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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108505
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20240805BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240805BHJP
   G02B 5/32 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B5/30
G02B5/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012911
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小村 真一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 泰啓
(72)【発明者】
【氏名】廣澤 仁
【テーマコード(参考)】
2H149
2H199
2H249
【Fターム(参考)】
2H149AA01
2H149AB01
2H149BA02
2H149DA04
2H149EA06
2H149EA07
2H149EA10
2H149FC09
2H199CA23
2H199CA25
2H199CA30
2H199CA63
2H199CA65
2H199CA68
2H199CA74
2H199CA82
2H249CA05
2H249CA09
2H249CA22
(57)【要約】
【課題】視度調整機能を実現する。
【解決手段】一実施形態によれば、表示装置は、直線偏光の表示光を出射するように構成された表示モジュールと、前記表示モジュールに対向する第1位相差板、前記第1位相差板に対向するホログラフィック光学素子、及び、前記ホログラフィック光学素子に対向する第2位相差板を備える第1構造体と、前記第2位相差板に対向する反射偏光板、及び、前記反射偏光板に対向する透明基板を備える第2構造体と、前記第1構造体と前記第2構造体との間隔を可変するための可変機構と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線偏光の表示光を出射するように構成された表示モジュールと、
前記表示モジュールに対向する第1位相差板、前記第1位相差板に対向するホログラフィック光学素子、及び、前記ホログラフィック光学素子に対向する第2位相差板を備える第1構造体と、
前記第2位相差板に対向する反射偏光板、及び、前記反射偏光板に対向する透明基板を備える第2構造体と、
前記第1構造体と前記第2構造体との間隔を可変するための可変機構と、
を備える、表示装置。
【請求項2】
前記第1位相差板及び前記第2位相差板は、1/4波長板である、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
直線偏光の表示光を出射するように構成された表示モジュールと、
前記表示モジュールに対向する第1位相差板、前記第1位相差板に対向する半透過層、及び、前記半透過層に対向する第2位相差板を備える第1構造体と、
前記第2位相差板に対向する反射偏光板、前記反射偏光板に対向する第3位相差板、及び、前記第3位相差板に対向しレンズ作用を有する液晶素子を備える第2構造体と、
前記第1構造体と前記第2構造体との間隔を可変するための可変機構と、
を備える、表示装置。
【請求項4】
前記第1位相差板、前記第2位相差板、及び、前記第3位相差板は、1/4波長板である、請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記液晶素子は、第1液晶分子及び第2液晶分子を含む複数の液晶分子の配向方向が固定された状態で硬化した液晶層を有し、
前記液晶層は、平面視において、複数の前記第1液晶分子が同一方向に配向した第1環状領域と、前記第1環状領域の外側で複数の前記第2液晶分子が同一方向に配向した第2環状領域と、を有し、
前記第1液晶分子の配向方向は、前記第2液晶分子の配向方向とは異なる、請求項3に記載の表示装置。
【請求項6】
さらに、筐体と、前記筐体に固定された支持体と、を備え、
前記第1構造体は、前記支持体により支持され、
前記表示モジュールは、前記筐体と前記第1構造体との間に配置され、
前記第2構造体は、前記可変機構により支持され、
前記可変機構は、前記筐体に固定され、前記第2構造体を移動可能に構成されている、請求項1または3に記載の表示装置。
【請求項7】
さらに、筐体と、前記筐体に固定された支持体と、を備え、
前記第2構造体は、前記支持体により支持され、
前記表示モジュールは、前記筐体と前記第1構造体との間に配置され、前記第1構造体に固定され、
前記第1構造体及び前記表示モジュールは、前記可変機構により支持され、
前記可変機構は、前記筐体に固定され、前記第1構造体及び前記表示モジュールを移動可能に構成されている、請求項1または3に記載の表示装置。
【請求項8】
さらに、筐体と、前記筐体に固定された支持体と、を備え、
前記第2構造体は、前記支持体により支持され、
前記表示モジュールは、前記筐体と前記第1構造体との間に配置され、前記筐体に固定され、
前記第1構造体は、前記可変機構により支持され、
前記可変機構は、前記筐体に固定され、前記第1構造体を移動可能に構成されている、請求項1または3に記載の表示装置。
【請求項9】
