IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三井化学株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108508
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】組成物および成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/20 20060101AFI20240805BHJP
   C08F 10/14 20060101ALI20240805BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20240805BHJP
【FI】
C08L23/20
C08F10/14 ZBP
C08L101/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012914
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有間 愛由
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 豊明
(72)【発明者】
【氏名】園田 優輝
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
4J200
【Fターム(参考)】
4J002BB171
4J002EG046
4J002FD196
4J002GA00
4J002GC00
4J002GT00
4J100AA15Q
4J100AA15R
4J100AA17P
4J100DA09
4J200AA08
4J200BA22
4J200EA21
(57)【要約】
【課題】分解速度を向上させつつ、適度に制御することが可能な4-メチル-1-ペンテン系重合体を含む組成物、およびその成形体を提供すること。
【解決手段】4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と、遷移金属の塩とを含み、前記重合体(A)100質量部に対する前記遷移金属の塩の含有量が0.6~1.9質量部である、組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と、
遷移金属の塩と、
を含み、
前記重合体(A)100質量部に対する前記遷移金属の塩の含有量が0.6~1.9質量部である、組成物。
【請求項2】
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)100質量部に対する前記遷移金属の塩の含有量が、1.1~1.9質量部である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記遷移金属が、マンガン、鉄、銅、およびセリウムからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記遷移金属の塩がカルボン酸金属塩である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
前記カルボン酸金属塩におけるカルボン酸が、炭素数10~30の飽和または不飽和のカルボン酸である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記カルボン酸がステアリン酸である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1または2に記載の組成物を含む成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4-メチル-1-ペンテン系重合体を含む組成物、および当該組成物を含む成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィン系重合体は、種々の用途に用いられている。なかでも、4-メチル-1-ペンテンに由来する構造単位の含有量が50モル%を超える4-メチル-1-ペンテン系重合体は、種々の物性が優れることから様々な用途で好ましく利用されている。
【0003】
オレフィン系重合体は、大量に使用されることから廃棄処分の量が多く、その廃棄処理が問題となっている。4-メチル-1-ペンテン系重合体を含むオレフィン系重合体は、自然環境下での分解速度が非常に遅いため、自然界に流出してしまうと、景観を損ない、また、動植物の育成環境に悪影響を与える恐れがある。
【0004】
そこで、オレフィン系重合体などの石油系樹脂の代替としてポリ乳酸等の加水分解型生分解性樹脂が注目されているが、これらの樹脂は、石油系樹脂に比べて成形加工が困難であることが知られている。このため、従来技術では、上記生分解性樹脂による石油系樹脂の代替は一部の製品分野に限定されている。
【0005】
かかる事情を受けて、金属塩等を配合することにより、石油系樹脂の分解速度を速める試みがなされている(特許文献1および2)。金属塩を配合した樹脂組成物では、かかる樹脂組成物中のオレフィン系重合体が酸化分解によって低分子化され、その後、微生物による分解を経て自然分解される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-264111号公報
【特許文献2】特開2011-213836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および2に記載の方法によれば、石油系樹脂のなかでもポリエチレンやポリプロピレンなどのα-オレフィン系重合体については一定の分解速度向上効果がみられたが、種々の物性に優れる4-メチル-1-ペンテン系重合体については分解速度向上効果が乏しく、改善の余地があった。一方、オレフィン系重合体の分解速度が過度に速いと、得られる成形体の品質保持期間が短くなるという点から望ましくないため、分解速度を適度に制御することも求められる。
【0008】
そこで本発明は、分解速度を向上させつつ、適度に制御することが可能な4-メチル-1-ペンテン系重合体を含む組成物、およびその成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、4-メチル-1-ペンテン系重合体および遷移金属の塩を併用することで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
