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  • 特開-プラスチック用のエッチング溶液 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108497
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】プラスチック用のエッチング溶液
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/24 20060101AFI20240805BHJP
   C25D 5/56 20060101ALI20240805BHJP
   C25B 1/01 20210101ALI20240805BHJP
   C23C 28/02 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
C23C18/24
C25D5/56 A
C25B1/01 Z
C23C28/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012899
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】391053582
【氏名又は名称】キザイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100206302
【弁理士】
【氏名又は名称】落志 雅美
(72)【発明者】
【氏名】林 大輔
(72)【発明者】
【氏名】沖山 大介
(72)【発明者】
【氏名】尾野 博三
(72)【発明者】
【氏名】石川 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】川又 大樹
(72)【発明者】
【氏名】橋田 岳之
【テーマコード(参考)】
4K021
4K022
4K024
4K044
【Fターム(参考)】
4K021AB25
4K021DC15
4K022AA14
4K022AA47
4K022BA14
4K022CA02
4K022CA03
4K022CA06
4K022CA07
4K022CA18
4K022CA21
4K022DA01
4K022DB26
4K022EA02
4K022EA04
4K024AA09
4K024AB17
4K024BA12
4K024BB20
4K024CA02
4K024CA04
4K024DA10
4K024GA02
4K044AA16
4K044AB06
4K044BA06
4K044BB03
4K044BC09
4K044CA04
4K044CA15
4K044CA18
(57)【要約】      (修正有)
【課題】プラスチックにめっきを施す際のエッチング溶液において、有害な6価クロムを使用しない安定なエッチング溶液を提供する。
【解決手段】エッチング溶液として、Mn(III)イオンを含む硫酸とリン酸との混酸の溶液を使用する。好ましい溶液組成は、硫酸の濃度が7.0~12.5mol/L、リン酸の濃度が1.4~7.5mol/L、Mn(III)イオンの濃度が0.005~0.2mol/Lのものである。Mn(III)イオンは、酸化剤によるMn(II)イオンの酸化によって生成されたもの又はMn(II)イオンの電気分解による酸化によって生成されたものであってもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックにめっきを施す工程で使用されるプラスチック用のエッチング溶液であって、Mn(III)イオンを含む硫酸とリン酸との混酸の溶液からなることを特徴とするプラスチック用のエッチング溶液。
【請求項2】
プラスチックにめっきを施す工程で使用されるプラスチック用のエッチング溶液であって、Mn(III)イオンを含む硫酸とリン酸との混酸の溶液からなり、かつ硫酸の濃度が7.0~12.5mol/Lの範囲、リン酸の濃度が1.4~7.5mol/Lの範囲、Mn(III)イオンの濃度が0.005~0.2mol/Lの範囲であることを特徴とするプラスチック用のエッチング溶液。
【請求項3】
プラスチックにめっきを施す工程で使用されるプラスチック用のエッチング溶液であって、Mn(III)イオンを含む硫酸とリン酸との混酸の溶液からなり、かつ硫酸の濃度が10.3~11.5mol/Lの範囲、リン酸の濃度が1.9~3.0mol/Lの範囲、Mn(III)イオンの濃度が0.01~0.1mol/Lの範囲であることを特徴とするプラスチック用のエッチング溶液。
【請求項4】
Mn(III)イオンが、Mn(II)イオンの電気分解による酸化によって生成されたものであることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のプラスチック用のエッチング溶液。
【請求項5】
Mn(III)イオンが、酸化剤によるMn(II)イオンの酸化によって生成されたものであることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のプラスチック用のエッチング溶液。
【請求項6】
Mn(III)イオンが、三二酸化マンガン(III)、四三酸化マンガン(II,III)、硫酸マンガン(III)、ピロリン酸第二マンガン(III)、三酢酸マンガン(III)などのMn(III)イオンを含む化合物により供給されたものであることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のプラスチック用のエッチング溶液。