前記表示モジュールは、照明装置と、前記照明装置と前記第1構造体との間に配置された液晶パネルと、を備えている、請求項1または3に記載の表示装置。
【請求項10】
前記第2位相差板と前記反射偏光板との間に空気層が介在している、請求項1または3に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、ユーザの頭部に装着されるヘッドマウントディスプレイを用いて、例えば仮想現実(VR:VirtualReality)を提供する技術が注目されている。ヘッドマウントディスプレイは、ユーザの眼前に設けられたディスプレイに画像が表示されるように構成されている。これにより、ヘッドマウントディスプレイを装着したユーザは、臨場感のある仮想現実空間を体験することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2003-504663号公報
【特許文献2】特表2003-529795号公報
【特許文献3】特開2018-106160号公報
【特許文献4】特開2019-53152号公報
【特許文献5】特開2019-148626号公報
【特許文献6】特開2019-148627号公報
【特許文献7】特開2004-233906号公報
【特許文献8】特表2020-523620号公報
【特許文献9】特開2022-63533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態の目的は、視度調整機能を備えた表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態によれば、表示装置は、
直線偏光の表示光を出射するように構成された表示モジュールと、前記表示モジュールに対向する第1位相差板、前記第1位相差板に対向するホログラフィック光学素子、及び、前記ホログラフィック光学素子に対向する第2位相差板を備える第1構造体と、前記第2位相差板に対向する反射偏光板、及び、前記反射偏光板に対向する透明基板を備える第2構造体と、前記第1構造体と前記第2構造体との間隔を可変するための可変機構と、を備える。
【0006】
一実施形態によれば、表示装置は、
直線偏光の表示光を出射するように構成された表示モジュールと、前記表示モジュールに対向する第1位相差板、前記第1位相差板に対向する半透過層、及び、前記半透過層に対向する第2位相差板を備える第1構造体と、前記第2位相差板に対向する反射偏光板、前記反射偏光板に対向する第3位相差板、及び、前記第3位相差板に対向しレンズ作用を有する液晶素子を備える第2構造体と、前記第1構造体と前記第2構造体との間隔を可変するための可変機構と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、ヘッドマウントディスプレイ1の外観の一例を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示したヘッドマウントディスプレイ1の構成の概要を説明するための図である。
図3図3は、表示装置DSPの第1構成例を示す断面図である。
図4図4は、表示装置DSPの光学作用を説明するための図である。
図5図5は、第2構造体4Bの移動前及び移動後の様子を示す図である。
図6図6は、図5に示した表示装置の光学システムを反射偏光板PRの位置で展開した図である。
図7図7は、表示装置DSPの第2構成例を示す断面図である。
図8図8は、構造体BDの移動前及び移動後の様子を示す図である。
図9図9は、第1構造体4Aの移動前及び移動後の様子を示す図である。
図10図10は、表示装置DSPの第4構成例を示す断面図である。
図11図11は、図10に示した液晶素子10の一例を示す断面図である。
図12図12は、図11に示した液晶層LC1における配向パターンの一例を示す平面図である。
図13図13は、表示装置DSPの光学作用を説明するための図である。
図14図14は、第2構造体4Bの移動前及び移動後の様子を示す図である。
図15図15は、図14に示した表示装置の光学システムを反射偏光板PR及び半透過層HMの位置で展開した図である。
図16図16は、表示装置DSPの第5構成例を示す断面図である。
図17図17は、構造体BDの移動前及び移動後の様子を示す図である。
図18図18は、第1構造体4Aの移動前及び移動後の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸、及び、Z軸を記載する。X軸に沿った方向を第1方向Xと称し、Y軸に沿った方向を第2方向Yと称し、Z軸に沿った方向を第3方向Zと称する。X軸及びY軸によって規定される面をX-Y平面と称し、X-Y平面を見ることを平面視という。
【0010】
《基本構成》
図1は、ヘッドマウントディスプレイ1の外観の一例を示す斜視図である。
【0011】
ヘッドマウントディスプレイ1は、例えば、右眼用の表示装置DSPRと、左眼用の表示装置DSPLと、を備えている。ユーザがヘッドマウントディスプレイ1を頭部に装着した状態では、表示装置DSPRは当該ユーザの右眼の眼前に位置するように配置され、また、表示装置DSPLは当該ユーザの左眼の眼前に位置するように配置されている。
【0012】
図2は、図1に示したヘッドマウントディスプレイ1の構成の概要を説明するための図である。
【0013】
ヘッドマウントディスプレイ1は、表示装置DSPR及び表示装置DSPLを収容する筐体HSと、表示装置DSPR及び表示装置DSPLの各々に設けられた可変機構SLと、を備えている。
【0014】