上記課題を解決する手段には、以下の[1]~[7]の態様が含まれる。
[1]
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と、
遷移金属の塩と、
を含み、
前記重合体(A)100質量部に対する前記遷移金属の塩の含有量が0.6~1.9質量部である、組成物。
【0011】
[2]
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)100質量部に対する前記遷移金属の塩の含有量が、1.1~1.9質量部である、[1]に記載の組成物。
【0012】
[3]
前記遷移金属が、マンガン、鉄、銅、およびセリウムからなる群から選択される少なくとも1種である、[1]または[2]に記載の組成物。
【0013】
[4]
前記遷移金属の塩がカルボン酸金属塩である、[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
【0014】
[5]
前記カルボン酸金属塩におけるカルボン酸が、炭素数10~30の飽和または不飽和のカルボン酸である、[4]に記載の組成物。
【0015】
[6]
前記カルボン酸がステアリン酸である、[5]に記載の組成物。
【0016】
[7]
[1]~[6]のいずれかに記載の組成物を含む成形体。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一実施形態によれば、分解速度を向上させつつ、適度に制御することが可能な4-メチル-1-ペンテン系重合体を含む組成物、およびその成形体を提供することができる。また本発明の一実施形態によれば、該組成物中の遷移金属の塩の含有量を所定の範囲内とすることで、該組成物中の4-メチル-1-ペンテン系重合体の分解速度を適度に制御することが可能となり、分解速度が向上しつつも品質保持期間の長い成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示において、数値範囲を表す「XX以上YY以下」および「XX~YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
また、数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
【0019】
[組成物]
本発明の組成物は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と、遷移金属の塩とを含み、
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)100質量部に対する前記遷移金属の塩の含有量が0.6~1.9質量部である。
【0020】
<4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)>
本発明に係る4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、4-メチル-1-ペンテンを含むモノマーの重合体あるいは共重合体であり、好ましくは以下に説明する要件(X-1)~(X-4)の1つ以上、より好ましくは2つ以上、さらに好ましくは3つ以上、特に好ましくは全てを満たす。4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、2種以上の4-メチル-1-ペンテン系重合体の混合物であってもよい。当該4-メチル-1-ペンテンは、化石原料由来であってもよく、バイオマス由来であってもよい。
【0021】
要件(X-1)
4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位の含有量が30.0~100.0モル%であり、エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から導かれる構成単位の含有量の合計が0.0~70.0モル%である。
【0022】
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、4-メチル-1-ペンテンの単独重合体(すなわち、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位の含有量が100.0モル%である重合体)、あるいは4-メチル-1-ペンテンとα-オレフィンなどの共重合モノマーとの共重合体であり、好ましくは要件(X-1)を満たす。
【0023】
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)中の4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位の含有量は、好ましくは40.0~99.5モル%、より好ましくは50.0~99.0モル%、さらに好ましくは、70.0~98.5モル%である。また、エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる構成単位の含有量の合計は、好ましくは0.5~60.0モル%、より好ましくは1.0~50.0モル%、さらに好ましくは1.5~30.0モル%である。
【0024】
前記α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンが挙げられる。前記α-オレフィンは、目的とする4-メチル-1-ペンテン系重合体を含む組成物の用途や必要物性に応じて適宜選択することができる。例えば、前記α-オレフィンとしては、適度な弾性率と柔軟性、可とう性とを付与するという観点からは、炭素数8~18のα-オレフィンが好ましく、1-オクテン、1-デセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、および1-オクタデセンから選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0025】
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位および前記α-オレフィンから導かれる構成単位以外の構成単位(以下「その他の構成単位」ともいう)を有してもよい。その他の構成単位の含有量は、例えば0.0~10.0モル%である。
【0026】
