IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤンマーホールディングス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-圃場作業機 図1
  • 特開-圃場作業機 図2
  • 特開-圃場作業機 図3
  • 特開-圃場作業機 図4
  • 特開-圃場作業機 図5
  • 特開-圃場作業機 図6A
  • 特開-圃場作業機 図6B
  • 特開-圃場作業機 図7
  • 特開-圃場作業機 図8A
  • 特開-圃場作業機 図8B
  • 特開-圃場作業機 図9
  • 特開-圃場作業機 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108478
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】圃場作業機
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20240805BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20240805BHJP
【FI】
A01B69/00 303A
A01B69/00 303T
B60W60/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012870
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 良平
【テーマコード(参考)】
2B043
3D241
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB19
2B043BA02
2B043BA09
2B043BB06
2B043DA01
2B043DA17
2B043EA11
2B043EB05
2B043EB12
2B043EB15
2B043ED12
3D241BA26
3D241BA60
3D241CA20
3D241CC17
3D241CD07
3D241CE04
3D241DB01Z
3D241DB05Z
3D241DB10Z
(57)【要約】
【課題】自動走行可能に設けられる圃場作業機の安全性を向上することができる技術を提供する。
【解決手段】例示的な圃場作業機は、圃場を自動走行可能に設けられる。圃場作業機は、機体に配置される運転座席と、前記運転座席に設けられるアームレストと、前記自動走行に関わる制御を行う制御部と、を備える。前記制御部は、前記機体上の作業者の、前記アームレストに対する所定動作を検知して前記自動走行を禁止する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を自動走行可能に設けられる圃場作業機であって、
機体に配置される運転座席と、
前記運転座席に設けられるアームレストと、
前記自動走行に関わる制御を行う制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記機体上の作業者の、前記アームレストに対する第1動作を検知して前記自動走行を禁止する、圃場作業機。
【請求項2】
前記アームレストは、使用位置と非使用位置とに姿勢変更可能に設けられ、
前記第1動作には、前記作業者が前記アームレストを前記使用位置から前記非使用位置に変更する動作が含まれる、請求項1に記載の圃場作業機。
【請求項3】
前記機体に支持される施肥装置を備え、
前記制御部は、前記作業者の前記施肥装置に対する第2動作を検知して前記自動走行を禁止する、請求項1又は2に記載の圃場作業機。
【請求項4】
前記施肥装置は、肥料の供給量を設定する供給量設定部を有し、
前記第2動作には、前記作業者が前記供給量設定部を操作する動作が含まれる、請求項3に記載の圃場作業機。
【請求項5】
前記施肥装置は、開閉可能な蓋体を有し、
前記第2動作には、前記作業者が前記蓋体を閉状態から開状態にする動作が含まれる、請求項3に記載の圃場作業機。
【請求項6】
前記作業者の前記運転座席への着座を検知する着座センサを備え、
前記制御部は、前記作業者が前記運転座席への着座状態から非着座状態となったことを検知して前記自動走行を禁止する、請求項1又は2に記載の圃場作業機。
【請求項7】
前記着座センサは、撮影装置、感圧センサ、および、光センサのうち少なくともいずれか1つを含む、請求項6に記載の圃場作業機。
【請求項8】
予備の苗を載せる予備苗載せ台を備え、
前記制御部は、前記作業者の前記予備苗載せ台に対する第3動作を検知して前記自動走行を禁止する、請求項1又は2に記載の圃場作業機。
【請求項9】
前記予備苗載せ台は、台上の苗マットの有無を検知する予備苗センサを有し、
前記第3動作には、前記作業者が前記予備苗載せ台から前記苗マットを取り出す動作が含まれる、請求項8に記載の圃場作業機。
【請求項10】
苗載せ台を有する植付装置を備え、
前記植付装置は、前記苗載せ台上の苗の残量を検知する苗残量検出センサを有し、
前記制御部は、前記苗載せ台上の苗が所定量以下であると判定した場合に、前記自動走行を禁止する、請求項1又は2に記載の圃場作業機。
【請求項11】
前記制御部は、前記アームレストが前記使用位置であることを前記自動走行の開始条件とする、請求項2に記載の圃場作業機。
【請求項12】
前記使用位置にある前記アームレストを前記非使用位置へと付勢する付勢部材を備える、請求項11に記載の圃場作業機。
【請求項13】
前記制御部は、前記供給量設定部が非操作状態であることを前記自動走行の開始条件とする、請求項4に記載の圃場作業機。
【請求項14】
前記制御部は、前記蓋体が閉状態であることを前記自動走行の開始条件とする、請求項5に記載の圃場作業機。
【請求項15】
前記制御部は、前記作業者の前記運転座席への着座を前記自動走行の開始条件とする、請求項6に記載の圃場作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
測位ユニットによって計測された位置情報に基づき、目標走行経路に沿うように操向ステアリングを自動操舵させる自動操舵機能を備える作業機が知られる(例えば特許文献1参照)。特許文献1には、自動操舵解除条件の例示として、運転者がステアリングホイールから手を離している状態から再度握ることが挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-011024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の構成では、自動操舵中に運転者がステアリングホイールを握ると、自動操舵が停止される。このために、自動操舵を行う場合、運転者はステアリングホイールを握ることができず、姿勢が不安定になる可能性がある。この点を考慮して、運転座席にアームレストを設けることが考えられる。アームレストが設けられることより、運転者は、アームレストにつかまる等して姿勢を安定させることができる。
【0005】
ただし、アームレストが設けられる構成においては、例えば苗継ぎ作業を行い易くする等の目的で、アームレストを跳ね上げることができる構成とすることが便利である。このような構成では、アームレストが跳ね上げられた状態で自動操舵が行われると、運転者の姿勢が不安定になることが懸念される。また、自動操舵を緊急停止したい場合に、運転者は、アームレストを握った状態からステアリングホイールを操作する必要があり、緊急停止されるまでに時間を要することが懸念される。
【0006】
本発明は、自動走行可能に設けられる圃場作業機の安全性を向上することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の例示的な圃場作業機は、圃場を自動走行可能に設けられる圃場作業機であって、機体に配置される運転座席と、前記運転座席に設けられるアームレストと、前記自動走行に関わる制御を行う制御部と、を備える。前記制御部は、前記機体上の作業者の、前記アームレストに対する所定動作を検知して前記自動走行を禁止する。
【発明の効果】
【0008】
例示的な本発明によれば、自動走行可能に設けられる圃場作業機の安全性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】田植機の概略の構成を示す側面図
図2】田植機の概略の構成を示す平面図
図3】田植機の概略の構成を示すブロック図
図4】田植機における手動走行モードから自動走行モードへの移行処理の一例を示すフローチャート
