(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108496
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20240805BHJP
B24B 23/02 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
B25F5/00 G
B24B23/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012896
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】原田 健太
(72)【発明者】
【氏名】石川 祐樹
【テーマコード(参考)】
3C064
3C158
【Fターム(参考)】
3C064AA08
3C064AB02
3C064AC03
3C064BA01
3C064BA33
3C064BB02
3C064BB04
3C064CA04
3C064CA08
3C064CA25
3C064CA26
3C064CA34
3C064CA82
3C064CB06
3C064CB17
3C064CB32
3C064CB33
3C064CB64
3C064CB72
3C064CB91
3C158AA02
3C158AA14
3C158AA16
3C158AC01
3C158BB02
3C158BC02
3C158CB05
(57)【要約】
【課題】好適に基板をユニット化する。
【解決手段】グラインダ10のコントローラ70では、スイッチング素子Q1~Q6のソース端子QT3が、第1スルーホール72A及び第2スルーホール74Aを挿通すると共に、第1スルーホール72Aの第1ランド72B及び第2スルーホール74Aの第2ランド74Bに半田付けされている。このため、ソース端子QT3が、第1スルーホール72A及び第2スルーホール74Aに電気的に接続されると共に、第1スルーホール72A及び第2スルーホール74Aを挿通した部位において、第1回路基板72及び第2回路基板74に固着される。これにより、コントローラ70において、第1回路基板72及び第2回路基板74を好適にユニット化することができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータを制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
電気接続用の端子を有する制御素子と、
第1接続孔を有する第1基板と、
前記第1基板と板厚方向に対向して配置され、第2接続孔を有する第2基板と、
を含んで構成されており、
前記端子が、前記第1接続孔及び前記第2接続孔を挿通すると共に、前記第1接続孔及び前記第2接続孔の少なくとも一方と電気的に接続され、前記第1接続孔及び前記第2接続孔を挿通した部位において前記第1基板及び前記第2基板に固着される作業機。
【請求項2】
半田によって、前記端子が第1基板及び前記第2基板に固着される請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記制御素子がスイッチング素子である請求項1に記載の作業機。
【請求項4】
前記端子が、ソース端子である請求項3に記載の作業機。
【請求項5】
前記第1基板には、インバータ回路が搭載されており、前記第2基板には、マイクロコントローラが搭載されている請求項4に記載の作業機。
【請求項6】
前記第1基板には、複数の前記第1接続孔が形成されており、前記スイッチング素子のドレイン端子及びゲート端子の少なくも一方が、前記第1接続孔を挿通し且つ前記第1接続孔と電気的に接続され、前記第1接続孔を挿通した部位において前記第1基板に固着される請求項3に記載の作業機。
【請求項7】
前記第2基板には、複数の第2接続孔が形成されており、
前記第1基板に固着された前記スイッチング素子のドレイン端子及びゲート端子の少なくも一方が、前記第2接続孔を挿通し且つ前記第2接続孔を挿通した部位において前記第2基板に固着される請求項6に記載の作業機。
【請求項8】
前記端子が、前記第1接続孔及び前記第2接続孔の両方に電気的に接続されており、前記第1接続孔又は前記第2接続孔は、前記第1基板と前記第2基板とによって構成される前記モータを制御するための制御回路に対して電気的に接続されていない請求項1に記載の作業機。
【請求項9】