【請求項7】
プラスチックにめっきを施す際のエッチング工程において、Mn(III)イオンを含む硫酸とリン酸との混酸の溶液からなり、かつ硫酸の濃度が7.0~12.5mol/Lの範囲、リン酸の濃度が1.4~7.5mol/Lの範囲、Mn(III)イオンの濃度が0.005~0.2mol/Lの範囲であるエッチング溶液でプラスチックをエッチングする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラスチック表面に金属めっきを施す工程で使用されるエッチング溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックに機械的強度や装飾性を与えるために従来から金属めっきが施されており、外装部品など、めっきと素材の密着を必要とされる分野ではクロム酸と硫酸を用いた溶液でプラスチック表面をエッチングする工程が採用される。
その際に使用されるクロム酸は有害性の高い6価クロムの化合物であり、製造に従事する作業者や自然環境に対する有害性が高く、環境規制の対象となり、将来使用が禁止される可能性が高いことからクロムを含まないエッチング溶液の開発の要望が高まっている。
【0003】
そこで、クロムを含まないクロムフリーの処理液として、マンガンを含むエッチング溶液が提案されてきた(特許文献1~3)。
クロムを含まないエッチング溶液として、過マンガン酸塩(Mn(VII)イオン)を用いたエッチング溶液が検討されてきたが、強酸性の液中ではMn(VII)イオンは低い価数のMnイオンに還元されやすく、水溶性のMn(II)イオンや不溶性のMn(IV)イオンの化合物が生成する。
特に蓄積した不溶性のMn(IV)イオンの化合物はプラスチックに吸着することで、外観異常やエッチングを妨害し密着強度を低下させるなど、品質上の問題の原因となるため、不溶性のMn(IV)イオンの化合物を除去する必要がある。
また、Mn(VII)イオンは低い価数のMnイオンに還元されやすいため濃度が減少しやすく、エッチング力を長期的に維持することが難しいなどの理由により、工業的に安定して使用することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5830807号
【特許文献2】特許第6195857号
【特許文献3】特許第5406186号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、上記従来技術の問題点を解決して、エッチング力を長期的に維持することができ、工業的に安定して使用できるようにする技術の提案が期待されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究の結果、硫酸とリン酸の混酸の溶液にMn(III)イオンを加えたエッチング溶液にプラスチックを浸漬処理することで、クロム酸と同程度の密着力を有するエッチングを行うことに成功した。
硫酸とリン酸の混酸の溶液中ではMn(III)イオンが安定して存在し、プラスチックをこのエッチング溶液で処理した後、触媒付与工程、活性化工程、無電解めっき工程、電気めっき工程を経ることでプラスチック表面を良好に金属化することが可能となった。
すなわち本発明は硫酸とリン酸の混酸の溶液にMn(III)イオンを含有せしめてなることを特徴とする下記のエッチング溶液及びプラスチックをエッチングする方法である。
[1] プラスチックにめっきを施す工程で使用されるプラスチック用のエッチング溶液であって、Mn(III)イオンを含む硫酸とリン酸との混酸の溶液からなることを特徴とするプラスチック用のエッチング溶液。
[2] プラスチックにめっきを施す工程で使用されるプラスチック用のエッチング溶液であって、Mn(III)イオンを含む硫酸とリン酸との混酸の溶液からなり、かつ硫酸の濃度が7.0~12.5mol/Lの範囲、リン酸の濃度が1.4~7.5mol/Lの範囲、Mn(III)イオンの濃度が0.005~0.2mol/Lの範囲であることを特徴とするプラスチック用のエッチング溶液。
[3] プラスチックにめっきを施す工程で使用されるプラスチック用のエッチング溶液であって、Mn(III)イオンを含む硫酸とリン酸との混酸の溶液からなり、かつ硫酸の濃度が10.3~11.5mol/Lの範囲、リン酸の濃度が1.9~3.0mol/Lの範囲、Mn(III)イオンの濃度が0.01~0.1mol/Lの範囲であることを特徴とするプラスチック用のエッチング溶液。
[4] Mn(III)イオンが、Mn(II)イオンの電気分解による酸化によって生成されたものであ
ることを特徴とする[1]~[3]の何れか1項に記載のプラスチック用のエッチング溶液。
[5] Mn(III)イオンが、酸化剤によるMn(II)イオンの酸化によって生成されたものであることを特徴とする[1]~[3]の何れか1項に記載のプラスチック用のエッチング溶液。
[6] Mn(III)イオンが、三二酸化マンガン(III)、四三酸化マンガン(II,III)、硫酸マンガン(III)、ピロリン酸第二マンガン(III)、三酢酸マンガン(III)などのMn(III)イオンを含む化合物により供給されたものであることを特徴とする[1]~[3]の何れか1項に記載のプラスチック用のエッチング溶液。