表示装置DSPRは、表示装置DSPLと実質的に同様に構成されている。表示装置DSPR及び表示装置DSPLの各々は、表示モジュールDMと、光学システム4と、を備えている。表示モジュールDMは、直線偏光の表示光を出射するように構成されている。表示装置DSPRの光学システム4は、表示モジュールDMからの表示光を右眼ERに導くように構成されている。表示装置DSPLの光学システム4は、表示モジュールDMからの表示光を左眼ELに導くように構成されている。
【0015】
一例では、表示モジュールDMは、液晶パネル及び照明装置によって構成されているが、これに限らない。例えば、表示モジュールDMは、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子、マイクロLED、ミニLEDなどの自発光型の発光素子を備えた表示パネルであってもよい。表示モジュールDMが発光素子を備えた表示パネルである場合、照明装置は省略される。
【0016】
可変機構SLは、筐体HSに固定されている。後述するが、可変機構SLは、光学システム4の第1構造体4Aと第2構造体4Bとの間隔を可変するための機構である。
【0017】
次に、本実施形態に係る表示装置DSPのいくつかの構成例について説明する。
【0018】
《第1構成例》
図3は、表示装置DSPの第1構成例を示す断面図である。
ここで説明する表示装置DSPは、上記の表示装置DSPR及びDSPLの各々に適用することができる。
【0019】
表示モジュールDMは、表示パネル2と、照明装置3と、を備えている。表示パネル2は、透過型の液晶パネルであり、平板状に形成されている。表示パネル2は、第1基板SUB1と、第2基板SUB2と、液晶層LCと、第1偏光板PL1と、第2偏光板PL2と、を備えている。液晶層LCは、第1基板SUB1と第2基板SUB2との間に保持され、シールSEによって封止されている。第1偏光板PL1は、照明装置3と第1基板SUB1との間に配置されている。第2偏光板PL2は、第2基板SUB2と光学システム4との間に配置されている。
【0020】
表示パネル2は、直線偏光の表示光DLを出射するように構成された表示領域DAを有している。表示領域DAは、照明装置3からの照明光を選択的に変調するように構成されている。照明光の一部は、第2偏光板PL2を透過し、直線偏光の表示光DLに変換される。第2偏光板PL2の表面を表示面DSと称する。
【0021】
光学システム4は、第1構造体4Aと、第2構造体4Bと、を備えている。第1構造体4Aは、表示面DSの法線方向において、第2構造体4Bから離間している。第1構造体4Aと第2構造体4Bとの間には、空気層4Cが介在している。表示パネル2は、照明装置3と第1構造体4Aとの間に配置されている。第1構造体4Aは、表示パネル2と第2構造体4Bとの間(あるいは表示パネル2と空気層4Cとの間)に配置されている。
【0022】
第1構造体4Aは、表示モジュールDMに対向する第1位相差板R1と、第1位相差板R1に対向するホログラフィック光学素子20と、ホログラフィック光学素子20に対向する第2位相差板R2と、を備えている。ホログラフィック光学素子20は、第1位相差板R1と第2位相差板R2との間に位置している。一例では、第1位相差板R1、ホログラフィック光学素子20、及び、第2位相差板R2は、互いに接着されている。
【0023】
第1位相差板R1及び第2位相差板R2は、1/4波長板であり、透過する光に対して1/4波長の位相差を付与するものである。
ホログラフィック光学素子20は、入射光のうちの一部の光を反射・回折するとともに、集光するレンズ作用を有するものである。ホログラフィック光学素子20は、干渉縞のパターンを有し、入射光を所定の方向に回折するものである。
【0024】
第2構造体4Bは、第2位相差板R2に対向する反射偏光板PRと、反射偏光板PRに対向する透明基板TSと、を備えている。一例では、反射偏光板PRは、透明基板TSに接着されている。空気層4Cは、第2位相差板R2と反射偏光板PRとの間に介在している。
【0025】
反射偏光板PRは、入射光のうち、第1直線偏光を透過し、第1直線偏光と直交する第2直線偏光を反射するものである。一例として、反射偏光板PRは、多層薄膜型のものや、ワイヤグリッド型のものなどである。
透明基板TSは、ガラス基板や樹脂基板である。
【0026】
可変機構SL及び支持体SPは、筐体HSに固定されている。
【0027】
第1構造体4Aは、支持体SPにより支持されており、筐体HSに対して一定の間隔をおいて固定されている。表示モジュールDMは、筐体HSと第1構造体4Aとの間に配置されている。このような構成においては、表示モジュールDM及び第1構造体4Aは、筐体HSに対して、表示面DSの法線方向に移動することなく保持されている。
【0028】
第2構造体4Bは、可変機構SLにより支持されている。可変機構SLは、表示面DSの法線方向に第2構造体4Bを移動可能に構成されている。第2構造体4Bが移動するとき、可変機構SLは、第2構造体4Bを面内で回転させることなく、表示面DSの法線方向に第2構造体4Bをスライドさせる。これにより、第1構造体4Aと第2構造体4Bとの間隔を可変することができる。
【0029】
図4は、表示装置DSPの光学作用を説明するための図である。
【0030】
まず、表示モジュールDMは、表示面DSから第1直線偏光LP1の表示光DLを出射する。表示光DLは、第1位相差板R1を透過して第1円偏光CP1に変換される。
【0031】
