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<図1>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108516
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】衣類処理装置
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/50 20200101AFI20240805BHJP
【FI】
D06F33/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012929
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊行
(72)【発明者】
【氏名】温 召航
【テーマコード(参考)】
3B167
【Fターム(参考)】
3B167AA02
3B167AA04
3B167AB23
3B167AB30
3B167AB32
3B167AE04
3B167AE05
3B167AE07
3B167AE11
3B167AE12
3B167AE13
3B167BA82
3B167JA31
3B167JA53
3B167KA03
3B167KA32
3B167KA63
3B167LA05
3B167LA08
3B167LA23
3B167LA38
3B167LC02
3B167LD03
3B167LD12
(57)【要約】
【課題】槽を回転させるモータに流れる電流の変動幅や平均値に基づいて衣類の布質を判定する衣類処理装置について、布質の判定精度の向上を図り、衣類の布質に応じた運転を行うことができるようにした構成例を提供する。
【解決手段】衣類処理装置は、衣類収容槽を回転させるモータに流れる電流を測定し、複数の電流の変動幅と平均値を算出し、変動幅と変動幅用閾値との比較結果および平均値と平均値用閾値との比較結果に基づいて、衣類の布質が第1区分および第2区分のうち何れの区分に含まれるのかを判定し、判定した布質の区分に応じて運転内容を変更し、変動幅用閾値および平均値用閾値のうち少なくとも何れか一方の閾値として少なくとも2つの閾値を設定することで、衣類の布質が第1区分および第2区分とは異なる特殊区分に含まれるのかも判定し、布質の区分が特殊区分である場合には特殊運転内容に変更する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類が収容される衣類収容槽と、
前記衣類収容槽を回転させるモータと、
前記衣類収容槽を回転させるモータに流れる電流を測定する電流測定部と、
前記電流測定部が測定する複数の電流の変動幅を算出する変動幅算出部と、
前記電流測定部が測定する複数の電流の平均値を算出する平均値算出部と、
前記変動幅算出部が算出した変動幅と所定の変動幅用閾値との比較結果、および、前記平均値算出部が算出した平均値と所定の平均値用閾値との比較結果に基づいて、前記衣類収容槽内の衣類の布質が所定の第1区分および所定の第2区分のうち何れの区分に含まれるのかを判定可能である布質区分判定部と、
前記布質区分判定部が判定した布質の区分に応じて運転内容を変更する運転内容変更部と、
を備え、
前記布質区分判定部は、前記変動幅用閾値および前記平均値用閾値のうち少なくとも何れか一方の閾値として少なくとも2つの閾値を設定することにより、前記衣類収容槽内の衣類の布質が前記第1区分および前記第2区分とは異なる特殊区分に含まれるのかも判定可能であり、
前記運転内容変更部は、前記布質区分判定部が判定した布質の区分が前記特殊区分である場合には、運転内容を所定の特殊運転内容に変更可能である衣類処理装置。
【請求項2】
前記特殊運転内容は、前記衣類収容槽内の衣類を脱水する脱水行程において前記第1区分である場合における脱水行程と同じ制御を行い、前記衣類収容槽内の衣類を乾燥する乾燥行程において前記第2区分である場合における乾燥行程と同じ制御を行う運転内容である請求項1に記載の衣類処理装置。
【請求項3】
前記衣類収容槽内の衣類を乾燥する乾燥行程の実行時間は、前記第2区分である場合、前記特殊区分である場合、前記第1区分である場合の順に設定される請求項1に記載の衣類処理装置。
【請求項4】