図5】田植機における自動走行モードから手動走行モードへの移行処理の一例を示すフローチャート
図6A】アームレストの構成を説明するための図
図6B】アームレストの構成を説明するための図
図7】田植機におけるアームレストに関わる走行モードの制御例を示すフローチャート
図8A】変形例に係るアームレストの構成を説明するための図
図8B】変形例に係るアームレストの構成を説明するための図
図9】苗残量検出センサを用いた走行モードの制御例を示すフローチャート
図10図9における「N回」の決め方を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。また、本明細書では、図1に示す圃場作業機1が走行する走行平面Sに対して直交する方向を上下方向とし、走行平面Sに対して圃場作業機1側が上として上下を定義する。また、圃場作業機1が直進走行する方向を前後方向とし、運転座席19に対して操向ハンドル20が前側として前後を定義する。また、上下方向および前後方向と直交する方向を左右方向とし、後方から前方に向かって右となる側を右、左となる側を左として左右を定義する。なお、これらの方向は単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定する意図はない。
【0011】
また、本実施形態では、圃場作業機1は田植機である。以下、圃場作業機1のことを田植機1と記載する。ただし、本発明の圃場作業機は、田植機以外であってもよい。圃場作業機は、例えば、コンバイン又はトラクタであってよい。また、圃場作業機は、種子を圃場に播種しながら走行する播種機、肥料を圃場に施肥しながら走行する施肥機、又は、薬剤を圃場に散布しながら走行する薬剤散布機等であってもよい。
【0012】
<1.田植機の構成>
図1は、本発明の実施形態に係る田植機1の概略の構成を示す側面図である。図1は、詳細には左側面図である。図2は、本発明の実施形態に係る田植機1の概略の構成を示す平面図である。図2は、詳細には上面図である。
【0013】
田植機1は、圃場を自動走行可能に設けられる。自動走行とは、田植機1が備える制御部50(後述の図3参照)により走行に関する装置が自動的に制御される状態のことで、予め定められた経路に沿うように少なくとも操舵が自律的に行われることを意味する。自動走行は、操舵に加え、例えば車速の制御が自律的に行われる構成であってもよい。車速の制御には、田植機1の走行を停止する制御が含まれてよい。
【0014】
田植機1は、圃場内を走行しながら、圃場の地面に苗を植え付ける植付作業を行う。図1及び図2に示されるように、田植機1は、機体11と、機体11の後方に配置される作業装置12とを備える。
【0015】
機体11は、機体フレーム13と、機体フレーム13を支持し左右方向に互いに間隔を隔てて配置される一対の走行部14とを備える。各走行部14は、前輪14aおよび後輪14bを含む。機体フレーム13の前側には、ボンネット15が配置される。ボンネット15の内部には、エンジン16が設けられる。エンジン16が発生させた動力は、機体フレーム13の下方に配置されるミッションケース17を介して前輪14a及び後輪14bの少なくとも一方に伝達される。エンジン16が発生させた動力は、ミッションケース17と、機体フレーム13の後方に配置されたパワーテイクオフ軸(以下、「PTO軸18」と記載する)とを介して、作業装置12にも伝達される。
【0016】
機体11は、運転座席19と、複数の操作部材とをさらに備える。すなわち、田植機1は、機体11に配置される運転座席19を備える。運転座席19には、機体11に搭乗する作業者が座ることができる。運転座席19は、機体11の前後方向において前輪14aと後輪14bとの間に配置される。運転座席19には、アームレスト191が設けられる。すなわち、田植機1は、運転座席19に設けられるアームレスト191を備える。アームレスト191の詳細については後述する。複数の操作部材には、操向ハンドル20と、変速操作ペダル21と、主変速レバー22と、植付クラッチレバー23とが含まれる。
【0017】
操向ハンドル20は、作業者が田植機1を操舵するためのハンドルである。変速操作ペダル21は、作業者が田植機1の走行速度を調節するためのペダルである。主変速レバー22は、例えば、「前進」、「後進」、「停止」等を作業者が選択可能に構成されたレバーである。主変速レバー22が「前進」位置に操作されると、田植機1を前進させる方向に車輪が回転するように動力が伝達される。一方、主変速レバー22が「後進」位置に操作されると、田植機1を後進させる方向に車輪が回転するように動力が駆動される。主変速レバー22が「停止」位置に操作されると、車輪に対する動力の伝達が遮断される。なお、「前進」は、圃場内を走行するための「低速」と、圃場外を走行するための「高速」とに分かれていてもよい。植付クラッチレバー23は、植付クラッチがPTO軸18(すなわち植付装置)へ動力を伝達する伝達状態と、動力を伝達しない遮断状態との切り替えを、作業者が行うためのレバーである。
【0018】
作業装置12は、詳細には、植付装置24と施肥装置25とを含む。すなわち、田植機1は、植付装置24と施肥装置25とを備える。
【0019】
植付装置24は、昇降リンク機構26を介して機体11の後部に連結される。昇降リンク機構26は、トップリンク26a及びロワーリンク26bを含む平行リンクにより構成される。昇降リンク機構26において、ロワーリンク26bには、昇降装置の昇降シリンダ27が連結されている。昇降装置は、昇降シリンダ27を伸縮させることによって、植付装置24を機体11に対して上下に昇降させることができる。
【0020】
植付装置24は、苗載せ台28を有する。植付装置24は、植付入力ケース部29と、複数の植付ユニット30と、複数のフロート31とを有する。植付装置24は、各植付ユニット30に対して苗を苗載せ台28から順次供給し、苗の植付けを連続的に行う。
【0021】
各植付ユニット30は、植付伝動ケース部32と回転ケース部33とを有する。植付伝動ケース部32には、PTO軸18及び植付入力ケース部29を介して動力が伝達される。回転ケース部33は、植付伝動ケース部32に回転可能に取り付けられる。回転ケース部33は、植付伝動ケース部32の左右方向の両側に配置される。各回転ケース部33の左右方向の一方側には、2つの植付爪34が取り付けられる。2つの植付爪34は、田植機1の前後方向に並べられる。2つの植付爪34は、回転ケース部33の回転に伴い変位する。2つの植付爪34が変位することにより、1条分の苗の植付が行われる。
【0022】
苗載せ台28は、複数の植付ユニット30の前上方に配置される。苗載せ台28は、苗マットを載置可能である。苗載せ台28は、当該苗載せ台に載置された苗マットの苗を、各植付爪34の組(上述の2つの植付爪34が1組の植付爪を構成)に対して供給可能である。苗載せ台28には、植付爪34の組ごと(すなわち1条ごと)に所定数の苗マットを載置することが可能である。なお、本実施形態の苗載せ台28は、一例として、6条植え用の苗載せ台である。苗載せ台28には、6つの植付爪34の組ごとに所定数(例えば2つ等)の苗マットを載置することが可能である。
【0023】
具体的には、苗載せ台28は、左右方向に往復するように横送り移動可能に(即ち横方向にスライド可能に)構成される。換言すると、植付装置24には、苗載せ台28を横送り移動する苗台横送り機構が設けられる。また、苗載せ台28は、苗載せ台28の往復移動端で苗マットを間欠的に下方に縦送り搬送可能に構成される。換言すると、植付装置24には、苗載せ台28上の苗マットを縦送り搬送させる苗縦送り機構が設けられる。苗台横送り機構および苗縦送り機構は、公知の構成であってよい。
【0024】
フロート31は、植付装置24の下部に揺動可能に設けられる。フロート31の下面が圃場表面に接触することにより、植付装置24の植付姿勢が圃場表面に対して安定する。
【0025】
苗植え作業においては、移動の間、苗台横送り機構にて苗載せ台28を左右方向に横送り移動させながら、苗マットの、苗取出口(苗載せ台28の下端に設けられる)付近の苗一株分が植付爪34に掻き取られる。そして、当該掻き取られた苗1株分が、フロート31にて整地された田面(圃場面)に植え付けられる。苗台横送り機構によって横送り移動された苗載せ台28が左右方向の移動端に到達すると、苗縦送り機構によって苗縦送りベルト35(図2参照)が作動され、苗載せ台28上の苗マットが苗取出し方向(後方斜め下向き)に搬送される。苗縦送りベルト35による苗縦送り動作が完了して苗縦送りベルト35が停止すると、再び苗台横送り機構によって苗載せ台28が左右方向の反対側の移動端に向けて横送り移動される。苗植え作業時には、当該動作が繰り返される。