第1位相差板R1を透過した第1円偏光CP1のうち、一部の第1円偏光CP1はホログラフィック光学素子20を透過し、他の第1円偏光CP1はホログラフィック光学素子20で反射される。ホログラフィック光学素子20を透過した第1円偏光CP1は、第2位相差板R2を透過して第2直線偏光LP2に変換される。
【0032】
なお、第1円偏光CP1がホログラフィック光学素子20で反射された際には、第1円偏光CP1とは逆回りの第2円偏光CP2に変換される。ホログラフィック光学素子20で反射された第2円偏光CP2は、第1位相差板R1を透過して第2直線偏光LP2に変換され、表示モジュールDMにおいて吸収される。
【0033】
第2位相差板R2を透過した第2直線偏光LP2は、反射偏光板PRで反射される。反射偏光板PRで反射された第2直線偏光LP2は、第2位相差板R2を透過して第1円偏光CP1に変換される。
【0034】
第2位相差板R2を透過した第1円偏光CP1のうち、一部の第1円偏光CP1はホログラフィック光学素子20で反射・回折され、他の第1円偏光CP1はホログラフィック光学素子20を透過する。第1円偏光CP1がホログラフィック光学素子20で反射・回折された際には、第2円偏光CP2に変換される。ホログラフィック光学素子20で反射された第2円偏光CP2は、第2位相差板R2を透過して第1直線偏光LP1に変換される。
なお、ホログラフィック光学素子20を透過した第1円偏光CP1は、第1位相差板R1を透過して第1直線偏光LP1に変換される。
【0035】
第2位相差板R2を透過した第1直線偏光LP1は、反射偏光板PRを透過し、ホログラフィック光学素子20のレンズ作用を受けてユーザの瞳Eに集光される。
【0036】
このような表示装置DSPによれば、光学システム4は、ホログラフィック光学素子20と反射偏光板PRとの間を3回通る光路を有している。つまり、光学システム4において、ホログラフィック光学素子20と反射偏光板PRとの間の光学的な距離は、実際のホログラフィック光学素子20と反射偏光板PRとの間隔の約3倍となる。これにより、表示モジュールDMの表示面DSを物体としたとき、ユーザは、光学システム4を介して遠方に形成される物体の拡大された虚像を観察することができる。
【0037】
ところで、視力の低いユーザは、遠方の虚像を鮮明に見ることができない。このようなユーザに対しては、虚像の位置をユーザに近づけることが要求される。第1構造体4Aと第2構造体4Bとの間隔を調整することにより、虚像の位置を調整することができる。例えば、物体に相当する表示面DSの光学的な位置を光学システム4の焦点から離れる側に移動することにより、虚像の位置をユーザに近づけることができる。
【0038】
つまり、本実施形態によれば、ユーザの視力に合わせて画像の見え方を調整する視度調整機能を具備することができる。また、図2に示したように、右眼用の表示装置DSPR及び左眼用の表示装置DSPLに対してそれぞれ可変機構SLが設けられている。このため、表示装置DSPR及びDSPLのそれぞれの虚像の位置を独立して調整することができる。これにより、右眼及び左眼のそれぞれの視力に応じて、表示装置DSPR及びDSPLのそれぞれの虚像を鮮明に表示することができる。
【0039】
また、可変機構SLが第2構造体4Bを移動させる際に、第2構造体4Bの面内での回転を伴わない。このため、反射偏光板PRにおける透過軸(または反射軸)が面内で回転することがなく、軸ずれに起因した表示品位の低下を抑制できるとともに、光の利用効率の低下を抑制することができる。
【0040】
なお、図4を参照して説明した第1直線偏光LP1を第2直線偏光LP2に置換してもよいし、第1円偏光CP1を第2円偏光CP2に置換してもよい。
【0041】
ここで、虚像の位置の調整例について説明する。
【0042】
図5は、第2構造体4Bの移動前及び移動後の様子を示す図である。
ここでの第2構造体4Bは、反射偏光板PRと、透明基板TSと、を備えている。
【0043】
図の左側には第2構造体4Bが第1位置P1に配置されている状態(移動前)が示され、図の右側には第2構造体4Bが第2位置P2に配置されている状態(移動後)が示されている。
第2構造体4Bが第1位置P1に配置されている状態では、第2位相差板R2と反射偏光板PRとの間に第1間隔G1が形成されている。
第2構造体4Bが第2位置P2に配置されている状態では、第2位相差板R2と反射偏光板PRとの間に第2間隔G2が形成されている。第2間隔G2は、第1間隔G1より小さい。このような状態は、可変機構SLが第2構造体4Bを表示モジュールDMに近接するように移動することで実現される。
【0044】
図6は、図5に示した表示装置の光学システムを反射偏光板PRの位置で展開した図である。
【0045】
ホログラフィック光学素子20から前方(ユーザの瞳の側)に焦点距離fの位置を第1焦点FP1とし、ホログラフィック光学素子20から後方に焦点距離fの位置を第2焦点FP2とする。
【0046】
第2構造体4Bが第1位置P1に位置する場合、実線で示す表示面DSの端部E11と第2焦点FP2とを通る線がホログラフィック光学素子20の位置と交差する点を点P11とし、ホログラフィック光学素子20の端部20Eと第1焦点FP1とを通る線が、点P11を通る垂線と交差する点を点P12とする。このとき、虚像V1は、実線で示すように、点P12の位置に形成される。
【0047】
第2構造体4Bが第2位置P2に位置する場合、破線で示す表示面DSの端部E21と第2焦点FP2とを通る線がホログラフィック光学素子20の位置と交差する点を点P21とし、ホログラフィック光学素子20の端部20Eと第1焦点FP1とを通る線が、点P21を通る垂線と交差する点を点P22とする。このとき、虚像V2は、破線で示すように、点P22の位置に形成される。