複数の前記特殊区分が設けられている請求項1に記載の衣類処理装置。
【請求項5】
前記第1区分は、含水しやすい布質あるいは乾きにくい布質の区分であり、
前記第2区分は、含水しにくい布質あるいは乾きやすい布質の区分である請求項1に記載の衣類処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、衣類処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているドラム式の洗濯機は、衣類に洗い処理などを施す衣類処理装置の一例であり、モータにより回転ドラムの回転速度を所定の回転速度に到達させた後、モータへの通電をオフし、その後、惰性で回転する回転ドラムが停止するまでの時間に応じて衣類の「重量」を判定可能に構成されている。また、この洗濯機は、衣類が含水する前における布量判定結果を衣類が含水した後における布量判定結果により除算し、その値に基づいて衣類の「布質」を判定可能に構成されている。そして、この洗濯機は、布質の判定結果に応じて最終脱水行程における脱水時間を変化させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-180161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、衣類の「布質」を判定するための手法は、上述した手法に限られず、例えば、運転中に槽を回転させるモータに流れる電流を複数回測定し、測定された複数の電流値の変動幅や平均値に基づいて布質判定を行う手法も考えられている。しかしながら、この手法では、例えば衣類の重量が少ない場合には、衣類の含水量や衣類同士の絡み具合などに応じて電流値の変動幅や平均値に差が出にくく、従って、衣類の布質を誤って判定してしまう可能性がある。
【0005】
そこで、本実施形態は、槽を回転させるモータに流れる電流の変動幅や平均値に基づいて衣類の布質を判定するように構成された衣類処理装置について、その布質の判定精度の向上を図ることができ、衣類の布質に応じた運転を行うことができるようにした構成例を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る衣類処理装置は、衣類が収容される衣類収容槽と、前記衣類収容槽を回転させるモータと、前記衣類収容槽を回転させるモータに流れる電流を測定する電流測定部と、前記電流測定部が測定する複数の電流の変動幅を算出する変動幅算出部と、前記電流測定部が測定する複数の電流の平均値を算出する平均値算出部と、前記変動幅算出部が算出した変動幅と所定の変動幅用閾値との比較結果、および、前記平均値算出部が算出した平均値と所定の平均値用閾値との比較結果に基づいて、前記衣類収容槽内の衣類の布質が所定の第1区分および所定の第2区分のうち何れの区分に含まれるのかを判定可能である布質区分判定部と、前記布質区分判定部が判定した布質の区分に応じて運転内容を変更する運転内容変更部と、を備え、前記布質区分判定部は、前記変動幅用閾値および前記平均値用閾値のうち少なくとも何れか一方の閾値として少なくとも2つの閾値を設定することにより、前記衣類収容槽内の衣類の布質が前記第1区分および前記第2区分とは異なる特殊区分に含まれるのかも判定可能であり、前記運転内容変更部は、前記布質区分判定部が判定した布質の区分が前記特殊区分である場合には、運転内容を所定の特殊運転内容に変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る洗濯乾燥機の構成例を概略的に示す縦断側面図
図2】本実施形態に係る循環風路の構成例を概略的に示す図
図3】本実施形態に係る洗濯乾燥機の制御系の構成例を概略的に示すブロック図
図4】本実施形態に係る布質区分判定処理の一例を概念的に示す図
図5】本実施形態に係る布質区分判定処理の一例を概略的に示すフローチャート
図6】本実施形態に係る運転内容変更処理の一例を概略的に示す図
図7】本実施形態に係る2段脱水方式の一例を概略的に示す図
図8】本実施形態に係る4段脱水方式の一例を概略的に示す図
図9】本実施形態に係る基準乾燥時間の設定例を概略的に示す図
図10】本実施形態に係る特殊区分用追加時間の設定例を概略的に示す図
図11】本実施形態に係る綿区分用追加時間の設定例を概略的に示す図