【0026】
施肥装置25は、運転座席19の後方の機体フレーム13上に配置される。すなわち、田植機1は、機体11に支持される施肥装置25を備える。施肥装置25は、左右方向に複数並ぶ施肥ユニット(不図示)を有する。施肥装置25は、開閉可能な蓋体25aを有する。本体部25bの上面部分に配置される蓋体25aが開けられることにより、本体部25bの内部に配置される施肥ユニットが露出する。各施肥ユニットは、粒剤の肥料を収容するホッパと、当該ホッパから所定の量の粒剤を供給する供給装置と、供給装置の下部に連通されるホースと、を有する。各ホースの他端は、植付装置24の各条の植付位置の側方まで延設される。施肥ユニットの左右一側にはファン36が設けられ、当該ファン36からの送風がホース内に送られる。ホース内に送られた送風によって供給装置から供給された粒剤は、植付位置の近傍に搬送され、圃場へ排出される。
【0027】
機体11の前側には、予備苗載せ台37が配置される。すなわち、田植機1は、予備の苗を載せる予備苗載せ台37を備える。詳細には、予備苗載せ台37は、機体11の前側において左右に設けられる。また、予備苗載せ台37は、左右のそれぞれに複数設けられる。予備苗載せ台37は、ボンネット15の左右方向外側に配置される。予備苗載せ台37は、予備の苗マットを収容した苗箱を搭載可能である。作業者は、苗載せ台28の苗マットがなくなると、予備苗載せ台37の苗マットを苗載せ台28に移す。
【0028】
なお、左右の予備苗載せ台37の支持フレーム37aは、上下方向及び左右方向に延びる連結フレーム38によって連結される。連結フレーム38の左右方向の中央に、筐体39が設けられる。筐体39の内部には、測位アンテナ40、慣性計測装置41、及び、通信アンテナ42が配置される。
【0029】
測位アンテナ40は、衛星測位システム(GNSS;Global Navigation Satellite System)を構成する測位衛星からの電波(測位信号)を受信する。慣性計測装置41は、3軸の角速度センサと3軸の加速度センサとを含む。通信アンテナ42は、例えば、作業者が田植機1に持ち込んだり、田植機1から持ち去ったりすることができる携帯通信端末(不図示)と無線通信を行うためのアンテナである。無線通信には、Wi-Fi(登録商標)等の無線LAN(Local Area Network)及びBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信等が利用されてよい。携帯通信端末は、必須の構成でなく、無くてもよい。すなわち、通信アンテナ42は、必須の構成でなく、無くてもよい。また、田植機1には、携帯電話回線及びインターネットを利用した通信を行うための携帯通信用のアンテナが設けられてもよい。前述の携帯通信端末が、携帯電話に利用されてよい。
【0030】
図3は、田植機1の概略の構成を示すブロック図である。なお、図3においては、実施形態の特徴を説明するために必要な構成要素が示されており、一般的な構成要素の記載は省略されている。
【0031】
図3に示されるように、田植機1は制御部50を備える。制御部50は、田植機1における動作全体の制御を広く行う。本実施形態において、制御部50は、自動走行に関わる制御を行う。
【0032】
制御部50は、例えば、演算装置、入出力部、および、記憶部51を含んで構成されるコンピュータである。演算装置は、プロセッサ又はマイクロプロセッサ等である。記憶部51は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)のような主記憶装置である。記憶部51は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)のような補助記憶装置をさらに含んでもよい。記憶部51には、各種のプログラム及びデータ等が記憶されている。演算装置は、各種のプログラムを記憶部51から読み出して実行する。
【0033】
上記のハードウェアとソフトウェアとの協働により、制御部50を、走行モード制御部52、走行制御部53、作業装置制御部54、及び、報知制御部55として動作させることができる。制御部50は、1つのハードウェアで構成されてもよいし、互いに通信可能な複数のハードウェアで構成されてもよい。
【0034】
なお、制御部50が備える各機能部52~55は、上述のように、演算装置にプログラムを実行させること、すなわちソフトウェアにより実現されてよいが、他の手法により実現されてもよい。各機能部52~55は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いて実現されてもよい。すなわち、各機能部52~55は、専用のIC等を用いてハードウェアにより実現されてもよい。また、各機能部52~55は、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現されてもよい。また、各機能部52~55は、概念的な構成要素である。1つの構成要素が実行する機能が、複数の構成要素に分散されてよい。また、複数の構成要素が有する機能が1つの構成要素に統合されてもよい。
【0035】
制御部50には、上記の慣性計測装置41に加え、位置取得部61、自動走行操作部62、操舵アクチュエータ63、供給量設定部64、報知部65、および、各種のセンサが電気的に接続される。各種のセンサには、車速センサ71、舵角センサ72、植付クラッチセンサ73、苗残量検出センサ74、予備苗センサ75、着座センサ76、アームレスト位置検出センサ77、および、蓋体センサ78が含まれる。
【0036】
位置取得部61は、測位アンテナ40が測位衛星から受信した測位信号を用いて、田植機1の位置を例えば緯度及び経度の情報として取得する。位置取得部61は、例えば、図示しない基準局からの測位信号を適宜の方法で受信した上で、公知のRTK-GNSS(Real Time Kinematic GNSS)法を利用して測位を行ってよい。基準局は、圃場周辺の既知位置に設置される。また、例えば、位置取得部61は、DGNSS(Differential GNSS)法を利用して測位を行ってもよい。また、例えば、位置取得部61は、無線LAN等の電波強度に基づく位置取得、又は、慣性計測装置41の計測結果を用いた慣性航法による位置取得等を行ってもよい。
【0037】
自動走行操作部62は、自動走行のオンオフを可能とする操作部を含む。当該操作部は、例えば、ボタン、レバー、ダイヤル、又は、タッチパネル等で構成されてよい。本実施形態では、自動走行操作部62は、田植機1に設置される。ただし、自動走行操作部62は、上述した携帯通信端末に設けられてもよい。すなわち、自動走行操作部62は、田植機1から離れた位置で操作可能に設けられてもよい。
【0038】
操舵アクチュエータ63は、操向ハンドル20の自動操舵を可能とする。操舵アクチュエータ63は、詳細にはモータ(ステアリングモータ)であってよい。モータは、操向ハンドル(ステアリングホイール)20が取り付けられるステアリングシャフト(不図示)にギア機構(不図示)を介して連結される。モータは、回転方向、回転速度、および、回転角度等を制御可能なモータである。モータの回転軸が回転すると、ギア機構を介して動力が伝達されるために、ステアリングシャフトが自動的に回転する。すなわち、モータを用いて、操向ハンドル20を自動操舵することができる。
【0039】
供給量設定部64は、施肥装置25における肥料の供給量を設定するために設けられる。すなわち、施肥装置25は、肥料の供給量を設定する供給量設定部64を有する。供給量設定部64は、例えば、施肥装置25を構成する本体部25bやその近傍に配置されてよい。また、供給量設定部64は、例えば、操向ハンドル20や、その周辺に配置されてもよい。
【0040】
報知部65は、制御部50の制御下において、警告等の作業者に知らせるべき事項を報知する手段である。報知部65は、例えば、ブザー等の音発生手段、スピーカ等の音声発生手段、モニタ等の表示手段、警告灯等の発光手段、メール等を配信する通信手段等であってよい。報知部65は、これらの手段の少なくとも一つを含む構成であってよい。
【0041】
車速センサ71は、田植機1の車速を測定する。車速センサ71は、前輪14aの車軸等に設けられる。車速センサ71が前輪14aの車軸に設けられた場合、車速センサ71は、前輪14aの車軸の回転に応じたパルスを発生させる。車速センサ71で得られた測定結果は、制御部50へ出力される。