その他の構成単位を導くモノマーとしては、例えば、環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、共役ジエン、非共役ポリエン、官能ビニル化合物、水酸基含有オレフィン、ハロゲン化オレフィンが挙げられる。環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、共役ジエン、非共役ポリエン、官能ビニル化合物、水酸基含有オレフィン、およびハロゲン化オレフィンとしては、例えば、特開2013-169685号公報の段落[0035]~[0041]に記載の化合物を用いることができる。
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)がその他の構成単位を有する場合、その他の構成単位は、1種のみ含まれていてもよく、また、2種以上含まれていてもよい。
前記α-オレフィンや、その他の構成単位を導くモノマーは、化石原料由来であってもよく、バイオマス由来であってもよい。
【0027】
要件(X-2)
135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5~10.0dL/gの範囲にある。
【0028】
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、好ましくはこの要件(X-2)を満たす。
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の、135℃のデカリン中で測定した極
限粘度[η]は、より好ましくは0.5~8.0dL/g、さらに好ましくは0.8~6.0dL/gの範囲にある。極限粘度[η]が上記範囲内であると、4-メチル-1-ペ ンテン系重合体を含む組成物の成形時の樹脂流動性の点で好ましい。
【0029】
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の極限粘度[η]は、たとえば、重合系の水素濃度および圧力等を適宜選択することにより上記範囲内に調整できる。また4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、極限粘度[η]の異なる4-メチル-1-ペンテン系重合体を混合して上記範囲内に調整して得てもよい。
【0030】
要件(X-3)
示差走査熱量測定(DSC)により下記の条件で測定される融点(Tm)のうち、少なくとも1つが200℃以上である。
【0031】
(融点の測定条件)
セイコーインスツル(株)製のDSC測定装置(DSC220C)により、発熱・吸熱曲線を求め、昇温時の最大融解ピーク位置の温度を融点(Tm)とする。測定は、以下のようにして行うことができる。
0.5mm厚の射出試験片から試料約5mgを切り出し、測定用アルミパンにつめ、10℃/分の加熱速度で20℃から280℃に昇温し、280℃で5分間保持した後、10℃/分の冷却速度で20℃まで降温し、20℃で5分間保持した後、再度10℃/分の加熱速度で20℃から280℃に昇温し、その後50℃/分の冷却速度で50℃まで降温する。2回目の昇温時に発現した融解ピークを、融点(Tm)とする。ピークが複数検出された場合は、温度が最大のものを融点(Tm)とする。
【0032】
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、融点(Tm)を2つ以上有してもよく、好ましくはこの要件(X-3)を満たす。
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)のDSCで測定した融点(Tm)(融点(Tm)を2つ以上有する場合には最も高温のもの)は、好ましくは210~260℃、より好ましくは220~250℃、さらに好ましくは225~245℃の範囲にある。4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の融点が前記範囲にあると、4-メチル-1-ペンテン系重合体を含む組成物から得られる成形体等が耐熱性に優れたものとなる。
【0033】
要件(X-4)
ASTM D1238に準拠して260℃、5.0kg荷重の条件で測定したメルトフローレート(MFR)が、0.1~500g/10分である。
【0034】
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、好ましくはこの要件(X-4)を満たす。
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)のメルトフローレート(MFR)は、より好ましくは2~100g/10分、さらに好ましくは3~30g/10分である。MFRが上記範囲にあると、成形体製造時の樹脂流動性の点で好ましい。
本発明において、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)のMFRは、例えば重合反応中に反応器内に水素を併存させることにより調整することができる。
【0035】
本発明に係る4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、上記要件を満たす限り、未変性の4-メチル-1-ペンテン系重合体であっても、変性済みまたは未変性の4-メチル-1-ペンテン系重合体が極性モノマーによりグラフト変性されて得られたグラフト変性重合体であってもよい。
【0036】
<4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の製造方法>
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、国際公開第2001/027124号、国際公開第2014/050817号等に記載の方法を採用することができる。4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の製造方法においては、従来公知の重合触媒を用いることができる。
【0037】
グラフト変性
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)がグラフト変性重合体である場合、該グラフト変性重合体は、被変性体である、変性済みまたは未変性の4-メチル-メチル-1-ペンテン系重合体に、極性モノマーをグラフト重合させることにより製造することができる。以下、「被変性体」とは、変性済みまたは未変性の4-メチル-1-ペンテン系重合体を指す。