前記第1接続孔及び前記第2接続孔は、スルーホールであり、前記第1基板及び前記第2基板には、スルーホールの両端の縁部においてランドが形成されており、
前記第1接続孔又は前記第2接続孔のランドが、前記第1基板及び前記第2基板に形成されたパターンに接続されていない請求項8に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の電動工具(作業機)では、モータ等を制御するためのコントローラが、モータの後方側に設けられており、コントローラは、第1回路基板及び第2回路基板を含んで構成されている。第1回路基板及び第2回路基板は、上下方向を板厚方向とする矩形板状に形成される共に、上下に並んで配置されており、コネクタを用いて互いに接続されている。これにより、第1回路基板及び第2回路基板をユニット化しつつ、コントローラの大型化を抑制することができると共に、電動工具の小型化に寄与することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記特許文献1に記載の電動工具では、上述のように、第1回路基板及び第2回路基板を互いに接続するコネクタが必要になるため、部品増加に伴うコストアップを招く傾向になる。また、第1回路基板及び第2回路基板において、上記コネクタを配置するスペースや、基板に設けられた電子部品と上記コネクタと接続するパターンを形成するためのスペースを確保する必要がある。すなわち、第1回路基板及び第2回路基板が大型化する傾向になる。このため、上記電動工具では、2枚の基板を好適にユニット化するという点において、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、好適に基板をユニット化することができる作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、モータと、前記モータを制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、電気接続用の端子を有する制御素子と、第1接続孔を有する第1基板と、前記第1基板と板厚方向に対向して配置され、第2接続孔を有する第2基板と、を含んで構成されており、前記端子が、前記第1接続孔及び前記第2接続孔を挿通すると共に、前記第1接続孔及び前記第2接続孔の少なくとも一方と電気的に接続され、前記第1接続孔及び前記第2接続孔を挿通した部位において前記第1基板及び前記第2基板に固着される作業機。
【0007】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、半田によって、前記端子が第1基板及び前記第2基板に固着される作業機である。
【0008】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記制御素子がスイッチング素子である作業機である。
【0009】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記端子が、ソース端子である作業機である。
【0010】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記第1基板には、インバータ回路が搭載されており、前記第2基板には、マイクロコントローラが搭載されている作業機である。
【0011】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記第1基板には、複数の前記第1接続孔が形成されており、前記スイッチング素子のドレイン端子及びゲート端子の少なくも一方が、前記第1接続孔を挿通し且つ前記第1接続孔と電気的に接続され、前記第1接続孔を挿通した部位において前記第1基板に固着される作業機である。
【0012】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記第2基板には、複数の第2接続孔が形成されており、前記第1基板に固着された前記スイッチング素子のドレイン端子及びゲート端子の少なくも一方が、前記第2接続孔を挿通し且つ前記第2接続孔を挿通した部位において前記第2基板に固着される作業機である。
【0013】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記端子が、前記第1接続孔及び前記第2接続孔の両方に電気的に接続されており、前記第1接続孔又は前記第2接続孔は、前記第1基板と前記第2基板とによって構成される前記モータを制御するための制御回路に対して電気的に接続されていない作業機である。
