(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108509
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】エクオール含有素材の不快臭が抑制されたエクオール含有飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/52 20060101AFI20240805BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
A23L2/52
A23L2/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012915
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】391058381
【氏名又は名称】キリンビバレッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】福井 美帆
(72)【発明者】
【氏名】佐野 涼子
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC03
4B117LE10
4B117LG11
4B117LK06
4B117LK07
4B117LK08
4B117LK12
4B117LP14
4B117LP17
4B117LP20
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、エクオール含有素材の獣臭を抑制する、より汎用的な方法、エクオール含有素材の獣臭が抑制された、エクオール含有飲料、及びその製造方法等を提供することにある。
【解決手段】(a)エクオール含有濃度が0.004%(w/w)以上であり、かつ、(b)固形分濃度(Brix)が20°Bx以下、又は、酸度が0.8%(w/v)以下である飲料であって、エタノール、及びプロピレングリコールの一方又は両方を含む、前記飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エクオール含有濃度が0.004%(w/w)以上であり、かつ、(b)固形分濃度(Brix)が20°Bx以下、又は、酸度が0.8%(w/v)以下である飲料であって、
エタノール、及びプロピレングリコールの一方又は両方を含む、前記飲料。
【請求項2】
エタノール、及びプロピレングリコールの一方又は両方を含むことが、
エタノール含有濃度が0.01~1.0%(v/v)であるか、又は、プロピレングリコール含有濃度が0.05~1.0%(v/v)であるか、又は、その両方である、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
エクオール含有大豆胚軸発酵物を含有する、請求項1に記載の飲料。
【請求項4】
(a)エクオール含有濃度が0.004%(w/w)以上であり、かつ、(b)固形分濃度(Brix)が20°Bx以下、又は、酸度が0.8%(w/v)以下である飲料の製造において、
エタノール、及びプロピレングリコールの一方又は両方を前記飲料に含有させることを特徴とする、前記飲料の製造方法。
【請求項5】
エタノール、及びプロピレングリコールの一方又は両方を前記飲料に含有させることが、
前記飲料において、エタノール含有濃度が0.01~1.0%(v/v)であるか、又は、プロピレングリコール含有濃度が0.05~1.0%(v/v)であるか、又は、その両方を満たすようにすることである、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
(a)エクオール含有濃度が0.004%(w/w)以上であり、かつ、(b)固形分濃度(Brix)が20°Bx以下、又は、酸度が0.8%(w/v)以下である飲料の製造において、
エタノール、及びプロピレングリコールの一方又は両方を前記飲料に含有させることを特徴とする、前記飲料において獣臭を抑制する方法。
【請求項7】
エタノール、及びプロピレングリコールの一方又は両方を前記飲料に含有させることが、
前記飲料において、エタノール含有濃度が0.01~1.0%(v/v)であるか、又は、プロピレングリコール含有濃度が0.05~1.0%(v/v)であるか、又は、その両方を満たすようにすることである、請求項6に記載の獣臭を抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エクオール含有飲料、及びその製造方法等に関する。より詳細には、エクオール含有素材の不快臭、すなわち「獣臭」、が抑制された、エクオール含有飲料、及びその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
エクオールは、大豆イソフラボンの一種であるダイゼインが腸内細菌の代謝によって生成する代謝物である。女性ホルモンのエストロゲン様の構造を持つことから、月経前の身体的及び/又は精神的不快症状(月経前症候群「PMS」ともいう)に対する影響について研究されている(例えば非特許文献1)。