[7] プラスチックにめっきを施す際のエッチング工程において、Mn(III)イオンを含む硫酸とリン酸との混酸の溶液からなり、かつ硫酸の濃度が7.0~12.5mol/Lの範囲、リン酸の濃度が1.4~7.5mol/Lの範囲、Mn(III)イオンの濃度が0.005~0.2mol/Lの範囲であるエッチング溶液でプラスチックをエッチングする方法。
【発明の効果】
【0007】
プラスチックのエッチング溶液にMn(VII)イオンを使用する液は不溶性のMn(IV)イオンの化合物が生成しやすいため、Mn(IV)イオンの酸化物などの不溶性化合物が、プラスチックの表面に付着して密着強度や外観品質を損なう問題があるが、本発明のエッチング溶液は硫酸とリン酸の混合溶液にMn(III)イオンを含有させたもので、本発明の溶液を使用するとエッチング処理の際にMn(III)イオン濃度が安定し、Mn(IV)イオンの酸化物など
の不溶性化合物が生成することは無く、めっき皮膜の密着強度や外観品質が安定したものとなる。
また、本発明のエッチング溶液は6価クロムおよびクロムイオンを含まず、自然環境および人体や生物にとって有害な6価クロムの発生源が無いため、6価クロムによる自然環境および製造時の作業環境へのリスクを排除することができる。
さらに、本発明のエッチング溶液を用いてプラスチックを処理した後は水洗し、触媒付与工程、活性化工程、無電解めっき工程、電気めっき工程を経ることでプラスチック表面を金属化することが可能であり、触媒工程以降の工程は従来の工程を流用することができる。
さらにまた、本発明のエッチング溶液はMn(III)イオンを使用することで、Mn(VII)イオンを使用する過マンガン酸系のクロムフリーエッチング溶液で課題となる短時間での濃度低下が生じにくい。
そして、本発明のエッチング溶液にて処理した樹脂は、図2、3に示すように表面に微細な孔が形成され、そこにめっき皮膜が析出し充填されることで強い密着強度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1、4、10および比較例1、2について、68℃に加温して保持し、8、16、24時間経過時のMn(III)濃度を分析し、初期濃度との相対比を示したグラフと、比較例5について、68℃に加温して保持し、2、4、8時間経過時のMn(VII)の濃度を分析し、初期濃度との相対比として示したグラフである。
図2】実施例1について68℃に加温して1時間経過した後、68℃、20分浸漬処理したABS樹脂を7500倍で観察したSEM写真
図3】実施例1について68℃に加温して24時間経過した後、68℃、20分浸漬処理したABS樹脂を7500倍で観察したSEM写真
図4】比較例2について68℃に加温して1時間経過した後、68℃、20分浸漬処理したABS樹脂を7500倍で観察したSEM写真
図5】比較例2について68℃に加温して24時間経過した後、68℃、20分浸漬処理したABS樹脂を7500倍で観察したSEM写真
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のエッチング溶液は硫酸と、リン酸と、Mn(III)イオンの3種を必須成分とする溶液であることを特徴とする。
硫酸濃度の範囲は7.0~12.5mol/Lが好ましく、より好ましくは10.3~11.5moL/Lである。
硫酸濃度が7.0mol/L未満の場合はプラスチック表面の粗化が不十分となり、密着強度が弱くなり、Mn(III)イオンの安定性が低下する。また、硫酸濃度が12.5mol/Lを超えるとプラスチックの表面が過剰に粗化され表層が脆くなることで密着強度が弱くなる。
リン酸濃度の範囲は1.4~7.5mol/Lが好ましく、より好ましくは1.9~3.0mol/Lである。
リン酸濃度が1.4mol/L未満の場合はプラスチック表面の粗化が不十分となり、密着強度が弱くなり、Mn(III)イオンの安定性が低下する。また、リン酸濃度が7.5mol
/Lを超えるとプラスチックの表面が過剰に粗化され表層が脆くなることで密着強度が弱くなる。
リン酸の供給源は特に限定されないが、リン酸の他に五酸化二リン、ピロリン酸、メタリン酸、ポリリン酸などが使用できる。
【0010】
Mn(III)イオン濃度の範囲は0.005~0.2mol/Lが好ましく、より好ましくは0.01~0.1mol/Lである。
Mn(III)イオン濃度が0.005mol/L未満の場合はプラスチック表面の粗化が不十分となり、密着強度が弱くなり、また、Mn(III)イオン濃度が0.2mol/Lを超えるとプラスチックの表面が過剰に粗化され表層が脆くなることで密着強度が弱くなる。
Mn(III)イオンは、薬剤として添加するほかに、硫酸とリン酸を混合した溶液にMn(II)イオンを溶解し、電解酸化あるいは酸化剤の添加によりMn(II)イオンを酸化して生成することができる。
Mn2+ ⇔ Mn3+ + e-
薬剤として添加する場合のMn(III)イオンの供給源は特に限定されないが、三二酸化マンガン(III)、四三酸化マンガン(II,III)、硫酸マンガン(III)、ピロリン酸第二マンガン(III)、三酢酸マンガン(III)などが使用できる。これらの化合物のうち1種または2種以上を混合して使用できる。
【0011】