【0038】
グラフト変性に用いられる極性モノマーとしては、例えば、水酸基含有エチレン性不飽和化合物、アミノ基含有エチレン性不飽和化合物、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物、芳香族ビニル化合物、不飽和カルボン酸またはその誘導体、ビニルエステル化合物、塩化ビニル、カルボジイミド化合物が挙げられる。特に、不飽和カルボン酸またはその誘導体が好ましい。不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、カルボン酸基を1以上有する不飽和化合物、カルボン酸基を有する化合物とアルキルアルコールとのエステル、無水カルボン酸基を1以上有する不飽和化合物が挙げられる。不飽和基としては、例えば、ビニル基、ビニレン基、不飽和環状炭化水素基が挙げられる。
【0039】
極性モノマーとしては、具体的には、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸〔商標〕(エンドシス-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸)等の不飽和カルボン酸、および不飽和カルボン酸の誘導体として、例えば、酸ハライド、アミド、イミド、無水物、エステルが挙げられる。かかる誘導体の具体例としては、塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエートが挙げられる。
【0040】
これらの不飽和カルボン酸および/またはその誘導体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中では、不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物が好適であり、マレイン酸、ナジック酸またはこれらの酸無水物が特に好ましい。
前記極性モノマーは、化石原料由来であってもよく、バイオマス由来であってもよい。
【0041】
被変性体に、極性モノマーをグラフト重合させる際には、極性モノマーは、被変性体100質量部に対して、好ましくは1~100質量部、より好ましくは5~80質量部の量で使用される。このグラフト重合は、通常ラジカル開始剤の存在下にて行なわれる。
【0042】
ラジカル開始剤としては、有機過酸化物およびアゾ化合物などを用いることができる。ラジカル開始剤は、被変性体および極性モノマーとそのまま混合して使用することもできるが、少量の有機溶媒に溶解してから使用することもできる。有機溶媒としては、ラジカル開始剤を溶解し得る有機溶媒であれば特に限定することなく用いることができる。
【0043】
被変性体に極性モノマーをグラフト重合させる際には、還元性物質を用いてもよい。還元性物質を用いると、極性モノマーのグラフト量を向上させることができる。
被変性体の極性モノマーによるグラフト重合は、従来公知の方法で行うことができ、例えば、被変性体を有機溶媒に溶解し、次いで極性モノマーおよびラジカル開始剤などを溶液に加え、好ましくは70~200℃、より好ましくは80~190℃の温度で、好ましくは0.5~15時間、より好ましくは1~10時間反応させることにより行うことができる。
【0044】
押出機などを用いて、被変性体と極性モノマーとを反応させて、グラフト変性重合体である4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を製造することもできる。この反応は、通常は被変性体の融点以上で行う。具体的には、4-メチル-1-ペンテン系重合体を変性する場合には、例えば、好ましくは120~300℃、0.5~10分間行われ、より好ましくは160~300℃、さらに好ましくは180℃~250℃の温度で行われる。
【0045】
このようにして得られるグラフト変性重合体の変性量(極性モノマーのグラフト量)は、グラフト変性重合体を100質量%とした場合に、好ましくは0.1~50質量%、より好ましくは0.2~30質量%、さらに好ましくは0.2~10質量%である。
【0046】
また、変性済みまたは未変性の4-メチル-1-ペンテン系重合体を含む組成物に極性モノマーを含有させ、該組成物中の4-メチル-1-ペンテン系重合体の変性を行い、グラフト変性重合体である4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含む組成物を得ることもできる。極性モノマーを含有させた際の極性モノマーの含有量は、特に限定されないが、0.001~50質量%が好ましく、より好ましくは0.001~10質量%、さらに好ましくは0.001~5質量%であり、最も好ましくは0.01~3質量%である。極性モノマーの含有量は、目的に応じて、例えば、グラフト条件を適宜に選択することにより、容易に決定できる。
【0047】
また、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、被変性体を、シランカップリング剤を用いてグラフト重合することにより得られたグラフト変性重合体であってもよい。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリクロルシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N,N'-ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)エチレンジアミン、ポリオキシエチレンプロピルトリアルコキシシラン、ポリエトキシジメチルシロキサン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0048】
シランカップリング剤を用いてグラフト重合する方法は、乾式処理法でも、湿式(スラリー法)処理法でもよい。シランカップリング剤を用いたグラフト変性重合体である4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、均一な架橋状態が得られているので、該重合体(A)を含む重合体組成物は、産業用電線、パイプ等の強度や耐久性が求められる用途に好適に使用される。
【0049】
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)としてグラフト変性重合体を用いると、他の樹脂との接着性、相溶性に優れ、また得られた成形体表面の濡れ性が改良される場合がある。また、グラフト変性重合体を用いることにより、樹脂以外の他の材料(ガラス、金属、木材など)との相溶性または接着性を付加することができる場合もある。