【0048】
このように、第2構造体4Bが第2位置P2に移動することにより、表示面DSが第2焦点FP2から遠ざかり、虚像V2の位置がユーザの瞳の側に近接する。このため、近視のユーザに対して、鮮明に観察できる画像を表示することができる。
【0049】
《第2構成例》
図7は、表示装置DSPの第2構成例を示す断面図である。
図7に示す第2構成例は、図3に示した第1構成例と比較して、第1構造体4A及び表示モジュールDMが可変機構SLにより支持され、第2構造体4Bが支持体SPにより支持された点で相違している。以下、これらの相違点を中心に説明する。
【0050】
第2構造体4Bは、筐体HSに固定された支持体SPにより支持されている。このため、第2構造体4Bは、筐体HSに対して一定の間隔をおいて固定されている。
【0051】
表示モジュールDMは、筐体HSと第1構造体4Aとの間に配置され、第1構造体4Aに固定されているが、筐体HSには固定されていない。このような表示モジュールDM及び第1構造体4Aは、一体の構造体BDを構成する。
【0052】
構造体BD(表示モジュールDM及び第1構造体4Aのブロック)は、筐体HSに固定された可変機構SLにより支持されている。可変機構SLは、表示面DSの法線方向に構造体BDを移動可能に構成されている。構造体BDが移動するとき、可変機構SLは、構造体BDを面内で回転させることなく、表示面DSの法線方向に構造体BDをスライドさせる。これにより、第1構造体4Aと第2構造体4Bとの間隔(あるいは、ホログラフィック光学素子20と反射偏光板PRとの間隔)を可変することができる。
【0053】
図8は、構造体BDの移動前及び移動後の様子を示す図である。
ここでの構造体BDは、表示モジュールDMと、第1位相差板R1と、ホログラフィック光学素子20と、第2位相差板R2と、を備えている。
【0054】
図の左側には構造体BDが第1位置P1に配置されている状態(移動前)が示され、図の右側には構造体BDが第2位置P2に配置されている状態(移動後)が示されている。
構造体BDが第1位置P1に配置されている状態では、第2位相差板R2と反射偏光板PRとの間に第1間隔G1が形成されている。
構造体BDが第2位置P2に配置されている状態では、第2位相差板R2と反射偏光板PRとの間に第2間隔G2が形成されている。第2間隔G2は、第1間隔G1より小さい。このような状態は、可変機構SLが構造体BDを反射偏光板PRに近接するように移動することで実現される。
【0055】
このような第2構成例において、光学システム4を展開した場合、図6を参照して説明したのと同様の図が得られる。つまり、第1構造体4Aを含む構造体BDが第2位置P2に移動することにより、表示面DSが第2焦点FP2から遠ざかり、虚像V2の位置がユーザの瞳の側に近接する。このため、近視のユーザに対して、鮮明に観察できる画像を表示することができる。
【0056】
《第3構成例》
図9は、第1構造体4Aの移動前及び移動後の様子を示す図である。
第3構成例は、図7に示した第2構成例と比較して、表示モジュールDMが筐体HSに固定され、可変機構SLが第1構造体4Aを移動可能に構成された点で相違している。
ここでの第1構造体4Aは、第1位相差板R1と、ホログラフィック光学素子20と、第2位相差板R2と、を備えている。
【0057】
図の左側には第1構造体4Aが第1位置P1に配置されている状態(移動前)が示され、図の右側には第1構造体4Aが第2位置P2に配置されている状態(移動後)が示されている。
第1構造体4Aが第1位置P1に配置されている状態では、第2位相差板R2と反射偏光板PRとの間に第1間隔G1が形成されている。
第1構造体4Aが第2位置P2に配置されている状態では、第2位相差板R2と反射偏光板PRとの間に第2間隔G2が形成されている。第2間隔G2は、第1間隔G1より小さい。このような状態は、可変機構SLが第1構造体4Aを反射偏光板PRに近接するように移動することで実現される。
【0058】
このような第3構成例において、光学システム4を展開した場合、図6を参照して説明したのと同様の図が得られる。つまり、第1構造体4Aが第2位置P2に移動することにより、表示面DSが第2焦点FP2から遠ざかり、虚像V2の位置がユーザの瞳の側に近接する。このため、近視のユーザに対して、鮮明に観察できる画像を表示することができる。
【0059】
《第4構成例》
図10は、表示装置DSPの第4構成例を示す断面図である。
ここで説明する表示装置DSPは、上記の表示装置DSPR及びDSPLの各々に適用することができる。
【0060】
表示モジュールDMは、表示パネル2と、照明装置3と、を備えている。表示パネル2の構成については、第1構成例と同一であり、同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0061】
光学システム4は、第1構造体4Aと、第2構造体4Bと、を備えている。第1構造体4Aは、表示面DSの法線方向において、第2構造体4Bから離間している。第1構造体4Aと第2構造体4Bとの間には、空気層4Cが介在している。表示パネル2は、照明装置3と第1構造体4Aとの間に配置されている。第1構造体4Aは、表示パネル2と第2構造体4Bとの間(あるいは表示パネル2と空気層4Cとの間)に配置されている。
【0062】