【0003】
また、エクオール含有素材には、特有の不快臭、すなわち、「獣臭」があることが知られている。例えば特許文献1には、エクオール含有大豆胚軸発酵物にエタノール水溶液を用いて抽出処理すると、渋み、えぐみ、苦みといった不快味の原因のサポニンを低減できることが記載されている。また、特許文献1には、エクオール含有大豆胚軸発酵物又はその抽出物を含有する飲料が記載されている([0172]~[0173])。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されるような、特定の抽出処理がなされたエクオール以外のエクオールを用いる場合にも使用し得る、より汎用性の高い、エクオール含有素材の獣臭を抑制する方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】東京医療保健大学紀要、第1号、2006年、第39-42頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、エクオール含有素材の獣臭を抑制する、より汎用的な方法、エクオール含有素材の獣臭が抑制された、エクオール含有飲料、及びその製造方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、エクオール含有飲料について検討を行っていたところ、エクオール含有飲料において、エクオール含有濃度が0.004%(w/w)以上である場合に、エクオール含有素材の不快臭(獣臭)の課題が発生すること、及び、かかる獣臭の課題が、固形分濃度(Brix)20°Bx以下、又は、酸度0.8%(w/v)以下であるエクオール含有飲料において顕著に発生することを見いだした。これらのことは、本発明者らが新たに見いだした課題である。
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意検討した結果、(a)エクオール含有濃度が0.004%(w/w)以上であり、かつ、(b)固形分濃度(Brix)が20°Bx以下、又は、酸度が0.8%(w/v)以下である飲料の製造において、エタノール、及びプロピレングリコールの一方又は両方を含有させることによって、獣臭を抑制できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)(a)エクオール含有濃度が0.004%(w/w)以上であり、かつ、(b)固形分濃度(Brix)が20°Bx以下、又は、酸度が0.8%(w/v)以下である飲料であって、
エタノール、及びプロピレングリコールの一方又は両方を含む、前記飲料;
(2)エタノール、及びプロピレングリコールの一方又は両方を含むことが、
エタノール含有濃度が0.01~1.0%(v/v)であるか、又は、プロピレングリコール含有濃度が0.05~1.0%(v/v)であるか、又は、その両方である、上記(1)に記載の飲料;
(3)エクオール含有大豆胚軸発酵物を含有する、上記(1)又は(2)に記載の飲料;
(4)(a)エクオール含有濃度が0.004%(w/w)以上であり、かつ、(b)固形分濃度(Brix)が20°Bx以下、又は、酸度が0.8%(w/v)以下である飲料の製造において、
エタノール、及びプロピレングリコールの一方又は両方を前記飲料に含有させることを特徴とする、前記飲料の製造方法;
(5)エタノール、及びプロピレングリコールの一方又は両方を前記飲料に含有させることが、
前記飲料において、エタノール含有濃度が0.01~1.0%(v/v)であるか、又は、プロピレングリコール含有濃度が0.05~1.0%(v/v)であるか、又は、その両方を満たすようにすることである、上記(4)に記載の製造方法;
(6)(a)エクオール含有濃度が0.004%(w/w)以上であり、かつ、(b)固形分濃度(Brix)が20°Bx以下、又は、酸度が0.8%(w/v)以下である飲料の製造において、
エタノール、及びプロピレングリコールの一方又は両方を前記飲料に含有させることを特徴とする、前記飲料において獣臭を抑制する方法;
(7)エタノール、及びプロピレングリコールの一方又は両方を前記飲料に含有させることが、
前記飲料において、エタノール含有濃度が0.01~1.0%(v/v)であるか、又は、プロピレングリコール含有濃度が0.05~1.0%(v/v)であるか、又は、その両方を満たすようにすることである、上記(6)に記載の獣臭を抑制する方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エクオール含有素材の獣臭を抑制する、より汎用的な方法、エクオール含有素材の獣臭が抑制された、エクオール含有飲料、及びその製造方法等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、