【0050】
また、極性モノマー(例えば、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体)のグラフト量が上記範囲にあることにより、得られた4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含む組成物は、極性基含有樹脂(例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリアミド、PMMA、ポリカーボネート)に対して高い接着強度を示す。
【0051】
<遷移金属の塩>
本発明の組成物は、遷移金属の塩を含有する。なお、遷移金属は周期表第3族~第11族元素であり、亜鉛などの周期表第12族元素は典型金属に分類される。
本発明の組成物が以下で詳述する遷移金属の塩を含有することにより、かかる組成物中の4-メチル-1-ペンテン系重合体の酸化分解が促進され、当該重合体は微生物が分解できる程度にまで低分子化されるため、環境に悪影響を及ぼすことなく、迅速な自然分解が可能となる。
本発明では、遷移金属の塩を1種単独で使用してもよく、または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0052】
遷移金属の塩の含有量は、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)100質量部に対し、0.6~1.9質量部である。前記含有量が0.6質量部未満では、所期の分解促進効果が得られない。一方、前記含有量が1.9質量部を超えると、過度に分解速度が速いため得られる成形体の品質保持期間が短すぎる。成形体の品質保持時間が短すぎると、例えば、成形体を使用する間に分解が進んでしまい、使用時の物性が悪化する虞がある。
【0053】
さらに、遷移金属の塩の含有量は、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)100質量部に対し、1.1~1.9質量部であることが好ましい。前記含有量の下限としてより好ましくは、順に1.4質量部以上、1.5質量部以上、1.6質量部以上であり、さらに好ましくは1.7質量部以上であり、特に好ましくは1.8質量部以上である。また、前記含有量の上限としてより好ましくは、順に1.9質量部以下、1.8質量部以下であり、さらに好ましくは1.7質量部以下であり、特に好ましくは1.6質量部以下である。これらの上限および下限は、任意に組み合わせることができる。
【0054】
遷移金属は、マンガン、鉄、銅、およびセリウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0055】
遷移金属の塩は、有機酸金属塩であることが好ましく、より好ましくはカルボン酸金属塩である。
【0056】
カルボン酸金属塩におけるカルボン酸としては、好ましくは炭素数10~30の飽和または不飽和のカルボン酸が挙げられ、より好ましくは炭素数10~30の飽和カルボン酸であり、さらに好ましくは炭素数10~30の飽和脂肪族カルボン酸である。
【0057】
カルボン酸の具体例としては、カプリン酸(10)、ラウリン酸(12)、ミリスチン酸(14)、ペンタデシル酸(15)、パルミチン酸(16)、マルガリン酸(17)、ステアリン酸(18)、アラキジン酸(20)、ベヘン酸(22)、リグノセリン酸(24)、セロチン酸(26)、モンタン酸(28)、メリシン酸(30)等が挙げられる。なお、括弧内は、炭素数を示す。
これらのカルボン酸のなかでも、ステアリン酸が好ましい。すなわち、遷移金属の塩は、ステアリン酸の金属塩であることが好ましい。
【0058】
カルボン酸金属塩の具体例としては、ステアリン酸マンガン、ステアリン酸鉄、ステアリン酸銅、およびステアリン酸セリウムが挙げられる。
前記有機酸は、化石原料由来であってもよく、バイオマス由来であってもよい。
【0059】
(その他の成分)
本発明の組成物は、その用途に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)および前記遷移金属の塩以外の成分(以下、その他の成分ともいう。)を含有していてもよい。その他の成分としては、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)とは異なる重合体(以下、その他の重合体ともいう)、および前記遷移金属の塩以外の添加剤(以下、その他の添加剤ともいう)から選ばれる少なくとも1種を任意に含有することができる。
【0060】
その他の重合体
その他の重合体としては、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)とは異なる他の熱可塑性樹脂を広く用いることができる。その他の重合体の含有量は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)および遷移金属の塩の合計100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることがさらに好ましい。
【0061】
熱可塑性樹脂としては、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と異なる限り特に制限されないが、例えば以下のものを挙げることができる。
熱可塑性ポリオレフィン系樹脂:例えば、低密度、中密度、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン等のポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン等のポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、ポリ3-メチル-1-ペンテン、ポリ3-メチル-1-ブテン、エチレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体、1-ブテン・α-オレフィン共重合体、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体、環状オレフィン共重合体、塩素化ポリオレフィン、およびこれらのオレフィン系樹脂を変性した変性ポリオレフィン樹脂;