第1構造体4Aは、表示モジュールDMに対向する第1位相差板R1と、第1位相差板R1に対向する半透過層HMと、半透過層HMに対向する第2位相差板R2と、を備えている。半透過層HMは、第1位相差板R1と第2位相差板R2との間に位置している。一例では、第1位相差板R1、半透過層HM、及び、第2位相差板R2は、互いに接着されている。
【0063】
第1位相差板R1及び第2位相差板R2は、1/4波長板であり、透過する光に対して1/4波長の位相差を付与するものである。
半透過層HMは、入射光のうちの一部の光を透過し、その他の光を反射するものである。一例として、半透過層HMは、アルミニウムや銀などの金属材料で形成された薄膜である。このような半透過層HMの透過率は、約50%である。
【0064】
第2構造体4Bは、第2位相差板R2に対向する反射偏光板PRと、反射偏光板PRに対向する第3位相差板R3と、第3位相差板に対向する液晶素子10と、を備えている。第3位相差板R3は、反射偏光板PRと液晶素子10との間に位置している。一例では、反射偏光板PR、第3位相差板R3、及び、液晶素子10は、互いに接着されている。空気層4Cは、第2位相差板R2と反射偏光板PRとの間に介在している。
【0065】
反射偏光板PRは、入射光のうち、第1直線偏光を透過し、第1直線偏光と直交する第2直線偏光を反射するものである。
第3位相差板R3は、1/4波長板であり、透過する光に対して1/4波長の位相差を付与するものである。
液晶素子10は、特定波長の光に対して1/2波長の位相差を付与するとともに、第1円偏光を集光するレンズ作用を有するものである。なお、ここでは、円偏光を集光するレンズ作用を有する素子の一例として、液晶素子10を挙げたが、同等のレンズ作用を有するものであれば、液晶を利用した素子に限定されるものではない。
【0066】
可変機構SL及び支持体SPは、筐体HSに固定されている。
【0067】
第1構造体4Aは、支持体SPにより支持されており、筐体HSに対して一定の間隔をおいて固定されている。表示モジュールDMは、筐体HSと第1構造体4Aとの間に配置されている。このような構成においては、表示モジュールDM及び第1構造体4Aは、筐体HSに対して、表示面DSの法線方向に移動することなく保持されている。
【0068】
第2構造体4Bは、可変機構SLにより支持されている。可変機構SLは、表示面DSの法線方向に第2構造体4Bを移動可能に構成されている。第2構造体4Bが移動するとき、可変機構SLは、第2構造体4Bを面内で回転させることなく、表示面DSの法線方向に第2構造体4Bをスライドさせる。これにより、第1構造体4Aと第2構造体4Bとの間隔を可変することができる。
【0069】
図11は、図10に示した液晶素子10の一例を示す断面図である。
【0070】
液晶素子10は、基板11と、配向膜AL11と、液晶層(第1液晶層)LC1と、配向膜AL12と、基板12と、を備えている。
【0071】
基板11及び12は、光を透過する透明基板であり、例えば、ガラス基板または樹脂基板である。基板11は、例えば、図10に示した第3位相差板R3と接着されるが、第3位相差板R3と置換してもよい。
【0072】
配向膜AL11は、基板11の内面11Aに配置されている。図11に示す例では、配向膜AL11は、基板11に接しているが、配向膜AL11と基板11との間に他の薄膜が介在していてもよい。
配向膜AL12は、基板12の内面12Aに配置されている。図11に示す例では、配向膜AL12は、基板12に接しているが、配向膜AL12と基板12との間に他の薄膜が介在していてもよい。配向膜AL12は、第3方向Zにおいて、配向膜AL11と対向している。
配向膜AL11及びAL12は、例えば、ポリイミドによって形成され、いずれもX-Y平面に沿った配向規制力を有する水平配向膜である。
【0073】
液晶層LC1は、配向膜AL11及びAL12の間に配置され、配向膜AL11及びAL12に接している。液晶層LC1は、第3方向Zに沿った厚さd1を有している。液晶層LC1は、第3方向Zに沿った配向方向が揃ったネマティック液晶を有している。
【0074】
すなわち、液晶層LC1は、複数の液晶構造体LMS1を有している。1つの液晶構造体LMS1に着目すると、液晶構造体LMS1は、その一端側に位置する液晶分子LM11と、その他端側に位置する液晶分子LM12と、を有している。液晶分子LM11は配向膜AL11に近接し、液晶分子LM12は配向膜AL12に近接している。液晶分子LM11の配向方向、及び、液晶分子LM12の配向方向は、ほぼ一致している。また、液晶分子LM11と液晶分子LM12との間の他の液晶分子LM1の配向方向も、液晶分子LM11の配向方向とほぼ一致している。なお、ここでの液晶分子LM1の配向方向とは、X-Y平面における液晶分子の長軸の方向に相当する。
【0075】
また、液晶層LC1において、第1方向Xに沿って隣接する複数の液晶構造体LMS1は、互いに配向方向が異なっている。同様に、第2方向Yに沿って隣接する複数の液晶構造体LMS1についても、互いに配向方向が異なっている。配向膜AL11に沿って並んだ複数の液晶分子LM11の配向方向、及び、配向膜AL12に沿って並んだ複数の液晶分子LM12の配向方向は、連続的(あるいは線形)に変化している。
【0076】
このような液晶層LC1は、液晶分子LM11及び液晶分子LM12を含む液晶分子LM1の配向方向が固定された状態で硬化している。つまり、液晶分子LM1の配向方向は、電界に応じて制御されるものではない。このため、液晶素子10は、配向制御のための電極を備えていない。
【0077】