Mn(II)イオンを用いて電解酸化あるいは酸化剤により酸化してMn(III)イオンを生成する場合のMn(II)イオンの供給源は特に限定されないが、硫酸マンガン(II)、リン酸マンガン(II)、炭酸マンガン(II)、酢酸マンガン(II)、酸化マンガン(II)、メタケイ酸マンガン(II)、塩化マンガン(II)、硫化マンガン(II)、水酸化マンガン(II)などが使用できる。これらの化合物のうち1種または2種以上を混合して使用できる。
【0012】
電解酸化に使用する電極は白金、白金被覆チタン、酸化イリジウム被覆チタン、二酸化鉛被覆チタンなどが使用できる。
酸化剤には過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム、ビスマス酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、過臭素酸塩などが使用できる。これらの化合物のうち1種または2種以上を混合して使用できる。特に過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウムが適している。
【0013】
こうして調整したエッチング溶液を60~70℃の温度とし、これにプラスチックを10~30分浸漬することでプラスチックの表面がエッチングされる。
エッチング溶液の温度は、60℃未満ではエッチングの速度が遅く、70℃を超えるとプラスチックの種類によって変形を引き起こす恐れがある。
したがってエッチング溶液は好ましくは60~70℃、より好ましくは66~70℃で使用する。
本発明のエッチング溶液は多種のプラスチックのエッチングが可能であり、例えばアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ポリカーボネート(PC)、PC/ABSアロイ樹脂、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)、変性ポリフェニレンオキシド(m-PPO)、ポリスルホン(PSF)等が挙げられる。
【実施例0014】
本発明の実施例について、比較例をまじえて説明する。
まず、表2及び表3に記載の各種エッチング溶液を作製した。
それら溶液の30分経過後のMn(III)イオン濃度を初期濃度:100%とし、その後エッチング溶液を68℃に加温して維持し、24時間及び8時間経過後のMn(III)イオン濃度を初期濃度対比として百分率で示し安定性を評価した。
なお、実施例1~10、比較例1~4のMn(III)は、硫酸マンガン(II)を過マンガン酸カリウム(VII)で酸化して生成させたものである。
Mn(VII)イオンを用いたエッチング溶液についてはMn(VII)イオン濃度を分析した。
Mn(III)イオン濃度およびMn(VII)イオン濃度は可視吸光光度法により分析を行った。

その結果を表2、表3及び図1に示す。
【0015】
無電解めっきおよび電気めっきによる評価
また、以下の条件、評価方法により、無電解ニッケルめっきの析出性と密着性を評価した。
素材 :ABS樹脂(UMG ABSR 3001M) 50mm×100mm×3mm
素材に導電層となる無電解ニッケルめっきを形成した後、硫酸銅めっきを約40μm施し、銅めっき皮膜を形成した。その後70℃で1時間加熱処理し、サンプルを室温に冷ました後、素材とめっき皮膜に1.0cm幅の切れ込みを入れ、めっき皮膜を垂直に引っ張りピール強度を測定した。
また68℃にて24時間加温して維持した後のエッチング溶液を使用して同様にピール強度を測定した。
なお、めっきの全処理工程を表1に示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0016】
〔結果と考察〕
表2及び図1に示すように、本発明はMn(III)イオンを含む硫酸とリン酸との混酸の溶液を、プラスチック用のエッチング溶液として用いることで、Mn(III)イオン濃度の経時的な減少を抑制することが理解できる。
図2は実施例1について68℃に加温して1時間経過した後、68℃、20分浸漬処理したABS樹脂を7500倍で観察したSEM写真であり、適度にエッチングされた状態のため9.8N/cmの密着強度が得られることが確認された。
図3は実施例1について68℃に加温して24時間経過した後、68℃、20分浸漬処理したABS樹脂を7500倍で観察したSEM写真であり、適度にエッチングされた状態のため9.5N/cmの密着強度を維持することが確認された。
図4は比較例2について68℃に加温して1時間経過した後、68℃、20分浸漬処理したABS樹脂を7500倍で観察したSEM写真であり、エッチングが弱いため6.9N/cmと密着強度が弱いことが確認された。
図5は比較例2について68℃に加温して24時間経過した後、68℃、20分浸漬処理したABS樹脂を7500倍で観察したSEM写真であり、ほとんど粗化されておらず、0.1N/cm以下の密着強度しか得られないことが確認された。
上記結果から、本発明はMn(III)イオンを含む硫酸とリン酸との混酸の溶液を、プラスチック用のエッチング溶液として用いることで、クロム酸エッチングと同程度の密着強度が安定して得られることが解る。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明のエッチング溶液はプラスチックのめっきを行うための工程に使用できる。また、表面が均質に粗面化されたプラスチック基体を製作するために使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5