【0014】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記第1接続孔及び前記第2接続孔は、スルーホールであり、前記第1基板及び前記第2基板には、スルーホールの両端の縁部においてランドが形成されており、前記第1接続孔又は前記第2接続孔のランドが、前記第1基板及び前記第2基板に形成されたパターンに接続されていない作業機である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の1又はそれ以上の実施形態によれば、好適に基板をユニット化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係るディスクグラインダを示す左側から見た側面図である。
【
図2】
図1に示されるディスクグラインダの内部を示す左側から見た断面図である。
【
図3】
図2に示されるコントローラのスイッチング素子ユニットを示す後側から見た断面図(
図2の3-3線断面図)である。
【
図4】
図2に示されるスイッチング素子の第1回路基板及び第2回路基板への接続構造を説明するための説明図である。
【
図5】
図2に示されるコントローラの制御ブロック図である。
【
図6】(A)は、本実施形態のスイッチング素子とゲートドライバ回路との接続を説明するための斜視図であり、(B)は、比較例の端子接続構造におけるスイッチング素子とゲートドライバ回路との接続を説明するための斜視図である。
【
図7】(A)は、スイッチング素子の第1回路基板及び第2回路基板への接続構造の変形例を示す図であり、(B)は、スイッチング素子の第1回路基板及び第2回路基板への接続構造の他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて、本実施形態に係る作業機としてのディスクグラインダ10(以下、単にグラインダ10という)について説明する。なお、図面において適宜示される矢印UP、矢印FR、及び矢印LHは、それぞれグラインダ10の上側、前側、及び左側を示している。以下の説明において、上下、前後、左右の方向を用いて説明するときには、特に断りのない限り、グラインダ10の上下方向、前後方向、左右方向を示すものとする。
【0018】
グラインダ10は、加工材に研磨加工等を施す電動工具として構成されている。
図1及び
図2に示されるように、グラインダ10は、ハウジング20と、モータ50と、コントローラ70と、を含んで構成されている。以下、グラインダ10の各構成について説明する。
【0019】
(ハウジング20について)
ハウジング20は、グラインダ10の外郭を構成している。ハウジング20は、全体として前後方向に延在された中空柱状に形成されている。ハウジング20は、ハウジング20の前後方向中間部を構成するモータハウジング22と、ハウジング20の後端部を構成するテールカバー24と、ハウジング20の前端部を構成するギヤケース26と、を含んで構成されている。
【0020】
(モータハウジング22について)
モータハウジング22は、略段付き円筒状に形成されている。具体的には、モータハウジング22の前端部がファン収容部22Aとして構成され、モータハウジング22におけるファン収容部22A以外の部分がモータ収容部22Bとして構成されており、ファン収容部22Aがモータ収容部22Bよりも径方向外側へ張り出されている。ファン収容部22Aは、略矩形筒状に形成されている。モータ収容部22Bの前端部は、前側へ向かうに従い径方向外側へ傾斜して、ファン収容部22Aの後端部に接続されている。
【0021】
モータ収容部22Bの後端側部分の内部には、軸受固定部22Cが設けられており、軸受固定部22Cは、前後方向を軸方向とする略円筒状に形成されている。軸受固定部22Cの上下方向両側には、軸受連結部22Dがそれぞれ設けられており、軸受連結部22Dは軸受固定部22Cから上下方向外側へ延出されてモータ収容部22Bの内周面に接続されている。
【0022】
モータハウジング22の後側には、後述するコントローラ70を収容するためのインナケース30が設けられている。インナケース30は、前後方向に延在され且つ下側へ開放された略箱形状に形成されており、インナケース30の前端部が、モータハウジング22の軸受連結部22Dに締結固定されている。