液晶層LC1の屈折率異方性あるいは複屈折性(液晶層LC1の異常光に対する屈折率neと常光に対する屈折率noとの差分)をΔnとしたとき、液晶層LC1のリタデーション(位相差)Δn・d1は、特定波長λの1/2に設定されている。
【0078】
図12は、図11に示した液晶層LC1における配向パターンの一例を示す平面図である。
【0079】
図12には、液晶層LC1のX-Y平面における空間位相の一例が示されている。ここに示す空間位相は、液晶構造体LMS1に含まれる液晶分子LM1のうち、配向膜AL11に近接する液晶分子LM11の配向方向として示している。
【0080】
図中の点線で示した同心円では、空間位相が揃っている。あるいは、隣接する2つの同心円で囲まれた環状領域では、液晶分子LM11の配向方向が揃っている。但し、隣接する環状領域の液晶分子LM11の配向方向は、互いに異なっている。
【0081】
液晶層LC1は、平面視において、第1環状領域C1と、第2環状領域C2と、を有している。第2環状領域C2は、第1環状領域C1の外側に位置している。第1環状領域C1は、同一方向に配向した第1液晶分子LM111によって構成されている。また、第2環状領域C2は、同一方向に配向した第2液晶分子LM112によって構成されている。第1液晶分子LM111の配向方向は、第2液晶分子LM112の配向方向とは異なっている。
【0082】
同様に、同心円の中心の領域から、径方向に沿って並んだ液晶分子LM11の配向方向は、互いに異なり、連続的に変化している。つまり、図示したX-Y平面内において、液晶層LC1の空間位相は、径方向に沿って異なり、連続的に変化している。
【0083】
このような構成の液晶素子10に第1円偏光が入射した場合、第1円偏光は、同心円の中心に向かって集光され、しかも、液晶素子10の透過光は、第1円偏光とは逆回りの第2円偏光に変換される。
【0084】
図13は、表示装置DSPの光学作用を説明するための図である。
【0085】
まず、表示モジュールDMは、表示面DSから第1直線偏光LP1の表示光DLを出射する。表示光DLは、第1位相差板R1を透過して第1円偏光CP1に変換される。
【0086】
第1位相差板R1を透過した第1円偏光CP1のうち、一部の第1円偏光CP1は半透過層HMを透過し、他の第1円偏光CP1は半透過層HMで反射される。半透過層HMを透過した第1円偏光CP1は、第2位相差板R2を透過して第2直線偏光LP2に変換される。
【0087】
なお、第1円偏光CP1が半透過層HMで反射された際には、第1円偏光CP1とは逆回りの第2円偏光CP2に変換される。半透過層HMで反射された第2円偏光CP2は、第1位相差板R1を透過して第2直線偏光LP2に変換され、表示モジュールDMにおいて吸収される。
【0088】
第2位相差板R2を透過した第2直線偏光LP2は、反射偏光板PRで反射される。反射偏光板PRで反射された第2直線偏光LP2は、第2位相差板R2を透過して第1円偏光CP1に変換される。
【0089】
第2位相差板R2を透過した第1円偏光CP1のうち、一部の第1円偏光CP1は半透過層HMで反射され、他の第1円偏光CP1は半透過層HMを透過する。第1円偏光CP1が半透過層HMで反射された際には、第2円偏光CP2に変換される。半透過層HMで反射された第2円偏光CP2は、第2位相差板R2を透過して第1直線偏光LP1に変換される。
なお、半透過層HMを透過した第1円偏光CP1は、第1位相差板R1を透過して第1直線偏光LP1に変換される。
【0090】
第2位相差板R2を透過した第1直線偏光LP1は、反射偏光板PRを透過し、さらに、第3位相差板R3を透過して第1円偏光CP1に変換される。第3位相差板R3を透過した第1円偏光CP1は、液晶素子10において、第2円偏光CP2に変換されるとともにレンズ作用を受けてユーザの瞳Eに集光される。
【0091】
このような第4構成例においても、上記の第1構成例と同様の効果が得られる。
【0092】
なお、図13を参照して説明した第1直線偏光LP1を第2直線偏光LP2に置換してもよいし、第1円偏光CP1を第2円偏光CP2に置換してもよい。
【0093】
ここで、虚像の位置の調整例について説明する。
【0094】
図14は、第2構造体4Bの移動前及び移動後の様子を示す図である。
ここでの第2構造体4Bは、反射偏光板PRと、第3位相差板R3と、液晶素子10と、を備えている。
【0095】
図の左側には第2構造体4Bが第1位置P1に配置されている状態(移動前)が示され、図の右側には第2構造体4Bが第2位置P2に配置されている状態(移動後)が示されている。
第2構造体4Bが第1位置P1に配置されている状態では、第2位相差板R2と反射偏光板PRとの間に第1間隔G1が形成されている。
第2構造体4Bが第2位置P2に配置されている状態では、第2位相差板R2と反射偏光板PRとの間に第2間隔G2が形成されている。第2間隔G2は、第1間隔G1より小さい。このような状態は、可変機構SLが第2構造体4Bを表示モジュールDMに近接するように移動することで実現される。
【0096】
図15は、図14に示した表示装置の光学システムを反射偏光板PR及び半透過層HMの位置で展開した図である。
【0097】
液晶素子10から前方(ユーザの瞳の側)に焦点距離fの位置を第1焦点FP1とし、液晶素子10から後方に焦点距離fの位置を第2焦点FP2とする。
【0098】
第2構造体4Bが第1位置P1に位置する場合、実線で示す表示面DSの端部E11と第2焦点FP2とを通る線が液晶素子10の位置と交差する点を点P11とし、液晶素子10の端部10Eと第1焦点FP1とを通る線が、点P11を通る垂線と交差する点を点P12とする。このとき、虚像V1は、実線で示すように、点P12の位置に形成される。