図12】本実施形態の変形例に係る布質区分判定処理の一例を概念的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、衣類処理装置に係る一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に例示する洗濯乾燥機1は、衣類に所定の処理、この場合、少なくとも、衣類を洗う洗い処理、衣類をすすぐすすぎ処理、衣類を脱水する脱水処理を施すことが可能な衣類処理装置の一例である。洗濯乾燥機1は、回転槽の回転中心軸が水平方向あるいは水平方向に対して傾斜する方向に延びる、いわゆるドラム式の洗濯乾燥機である。洗濯乾燥機1は、衣類を乾燥する乾燥処理を施すことが可能な衣類乾燥装置の一例でもある。
【0009】
洗濯乾燥機1は、その外郭を構成する矩形箱状の外箱2の内部に、水槽3を備えている。水槽3は、図示しないサスペンションにより弾性的に支持されている。水槽3は、円筒状をなし、その背面が閉塞されており、内部に水を溜めることが可能である。水槽3内には、衣類収容槽の一例である回転ドラム3dが回転可能に設けられている。回転ドラム3dは、円筒状をなし、その背面が閉塞されている。回転ドラム3dは、例えば洗い処理、すすぎ処理、脱水処理、乾燥処理などといった各種の処理の対象である図示しない衣類を収容可能である。また、回転ドラム3dの周壁面および背面には通気および通水が可能な図示しない多数の小孔が設けられている。また、回転ドラム3dの内周面には、衣類をかき上げるための図示しないバッフルが設けられている。回転ドラム3dの回転中心軸は、水平方向あるいは水平方向に対して傾斜する方向に延びている。
【0010】
水槽3の背面には、ドラムモータ3mが設けられている。ドラムモータ3mは、回転ドラム3dを回転させる。水槽3の前面開口部3cは、外箱2の前面に設けられているドア4によって開閉可能に構成されている。使用者は、ドア4を開くことにより、水槽3の前面開口部3cを通して当該水槽3内の回転ドラム3d内に衣類を出し入れすることができる。
【0011】
洗濯乾燥機1は、水槽3内に水を供給するための給水部5、および、水槽3内の水を機外に排出するための排水部6を備えている。給水部5は、例えば水道などといった図示しない水源から水槽3に延びる給水経路7の途中に、周知の給水弁8や注水ケース9などを備えた構成である。排水部6は、水槽3の底部から機外に延びる排水経路10の途中に、周知の排水弁11などを備えた構成である。排水弁11が閉じられた状態で給水部5から水槽3内に水が供給されることにより、水槽3内に所定量の水が溜められる。排水弁11が開かれることにより、水槽3内の水が排水経路10を介して機外に排出される。
【0012】
排水経路10の途中には、排水弁11よりも上流側に周知の排水フィルター12が設けられている。排水フィルター12は、排水部6により水槽3内から排水経路10を介して機外に排出される水に含まれている異物を捕獲する。異物は、例えば衣類から発生した糸くずや塵埃などである。
【0013】
洗濯乾燥機1は、循環風路14を備えている。循環風路14は、水槽3の外部において、水槽3の空気流出口3aと空気流入口3bとの間を接続している。この場合、空気流出口3aは、水槽3の上面の前部に設けられている。また、空気流入口3bは、水槽3の背面の上部に設けられている。
【0014】
循環風路14の途中には、熱交換ダクト15が設けられている。熱交換ダクト15は、外箱2内の下部の後部において、当該外箱2の左右方向に沿うように設けられている。循環風路14の途中には、熱交換ダクト15よりも風上側に乾燥フィルター16が設けられている。循環風路14の途中部には乾燥フィルター収容部17が設けられている。乾燥フィルター16は、この乾燥フィルター収容部17内に着脱可能に設けられている。循環風路14の乾燥フィルター収容部17内に取り付けられた状態の乾燥フィルター16は、水槽3内の衣類を乾燥する乾燥行程時において、循環風路14内を流れる空気に含まれている異物を捕獲する。異物は、例えば衣類から発生した糸くずや塵埃などである。
【0015】
図2に例示するように、洗濯乾燥機1は、ヒートポンプ機構20を備えている。ヒートポンプ機構20は、圧縮機21、凝縮器22、絞り器23、蒸発器24を冷媒管25によりサイクル接続した冷凍サイクルを構成している。このうち、熱交換器を構成する凝縮器22および蒸発器24は、循環風路14の一部を構成する熱交換ダクト15の内部に配置されている。