[1](a)エクオール含有濃度が0.004%(w/w)以上であり、かつ、(b)固形分濃度(Brix)が20°Bx以下、又は、酸度が0.8%(w/v)以下である飲料であって、
エタノール、及びプロピレングリコールの一方又は両方を含む、前記飲料;(以下、「本発明の飲料」とも表示する。);
[2](a)エクオール含有濃度が0.004%(w/w)以上であり、かつ、(b)固形分濃度(Brix)が20°Bx以下、又は、酸度が0.8%(w/v)以下である飲料の製造において、
エタノール、及びプロピレングリコールの一方又は両方を前記飲料に含有させることを特徴とする、前記飲料の製造方法(以下、「本発明の製造方法」とも表示する。);
[3](a)エクオール含有濃度が0.004%(w/w)以上であり、かつ、(b)固形分濃度(Brix)が20°Bx以下、又は、酸度が0.8%(w/v)以下である飲料の製造において、
エタノール、及びプロピレングリコールの一方又は両方を前記飲料に含有させることを特徴とする、前記飲料において獣臭を抑制する方法(以下、「本発明の抑制方法」とも表示する。);
等の実施態様を含む。
【0013】
(エクオール)
「エクオール」とは、主に糖と結合した配糖体の形で存在するイソフラボン類が、体内の消化酵素又は腸内細菌の産生する酵素等で変換された代謝物であり、高いエストロゲン活性を有する。本発明においては、ダイゼイン配糖体、ダイゼイン、及びジヒドロダイゼインからなる群から選択される少なくとも1種のダイゼイン類の代謝物であるエクオールが使用される。ダイゼイン配糖体としては、例えば、ダイジン、マロニルダイジン、アセチルダイジン等が挙げられる。本発明において使用されるエクオールは、特に限定されず、合成法で得られたものであってもよく、または発酵法で得られたものであってもよい。
【0014】
本発明においては、エクオール、及び/又は、エクオール含有組成物を用いることができる。エクオール含有組成物としては、エクオールを含有する組成物である限り、特に制限されないが、獣臭がより強く、本発明の意義を多く得る観点から、エクオールを含有する大豆胚軸発酵物(本明細書において、「エクオール含有大豆胚軸発酵物」と表示する。)が好ましく挙げられる。エクオール含有大豆胚軸発酵物は、ダイゼイン配糖体、ダイゼイン、及びジヒドロダイゼインからなる群から選択される少なくとも1種のダイゼイン類を資化してエクオールを産生する能力を有する微生物で、大豆胚軸を発酵させることにより得られる。大豆胚軸とは、大豆の発芽時に幼芽、幼根となる部分であり、ダイゼイン配糖体やダイゼイン等のダイゼイン類が多く含まれることが知られている。本発明において使用される大豆胚軸は、ダイゼイン類を含有するものであればいずれであってもよく、大豆の種類、産地または加工の有無、大豆胚軸の形状等について制限はない。例えば、生の状態のもの、加熱処理、乾燥処理又は蒸煮処理等に供された大豆から分離したもの、未加工の大豆から分離した胚軸を加熱処理、乾燥処理又は蒸煮処理等に供したもの、脱脂処理又は脱タンパク処理に供したもの、粉末状、或いは粉砕又は破砕されたものであってもよい。上記エクオールを産生する能力を有する微生物としては、食品衛生上許容され、かつ、エクオール産生能を有するかぎり特に制限されないが、例えば、ラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garvieae)等のラクトコッカス属に属する微生物、ストレプトコッカス・インターメディアス(Streptococcus intermedius)、ストレプトコッカス・コンステラータス(Streptococcus constellatus)等のストレプトコッカス属に属する微生物、バクテロイデス・オバタス(Bacteroides ovatus)等のバクテロイデス属に属する微生物が挙げられる。上記エクオールを産生する能力を有する微生物は、例えば、ヒトの糞便中からエクオール産生能を指標として単離することもできる。エクオールを含有する大豆胚軸発酵物は、上記エクオールを産生する能力を有する微生物を用いて上記大豆胚軸を適当な条件下で発酵させることによって得ることができる。発酵条件はエクオールが産生されるかぎり特に制限はなく、当業者によって適宜決定することができる。例えば、国際公開第2007/066655号に記載の方法で得られるエクオール含有大豆胚軸発酵物を使用することができる。
【0015】
本発明においてエクオール含有大豆胚軸発酵物を使用する場合、該エクオール含有大豆胚軸発酵物は発酵後の状態のまま使用してもよく、または必要に応じて乾燥処理に供して固形物状にして使用してもよい。保存安定性の見地から、エクオール含有大豆胚軸発酵物は、乾燥処理により固形状にすることが好ましい。また、乾燥処理されたエクオール含有大豆胚軸発酵物は、必要に応じて粉末化処理に供して粉末状にしたものであってもよい。
【0016】