【0023】
モータ収容部22Bの前端部における左側部には、左側へ突出したスイッチ収容部22Eが形成されており、スイッチ収容部22Eには、スイッチ32が収容されている。スイッチ32は、後述するコントローラ70のマイクロコントローラ89に電気的に接続されている。スイッチ収容部22Eの左側には、スイッチレバー34が設けられている。スイッチレバー34は、前後方向にスライド可能にスイッチ収容部22Eに連結されている。具体的には、スイッチレバー34は、オフ位置(
図1に示される位置)と、オフ位置から前側へスライドしたオン位置と、の間を、スライド可能に構成されている。そして、スイッチレバー34が、オフ位置からオン位置へスライドすることで、スイッチレバー34によって、スイッチ32がオンして、後述するモータ50が駆動するようになっている。
【0024】
(テールカバー24について)
テールカバー24は、前側へ開放された略有底円筒状に形成されている。テールカバー24は、モータハウジング22の後側に隣接配置されて、インナケース30を収容している。また、テールカバー24の後壁が、インナケース30の後壁に締結固定されている。
【0025】
(ギヤケース26について)
ギヤケース26は、左右方向から見て、略三角形を成す中空状に形成されると共に、下側へ開放されている。ギヤケース26の後端部には、被連結部26Aが形成されており、被連結部26Aは、モータハウジング22のファン収容部22Aに対応する略矩形筒状に形成されている。そして、ファン収容部22Aと被連結部26Aとが前後方向に突き合わされて、被連結部26Aが、ファン収容部22Aに締結固定されている。ギヤケース26の下側には、パッキングランド28が設けられている。パッキングランド28は、上下方向を軸方向とする段付き円筒状に形成されて、ギヤケース26に固定されている。
【0026】
ギヤケース26内には、スピンドル36が設けられており、スピンドル36は、上下方向を軸方向とする略円柱状に形成されている。スピンドル36の上端部は、ギヤケース26に保持された軸受38に回転可能に支持され、スピンドル36の上下方向中間部が、パッキングランド28に保持された軸受40に回転可能に支持されている。スピンドル36の下端部には、砥石42が取付けられており、後述するモータ50の駆動力によって、砥石42がスピンドル36と共に回転することで、加工材に対して研磨加工等を施すようになっている。また、パッキングランド28の下端部には、ホイルガード44が着脱可能に固定されており、ホイルガード44によって、砥石42の一部が覆われている。
【0027】
(モータ50について)
図2に示されるように、モータ50は、ブラシレスモータであり、モータハウジング22のモータ収容部22Bに収容されている。モータ50は、前後方向を軸方向とする回転軸50Aと、回転軸50Aの径方向外側に配置されたロータ50Bと、ロータ50Bの径方向外側に配置されたステータ50Cと、を有している。回転軸50Aの後端部が、モータ収容部22Bの軸受固定部22Cに保持された第1モータ軸受52に回転可能に支持されており、回転軸50Aの前端側部分が、ギヤケース26に保持された第2モータ軸受54に回転可能に支持されている。ロータ50Bは、回転軸50Aに一体回転可能に設けられており、ステータ50Cがモータハウジング22に保持されている。
【0028】
回転軸50Aの前端部は、ギヤケース26内に配置されており、回転軸50Aの前端部には、ピニオンギヤ56が固定されている。ピニオンギヤ56は、スピンドル36の上端側部分に設けられたベベルギヤ58に噛合されており、モータ50の駆動力が、ベベルギヤ58によってスピンドル36に伝達される。モータ50は、後述するコントローラ70に電気的に接続されている。
【0029】
回転軸50Aの前端側部分には、ファン60が一体回転可能に設けられており、ファン60は、ファン収容部22Aに収容されている。ファン60は、遠心ファンとして構成されている。具体的には、ファン60は、ファン60の中心部に後側から流入された空気を径方向外側へ流し、ファン収容部22A内に設けられたファンガイド62によって、当該空気を前側へ流すようになっている。
【0030】
(コントローラ70について)