【0016】
循環風路14には、循環送風機26が備えられている。循環送風機26は、水槽3内の空気を、循環風路14を通して循環させるものである。この循環送風機26が駆動されることにより、図2に矢印Wで例示するように、水槽3内の空気は、空気流出口3aから循環風路14内に導入されて、空気流出口3a側である風上側から空気流入口3b側である風下側に向かって流れて、空気流入口3bから水槽3内に戻されるようになっている。即ち、循環送風機26が駆動されることにより、水槽3内の空気は、循環風路14を介して循環される。
【0017】
蒸発器24は、熱交換ダクト15内において、水槽3の空気流出口3a側、つまり、循環風路14内の風上側に配置されている。一方、凝縮器22は、熱交換ダクト15内において、水槽3の空気流入口3b側、つまり、循環風路14内の風下側に配置されている。即ち、循環風路14内、より詳細には熱交換ダクト15内において、蒸発器24は、凝縮器22よりも風上側つまり風が流れる方向における上流側に配置されている。換言すれば、循環風路14内、より詳細には熱交換ダクト15内において、凝縮器22は、蒸発器24よりも風下側つまり風が流れる方向における下流側に配置されている。
【0018】
蒸発器24は、除湿部の一例であり、循環風路14内を空気流出口3a側から空気流入口3b側、つまり、風上側から風下側に向かって流れる空気を冷却して除湿する除湿手段として機能する。一方、凝縮器22は、加熱部の一例であり、循環風路14内を空気流出口3a側から空気流入口3b側、つまり、風上側から風下側に向かって流れる空気を加熱する加熱手段として機能する。
【0019】
これら蒸発器24および凝縮器22が循環風路14内に設けられていることにより、循環風路14内を風上側から風下側に向かって流れる空気は、蒸発器24によって除湿され、且つ、凝縮器22によって加熱され、所定温度の温風として水槽3内に戻される。これにより、水槽3内に収容されている衣類を温風によって乾燥することができる。
【0020】
洗濯乾燥機1は、循環風路14内を流れる空気の一部を外部に排出する排気口14wを備えている。また、洗濯乾燥機1は、この排気口14wを開閉する排気ダンパ14dを備えている。洗濯乾燥機1は、排気ダンパ14dが排気口14wを閉塞した閉状態では、循環風路14内を流れる空気を排気口14wから外部に排出不能であり、排気ダンパ14dが排気口14wを開放した開状態では、循環風路14内を流れる空気を排気口14wから外部に排出可能である。
【0021】
次に、洗濯乾燥機1の制御系の構成例について詳細に説明する。図3に例示する制御装置30は、例えばマイクロコンピュータを主体として構成されており、制御プログラムや各種の設定情報などに基づいて洗濯乾燥機1の動作全般を制御可能である。制御装置30には、上述した給水弁8、排水弁11、圧縮機21、循環送風機26などが接続されている。また、制御装置30には、上述したドラムモータ3mや排気ダンパ14dが接続されている。制御装置30は、これら駆動系の構成要素の動作を制御することにより、洗濯乾燥機1の動作全般を制御して各種の運転を実行することが可能である。制御装置30は、この場合、周知のベクトル制御によりドラムモータ3mの回転を制御するように構成されている。
【0022】
制御装置30は、制御プログラムを実行することにより、電流測定処理部31、変動幅算出処理部32、平均値算出処理部33、布質区分判定処理部34、運転内容変更処理部35をソフトウェアにより仮想的に実現している。これらの処理部31~35は、ハードウェアにより構成されていてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせにより構成されていてもよい。
【0023】
電流測定処理部31は、電流測定部の一例であり、運転中において回転ドラム3dを回転させるドラムモータ3mに流れる電流値、この場合、トルクが反映されるq軸電流値を測定可能に構成されている。この場合、電流測定処理部31は、例えば衣類を洗う洗い行程の実行中において、回転ドラム3dを回転させるドラムモータ3mに流れるq軸電流値を複数回測定する。
【0024】