【0062】
熱可塑性ポリアミド系樹脂:例えば、脂肪族ポリアミド(ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612);
熱可塑性ポリエステル系樹脂:例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル系エラストマー;
熱可塑性ビニル芳香族系樹脂:例えば、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、スチレン系エラストマー(スチレン・ブタジエン・スチレンブロックポリマー、スチレン・イソプレン・スチレンブロックポリマー、スチレン・イソブチレン・スチレンブロックポリマー、これらの水素添加物など);
【0063】
熱可塑性ポリウレタン;塩化ビニル樹脂;塩化ビニリデン樹脂;アクリル樹脂;エチレン・酢酸ビニル共重合体等の酢酸ビニル共重合体;エチレン・メタクリル酸アクリレート共重合体;アイオノマー;エチレン・ビニルアルコール共重合体;ポリビニルアルコール;フッ素系樹脂;ポリカーボネート;ポリアセタール;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンサルファイドポリイミド;ポリアリレート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ロジン系樹脂;テルペン系樹脂および石油樹脂;
共重合体ゴム:例えば、エチレン・α-オレフィン・ジエン共重合体、プロピレン・α-オレフィン・ジエン共重合体、1-ブテン・α-オレフィン・ジエン共重合体、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ネオプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレンゴム、天然ゴム、シリコーンゴム。
【0064】
上述した熱可塑性ポリオレフィン系樹脂のうち、例えばポリエチレン、ポリプロピレンは結晶核剤として用いることもでき、その場合の好ましい含有量は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)およびその他の重合体の総量100質量部に対して、0.001~5質量部である。
【0065】
これらの熱可塑性樹脂の中でも、好ましくは、低密度、中密度、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ3-メチル-1-ペンテン、ポリ3-メチル-1-ブテン、エチレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体、1-ブテン・α-オレフィン共重合体、スチレン系エラストマー、酢酸ビニル共重合体、エチレン・メタクリル酸アクリレート共重合体、アイオノマー、フッ素系樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂および石油樹脂であり、より好ましくは、耐熱性向上、低温耐性向上、柔軟性の点で、ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、エチレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体、1-ブテン・α-オレフィン共重合体、酢酸ビニル共重合体、スチレン系エラストマー、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂および石油樹脂である。
【0066】
その他の重合体の一部または全部は、重合体が極性モノマーによりグラフト変性されて得られたグラフト変性重合体であってもよい。グラフト変性については、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)について示した上記「グラフト変性」に準じる。本発明の組成物中において、その他の重合体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記その他の重合体は、化石原料由来のモノマーのみを用いて得られたものであってもよく、バイオマス由来のモノマーのみを用いて得られたものであってもよく、化石原料由来のモノマーおよびバイオマス由来のモノマーの両方を用いて得られたものであってもよい。
【0067】
その他の添加剤
本発明の組成物は、その他の添加剤として、前記遷移金属の塩以外の添加剤を含んでもよい。その他の添加剤としては、例えば、核剤、アンチブロッキング剤、顔料、染料、充填剤、滑剤、可塑剤、離型剤、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、界面活性剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、スリップ防止剤、発泡剤、結晶化助剤、防曇剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、衝撃改良剤、架橋剤、共架橋剤、架橋助剤、粘着剤、軟化剤、加工助剤、および帯電防止剤等が挙げられる。これらのその他の添加剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
酸化防止剤としては、公知の酸化防止剤が使用可能である。具体的には、フェノール系(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール等)、多環フェノール系(2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等)、リン系(トリ(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4-ビフェニレンジホスフォネート等)、イオウ系(チオジプロピオン酸ジラウリル等)、アミン系(N,N-ジイソプロピル-p-フェニレンジアミン等)、ラクトン系(5,7-ジ-tert-ブチル-3-(3,4-ジメチルフェニル)-3H-ベンゾフラン-2-オン等)の酸化防止剤等が挙げられる。
これら酸化防止剤は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)および遷移金属の塩の合計100質量部に対して、好ましくは0.01~5.0質量部、より好ましくは0.01~2.0質量部の量で用いられる。