【0042】
舵角センサ72は、前輪14aの舵角を測定する。舵角センサ72は、例えば、前輪14aのキングピンに設けられる。ただし、舵角センサ72は、操向ハンドル20等に設けられてもよい。舵角センサ72で得られた測定結果は、制御部50へ出力される。
【0043】
植付クラッチセンサ73は、植付クラッチレバー23の位置または操作を検知する。植付クラッチセンサ73で得られた検知結果は、制御部50へ出力される。制御部50は、植付クラッチセンサ73の検出結果に基づいて、植付装置24が植付作業を行っているか否かを特定できる。なお、制御部50は、植付クラッチレバー23ではなく、別の部材の状態(例えば、植付クラッチの下流にあるPTO軸18が回転しているか否か)に基づいて、植付作業を行っているか否かを特定してもよい。
【0044】
苗残量検出センサ74は、苗載せ台28に載置される苗の残量を検出する。苗残量検出センサ74は、残量を直接的に検出するセンサであっても、間接的に検出するセンサであってもよい。苗残量検出センサ74は、苗残量に関する検出結果を制御部50へ出力する。苗の残量は、例えば苗の重量で与えられてもよく、この場合、苗残量検出センサ74は重量センサであってよい。なお、本実施形態では、苗載せ台28は複数条植え用の苗載せ台である。このために、苗残量検出センサ74は、条ごとに苗の残量を検出できるように設けられることが好ましい。苗残量検出センサ74は、複数設けられてよい。
【0045】
本実施形態では、苗残量検出センサ74は植付装置24に設けられる。すなわち、植付装置24は、苗載せ台28上の苗の残量を検出する苗残量検出センサ74を有する。植付装置24が有する苗残量検出センサ74は、重量センサとは異なるセンサで構成される。苗残量検出センサ74は、苗検出センサと端寄せ検出センサとにより構成される。苗検出センサおよび端寄せ検出センサを用いて苗の残量を検出する手法については後述する。
【0046】
予備苗センサ75は、予備苗載せ台37上の苗マットの有無を検知する。予備苗センサ75は、苗マットの検知結果を制御部50へ出力する。予備苗センサ75は、各予備苗載せ台37に設けられる。すなわち、予備苗載せ台37は、台上の苗マットの有無を検知する予備苗センサ75を有する。予備苗センサ75は、苗マットが存在する場合にはスイッチオンとなり、苗マットが存在しない場合にはスイッチオフとなる機械式のスイッチであってよい。例えば、予備苗センサ75は、予備苗載せ台37に形成された開口から出退する検知片と、検知片の出退変位に基づいて接点の切り換わりが行われるスイッチ本体とで構成されてよい。
【0047】
着座センサ76は、作業者の運転座席19への着座を検知する。すなわち、田植機1は、作業者の運転座席19への着座を検知する着座センサ76を備える。着座センサ76は、着座の検知結果を制御部50へ出力する。着座センサ76は、撮影装置、感圧センサ、および、光センサのうち少なくともいずれか1つを含む構成であってよい。光センサは、例えば、運転座席19に着座する作業者の脚を検知する構成であってよい。着座センサ76は、物理的なスイッチや超音波センサ等であってもよい。
【0048】
なお、着座センサ76が、撮影装置である場合、撮影装置は、静止画を撮影する構成でも、動画を撮影する構成でもよい。撮影装置は、田植機1上に固設されたカメラであっても、可搬型の装置(例えばスマートフォンやタブレット端末等の携帯端末)に内蔵されたカメラであってもよい。撮影装置は、運転座席19を含む一定の範囲を撮影可能に配置されて使用されればよい。撮影装置で予め撮影しておいた画像と、現在の画像とを比較して、作業者の着座が検知される構成としてよい。また、撮影装置により撮影された画像の所定範囲に、人と判別できる物体があることを検知して、作業者の着座が検知される構成としてもよい。着座の検知に撮影装置が用いられる構成とすると、温度や光度等の環境に左右され易いセンサを使用する場合に比べて、誤検知を低下させることができる。また、着座センサ76に撮影装置を用いる構成とすると、予め登録された人以外が運転座席19に座っていることを検知することができるために、盗難防止に利用することができる。また、撮影装置で撮影された映像を記録しておく構成とすることで、事故の原因究明に利用することが可能となる。
【0049】
アームレスト位置検出センサ77は、運転座席19に設けられるアームレスト191の位置を検知する。アームレスト位置検出センサ77は、アームレスト191の位置の検出結果を制御部50に出力する。アームレスト位置検出センサ77の詳細については後述する。
【0050】
蓋体センサ78は、施肥装置25の蓋体25aの開閉を検知する。蓋体センサ78は、蓋体25aの開閉に関する検知結果を制御部50へ出力する。蓋体センサ78は、例えば、物理的なスイッチであってよい。例えば、蓋体センサ78は、蓋体25aが開けられた場合に、スイッチがオンとなり、蓋体25aが閉じられた場合にスイッチがオフとなる構成であってよい。
【0051】
走行モード制御部52は、手動走行モードと自動走行モードとの切り替えを制御する。当該切り替えの制御の詳細については後述する。なお、手動走行モードは、田植機1の運転座席19に座る作業者が田植機1の運転を行うモードである。自動走行モードは、圃場内において田植機1を自動走行させるモードである。自動走行モードにおいては、例えば、操向ハンドル20の操作の制御が自動で行われ、車速の制御、および、作業装置12の動作の制御は、運転座席19に座る作業者が手動で行う。別の例として、自動走行モードにおいては、作業者が田植機1に搭乗した状態で、直進走行による作業、および、旋回走行が自動で行われる構成としてもよい。当該構成においては、例えば車速の制御や作業装置12の制御について、自動と手動との切り替えが可能であってよい。
【0052】
走行制御部53は、走行モードが手動走行モードであれば、運転座席19に座る作業者の手動操作に応じて田植機1の走行制御を行う。走行制御部53は、走行モードが自動走行モードである場合、田植機1の走行系の少なくとも一部について自動制御を行う。例えば、走行制御部53は、田植機1が予め定められた経路に沿って走行するように、操舵を自動で制御する。自動操舵が行われる場合、走行制御部53は、舵角センサ72が検出する現在の舵角を目標の舵角に近づける制御を行う。舵角の制御は、操舵アクチュエータ63の駆動制御により実現される。また、車速を自動制御する場合、走行制御部53は、車速センサ71が検出する現在の車速を目標の車速に近づける制御を行う。車速の制御は、ミッションケース17内の変速装置の変速比又はエンジン16の回転速度のうちの少なくとも一方を変更することにより実現される。
【0053】
なお、走行制御部53は、エンジン16に関わる制御を行う。エンジン16に関わる制御には、田植機1による作業中に、田植機1に搭乗する作業者の携帯電話(スマートフォン等)に着信があった場合に、エンジン16の回転数を下げる制御が含まれてよい。これによりエンジン音を低減して、作業者が携帯電話に着信があったことを認識し易くすることができる。また、通話相手の音声を聞き取り易くすることができる。また、手動でエンジン16の回転を操作する煩わしさを低減することができる。なお、このような制御を実現する構成として、携帯電話と制御部50とは、無線通信可能とされる。無線通信には、例えばBluetoothが利用されてよい。また、携帯電話による通話が終了すると、エンジン16の回転数が自動的に元の回転数に戻される構成としてもよい。
【0054】
作業装置制御部54は、作業装置12の操作が手動により行われる構成である場合には、田植機1に設けられる操作レバー等の手動操作に応じて植付装置24の制御を行う。作業装置制御部54は、作業装置12の操作が自動で行われる構成の場合には、例えば、植付装置24の昇降制御等を自動で行う。また、作業装置制御部54は、供給量設定部64の設定に応じて、施肥装置25を制御して肥料の供給を行う。
【0055】
報知制御部55は、報知部65の制御を行う。報知制御部55は、所定の条件を満たした場合に報知部65に報知動作を行わせる。所定の条件は、例えば、田植機1において作業者に警告すべき状況が生じたと判定された場合に満たされる。所定の条件の詳細例については後述する。
【0056】
<2.走行モードに関する制御>
[2-1.手動走行モード→自動走行モード]
図4は、本発明の実施形態に係る田植機1における手動走行モードから自動走行モードへの移行処理の一例を示すフローチャートである。なお、田植機1は、通常、エンジン16の始動時において手動走行モードである。