変動幅算出処理部32は、変動幅算出部の一例であり、電流測定処理部31により測定される複数のq軸電流値の変動幅を算出する。変動幅は、複数のq軸電流値の最大値と最小値との差、あるいは、複数のq軸電流値の「ばらつき」と定義することもできる。平均値算出処理部33は、平均値算出部の一例であり、電流測定処理部31により測定される複数のq軸電流値の平均値を算出する。
【0025】
布質区分判定処理部34は、布質区分判定部の一例である。図4に例示するように、布質区分判定処理部34は、変動幅算出処理部32により算出される変動幅と所定の変動幅用閾値K1とを比較する。また、布質区分判定処理部34は、平均値算出処理部33により算出された平均値と所定の平均値用閾値K2とを比較する。そして、布質区分判定処理部34は、変動幅の比較結果および平均値の比較結果に基づいて、回転ドラム3d内の衣類の布質が「綿区分」および「化学繊維区分」のうち何れの区分に含まれるのかを判定可能である。「綿区分」は、第1区分の一例であり、この場合、衣類の布質が「綿」あるいは綿に類似する布質であり、含水しやすい布質であることを示す。一方、「化学繊維区分」は、第2区分の一例であり、衣類の布質が「化学繊維」あるいは化学繊維に類似する布質であり、含水しにくい布質であることを示す。
【0026】
また、布質区分判定処理部34は、この場合、変動幅用閾値K1として複数、この場合、2つの閾値K1a,K1bを設定し、且つ、平均値用閾値K2として1つの閾値K2を設定することにより、回転ドラム3d内の衣類の布質が「特殊区分」に含まれるのかも判定可能である。「特殊区分」は、上述した「綿区分」とは異なる区分であり、且つ、上述した「化学繊維区分」とも異なる区分である。なお、変動幅用閾値K1は、その値を適宜変更して設定することができる。変動幅用閾値K1a,K1bは、「K1a<K1b」の大小関係が成り立つ限り、それぞれの値を適宜変更して設定することができる。また、平均値用閾値K2は、その値を適宜変更して設定することができる。
【0027】
運転内容変更処理部35は、運転内容変更部の一例であり、布質区分判定処理部34により判定された布質の区分に応じて運転内容を変更可能に構成されている。運転内容変更処理部35は、布質区分判定処理部34により判定された布質の区分が「特殊区分」である場合には、運転内容を、予め設定されている所定の通常運転内容から所定の特殊運転内容に変更可能である。通常運転内容は、例えば、運転開始に先立ち使用者によって設定された設定内容や制御プログラムにより設定される設定内容などに基づいて決定される標準的な運転内容である。
【0028】
次に、上述した制御装置30が布質区分判定処理部34により布質区分判定処理を実行する場合ついて、さらに詳細に説明する。即ち、図5に例示するように、制御装置30は、衣類を洗う洗い行程を開始すると(ステップS1)、第1判定処理に移行する(ステップS2)。この第1判定処理では、制御装置30は、電流測定処理部31により測定される複数のq軸電流値の平均値が所定の平均値用閾値K2よりも大きいか否かを判定する。そして、制御装置30は、平均値が平均値用閾値K2よりも大きい場合(ステップS2:YES)には、回転ドラム3d内の衣類の布質が「綿区分」であると判定して(ステップS3)、この制御を終了する。
【0029】
制御装置30は、平均値が平均値用閾値K2以下である場合(ステップS2:NO)には、第2判定処理に移行する(ステップS4)。この第2判定処理では、制御装置30は、電流測定処理部31により測定される複数のq軸電流値の変動幅が所定の変動幅用閾値K1bよりも大きいか否かを判定する。そして、制御装置30は、変動幅が変動幅用閾値K1bよりも大きい場合(ステップS4:YES)には、回転ドラム3d内の衣類の布質が「綿区分」であると判定して(ステップS5)、この制御を終了する。
【0030】
制御装置30は、変動幅が変動幅用閾値K1b以下である場合(ステップS4:NO)には、第3判定処理に移行する(ステップS6)。この第3判定処理では、制御装置30は、電流測定処理部31により測定される複数のq軸電流値の変動幅が所定の変動幅用閾値K1aよりも大きいか否かを判定する。そして、制御装置30は、変動幅が変動幅用閾値K1aよりも大きい場合(ステップS6:YES)には、回転ドラム3d内の衣類の布質が「特殊区分」であると判定して(ステップS7)、この制御を終了する。制御装置30は、変動幅が変動幅用閾値K1a以下である場合(ステップS6:NO)には、回転ドラム3d内の衣類の布質が「化学繊維区分」であると判定して(ステップS8)、この制御を終了する。