【0069】
(組成物の製造方法)
本発明に係る組成物の製造方法は特に限定されないが、例えば、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)、および遷移金属の塩と、必要に応じてその他の任意成分とを上述の添加割合で混合したのち、溶融混練して製造することができる。
【0070】
溶融混練の方法は、特に制限されず、一般的に市販されている押出機などの溶融混練装置を用いて行うことが可能である。例えば、混練機にて混練を行う部分のシリンダー温度は、好ましくは220~320℃、より好ましくは250~300℃である。温度が220℃よりも低いと溶融不足により混練が不十分となり、本発明に係る組成物の物性の向上がみられにくい。一方、温度が320℃よりも高いと、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)等の成分の熱分解が起こる場合がある。混練時間は、好ましくは0.1~30分間、特に好ましくは0.5~5分間である。混練時間が0.1分に満たないと十分に溶融混練が行われず、また、混練時間が30分を超えると4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)等の成分の熱分解が起こる場合がある。
【0071】
[成形体]
本発明に係る成形体は、本発明に係る組成物を含むことを特徴としている。
成形体の形状については、特に制限はなく、例えば、シート状、フィルム状、ブロック状、ペレット状、繊維状等のいずれかの形状であってもよい。その成形方法としては、射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形、圧空成形、インフレーション成形といった成形体の形状に適した各成形方法を採用することができる。
【0072】
成形体としては、例えば、フィルム・シート、容器類、機械用部品、パイプ、建材、日用品・雑貨、発泡製品、具体的には、農業用マルチフィルム、使い捨てオムツ、商品持ち帰り用袋、商品包装用袋、野菜用袋、食品用トレイ、飲料用カップ、ごみ袋、土木用植生ネット、排水用プラスチックドレーン材、エアガン用BB弾、ハト風船、樹木保護材、菌類・植物栽培用袋等の各種の分解性樹脂製品が挙げられる。
【実施例0073】
以下、実施例および比較例を挙げて本開示を更に詳細に説明するが、本開示は何らこれに制約されるものではない。なお、実施例および比較例の部数は特に断りが無い場合、質量基準である。
【0074】
〔製造例1〕
<触媒の調整>
(遷移金属化合物(P)の製造)
国際公開第2014/050817号の合成例4に従い、(8-オクタメチルフルオレン-12’-イル-(2-(アダマンタン-1-イル)-8-メチル-3,3b,4,5,6,7,7a,8-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン))ジルコニウムジクロライド(遷移金属化合物(P))を合成した。
【0075】
(固体触媒成分の調製)
30℃下、充分に窒素置換した100mLの撹拌機を付けた三つ口フラスコ中に、窒素気流下で精製デカン32mL及び固体状ポリメチルアルミノキサン(東ソーファインケム社製)をアルミニウム原子換算で14.65mmol装入し、懸濁液とした。その懸濁液に、先に合成した遷移金属化合物(P)50mg(ジルコニウム原子換算で0.059mmol)を4.6mmol/Lのトルエン溶液とし、この溶液12.75mLを撹拌しながら加えた。1.5時間後撹拌を止め、得られた触媒成分をデカンテーション法によりデカン50mLで3回洗浄し、デカンに懸濁させてスラリー液(Q)50mLを得た。担体を含めた固体触媒成分全体の質量に占めるZrの質量の比を「Zr担持率」とし、この触媒成分においてZr担持率は100%であった。
【0076】
(予備重合触媒成分の調製)
上記で調製したスラリー液(Q)に、窒素気流下、ジイソブチルアルミニウムハイドライドのデカン溶液(アルミニウム原子換算で2.0mmol/mL)を2.0mL、さらに4-メチル-1-ペンテンを7.5mL(5.0g)装入した。1.5時間後撹拌を止め、得られた予備重合触媒成分をデカンテーション法によりデカン50mLで3回洗浄した。この予備重合触媒成分をデカンに懸濁させて、デカンスラリー(R)50mLを得た。デカンスラリー(R)における予備重合触媒成分の濃度は20g/L、ジルコニウム濃度は1.05mmol/Lであった。また、ろ液(デカン)中に流出することなく、回収することができたZrの割合を「Zr回収率」とし、この予備重合触媒成分の調整においてZr回収率は90%であった。
【0077】
<4-メチル-1-ペンテン系重合体(A-1)の製造>
室温、窒素気流下で、内容積1Lの撹拌機を付けたSUS製重合器に、精製デカンを425mL、ジイソブチルアルミニウムハイドライドのデカン溶液(アルミニウム原子換算で2.0mmol/mL)を0.5mL(1mol)装入した。次いで、先に調製した予備重合触媒成分のデカンスラリー溶液(R)をジルコニウム原子換算で0.0005mmol加え、水素を47NmL装入した。次いで、4-メチル-1-ペンテン250mLを2時間かけて重合器内へ連続的に一定の速度で装入した。この装入開始時点を重合開始とし、重合開始から30分かけて45℃へ昇温した後、45℃で4時間保持した。重合開始から1時間後、2時間後に水素をそれぞれ47NmL装入した。重合開始から4.5時間経過後、室温まで降温し、脱圧した後、ただちに白色固体を含む重合液を濾過して固体状物質を得た。この固体状物質を減圧下、80℃で8時間乾燥し、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A-1)を得た。収量は131gであった。得られた重合体(A-1)のMFRを表1に示す。
【0078】
〔製造例2〕
<4-メチル-1-ペンテン系重合体(A-2)の製造>
国際公開第2006/054613号の実施例17において、得られる共重合体の4-メチル-1-ペンテンおよびコモノマー(1-ヘキサデセンおよび1-オクタデセン)から導かれる構成単位の含有量、ならびに、得られる共重合体のMFRがそれぞれ下記表1に記載の値となるようにそれぞれのモノマーの装入量および重合時の水素量を調整することによって、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A-2)を得た。