【0057】
ステップS1では、制御部50(走行モード制御部52)が自動走行モードの開始指令があったか否かを監視する。本実施形態において、当該開始指令は、作業者が自動走行操作部62を操作することによって実現される。開始指令があった場合(ステップS1でYes)、次のステップS2に処理が進められる。開始指令がない場合(ステップS1でNo)、ステップS1の処理が続けられる。
【0058】
ステップS2では、制御部50(走行モード制御部52)が自動走行の開始条件を満たすか否かを判定する。自動走行の開始条件は、1つでもよいが、本実施形態では複数である。自動走行の開始条件には、自動走行を行う圃場の経路が設定されていることが含まれる。また、自動走行の開始条件には、測位アンテナ40の受信レベルが良好(所定レベル以上)であることが含まれる。
【0059】
本実施形態では、自動走行の開始条件に、アームレスト位置検出センサ77の検出結果が所定条件を満たすことが含まれる。アームレスト191の位置と、それに応じた走行モードの制御とについては後述する。
【0060】
その他、自動走行の開始条件に、作業者が運転座席19に着座していることが含まれてよい。すなわち、制御部50(走行モード制御部52)は、作業者の運転座席19への着座を自動走行の開始条件とする構成であってよい。このような構成とすると、田植機1に搭乗する作業者が運転座席19から離れた状態で自動走行が開始されることを防止することができ、田植機1における安全性を向上することができる。なお、作業者が運転座席19に座っているか否かは、着座センサ76からの出力情報により判定することができる。
【0061】
また、自動走行の開始条件に、施肥装置25の供給量設定部64が非操作状態であることが含まれてよい。すなわち、制御部50(走行モード制御部52)は、供給量設定部64が非操作状態であることを自動走行の開始条件とする構成であってよい。例えば、供給量設定部64が施肥装置25の本体部25bやその近傍に配置される場合、供給量設定部64を操作する作業者は、運転座席19以外の位置に居ることになる。供給量設定部64が非操作状態であることが自動走行の開始条件とされると、このような状態で自動走行が開始されることを防止できるために、安全性を向上することができる。なお、ここで言う作業者には、田植機1の運転を行う者の他に、作業補助を行うために田植機1に搭乗する者(以下、補助作業者という)が含まれてよい。また、供給量設定部64が非操作状態であるか否かは、供給量の設定値の変動を監視することにより判定されてよい。例えば、供給量の設定値が所定期間一定である場合に、供給量設定部64が非操作状態と判定されてよい。
【0062】
また、自動走行の開始条件に、施肥装置25の蓋体25aが閉まっていることが含まれてよい。すなわち、制御部50(走行モード制御部52)は、蓋体25aが閉状態であることを自動走行の開始条件とする構成であってよい。このような構成とすると、例えば、作業者が施肥装置25のホッパに肥料を追加している際に自動走行が開始されることを防止できる。すなわち、田植機1における安全性を向上することができる。なお、蓋体25aが閉状態であるか否かは、蓋体センサ78からの出力情報により判定することができる。
【0063】
その他、自動走行の開始条件に、予備苗載せ台37に苗マットが載せられていることが予備苗センサ75により検知されていることが含まれてもよい。
【0064】
自動走行の開始条件を満たしていると判定されると(ステップS2でYes)、走行モード制御部52が、走行モードを手動走行モードから自動走行モードに移行する。これにより、自動走行が開始される。一方、自動走行の開始条件を満たしていないと判定されると(ステップS2でNo)、ステップS3に処理が進められる。
【0065】
ステップS3では、制御部50(報知制御部55)が、報知部65を利用して、自動走行を開始できないことを作業者に報知する。この際、報知部65は、自動走行を開始できない理由を報知することが好ましい。これにより、作業者は、どのように対処すれば自動走行を開始できるかを素早く知ることができる。
【0066】
[2-2.自動走行モード→手動走行モード]
図5は、本発明の実施形態に係る田植機1における自動走行モードから手動走行モードへの移行処理の一例を示すフローチャートである。なお、図5の開始時点においては、田植機1は自動走行を行っており、走行モードは自動走行モードである。
【0067】
ステップS11では、制御部50(走行モード制御部52)が、作業者の所定動作の実施を監視する。当該監視は、例えば一定周期で行われる。監視の対象となる所定動作は、一種類でも複数種類でもよい。監視の対象となる所定動作が複数である場合、複数の所定動作のうちのいずれか1つを作業者が行うと、作業者が所定動作を行ったことが検知される。ここで言う作業者は、田植機1の運転を行う者の他に、上述の補助作業者が含まれてよい。
【0068】
本実施形態では、所定動作には、作業者が自動走行操作部62を操作して、自動走行状態を解除する指令を行うことが含まれる。また、所定動作には、作業者がエンジン16を停止する動作が含まれる。また、所定動作には、機体11上の作業者が操向ハンドル20を操作する動作が含まれる。また所定動作には、機体11上の作業者が主変速レバー22を「高速」(移動速)又は「後進」にする動作が含まれる。また、所定動作には、機体11上の作業者の、アームレスト191に対する第1動作が含まれる。第1動作や、第1動作に伴う自動走行の制御については後述する。
【0069】
その他、所定動作には、機体11上の作業者の施肥装置25に対する第2動作が含まれてもよい。ここで言う作業者は、田植機1の運転を行う者の他に、上述の補助作業者が含まれてよい。第2動作には、作業者が供給量設定部64を操作する動作が含まれてよい。供給量設定部64に対する操作は、制御部50が設定値の変動を監視することにより検知できる。また、第2動作には、作業者が蓋体25aを閉状態から開状態にする動作が含まれてよい。蓋体25aが閉状態から開状態にされたか否かは、蓋体センサ78を用いて検知することできる。第2動作には、施肥装置25のホッパへ肥料を追加する動作であってもよい。ホッパへの肥料の追加は、例えば、ホッパに入っている肥料の重量を監視することで検知することができる。すなわち、ホッパに入っている肥料の重量が増加した場合に、ホッパへの肥料の追加動作を検知してよい。
【0070】
また、所定動作には、作業者が運転座席19への着座状態から非着座状態となる動作が含まれてよい。着座状態から非着座状態になったか否かは、着座センサ76を用いて検知することができる。
【0071】
また、所定動作には、機体11上の作業者の、予備苗載せ台37に対する第3動作が含まれてもよい。ここで言う作業者は、田植機1の運転を行う者の他に、上述の補助作業者が含まれてよい。第3動作には、作業者が予備苗載せ台37から苗マットを取り出す動作が含まれてよい。作業者が予備苗載せ台37から苗マットを取り出したことは、予備苗センサ75を用いて検知することができる。
【0072】
作業者の所定動作の実施が検知された場合(ステップS11でYes)、ステップS13に処理が進められる。一方、作業者の所定動作の実施が検知されない場合(ステップS11でNo)、ステップS12に処理が進められる。
【0073】
ステップS12では、制御部50(走行モード制御部52)は、所定の禁止条件を満たすか否かを判定する。所定の禁止条件は、自動走行を禁止すべき条件として、上述の作業者の所定動作とは別に予め設定された条件である。所定の禁止条件は、1つでもよいが、本実施形態では複数である。複数の禁止条件のうちの1つでも満たされると、所定の禁止条件を満たしたと判定される。
【0074】
本実施形態では、所定の禁止条件には、田植機1の走行経路が予め設定した経路から所定距離(例えば60cm)以上外れることが含まれる。また、所定の禁止条件には、測位アンテナ40の受信レベルが低下する(所定レベル以下となる)ことが含まれる。また、所定の禁止条件には、機体11が前後又は左右に大きく傾く(前後又は左右に閾値以上傾く)ことが含まれる。また、所定の禁止条件には、苗載せ台28上の苗が所定量以下であることが含まれる。苗が所定量以下であることを求める手法については後述する。
【0075】
所定の禁止条件を満たした場合(ステップS12でYes)、ステップS13に処理が進められる。一方、所定の禁止条件を満たさない場合(ステップS12でNo)、ステップS11に処理が戻される。