【0031】
次に、上述した制御装置30が運転内容変更処理部35により運転内容の変更処理を実行する場合ついて、さらに詳細に説明する。即ち、図6に例示するように、制御装置30は、回転ドラム3d内の衣類の布質が「化学繊維区分」であると判定した場合には、脱水行程における脱水方法を「2段脱水方式」に設定し、脱水行程における回転ドラム3dの目標回転速度を所定速度、この場合、1400rpm(「revolutions per minute」または「rotations per minute」)に設定し、脱水行程の実行時間を所定の長時間、この場合、8分に設定する。
【0032】
また、制御装置30は、回転ドラム3d内の衣類をほぐすほぐし行程の実行時間を所定の基準時間、この場合、4分に設定する。ほぐし行程は、所定の低速度で回転ドラム3dを正転方向および逆転方向に適宜切り換えながら回転させることにより、回転ドラム3d内で絡まっている衣類をほぐすようにした行程である。また、制御装置30は、乾燥行程の実行時間を所定の基準乾燥時間T1に設定する。
【0033】
制御装置30は、回転ドラム3d内の衣類の布質が「特殊区分」であると判定した場合には、脱水行程における脱水方法を「4段脱水方式」に設定し、脱水行程における回転ドラム3dの目標回転速度を所定速度、この場合、1400rpmに設定し、脱水行程の実行時間を所定の中時間、この場合、6分に設定する。
【0034】
また、制御装置30は、回転ドラム3d内の衣類をほぐすほぐし行程の実行時間を所定の基準時間、この場合、4分に設定する。また、制御装置30は、乾燥行程の実行時間を所定の基準乾燥時間T1に所定の特殊区分用追加時間T2を追加した時間に設定する。
【0035】
制御装置30は、回転ドラム3d内の衣類の布質が「綿区分」であると判定した場合には、脱水行程における脱水方法を「4段脱水方式」に設定し、脱水行程における回転ドラム3dの目標回転速度を所定速度、この場合、1400rpmに設定し、脱水行程の実行時間を所定の短時間、この場合、5分に設定する。
【0036】
また、制御装置30は、回転ドラム3d内の衣類をほぐすほぐし行程の実行時間を所定の基準時間、この場合、4分に所定の追加時間、この場合、2分を追加した時間に設定する。また、制御装置30は、乾燥行程の実行時間を所定の基準乾燥時間T1に所定の綿区分用追加時間T3を追加した時間に設定する。
【0037】
なお、図7に例示するように、「2段脱水方式」は、脱水行程において、まず回転ドラム3dの回転速度を所定の低速度に到達させ、その後、所定の目標回転速度に到達させる方式であり、つまり、2段階をかけて回転ドラム3dの回転速度を目標回転速度に到達させる方式である。一方、図8に例示するように、「4段脱水方式」は、脱水行程において、まず回転ドラム3dの回転速度を所定の低速度に到達させ、その後、再び所定の低速度に到達させ、その後、再び所定の低速度に到達させ、その後、所定の目標回転速度に到達させる方式であり、つまり、4段階をかけて回転ドラム3dの回転速度を目標回転速度に到達させる方式である。なお、所定の低速度は、設定されている所定の目標回転速度よりも低い回転速度の範囲内において適宜変更して設定することができる。
【0038】
また、図9に例示するように、基準乾燥時間T1は、回転ドラム3d内の衣類の重量および洗濯乾燥機1の設置位置における気温に基づいて適宜異なる時間が設定される。また、図10に例示するように、特殊区分用追加時間T2も、回転ドラム3d内の衣類の重量および洗濯乾燥機1の設置位置における気温に基づいて適宜異なる時間が設定される。また、図11に例示するように、綿区分用追加時間T3も、回転ドラム3d内の衣類の重量および洗濯乾燥機1の設置位置における気温に基づいて適宜異なる時間が設定される。所定の綿区分用追加時間T3は、何れの時間も、対応する所定の特殊区分用追加時間T2よりも長い時間が設定されている。
【0039】