本発明の飲料におけるエクオール含有濃度は、0.004%(w/w)以上である限り、特に制限されないが、獣臭がより強くなり、本発明による利益をより多く享受する観点から、好ましくは0.005%(w/w)以上又は0.01%(w/w)以上が挙げられる。また、エクオール含有濃度の上限として、例えば、0.04%(w/w)以下が挙げられる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができる。
飲料中のエクオール含有濃度は、例えばHPLCを用いて測定することができる。
【0017】
(固形分濃度、及び、酸度)
本発明における飲料は、固形分濃度(Brix)が20°Bx以下、又は、酸度が0.8%(w/v)以下である。
【0018】
(固形分濃度)
本明細書における「固形分濃度」とは、飲料のBrix値(°Bx)を意味する。
【0019】
本発明の飲料の固形分濃度(Brix)としては、20°Bxより高くてもよいが、獣臭がより強くなり、本発明による利益をより多く享受する観点から、好ましくは20°Bx以下、より好ましくは16°Bx以下、さらに好ましくは11°Bx以下が挙げられる。本発明の飲料の固形分濃度の下限としては特に制限されないが、例えば0.05°Bx以上、0.1°Bx以上、又は0.4°Bx以上が挙げられる。
【0020】
本発明の飲料の固形分濃度は、例えば、公知の甘味料を使用することで上記の値に調整することができる。たとえば、ショ糖、ブドウ糖、グラニュー糖、果糖、乳糖、及び麦芽糖、果糖ぶどう糖液糖、ぶどう糖果糖液糖等の糖類;キシリトール、D-ソルビトール等の低甘味度甘味料;タウマチン、ステビア抽出物、グリチルリチン酸二ナトリウム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、ネオテーム、及びサッカリンナトリウム等の高甘味度甘味料を単独で、又は適宜2種類以上を組み合わせて調整することが好ましく、ショ糖や果糖ぶどう糖液糖、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテームで調整することが、自然な甘みや爽やかな酸味といった嗜好性の観点から好ましい。また、本発明においてBrix値は、20℃における糖用屈折計の示度とし、例えば、商品名「デジタル屈折計Rx-5000」(アタゴ社製)を使用して20℃で測定した固形分量とすることができる。
【0021】
(酸度)
本明細書における「酸度」とは、飲料中の酸の、クエン酸換算の酸度(無水クエン酸相当量として換算した酸度の値)(%(w/v))を意味する。
【0022】
本発明の飲料の酸度としては、0.8%(w/v)より高くてもよいが、獣臭がより強くなり、本発明による利益をより多く享受する観点から、好ましくは0.8%(w/v)以下、より好ましくは0.5%(w/v)以下、さらに好ましくは0.3%(w/v)以下が挙げられる。本発明の飲料の酸度の下限としては特に制限されないが、例えば0.15%(w/v)以上が挙げられる。
【0023】
本発明の飲料の酸度は、使用する酸味料(例えばクエン酸)の量を調整すること等によって、調整することができる。また、本発明の飲料の酸度は、例えば、飲料を水酸化ナトリウム溶液(0.1mol/L)で中和滴定し、中和滴定において必要となった水酸化ナトリウム溶液の「滴定量(mL)」、滴定に使用した飲料の「重量(g)」、「0.0064」(0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液1mLに相当するクエン酸の重量(g))という定数などを用いて算出することができる。
【0024】
(エタノール、及び、プロピレングリコール)
本発明の飲料は、エタノール、及びプロピレングリコールの一方又は両方を含んでいる。
【0025】
(エタノール)
本発明の飲料がエタノールを含有している場合、エクオール含有素材の獣臭の抑制効果が得られる限り、エタノールの含有濃度としては特に制限されないが、獣臭の抑制効果をより多く得る観点から、好ましくは0.01%(v/v)以上、より好ましくは0.03%(v/v)以上、さらに好ましくは0.06%(v/v)以上が挙げられる。また、エタノールの含有濃度の上限として、特に制限されないが、異味異臭を一定の範囲内とする観点から、好ましくは1.0%(v/v)以下又は0.9%(v/v)以下、より好ましくは0.7%(v/v)以下が挙げられる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができる。
【0026】
本発明の飲料におけるエタノールの含有濃度の好適な態様の具体例として、0.01~1.0%(v/v)、0.01~0.9%(v/v)、又は、0.01~0.7%(v/v)が挙げられ、好ましくは0.03~1.0%(v/v)、0.03~0.9%(v/v)、又は、0.03~0.7%(v/v)が挙げられ、より好ましくは0.06~1.0%(v/v)、0.06~0.9%(v/v)、又は、0.06~0.7%(v/v)が挙げられる。
【0027】
本発明において、飲料中のエタノール濃度は、例えば、エタノールや、エタノール含有組成物を飲料に含有させる量を調整すること等により調整することができる。エタノールや、エタノール含有組成物は市販されているものを用いることができる。