【0076】
ステップ13では、制御部50(走行モード制御部52)は、自動走行を禁止する処理を行う。自動走行を禁止する処理は、田植機1の走行を継続しつつ自動走行モードを手動走行モードに戻す処理(第1処理)と、田植機1の走行を停止して自動走行モードを手動走行モードに戻す処理(第2処理)とのいずれでもよい。自動走行を禁止するに至った理由に応じて、第1処理と第2処理とのうちのいずれにするかが選択されてよい。安全性の観点で自動走行を禁止する場合、第2処理が行われることが好ましい。以下においては、第2処理により田植機1の走行が停止されることを、自動走行の停止と表現する。
【0077】
以上からわかるように、本実施形態では、制御部50は、機体11上の作業者の、アームレスト191に対する第1動作を検知して自動走行を禁止する。このような構成とすると、運転座席19に着座する作業者が自動走行中に手を置いている可能性が高いアームレスト191に対して、作業者が動作を行うことによって、自動走行を停止させることが可能になる。このために、作業者は素早く自動走行の停止を行うことができる。すなわち、田植機1の安全性を向上することができる。なお、第1動作の詳細例については後述する。
【0078】
また、本実施形態では、制御部50は、苗載せ台28上の苗が所定量以下であると判定した場合に自動走行を禁止する。このように構成すると、苗載せ台28上の苗が無くなる前に自動走行を停止させることができる。なお、苗の残量に応じた走行モードの制御手法の詳細例については後述する。
【0079】
また、制御部50は、機体11上の作業者の施肥装置25に対する第2動作を検知して自動走行を禁止してよい。このような構成とすれば、作業者(補助作業者が含まれてよい)が施肥装置25に対する作業を行っている状態で自動走行が継続されることを防止できる。すなわち、田植機1の安全性を向上することができる。具体的には、制御部50は、作業者が供給量設定部64を操作していることを検知して自動走行を停止してよい。なお、自動走行の停止後に、供給量設定部64の非操作状態が検知され、且つ、他の自動走行開始条件が満たされている場合には、自動走行が再開されてよい。また、制御部50は、作業者が蓋体25aを閉状態から開状態にしたことを検知して自動走行を停止してよい。なお、自動走行の停止後に、蓋体25aが閉状態であることが検知され、且つ、他の自動走行開始条件が満たされている場合には、自動走行が再開されてよい。また、制御部50は、作業者がホッパに肥料を追加していることを検知して自動走行を停止してよい。なお、自動走行の停止後に、肥料の追加作業をしていないことが検知され、且つ、他の自動走行開始条件が満たされている場合には、自動走行が再開されてよい。
【0080】
また、制御部50は、機体11上の作業者が運転座席19への着座状態から非着座状態となったことを検知して自動走行を禁止してよい。このような構成とすれば、作業者(補助作業者が含まれてよい)が運転座席19に座っていない場合に、自動走行を停止させることができる。すなわち、田植機1の安全性を向上することができる。なお、自動走行の停止後に、作業者の運転座席19への着座状態が検知され、且つ、他の自動走行開始条件が満たされている場合には、自動走行が再開されてよい。
【0081】
また、制御部50は、機体11上の作業者の、予備苗載せ台37に対する第3動作を検知して自動走行を禁止してよい。このような構成とすれば、作業者(補助作業者が含まれてよい)が運転座席19から離れている可能性が高い状態で自動走行が継続されることを防止できる。すなわち、田植機1の安全性を向上することができる。具体的には、制御部50は、作業者が予備苗載せ台37から苗マットを取り出す動作を検知して自動走行を停止してよい。なお、予備苗載せ台37から苗マットを取り出した後に、苗マットを予備載せ台37に載せたことを検知され、且つ、他の自動走行開始条件が満たされている場合には、自動走行が再開されてよい。
【0082】
<3.アームレストに関わる制御の詳細>
[3-1.アームレストの構成]
図6A図6Bは、本発明の実施形態に係るアームレスト191の構成を説明するための図である。図6A図6Bとでは、アームレスト191の姿勢が異なる。
【0083】
図6Aおよび図6Bに示すように、運転座席19は、座部19aと背凭れ部19bとを有する。座部19aは、作業者が臀部を載せる部分である。背凭れ部19bは、作業者が背凭れとする部分である。運転座席19には、左右一対のアームレスト191が設けられる。各アームレスト191は、棒状であり、運転座席19に座る作業者が腕を載せることが可能に設けられる。
【0084】
一対のアームレスト191は、運転座席19を基準として左右対称となる位置に取り付けられる。運転座席19の左側に配置される左アームレスト191Lは、背凭れ部19bの左側面に取り付けられる。詳細には、左アームレスト191Lの長手方向の一端部が、背凭れ部19bの左側面に、左右方向に延びる軸線AX回りに回動可能に取り付けられる。また、運転座席19の右側に配置される右アームレスト191Rは、背凭れ部19bの右側面に取り付けられる。詳細には、右アームレスト191Rの長手方向の一端部が、背凭れ部19bの右側面に、左右方向に延びる軸線AX回りに回動可能に取り付けられる。
【0085】
左右の各アームレスト191L、191Rは、長手方向が前後方向に延びる姿勢で使用される。すなわち、図6Aは、左右の各アームレスト191L、191Rが、使用位置にある状態を示す。左右の各アームレスト191L、191Rが使用位置にある状態で、左アームレスト191Lと右アームレスト191Rとは、運転座席19を基準として対称に配置される。
【0086】
本実施形態において、アームレスト191の使用位置は、アームレスト191の先端部(長手方向の他端部)を最も下げられた位置とすることにより得られる。左右の各アームレスト191L、191Rは、図6Aに示す使用位置から下方に向けて回動することはできない。左右の各アームレスト191L、191Rは、使用位置から上方に回動されることにより、非使用位置となる。本実施形態では、アームレスト191は、使用位置から上方に略90°回動可能である。図6Bは、左アームレスト191Lが、使用位置から上方に略90°回動された状態を示す。図6Bにおいて、左アームレスト191Lは、上方に跳ね上げられて、長手方向が上下方向に延びる姿勢となっている。
【0087】
以上からわかるように、本実施形態のアームレスト191は、使用位置と非使用位置とに姿勢変更可能に設けられる。なお、本実施形態では、左右の各アームレスト191L、191Rが使用位置と非使用位置とに姿勢変更できる構成としているが、これは例示である。左右のいずれか一方だけが、使用位置と非使用位置とに姿勢変更できる構成としてもよい。
【0088】
アームレスト191が使用位置にある場合、運転座席19に座る使用者は、アームレスト191につかまることができる。このために、操向ハンドル20を握ることができない自動走行時において、作業者は、アームレスト191につかまって自身の姿勢を安定させることができる。アームレスト191を使用位置から跳ね上げることによって、作業者は、アームレスト191に邪魔されることなく、運転座席19から容易に動くことができる。
【0089】
[3-2.アームレスト位置検出センサ]
アームレスト位置検出センサ77(図3参照)は、アームレスト191が使用位置であるか、非使用位置であるかを検出可能に設けられる。アームレスト位置検出センサ77は、例えば、ポテンショメータを用いて構成することができる。また、アームレスト位置検出センサ77は、リミットスイッチを用いて構成することができる。リミットスイッチを用いる構成では、例えば、アームレスト191が使用位置である場合にオンとなり、アームレスト191が使用位置から回動して非使用位置となった場合にリミットスイッチがオフとなる構成としてよい。
【0090】
[3-3.走行モードの制御]
上述のように、制御部50は、機体11上の作業者の、アームレスト191に対する第1動作を検知して自動走行を禁止する。詳細には、第1動作には、作業者がアームレスト191を使用位置から非使用位置に変更する動作が含まれる。このように構成すると、作業者がアームレスト191にしっかり握ることができない状態で自動走行が行われることを防止できる。すなわち、田植機1の安全性を向上することができる。なお、アームレスト191が使用位置と非使用位置とのいずれであるかは、アームレスト位置検出センサ77を用いて判定される。
【0091】