なお、回転ドラム3d内の衣類の重量は、例えば、運転開始時においてドラムモータ3mにより回転ドラム3dの回転速度を所定の回転速度に到達させた後、ドラムモータ3mへの通電をオフし、その後、惰性で回転する回転ドラム3dが停止するまでの時間に応じて特定することができる。また、洗濯乾燥機1の設置位置における気温は、例えば、洗濯乾燥機1が備える図示しない周知の温度センサにより特定することができる。
【0040】
図6に例示するように、制御装置30が回転ドラム3d内の衣類の布質が「特殊区分」であると判定した場合に設定する特殊運転内容は、脱水行程において、「綿区分」である場合における脱水行程と概ね同じ制御を行う運転内容となっている。即ち、脱水行程の実行時間を除き、「特殊区分」である場合における脱水方式および回転ドラム3dの目標回転速度は、「綿区分」である場合における脱水方式および回転ドラム3dの目標回転速度と同じ制御内容となっている。また、制御装置30が回転ドラム3d内の衣類の布質が「特殊区分」であると判定した場合に設定する特殊運転内容は、乾燥行程において、「化学繊維区分」である場合における乾燥行程と概ね同じ制御を行う運転内容となっている。即ち、乾燥行程の実行時間を除き、「特殊区分」である場合における乾燥運転は、「綿区分」である場合における乾燥運転と同じ制御内容となっている。
【0041】
また、乾燥行程の実行時間は、「化学繊維区分」である場合には時間が追加されず、「特殊区分」である場合には所定の特殊区分用追加時間T2が追加され、「綿区分」である場合には所定の特殊区分用追加時間T2よりも長い所定の綿区分用追加時間T3が追加される。そのため、乾燥行程の実行時間は、「化学繊維区分」である場合、「特殊区分」である場合、「綿区分」である場合の順に長く設定される。つまり、乾燥行程の実行時間は、『「化学繊維区分」である場合』<『「特殊区分」である場合』<『「綿区分」である場合』という大小関係となる。
【0042】
本実施形態によれば、洗濯乾燥機1は、回転ドラム3dを回転させるドラムモータ3mに流れるq軸電流の変動幅や平均値に基づいて衣類の布質を判定するように構成されている。そして、洗濯乾燥機1は、変動幅用閾値K1として少なくとも2つの閾値K1a,K1bを設定することにより、回転ドラム3d内の衣類の布質が「綿区分」および「化学繊維区分」とは異なる「特殊区分」に含まれるのかも判定可能に構成されているとともに、布質の区分が「特殊区分」である場合には、運転内容を所定の特殊運転内容に変更可能に構成されている。このような構成例によれば、回転ドラム3d内の衣類の布質を複数、この場合、少なくとも3つの異なる区分で判定することができる。そのため、衣類の布質の判定精度の向上を図ることができ、実際の衣類の布質に応じた運転を行うことができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、特殊運転内容は、回転ドラム3d内の衣類を脱水する脱水行程において「綿区分」である場合における脱水行程と概ね同じ制御を行い、回転ドラム3d内の衣類を乾燥する乾燥行程において「化学繊維区分」である場合における乾燥行程と概ね同じ制御を行う運転内容となっている。
【0044】
即ち、回転ドラム3d内の衣類の布質が「特殊区分」と判定される状況においては、回転ドラム3d内に「化学繊維区分」の衣類のみが収容されている場合とは異なり、回転ドラム3d内に「綿区分」の衣類も混在していることが想定される。そのため、特殊運転内容においては、回転ドラム3d内の衣類を脱水する脱水行程において「綿区分」である場合における脱水行程と概ね同じ制御を行うことにより、「化学繊維区分」の衣類を十分に脱水することができ、さらに、混在している「綿区分」の衣類も十分に脱水することができる。
【0045】
また、回転ドラム3d内の衣類の布質が「特殊区分」と判定される状況においては、回転ドラム3d内に「綿区分」の衣類のみが収容されている場合とは異なり、回転ドラム3d内に「化学繊維区分」の衣類も混在していることが想定される。そのため、特殊運転内容においては、回転ドラム3d内の衣類を乾燥する乾燥行程において「化学繊維区分」である場合における乾燥行程と概ね同じ制御を行うことにより、「化学繊維区分」の衣類を十分に乾燥することができ、さらに、「綿区分」の衣類の乾燥もある程度行うことができる。この場合、「綿区分」の衣類の乾燥が不十分となることが懸念されるが、本実施形態によれば、基準乾燥時間T1に特殊区分用追加時間T2を追加することで乾燥時間を延長するようにしているため、「綿区分」の衣類の乾燥も十分に行うことが可能である。