コントローラ70は、第1基板としての第1回路基板72及び第2基板としての第2回路基板74を含んで構成されている。第1回路基板72及び第2回路基板74は、上下方向を板厚方向とし且つ前後方向を長手方向とする略矩形板状に形成されており、上下方向に並んで配置されている。具体的には、第2回路基板74が第1回路基板72の上側に所定の隙間を空けて配置されている。第1回路基板72及び第2回路基板74は、インナケース30内に配置されて、インナケース30に保持されている。
【0031】
コントローラ70には、前述したスイッチ32及びモータ50が電気的に接続されている。また、コントローラ70は、モータ50を制御するための制御回路(後述するインバータ回路84やマイクロコントローラ89(演算部)等)を有しており、スイッチレバー34のスイッチ32へのオンオフ操作に応じてモータ50を駆動制御する。
【0032】
図5には、コントローラ70の制御ブロック図が図示されている。以下、コントローラ70の電気的構成について説明する。コントローラ70の第1回路基板72は、整流回路80、インバータ回路84、電圧検出回路85、及び電流検出回路87を含んで構成されている。また、コントローラ70の第2回路基板74は、マイクロコントローラ89と、ゲートドライバ回路90と、電源供給回路91と、を含んで構成されている。
【0033】
整流回路80は、ダイオードブリッジ81及びコンデンサ82を含んで構成されている。ダイオードブリッジ81には、交流電源83に接続されており、整流回路80によって、交流電源83から供給される交流を直流に変換する。
【0034】
インバータ回路84は、整流回路80によって出力された直流電力を、モータ50の駆動電力に変換して、モータ50に供給する。インバータ回路84は、三相ブリッジ接続された6個の制御素子としてのスイッチング素子Q1~Q6を含んで構成されている。スイッチング素子Q1、Q4は、モータ50のU相コイルの一端に接続され、スイッチング素子Q2、Q5は、モータ50のV相コイルの一端に接続され、スイッチング素子Q3、Q6は、モータ50のW相コイルの一端に接続される。スイッチング素子Q1~Q6は、第2回路基板74に搭載されたゲートドライバ回路90を介してマイクロコントローラ89に接続されている。スイッチング素子Q1~Q6における各端子の第1回路基板72及び第2回路基板74への接続構造については後述する。
【0035】
電圧検出回路85は、整流回路80の出力電圧(インバータ回路84の入力側の電圧)を検出して、第1回路基板72及び第2回路基板74を接続するコネクタ86を介して、検出信号を第2回路基板74のマイクロコントローラ89に送信する。
【0036】
電流検出回路87は、モータ50における各相のステータコイルに流れる電流を検出して、第1回路基板72及び第2回路基板74を接続するコネクタ88を介して、検出信号を第2回路基板74のマイクロコントローラ89に出力する。
【0037】
マイクロコントローラ89は、ユーザによるスイッチレバー34への操作に応じて、整流回路80の出力電圧及びモータ50の各相の電流を監視しながら、インバータ回路84の制御(すなわちスイッチング素子Q1~Q6のオンオフ制御)を通じて、モータ50の駆動を制御する。マイクロコントローラ89は、モータ50におけるロータ50Bの回転位置及び角速度を、インバータ回路84の入力側の電圧と各相の電流に基づき検出する。
【0038】
ゲートドライバ回路90は、マイクロコントローラ89の制御に従い、インバータ回路84を構成するスイッチング素子Q1~Q6のゲートにPWM信号等の駆動信号を印加する。
【0039】
電源供給回路91は、コネクタ86を介して第1回路基板72の整流回路80の出力側に接続され、マイクロコントローラ89及びゲートドライバ回路90への安定化した低電圧の直流を供給するための電源回路である。電源供給回路91は、DC/DCコンバータ92及びレギュレータ93を含んで構成されている。
【0040】
(スイッチング素子Q1~Q6における端子の基板への接続構造について)
図2~
図4に示されるように、スイッチング素子Q1~Q6は、スイッチング素子ユニット95の一部を構成しており、スイッチング素子ユニット95は、第1回路基板72の前端部の下側に位置している。スイッチング素子ユニット95は、ヒートシンク96と、左右一対のカバー97と、スイッチング素子Q1~Q6と、を含んで構成されている。
【0041】