【0028】
飲料中のエタノールの含有濃度は、例えばHPLCを用いて測定することができる。
【0029】
(プロピレングリコール)
本発明の飲料がプロピレングリコールを含有している場合、エクオール含有素材の獣臭の抑制効果が得られる限り、プロピレングリコールの含有濃度としては特に制限されないが、獣臭の抑制効果をより多く得る観点から、好ましくは0.05%(v/v)以上、より好ましくは0.1%(v/v)以上、さらに好ましくは0.2%(v/v)以上が挙げられる。また、プロピレングリコールの含有濃度の上限として、特に制限されないが、異味異臭を一定の範囲内とする観点から、好ましくは1.0%(v/v)以下、より好ましくは0.6%(v/v)以下又は0.4%(v/v)以下が挙げられる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができる。
【0030】
本発明の飲料におけるプロピレングリコールの含有濃度の好適な態様の具体例として、0.05~1.0%(v/v)、0.05~0.6%(v/v)、又は、0.05~0.4%(v/v)が挙げられ、好ましくは0.1~1.0%(v/v)、0.1~0.6%(v/v)又は、0.1~0.4%(v/v)が挙げられ、より好ましくは0.2~1.0%(v/v)、0.2~0.6%(v/v)、又は、0.2~0.4%(v/v)が挙げられる。
【0031】
本発明において、飲料中のプロピレングリコール濃度は、例えば、プロピレングリコールや、プロピレングリコール含有組成物を飲料に含有させる量を調整すること等により調整することができる。プロピレングリコールや、プロピレングリコール含有組成物は市販されているものを用いることができる。
【0032】
飲料中のプロピレングリコールの含有濃度は、例えばHPLCを用いて測定することができる。
【0033】
(エタノールとプロピレングリコールの好ましい濃度の組合せ)
本発明の飲料における、エタノールの含有濃度と、プロピレングリコールの含有濃度の好ましい組合せとしては、
エタノールの含有濃度0.01~1.0%(v/v)と、プロピレングリコールの含有濃度0.05~1.0%(v/v)の組合せ;
エタノールの含有濃度0.01~0.9%(v/v)と、プロピレングリコールの含有濃度0.05~1.0%(v/v)の組合せ;
エタノールの含有濃度0.01~0.7%(v/v)と、プロピレングリコールの含有濃度0.05~0.6%(v/v)の組合せ;
エタノールの含有濃度0.01~0.7%(v/v)と、プロピレングリコールの含有濃度0.05~0.4%(v/v)の組合せ;
エタノールの含有濃度0.05~1.0%(v/v)と、プロピレングリコールの含有濃度0.1~1.0%(v/v)の組合せ;
エタノールの含有濃度0.05~0.9%(v/v)と、プロピレングリコールの含有濃度0.1~1.0%(v/v)の組合せ;
エタノールの含有濃度0.05~0.7%(v/v)と、プロピレングリコールの含有濃度0.1~0.6%(v/v)の組合せ;
エタノールの含有濃度0.05~0.7%(v/v)と、プロピレングリコールの含有濃度0.1~0.4%(v/v)の組合せ;
などが挙げられる。
【0034】
(任意成分)
本発明の飲料は、本発明の効果を妨げない範囲で、任意成分を含有していてもよい。かかる任意成分としては、酸味料、香料、色素、甘味料、保存料、増粘安定剤、乳化剤、食物繊維、苦味料、酸化防止剤、pH調整剤、ビタミン類、うま味成分、食物繊維、エキス、水溶性の機能性成分、及び、脂溶性の機能性成分からなる群から選択される1種又は2種以上が挙げられる。
【0035】
上記の「酸味料」としては、クエン酸、リン酸、グルコン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、フィチン酸、酢酸、コハク酸、又はそれらの塩が挙げられ、クエン酸又はその塩が好ましく挙げられる。かかる塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩が挙げられ、ナトリウム塩、カルシウム塩が好ましく挙げられる。
【0036】
(本発明の飲料)
本発明の飲料としては、(a)エクオール含有濃度が0.004%(w/w)以上であり、かつ、(b)固形分濃度(Brix)が20°Bx以下、又は、酸度が0.8%(w/v)以下である飲料であって、
エタノール、及びプロピレングリコールの一方又は両方を含む、前記飲料である限り特に制限されない。本発明の飲料の種類は特に制限されず、例えば清涼飲料水などが挙げられる。
【0037】
本発明の飲料は、(a)エクオール含有濃度が0.004%(w/w)以上であり、かつ、(b)固形分濃度(Brix)が20°Bx以下、又は、酸度が0.8%(w/v)以下である飲料において、エタノール、及びプロピレングリコールの一方又は両方を含むこと以外は、用いる製造原料、製造方法並びに製造条件において、通常の飲料と特に相違する点はない。
【0038】
