前までの部分に設けられることになる。
【0034】
尚、輸液ポンプ101を使用しない場合には、被セット部11を省略することができ、この場合、チューブ部材10の上流端から下流端まで薬液分解抑制部とすることができる。
【0035】
薬液分解抑制部21b、10a、10bは、薬液が流通可能な空間を区画形成する部分であり、遮光性を有する遮光材料で構成することができる。遮光材料は、紫外線領域、可視光線領域及び赤外領域のうち、少なくとも一の領域の一部の波長のみ透過を許容するものであってもよい。例えば、薬品の薬能が低下しない程度の分解であれば許容されるので、その程度の分解を引き起こす一部の波長のみが遮光材料を透過しても実用上問題とはならない。
【0036】
上記遮光材料としては、例えば黒色や紺色等の濃い色に着色された樹脂材、濃い色の顔料や無機微粒子等が分散した樹脂材、アルミニウム層等の金属層を有する樹脂材、上記紫外線領域または可視光線領域の光線を反射する樹脂材等を挙げることができ、これらのうち、1種または任意の複数種が組み合わされて構成されていてもよい。着色の方法は特に限定されないが、例えば染料を樹脂材に混合することによって着色してもよいし、インクを用いた印刷によって着色してもよい。印刷の方法は、例えばスクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ宇印刷等を挙げることができる。
【0037】
無機微粒子としては、例えば硫酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、シリカ、炭酸マグネシウム等のなかから選ばれる1種または任意の2種以上を組み合わせて用いることができる。金属層を有する樹脂材としては、例えばアルミニウム箔が積層された樹脂材や、アルミニウム蒸着された樹脂材を挙げることができる。紫外線を遮光する場合には、例えば紫外線吸収剤、紫外線遮光剤等を含有させた材料で薬液分解抑制部21b、10a、10bを構成することができる。薬液分解抑制部21b、10a、10bは、上記紫外線領域の光線、可視光線領域及び赤外領域のうち、任意の2つ以上の領域の光線を遮断するように構成されていてもよい。尚、薬液分解抑制部21b、10a、10bは、紫外線領域、可視光線領域及び赤外領域のうち、少なくとも一の光線の透過率が0%でなくてもよく、内部に収容されている薬剤の分解が殆ど起こらない程度の光線の透過率(例えば1~10%程度)を有していてもよい。また、赤色領域(波長700nm)の光線で分解し難い薬剤の場合には、薬液分解抑制部21b、10a、10bが例えば褐色に着色されていてもよい。
【0038】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、輸液チューブ1が薬液分解抑制部21b、10a、10bを有しているので、投与中に、分解を促進する光線が薬液に殆ど届かなくなり、薬液の分解が抑制される。また、点滴筒20に可視光透過部21aが設けられているので、流量の確認を外部から目視で行うことができ、輸液治療を安全に行うことができる。さらに、輸液ポンプ101を使用する場合には、チューブ部材10の被セット部11に可視光透過部11aが設けられているので、光学式の気泡検出センサを使用した気泡検出を行うことができ、輸液治療を安全に行うことができる。
【0039】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。例えばチューブ部材10及び点滴筒20を含む輸液セットの場合、チューブ部材10は、上述したように、前記光線を遮断する、もしくは紫外線領域、可視光線領域及び赤外領域のうち、少なくとも一の領域における前記薬液の分解を促進する波長以外の波長のみ透過を許容する材料で構成された部分を有しているのが好ましい。また、輸液セットを構成している点滴筒20は、少なくとも一部の可視光を透過する可視光透過部で構成されているので、薬液の様子を外部から確認できる。
【0040】
また、可視光透過部11a、21aの少なくとも一部を覆うカバー部を備えていてもよい。このカバー部は、可視光透過部11a、21aに対して着脱可能に取り付けられている。更に、カバー部は、前記薬剤分解抑制部と同様に、前記光線を遮断する、もしくは紫外線領域、可視光線領域及び赤外領域のうち、少なくとも一の領域における前記薬液の分解を促進する波長以外の波長のみ透過を許容する材料で構成されているので、カバー部を可視光透過部11a、21aに取り付けることで、薬剤の分解を抑制できる。薬剤の様子を確認する際にはカバー部を一時的に取り外せばよい。カバー部は、可視光透過部11a、21aの全体を覆うように形成されていてもよいし、可視光透過部11a、21aの一部のみ覆うように形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上説明したように、本発明に係る輸液チューブは、例えばビタミン剤や抗癌剤などのように光の遮断が必要な薬液を患者に投与する場合に利用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 輸液チューブ
10 チューブ部材
10b 薬液分解抑制部
11 被セット部
11a 可視光透過部
20 点滴筒
21 筒状部材
21a 可視光透過部
21b 薬液分解抑制部
30 流量調整部材
40 コネクタ