ヒートシンク96は、アルミニウム等の熱伝導性の良い金属材によって構成されている。ヒートシンク96は、前後方向から見て下側へ開放された略逆U字形状に形成されている。そして、3個のスイッチング素子Q1~Q3がヒートシンク96の右側において前後方向に並んで配置され、3個のスイッチング素子Q4~Q6がヒートシンク96の左側において前後方向に並んで配置されている。カバー97は、樹脂材によって構成され、ヒートシンク96の左右方向両側にそれぞれ配置されている。そして、ヒートシンク96及びカバー97によってスイッチング素子Q1~Q6を左右方向両側から挟み込んで、スイッチング素子Q1~Q6が保持されている。
【0042】
スイッチング素子Q1~Q6は、スイッチング素子Q1~Q6の下部を構成するモールド部QMと、モールド部QMから上側へ延出された3本の端子QT1~QT3と、を含んで構成されている。スイッチング素子Q1~Q6の端子QT1がゲート用の端子(ゲート端子QT1という)として構成され、端子QT2がドレイン用の端子(以下、ドレイン端子QT2という)として構成され、スイッチング素子Q1~Q6の端子QT3がソース用の端子(以下、ソース端子QT3という)として構成されている。
【0043】
スイッチング素子Q1~Q6では、ゲート端子QT1が、第2回路基板74に接続され、ドレイン端子QT2が第1回路基板72に接続され、ソース端子QT3が第1回路基板72及び第2回路基板74に接続されている。すなわち、
図4に示されるように、第1回路基板72には、ゲート端子QT1、ドレイン端子QT2、及びソース端子QT3のそれぞれが挿通される3箇所の第1接続孔としての第1スルーホール72Aが形成されている。つまり、第1回路基板72には、合計18箇所の第1スルーホール72Aが形成されている。第1回路基板72には、第1スルーホール72Aの両端部の縁部において、第1ランド72Bが形成されている。また、第2回路基板74には、ゲート端子QT1及びソース端子QT3のそれぞれが挿通される2箇所の第2接続孔としての第2スルーホール74Aが形成されている。つまり、第2回路基板74には、合計12箇所の第2スルーホール74Aが形成されている。第2回路基板74には、第2スルーホール74Aの両端部の縁部において、第2ランド74Bが形成されている。第2スルーホール74Aは、第1スルーホール72Aと同軸上に位置している。
【0044】
そして、ゲート端子QT1が、第1スルーホール72A及び第2スルーホール74Aを挿通し、第2スルーホール74Aの第2ランド74Bにおいて半田付けされている。すなわち、ゲート端子QT1が、第2スルーホール74Aを挿通した部位において、第2回路基板74に固着されると共に、第2スルーホール74Aと電気的に接続されて、第2回路基板74に形成されたパターンを介してゲートドライバ回路90(マイクロコントローラ89)に接続されている。
【0045】
また、ドレイン端子QT2は、第1スルーホール72Aを挿通し、第1スルーホール72Aの第1ランド72Bにおいて半田付けされている。すなわち、ドレイン端子QT2が、第1スルーホール72Aを挿通した部位において、第1回路基板72に固着されると共に、第1スルーホール72Aと電気的に接続されて、第1回路基板72に形成されたパターンを介してインバータ回路84に接続されている。なお、ドレイン端子QT2は、第1スルーホール72Aのみを挿通しているため、モールド部QMからの延出長さが、ゲート端子QT1よりも短く設定されている。
【0046】
また、ソース端子QT3が、第1スルーホール72A及び第2スルーホール74Aを挿通し、第1スルーホール72Aの第1ランド72B及び第2スルーホール74Aの第2ランド74Bに半田付けされている。すなわち、ソース端子QT3が、第1スルーホール72Aを挿通した部位において、第1回路基板72に固着されると共に、第2スルーホール74Aを挿通した部位において、第2回路基板74に固着される。また、ソース端子QT3は、第1スルーホール72Aと電気的に接続されて、第1回路基板72に形成されたパターンを介してインバータ回路84と接続される。さらに、ソース端子QT3は、第2スルーホール74Aと電気的に接続されて、第2回路基板74に形成されたパターンを介してゲートドライバ回路90(マイクロコントローラ89)に接続されている。
【0047】
このように、コントローラ70では、スイッチング素子Q1~Q6のソース端子QT3によって、第1回路基板72と第2回路基板74とを電気的及び機械的に接続している。
【0048】
(作用効果)
次に、本実施形態のグラインダ10の作用及び効果について説明する。
【0049】