本発明の飲料は、(a)エクオール含有濃度が0.004%(w/w)以上であり、かつ、(b)固形分濃度(Brix)が20°Bx以下、又は、酸度が0.8%(w/v)以下である飲料の製造において、いずれかの段階で、エタノール、及びプロピレングリコールの一方又は両方を含むようにする(好ましくは、そのように調製する)ことによって製造することができる。
【0039】
本発明の飲料は、容器詰飲料でなくてもよいが、保存性向上の観点から、容器詰飲料であることが好ましい。かかる容器としては、ペットボトル、ポリプロピレンボトル、ポリ塩化ビニルボトル等の樹脂ボトル容器;ビン容器;缶容器;等の容器が挙げられる。
【0040】
本発明の飲料は、加熱殺菌処理がなされていなくてもよいが、保存性向上の観点から、加熱殺菌処理がなされていてもよい。加熱殺菌処理の方法や条件としては、通常の容器詰飲料に使用される通常の方法や条件を用いることができる。
【0041】
(本発明の製造方法)
本発明の製造方法としては、(a)エクオール含有濃度が0.004%(w/w)以上であり、かつ、(b)固形分濃度(Brix)が20°Bx以下、又は、酸度が0.8%(w/v)以下である飲料の製造において、
エタノール、及びプロピレングリコールの一方又は両方を前記飲料に含有させることを特徴とする、前記飲料の製造方法である限り特に制限されない。
【0042】
本発明における「エタノール、及びプロピレングリコールの一方又は両方を前記飲料に含有させる」方法としては、本発明の飲料において、エタノール、及びプロピレングリコールの一方又は両方を含有するように、本発明の飲料の製造工程のいずれかで、「エタノール、及び/又は、エタノール含有組成物」、及び/又は、「プロピレングリコール、及び/又は、プロピレングリコール含有組成物」を含有させる方法が挙げられる。
【0043】
本発明の製造方法においては、任意成分として、酸味料、香料、色素、甘味料、保存料、増粘安定剤、乳化剤、食物繊維、苦味料、酸化防止剤、pH調整剤、ビタミン類、うま味成分、食物繊維、エキス、水溶性の機能性成分、及び、脂溶性の機能性成分からなる群から選択される1種又は2種以上をさらに含有させてもよい。
【0044】
本発明の製造方法においては、本発明の飲料を製造し得る限り、製造原料を含有させる順序等は特に制限されない。例えば、製造原料が混合されている液を調製することにより、本発明の飲料を製造することができ、また、その飲料を容器に充填して密封して、容器詰飲料を得ることができる。
【0045】
(加熱殺菌)
本発明の製造方法は、本発明の飲料を加熱殺菌する工程を含んでいてもよい。かかる加熱殺菌する方法としては、容器詰飲料における通常の加熱殺菌方法を特に制限なく用いることができる。例えば、金属缶のように充填後に加熱殺菌できる場合にあっては、食品衛生法に定められた殺菌条件等で殺菌処理を行うことができる。また、PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、充填前に該飲料を、あらかじめ上記と同等の殺菌条件で、例えばプレート式熱交換器等を用いて高温短時間殺菌(UHT殺菌)した後、一定の温度まで冷却し、殺菌済み容器に充填する等の方法を採用することができる。
【0046】
(本発明の抑制方法)
本発明の抑制方法としては、(a)エクオール含有濃度が0.004%(w/w)以上であり、かつ、(b)固形分濃度(Brix)が20°Bx以下、又は、酸度が0.8%(w/v)以下である飲料の製造において、
エタノール、及びプロピレングリコールの一方又は両方を前記飲料に含有させることを特徴とする、前記飲料において獣臭を抑制する方法である限り特に制限されない。
【0047】
「エタノール、及びプロピレングリコールの一方又は両方を前記飲料に含有させる」方法は、上記の(本発明の製造方法)に記載した方法と同様の方法を用いることができる。
【0048】
(獣臭が抑制された飲料)
本発明の飲料は、獣臭が抑制された飲料である。本発明における「獣臭」とは、エクオール含有素材(好ましくはエクオールを含有する大豆胚軸発酵物)の不快臭であって、獣様の臭いを意味する。
【0049】
本明細書において、「獣臭が抑制された」飲料としては、エタノール及びプロピレングリコールを含有していないこと以外は、同種の原料を同じ最終濃度となるように用いて同じ製法で製造した飲料(以下、「コントロール飲料」とも表示する。)と比較して、獣臭が抑制された飲料などが挙げられる。
【0050】
ある飲料における、獣臭の程度や、かかる獣臭の程度が本発明におけるコントロール飲料と比較してどのようであるか(例えば、獣臭が抑制されているかどうか、どの程度抑制されているか)は、訓練されたパネルであれば、容易かつ明確に決定することができる。
【0051】
(香味調和が取れた飲料)
本発明の飲料は、さらに、香味調和が取れていることが好ましい。本発明における「香味調和」とは、エクオール含有飲料としての香味の調和を意味する。
【0052】