また、本実施形態では、制御部50は、アームレスト191が使用位置であることを自動走行の開始条件とする。これにより、作業者がアームレスト191にしっかり握ることができない状態で自動走行が行われることを防止できる。すなわち、田植機1の安全性を向上することができる。
【0092】
図7は、田植機1におけるアームレスト191に関わる走行モードの制御例を示すフローチャートである。なお、図7に示す処理は、自動走行を開始するための条件について、アームレスト191に関わる条件以外は満たされていることを前提とする。図7に示す処理の開始時点では、走行モードは手動走行モードである。また、図7に示す例は、図4に示す例とは異なる変形例である。
【0093】
ステップS21では、制御部50(走行モード制御部52)は、アームレスト191が非使用位置であるか否かを判定する。当該判定は、アームレスト位置検出センサ77を用いて行われる。非使用位置は、アームレスト191が使用位置にない状態を広く含んでよいが、例えば、アームレスト191が跳ね上げられた状態であってよい。また、左右のアームレスト191L、191Rが使用位置と非使用位置とに変更可能である場合において、いずれか一方が非使用位置であれば、アームレスト191が非使用位置であると判定される。アームレスト191が非使用位置である場合(ステップS21でYes)、次のステップS22に処理が進められる。アームレスト191が使用位置である場合(ステップS21でNo)、ステップS23に処理が進められる。
【0094】
ステップS22では、制御部50(報知制御部55)が、報知部65に「自動走行を開始するには、アームレストを降ろして下さい」と報知する。すなわち、制御部50は、アームレスト191の姿勢(位置)が適切でないために、自動走行を開始できない状態であることを作業者に知らせる処理を行う。ステップS22の処理が行われる場合、手動走行モードが維持される。
【0095】
ステップS23では、制御部50(走行モード制御部52)は、自動走行の開始指令の有無を判定する。自動走行の開始指令は、作業者が自動走行操作部62を操作することにより行われる。自動走行の開始指令があった場合(ステップS23でYes)、次のステップS24に処理が進められる。自動走行の開始指令がない場合(ステップS23でNo)、手動走行モードが維持される。
【0096】
ステップS24では、制御部50(走行モード制御部52)が、走行モードを手動走行モードから自動走行モードに移行する。これにより、自動走行が開始される。自動走行モードに移行すると、次のステップS25に処理が進められる。
【0097】
ステップS25では、制御部50(報知制御部55)が、「アームレストを使用して下さい」と報知する。すなわち、自動走行時における推奨姿勢を作業者に知らせる。これにより、作業者がアームレスト191をつかむ可能性を高められる。報知処理が完了すると、或いは、報知処理と並行して、ステップS26の処理が行われる。
【0098】
ステップS26では、制御部50(走行モード制御部52)が、アームレスト191が非使用位置に姿勢変更されたか否かを監視する。アームレスト191が非使用位置となった場合(ステップS26でYes)、次のステップS27に処理が進められる。アームレスト191が使用位置のままである場合(ステップS26でNo)、自動走行モードが維持される。すなわち、自動走行が継続される。
【0099】
ステップS27では、制御部50(走行モード制御部52)が、自動走行を停止して、走行モードを自動走行モードから手動走行モードに移行する。走行モードを手動走行モードとすると、次のステップS28に処理が進められる。
【0100】
ステップS28では、制御部50(報知制御部55)が、報知部65に「自動走行を開始するには、アームレストを降ろして下さい」と報知する。すなわち、制御部50は、自動走行を開始するために必要な動作を作業者に知らせる処理を行う。ステップS28の処理が行われる場合、手動走行モードが維持される。
【0101】
ステップS28の処理の後に、アームレスト191が非使用位置から使用位置に姿勢変更されたことが検知された場合、自動走行が再開されてよい。この際、自動走行の再開には、自動走行操作部62の操作が要件とされてもよい。
【0102】
[3-4.アームレストの構成の変形例]
図8Aおよび図8Bは、変形例に係るアームレスト191Aの構成を説明するための図である。図8Aおよび図8Bにおいては、アームレスト191Aは垂直断面図で示されている。図8Aおよび図8Bに示すアームレスト191Aは、運転座席19の左側に配置されるアームレストである。運転座席19の右側に配置されるアームレストも、左側のアームレストと同様の構成としてよい。また、変形例においても、アームレスト191Aは、左右方向に延びる軸線回りに回動可能に設けられ、図6Aに示す水平姿勢と、図6Bに示す垂直姿勢とに変更可能である。
【0103】
アームレスト191Aの内部には、スイッチ1911と付勢部材1912とが配置される。スイッチ1911は、基台部1911aと可動部1911bとを有する。基台部1911aは、運転座席19に対して固定される。可動部1911bは、基台部1911aに対して上下動可能に設けられる。可動部1911bが下方に下がることにより、スイッチ1911はオン状態となる。スイッチ1911は、アームレスト位置検出センサ77の一例であり、アームレスト191Aの使用位置と非使用位置とを検知可能である。付勢部材1912は、一例として圧縮ばねである。付勢部材1912は、上側が基台部1911aに取り付けられ、下側が可動部1911bに取り付けられている。付勢部材1912は、可動部1911bを上方に付勢する。
【0104】
アームレスト191Aを垂直姿勢から倒すと、図8Aに示す姿勢となる。アームレスト191Aが図8Aに示す姿勢となると、アームレスト191Aの内部の壁面1913が可動部1911bに当接する。ただし、付勢部材1912の付勢力によって、可動部1911bの位置は維持される。すなわち、スイッチ1911はオンとはならない。別の言い方をすると、付勢部材1912により上方に付勢される可動部1911bに支持されて、アームレスト191Aは、下限位置よりも高い位置となる。
【0105】
図8Aに示す状態のアームレスト191Aに作業者の腕100が載せられると、アームレスト191Aに対して下方に荷重がかかる。これにより、アームレスト191Aが下限位置まで下がる。また、スイッチ1911の可動部1911bが下がって、スイッチ1911がオン状態となる。制御部50は、スイッチ1911がオン状態となることで、アームレスト191Aが使用位置にあることを検知する。アームレスト191Aに対する下方への荷重がなくなると、付勢部材1912の付勢力により、可動部1911bと共にアームレスト191Aが持ち上げられる(図8Aの状態に戻る)。これにより、スイッチ1911はオフ状態となる。制御部50は、スイッチ1911がオフ状態となることで、アームレスト191Aが非使用位置にあることを検知する。
【0106】
以上からわかるように、変形例の田植機1は、使用位置にあるアームレスト191Aを非使用位置に付勢する付勢部材1912を備える。変形例の構成によれば、垂直姿勢とした(跳ね上げられた)アームレスト191Aが勝手に倒れた場合でも、アームレスト位置検出センサ77は、アームレスト191Aが使用位置にあることを検知しない。すなわち、実際には使用されていないアームレスト191Aが、使用位置にあると検知されることを防止できる。また、作業者は、アームレスト191Aに載せた腕100をアームレスト191Aから離すだけで、簡単にアームレスト191Aを非使用位置に変更することができる。すなわち、作業者は、アームレスト191Aを利用して素早く自動走行を停止することができる。
【0107】
<4.苗残量検出センサを用いた走行モード制御の詳細>
ここでは、苗残量検出センサ74が、苗載せ台28に設けられる苗検出センサおよび端寄せ検出センサで構成される場合の走行モードの制御例について説明する。なお、苗検出センサは、苗載せ台28の縦方向中途部の下方寄りの位置で苗の有無を検出するセンサである。苗検出センサは、各条の苗が載せられる領域のそれぞれに設けられる。本実施形態では、田植機1は6条用であるために、6つの苗検出センサが設けられる。苗検出センサは、例えば機械式のスイッチで構成される。また、端寄せ検出センサは、苗載せ台28が左右一方の移動端まで到達した場合にスイッチがオンとなる機械式のセンサである。
【0108】