上記のように構成されたグラインダ10による加工時には、作業者が、スイッチレバー34をオフ位置から前側へスライドすることで、スイッチ32がオンする。これにより、コントローラ70の制御によって、モータ50が駆動して、スピンドル36及び砥石42が回転する。よって、グラインダ10による加工材に対する研磨加工等を施すことができる。
【0050】
また、コントローラ70は、板厚方向(上下方向)に並ぶ第1回路基板72及び第2回路基板74を有しており、第1回路基板72には、インバータ回路84が搭載され、第2回路基板74には、マイクロコントローラ89が搭載されている。さらに、第1回路基板72には、第1スルーホール72Aが形成され、第2回路基板74には、第2スルーホール74Aが形成されており、第1スルーホール72A及び第2スルーホール74Aが同軸上に配置されている。
【0051】
ここで、スイッチング素子Q1~Q6のソース端子QT3が、第1スルーホール72A及び第2スルーホール74Aを挿通すると共に、第1スルーホール72Aの第1ランド72B及び第2スルーホール74Aの第2ランド74Bに半田付けされている。このため、ソース端子QT3が、第1スルーホール72A及び第2スルーホール74Aに電気的に接続されると共に、第1スルーホール72A及び第2スルーホール74Aを挿通した部位において、第1回路基板72及び第2回路基板74に固着される。これにより、コントローラ70において、第1回路基板72及び第2回路基板74を好適にユニット化することができる。以下、この点について、
図6(B)に示される比較例の端子接続構造と比較しつつ説明する。
【0052】
比較例の端子接続構造では、スイッチング素子Q1~Q6のゲート端子QT1、ドレイン端子QT2、及びソース端子QT3が、第1回路基板72の第1スルーホール72Aに挿入され半田付けされている。また、比較例の端子接続構造では、第1回路基板72と第2回路基板74とを接続するコネクタ100が設けられている。さらに、第1回路基板72には、コネクタ100とスイッチング素子Q1~Q6のゲート端子QT1及びソース端子QT3とを接続するための2本のパターンP1が形成されており、第2回路基板74には、コネクタ100とゲートドライバ回路90とを接続するための2本のパターンP2が形成されている。これにより、比較例の端子接続構造では、第1回路基板72及び第2回路基板74において、コネクタ100を設けるためのスペースが必要になる。また、第1回路基板72においてパターンP1を設けるためのスペースが必要になり、第2回路基板74においてパターンP2を設けるためのスペースが必要になる。
【0053】
これに対して、本実施形態では、
図6(A)に示されるように、スイッチング素子Q1~Q6のソース端子QT3が、第1スルーホール72A及び第2スルーホール74Aを挿通すると共に、第1スルーホール72Aの第1ランド72B及び第2スルーホール74Aの第2ランド74Bに半田付けされている。これにより、ソース端子QT3を第2回路基板74に直接的に接続することができるため、比較例の端子接続構造と比べて、ソース端子QT3及びゲートドライバ回路90を接続するためのコネクタ100と、第1回路基板72におけるパターンP1と、を省略することができる。その結果、コントローラ70のコストダウン及び第1回路基板72及び第2回路基板74の小型化に寄与することができる。したがって、本実施形態のグラインダ10によれば、コントローラ70において、第1回路基板72及び第2回路基板74を好適にユニット化することができる。
【0054】
しかも、ソース端子QT3が、第1スルーホール72A及び第2スルーホール74Aを挿通した部位において、第1回路基板72及び第2回路基板74に固着される。これにより、ソース端子QT3を用いて、第1回路基板72と第2回路基板74との間の接続強度を高くすることができる。さらに、上述のように、比較例の端子接続構造と比べて、第1回路基板72のパターンP1を省略することができると共に、第2回路基板74のパターンP2の長さを短くすることができる。これにより、コントローラ70におけるノイズの発生低減に寄与することができる。この点からも、コントローラ70において、第1回路基板72及び第2回路基板74を好適にユニット化することができる。
【0055】