本明細書において、「香味調和が取れた」飲料としては、コントロール飲料と比較して、香味調和がおおむね維持された飲料が挙げられ、より具体的には、エタノール及び/又はプロピレングリコールの風味(例えば異味異臭)が許容範囲内である飲料が挙げられる。
【0053】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【実施例0054】
試験1.[エクオール含有濃度、Brix、酸度の、獣臭への影響]
容器詰飲料におけるエクオール含有濃度が、獣臭の程度にどのような影響を与えるかを、以下の実験により調べた。
【0055】
(1.エクオール含有飲料の調製)
水に、エクオール含有大豆胚軸発酵物(フラボセル(登録商標);株式会社ダイセル製)、果糖ブドウ糖液糖、及び、無水クエン酸を添加して、最終的に表2~4記載のエクオール濃度(%(w/w))、固形分濃度(Brix:°Bx)、及び、酸度(%(w/v))となるように調整して、飲料を調製した。これらの飲料をレトルト殺菌した後、容器に充填して、試験例1~15のサンプル飲料を調製した。
【0056】
(2.官能評価試験)
得られた試験例1~15のサンプル飲料の獣臭の程度について、訓練した専門パネル5名によって、以下の表1に記載されるような5段階の評価基準で官能評価試験を行った。なお、1点と2点の獣臭の程度の差、2点と3点の獣臭の程度の差、3点と4点の獣臭の程度の差、4点と5点の獣臭の程度の差は、それぞれ同程度とした。
なお、各試験例のサンプル飲料における獣臭の程度の評価としては、各パネルの評価点の平均値の小数第2位を四捨五入した値を採用した。
【0057】
【0058】
なお、表1の評価基準において、例えば3.6点以上である場合に、獣臭の課題があると判断することができる。
【0059】
試験例1~15のサンプル飲料についての獣臭の官能評価試験の結果を表2~4に示す。
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
表2の結果から、エクオール含有濃度が0.004%(w/w)以上である場合に、獣臭の課題が発生することが示された。また、表3の結果から、Brixが20°Bx以下である場合に、獣臭の課題が発生することが示された。さらに、表4の結果から、酸度が0.8%(w/v)以下である場合に、獣臭の課題が発生することが示された。
【0064】
試験2.[エタノールの、獣臭への影響]
エクオール含有飲料における獣臭に対して、エタノールがどのような影響を与えるかを、以下の実験により調べた。
【0065】
(1.エクオール含有飲料の調製)
水に、エクオール含有大豆胚軸発酵物(フラボセル(登録商標);株式会社ダイセル製)、果糖ブドウ糖液糖、無水クエン酸、及び、エタノールを添加して、最終的に表6~10記載のエクオール濃度(%(w/w))、固形分濃度(Brix:°Bx)、酸度(%(w/v))、及び、エタノール濃度(%(v/v))となるように調整して、飲料を調製した。これらの飲料をレトルト殺菌した後、容器に充填して、試験例16~31のサンプル飲料を調製した。なお、コントロールとして、エタノールを含有しない、試験例1、2、4、9、11、12、14、15のサンプル飲料を同様の方法にて調製した。
【0066】
(2.官能評価試験)
得られた各試験例のサンプル飲料の獣臭の程度について、試験1のときと同様の方法で官能評価試験を行った。
【0067】
また、得られた各試験例のサンプル飲料の異味異臭の程度について、訓練した専門パネル5名によって、以下の表5に記載されるような3段階の評価基準で官能評価試験を行った。なお、〇と△の異味異臭の程度の差、△と×の異味異臭の程度の差は、それぞれ同程度とした。
なお、各試験例のサンプル飲料における異味異臭の程度の評価としては、各パネルの評価のうち、最も多数のパネルの評価結果を採用した。
【0068】
【0069】
なお、表5評価基準において、△又は〇である場合が許容範囲であり、〇が好ましいと判断することができる。
【0070】
これらの試験例のサンプル飲料についての獣臭、及び、異味異臭の官能評価試験の結果を表6~10に示す。
【0071】
【0072】
表6の結果から、エクオール濃度が0.0035%(w/w)では、エタノールの有無に依らず、獣臭が課題にならないのに対し、エクオール濃度が0.004%(w/w)以上では、エタノールを含有させると、飲料における獣臭が抑制されることが示された。
【0073】
【0074】
表7の結果から、例えばBrixが22°Bxである場合は、獣臭の評価が3.5以下であり、エタノールの有無に依らず、獣臭が課題とはならないのに対し、Brixが20°Bxである場合は、エタノールを含有させると、飲料における獣臭が抑制されることが示された。
【0075】
【0076】
表8の結果から、例えば酸度が1.1%(w/v)である場合は、獣臭の評価が3.5以下であり、エタノールの有無に依らず、獣臭が課題とはならないのに対し、酸度が0.8%(w/v)である場合は、エタノールを含有させると、飲料における獣臭が抑制されることが示された。
【0077】
【0078】
【0079】