図9は、苗残量検出センサ74を用いた走行モードの制御例を示すフローチャートである。図9は、そのフローの開始時点において、田植機1が自動走行を行っていることを前提とする。
【0109】
ステップS31では、制御部50(走行モード制御部52)は、苗検出センサがオフであるか否かを判定する。なお、苗検出センサは、当該センサ(スイッチ)が配置される位置において苗が無い場合にオフとなり、苗がある場合にオンとなる。例えば、苗載せ台28に載る苗マットの縦方向の長さが510mm以下になった場合に苗検出センサはオフとなる。苗検出センサがオフである場合(ステップS31でYes)、次のステップS32に処理が進められる。苗検出センサがオンである場合(ステップS31でNo)、ステップS31の処理が繰り返される。
【0110】
ステップS32では、制御部50(報知制御部55)が、報知部65に苗継ぎ警報を発報させる。苗継ぎ警報が発報されると、次のステップS33に処理が進められる。
【0111】
ステップS33では、制御部50(走行モード制御部52)が、苗検出センサがオフのままであるかを判定する。苗検出センサがオフのままである場合(ステップS33でYes)、次のステップS34に処理が進められる。苗検出センサがオンである場合(ステップS33でNo)、ステップS31に処理が戻される。
【0112】
ステップS34では、制御部50(走行モード制御部52)が、端寄せ検出センサを構成するスイッチ(以下、端寄せスイッチという)の押下回数がN回以上であるか否かを判定する。N回は、予め決められた回数である。N回の決め方について図10を参照して説明する。図10は、図9における「N回」の決め方を説明するための図である。図10は、苗載せ台28の一部(1条分の苗が載せられる領域を示す図である。図10において符号200は苗検出センサである。
【0113】
苗が空になった状態で自動走行が行われると、苗が植え付けられない区間が発生する。このような区間が発生しないように、本例では、苗残量が苗載せ台28の横送り一往復分となった時点で自動走行を停止することにする。この場合、Nは、苗検出センサ200がオフとなってから、横送り1往復分の苗残量となるまでに必要な端寄せスイッチの押下回数となる。図10に示すαは、苗縦取量である。苗縦取量は、苗縦送りベルト35(図2参照)による苗縦送り動作により、苗取り出し方向に搬送される苗の縦方向の長さである。図10に示すβは、苗検出センサ200がオフとなった時点の苗マットの縦方向長さである。上述のように、βは例えば510mmである。端寄せスイッチは、苗載せ台28の左右方向の片側1箇所にあるので、横送り1往復分につき端寄せスイッチが1回押される。このために、Nは以下のように導出される。
α×2×N = β-α×2
N=(β-2α)/2α
【0114】
内部変数として、端寄せ回数カウンタが設定されている。端寄せ回数カウンタは、苗検出センサ200がオンの場合にはゼロとされる。端寄せ回数カウンタは、苗検出センサがオフとなるとインクリメントを開始し、端寄せスイッチが押されるごとに1ずつ増えていく。端寄せ回数カウンタにより、端寄せスイッチの押下回数がカウントされる。端寄せスイッチの押下回数がN回以上である場合(ステップS34でYes)、苗の残量が極めて少ないと判断されるために、自動走行が停止される。一方、端寄せスイッチの押下回数がN回未満である場合(ステップS34でNo)、苗の残量に余裕があると判断されるために、ステップS33に処理が戻される。
【0115】
自動走行の停止が行われた後に、苗検出センサ200がオンであることが検知された場合には、自動走行が再開されてよい。ただし、いきなり自動走行が開始されることを防止するために、苗検出センサ200がオンであり、且つ、自動走行操作部62が操作された場合に、自動走行が再開されることが好ましい。
【0116】
<5.留意事項等>
本明細書中に開示される種々の技術的特徴は、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。また、本明細書中に示される複数の実施形態および変形例は可能な範囲で組み合わせて実施されてよい。
【0117】
本発明は、例えば、エンジンとは異なる駆動源で駆動される田植機にも適用可能である。
【0118】
<6.付記>
例示的な本発明の圃場作業機は、圃場を自動走行可能に設けられる圃場作業機であって、機体に配置される運転座席と、前記運転座席に設けられるアームレストと、前記自動走行に関わる制御を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記機体上の作業者の、前記アームレストに対する第1動作を検知して前記自動走行を禁止する構成(第1の構成)であってよい。
【0119】
上記第1の構成の圃場作業機において、前記アームレストは、使用位置と非使用位置とに姿勢変更可能に設けられ、前記第1動作には、前記作業者が前記アームレストを前記使用位置から前記非使用位置に変更する動作が含まれる構成(第2の構成)であってよい。
【0120】
上記第1又は第2の構成の圃場作業機は、前記機体に支持される施肥装置を備え、前記制御部は、前記作業者の前記施肥装置に対する第2動作を検知して前記自動走行を禁止する構成(第3の構成)であってよい。
【0121】
上記第3の構成の圃場作業機において、前記施肥装置は、肥料の供給量を設定する供給量設定部を有し、前記第2動作には、前記作業者が前記供給量設定部を操作する動作が含まれる構成(第4の構成)であってよい。
【0122】
上記第3又は第4の構成の圃場作業機において、前記施肥装置は、開閉可能な蓋体を有し、前記第2動作には、前記作業者が前記蓋体を閉状態から開状態にする動作が含まれる構成(第5の構成)であってよい。
【0123】
上記第1から第5のいずれかの構成の圃場作業機は、前記作業者の前記運転座席への着座を検知する着座センサを備え、前記制御部は、前記作業者が前記運転座席への着座状態から非着座状態となったことを検知して前記自動走行を禁止する構成(第6の構成)であってよい。
【0124】
上記第6の構成の圃場作業機において、前記着座センサは、撮影装置、感圧センサ、および、光センサのうち少なくともいずれか1つを含む構成(第7の構成)であってよい。
【0125】
上記第1から第7のいずれかの構成の圃場作業機は、予備の苗を載せる予備苗載せ台を備え、前記制御部は、前記作業者の前記予備苗載せ台に対する第3動作を検知して前記自動走行を禁止する構成(第8の構成)であってよい。
【0126】
上記第8の構成の圃場作業機において、前記予備苗載せ台は、台上の苗マットの有無を検知する予備苗センサを有し、前記第3動作には、前記作業者が前記予備苗載せ台から前記苗マットを取り出す動作が含まれる構成(第9の構成)であってよい。
【0127】
上記第1から第9のいずれかの圃場作業機は、苗載せ台を有する植付装置を備え、前記植付装置は、前記苗載せ台上の苗の残量を検知する苗残量検出センサを有し、前記制御部は、前記苗載せ台上の苗が所定量以下であると判定した場合に、前記自動走行を禁止する構成(第10の構成)であってよい。
【0128】
上記第2の構成の圃場作業機において、前記制御部は、前記アームレストが前記使用位置であることを前記自動走行の開始条件とする構成(第11の構成)であってよい。
【0129】
上記第11の構成の圃場作業機は、前記使用位置にある前記アームレストを前記非使用位置へと付勢する付勢部材を備える構成(第12の構成)であってよい。
【0130】
上記第4の構成の圃場作業機において、前記制御部は、前記供給量設定部が非操作状態であることを前記自動走行の開始条件とする構成(第13の構成)であってよい。
【0131】
上記第5の構成の圃場作業機において、前記制御部は、前記蓋体が閉状態であることを前記自動走行の開始条件とする構成(第14の構成)であってよい。
【0132】
上記第6又は第7の構成の圃場作業機において、前記制御部は、前記作業者の前記運転座席への着座を前記自動走行の開始条件とする構成(第15の構成)であってよい。
【符号の説明】
【0133】
1・・・田植機(圃場作業機)
11・・・機体
19・・・運転座席
24・・・植付装置
25・・・施肥装置
25a・・・蓋体
28・・・苗載せ台
37・・・予備苗載せ台
50・・・制御部
64・・・供給量設定部
74・・・苗残量検出センサ
75・・・予備苗センサ
76・・・着座センサ
191、191A・・・アームレスト
191L・・・左アームレスト
191R・・・右アームレスト
1912・・・付勢部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9
図10