また、スイッチング素子Q1~Q6のゲート端子QT1が、第1スルーホール72A及び第2スルーホール74Aを挿通し且つ、第2スルーホール74Aに半田付けされている。このため、ゲート端子QT1が、第2スルーホール74Aに電気的に接続されると共に、第2スルーホール74Aを挿通した部位において、第2回路基板74に固着される。これにより、ゲート端子QT1を第2回路基板74に直接的に接続することができるため、比較例の端子接続構造と比べて、ゲート端子QT1とゲートドライバ回路90とを接続するためのコネクタ100を省略することができると共に、第1回路基板72においてゲート端子QT1とコネクタ100とを接続するパターンP1を省略することができる。したがって、コントローラ70において、第1回路基板72及び第2回路基板74を一層好適にユニット化することができる。
【0056】
なお、本実施の形態では、スイッチング素子Q1~Q6のゲート端子QT1が、第2回路基板74に固着され、ドレイン端子QT2が第1回路基板72に固着され、ソース端子QT3が第1回路基板72及び第2回路基板74に固着されている。これに代えて、
図7(A)に示されるように、ゲート端子QT1、ドレイン端子QT2、及びソース端子QT3を第1回路基板72及び第2回路基板74に固着するように構成してもよい。すなわち、この場合には、ドレイン端子QT2が挿通される第2スルーホール74Aが第2回路基板74に形成される。そして、ゲート端子QT1、ドレイン端子QT2、及びソース端子QT3が、第1スルーホール72A及び第2スルーホール74Aを挿通し、第1スルーホール72Aの第1ランド72B及び第2スルーホール74Aの第2ランド74Bに半田付けされる。これにより、ゲート端子QT1、ドレイン端子QT2、及びソース端子QT3が第1回路基板72及び第2回路基板74に固着される。その結果、スイッチング素子Q1~Q6による第1回路基板72及び第2回路基板74の接続強度を一層高くすることができる。なお、この場合には、ゲート端子QT1が挿通される第1スルーホール72Aの第1ランド72Bは、インバータ回路84に電気的に接続されておらず、ドレイン端子QT2が挿通される第2スルーホール74Aの第2ランド74Bは、ゲートドライバ回路90(マイクロコントローラ89)に電気的に接続されていない。つまり、ゲート端子QT1は、第1スルーホール72Aに電気的に接続されているものの、モータ50を制御するための制御回路(インバータ回路84)には電気的に接続されていない。同様に、ドレイン端子QT2は、第2スルーホール74Aに電気的に接続されているものの、モータ50を制御するための制御回路(マイクロコントローラ89)には電気的に接続されていない。
【0057】
また、コントローラ70では、インバータ回路84等が第1回路基板72に搭載され、マイクロコントローラ89等が、第2回路基板74に搭載されている。これに代えて、インバータ回路84等を第2回路基板74に搭載し、マイクロコントローラ89等を第1回路基板72に搭載するように構成してもよい。この場合には、
図7(B)に示されるように、スイッチング素子Q1~Q6のゲート端子QT1を、第1回路基板72に固着し、ドレイン端子QT2を第2回路基板74に固着し、ソース端子QT3を第1回路基板72及び第2回路基板74に固着するように構成してもよい。
【0058】
また、本実施の形態では、スイッチング素子Q1~Q6におけるソース端子QT3が、第1回路基板72及び第2回路基板74に固着されて、第1回路基板72及び第2回路基板74を電気的及び機械的に接続する端子接続構造を成しているが、本発明の端子接続構造を他の電子部品に適用してもよい。例えば、整流回路80のコンデンサ82に本発明の端子接続構造を適用してもよい。この場合でも、コネクタ86の端子数の少なくできると共に、第1回路基板72及び第2回路基板74の小型化に寄与することができる。
【符号の説明】
【0059】
10 ディスクグラインダ(作業機)
50 モータ
70 コントローラ
72 第1回路基板(第1基板)
72A 第1スルーホール(第1接続孔)
72B 第1ランド
74 第2回路基板(第2基板)
74A 第2スルーホール(第2接続孔)
74B 第2ランド
84 インバータ回路
89 マイクロコントローラ
Q1 スイッチング素子(制御素子)
Q2 スイッチング素子(制御素子)
Q3 スイッチング素子(制御素子)
Q4 スイッチング素子(制御素子)
Q5 スイッチング素子(制御素子)
Q6 スイッチング素子(制御素子)
QT1 ゲート端子(端子)
QT2 ドレイン端子(端子)
QT3 ソース端子(端子)