表9及び表10の結果から、エタノールの含有濃度が0.01%(v/v)以上であると飲料における獣臭が抑制され、獣臭をより多く抑制する観点から、エタノールの含有濃度は0.03%(v/v)以上が好ましく、0.06%(v/v)以上がより好ましいことが示された。また、異味異臭の観点からは、エタノールの含有濃度は0.9%(v/v)程度であってもよいが、エタノールの含有濃度は0.7%(v/v)以下が好ましいことが示された。
【0080】
試験3.[プロピレングリコールの、獣臭への影響]
エクオール含有飲料における獣臭に対して、プロピレングリコール(PG)がどのような影響を与えるかを、以下の実験により調べた。
【0081】
(1.エクオール含有飲料の調製)
水に、エクオール含有大豆胚軸発酵物(フラボセル(登録商標);株式会社ダイセル製)、果糖ブドウ糖液糖、無水クエン酸、及び、プロピレングリコールを添加して、最終的に表11~14記載のエクオール濃度(%(w/w))、固形分濃度(Brix:°Bx)、酸度(%(w/v))、及び、プロピレングリコール濃度(%(v/v))となるように調整して、飲料を調製した。これらの飲料をレトルト殺菌した後、容器に充填して、試験例32~46のサンプル飲料を調製した。なお、コントロールとして、プロピレングリコールを含有しない、試験例1、2、4、9、11、12、14、15のサンプル飲料を同様の方法にて調製した。
【0082】
(2.官能評価試験)
得られた各試験例のサンプル飲料の獣臭の程度、及び、異味異臭の程度について、試験2のときと同様の方法で官能評価試験を行った。
【0083】
これらの試験例のサンプル飲料についての獣臭、及び、異味異臭の官能評価試験の結果を表11~14に示す。
【0084】
【0085】
表11の結果から、エクオール濃度が0.0035%(w/w)では、プロピレングリコールの有無に依らず、獣臭が課題にならないのに対し、エクオール濃度が0.004%(w/w)以上では、プロピレングリコールを含有させると、飲料における獣臭が抑制されることが示された。
【0086】
【0087】
表12の結果から、例えばBrixが22°Bxである場合は、獣臭の評価が3.5以下であり、プロピレングリコールの有無に依らず、獣臭が課題とはならないのに対し、Brixが20°Bxである場合は、プロピレングリコールを含有させると、飲料における獣臭が抑制されることが示された。
【0088】
【0089】
表13の結果から、例えば酸度が1.1%(w/v)である場合は、獣臭の評価が3.5以下であり、プロピレングリコールの有無に依らず、獣臭が課題とはならないのに対し、酸度が0.8%(w/v)である場合は、プロピレングリコールを含有させると、飲料における獣臭が抑制されることが示された。
【0090】
【表14】
表14の結果から、プロピレングリコールの含有濃度が0.05%(v/v)以上であると飲料における獣臭が抑制され、獣臭をより多く抑制する観点から、プロピレングリコールの含有濃度は0.1%(v/v)以上が好ましく、0.2%(v/v)以上がより好ましいことが示された。また、異味異臭の観点からは、プロピレングリコールの含有濃度は1.0%(v/v)程度であってもよいが、プロピレングリコールの含有濃度は0.6%(v/v)以下が好ましいことが示された。
【0091】
試験3.[エタノールとプロピレングリコールの併用による、獣臭への影響]
エクオール含有飲料における獣臭に対して、エタノールとプロピレングリコール(PG)の併用がどのような影響を与えるかを、以下の実験により調べた。
【0092】
(1.エクオール含有飲料の調製)
水に、エクオール含有大豆胚軸発酵物(フラボセル(登録商標);株式会社ダイセル製)、果糖ブドウ糖液糖、無水クエン酸、エタノール、及び、プロピレングリコールを添加して、最終的に表15記載のエクオール濃度(%(w/w))、固形分濃度(Brix:°Bx)、酸度(%(w/v))、エタノール、及び、プロピレングリコール濃度(%(v/v))となるように調整して、飲料を調製した。これらの飲料をレトルト殺菌した後、容器に充填して、試験例47~49のサンプル飲料を調製した。なお、コントロールとして、エタノール単独の試験例24、31のサンプル飲料や、プロピレングリコール単独の試験例41、44のサンプル飲料を同様の方法にて調製した。
【0093】
(2.官能評価試験)
得られた各試験例のサンプル飲料の獣臭の程度、及び、異味異臭の程度について、試験2のときと同様の方法で官能評価試験を行った。
【0094】
これらの試験例のサンプル飲料についての獣臭、及び、異味異臭の官能評価試験の結果を表15に示す。
【0095】
【表15】
表15の結果から、エタノールとプロピレングリコールを併用すると、エタノール単独又はプロピレングリコール単独の場合と比較して、獣臭をより多く抑制できることが示された。
本発明によれば、エクオール含有素材の獣臭を抑制する、より汎用的な方法、エクオール含有素材の獣臭が抑制された、エクオール含有飲料、及びその製造方法等を提供することができる。