【0079】
<共重合体の組成測定>
共重合体中の各モノマーから導かれる構成単位の含有量は、以下の装置および条件により、13C-NMRスペクトルによって算出した。
装置として、ブルカー社製のAVANCEIIIcryo-500型核磁気共鳴装置を用い、溶媒として、o-ジクロロベンゼンとベンゼン-d6の4:1(体積比)溶液を用い、試料濃度:55mg/0.6mL、測定温度:120℃、観測核:13C(125MHz)、シーケンス:シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング、パルス幅:5.0μ秒(45°パルス)、繰返し時間:5.5秒、積算回数:64回の条件で、ベンゼン-d6の128ppmのピークをケミカルシフトの基準値として測定した。主鎖メチンシグナルの積分値を用い、各モノマーから導かれる構成単位の含有量(モル%)を算出した。
なお、4-メチル-1-ペンテン以外のモノマー(コモノマー)から導かれる構成単位の含有量の合計をコモノマー含有量ともいう。
【0080】
<メルトフローレート(MFR)>
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A-1)および(A-2)のMFRは、ASTM D1238に従い、温度260℃、荷重5.0kgの条件で測定した。
プロピレン系重合体(B-1)のMFRは、ASTM D1238に従い、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
【0081】
【表1】
【0082】
プロピレン系重合体(B-1)は、プライムポリマー社製のF113Gを使用した。
【0083】
<実施例1>
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A-1)100質量部と、Irganox(登録商標)1010(酸化防止剤)0.1質量部、ステアリン酸マンガン(遷移金属の塩)1.0質量部を二軸押出機(株式会社池貝、PCM45、φ=45mm、L/D=30)にて、シリンダー温度270℃、回転数150rpmで溶融混練して組成物を取得し、MFRを測定した(初期MFR)。
上記で得られた組成物を80℃のオーブンで1日間および8日間加熱し、1日間加熱後の組成物のMFR及び8日間加熱後の組成物のMFRを測定した(それぞれ1日後MFR、8日後MFR)。初期に対するMFR変化率は下記式の通り算出した。得られた組成物のMFR及びMFR変化率は表2に示した。
【0084】
[MFR]
得られた組成物の初期MFR、1日後MFRおよび8日後MFRは、ASTM D1238に従い、温度260℃、荷重5.0kgの条件で測定した。
【0085】
[MFR変化率]
初期に対するMFR変化率[%]
=(1日後MFRまたは8日後MFR-初期MFR)/初期MFR×100
8日後のMFR変化率が1000%以上の組成物を分解速度向上の効果があると判定した。また、1日後のMFR変化率が500%未満の組成物は、分解速度が過度に速くないものと判定した。
【0086】
<実施例2>
実施例1で用いたステアリン酸マンガンに替えてステアリン酸鉄を用いる以外は実施例1と同様の方法で組成物を得た。得られた組成物のMFR及びMFR変化率を表2に示した。
【0087】
<実施例3>
実施例1で用いたステアリン酸マンガンに替えてステアリン酸銅を用いる以外は実施例1と同様の方法で組成物を得た。得られた組成物のMFR及びMFR変化率を表2に示した。
【0088】
<実施例4>
実施例1で用いたステアリン酸マンガンに替えてステアリン酸セリウムを用いる以外は実施例1と同様の方法で組成物を得た。得られた組成物のMFR及びMFR変化率を表2に示した。
【0089】
<実施例5>
実施例1で用いた4-メチル-1-ペンテン系重合体(A-1)に替えて4-メチル-1-ペンテン系重合体(A-2)、ステアリン酸マンガンに替えてステアリン酸銅を用いる以外は実施例1と同様の方法で組成物を得た。得られた組成物のMFR及びMFR変化率を表2に示した。
【0090】
<実施例6>
実施例5のステアリン酸銅1.0質量部に替えてステアリン酸銅1.5質量部を用いる以外は実施例5と同様の方法で組成物を得た。得られた組成物のMFR及びMFR変化率を表2に示した。
【0091】
<実施例7>
実施例5のステアリン酸銅1.0質量部に替えてステアリン酸銅1.8質量部を用いる以外は実施例5と同様の方法で組成物を得た。得られた組成物のMFR及びMFR変化率を表2に示した。
【0092】
<比較例1>
実施例5のステアリン酸銅1.0質量部に替えてステアリン酸銅2.0質量部を用いる以外は実施例5と同様の方法で組成物を得た。得られた組成物のMFR及びMFR変化率を表3に示した。
【0093】
<比較例2>
実施例1のステアリン酸マンガンを含まない以外は実施例1と同様の方法で組成物を得た。得られた組成物のMFR及びMFR変化率を表3に示した。
【0094】
<比較例3>
実施例5のステアリン酸銅1.0質量部に替えてステアリン酸銅0.1質量部を用いる以外は実施例5と同様の方法で組成物を得た。得られた組成物のMFR及びMFR変化率を表3に示した。
【0095】
<比較例4>
実施例5のステアリン酸銅1.0質量部に替えてステアリン酸銅0.5質量部を用いる以外は実施例5と同様の方法で組成物を得た。得られた組成物のMFR及びMFR変化率を表3に示した。
【0096】
<比較例5>
実施例5のステアリン酸銅1.0質量部に替えてステアリン酸亜鉛1.0質量部を用いる以外は実施例5と同様の方法で組成物を得た。得られた組成物のMFR及びMFR変化率を表3に示した。
【0097】
<比較例6>
実施例5のステアリン酸銅1.0質量部に替えてステアリン酸カルシウム1.0質量部を用いる以外は実施例5と同様の方法で組成物を得た。得られた組成物のMFR及びMFR変化率を表3に示した。
【0098】
<比較例7>
比較例2の4-メチル-1-ペンテン系重合体(A-1)に替えて表1記載のプロピレン系重合体(B-1)を用いる以外は比較例2と同様の方法で組成物を得た。得られた組成物のMFR及びMFR変化率を表3に示した。
【0099】
<比較例8>
実施例5の4-メチル-1-ペンテン系重合体(A-2)に替えて表1記載のプロピレン系重合体(B-1)を用いる以外は実施例5と同様の方法で組成物を得た。得られた組成物のMFR及びMFR変化率を表3に示した。
【0100】
【表2】
【0101】
【表3】