【0046】
なお、特殊運転内容は、回転ドラム3d内の衣類を脱水する脱水行程において「綿区分」である場合における脱水行程と全く同じ制御を行う運転内容であってもよい。また、特殊運転内容は、回転ドラム3d内の衣類を乾燥する乾燥行程において「化学繊維区分」である場合における乾燥行程と全く同じ制御を行う運転内容であってもよい。
【0047】
また、本実施形態によれば、回転ドラム3d内の衣類を乾燥する乾燥行程の実行時間は、「化学繊維区分」である場合、「特殊区分」である場合、「綿区分」である場合の順に長く設定される。これにより、乾きにくい「綿区分」の衣類については長時間をかけて乾燥を行うことができ、一方、乾きやすい「化学繊維区分」の衣類については短時間で乾燥を行うことができる。また、乾きにくい衣類と乾きやすい衣類が混在する「特殊区分」の場合には、中間の時間をかけて乾燥を行うことにより、乾燥時間が長すぎたり短すぎたりすることを回避することができ、衣類が傷んでしまったり、あるいは、衣類の乾燥が不十分となってしまったりすることを抑制できる。
【0048】
なお、本実施形態は、上述した一実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更や拡張を行うことができる。例えば図12に例示するように、制御装置30は、複数の特殊区分を設定した構成としてもよい。図12に例示する変形例では、4つの特殊区分-A,B,C,Dが設定されている。このような変形例によれば、回転ドラム3d内の衣類の布質を一層きめ細かく判定することができ、衣類の布質に一層適した運転を行うことができる。
【0049】
また、制御装置30は、回転ドラム3d内の衣類の布質に応じて、例えば、圧縮機21の駆動周波数や循環送風機26のファンの回転速度などを変更可能に構成してもよい。より具体的に説明すると、制御装置30は、例えば圧縮機21の駆動周波数や循環送風機26のファンの回転速度などを、「化学繊維区分」である場合、「特殊区分」である場合、「綿区分」である場合の順に大きくしたり小さくしたりすることができる。
【0050】
布質区分判定処理部34は、変動幅用閾値K1として少なくとも2つ以上の閾値を設定してもよいし、平均値用閾値K2として少なくとも2つ以上の閾値を設定してもよいし、変動幅用閾値K1および平均値用閾値K2の双方について、それぞれ、少なくとも2つ以上の閾値を設定してもよい。即ち、布質区分判定処理部34は、変動幅用閾値K1および平均値用閾値K2のうち少なくとも何れか一方の閾値として少なくとも2つ以上の閾値を設定することにより、回転ドラム3d内の衣類の布質が「綿区分」および「化学繊維区分」とは異なる「特殊区分」に含まれるのかを判定可能に構成されていてもよい。
【0051】
第1区分は、「綿区分」に限られず、含水しやすい布質あるいは乾きにくい布質であれば、その他の区分を設定してもよい。また、第2区分は、「化学繊維区分」に限られず、含水しにくい布質あるいは乾きやすい布質であれば、その他の区分を設定してもよい。
【0052】
本実施形態は、回転槽の回転軸が水平方向または傾斜方向に延びるいわゆるドラム式の洗濯乾燥機に限られるものではなく、回転槽の回転軸が垂直方向に延びる洗濯乾燥機、いわゆる縦軸型の洗濯乾燥機にも適用することができる。また、本実施形態は、洗濯機能を有しない衣類処理装置にも適用することができる。また、本実施形態は、乾燥機能を有しない衣類処理装置にも適用することができる。
【0053】
本実施形態は、あくまでも一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。本実施形態およびその変形は、発明の範囲および要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
図面において、1は洗濯乾燥機(衣類処理装置)、3dは回転ドラム(衣類収容槽)、3mはドラムモータ(モータ)、31は電流測定処理部(電流測定部)、32は変動幅算出処理部(変動幅算出部)、33は平均値算出処理部(平均値算出部)、34は布質区分判定処理部(布質区分判定部)、35は運転内容変更処理部(運転内容変更部)を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12