【0099】
第2構造体4Bが第2位置P2に位置する場合、破線で示す表示面DSの端部E21と第2焦点FP2とを通る線が液晶素子10の位置と交差する点を点P21とし、液晶素子10の端部10Eと第1焦点FP1とを通る線が、点P21を通る垂線と交差する点を点P22とする。このとき、虚像V2は、破線で示すように、点P22の位置に形成される。
【0100】
このように、第2構造体4Bが第2位置P2に移動することにより、表示面DSが第2焦点FP2から遠ざかり、虚像V2の位置がユーザの瞳の側に近接する。このため、近視のユーザに対して、鮮明に観察できる画像を表示することができる。
【0101】
《第5構成例》
図16は、表示装置DSPの第5構成例を示す断面図である。
図16に示す第5構成例は、図10に示した第4構成例と比較して、第1構造体4A及び表示モジュールDMが可変機構SLにより支持され、第2構造体4Bが支持体SPにより支持された点で相違している。以下、これらの相違点を中心に説明する。
【0102】
第2構造体4Bは、筐体HSに固定された支持体SPにより支持されている。このため、第2構造体4Bは、筐体HSに対して一定の間隔をおいて固定されている。
【0103】
表示モジュールDMは、筐体HSと第1構造体4Aとの間に配置され、第1構造体4Aに固定されているが、筐体HSには固定されていない。このような表示モジュールDM及び第1構造体4Aは、一体の構造体BDを構成する。
【0104】
構造体BD(表示モジュールDM及び第1構造体4Aのブロック)は、筐体HSに固定された可変機構SLにより支持されている。可変機構SLは、表示面DSの法線方向に構造体BDを移動可能に構成されている。構造体BDが移動するとき、可変機構SLは、構造体BDを面内で回転させることなく、表示面DSの法線方向に構造体BDをスライドさせる。これにより、第1構造体4Aと第2構造体4Bとの間隔(あるいは、半透過層HMと反射偏光板PRとの間隔)を可変することができる。
【0105】
図17は、構造体BDの移動前及び移動後の様子を示す図である。
ここでの構造体BDは、表示モジュールDMと、第1位相差板R1と、半透過層HMと、第2位相差板R2と、を備えている。
【0106】
図の左側には構造体BDが第1位置P1に配置されている状態(移動前)が示され、図の右側には構造体BDが第2位置P2に配置されている状態(移動後)が示されている。
構造体BDが第1位置P1に配置されている状態では、第2位相差板R2と反射偏光板PRとの間に第1間隔G1が形成されている。
構造体BDが第2位置P2に配置されている状態では、第2位相差板R2と反射偏光板PRとの間に第2間隔G2が形成されている。第2間隔G2は、第1間隔G1より小さい。このような状態は、可変機構SLが構造体BDを反射偏光板PRに近接するように移動することで実現される。
【0107】
このような第5構成例において、光学システム4を展開した場合、図15を参照して説明したのと同様の図が得られる。つまり、第1構造体4Aを含む構造体BDが第2位置P2に移動することにより、表示面DSが第2焦点FP2から遠ざかり、虚像V2の位置がユーザの瞳の側に近接する。このため、近視のユーザに対して、鮮明に観察できる画像を表示することができる。
【0108】
《第6構成例》
図18は、第1構造体4Aの移動前及び移動後の様子を示す図である。
第6構成例は、図16に示した第5構成例と比較して、表示モジュールDMが筐体HSに固定され、可変機構SLが第1構造体4Aを移動可能に構成された点で相違している。
ここでの第1構造体4Aは、第1位相差板R1と、半透過層HMと、第2位相差板R2と、を備えている。
【0109】
図の左側には第1構造体4Aが第1位置P1に配置されている状態(移動前)が示され、図の右側には第1構造体4Aが第2位置P2に配置されている状態(移動後)が示されている。
第1構造体4Aが第1位置P1に配置されている状態では、第2位相差板R2と反射偏光板PRとの間に第1間隔G1が形成されている。
第1構造体4Aが第2位置P2に配置されている状態では、第2位相差板R2と反射偏光板PRとの間に第2間隔G2が形成されている。第2間隔G2は、第1間隔G1より小さい。このような状態は、可変機構SLが第1構造体4Aを反射偏光板PRに近接するように移動することで実現される。
【0110】
このような第6構成例において、光学システム4を展開した場合、図15を参照して説明したのと同様の図が得られる。つまり、第1構造体4Aが第2位置P2に移動することにより、表示面DSが第2焦点FP2から遠ざかり、虚像V2の位置がユーザの瞳の側に近接する。このため、近視のユーザに対して、鮮明に観察できる画像を表示することができる。
【0111】
以上説明したように、本実施形態によれば、視度調整機能を備えた表示装置を提供することができる。
【0112】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0113】
1…ヘッドマウントディスプレイ DSP…表示装置
DM…表示モジュール 2…表示パネル 3…照明装置
4…光学システム 4A…第1構造体 4B…第2構造体 4C…空気層
R1…第1位相差板 R2…第2位相差板 R3…第3位相差板
HM…半透過層 PR…反射偏光板 TS…透明基板
10…液晶素子 20…ホログラフィック光学素子
SL…可変機構 SP…支持体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18